説明

熱帯熱マラリア原虫ジャイレースB由来ポリペプチド

【課題】熱帯熱マラリア治療薬の標的として、熱帯熱マラリア原虫のジャイレースBドメインポリペプチドを提供する。
【解決手段】熱帯熱マラリア原虫DNAジャイレースのジャイレースBドメインポリペプチド、前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および前記ポリペプチドに対する抗体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱帯熱マラリア原虫DNAジャイレースのジャイレースB由来ポリペプチド、前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および前記ポリペプチドに対する抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
熱帯熱マラリアはヒトを死に至らしめる原虫感染症の一つであり、年間300万人以上の人々が死亡している。近年、本原虫が既存のマラリア治療薬に対して薬剤耐性を獲得してきたことから、新規の治療薬の開発が望まれている。
【0003】
熱帯熱マラリア原虫の遺伝子の中にはヒトに対応遺伝子が存在しないもの、あるいはヒトの対応遺伝子には存在しないDNA挿入部分を有するものが存在する。かかる遺伝子がコードするタンパク質は、ヒトのタンパク質とは異なるアミノ酸配列を有し、立体構造も異なると考えられる。このようなタンパク質を標的とすることで、本原虫に特異的に作用しヒトには副作用がないマラリア治療薬の開発が可能になるものと考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、熱帯熱マラリア治療薬の標的として、ヒトに対応遺伝子が存在しない熱帯熱マラリア原虫のDNAジャイレースに注目した。DNAジャイレースは、DNA複製に関与するDNAトポイソメラーゼII型の酵素であり、ジャイレースAおよびBの2種類のサブユニットからなっている。ジャイレースBにはいくつかのドメインが存在するが、そのうちジャイレースBドメインは、DNA複製時の二本鎖DNAの切断および再結合に関与すると考えられている。ジャイレースBの本ドメインに相当する部分ポリペプチドは、本ドメインを標的とするDNAジャイレースの阻害剤の探索に有用である。よって本発明は、熱帯熱マラリア原虫のジャイレースBドメインポリペプチドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、配列番号2のアミノ酸配列からなるポリペプチド、前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および前記ポリペプチドに対する抗体を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明のポリペプチドは、ジャイレースBドメインの結晶化および構造解析に用いることができ、本ドメインに対する阻害剤の探索に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】ポリペプチドの大量発現時における発現量の培養温度依存性を示す。
【図2】Ni2+ アフィニティーカラムクロマトグラフィーの溶出結果を示す。
【図3】陰イオン交換カラムクロマトグラフィーの溶出結果を示す。
【図4】ゲル濾過カラムクロマトグラフィーの溶出結果を示す。
【図5】動的光散乱測定の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、配列番号2のアミノ酸配列からなるポリペプチドに関する。配列番号2のアミノ酸配列は、熱帯熱マラリア原虫DNAジャイレースのジャイレースBドメインに相当する。ジャイレースBの塩基配列およびアミノ酸配列は、DNAデータバンク(XM_001350753、GI:124806667)および論文(Gardner et al., Nature 419(6906), 498-511(2002))に開示されている(配列番号3および4)。配列番号2のアミノ酸配列は、配列番号4のアミノ酸配列の465-642位に相当する。
【0009】
本発明はまた、配列番号2のアミノ酸配列からなるポリペプチドの変異体に関し、具体的には、
(1)配列番号2のアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチド、または、
(2)配列番号2のアミノ酸配列に対して90%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド
であって、配列番号2のアミノ酸配列からなるポリペプチドと同じ抗原性を有するポリペプチドに関する。
【0010】
アミノ酸の欠失、置換、または付加の数は、ポリペプチドの機能が維持されるかぎり限定されないが、好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜10個、より一層好ましくは1〜5個、例えば1、2、3、4または5個である。かかる変異は、天然に存在する変異であってもよく、部位特異的突然変異誘発など公知の方法により人為的に導入したものであってもよい。アミノ酸配列の相同性は、Vector NTI、BLASTなど当業者に周知の配列比較プログラムにより決定することができ、90%以上、より好ましくは95%以上である。
【0011】
「配列番号2のアミノ酸配列からなるポリペプチドと同じ抗原性を有する」とは、配列番号2のアミノ酸配列からなるポリペプチドを特異的に認識する抗体により認識されることを意味する。かかる抗体は、配列番号2のアミノ酸配列からなるポリペプチドを免疫原として動物を免疫することにより得ることができる。抗体の作成方法は当業界にて周知である(Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harber Laboratory Press,1988)。
