説明

熱延鋼板の冷却方法

【課題】溶融亜鉛めっき鋼板の原板を製造するのに適した熱延鋼板を得ることができる冷却方法を提案する。
【解決手段】Si含有量が0.2mass%以上の熱延鋼板を、熱間圧延ラインの下流に配置された冷却設備に導入して該鋼板の上面、下面に冷却水を供給して冷却する方法において、前記熱延鋼板の幅方向端部から中央部に向かう50〜150mmの領域および該熱延鋼板の先端部および尾端部の長手方向に沿う5〜30%の長さに相当する領域の少なくとも一方を、定常部の温度よりも高い温度に維持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融亜鉛めっき鋼板の原板を製造するのに適した熱延鋼板の冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱鋼板の一つである熱延鋼板は、図1に示すように、加熱炉1において所定温度まで加熱されたスラブを、粗圧延機2で圧延して粗バーとなし、次いで、該粗バーを、複数基の圧延スタンドからなる連続熱間仕上圧延機3において所定の厚さになるまで圧延し、さらに、ランアウトテーブルに設置された冷却装置4にてその上面および下面に冷却水を供給して所定の温度まで冷却した後、巻取機5でコイル状に巻き取る工程を経ることによって製造するのが普通である。
【0003】
高加工性を有する合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、上記の工程を経た熱延鋼板を使用し、酸洗処理、冷間圧延、焼鈍、めっき処理のプロセスを経て製造される。
【0004】
ところで、SiやMn等の合金元素を含む熱延鋼板にあっては、めっき処理前の焼鈍過程において該SiやMnの酸化物が鋼板表面に濃化し、これが、めっき処理後の表面外観、めっきの密着性(以下、めっき性という)を悪化させることがあった。
【0005】
このため、従来は、特許文献1に開示されているように、焼鈍中に、露点等を制御し、鋼板の表面にSi等の酸化が濃化してめっき性が悪化するのを抑制している。
【0006】
一方、非特許文献1においては、鋼板の巻取後においてその表層に生成する酸化鉄よりも内側において生成するSi等の易酸化性元素の酸化物層(以下、内部酸化層という)を適切な条件で形成することにより、めっき性を向上させることが可能であるという報告もなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−209397号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】表面技術協会 表面技術 研究論文 Vol.55,No.1,2004 n48〜55頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記内部酸化層の生成量(以下、内部酸化量という)は、コイル状に巻き取られた熱延鋼板の温度履歴により決定されるものであって、例えば、図2に示すように、内部酸化層の生成速度は、600℃以上では速く、450℃以下では非常に遅いことが明らかとなっている。
【0010】
通常、コイルの板幅方向端部、内周部および外周部といったコイルの表面部分は、コイルの内側部分よりも冷却速度が大きい。
【0011】
従って、熱延鋼板の巻取り時にコイル表面部分の温度が他の部分と同等か、あるいは、それよりも低い場合、内部酸化量が他の部分よりも少なくなり、めっき性が他の部分よりも悪化する。
【0012】
また、熱延鋼板の各部分で内部酸化量が著しくばらついていると、非特許文献1に開示された方法を適用した場合でも、局所的にめっき不良が発生する場合がある。
【0013】
とくに、Siの内部酸化層は、熱間圧延を終えてコイル状に巻き取られた後の放冷中に生成される。
【0014】
酸洗処理前の熱延鋼板は、その表面から順に、酸化鉄層、Siの内部酸化層、Siの欠乏層、地鉄となっており、酸洗処理時には、該酸化鉄層、Siの内部酸化層が除去され、かかる熱延鋼板がその後、冷間圧延、焼鈍処理されることになる。
【0015】
焼鈍処理では、鉄にとっては還元雰囲気となるが、易酸化性元素であるSiにとっては酸化雰囲気となるため、鋼中のSi量が多い場合、該Siが鋼板表面に拡散し、鋼板表面で酸化物が形成されやすい。
【0016】
また、Siの酸化物は、亜鉛との濡れ性が悪く、鋼板表面にSiの酸化物が存在すると、めっき性が悪化するため、めっき処理に当たっては、Siの表面酸化を防止することがとくに重要となる。
【0017】
一方、Siの欠乏層が厚いほど、Siの表面酸化が抑制されることから、めっき性が良好となるが、Siの内部酸化量が少ない場合、その内側に存在するSiの欠乏層も薄くなり、めっき性が悪化することになる。
【0018】
また、Siの内部酸化量が多い場合、酸洗処理においてSiの内部酸化層を除去しきれず、めっき性が悪化する。従って、酸洗処理に当たっては、Siの内部酸化量を適正範囲に制御しなければならない。
【0019】
そこで、本発明の目的は、上記の実情に鑑み、熱延鋼板の内部酸化量を、その長手方向、幅方向にわたり適正範囲で均一化させるための冷却方法を提案するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、Si含有量が0.2mass%以上の熱延鋼板を、熱間圧延ラインの下流に配置された冷却設備に導入して該熱延鋼板の上面、下面に冷却水を供給して冷却する方法において、前記熱延鋼板の幅端からその中央部に向かう50〜150mmの領域および該熱延鋼板の先端部、尾端部の長手方向に沿う5〜30%の長さに相当する領域の少なくとも一方を、定常部の温度よりも高い温度に維持することを特徴とする熱延鋼板の冷却方法である。
【0021】
上記の構成からなる熱延鋼板の冷却方法において、
1)熱延鋼板は、巻取目標温度が、450〜600℃であること、
2)熱延鋼板の幅端からその中央部に向かう50〜150mmの領域および熱延鋼板の先端部、尾端部の長手方向に沿う5〜30%の長さに相当する領域の温度は、定常部よりも50〜100℃高いこと、
3)熱延鋼板は、巻取り後の常温におけるSiの内部酸化物層の厚さ(δ)が、下記の条件を満足するものであること、

