説明

熱応動スイッチ

【課題】 薄型の抵抗体で効率よくバイメタルを加熱できる熱応動スイッチを提供する。
【解決手段】 温度または電流に応じて反転するバイメタル2によって可動接点21と固定接点11を接離させる熱応動スイッチにおいて、バイメタル2はその反転に追従する可堯性を有した抵抗体5を表面に重合させてなり、抵抗体5はバイメタル2が反転した際に通電されてバイメタルを加熱する。また、バイメタル2は反転動作をなす反転部20を備え、抵抗体5は反転部20を避けた位置に設けてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイメタルの反転動作により所定の設定温度で接点を切替える熱応動スイッチに関し、特にバイメタルが動作後に再反転することを阻止するための加熱抵抗体を備えた熱応動スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来からバイメタルを用いた熱応動スイッチが知られている。熱応動スイッチは、所定の設定温度以上となると、バイメタルが反転して可動接点を動作させ、接点を切替えるように構成されている。温度が上昇して接点が切替わった後、温度が低下するとバイメタルは再び反転し、接点も元の状態に戻ることになるので、一旦接点が動作した後、その状態を保持するためにはなんらかの機構を必要とする。
【0003】
従来の熱応動スイッチにおいては、特許文献1に示すように、バイメタルに加熱抵抗を接触させ、バイメタルが反転して可動接点を動作させると加熱抵抗に通電され、これがバイメタルを加熱してその反転状態を維持するものが知られている。
【特許文献1】特開平7−153499号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、バイメタルと共に加熱抵抗を内蔵した従来の熱応動スイッチでは、加熱抵抗を設けているために厚みを有し、熱応動スイッチの薄型化を阻害するものとなっていた。また、加熱抵抗をバイメタルの一端に設けているため、バイメタルに対する加熱を効率よく行うことができず、消費電力が大きかった。
【0005】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、薄型の抵抗体で効率よくバイメタルを加熱できる熱応動スイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る熱応動スイッチは、温度に応じて反転するバイメタルによって可動接点と固定接点を接離させる熱応動スイッチにおいて、
上記バイメタルはその反転に追従する可堯性を有した抵抗体を表面に重合させてなり、該抵抗体は上記バイメタルが反転した際に通電されてバイメタルを加熱することを特徴として構成されている。
【0007】
また、本発明に係る熱応動スイッチは、上記バイメタルはその反転の際に上記抵抗体に通電する可堯性を有した電極を絶縁体を介して表面に重合させると共に、上記電極の表面に上記抵抗体を重合させてなることを特徴として構成されている。
【0008】
さらに、本発明に係る熱応動スイッチは、上記バイメタルは反転動作をなす反転部を備え、上記抵抗体は上記反転部を避けた位置に設けたことを特徴として構成されている。
【0009】
さらにまた、本発明に係る熱応動スイッチは、上記抵抗体はフィルム状に形成され、表面に粘着材を設けてなると共に、該粘着材により上記バイメタルの表面に対して貼着されることで重合されることを特徴として構成されている。
【0010】
そして、本発明に係る熱応動スイッチは、上記抵抗体は上記バイメタルの表面に印刷形成されることで重合されることを特徴として構成されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る熱応動スイッチによれば、可動接点と固定接点を接離させるバイメタルはその反転に追従する可堯性を有した抵抗体を表面に重合させてなるので、抵抗体とバイメタルを面状に接触させることができ、効率よくバイメタルを加熱できると共に、抵抗体を薄膜状にすることができて、熱応動スイッチの薄型化を図ることができる。
【0012】
また、本発明に係る熱応動スイッチによれば、バイメタルは可堯性を有した電極を絶縁体を介して表面に重合させると共に、電極の表面に抵抗体を重合させてなることにより、抵抗体に通電する電極を含めて全体を薄型化することができ、熱応動スイッチの更なる薄型化を図ることができる。
【0013】
さらに、本発明に係る熱応動スイッチによれば、抵抗体はバイメタルの反転部を避けた位置に設けたことにより、抵抗体によりバイメタルの反転動作を妨げないようにすることができる。
【0014】
さらにまた、本発明に係る熱応動スイッチによれば、フィルム状の抵抗体表面に粘着材を設けてバイメタルの表面に貼着することにより、抵抗体をバイメタルに対して容易に取付けることができる。
【0015】