【0012】
本発明はまた、タグが付加されたジャイレースBドメインポリペプチドに関する。本発明において「タグ」とは、ポリペプチドの精製、検出等のためポリペプチドに付加される部分を意味し、ヒスチジン(His)、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、マルトース結合タンパク質(MBP)、myc、FLAGタグなどが例示される。タグが付加された本発明のポリペプチドは、例えば、pET30a(Novagen社製)(Hisタグ用)、pGEX(GEヘルスケアバイオサイエンス株式会社製)(GSTタグ用)などの発現ベクターにジャイレースBドメインポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを挿入し、適当な宿主細胞で発現させることで得られる。
【0013】
本発明はまた、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに関する。
【0014】
ある態様において、本発明のポリヌクレオチドは、配列番号2のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードし、具体的には、
(1)配列番号1の塩基配列、または
(2)配列番号1の塩基配列と縮重の関係にある塩基配列
を有するポリヌクレオチドである。「縮重の関係にある塩基配列」とは、もとの塩基配列中の1以上のコドンが同じアミノ酸をコードする別のコドンと置換されている塩基配列を意味する。
【0015】
本発明はまた、
(1)配列番号1の塩基配列からなるポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド、または
(2)配列番号1の塩基配列と90%以上の相同性を有する塩基配列からなるポリヌクレオチド、
であって、配列番号2のアミノ酸配列からなるポリペプチドと同じ抗原性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、に関する。
【0016】
「ストリンジェントな条件」とは、ポリヌクレオチド間の非特異的なハイブリダイセーションがおこらない条件を意味し、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd edition (2001)などに基づき当業者が適宜決定しうるものであるが、例えば0.2xSSC、0.1%SDS、65℃などが挙げられる。
【0017】
塩基配列の相同性は、90%以上、好ましくは95%以上であり、Vector NTI、BLASTなど当業者に周知の配列比較プログラムにより決定することができる。
【0018】
本発明のポリペプチドおよびポリヌクレオチドは、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd edition (2001)などに記載の公知の方法にて作製することができる。
【0019】
本発明はまた、本発明のポリヌクレオチドを含むベクターに関する。ある態様において、本発明のベクターは、適当な宿主細胞における本発明のポリペプチドの発現を可能とするものである。ベクターの種類は当業者が目的に応じて適宜決定しうるが、例えば、サブクローニング用ベクターとしてpBluescript(Takara-bio社製)、pGEM-T(Promega社製)など、発現用ベクターとしてpET30a(Novagen社製)、pGEX(GEヘルスケアバイオサイエンス株式会社製)などが挙げられる。
【0020】
本発明はまた、本発明のポリペプチドを特異的に認識する抗体、またはその抗原結合断片に関する。抗体には、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体が含まれ、またキメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体も含まれる。抗原結合断片には、F(ab’)断片、F断片、および一本鎖抗体が含まれる。本発明の抗体およびその抗原結合断片は、当業界にて周知の方法により調製可能である(例えば、Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harber Laboratory Press, 1988、http://www.gene.mie-u.ac.jp/Protocol/Original/Antibody.html、米国特許第6331415号、米国特許第5693761号、米国特許第5225539号、米国特許第5981175号、米国特許第5612205号、米国特許第5814318号、米国特許第5545806号、米国特許第7145056号、米国特許第6492160号、米国特許第5871907号、米国特許第5733743号などを参照)。
【実施例】
【0021】
1)熱帯熱マラリア原虫の培養及びDNAの抽出
熱帯熱マラリア原虫(FVO株、FUP株(以上、大阪大学より分与)、SO株、NN株(以上、発明者が患者より分離))を、改良型RPMI1640培地(25 mM HEPES、23.8 mM 炭酸水素ナトリウム、2.1 mM グルタミン、0.267 mM ヒポキサンチンおよび10 % 不活化ウマ血清をそれぞれ添加したRPMI1640培地)で、5 % ヒト赤血球(O型)を用いて培養した。この原虫から、DNA抽出キット(QIAamp DNA Blood Mini Kit、Qiagen社製)を使用してDNAを抽出した。抽出したDNAをエタノール沈殿によって10倍に濃縮し、PCRに使用した。
【0022】
2)PCRプライマーの設計
DNAデータバンクおよび参考論文に開示される熱帯熱マラリア原虫のジャイレースBのDNA配列に基づき、以下の3種類のプライマーを設計した。

