熱応答補正システム
【課題】時間経過に従ってプリントヘッドエレメントへのエネルギーの供給に対するサーマルプリントヘッドエレメントの熱応答をモデル化するサーマルプリントヘッドのモデルを提供すること。
【解決手段】上記課題を解決するサーマルプリントヘッドモデルは、(1)サーマルプリントヘッドの現在の周囲温度と、(2)プリントヘッドの熱履歴と、(3)プリントヘッドのエネルギー履歴とに基づいて、各プリントヘッドサイクルにおける開始点でサーマルプリントヘッドエレメントの各々の温度予測を生成する。所望の濃度を有するスポットを生成するために、プリントヘッドサイクルの間にプリントヘッドエレメントの各々に供給するエネルギーの量が、(1)プリントヘッドサイクルの間にプリントヘッドエレメントによって生成されるべき所望の濃度と、(2)プリントヘッドサイクルの開始点でのプリントヘッドエレメントの予測温度とに基づいて計算される。
【解決手段】上記課題を解決するサーマルプリントヘッドモデルは、(1)サーマルプリントヘッドの現在の周囲温度と、(2)プリントヘッドの熱履歴と、(3)プリントヘッドのエネルギー履歴とに基づいて、各プリントヘッドサイクルにおける開始点でサーマルプリントヘッドエレメントの各々の温度予測を生成する。所望の濃度を有するスポットを生成するために、プリントヘッドサイクルの間にプリントヘッドエレメントの各々に供給するエネルギーの量が、(1)プリントヘッドサイクルの間にプリントヘッドエレメントによって生成されるべき所望の濃度と、(2)プリントヘッドサイクルの開始点でのプリントヘッドエレメントの予測温度とに基づいて計算される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はサーマル印刷に関し、特に、サーマルプリントヘッドの熱履歴の影響を補償することによって、サーマルプリンタの出力を改善する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
サーマルプリンタは、一般的に、熱要素のリニアアレイ(本明細書では「プリントヘッド要素」とも呼ぶ)を含み、例えば顔料をドナーシートから出力媒体に転写することによって、または出力媒体において色形成反応を始めることによって、出力媒体の上に印刷を行う。出力媒体は、一般的に、転写される顔料に対して受容的な多孔性の受像媒体であるか、または、色形成の化学反応を引き起こすものでコーティングされた紙である。プリントヘッド要素のそれぞれは、動作時、特定の濃度を有するスポットをつくって、プリントヘッド要素の下を通過する媒体の上に、色を形成する。より大きい、またはより濃いスポットを有する領域は、より小さい、またはより薄いスポットを有する領域よりも暗い、と認識される。デジタル画像は、非常に小さくかつ密接したスポットの二次元配列であると言い表される。
【0003】
サーマルプリントヘッド要素は、エネルギーが供給されることによってアクティブになる。プリントヘッド要素へエネルギーを供給することによって、プリントヘッド要素の温度が上昇し、顔料の出力媒体への転写、または受像体上での色の形成のどちらか一方が行われる。このような方法でプリントヘッド要素によって生成された出力の濃度は、プリントヘッド要素に供給されるエネルギー量の関数である。プリントヘッド要素に供給されるエネルギー量は、例えば、ある特定の時間インターバル内におけるプリントヘッド要素へのパワーの量を変えるか、またはより長い時間インターバルの間、プリントヘッド要素にパワーを提供するか、によって変化し得る。
【0004】
従来のサーマルプリンタは、デジタル画像が印刷される時間が、本明細書において「プリントヘッドサイクル」とよぶ、固定の時間インターバルに分割される。一般的には、デジタル画像のピクセル(またはその部分)の1行が、1回のプリントヘッドサイクルの間に印刷される。プリントヘッド要素のそれぞれは、一般的には、デジタル画像の特定の列のプリントピクセル(またはサブピクセル)に対して役割を担う。各プリントヘッドサイクルの間、プリントヘッド要素に、所望の濃度を有する出力を生成させるレベルまでプリントヘッド要素の温度を上げるように計算された量のエネルギーが、各プリントヘッド要素に渡される。プリントヘッド要素によって生成される、所望の濃度の違いに基き、異なるエネルギー量が異なるプリントヘッド要素に供給され得る。
【0005】
従来のサーマルプリンタの1つの問題点は、それらのプリントヘッド要素が、各プリントヘッドサイクルの終了後も熱を保持することに起因する。この熱の保持が問題であり得るのは、いくつかのサーマルプリンタでは、概して、プリントヘッドサイクルの開始時におけるプリントヘッド要素の温度は既知の固定温度である、との推測に基いて、特定のプリントヘッドサイクルの間に特定のプリントヘッド要素に渡されるエネルギー量が計算されるためである。実際、あるプリントヘッドサイクルの開始時におけるプリントヘッド要素の温度は、(とりわけ)前のプリントヘッドサイクルの間にプリントヘッド要素に渡されるエネルギー量に依存するので、あるプリントヘッドサイクルの間にプリント要素によってもたらされる実際の温度は、較正された温度と異なり得、よって、所望の濃度より高いかまたは低い出力濃度となる。事態が同様にさらに複雑になるのは、特定のプリントヘッド要素の現時点の温度が、そのプリントヘッド要素自身の前の温度−本明細書では「熱履歴」と呼ぶ−に影響されるだけではなく、環境(部屋)温度およびプリントヘッドの他のプリントヘッド要素の熱履歴によっても影響されるという事実による。
【0006】
上記の記述から推察され得るように、従来のサーマルプリンタのいくつかにおいては、特定のサーマルプリントヘッド要素のそれぞれの平均温度が、デジタル画像の印刷中に徐々に上昇する傾向にあるが、それはプリントヘッド要素による熱保持と、そのような熱保持という観点からみて過剰なエネルギーが、プリントヘッド要素に供給されるためである。この徐々の温度上昇によって、それに対応して、プリントヘッド要素によって生成される出力の濃度が徐々に上昇し、その上昇は、印刷される画像の暗さが増すことによって知覚される。この現象を、本明細書では「濃度シフト」とよぶ。
【0007】
さらに、従来のサーマルプリンタは、一般的に、高速スキャン時、および低速スキャン時の両方において、近傍のピクセル間の鮮明な濃度勾配を、精密に再生することが困難である。例えば、プリントヘッド要素が、黒色ピクセルに引き続き白色ピクセルを印刷するとき、理想的には鮮明であるべき2つのピクセル間のエッジは、印刷されると、一般的に不鮮明になる。白色ピクセルを印刷した後に黒色ピクセルを印刷するためにはプリントヘッド要素の温度を上昇させるが、この問題は、その上昇に必要とされる時間の量に起因する。ごく一般的には、従来のサーマルプリンタのこの特徴は、高い濃度勾配の領域を有する画像を印刷する際、理想的な鮮明さよりも、さらに劣るという結果となる。
【0008】
したがって、必要とされるのは、より精度の高いデジタル画像を表現するために、サーマルプリンタのプリントヘッド要素の温度を制御する、改良された技術である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
