説明

熱応動スイッチ、取付構造、定着装置及び画像形成装置

【課題】熱応動スイッチをその作動後に取付部から取り外して行う不適切な対応を抑制する。
【解決手段】一対の電極を有し、取付部に形成された挿入孔に挿入されて当該取付部に取り付けられる本体と、前記本体に保持され、温度変化に応じて変位する変位部材と、前記本体に設けられ、前記変位部材の変位に連動して前記一対の電極の一方の接点を他方の接点から離す連動部材と、前記本体に設けられ、前記挿入孔から抜けるのを規制する規制部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱応動スイッチ、取付構造、定着装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、以下の構成が開示されている。すなわち、特許文献1では、位置決め形状を持ち開放端を持っているケースに、位置決め形状を持った可動接点板と固定接点板を固定接点板の平面部に対し十分大きくなっている前記ケースの開口部より積層して組み込むことによって小型で品質のよいサーマルプロテクトスイッチを構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−21806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、熱応動スイッチをその作動後に取付部から取り外して行う不適切な対応を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、一対の電極を有し、取付部に形成された挿入孔に挿入されて当該取付部に取り付けられる本体と、前記本体に保持され、温度変化に応じて変位する変位部材と、前記本体に設けられ、前記変位部材の変位に連動して前記一対の電極の一方の接点を他方の接点から離す連動部材と、前記本体に設けられ、前記挿入孔から抜けるのを規制する規制部と、を備える熱応動スイッチである。
【0006】
請求項2の発明は、前記本体は、筐体と、前記筐体に設けられ、前記筐体との間に前記変位部材を保持する保持部材と、を有し、前記規制部が前記保持部材に設けられ、前記規制部に予め定められた負荷がかかると前記保持部材が前記筐体から外れる請求項1に記載の熱応動スイッチである。
【0007】
請求項3の発明は、内部に発熱体が設けられ、挿入孔を有する装置筐体と、一対の電極を有し前記挿入孔に挿入されて前記装置筐体に取り付けられた本体と、前記本体に保持され温度変化に応じて変位する変位部材と、前記本体に設けられ前記変位部材の変位に連動して前記一対の電極の一方の接点を他方の接点から離す連動部材と、を有する熱応動スイッチと、前記装置筐体又は前記本体に設けられ、前記挿入孔から抜けるのを規制する規制部と、を備える取付構造である。
【0008】
請求項4の発明は、前記本体は、筐体と、前記筐体に設けられ、前記筐体との間に前記変位部材を保持する保持部材と、を有し、前記規制部が前記保持部材に設けられ、前記規制部に予め定められた負荷がかかると前記保持部材が前記筐体から外れる請求項3に記載の取付構造である。
【0009】
請求項5の発明は、記録媒体上の画像を加熱する前記発熱体としての加熱部材と、前記加熱部材へ給電するための回路と、前記一対の電極が前記回路内に設けられ、前記変位部材が前記加熱部材から受ける放射熱による温度変化に応じて変位して前記一方の接点が前記他方の接点から離れることで前記熱応動スイッチが前記回路を遮断する請求項3又は4に記載の取付構造と、を備える、前記画像を前記記録媒体に定着させる定着装置である。
【0010】
請求項6の発明は、画像を記録媒体に形成する画像形成部と、前記画像形成部で形成された画像を記録媒体へ定着させる請求項5に記載の定着装置と、を備える画像形成装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1の構成によれば、本構成に係る規制部を備えない構成に比べ、熱応動スイッチをその作動後に取付部から取り外して行う不適切な対応を抑制できる。
【0012】
本発明の請求項2の構成によれば、本構成を備えない構成に比べ、より効果的に、熱応動スイッチをその作動後に取付部から取り外して行う不適切な対応を抑制できる。
【0013】
本発明の請求項3の構成によれば、本構成に係る規制部を備えない構成に比べ、熱応動スイッチをその作動後に取付部から取り外して行う不適切な対応を抑制できる。
【0014】