1:GyrB-pGEXBamHIFw
(38bp, 5’-atggattcggactaaatgaatatataacaaatataaca-3’ (配列番号5))
GyrB-pGEXEcRIRv
(41bp, 5’-gcgaattcttattttgatcttattaaatccctagctgcctt-3’ (配列番号6))
2:GyrB-ET30aNhisNdeIFw
(45bp, 5’-cgcatatgcatcatcatcatcatcatggactaaatgaatatataa-3’ (配列番号7))
GyrB-pET30aEcoRIRv
(41bp, 5’-atgaattcttattttgatcttattaaatccctagctgcctt-3’ (配列番号8))
3:GyrB-pET30aChisNdeIFw
(38bp, 5’-cgcatatgggactaaatgaatatataacaaatataaca-3’ (配列番号9))
GyrB-pET30aChisEcoRIRv
(45bp, 5’-atgaattcttaatgatgatgatgatgatgttttgatcttattaaa-3’ (配列番号10))
【0023】
3)PCRによるDNAの増幅および精製
TaKaRa ExTaq(Takara-bio社製)を用いて、以下の条件でPCRを行った。PCR産物を1.2%アガロース電気泳動で泳動し、約500bpのバンドを得た。このバンドを切り出し、MiniElute Gel Extraction Kit (Qiagen社製)にて精製した。

[PCR条件]
プライマー:前述(配列番号5〜10)
反応条件:
10x ExTaq バッファー 5 μl
2.5 mM dNTP ミックス 2 μl
10 μM フォワード(FW)プライマー 2.5 μl
10 μM リバース(Rv)プライマー 2.5 μl
TaKaRa ExTaq 1 μl
DNA 1 μl
dH2O 36 μl
温度条件:
94℃ 3 分
94℃ 0.5 分
55℃ 1 分
72℃ 1 分
(94℃→55℃→72℃ 35サイクル)
72℃ 7 分
4℃ ∞
【0024】
4)TAクローニング
上記のDNA増幅産物をTAベクターであるpBluescript(Takara-bio社製)またはpGEM-T (Promega社製)にライゲーションし、サブクローニングを行った。出現した白色コロニーの内、それぞれ10個ずつ(合計30個)についてコロニーPCRを行い、DNA増幅産物を確認した4個のコロニーを増菌した(A1-3、A3-1、A3-3、A3-14)。増菌した大腸菌からプラスミドをQIAprep Spin Miniprep Kit(Qiagen社製)にて精製するとともに、インサートの確認のためPCRを行い、このPCR増幅産物を精製してシークエンスしたところ、A3-3、A3-14は点変異が見られた。よって、次の実験にはA1-3、A3-1のプラスミドを使用した。