より精度の高いデジタル画像を表現するために、サーマルプリンタのプリントヘッド要素の温度を制御する改良された技術である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
時間の経過にしたがった(オーバータイムの)、プリントヘッド要素へのエネルギーの供給に対する、サーマルプリントヘッド要素の熱応答をモデリングしたサーマルプリントヘッドのモデルが提供される。このサーマルヘッドプリントモデルは、以下のことに基き、各プリントヘッドサイクルの開始時における各サーマルプリントヘッド要素の温度の予測を生み出す:(1)サーマルプリントヘッドの現時点の環境温度、(2)プリントヘッドの熱履歴、および(3)プリントヘッドのエネルギー履歴。所望の濃度を有するスポットを生成するために、あるプリントヘッドサイクルの間に各プリントヘッド要素に供給するエネルギーの量は、以下に基いて計算される:(1)そのプリントヘッドサイクルの間に、プリントヘッド要素によって生成される所望の濃度、および(2)そのプリントヘッドサイクルの開始時におけるプリントヘッド要素の予測温度。
本発明は以下をも提供する。
(1) プリントヘッドエレメントを備えるサーマルプリンタにおける方法であって、
(A)該プリントヘッドエレメントの現在の温度、および該プリントヘッドエレメントによって印刷される所望の出力濃度の複数の1次元関数に基づいて、該プリントヘッドエレメントに供給する入力エネルギーを計算するステップを包含する、方法。
(2) (B)前記入力エネルギーを前記プリントヘッドエレメントに供給するステップをさらに包含する、項目1に記載の方法。
(3) 前記プリントヘッドエレメントの前記現在の温度は、該プリントヘッドエレメントの予測された現在の温度を含む、項目1に記載の方法。
(4) 前記予測温度は、周囲温度と、前記プリントヘッドエレメントに事前に供給されたエネルギーとに基づいて予測される、項目3に記載の方法。
(5) 前記サーマルプリンタは、複数のプリントヘッドエレメントを備え、前記予測温度は、周囲温度と、該プリントヘッドエレメントに事前に供給されたエネルギーと、該複数のプリントヘッドエレメントにおける少なくとも1つの別のプリントヘッドエレメントに事前に供給されたエネルギーとに基づいて予測される、項目3に記載の方法。
(6) 前記複数の1次元関数は、
前記所望の出力濃度を入力として、および未補正入力エネルギーを出力として有する逆ガンマ関数と、
前記プリントヘッドエレメントの前記現在の温度を入力として、および、補正係数を出力として有する補正関数とを含み、
前記ステップ(A)は、該補正係数を該未補正入力エネルギーに加算することによって、該入力エネルギーを計算するステップを包含する、項目1に記載の方法。
(7) 前記補正関数は、
前記プリントヘッドエレメントの前記現在の温度から基準温度を引くことによって、温度差値を求めるステップと、
該温度差値と、前記所望の出力濃度を入力として、および、感度値を出力として有する感度関数の出力との積として該補正係数を求めるステップと
を実行することによって、該補正係数を求める、項目6に記載の方法。
(8) 前記補正係数は、正である、項目6に記載の方法。
(9) 前記補正係数は、負である、項目6に記載の方法。
(10) 前記入力エネルギーは、変数Eで表され、前記ステップ(A)は、以下の形態の等式
E=Γ−1(d)+S(d)(Ta−TΓ(d))
を用いて該入力エネルギーを計算するステップを包含し、
ここで、Γ−1(d)は、未補正入力エネルギーEΓに前記所望の出力濃度dを関連付け、Taは、前記プリントヘッドエレメントの前記現在の温度であり、TΓ(d)は、基準温度に該所望の出力濃度dを関連付け、該基準温度は、Γ()が測定された場合の該プリントヘッドエレメントの温度であり、S(d)は、Γ−1(d)の温度依存度の勾配である、項目1に記載の方法。
(11) 前記入力エネルギーは、前記変数Eで表され、前記ステップ(A)は、以下の形態の等
式
E=G(d)+S(d)Ta
を用いて、該入力エネルギーを計算するステップを包含し、
ここで、G(d)は、未補正入力エネルギーEΓに前記所望の出力濃度dを関連付け、Taは、前記プリントヘッドエレメントの前記現在の温度であり、S(d)は、前記G(d)の温度依存度の勾配である、項目1に記載の方法。
(12) 前記ステップ(A)は、サーマルプリンタの単一のプリントヘッドサイクル内で実行される、項目1に記載の方法。
(13) サーマルプリンタであって、
プリントヘッドエレメントと、
該プリントヘッドエレメントの現在の温度、および、該プリントヘッドエレメントによって印刷されるべき所望の出力濃度の複数の1次元関数に基づいて、該プリントヘッドエレメントに供給する入力エネルギーを計算する手段と
を備える、サーマルプリンタ。
(14) 前記入力エネルギーを前記プリントヘッドエレメントに供給する手段をさらに備える、項目13に記載のサーマルプリンタ。
(15) 前記プリントヘッドエレメントの前記現在の温度は、該プリントヘッドエレメントの予測された現在温度を含む、項目13に記載のサーマルプリンタ。
(16) 前記予測温度は、周辺温度、および前記プリントヘッドエレメントに事前に供給されたエネルギーに基づいて予測される、項目15に記載のサーマルプリンタ。
(17) 前記プリントヘッドエレメントは、複数のプリントヘッドエレメントの1つであり、前記サーマルプリンタは、周囲温度と、該プリントヘッドエレメントに事前に供給されたエネルギーと、該複数のプリントヘッドエレメントにおける少なくとも1つの他のプリントヘッドエレメントに事前に供給されたエネルギーとに基づいて前記予測温度を予測する手段をさらに備える、項目15に記載のサーマルプリンタ。
(18) 前記入力エネルギーを計算する手段は、
前記所望の出力濃度を入力として、および未補正入力エネルギーを出力として有する逆ガンマ関数手段と、
前記プリントヘッドエレメントの前記現在の温度を入力として、および補正係数を出力として有する補正関数手段と、
該補正係数を該未補正入力エネルギーに加算することによって、該入力エネルギーを計算する手段と
を備える、項目13に記載のサーマルプリンタ。
(19) 前記補正関数手段は、
前記プリンタヘッドエレメントの前記現在の温度から基準温度を引くことによって、温度差値を求める手段と、
該温度差値と、前記所望の出力濃度を入力として、および感度値を出力として有する前記感度関数の出力との積として該補正係数を求める手段と
を備える、項目18に記載のサーマルプリンタ。
(20) 前記入力エネルギーは、変数Eで表され、該入力エネルギーを計算する前記手段は、以下の形態の等式
E=Γ−1(d)+S(d)(Ta−TΓ(d))
を用いて、該入力エネルギーを計算する手段を備え、ここで、Γ−1(d)は、未補正入力エネルギーEΓに前記所望の出力濃度dを関連付け、Taは、前記プリントヘッドエレメントの前記現在の温度であり、TΓ(d)は、基準温度に該所望の出力濃度dを関連付け、該基準温度は、Γ()が測定された場合の該プリントヘッドエレメントの温度であり、S(d)は、Γ−1(d)の温度依存度の勾配である、項目13に記載のサーマルプリンタ。