本発明の請求項4の構成によれば、本構成を備えない構成に比べ、より効果的に、熱応動スイッチをその作動後に取付部から取り外して行う不適切な対応を抑制できる。
【0015】
本発明の請求項5の構成によれば、本構成に係る取付構造を備えない構成に比べ、熱応動スイッチをその作動後に取付部から取り外して行う不適切な対応を抑制できる。
【0016】
本発明の請求項6の構成によれば、本構成に係る定着装置を備えない構成に比べ、熱応動スイッチをその作動後に取付部から取り外して行う不適切な対応を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態に係る画像形成装置の構成を示す概略図である。
【図2】本実施形態に係る定着装置の構成を示す断面図である。
【図3】本実施形態に係るサーモスタットの外観を示す外観図である。
【図4】図3における4−4線断面図であり、(A)は、加熱ロール(定着装置の筐体内部)の温度が、予め定められた温度(通常動作温度)の範囲内である場合のサーモスタットを示し、(B)は加熱ロール(定着装置の筐体内部)の温度が予め定められた温度(通常動作温度)を超えた場合のサーモスタットを示す。
【図5】本実施形態に係る定着装置の構成を示す断面図である。
【図6】本実施形態に係る定着装置においてサーモスタットが取り付けられる取付面を示す概略図である。
【図7】本実施形態に係る定着装置に対するサーモスタットの取付構造を示す概略図である。
【図8】本実施形態に係るキャップにおける返し部を形成する方法を説明する説明図である。
【図9】第1変形例に係る構成を示す概略図である。
【図10】第2変形例に係る構成を示す概略図である。
【図11】第3変形例に係る構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明に係る実施形態の一例を図面に基づき説明する。
(本実施形態に係る画像形成装置の構成)
まず、本実施形態に係る画像形成装置の構成を説明する。図1は、本実施形態に係る画像形成装置の構成を示す概略図である。なお、図中に示す矢印UPは、鉛直方向上方を示している。
【0019】
画像形成装置10は、図1に示すように、各構成部品が内部に収容される画像形成装置本体11を備えている。画像形成装置本体11の内部には、用紙等の記録媒体Pが収容される収容部12と、記録媒体Pに画像を形成する画像形成部14と、画像形成部14によって記録媒体Pに形成されたトナー画像を記録媒体Pに定着させる定着装置60と、収容部12から画像形成部14へ記録媒体Pを搬送する搬送部16と、画像形成装置10の各部の動作を制御する制御部20と、画像形成装置10の各部に給電する給電部21と、が設けられている。また、画像形成装置本体11の上部には、画像形成部14によって画像が形成された記録媒体Pが排出される排出部18が設けられている。
【0020】
画像形成部14は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナー画像を形成する画像形成ユニット22Y、22M、22C、22K(以下、22Y〜22Kと示す)と、画像形成ユニット22Y〜22Kで形成されたトナー画像が転写される中間転写ベルト24と、画像形成ユニット22Y〜22Kで形成されたトナー画像を中間転写ベルト24に転写する第1転写ロール26と、第1転写ロール26によって中間転写ベルト24に転写されたトナー画像を中間転写ベルト24から記録媒体Pへ転写する第2転写ロール28と、を備えている。なお、画像形成部14は、上記の構成に限られず、他の構成であっても良く、記録媒体Pに画像を形成するものであればよい。
【0021】
画像形成ユニット22Y〜22Kは、水平方向に対して傾斜した状態で、画像形成装置10の上下方向中央部に並んで配置されている。また、画像形成ユニット22Y〜22Kは、一方向(例えば、図1における時計回り方向)へ回転する感光体32をそれぞれ有している。なお、画像形成ユニット22Y〜22Kは、同様に構成されているので、図1において、画像形成ユニット22M、22C、22Kの各部の符号を省略している。
【0022】
各感光体32の周囲には、感光体32の回転方向上流側から順に、感光体32を帯電させる帯電装置の一例としての帯電ロール23と、帯電ロール23によって帯電した感光体32を露光して感光体32に静電潜像を形成する露光装置36と、露光装置36によって感光体32に形成された静電潜像を現像してトナー画像を形成する現像装置38と、感光体32に接触して感光体32に残留しているトナーを除去する除去部材40と、が設けられている。
【0023】