[コロニーPCR条件]
プライマー:
pBluescript FW
5’-gtaatacgactcactatagggc-3’(配列番号11)(T7 フォワードプライマー)
pBluescript Rv
5’-ggaaacagctatgaccatg-3’ (配列番号12)(M13 リバースプライマー)
反応条件:
10x ExTaq バッファー 1.5 μl
2.5 mM dNTP ミックス 1.5 μl
DMSO 0.75 μl
10 μM FW プライマー 1.5 μl
10 μM Rv プライマー 1.5 μl
TaKaRa ExTaq 0.15 μl
コロニー菌体 少々
dH2O 8.1 μl
温度条件:
94℃ 1 分
94℃ 0.5 分
55℃ 0.5 分
72℃ 1.5 分
(94℃→55℃→72℃ 35サイクル)
72℃ 2 分
4℃ ∞

[インサート確認用PCR条件]
プライマー:前述(配列番号5〜10)
反応条件:
10x ExTaq バッファー 5 μl
2.5 mM dNTP ミックス 2 μl
10 μM FW プライマー 2.5 μl
10 μM Rv プライマー 2.5 μl
TaKaRa ExTaq 1 μl
DNA 1 μl
dH2O 36 μl
温度条件:
94℃ 3分
94℃ 0.5 分
55℃ 1 分
72℃ 1 分
(94℃→55℃→72℃ 35サイクル)
72℃ 7 分
4℃ ∞
【0025】
5)発現ベクターの構築
候補のプラスミド(A1-3、A3-1)を制限酵素(A1-3用:BamHI(Toyobo社製)およびEcoRI(Toyobo社製)、あるいはA3-1用:NdeI(Takara-bio社製)およびEcoRI(Toyobo社製))で切断し、同時に同じ制限酵素で処理したpGEX6p-2ベクター(A1-3用、GEヘルスケアバイオサイエンス株式会社製)あるいはpET30aベクター(A3-1用、Novagen社製)にライゲーションした。ライゲーション後、DNA断片を挿入したプラスミドで大腸菌をトランスフォームし、出現したコロニーについてコロニーPCR(前述)を行ったところ、A3-1由来DNA断片をライゲーションしたpET30aベクター(Gyrase B-NHis /pET-30a)で14個のコロニーのうち1個に目的のDNA配列が含まれることを確認した(A3-1-24)。この大腸菌を増菌後、プラスミドをQIAprep Spin Miniprep Kit(Qiagen社製)で精製し保存した。再度、インサート確認のためのPCR(前述)を行い、PCR増幅産物を精製し、シークエンスして、目的遺伝子と同一の配列であることを確認した(配列番号1)。
【0026】
6)ポリペプチドの発現および精製
上記5)で得られた発現ベクターで大腸菌(BL21(DE3)、Takara-bio社製)をトランスフォームし、培養した。培養液を遠心分離して集菌し、沈査(菌体)を超音波で粉砕した後、さらに遠心分離し、上清をNi2+ アフィニティカラムクロマトグラフィー(HiTrap Chelating HP、GEヘルスケアバイオサイエンス社製)にかけた。培養温度条件として37℃および16℃、IPTG処理条件として0.3 mM、1 mM、および3 mMを検討したところ、温度16℃、IPTG 1 mMで36時間培養すると、効率よくポリペプチドが発現することがわかり、ポリペプチドを大量に作製することに成功した(図1)。また、Ni2+アフィニティカラムクロマトグラフィーでの精製条件を検討したところ、イミダゾール100〜250 mMで溶出されることが分かった(図2)。
【0027】
[培養条件]
発現ベクター(Gyrase B-NHis /pET-30a)を大腸菌(BL21(DE3)、Takara-bio社製)にトランスフオームして作製したグリセロールストックをLB-Kan(カナマイシン30 μg/ml)寒天プレートに植菌。