(21) 前記入力エネルギーは、前記変数Eで表され、該入力エネルギーを計算する前記手段は、以下の形態の等式
E=G(d)+S(d)Ta
を用いて、該入力エネルギーを計算する手段を備え、
G(d)は、未補正入力エネルギーEΓに前記所望の出力濃度dを関連付け、Taは、前記プリントヘッドエレメントの前記現在の温度であり、S(d)は、前記G(d)の温度依存度の勾配である、項目13に記載のサーマルプリンタ。
(22) 前記入力エネルギーを計算する前記手段は、前記サーマルプリンタの単一のプリントヘッドサイクル内で該入力エネルギーを計算する手段を備える、項目13に記載のサーマルプリンタ。
(23) 所望の濃度の分布を有するソースイメージに対応するプリントイメージを生成するために、サーマルプリントヘッドにおける複数のプリントヘッドエレメントに供給するための複数の入力エネルギーを生成するための装置であって、該装置は、
ヘッド温度モデル手段であって、
複数のプリントヘッドサイクルごとに、(1)周囲温度と、(2)少なくとも1つの前のプリントヘッドサイクルの間に該複数のプリントヘッドエレメントに供給された複数の入力エネルギーとを入力として受取り、
複数のプリントヘッドサイクルごとに、該プリントヘッドサイクルの開始点での該複数のプリントヘッドエレメントの複数の予測温度を出力として生成し、該複数の予測温度は、マルチ分解能熱伝達モデルを利用する第1の再帰プロセスを用いて求められる、ヘッド温度モデル手段と、
逆媒体濃度モデル手段であって、
該複数のプリントヘッドサイクルごとに、(1)該複数の予測温度と、(2)該プリントヘッドサイクルの間に印刷されるべき所望の濃度の分布のサブセットとを入力として受取り、
該複数のプリントヘッドサイクルごとに、該プリントヘッドサイクルの間に該複数のプリントヘッドエレメントに供給されるべき複数の入力エネルギーを出力として生成する、逆媒体濃度モデル手段と
を備える装置。
(24) 前記逆媒体濃度モデル手段は、
前記所望の濃度の前記分布の前記サブセットを入力として、および、複数の未補正入力エネルギーを出力として生成する、逆ガンマ関数手段と、
該所望の濃度の分布の該サブセットを入力として受取り、かつ、複数の感度値を出力として生成する、感度関数手段と、
該所望の濃度の分布の該サブセットを入力として受取り、かつ、複数の基準温度を出力として生成する、基準温度関数手段と、
前記複数の予測温度から該複数の基準温度を引いて、複数の温度差を生成するための減算器と、
該複数の感度値に該複数の温度差を乗算して、複数の補正係数を生成するための乗算器と、
該複数の補正係数を該複数の未補正入力エネルギーに加算して、該複数の入力エネルギーを生成するための加算器と
を備える、項目23に記載の装置。
(25) 前記ヘッド温度モデル手段は、該ヘッド温度モデルによって生成された少なくとも1つの前の予測温度を入力としてさらに受取る、項目23に記載の装置。
(26) 複数のプリントヘッドエレメントを備えるプリントヘッドを有するサーマルプリンタにおいて、複数のプリントヘッドサイクルごとに、複数の出力濃度を生成するために、該プリントヘッドサイクルの間に該複数のプリントヘッドエレメントに供給されるべき複数の入力エネルギーを求める方法であって、該方法は、
(A)該複数のプリントヘッドサイクルごとに、該プリントヘッドサイクルの開始点での該複数のプリントヘッドエレメントの複数の予測温度を求めるために、マルチ分解能熱伝達モデルを用いるステップと、
(B)該複数の予測温度および該プリントヘッドサイクルの間に該複数のプリントヘッドエレメントによって出力される複数の濃度に基づいて、該複数の入力エネルギーを求めるために、逆媒体モデルを用いるステップと
を包含する、方法。
(27) 前記ステップ(A)は、周囲温度と、少なくとも1つの前のプリントヘッドサイクルの間に前記複数のプリントヘッドエレメントに供給される複数の入力エネルギーに基づいて、前記複数の予測温度を求めるステップを包含する、項目26に記載の方法。
(28) 前記ステップ(A)は、前記複数のプリントヘッドエレメントの複数の前の予測温度に基づいて、前記複数の予測温度を求めるステップを包含する、項目26に記載の方法。
(29) 前記ステップ(A)は、前記複数のプリントヘッドエレメントについて、少なくとも1つの前のプリントヘッドサイクルの開始点での他のプリントヘッドエレメントの少なくとも1つの予測温度に基づいて、予測温度を求めるステップを包含する、項目26に記載の方法。
(30) (C)i軸、n軸、およびj軸を有する3次元グリッドを定義するステップであって、該3次元グリッドは、複数の分解能を含み、該複数の分解能の各々は、i軸上に別個の座標を有する平面を定義し、該複数の分解能の各々は、参照点の別個の2次元グリッドを含み、該3次元グリッドにおける該参照点の任意の1つは、i座標、n座標、およびj座標によって一意的に参照され得、
該3次元グリッドにおける該参照点の各々は、絶対温度値およびエネルギー値に関連して存在し、
座標(0,n,j)を有する参照点と関連した該絶対温度値は、タイムインターバルnの開始点での位置jのプリントヘッドエレメントの予測温度に対応し、座標(0,n,j)を有する該参照点と関連した該エネルギー値は、タイムインターバルnの間に位置jにおける該プリントヘッドエレメントに供給する入力エネルギーの量に対応する、ステップをさらに包含し、前記ステップ(B)は、
(B)(1)前記複数の出力濃度および0のi座標を有する複数の参照点と関連つけられた該絶対温度値、および0のi座標を有する該複数の参照点と関連したエネルギー値を求めることによって、該複数の入力エネルギーを求めるステップを包含する、項目26に記載の方法。
(31) (D)以下の等式
T(i)(n,j)=T(i)(n−1,j)αi+AiE(i)(n−1,j)およびT(i)(n,j)=(1−2ki)T(i)(n,j)+ki(T(i)(n,j−1)+T(i)(n,j+1))
を用いて、相対温度値を計算するステップであって、
ここで、T(i)(n,j)は、座標(i,n,j)を有する参照点と関連した相対温度値を示す、ステップと、
(E)以下の漸化式
Ta(i)(*,*)=I(i+1)(i)Ta(i+1)(*,*)+T(i)(*,*)
を用いて、絶対温度値を計算するステップであって、ただし、i=nresolutions−1、nresolutions−2、...、0であり、初期条件
Ta(nresolutions)(n,*)=Ts(n)
によって特定され、
nresolutionsは、前記3次元グリッドにおける分解能の数であり、Tsは、周辺温度であり、Ta(i)(n,j)は、座標(i,n,j)を有する参照点と関連した絶対温度値を指し、I(i+1)(i)は、分解能i+1から分解能iへの補間演算子であり、該ステップ(B)(1)は、
以下の漸化式
E(i)(n,j)=I(i+1)(i)E(i−1)(n,j)
を用いて該複数の入力エネルギーを計算するステップを包含し、ただし、i=1、2、...、nresolutions−1であり、