露光装置36は、制御部20から送られた画像信号に基づき静電潜像を形成するようになっている。制御部20から送られる画像信号としては、例えば、制御部20が外部装置から取得した画像信号がある。
【0024】
現像装置38は、感光体32へ現像剤を供給する現像剤供給体38Aと、現像剤供給体38Aへ付与される現像剤を攪拌しながら搬送する複数の搬送部材38Bと、を備えている。
【0025】
中間転写ベルト24は、環状に形成されると共に、画像形成ユニット22Y〜22Kの上側に配置されている。中間転写ベルト24の内周側には、中間転写ベルト24が巻き掛けられる巻掛ロール42・44が設けられている。中間転写ベルト24は、巻掛ロール42・44のいずれかが回転駆動することによって、感光体32と接触しながら一方向(例えば、図1における反時計回り方向)へ循環移動(回転)するようになっている。なお、巻掛ロール42は、第2転写ロール28に対向する対向ロールとされている。
【0026】
第1転写ロール26は、中間転写ベルト24を挟んで感光体32に対向している。第1転写ロール26と感光体32との間が、感光体32に形成されたトナー画像が中間転写ベルト24に転写される第1転写位置とされている。
【0027】
第2転写ロール28は、中間転写ベルト24を挟んで巻掛ロール42に対向している。第2転写ロール28と巻掛ロール42との間が、中間転写ベルト24に転写されたトナー画像が記録媒体Pに転写される第2転写位置とされている。
【0028】
搬送部16は、収容部12に収容された記録媒体Pを送り出す送出ロール46と、送出ロール46に送り出された記録媒体Pが搬送される搬送路48と、搬送路48に沿って配置され送出ロール46によって送り出された記録媒体Pを第2転写位置へ搬送する複数の搬送ロール50と、が設けられている。
【0029】
第2転写位置より搬送方向下流側には、画像形成部14によって記録媒体Pに形成されたトナー画像を記録媒体Pに定着させる定着装置60が設けられている。この定着装置60より搬送方向下流側には、トナー画像が定着された記録媒体Pを排出部18へ排出する排出ロール52が設けられている。なお、定着装置60の具体的な構成については後述する。
【0030】
次に、本実施形態に係る画像形成装置10における、記録媒体Pへ画像を形成する画像形成動作について説明する。
【0031】
本実施形態に係る画像形成装置10では、収容部12から送出ロール46によって送り出された記録媒体Pが、複数の搬送ロール50によって第2転写位置へ送り込まれる。
【0032】
一方、画像形成ユニット22Y〜22Kでは、帯電ロール23によって帯電した感光体32が、露光装置36によって露光されて感光体32に静電潜像が形成される。その静電潜像が現像装置38によって現像されて感光体32にトナー画像が形成される。画像形成ユニット22Y〜22Kで形成された各色のトナー画像は、第1転写位置にて中間転写ベルト24に重ねられて、カラー画像が形成される。そして、中間転写ベルト24に形成されたカラー画像が、第2転写位置にて記録媒体Pへ転写される。
【0033】
トナー画像が転写された記録媒体Pは、定着装置60へ搬送され、転写されたトナー画像が定着装置60により定着される。トナー画像が定着された記録媒体Pは、排出ロール52によって排出部18に排出される。以上のように、一連の画像形成動作が行われる。
【0034】
(本実施形態に係る定着装置60の構成)
次に、本実施形態に係る定着装置60の構成を説明する。図2は、本実施形態に係る定着装置60の構成を示す概略図である。なお、図中に示す矢印UPは、鉛直方向上方を示している。
【0035】
本実施形態に係る定着装置60は、図2に示すように、画像形成装置本体11(図1参照)に対して着脱可能に設けられ、各構成部品が内部に設けられる装置筐体62を備えている。装置筐体62の内部には、記録媒体上の画像を加熱する加熱部材の一例としての加熱ロール64と、加圧部材の一例としての加圧ベルト66と、が設けられている。
【0036】
加熱ロール64は、円筒状の円筒部材64Aと、円筒部材64Aの内部空間に設けられたハロゲンランプ等の加熱源64Bと、を備えて構成されている。円筒部材64Aは、アルミニウム・ステンレス等の金属材料により形成されている。
【0037】
加熱源64Bは、加熱ロール64(加熱源64B)へ給電するための回路の一例としての電気回路25によって、給電部21と電気的に接続されている。これにより、加熱源64Bは、給電部21から電気回路25を通じて給電されるように構成されている。
【0038】