37℃で一晩培養。

コロニーをピックアップして、LB-Kan培地(カナマイシン30 μg/ml、5 ml)に植菌し、37℃で一晩培養。

500 ml のTB-Kan培地(カナマイシン50 μg/ml)に前培養分5 mlを全量添加。

37℃で培養(約3時間)。

OD600〜0.8でシェイキングを中断し、16℃(または37℃)に設定後、30分間静置。

IPTGを最終濃度で0.3 mM、1 mM、または3 mMとなるように添加。

16℃(または37℃)でさらに36時間培養。

培養を終え、集菌。

菌体を-80℃に保存。
【0028】
[Ni2+ アフィニティカラムクロマトグラフィーによるポリペプチドの精製方法]
HiTrap Chelating HP(GEヘルスケアバイオサイエンス製、5 ml容量)を平衡化バッファーで平衡化(ペリスタポンプおよびフラクションコレクター(GEヘルスケアバイオサイエンス製)使用、流速 1 ml/分)。
平衡化バッファーの組成:20mM Tris-HCl pH8.0、500mM NaCl、10mM イミダゾール

上清をカラムに通液し、フロースルーを回収(流速 1 ml/分)(FT画分とする)。

平衡化バッファーで洗浄(25 ml、流速 1 ml/分)(Wash画分とする)。

100mM イミダゾールを含む溶出バッファーで溶出(3ml X 10本、流速 1 ml/分)。
溶出バッファーの組成:20mM Tris-HCl pH8.0、500mM NaCl、100mM イミダゾール

250mM イミダゾールを含む溶出バッファ−で溶出(3ml X 10本、流速 1 ml/分)。
溶出バッファーの組成:20mM Tris-HCl pH8.0、500mM NaCl、250mM イミダゾール

500mM イミダゾールを含む溶出バッファ−で溶出(3ml X 10本、流速 1 ml/分)。
溶出バッファーの組成:20mM Tris-HCl pH8.0、500mM NaCl、500mM イミダゾール

SDS-PAGE 後、溶出画分を回収。

脱塩バッファーで透析(2Lのバッファーで、4 ℃、一晩)。
脱塩バッファーの組成:20mM Tris-HCl pH8.0、500mM NaCl、1mM DTT
【0029】
図1の各レーンのサンプルは以下のとおりである。

図1 ポリペプチドの大量発現時における発現量の培養温度依存性
(a)37℃での培養後の菌体を用いたポリアクリルアミド電気泳動像
レーンの番号
1: M (マーカー)
2: 破砕(超音波による菌体の破砕粗画分)
3: 沈殿(遠心後沈殿画分)
4: 上清(遠心後上清画分)
5: FT(Ni2+アフィニティカラムクロマトグラフィーに吸着しなかった画分)
6: Wash(Niカラムの洗浄画分)
7: 溶出(100 mM) 1(Niカラムの100 mMイミダゾール添加液での溶出画分1本目)
8: 溶出(100 mM) 2(Niカラムの100 mMイミダゾール添加液での溶出画分2本目)
9: 溶出(100 mM) 3(Niカラムの100 mMイミダゾール添加液での溶出画分3本目)
10: 溶出(100 mM) 4(Niカラムの100 mMイミダゾール添加液での溶出画分4本目)
11: 溶出(100 mM) 5(Niカラムの100 mMイミダゾール添加液での溶出画分5本目)
12: 溶出(500 mM) 1(Niカラムの500 mMイミダゾール添加液での溶出画分1本目)
13: 溶出(500 mM) 2(Niカラムの500 mMイミダゾール添加液での溶出画分2本目)
14: 溶出(500 mM) 3(Niカラムの500 mMイミダゾール添加液での溶出画分3本目)
(b)16℃での培養後の菌体を用いたポリアクリルアミド電気泳動像
レーンの番号
1: M (マーカー)
2: 破砕(超音波による菌体の破砕粗画分)
3: 沈殿(遠心後沈殿画分)
4: 上清(遠心後上清画分)
5: FT(Ni2+アフィニティカラムクロマトグラフィーに吸着しなかった画分)
6: Wash(Niカラムの洗浄画分)
7: 溶出(100 mM) 1(Niカラムの100 mMイミダゾール添加液での溶出画分1本目)
8: 溶出(100 mM) 2(Niカラムの100 mMイミダゾール添加液での溶出画分2本目)
9: 溶出(100 mM) 3(Niカラムの100 mMイミダゾール添加液での溶出画分3本目)
10: 溶出(100 mM) 4(Niカラムの100 mMイミダゾール添加液での溶出画分4本目)
11: 溶出(100 mM) 5(Niカラムの100 mMイミダゾール添加液での溶出画分5本目)
12: 溶出(500 mM) 1(Niカラムの500 mMイミダゾール添加液での溶出画分1本目)
13: 溶出(500 mM) 2(Niカラムの500 mMイミダゾール添加液での溶出画分2本目)
14: 溶出(500 mM) 3(Niカラムの500 mMイミダゾール添加液での溶出画分3本目)
【0030】
図2の各レーンのサンプルは以下のとおりである。