初期条件は、
E(0)(n,j)=G(d(n,j))+S(d(n,j))Ta(0)(n,j)によって特定され、
ここで、G(d(n,j))は、該所望の出力濃度dを未補正入力エネルギーEΓと関係付け、Ta(0)(n,j)は、座標(0,n,j)を有する参照点と関連した絶対温度値であり、S(d(n,j))はG(d(n,j))の温度依存度の勾配である、項目30に記載の方法。
(32) 各タイムインターバルnの間に前記複数の入力エネルギーE(0)(n,j)を前記複数のプリントヘッドエレメントに供給するステップをさらに包含する、項目31に記載の方法。
(33) 前記ステップ(A)および(B)は、前記サーマルプリンタの単一のプリントヘッドサイクルの間に実行される、項目26に記載の方法。
(34) サーマルプリンタであって、
複数のプリントヘッドエレメントを備えるプリントヘッドと、
複数のプリントヘッドサイクルごとに、複数の出力濃度を生成するために、該プリントヘッドサイクルの間に該複数のプリントヘッドエレメントに供給されるべき複数の入力エネルギーを求める手段であって、該複数の入力エネルギーを求める手段は、
該複数のプリントヘッドサイクルごとに、該プリントヘッドサイクルの開始点で、該複数のプリントヘッドエレメントの複数の予測温度を求めるために、マルチ分解能熱伝達モデルを用いる第1の手段と、
該プリントヘッドサイクルの間に該複数の予測温度および該複数のプリントヘッドエレメントによって出力されるべき複数の濃度に基づいて、該複数の入力エネルギーを求めるために、逆媒体モデルを用いる第2の手段と
を備える、サーマルプリンタ。
(35) 前記第1の手段は、周囲温度と、少なくとも1つの前のプリントヘッドサイクルの間に前記複数のプリントヘッドエレメントに供給された複数の入力エネルギーとに基づいて、前記複数の予測温度を求める手段を備える、項目34に記載のサーマルプリンタ。
(36) 前記第1の手段は、前記複数のプリントヘッドエレメントの複数の前の予測温度に基づいて、前記複数の予測温度を求める手段を備える、項目34に記載のサーマルプリンタ。
(37) 前記第1の手段は、前記複数のプリントヘッドエレメントごとに、少なくとも1つの前のプリントヘッドサイクルの開始点での他のプリントヘッドエレメントの少なくとも1つの予測温度に基づいて、予測温度を求める手段を備える、項目34に記載のサーマルプリンタ。
(38) i軸、n軸、およびj軸を有する3次元グリッドを定義する手段であって、該3次元グリッドは、複数の分解能を含み、該複数の分解能の各々は、i軸上の別個の座標を有する平面を定義し、該複数の分解能の各々は、参照点の別個の2次元グリッドを含み、該3次元グリッドにおける該参照点の任意の1つは、i座標、n座標、およびj座標によって一意的に参照され得る手段をさらに備え、
該3次元グリッドにおける該参照点の各々と関連して絶対温度値およびエネルギー値は存在し、
座標(0,n,j)を有する参照点と関連した該絶対温度値は、タイムインターバルnの開始点での位置jのプリントヘッドエレメントの予測温度に対応し、
座標(0,n,j)を有する該参照点と関連した該エネルギー値は、タイムインターバルnの間に位置jにおける該プリントヘッドエレメントに供給する入力エネルギーの量に対応し、該第2の手段は、
該複数の出力濃度および0のi座標を有する複数の参照点と関連した該絶対温度値に基づいて、0の座標iを有する該複数の参照点と関連した該エネルギー値を求めることによって該複数の入力エネルギーを求める手段を備える、項目34に記載のサーマルプリンタ。
(39) 以下の等式
T(i)(n,j)=T(i)(n−1,j)αi+AiE(i)(n−1,j)、および
T(i)(n,j)=(1−2ki)T(i)(n,j)+ki(T(i)(n,j−1)+T(i)(n,j+1))
を用いて相対温度値を計算する手段であって、
ここで、T(i)(n,j)は、座標(i,n,j)を有する参照点と関連した相対温度値を示す、手段と、
以下の等式
Ta(i)(*,*)=I(i+1)(i)Ta(i+1)(*,*)+T(i)(*,*)
を用いて絶対温度値を計算する手段であって、
ただし、i=nresolutions−1、nresolutions−2、...、0であり、
ここで、初期条件は、
Ta(nresolutions)(n,*)=Ts(n)
によって特定され、
nresolutionは、該3次元グリッドにおける該分解能の数であり、Tsは、周囲温度であり、
Ta(i)(n,j)は、座標(i,n,j)を有する参照点と関連した絶対温度値を指し、I(i+1)(i)は、分解能i+1からiへの補間演算子である、手段とをさらに備え、該第2の手段は、
以下の漸化式
E(i)(n,j)=I(i−1)(i)E(i−1)(n,j)
を用いて該複数の入力エネルギーを計算する手段であって、ただし、i=1、2、...、nresolutions−1であり、
初期条件は、
E(0)(n,j)=G(d(n,j))+S(d(n,j))Ta(0)(n,j)
によって特定される手段を備え、
ここで、G(d(n,j))は、前記所望の出力濃度dを未補正入力エネルギーEΓに関係付け、Ta(0)(n,j)は、座標(0,n,j)を有する参照点と関連した絶対温度値であり、S(d(n,j))は、G(d(n,j))の温度依存度の勾配である、項目38に記載のサーマルプリンタ。
(40) 前記複数の入力エネルギーE(0)(n,j)を各タイムインターバルnの間に前記複数のプリントヘッドエレメントに提供する手段をさらに備える、項目39に記載のサーマルプリンタ。
(41) 所望の濃度を有する出力を生成するために、サーマルプリンタのプリントヘッドにおけるプリントヘッドエレメントに供給する入力エネルギーを求める方法であって、該方法は、
(A)該所望の濃度を入力として、および未補正エネルギーを出力として有する第1の関数を用いて該未補正エネルギーを求めるステップと、
(B)該所望の濃度および該プリントヘッドエレメントの温度を入力として、および、補正係数を出力として有する補正関数を用いて該補正係数を求めるステップと、
(C)該入力エネルギーを生成するために、前記補正係数を用いて、該未補正エネルギーを改変するステップとを包含する、方法。
(42) 前記ステップ(C)は、前記未補正エネルギーに前記補正係数を加算するステップを包含する、項目41に記載の方法。
(43) 前記プリントヘッドエレメントの温度は、前記プリントヘッドエレメントの予測温度を含む、項目41に記載の方法。
(44) 前記ステップ(B)は、
(B)(1)前記所望の濃度を入力として、および、感度値を出力として有する感度関数を用いて該感度値を求めるステップと、
(B)(2)該補正係数を生成するために、該感度値に該プリントヘッドエレメントの温度を乗算するステップと
を包含する、項目41に記載のサーマルプリンタ。
(45) 前記ステップ(B)は、
(B)(1)前記所望の濃度を入力として、および、感度値を出力として有する感度関数を用いて該感度値を求めるステップと、
(B)(2)前記プリントヘッドエレメントの温度から基準温度を引くことによって温度差値を求めるステップと、