そして、本発明に係る熱応動スイッチによれば、抵抗体はバイメタルの表面に印刷形成されることにより、抵抗体をバイメタルの表面に容易に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の実施形態について図面に沿って詳細に説明する。図1には本実施形態における熱応動スイッチの分解斜視図を示している。この図に示すように、本実施形態における熱応動スイッチは、ケース状の本体部1にバイメタル2と抵抗体5を納め、上方からカバー体6にて覆ってなるものであり、抵抗体5及びそれに付随する絶縁コート3及び電極4は、いずれも薄膜状に形成されて可堯性を有し、バイメタル2の表面に貼着されるものである。
【0017】
本体部1は、バイメタル2や抵抗体5などを納める収納部10を有し、この収納部10の底面の一端部に固定接点11が設けられ、固定接点11は本体部1側面から外部に向かって突出する外部接続部12aと導通している。また、収納部10の底面の他端部には、バイメタル2の一端部と連結される接続面14が設けられており、これも反対側の外部接続部12bと導通している。
【0018】
バイメタル2は、中央部にドーム状に形成された反転部20を有しており、温度が変化した際にはこの反転部20が反転することで、バイメタル2が反対側に反るように動作する。また、バイメタル2の先端部下面には可動接点21が形成されており、この可動接点21がバイメタル2の反転動作に伴って固定接点11と接離することにより、スイッチとして機能させることができる。
【0019】
絶縁コート3は、バイメタル2と電極4を絶縁するためのものであって、可堯性を有したものである。また、電極4も可堯性を有したシート状のものであって、バイメタル2の反転部20を除く領域に設けられると共に、反転部20を挟んだ両側において櫛歯状に形成されていて、この櫛歯状の部分に抵抗体5が配置されて電極4に電圧が印加された際には抵抗体5に電流を流すようにしている。電極4の一端はバイメタル2を介して接続面14に導通し、他端はバイメタル2が反転動作した際に、カバー体6に設けられる切替接続部13に接触し導通する。
【0020】
抵抗体5は、伸縮性を有したPTC抵抗体であり、樹脂とカーボンを混合した粒子をエラストマーの中に配合して形成される。この抵抗体5は、バイメタル2の反転部20及びその周縁部21を除く領域に設けられ、反転部20を挟んだ両側にそれぞれ1つずつ配置される。尚、バイメタルが反転して回路がオープンに切り替わった後の電圧値が固定であれば、樹脂とカーボンを混合した固定抵抗値の抵抗体を用いることもでき、安価に形成することができる。
【0021】
カバー体6は、本体部1の上面を覆うように形成されており、上面の端部には切替接続部13が設けられている。切替接続部13は、カバー体6が本体部1に取付けられた状態で、固定接点11側の外部接続部12aと導通する。上述のようにバイメタル2が反転するとバイメタル2上に設けられた電極4の一端が切替接続部13と導通した状態となる。すると電流は切替接続部13を介して電極4及び抵抗体5側に流れて抵抗体5が発熱する。
【0022】
バイメタル2の表面に設けられる絶縁コート3と電極4及び抵抗体5は、絶縁シート上にあらかじめ電極4と抵抗体5とが形成されたフィルム状のものを貼着によりバイメタル2と一体化するようにしてもよいし、バイメタル2の表面に対して絶縁コート3、電極4、抵抗体5をスクリーン印刷によって積層し形成することで一体化するようにしてもよい。また、絶縁コート3と電極4及び抵抗体5は、バイメタル2の反転部20の領域を避けるように設けられるので、バイメタル2の反転動作を妨げることがない。
【0023】
図2には、抵抗体5等を納めた状態の本体部1の平面図を示している。この図に示すように、バイメタル2は本体部1の収容部10の内周面より一回り小さい形状で納められ、バイメタル2の反転部20を除く領域に電極4が設けられると共に、その櫛歯状の部分にまたがるようにそれぞれ抵抗体5が設けられる。また、電極4の先端部はカバー体6に設けられる切替接続部13と重なる領域にあって、バイメタル2が反転した際にはそれと接触するようにされている。
【0024】
図3には、熱応動スイッチの動作前状態における縦断面図を示している。この図に示すように、動作前の熱応動スイッチにおいて、バイメタル2の反転部20は上方に膨らむように湾曲した状態となっており、バイメタル2の先端部に設けられた可動接点21は、本体部1底面の固定接点11に接触した状態となっている。したがって、両外部接続部12a、12b間は可動接点21及びバイメタル2を介して導通した状態となっている。
【0025】
図4には、熱応動スイッチの動作後状態における縦断面図を示している。この図に示すように、所定温度以上となるとバイメタル2の反転部20は反転動作して下方に膨らむように湾曲した状態となり、バイメタル2の先端部に設けられた可動接点21は、固定接点11から離れた状態となる。一方でバイメタル2の上面側に設けられた電極4の端部が、カバー体6の上面に設けられた切替接続部13に接触する。切替接続部13は上述のように外部接続部12aと導通しているので、外部接続部12aからの電流は切替接続部13と電極4を介して抵抗体5に流れる。したがって、抵抗体5は発熱し、バイメタル2の反転状態を保持する。尚、熱応動スイッチの動作後の外部接続部12aからの電流は抵抗体5を通じて流れるため、熱応動スイッチの動作前状態に比べて極めて微小な電流値となり、使用される機器にダメージを与えることがなく、例えば二次電池の保護装置として好適である。