加圧ベルト66は、加熱ロール64との間に記録媒体Pを挟んで回転し、該記録媒体Pを加圧しながら搬送する環状の搬送ベルトとして構成されている。
【0039】
加熱ロール64及び加圧ベルト66によって挟まれて搬送される記録媒体Pは、加熱ロール64によってトナーが加熱されると共に加圧ベルト66によってトナーが加圧されて、加熱ロール64と加圧ベルト66との接触領域において画像が定着されるようになっている。なお、図2においては、加熱ロール64・加圧ベルト66によって、記録媒体Pが搬送される搬送経路が二点鎖線で示されている。
【0040】
定着装置60の装置筐体62には、熱応動スイッチの一例としてのサーモスタット70が設けられている。具体的には、サーモスタット70は、後述のバイメタル76(図3参照)を加熱ロール64側に向けて、加熱ロール64に対して予め定められた隙間をあけて、定着装置60の装置筐体62に設けられている。サーモスタット70は、図1に示すように、電気回路25内に設けられており、加熱ロール64(装置筐体62内部)の温度が予め定められた温度になった場合に電気回路25を遮断し、給電部21から加熱源64Bへの給電を停止するように構成されている。
【0041】
(本実施形態に係るサーモスタット70の具体的な構成)
次に、本実施形態に係るサーモスタット70の具体的な構成を説明する。図3及び図4は、サーモスタット70の構成を示す概略図である。なお、下記のX方向・−X方向・Y方向・−Y方向は、図中に示す矢印方向である。
【0042】
本実施形態に係るサーモスタット70は、図2及び図3に示すように、定着装置60の取付部の一例としての装置筐体62に取り付けられる本体71を備えている。なお、サーモスタット70の装置筐体62に対する具体的な取付構造については、後述する。
【0043】
サーモスタット70の本体71は、図4に示すように、一端部(Y方向側端部)が開放された開放部72Aを有する円筒状の筐体72と、筐体72の開放部72Aに設けられた保持部材の一例としてのキャップ74と、筐体72に設けられた一対の電極の一例としての第1電極81及び第2電極82と、を備えている。
【0044】
筐体72は、絶縁性を有する材料で構成されている。絶縁性を有する材料としては、例えば、セラミック、フェノール樹脂、ポリフェニレンスルフィルド等が用いられる。なお、筐体72の形状、材料は、上記に限られるものではない。
【0045】
筐体72の開放部72Aには、温度変化に応じて変位する変位部材の一例としてのバイメタル76が設けられている。バイメタル76は、皿バネ状に形成(絞り形成)されており、キャップ74によって、筐体72の内部に対して凹状(図4(A)に示す状態)に筐体72へ保持されている。また、バイメタル76は、線膨張率の異なる2種類の金属を接合することによって構成されており、予め定められた温度になると、筐体72の内部に対して凸状(図4(B)に示す状態)に変位(反転)するようにされている。
【0046】
キャップ74の平面視(−Y方向矢視)における中央部には、図3に示すように、バイメタル76の表面を外部に露出される円形状の開口部74Aが形成されている。キャップ74は、筐体72に対してカシメられることにより、筐体72に対して固定されている。
【0047】
第1電極81は、図4に示すように、筐体72の内部から外部へ引き出され電気回路25を構成する導線25A(図5及び図7参照)と接続される第1接続電極83と、筐体72の内部で第1接続電極83に電気的に接続され第1接点91を有する第1接点電極85と、を備えて構成されている。
【0048】
第1接続電極83は、筐体72の径方向(X方向)へ長さを有する板状電極で構成されている。第1接続電極83の長手方向一端部(X方向端部)83Aは、筐体72内部において、筐体72の底壁72Cにおける径方向中央部よりも径方向外側に配置されている。第1接続電極83は、長手方向中間部で屈曲すると共に長手方向他端部(−X方向端部)83Bが筐体72の側壁72Bの外側(−X方向)へ引き出されている。
【0049】
第1接点電極85は、その一端部(X方向端部)85Aに第1接点91を有しており、他端部(−X方向端部)85Bが第1接続電極83の長手方向一端部(X方向端部)83Aに固定されている。第1接点91は、バイメタル76側(Y方向)へ向けられている。第1接点電極85は、後述の第2接点92との接触状態で第1接点91がバイメタル76側(Y方向)へ付勢されている。具体的には、第1接点電極85は、板バネで構成されており、自らの弾性力により、バイメタル76側(Y方向)へ付勢されている。