図2 Ni2+アフィニティカラムクロマトグラフィーの溶出結果
(左図)
レーンの番号
1: M (マーカー)
2: 破砕(超音波による菌体の破砕粗画分)
3: 上清(遠心後上清画分)
4: 沈殿(遠心後沈殿画分)
5: FT(Ni2+アフィニティカラムクロマトグラフィーに吸着しなかった画分)
6: Wash(Niカラムの洗浄画分)
7: 溶出(100 mM) 1(Niカラムの100 mMイミダゾール添加液での溶出画分1本目)
8: 溶出(100 mM) 2(Niカラムの100 mMイミダゾール添加液での溶出画分2本目)
9: 溶出(100 mM) 3(Niカラムの100 mMイミダゾール添加液での溶出画分3本目)
10: 溶出(100 mM) 4(Niカラムの100 mMイミダゾール添加液での溶出画分4本目)
11: 溶出(100 mM) 5(Niカラムの100 mMイミダゾール添加液での溶出画分5本目)
12: 溶出(100 mM) 6(Niカラムの100 mMイミダゾール添加液での溶出画分6本目)
13: 溶出(100 mM) 7(Niカラムの100 mMイミダゾール添加液での溶出画分7本目)
14: 溶出(100 mM) 8(Niカラムの100 mMイミダゾール添加液での溶出画分8本目)
(右図)
レーンの番号
1: M (マーカー)
2: 溶出(250 mM) 1(Niカラムの250 mMイミダゾール添加液での溶出画分1本目)
3: 溶出(250 mM) 2(Niカラムの250 mMイミダゾール添加液での溶出画分2本目)
4: 溶出(250 mM) 3(Niカラムの250 mMイミダゾール添加液での溶出画分3本目)
5: 溶出(250 mM) 4(Niカラムの250 mMイミダゾール添加液での溶出画分4本目)
6: 溶出(250 mM) 5(Niカラムの250 mMイミダゾール添加液での溶出画分5本目)
7: 溶出(250 mM) 6(Niカラムの250 mMイミダゾール添加液での溶出画分6本目)
8: 溶出(500 mM) 1(Niカラムの500 mMイミダゾール添加液での溶出画分1本目)
9: 溶出(600 mM) 2(Niカラムの500 mMイミダゾール添加液での溶出画分2本目)
10: 溶出(500 mM) 3(Niカラムの500 mMイミダゾール添加液での溶出画分3本目)
11: 溶出(500 mM) 4(Niカラムの500 mMイミダゾール添加液での溶出画分4本目)
12: 溶出(500 mM) 5(Niカラムの500 mMイミダゾール添加液での溶出画分5本目)
13: 溶出(500 mM) 6(Niカラムの500 mMイミダゾール添加液での溶出画分6本目)
14: 溶出(500 mM) 7(Niカラムの500 mMイミダゾール添加液での溶出画分7本目)
【0031】
また、陰イオンカラムクロマトグラフィー(GEヘルスケアバイオサイエンス製、5 ml容量)での溶出条件の検討をしたところ、目的のポリペプチドがフロースルー (FT)画分に溶出され、不純物を除去できることがわかった(図3)。