【0026】
このように、バイメタル2の表面に可堯性を有したシート状の抵抗体5を設けたことにより、抵抗体5からの発熱をバイメタル2に対して効率的に伝えることができるので、バイメタル2の反転を保持するための消費電力を少なくすることができると共に、抵抗体5が薄型であるために熱応動スイッチの薄型化を図ることができる。
【0027】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図5には、本実施形態における熱応動スイッチの概念的な断面図を示している。この図に示すように、本実施形態における熱応動スイッチは、本体部1内に可動板30を設け、その先端部には本体部1に設けられた固定接点11と接離自在な可動接点21を設けている。バイメタル2は、本体部1の底面に設けられており、その反転動作に伴って可動板30を上方に押し上げるように構成されている。
【0028】
また、バイメタル2の可動板30側の表面には絶縁コート3と電極4及び抵抗体5が設けられている。電極4はバイメタル2の中央部に配置されており、図5に示す動作前の状態において電極4は固定接点11とは接触せず、導通しない状態とされている。また、抵抗体5は電極4の周囲に設けられ、電極4とは導通した状態とされている。
【0029】
図6には、図5に示した熱応動スイッチの動作後状態を示した概念的な断面図を示している。温度が上昇すると、本体部1内のバイメタル2は反転し、それに伴って可動板30は押し上げられ、可動接点21は固定接点11から離れた状態となる。一方で、抵抗体5は可動板30に接触すると共に、電極4はバイメタル2を介して固定接点11と導通する。したがって、外部接続部12aからの電流は可動板30から抵抗体5に流れて、さらに電極4及びバイメタル2を介して固定接点11に流れる。これによって抵抗体5は発熱し、バイメタル2の反転状態を保持する。
【0030】
このように、可動接点21を設けた可動板30をバイメタル2によって上下させるように構成することによっても熱応動スイッチを構成することができ、この場合にもバイメタル2の表面に抵抗体5を設けることで、バイメタル2を効率よく加熱できると共に、熱応動スイッチの薄型化を図ることができる。
【0031】
これまで本発明を適用した実施形態について説明したが、本発明の適用はこれら実施形態に限られるものではなく、その技術的思想の範囲内において様々に適用されうるものである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本実施形態における熱応動スイッチの分解斜視図である。
【図2】本体部の平面図である。
【図3】熱応動スイッチの動作前状態における縦断面図である。
【図4】熱応動スイッチの動作後状態における縦断面図である。
【図5】第2の実施形態における熱応動スイッチの概念的な断面図である。
【図6】図5の熱応動スイッチの動作後状態を示した断面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 本体部
2 バイメタル
3 絶縁コート
4 電極
5 抵抗体
6 カバー体
10 収容部
11 固定接点
12 外部接続部
13 切替接続部
14 接続面
20 反転部
21 可動接点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度に応じて反転するバイメタルによって可動接点と固定接点を接離させる熱応動スイッチにおいて、
上記バイメタルはその反転に追従する可堯性を有した抵抗体を表面に重合させてなり、該抵抗体は上記バイメタルが反転した際に通電されてバイメタルを加熱することを特徴とする熱応動スイッチ。
【請求項2】
上記バイメタルはその反転の際に上記抵抗体に通電する可堯性を有した電極を絶縁体を介して表面に重合させると共に、上記電極の表面に上記抵抗体を重合させてなることを特徴とする請求項1記載の熱応動スイッチ。
【請求項3】
上記バイメタルは反転動作をなす反転部を備え、上記抵抗体は上記反転部を避けた位置に設けたことを特徴とする請求項1または2記載の熱応動スイッチ。
【請求項4】
上記抵抗体はフィルム状に形成され、表面に粘着材を設けてなると共に、該粘着材により上記バイメタルの表面に対して貼着されることで重合されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱応動スイッチ。
【請求項5】
上記抵抗体は上記バイメタルの表面に印刷形成されることで重合されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱応動スイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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