【0050】
第2電極82は、図4に示すように、筐体72の内部から外部へ引き出され電気回路25を構成する導線25A(図5及び図7参照)と接続される第2接続電極84と、筐体72の内部で第2接続電極84に電気的に接続され第2接点92を有する第2接点電極86と、を備えて構成されている。
【0051】
第2接続電極84は、筐体72の径方向(X方向)へ長さを有する板状電極で構成されている。第2接続電極84の長手方向一端部(−X方向端部)84Aは、筐体72内部において、筐体72の底壁72Cにおける径方向中央部よりも径方向外側に配置されている。第2接続電極84は、長手方向中間部で屈曲すると共に長手方向他端部(X方向端部)84Bが筐体72の側壁72Bの外側(X方向)へ引き出されている。
【0052】
第2接点電極86は、第2接続電極84の長手方向一端部(−X方向端部)84Aに固定された第1部86Aと、第1部86Aの−X方向側端部からバイメタル76側(Y方向側)へ延びる第2部86Bと、第2部86BのY方向側端部から筐体72の径方向中央へ延びる第3部86Cと、を備えて構成されている。
【0053】
第2接点電極86は、その第3部(−X方向端部)86Cに第2接点92を有している。る。第2接点92は、第1接点91側(−Y方向)へ向けられており、バイメタル76側(Y方向)へ付勢された第1接点91と接触するようになっている。
【0054】
従って、第1接点電極85は、付勢力に対抗して第1接点91が第2接点92から離れる側(−Y方向)への対抗力が作用することで、第1接点91が第2接点92と離れ、その対抗力が作用しなくなることで、第1接点91が第2接点92と接触するようになっている。
【0055】
さらに、サーモスタット70は、バイメタル76と第1電極81(第1接点電極85)との間には、バイメタル76の変位に連動して第1接点91を第2接点92から離す連動部材の一例としてのピン78を備えている。このピン78は、筐体72の軸方向へ(図4における矢印Y方向)へ長さを有しており、棒状(例えば、円柱状)に形成されている。また、ピン78は、筐体72の平面視(−Y方向矢視)における中央部(中心部)に配置されており、いずれの部材へも固定されていない。
【0056】
ピン78では、一端部(Y方向側端部)78Aが、筐体72の内部に対して凸状(図4(B)に示す状態)に変位するバイメタル76が当たって第1電極81の第1接点電極85側(−Y方向)へ押される部分として機能し、他端部(−Y方向側端部)78Bが、一端部78Aが第1電極81の第1接点電極85側へ押されることで、第1電極81の第1接点電極85を筐体72の底壁72C側(−Y方向)へ押す部分として機能するようになっている。
【0057】
また、筐体72の内部には、筐体72の軸方向(Y方向)へピン78を案内するピンガイド80が設けられている。ピンガイド80は、筐体72の軸方向(Y方向)へ貫通しピン78が挿入される挿入孔80Aを内部に有する円板状に形成されている。ピンガイド80では、ピン78がピンガイド80に挿入された状態において、ピン78がピンガイド80の挿入孔80Aに沿って筐体72の軸方向(Y方向)への移動が許容されると共に、ピンガイド80の内壁に当ることで筐体72の径方向(−X方向・X方向)への移動が規制されるようになっている。
【0058】
(定着装置60の装置筐体62に対するサーモスタット70の具体的な取付構造)
定着装置60の装置筐体62には、図2及び図5〜7に示すように、サーモスタット70のキャップ74及び筐体72が挿入される挿入孔62Aが形成されている。従って、挿入孔62Aの径は、キャップ74及び筐体72の外径以上の大きさとされている。
【0059】
また、定着装置60の装置筐体62において挿入孔62Aを挟んだ両側には、図6及び図7に示すように、被固定部の一例としてのネジ孔68が設けられている。一方、サーモスタット70の第2接続電極84には、図7に示すように、サーモスタット70を固定する固定部材の一例としてのネジ69が通される通し孔89が設けられている。
【0060】
サーモスタット70は、キャップ74及び筐体72が、定着装置60の挿入孔62Aに挿入されると共に、通し孔89に通されたネジ69が、ネジ孔68にネジ止めされることにより、定着装置60の装置筐体62に取り付けられるようになっている。
【0061】
ここで、本実施形態では、サーモスタット70のキャップ74には、定着装置60の挿入孔62Aから抜けるのを規制する規制部としての返し部79が設けられている。
【0062】