1.0×10−6≦δ≦4.0×10−6 ‥‥(1)

t :時間(秒)
tc:巻取り開始時間(秒)
te:常温に至るまでの時間(秒)
T :絶対温度(K)
a :8〜9×10−6
b :1.5〜2.5×10
が、本発明の課題を解決するための具体的手段として好ましい。
【発明の効果】
【0022】
上記のような構成を有する本発明によれば、Si含有量が0.2mass%以上の熱延鋼板を、熱間圧延ラインの下流に配置された冷却設備に導入して該鋼板の上面、下面に冷却水を供給して冷却するに当たり、記熱延鋼板の幅端からその中央部に向かう50〜150mmの領域および該熱延鋼板の先端部、尾端部の少なくとも一方の長手方向に沿う5〜30%の長さに相当する領域の少なくとも一方を、定常部の温度よりも高い温度に維持するようにしたので、Siの内部酸化量が鋼板の長手方向、幅方向において均一になり、鋼板の全体のめっき性が改善される。
【0023】
また、本発明の冷却方法によれば、熱延鋼板の幅端からその中央部に向かう50〜150mmの領域および熱熱延鋼板の先端部、尾端部の長手方向に沿う5〜30%の長さに相当する領域の少なくとも一方を、定常部よりも50〜100℃高い温度としたため、該部位の内部酸化量が定常部の内部酸化量と同等となる。
【0024】
さらに、上記の構成からなる本発明の冷却方法によれば、熱延鋼板は、巻取り後の常温冷却後におけるSiの酸化物層の厚さ(δ)を、1.0×10−6≦δ≦4.0×10−6 の範囲に収まるようにしたため、適切な厚さを有するSiの欠乏層が形成できるとともに、酸洗処理においてSiの内部酸化層を除去することが可能となり、めっき性の改善に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、熱間圧延ラインを模式的に示した図である。
【図2】図2は、内部酸化層の生成速度と温度の関係を示した図である。
【図3】図3は、熱鋼板の幅方向における温度の変化を示した図である。
【図4】図4は、熱延鋼板の幅方向における温度と時間の関係を示した図である。
【図5】図5は、熱延鋼板の長手方向における温度の変化を示した図である。
【図6】図6は、熱間圧延後の熱鋼板の長手方向における温度と時間の関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
コイル状に巻き取られた熱延鋼板のコイル内周部、外周部および幅方向端部における冷却速度は、コイル内部に比べて速い。そのため、当該部位における内部酸化量は少なくなり、めっき性が悪化し易い。
【0027】
また、Siの含有量が0.2mass%未満の熱延鋼板では、内部酸化量に多少の不均一であっても、めっき性が悪化することはないが、Siの含有量が0.2mass%以上になる熱延鋼板では、内部酸化量が不均一であると、めっき性が悪化する。
【0028】
従って、コイルの各部分に対して適正な温度制御を行い、内部酸化量を、鋼板の全長、全幅にわたって適正範囲内で均一化する必要がある。
【0029】
本発明においては、熱延鋼板の巻取目標温度を、450〜600℃とするのが好ましい。というのは、熱延鋼板の巻取温度が600℃を超える場合、上掲図2に示したように、内部酸化層の生成速度が非常に速くなるため、内部酸化量が過剰になるからであり、一方、巻取温度が450℃未満では、内部酸化層の生成速度が遅く、内部酸化量が不十分になるからである。
【0030】