(B)(3)前記補正係数を生成するために、該感度値に該温度差値を乗算するステップと
を包含する、項目41に記載の方法。
(46) 前記第1の関数は、ガンマ関数の逆を含み、該ガンマ関数は、エネルギーを入力して受
け取り、かつ、該エネルギーが供給された場合に該プリントヘッドエレメントによって生成された濃度を出力として生成し、基準温度関数は、濃度を入力として受け取り、かつ、該プリントヘッドエレメントが該ガンマ関数の測定中に該濃度を生成した場合、該プリントヘッドエレメントの温度を出力として生成し、該ステップ(B)(2)は、
基準温度値を前記所望の濃度を入力とする該基準温度関数の出力として、求めるステップと、
該プリントヘッドエレメントの温度から該基準温度値を引くことによって該温度差値を求めるステップとを包含する、項目45に記載の方法。
(47) 前記ステップ(A)、(B)および(C)は、前記サーマルプリンタの単一のプリントヘッドサイクルの間に実行される、項目41に記載の方法。
(48) サーマルプリンタであって、
プリントヘッドエレメントを備えるプリントヘッドと、
所望の濃度を有する出力を生成するために、サーマルプリンタのプリントヘッドにおける該プリントへッドに供給するための入力エネルギーを求める手段とを備え、該入力エネルギーを求める該手段は、
該所望の濃度を入力として、および、未補正エネルギーを出力として有する第1の関数を用いて、該未補正エネルギーを求める手段と、
該所望の濃度および該プリントヘッドエレメントの温度を入力として、かつ、補正係数を出力として有する補正関数を用いて該補正係数を求める手段と、
該入力エネルギーを生成するために、該補正係数を用いて、該未補正エネルギーを改変する手段と
を備える、サーマルプリンタ。
(49) 前記未補正エネルギーを改変する前記手段は、前記補正係数を前記未補正エネルギーに加算する手段を備える、項目48に記載のサーマルプリンタ。
(50) 前記プリントヘッドエレメントの前記温度は、前記プリントヘッドエレメントの予測温度を含む、項目48に記載のサーマルプリンタ。
(51) 前記補正係数を求める前記手段は、
前記所望の濃度を入力として、および、感度値を出力として有する感度関数を用いて該感度値を求める手段と、
前記補正係数を生成するために、該感度値に前記プリンタヘッドエレメントの温度を乗算する手段と
を備える、項目48に記載のサーマルプリンタ。
(52) 前記補正係数を求める前記手段は、
前記所望の濃度を入力として、および、感度値を出力として有する感度関数を用いて、該感度値を求める手段と、
前記プリントヘッドエレメントの温度から基準温度を引くことによって、温度差値を求める手段と、
該補正係数を生成するために、該感度値に該温度差値を乗算する手段と
を備える、項目48に記載のサーマルプリンタ。
(53) 前記第1の関数は、ガンマ関数の逆であり、該ガンマ関数は、エネルギーを入力して受け取り、かつ、該エネルギーが供給された場合、前記プリントヘッドエレメントによって生成された濃度を出力として生成し、基準温度関数は、濃度を入力として受け取り、かつ、該プリントヘッドエレメントが、該ガンマ関数の測定中に該濃度を生成した場合、該プ
リントヘッドエレメントの温度を出力として生成し、該温度差値を求める手段は、
該基準温度値を該所望の濃度を入力する該基準関数の出力として求める手段と、
該プリントヘッドエレメントの温度から該基準温度値を引くことによって該温度差値を求める手段と
とを備える、項目52に記載のサーマルプリンタ。
【0011】
本発明による追加の局面および実施形態を、以下に、より詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明による1つの局面において、時間の経過にしたがった、プリントヘッド要素へのエネルギーの供給に対するサーマルプリントヘッド要素の熱反応をモデリングした、サーマルプリントヘッドのモデルが提供される。サーマルプリントヘッドのプリントヘッド要素の温度の履歴を、本明細書において、プリントヘッドの「熱履歴」とよぶ。時間の経過に従った、プリントヘッド要素へのエネルギーの分配を、本明細書において、プリントヘッドの「エネルギー履歴」とよぶ。
【0013】
とくに、サーマルプリントヘッドモデルが、以下に基き、各プリントヘッドサイクルの
開始時におけるサーマルプリントヘッド要素の温度予測を生成する:(1)サーマルプリントヘッドの現時点の環境温度、(2)プリントヘッドの熱履歴、および(3)プリントヘッドのエネルギー履歴。本発明による1つの実施形態において、サーマルプリントヘッドモデルが、以下に基き、あるプリントヘッドサイクル開始時におけるある特定のサーマルプリントヘッド要素の温度の予測を生成する:(1)サーマルプリントヘッドの環境温度、(2)プリントヘッド要素の予測温度、および前回のプリントヘッドサイクル開始時における、プリントヘッドの、1つ以上の他のプリントヘッド要素の予測温度、ならびに(3)そのプリントヘッド要素に供給されるエネルギー量、および前回のプリントヘッドサイクルの間に、プリントヘッドの、1つ以上の他のプリントヘッド要素に供給されたエネルギーの量。
【0014】
本発明による1つの実施形態において、所望の濃度を有するスポットを生成するために、1回のプリントヘッドサイクルの間に各プリントヘッド要素に供給されるエネルギーの量は、以下に基いて計算される:(1)プリントヘッドサイクルの間にプリントヘッド要素によって生成される所望の濃度、および(2)プリントヘッドサイクル開始時におけるプリントヘッド要素の予測温度。このような技術を用いて、ある特定のプリントヘッド要素に供給されるエネルギーの量は、従来のサーマルプリンタによって供給されるエネルギー量よりも、多いかまたは少ない、と理解されたい。例えば、濃度ドリフトを補償するために、より少ない量のエネルギーが供給され得る。鮮やかな濃度勾配を生成するために、より多い量のエネルギーが供給され得る。本発明における様々な実施形態によって用いられるモデルは、所望の出力濃度の生成に適切なように、エネルギーの入力を増加あるいは減少させるのに十分なフレキシビリティを有する。
【0015】
サーマルプリントヘッドモデルの使用は、環境温度および前回プリントされた画像内容に対するプリントエンジンの感度を減少させるが、その感度の減少はプリントヘッド要素の熱履歴に明らかに現われる。
【0016】
例えば、図1を参照に、本発明における1つの実施形態による画像プリントのシステムを示す。このシステムは逆プリンタモデル102を含み、逆プリンタモデル102は、特定の画像ソース100をプリントする際に、サーマルプリンタ108の各プリントヘッド要素に供給される入力エネルギー106の量を計算するために用いられる。以下に、図2および図3において詳細を説明するように、サーマルプリンタモデル302は、サーマルプリンタ108に供給される入力エネルギー106に基いて、サーマルプリンタ108によって生成された出力(例えば、印刷画像110)をモデリングする。サーマルプリンタモデル302は、プリントヘッド温度モデルと、媒体応答のモデルの両方を含むことに留意されたい。逆プリンタモデル102は、サーマルプリンタモデル302のインバースである。具体的には、逆プリンタモデル102は、ソース画像100(これは、例えば、2次元のグレースケール、あるいはカラーのデジタル画像であり得る)およびサーマルプリンタのプリントヘッドの現時点の環境温度104とに基いて、各プリントヘッドサイクルへの入力エネルギー106を計算する。サーマルプリンタ108は、入力エネルギー106を用いて、ソース画像100の印刷イメージ110を印刷する。入力エネルギー106は、経過時間により異なり得、また各プリントヘッド要素で異なり得ると理解されたい。同様に環境温度104は、経過時間によって異なり得る。