返し部79は、互いが対向するようにバイメタル76を挟んだ両側に設けられた2つの返し部79A・79Bで構成されている。
【0063】
返し部79A・返し部79Bは、それぞれ、Y方向側端部(基端部)でキャップ74と連結されており、−Y方向側端部(先端部)に行くにつれて、徐々に径方向外側(返し部79AにおいてX方向・返し部79Bにおいて−X方向)へ広がるように、筐体72の軸方向(Y方向)に対して斜めに傾けられている。
【0064】
返し部79A・返し部79Bは、−Y方向側端部(先端部)が、径方向内側(返し部79Aにおいて−X方向・返し部79BにおいてX方向)へ閉じることが可能な板バネとされる。これにより、サーモスタット70が定着装置60の挿入孔62Aへ挿入される際に、返し部79A・返し部79Bは、挿入孔62Aの内壁に当って閉じ、装置筐体62の壁62Bの内側(Y方向側)に達するとその弾性力で筐体72の径方向外側に広がるようになっている。
【0065】
この状態において、返し部79A・返し部79Bは、−Y方向側端部(先端部)が装置筐体62の壁に引っ掛かり、サーモスタット70が挿入孔62Aから抜けるのを規制するようになっている。
【0066】
さらに、本実施形態では、キャップ74は、返し部79A・返し部79Bに対してY方向へ予め定められた負荷がかかると、筐体72から外れるように筐体72に対して取り付けられている。
【0067】
返し部79A・返し部79Bが設けられたキャップ74は、図8に示すように、キャップ74を形成する形成前の環状の板部材102において、返し部79が形成される各部位に切込み(切欠き)104を2箇所入れると共に、プレス機100のプレス加工によって筐体72に対してカシメられることで形成される。
【0068】
(本実施形態に係る作用)
次に、本実施形態に係る作用を説明する。
【0069】
本実施形態の構成によれば、加熱ロール64(装置筐体62内部)の温度が、予め定められた温度(通常動作温度)の範囲内である場合には、図4(A)に示すように、バイメタル76は、筐体72の内部に対して凹状とされている凹状態となっている。
【0070】
この場合では、第1電極81は、その付勢力に対抗する対抗力が作用していない状態とされ、第1接点91が、第2電極82の第2接点92と接触する。これにより、電気回路25が遮断されず、給電部21から電気回路25を通じて加熱源64Bへ給電がなされる。
【0071】
定着装置60において、加熱ロール64(装置筐体62内部)の温度が、予め定められた温度(通常動作温度)を超えて高温になると、図4(B)に示すように、バイメタル76が筐体72の内部に対して凸状に変位(反転)する。
【0072】
バイメタル76が筐体72の内部に対して凸状に変位(反転)すると、ピン78は、一端部(Y方向側端部)78Aがバイメタル76によって第1接点電極85側(−Y方向)へ押されて、第1接点電極85側へ移動する。これにより、ピン78の他端部(−Y方向側端部)78Bが、第1接点電極85をその付勢力に対抗して筐体72の底壁72C側(−Y方向)へ押し、第1接点電極85は、第1接点91が底壁72C側へ移動して、第2接点92と第1接点91とが離れる。これにより、電気回路25が遮断され、給電部21から加熱源64Bへの給電が停止される。
【0073】
ここで、上記のように反転したバイメタル76を機械的に無理やり復帰させるなどの不適切な対応(異常な修理)を行うため、サーモスタット70を定着装置60の装置筐体62から取り外そうとした場合でも、返し部79A・返し部79Bが装置筐体62の壁に引っ掛かり、サーモスタット70は定着装置60の装置筐体62から取り外されない。これにより、サーモスタット70をその作動後に装置筐体62から取り外して行う不適切な対応が抑制される。
【0074】
さらに、サーモスタット70を定着装置60の装置筐体62から取り外そうと、強引にサーモスタット70を挿入孔62Aから引き抜いた場合では、キャップ74が筐体72から外れる。キャップ74が筐体72から外れることで、キャップ74によって保持されていたバイメタル76が筐体72から離脱し、サーモスタット70の再使用ができなくなる。
【0075】
(第1変形例)
前述の実施形態では、返し部79がサーモスタット70に設けられていたが、第1変形例では、図9に示すように、定着装置60の装置筐体62に設けられる構成とされている。この構成においても、返し部79の先端部がキャップ74に当っており、返し部79に対して−Y方向へ予め定められた負荷がかかると、キャップ74が筐体72から外れるように筐体72に対して取り付けられている。