また、本発明では、コイルの内周部、外周部および幅方向端部の温度を、コイルの巻取り前に他の部分よりも予め高くしておくことで内部酸化量の均一化を図るが、具体的には、ランアウトテーブル上での冷却において、熱延鋼板の長手方向先端部、尾端部の巻取温度の目標値を、図3に示すように、ステップ的に変更する冷却を施すことによって実現する(以下、このような冷却をステップクールという)。
【0031】
これにより、図4の破線で示した如く、冷却開始の初期段階で、冷却速度の速い内周・外周部の温度を高温にすることが可能となり、適正な厚さの内部酸化層を確保することができる。
【0032】
定常部の温度よりも高くする領域として、本発明では、熱延鋼板の先端部および尾端部の長手方向に沿う5〜30%の長さに相当する領域とした、その理由は、以下の通りである。
【0033】
すなわち、ステップクールを行う領域が長手方向に沿う5%未満の長さに相当する領域では、高温領域が少なく、熱拡散により、短時間のうちに均熱されるため、内部酸化層を生成するための時間を充分に確保することができない。一方、ステップクールを行う領域が、長手方向に沿う30%の長さに相当する領域を超えると、コイル全体の温度が上昇してしまい、内部酸化量が全体的に過剰になるのが避けられない。
【0034】
このため、本発明においては、ステップクールを行う領域は、熱延鋼板の先端部および尾端部の長手方向に沿う5〜30%の長さに相当する領域としたものである。
【0035】
かかる部位の温度については、定常部よりも50〜100℃高い温度とするのがよい。というのは、温度が50℃未満であると、熱拡散により、短時間のうちに均熱されるため、内部酸化層を生成するための十分な時間を確保することができない。一方、100℃を超えると、コイル全体の温度が上昇し、内部酸化量が全体的に過剰になる。
【0036】
このため、本発明では、熱延鋼板の先端部および尾端部の長手方向沿う5〜30%の長さに相当する領域については、定常部よりも50〜100℃高い温度にすることが好ましいとしたものである。
【0037】
次に、本発明では、熱延鋼板の上面、下面に冷却水を供給して冷却するにあたり、該熱延鋼板の幅端からその中央部に向かう50〜150mmの領域については冷却水の供給を遮断することとしたが、その理由は、冷却水の供給を遮断する領域が50mm未満では、高温となる領域が少なく、熱拡散により、すぐに均熱されてしまい、内部酸化層を生成する時間を確保することができないからである。
【0038】
冷却水の遮断領域が150mmを超えると、巻取り後のコイルの温度が上昇し内部酸化量が全体として過剰になる。このため、本発明では、熱延鋼板の上面、下面に冷却水を供給して冷却するにあたり、該熱延鋼板の幅端からその中央部に向かう50〜150mmの領域については冷却水の供給を遮断することとした。
【0039】
冷却水の遮断により、領域を幅方向端部からその中央部に向かう50〜150mmの領域は、図5に示すように、他の部位の温度よりも高くすることができ、これにより、図6に示すように、冷却開始の初期段階で、冷却速度が速い幅方向端部の温度を高温に維持し、適正な内部酸化量を確保することができる。
【0040】
冷却水の遮断は、当該領域を覆い隠す遮蔽板の如き樋状のエッジマスクを用いて行う。
【0041】
エッジマスクの適用による温度の上昇が、50℃未満であると、熱拡散により直ぐに均熱されるため内部酸化層を形成する時間が確保することができず、一方、100℃を超えると高温部の内部酸化量が過剰になる。
【0042】
このため、本発明では、熱延鋼板の幅端部における50〜100mmの領域の温度は、好ましくは、定常部の温度よりも50〜100℃高くする。
【0043】
内部酸化層の生成速度は、アレニウス型の式で表すことができ、また、内部酸化層の厚さ(δ)は、