[陰イオン交換カラムクロマトグラフィーによるポリペプチドの精製方法]
HiTrapQ FFカラム(GEヘルスケアバイオサイエンス製、5 ml容量)を平衡化バッファーで平衡化(ペリスタポンプおよびフラクションコレクター(GEヘルスケアバイオサイエンス製)使用、流速 1 ml/分)。
平衡化バッファーの組成:20 mM Tris-HCl pH8.0、500 mM NaCl、5 mM DTT

上清をカラムに通液;フロースルーを回収(流速 1 ml/分)(FT画分とする)。

平衡化バッファーで洗浄(25 ml、流速 1 ml/分)(Wash画分とする)。

溶出バッファーで溶出(流速 1 ml/分)。
溶出バッファーの組成:20 mM Tris-HCl pH8.0、1000 mM NaCl、5 mM DTT

SDS-PAGE後、FTおよびWash画分を回収。

YM-10(Amicon製)で約2 mlまで濃縮後、フイルタリング(PALL製 NANOCEP 0.2/m)。
【0032】
図3の各レーンのサンプルは以下のとおりである。

図3 陰イオン交換カラムクロマトグラフィーの溶出結果
レーンの番号
1: M (マーカー)
2: 脱塩後(超音波による菌体の破砕粗画分)
3: FT(陰イオン交換カラムクロマトグラフィーに吸着しなかった画分)
4: Wash(陰イオン交換カラムクロマトグラフィーの洗浄画分)
【0033】
さらに、ゲル濾過カラムクロマトグラフィー(GEヘルスケアバイオサイエンス製、120ml カラム容量)を用いることで、より純度の高いポリペプチドを得ることが出来た(図4)。

[ゲルろ過カラムクロマトグラフィーによるポリペプチドの精製方法]
HiLoad 16/60 Superdex200カラム(GEヘルスケアバイオサイエンス製、120mlカラム容量)をゲルろ過バッファーで平衡化。
ゲルろ過バッファーの組成:20 mM Tris-HCl pH8.0、500 mM NaCl、5 mM DTT

菌体破砕し、遠心分離後の上清画分をゲルろ過(流速 0.2 ml/分、1 ml/画分)。

ゲルろ過終了後、SDS-PAGEで各画分を確認し、目的の画分を回収。
【0034】
ゲルろ過後の精製サンプルについて、動的光散乱(DLS)の測定を行った(図5)。測定の結果は、多分散度9.4%、純度99.93%であり、高純度のポリペプチドが得られた。計算された平均分子量は26.65KDa であり、理論分子量とほぼ一致していた。精製後のポリペプチドの収量は、大腸菌の培養培地1リットルあたり約40mgであった。

[動的光散乱(DLS)測定の実験条件]
動的光散乱装置:MALVERN社製 Zeta Sizer Nano-S
測定温度:4℃
測定に使用したポリペプチド濃度:2mg/ml

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号2のアミノ酸配列からなるポリペプチド。
【請求項2】
(1)配列番号2のアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチド、または、
(2)配列番号2のアミノ酸配列に対して90%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド
であって、配列番号2のアミノ酸配列からなるポリペプチドと同じ抗原性を有するポリペプチド。
【請求項3】
タグが付加された、請求項1または2のポリペプチド
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかのポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項5】
(1)配列番号1の塩基配列、または
(2)配列番号1の塩基配列と縮重の関係にある塩基配列
からなる、請求項4のポリヌクレオチド。
【請求項6】
(1)配列番号1の塩基配列からなるポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド、または
(2)配列番号1の塩基配列と90%以上の相同性を有する塩基配列からなるポリヌクレオチド、
であって、配列番号2のアミノ酸配列からなるポリペプチドと同じ抗原性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれかのポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項8】
請求項1または2のポリペプチドを特異的に認識する抗体またはその抗原結合断片。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−19416(P2011−19416A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−165465(P2009−165465)
【出願日】平成21年7月14日(2009.7.14)
【出願人】(505127721)公立大学法人大阪府立大学 (688)
【Fターム(参考)】