【0076】
従って、サーモスタット70を定着装置60の装置筐体62から取り外そうと、強引にサーモスタット70を挿入孔62Aから引き抜いた場合では、キャップ74が筐体72から外れる。キャップ74が筐体72から外れることで、キャップ74によって保持されていたバイメタル76が筐体72から離脱し、サーモスタット70の再使用ができなくなる。
【0077】
(第2変形例)
さらに、返し部79に対して予め定められた負荷がかかると、キャップ74が筐体72から外れるようにした構成としては、図10に示す第2変形例に係る構成がある。第2変形例の構成では、筐体72の側壁72Bには、返し部79A・79Bがそれぞれ差し込まれる差込孔72Eが形成されている。
【0078】
返し部79A・79Bは、キャップ74から−Y方向へ突出する突出方向中間部81において筐体72の径方向内側(返し部79Aにおいて−X方向・返し部79BにおいてX方向)へ屈曲されている。
【0079】
筐体72の側壁72Bのバイメタル76側端部(Y方向側端部)に配されたキャップ74と、返し部79A・79Bの−Y方向側端部(先端部)によって、側壁72Bを挟むことで、キャップ74が筐体72に対して保持されるようになっている。
【0080】
返し部79A・79Bの長手方向中間部(屈曲部)81には、定着装置60の装置筐体62側(−Y方向)へ突出する突出部77が形成されている。装置筐体62には、筐体72の径方向内側(返し部79Aにおいて−X方向・返し部79BにおいてX方向)で突出部77に当る突出部67が形成されている。
【0081】
この構成では、サーモスタット70を定着装置60の装置筐体62から取り外そうと、強引にサーモスタット70を挿入孔62Aから引き抜いた場合では、装置筐体62の突出部67が、返し部79A・79Bの突出部77に当って、返し部79A・79Bを筐体72の径方向外側(返し部79AにおいてX方向・返し部79Bにおいて−X方向)へ押し広げる。これにより、返し部79A・79Bの−Y方向側端部(先端部)が差込孔72Eから抜けて、キャップ74が筐体72から外れる。キャップ74が筐体72から外れることで、キャップ74によって保持されていたバイメタル76が筐体72から離脱し、サーモスタット70の再使用ができなくなる。
【0082】
(第3変形例)
前述の実施形態では、返し部79がキャップ74に設けられていたが、第3変形例では、図11に示すように、第1電極81及び第2電極82に設けられる構成とされている。
【0083】
第3変形例に係る構成では、ネジ孔68に替えて、抜け止め部材90が挿入される挿入孔63が定着装置60の装置筐体62に設けられている。
【0084】
第1電極81及び第2電極82には、抜け止め部材90・94が設けられている。抜け止め部材90は、第1接続電極83の長手方向他端部(−X方向端部)83Bに固定された第1部90Aと、第1部90AのX方向側端部からバイメタル76側(Y方向側)へ延びる第2部90Bと、を備えて構成されている。第2部90Bの先端部には、返し部79Bが形成されている。
【0085】
抜け止め部材94は、抜け止め部材90と同様に、第2接続電極84の長手方向他端部(X方向端部)84Bに固定された第1部94Aと、第1部94Aの−X方向側端部からバイメタル76側(Y方向側)へ延びる第2部94Bと、を備えて構成されている。第2部94Bの先端部には、返し部79Aが形成されている。
【0086】
返し部79A・返し部79Bは、それぞれ、Y方向側端部(基端部)で抜け止め部材94の第2部94B・抜け止め部材90の第2部90Bと連結されており、−Y方向側端部(先端部)に行くにつれて、徐々に径方向外側(返し部79AにおいてX方向・返し部79Bにおいて−X方向)へ広がるように、筐体72の軸方向(Y方向)に対して斜めに傾けられている。
【0087】
返し部79A・返し部79Bは、−Y方向側端部(先端部)が、径方向内側(返し部79Aにおいて−X方向・返し部79BにおいてX方向)へ閉じることが可能な板バネとされる。これにより、サーモスタット70が定着装置60の挿入孔63へ挿入されると共に返し部79A・返し部79Bが挿入孔63に挿入される際に、返し部79A・返し部79Bは、挿入孔63の内壁に当って閉じ、装置筐体62の壁の内側に達するとその弾性力で筐体72の径方向外側に広がるようになっている。
【0088】
この状態において、返し部79A・返し部79Bは、−Y方向側端部(先端部)が装置筐体62の壁に引っ掛かり、サーモスタット70が挿入孔62Aから抜けるのを規制するようになっている。