【0017】
一般的に、逆プリンタモデル102は、(例えば、上記に説明したように、濃度ドリフトに起因するもの、および媒体応答に起因するもののような)サーマルプリンタ108によって通常生成される歪みをモデリングし、印刷画像110を印刷する際に、もし相殺しなければサーマルプリンタ108によって生成される歪みを、逆方向に効果的に相殺するために、ソース画像100を”予め歪ませる”。したがって、サーマルプリンタ108への、入力エネルギー106の供給が、印刷画像110の所望の濃度を生成し、したがって、上記のような問題(例えば濃度ドリフトおよび鮮明さの劣化など)を被らない。とくに、プリント画像110の濃度分布は、従来のサーマルプリンタによって一般的に生成される濃度分布よりも、はるかによくソース画像100の濃度分布と合致する。
【0018】
図3に示すように、サーマルプリンタモデル302は、サーマルプリンタ108(図1)の挙動をモデリングするのに使用される。図2においてさらに詳細に説明されるように、サーマルプリンタモデル302は、逆プリンタモデル102の展開に使用され、逆プリンタモデル102は、入力エネルギー106を発生させてサーマルプリンタ108に供給し、サーマルプリンタ108の熱履歴を考慮に入れることによって、プリント画像110の所望の出力濃度を生成する。さらに、サーマルプリンタモデル302は、以下に述べるように、較正の目的にも使用される。
【0019】
サーマルプリンタモデル302をより詳細に説明する前に、いくつかの符号について述べる。ソース画像100(図1)はr行とc列を有する2次元の濃度分布dsとして見なし得る。本発明による1つの実施形態では、サーマルプリンタ108は、各プリントヘッドサイクルの間、ソース画像100の1行を印刷する。本明細書において、変数nは離散時間インターバル(例えば特定のプリントヘッドサイクル)を表す。したがって、時間インターバルnの開始時におけるプリントヘッドの環境温度104は、本明細書において、Ts(n)として表される。同様に、ds(n)は時間インターバルnの間に印刷されるソース画像100の行の濃度分布を表す。
【0020】
同様に、入力エネルギー106は2次元のエネルギー分布Eとして見なし得ると理解されたい。いま説明した符号を用いると、E(n)は、時間インターバルnの間に、プリントヘッド要素のサーマルプリンタのリニアアレイに与えられる1次元のエネルギー分布を表す。プリントヘッド要素の予測温度は、本明細書において、Taとして表される。時間インターバルnの開始時におけるプリントヘッド要素のリニアアレイの予測温度は、本明細書において、Ta(n)として表される。
【0021】
図3に示すように、サーマルプリンタモデル302は、各時間インターバルnの入力として、(1)時間インターバルnの開始時のサーマルプリントヘッドの環境温度Ts(n)104と、(2)時間インターバルnの間にサーマルプリントヘッド要素に供給される入力エネルギーE(n)106とをとる。サーマルプリンタモデル302は、出力として、1回に1行、予測印刷画像306を生成する。予測印刷画像306は、濃度dp(n)の2次元の分布として見なし得る。サーマルプリンタモデル302は、(図2において、以下により詳細に述べる)ヘッド温度モデル202と、媒体濃度モデル304とを含む。媒体濃度モデル304は、ヘッド温度モデル202によって生成された予測温度Ta(n)204と、入力エネルギーE(n)106とを入力としてとり、予測印刷画像306を出力として生成する。
【0022】
図2を参照して、逆プリンタモデル102の1つの実施形態を示す。逆プリンタモデル102は、(1)時間インターバルnの開始時におけるプリントヘッドの環境温度104のTs(n)と、(2)時間インターバルnの間に印刷されるソース画像100の行の濃度ds(n)とを、各時間インターバルnへの入力として受け取る。逆プリンタモデル102は入力エネルギーE(n)106を出力として生成する。
【0023】
逆プリンタモデル102は、ヘッド温度モデル202と、逆媒体濃度モデル206とを含む。一般的に、ヘッド温度モデル202は、印刷画像110が印刷される間に、時間の経過に従った、プリントヘッド要素の温度を予測する。具体的には、ヘッド温度モデル202は、(1)現時点の環境温度Ts(n)104と、(2)時間インターバル(n−1)の間にプリントヘッド要素に供給された入力エネルギーE(n−1)とに基いて、特定
の時間インターバルnの開始時におけるプリントヘッド要素の予測温度Ta(n)を出力する。
【0024】
概して、逆媒体濃度モデル206は、(1)タイムインターバルnの開始点での各プリントヘッドエレメントの予測温度Ta(n)と、(2)タイムインターバルnの間のプリントヘッドエレメントによって出力されるべき所望の濃度ds(n)100とに基づいて、タイムインターバルnの間の各プリントヘッドエレメントに供給するエネルギーE(n)106の量を計算する。入力エネルギーE(n)106は、次のタイムインターバルn+1の間に用いるためにヘッド温度モデル202に供給される。逆媒体濃度モデル206は、従来のサーマルプリンタによって用いられる技術とは異なり、エネルギーE(n)106を計算する際に、プリントヘッドエレメントの現在の(予測)温度Ta(n)と温度依存媒体応答の両方を考慮に入れ、これにより、熱履歴および他のプリンタによって誘導された(printer−induced)欠陥の補正を改善することが理解されるべきである。
【0025】
図2に明示されないが、ヘッド温度モデル202が、予測された温度Ta(n)の少なくともいくつかを内部に格納し得、従って、事前に予測された温度(Ta(n−1)等)は、さらに、Ta(n)を計算する際に用いるためのヘッド温度モデル202への入力であると考えられ得ることが理解されるべきである。
【0026】
図4を参照して、逆媒体濃度モデル206のある実施形態(図2)が、ここで、より詳細に記載される。逆媒体濃度モデル206は、各タイムインターバルnの間に入力として、(1)ソースイメージ濃度ds(n)100と、(2)タイムインターバルnの開始点での各サーマルプリントヘッドエレメントの予測温度Ta(n)とを受取る。逆媒体濃度モデル206は、入力エネルギーE(n)106を出力として生成する。
【0027】