で求めることができる。
【0044】
内部酸化層の厚さ(δ)は、熱延鋼板の巻取り後に生成される内部酸化層について種々実験、研究を重ねた結果、上記(1)式で表されることを明らかにしたものであり、巻取り後の常温における内部酸化層の厚さ(δ)(m)が、1.0×10−6≦δ≦4.0×10−6の条件を満たすことにより、めっき性が改善される。
【0045】
内部酸化層の厚さ(δ)が、1.0×10−6m(1.0μm)未満では、Si欠乏層の厚さが薄く、焼鈍中に鋼板表面にSiの酸化物が生成してめっき性が悪化するのが避けられない。
【0046】
一方、内部酸化層の厚さ(δ)が、4.0×10−6m(4μm)を超えると、酸洗処理でSiの内部酸化物層を除去しきれず、めっき性が悪化するのが避けられない。
【0047】
このため、本発明では、内部酸化層の厚さ(δ)については、好ましくは、1.0×10-6≦δ≦4.0×10-6の範囲とした。
【0048】
内部酸化層の厚さ(δ)は、コイルの温度が常温に至るまでの時間teをコントロールすることによって調整することができる。
【0049】
本発明において適用し得る熱延鋼板としては、具体的に、Siを1mass%程度、Mnを2mass%程度含有する低炭素鋼(Cが0.1mass%程度含有するもの)がある。
【実施例】
【0050】
上掲図1に示したような設備を適用して熱間圧延した厚さ(仕上げ板厚)3.0mm、幅1000mm、長さ650mになる熱延鋼板(鋼種:TS590MPa級ハイテン)を、熱間仕上げ圧延機の出側に設置された冷却設備に導入して表1に示す条件のもとに冷却(ステップクールおよびとエッジマスクの少なくとも一方を適用)したのち、冷却にかかる鋼板を表1に示す温度でコイル状に巻取り巻き取った。
【0051】
そして、次に、コイル状に巻き取った鋼板を巻き戻して、酸洗処理、冷間圧延、焼鈍処理、さらに、めっき処理を施し、得られためっき鋼板の品質状況(歩留)(製品としての基準を満たす部分の全体に対する割合(%))について調査した。その結果を、比較例1〜3の結果とともに表1に示す。なお、巻取り後の冷却条件、酸洗処理条件、焼鈍処理条件、めっき処理は以下の条件で行うことができる。
【0052】
巻取後の冷却条件:コイルヤードでの放冷。
酸洗処理条件:通常操業と同じ(酸液の種類:塩酸、濃度:5〜10%、搬送速度:150〜300mpm)。
焼鈍処理条件:700℃以上の温度域まで8℃/s以上の平均加熱速度で加熱、800〜900℃の温度域で15〜600s保持、冷却後、450〜550℃の温度域で10〜200s保持。
めっき処理条件:460℃のAl含有浴で、溶融亜鉛めっき処理を施し、ガスワイピングにより片面当たり40g/mに付着量を制御し、その後、500℃で合金化処理。
【0053】
【表1】