【0089】
さらに、前述の本実施形態では、筐体72の内部に対して凹状(図4(A)に示す状態)に筐体72へ保持されたバイメタル76が、筐体72の内部に対して凸状(図4(B)に示す状態)に変位(反転)することで、第2接点92と第1接点91とが離れるように構成されていたが、筐体72の外部に対して凹状(図4(B)に示す状態)に筐体72へ保持されたバイメタル76が、筐体72の外部に対して凸状(図4(A)に示す状態)に変位(反転)することで、第2接点92と第1接点91とが離れるように構成されていてもよい。
【0090】
具体的には、例えば、以下のように構成される。すなわち、第1電極81(第1接点電極85)ではなく、第2接点92が第1接点91からバイメタル76側へ離れるように第2電極82(第2接点電極86)が付勢され、凹状態(図4(B)に示す状態)のバイメタル76がピン78の一端部(Y方向側端部)78Aを押すことにより、ピン78の他端部(−Y方向側端部)78Bが第2電極82(第2接点電極86)を押して第2接点92と第1接点91とを接触させる。そして、バイメタル76の凸状(図4(A)に示す状態)の変位により第2電極82(第2接点電極86)に作用する付勢力でピン78がバイメタル76側(Y方向)へ移動して、第2接点92と第1接点91とが離れるようになっている。
【0091】
本発明は、上記の実施形態に限るものではなく、種々の変形、変更、改良が可能である。例えば、上記に示した変形例は、適宜、複数を組み合わせて構成しても良い。
【符号の説明】
【0092】
10 画像形成装置
14 画像形成部
25 電気回路(回路の一例)
60 定着装置
62A 挿入孔
62 装置筐体(取付部の一例)
64 加熱ロール(発熱体・加熱部材の一例)
70 サーモスタット(熱応動スイッチの一例)
71 本体
72 筐体
74 キャップ(保持部材の一例)
76 バイメタル(変位部材の一例)
78 ピン(連動部材の一例)
79 返し部(規制部の一例)
81 第1電極(電極の一例)
82 第2電極(電極の一例)
91 第1接点
92 第2接点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極を有し、取付部に形成された挿入孔に挿入されて当該取付部に取り付けられる本体と、
前記本体に保持され、温度変化に応じて変位する変位部材と、
前記本体に設けられ、前記変位部材の変位に連動して前記一対の電極の一方の接点を他方の接点から離す連動部材と、
前記本体に設けられ、前記挿入孔から抜けるのを規制する規制部と、
を備える熱応動スイッチ。
【請求項2】
前記本体は、
筐体と、
前記筐体に設けられ、前記筐体との間に前記変位部材を保持する保持部材と、を有し、
前記規制部が前記保持部材に設けられ、前記規制部に予め定められた負荷がかかると前記保持部材が前記筐体から外れる請求項1に記載の熱応動スイッチ。
【請求項3】
内部に発熱体が設けられ、挿入孔を有する装置筐体と、
一対の電極を有し前記挿入孔に挿入されて前記装置筐体に取り付けられた本体と、前記本体に保持され温度変化に応じて変位する変位部材と、前記本体に設けられ前記変位部材の変位に連動して前記一対の電極の一方の接点を他方の接点から離す連動部材と、を有する熱応動スイッチと、
前記装置筐体又は前記本体に設けられ、前記挿入孔から抜けるのを規制する規制部と、
を備える取付構造。
【請求項4】
前記本体は、
筐体と、
前記筐体に設けられ、前記筐体との間に前記変位部材を保持する保持部材と、を有し、
前記規制部が前記保持部材に設けられ、前記規制部に予め定められた負荷がかかると前記保持部材が前記筐体から外れる請求項3に記載の取付構造。
【請求項5】
記録媒体上の画像を加熱する前記発熱体としての加熱部材と、
前記加熱部材へ給電するための回路と、
前記一対の電極が前記回路内に設けられ、前記変位部材が前記加熱部材から受ける放射熱による温度変化に応じて変位して前記一方の接点が前記他方の接点から離れることで前記熱応動スイッチが前記回路を遮断する請求項3又は4に記載の取付構造と、
を備える、前記画像を前記記録媒体に定着させる定着装置。
【請求項6】
画像を記録媒体に形成する画像形成部と、
前記画像形成部で形成された画像を記録媒体へ定着させる請求項5に記載の定着装置と、
を備える画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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