換言すると、逆媒体濃度モデル206によって定義された伝達関数は、2次元関数E=F(d,Ta)である。非サーマルプリンタにおいて、入力エネルギーEおよび出力濃度dに関する伝達関数は、通常、本明細書中でガンマ関数と呼ばれる1次元関数d=Γ(E)である。ガンマ関数等のサーマルプリンタは、一意的ではない。なぜなら、出力濃度dは、入力エネルギーEに依存するだけでなく、現在のサーマルプリントヘッドエレメント温度にも依存するからである。しかしながら、ガンマ関数d=Γ(E)が測定される際にプリントヘッドエレメントの温度を表す第2の関数TΓ(d)が導入された場合、関数Γ(E)とTΓ(d)との組み合わせが、サーマルプリンタの応答を一意的に表す。
【0028】
ある実施形態において、上述の関数E=F(d,Ta)は、等式1
E=Γ−1(d)+S(d)(Ta−TΓ(d)) (等式1)
によって示される形式を用いて表される。
【0029】
この等式は、所望の濃度を提供する正確なエネルギーの(Ta−TΓ(d))のテイラー級数展開の最初の2項と解釈され得る。等式1において、Γ−1(d)は、上述の関数Γ(E)の逆であり、S(d)は、任意の形態(その1例がより詳細に後述される)をとり得る感度関数である。等式1は、Γ−1(d)、S(d)、およびTΓ(d)という3つの1次元関数を用いて2次元関数E=F(d,Ta)を表すことに留意されたい。本発明のある実施形態において、逆媒体濃度モデル206は、図4に図式的に示されるように、入力エネルギーE(n)106を計算するために等式1を用いる。プリントヘッドエレメントの基準温度TΓ(d)408は、温度差ΔT(n)を求めるために、プリントヘッドエレメントの現在の(予測)温度Ta(n)(これは、例えば、ヘッド温度モデル202によって生成されるか、または、実際の温度測定値であり得る)から引かれる。温度差ΔT(n)は、補正係数ΔE(n)を生成するために、感度関数S(d)406の出力で乗算され、かつ、入力エネルギーE(n)106を生成するために、Γ−1(d)404によって出力された未補正エネルギーEΓ(n)に加算される。補正係数ΔE(n)は、計算されて、ログドメインまたは線形ドメインにおいて計算および適用され得、対応して、較正が実行されることが理解されるべきである。
【0030】
本発明のある実施形態による等式1の代替的実現が、ここで記載される。等式1は、等式2
E=Γ−1(d)−S(d)TΓ(d)+S(d)Ta (等式2)
として書き直され得る。
【0031】
ある実施形態において、項Γ−1(d)−S(d)TΓ(d)は、1つの1次元関数G(d)として表され、かつ格納され、これにより、等式2は、
E=G(d)+S(d)Ta (等式3)
として書き直され得る。実際、等式3を用いて、Eの値は、dの値に基づいて、2つのルックアップG(d)およびS(d)を用いて計算され得る。このような表現は、種々の理由で有利であり得る。例えば、2次元関数としてのE=F(d,Ta)をソフトウェアおよび/またはハードウェアで直接実現すると、エネルギーEを計算するために、大容量のストレージ、または著しい計算の数が必要とされ得る。対照的に、1次元関数G(d)およびS(d)は、比較的少量のメモリを用いて格納され得、かつ、逆媒体濃度モデル206は、比較的少数の計算を用いて、等式3の結果を計算し得る。
【0032】
ヘッド温度モデル202のある実施形態(図2〜図3)は、ここで、より詳細に記載される。図5Aを参照して、サーマルプリントヘッド500の模式的側面図が示される。プリントヘッド500は、ヒートシンク502a、セラミック502b、およびグレーズ(glaze)502cを含むいくつかのレイヤを備える。グレーズ502cの下に、プリントヘッドエレメント520a〜i線形アレイがある。説明を容易にするために、図5Aには9個の加熱エレメント520a〜iしか示されないが、通常のサーマルプリントヘッドは、インチごとに数百の、非常に小さく、かつ、接近した間隔のプリントヘッドエレメントを有することが理解されるべきである。
【0033】
上述のように、プリントヘッドエレメント520a〜iを加熱するために、これらにエネルギーが供給され、これにより、プリントヘッドエレメントは、出力媒体に顔料を移送する。プリントヘッドエレメント520a〜iによって生成された熱は、レイヤ502a〜cを通じて上方に拡散する。
【0034】
個々のプリントヘッドエレメント520a〜iの温度をある期間にわたって(例えば、デジタルイメージが印刷されている間)、直接測定することは、困難か、または、過度な負担がかかり得る。従って、本発明のある実施形態において、プリントヘッドエレメント520a〜iの温度をある期間にわたって予測するために、プリントヘッドエレメント520a〜iの温度を直接測定するのではなく、ヘッド温度モデル202が用いられる。特に、ヘッド温度モデル202は、(1)プリントヘッド500の周囲温度と、(2)プリントヘッドエレメント520a〜iに事前に供給されたエネルギーとに関する情報を用いて、プリントヘッドエレメント520a〜iの熱履歴をモデル化することによって、プリントヘッドエレメント520a〜iの温度を予測し得る。プリントヘッド500の周囲温度は、ヒートシンク512上の特定のポイントにおける温度Ts(n)を測定する温度センサ512を用いて測定され得る。
【0035】
ヘッド温度モデル202は、種々の方法のいずれかで、プリントヘッドエレメント520a〜iの熱履歴をモデル化し得る。例えば、本発明のある実施形態において、ヘッド温度モデル202は、プリントヘッドエレメント520a〜iの現在の温度を予測するために、プリントヘッド500のレイヤを通じて、プリントヘッドエレメント520a〜iから温度センサ512への熱拡散のモデルと共に、温度センサ512によって測定された温度Ts(n)を用いる。しかしながら、ヘッド温度モデル202は、プリントヘッドエレメント520a〜iの温度を予測するために、プリントヘッド500を通る熱拡散をモデル化する以外の技術を用い得ることが理解されるべきである。
【0036】
図5Bを参照して、本発明のある実施形態による、ヘッド温度モデル202によって用いられる3次元の空間および時間グリッド530が図式的に示される。ある実施形態において、マルチ分解能熱伝達モデルは、プリントヘッド500を通る熱の伝播をモデル化するために、グリッド530を用いる。
【0037】
図5Bに示されるように、グリッド530の1つのディメンジョンがi軸でラベル標示される。グリッド530は、3つの分解能532a〜cを含み、各々は、iの別個の値に対応する。図5Bに示されるグリッド530に関して、i=0は、分解能532cに対応し、i=1は、分解能532bに対応し、かつ、i=2は、分解能532aに対応する。従って、変数iは、本明細書中で「分解能の数(resolution number)」と呼ばれる。3つの分解能532a〜cが図5Bのグリッド530に示されるが、これは、例示にすぎず、本発明を限定するものではない。むしろ、ヘッド温度モデル202によって用いられる時間グリッドおよび空間グリッドは、任意の数の分解能を有し得る。本明細書中で用いられるように、変数nresolutionsは、ヘッド温度モデル202によって用いられる空間および時間グリッドの分解能の数を意味する。例えば、グリッド530に関するnresolutions=3が、図5Bに示される。iの最大値は、nresolutions−1である。