【0054】
比較例1は、冷却設備における冷却においてステップクール、エッジマスクの何れも適用することなしに400℃まで冷却してコイル状に巻き取った場合であり、比較例2は、ステップクール、エッジマスクの何れも適用せずに650℃で巻き取った場合、さらに、比較例3は、ステップクール、エッジマスクの何れも適用せずに550℃で巻き取った場合である。
【0055】
一方、発明例1は、ステップクールを適用して熱延鋼板の先端部、尾端部ともに20%の領域を定常部よりも10℃高くなるように冷却(エッジマスク適用せず)して550℃で巻き取った場合、発明例2は、発明例1と同様、ステップクールを適用して熱延鋼板の先端部、尾端部ともに20%の領域を定常部よりも60℃高くなるように冷却(エッジマスク適用せず)して550℃の温度で巻き取った場合であり、発明例3は、幅100mmになるエッジマスクを冷却設備の全長にわたって配置して熱延鋼板の幅端部100mmの領域を定常部よりも10℃高くなるように冷却(ステップクール適用せず)して550℃の温度で巻き取った場合、発明例4は、幅100mmになるエッジマスクを冷却設備の全長にわたって配置して熱延鋼板の幅端部100mmの領域を定常部よりも60℃高くなるように冷却(ステップクール適用せず)して550℃で巻き取った場合、さらに、発明例5は、ステップクールを適用して熱延鋼板の先端部、尾端部ともに20%の領域を定常部よりも60℃高くなるように、また、幅100mmになるエッジマスクを冷却設備の全長にわたって配置して熱延鋼板の幅端部100mmの領域を定常部よりも60℃高くまるように冷却し550℃で巻き取った場合である。
【0056】
比較例1は、巻取温度が低く、めっき性が悪く、歩留は30%であった。また、比較例2は、巻取温度が高く、めっき性が悪くなるため、比較例1と同様、歩留が30%であった。
【0057】
比較例3については、巻取温度が450〜600℃の範囲内に収まっているものの、コイルの内周部、外周部に対応する部分および板幅方向の端部におけるめっき性が悪く、歩留は60%に留まった。
【0058】
これに対して、発明例1は、エッジマスクを適用しなかったため、幅方向の端部におけるめっき性は悪かったが、ステップクールの適用によりコイルの内周部、外周部に対応する熱延鋼板の先端部、尾端部のめっき性が改善される傾向にあり、歩留は、65%であった。
【0059】
発明例2は、エッジマスクを適用しなかったことから、幅方向の端部についてはめっき性が悪かったものの、ステップクールの適用により、コイルの内周部、外周部に対応する熱延鋼板の先端部、尾端部のめっき性は良好であり、歩留は75%であった。
【0060】
発明例3は、ステップクールを適用しなかったため、熱延鋼板の先端部、尾端部のめっき性は悪かったが、エッジマスクの適用により、板幅方向端部の温度を定常部に対して10℃高くしたことから、めっき性には改善される傾向にあり、歩留は65%であった。
【0061】
また、発明例4は、ステップクールを適用しなかったため、熱延鋼板の先端部、尾端部のめっき性は悪かったものの、エッジマスクの適用により板幅方向端部におけるめっき性は良好であり、歩留は75%であった。
【0062】
発明例5は、ステップクールとエッジマスクの適用により、コイルの内周部、外周部に対応する熱延鋼板の先端部、尾端部、板幅方向端部のめっき性は良好であり、歩留は98%まで向上することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明によれば、溶融亜鉛めっき鋼板の原板を製造するのに適した熱延鋼板を安定的に供給できる。
【符号の説明】
【0064】
1 加熱炉
2 粗圧延機
3 連続熱間仕上圧延機
4 冷却装置
5 巻取機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Si含有量が0.2mass%以上の熱延鋼板を、熱間圧延ラインの下流に配置された冷却設備に導入して該鋼板の上面、下面に冷却水を供給して冷却する方法において、
前記熱延鋼板の幅端からその中央部に向かう50〜150mmの領域および該熱延鋼板の先端部、尾端部の長手方向に沿う5〜30%の長さに相当する領域の少なくとも一方を、定常部の温度よりも高い温度に維持することを特徴とする熱延鋼板の冷却方法。
【請求項2】
前記熱延鋼板は、巻取目標温度が、450〜600℃であることを特徴とする請求項1に記載した熱延鋼板の冷却方法。
【請求項3】
前記熱延鋼板の幅端から中央部に向かう50〜150mmの領域および該熱延鋼板の先端部および後端部の長手方向に沿う5〜30%の長さに相当する領域は、前記定常部よりも50〜100℃高い温度を有することを特徴とする請求項1または2に記載した熱延鋼板の冷却方法。
【請求項4】
前記熱延鋼板は、巻取り後の常温におけるSiの内部酸化層の厚さ(δ)が、下記の条件を満足することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載した熱延鋼板の冷却方法。

1.0×10−6≦δ≦4.0×10−6 ‥‥(1)
ここに、

t :時間(秒)
tc:巻取り開始時間(秒)
te:常温に至るまでの時間(秒)
T :絶対温度(K)
a :8〜9×10−6
b :1.5〜2.5×10

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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