【0038】
さらに、プリントヘッド500において、レイヤと同じ数の分解能があり得るが(図5A)、これは、本発明の必要条件ではない。むしろ、材料の物理的レイヤよりも多いか、または少ない数の分解能があり得る。
【0039】
3次元グリッド530の分解能532a〜cの各々は、参照点の2次元グリッドを含む。例えば、分解能532cは、集合的に参照番号534と呼ばれる参照点の9×9のアレイを含む(説明を容易にするために、分解能532cにおける参照点のただ1つのみが参照番号534でラベル標示される)。同様に、分解能532bは、集合的に参照番号536と呼ばれる参照点の3×3のアレイを含み、分解能532aは、単一の参照点538を含む1×1のアレイを含む。
【0040】
図5Bにさらに示されるように、j軸は、分解能532a〜cの各々の1つのディメンジョン(高速走査方向)をラベル標示する。ある実施形態において、j軸は、j=0で開始して、左から右へ、参照点ごとにjmaxの最大値まで1づつ大きくなって伸びる。図5Bにさらに示されるように、n軸は、分解能532a〜cの各々における第2のディメンジョンをラベル標示する。ある実施形態において、n軸は、n=0で開始して、対応する矢印が示す方向に(すなわち、図5Bの平面に対して)参照点ごとに1つづつ大きくなって伸びる。説明を容易にするために、以下の記載において、分解能iにおけるnの特定の値は、分解能iにおける参照点の対応する「ロウ」を意味すると述べられる。
【0041】
ある実施形態において、n軸は、連続したプリントヘッドサイクル等の別個のタイムインターバルに対応する。例えば、n=0は、第1のプリントヘッドサイクルに対応し得、n=1は、後続のプリントヘッドサイクルに対応し得る等である。その結果、ある実施形態において、nディメンジョンは、本明細書中で、空間および時間グリッド530の「時間」ディメンジョンと呼ばれる。サーマルプリンタ108がオンにされるか、または、デジタルイメージの印刷が開始された場合、プリントヘッドサイクルは、例えば、n=0で開始して、順次、番号付けされ得る。
【0042】
しかしながら、nは、概して、タイムインターバルを意味し、この持続時間は、単一のプリントヘッドサイクルのものと等しいか、または等しくなくてもよいことが理解されるべきである。さらに、nが対応するタイムインターバルの持続時間は、異なった分解能532a〜cごとに異なり得る。例えば、ある実施形態において、分解能532c(i=0)における変数nによって参照されるタイムインターバルは、単一のプリントヘッドサイクルに等しく、これに対して、他の分解能532a〜bにおける変数nによって参照されるタイムインターバルは、単一のプリントヘッドサイクルよりも長い。
【0043】
ある実施形態において、分解能532c(この場合、i=0)における参照点534は、特別な重要性を有する。この実施形態において、分解能532cにおける参照点の各ロウは、プリントヘッド500におけるプリントヘッドエレメント520a〜iの線形アレイに対応する(図5A)。例えば、i=0およびn=0の場合の参照点534a〜iのロウを想定されたい。ある実施形態において、これらの参照点534a〜iの各々は、図5Aに示されるプリントヘッドエレメント520a〜iの1つに対応する。例えば、参照点534aは、プリントヘッドエレメント520aに対応し得、参照点534bは、プリントヘッドエレメント520bに対応し得る等である。分解能532cにおける参照点の残りのロウの各々と、プリントヘッドエレメント520a〜iとの間に同じ対応関係が当てはまり得る。参照点のロウの範囲内の参照点と、プリントヘッド500におけるロウに配置されたプリントヘッドエレメントとの間に、この対応関係に基づいて、ある実施形態において、jディメンジョンは、空間および時間グリッド530の「空間」ディメンジョンと呼ばれ得る。ヘッド温度モデル202によって、この対応関係がどのように用いられ得るかの例は、より詳細に後述される。
【0044】
jおよびnディメンジョンのこれらの意味を用いることによって、分解能532cにおける参照点534(この場合、i=0)の各々は、時間の特定のポイント(例えば、特定のプリントヘッドサイクルの開始点)でのプリントヘッドエレメント520a〜iの特定の1つに対応することが見出され得る。例えば、j=3およびn=2は、タイムインターバルn=2の開始点での参照点540(プリントヘッドエレメント520dに対応する)を意味する。
【0045】
ある実施形態において、分解能532c(i=0)における座標(n,j)の参照点534の各々と関連した絶対温度値Taは、タイムインターバルnの開始点でのプリントヘッドエレメントjの予測絶対温度を表す。さらに、分解能532c(i=0)における座標(n,j)の参照点534の各々と関連したエネルギー値Eは、タイムインターバルnの間にプリントヘッドエレメントjに供給されるべきエネルギーの量を表す。
【0046】
より詳細に後述されるように、本発明のある実施形態において、ヘッド温度モデル202は、タイムインターバルnごとの開始点での分解能532cのロウnにおける参照点と関連した絶対温度値Taを更新し、これにより、タイムインターバルnの開始点でのプリントヘッドエレメント520a〜iの絶対温度を予測する。さらに詳細に後述されるように、ヘッド温度モデル202は、更新された温度値Taおよび所望の出力濃度dsに基づいて、タイムインターバルnごとの開始点での分解能532cのロウnにおける参照点と関連したエネルギー値Eを更新する。その後、所望の濃度を有する出力を生成するために、プリントヘッドエレメント520a〜iにエネルギーEが供給される。
【0047】
グリッド530の分解能532cの各ロウにおける参照点と、プリントヘッド500におけるプリントヘッドエレメントとの間の1対1の対応関係は必要ないことが理解されるべきである。例えば、そのような各ロウにおける参照点の数が、プリントヘッドエレメントの数よりも多いか、または少なくてもよい。分解能532cの各ロウにおける参照点の数がプリントヘッドエレメントの数と等しくない場合、参照点の温度予測は、例えば、補間またはデシメーションの任意の形態を用いて、プリントヘッドエレメントにマッピングされ得る。
【0048】
より一般的には、分解能532c(i=0)は、プリントヘッドエレメント520a〜iのいくつか、またはすべてを含む領域をモデル化する。モデル化される領域は、例えば、プリントヘッドエレメント520a〜iによって占められる領域と等しいか、これよりも大きいか、またはこれよりも小さくなり得る。分解能532cの各ロウにおける参照点の数は、モデル化された領域におけるプリントヘッドエレメントの数よりも大きいか、少ないか、またはこれと等しくなり得る。例えば、モデル化された領域が、プリントヘッドエレメント520a〜iのすべてによって占められる領域よりも大きい場合、分解能532cにおける各ロウの各終了点での1つ以上の参照点は、第1のプリントヘッドエレメント520aの前、および最後のプリントヘッドエレメント520iの後に伸びる「バッファゾーン」に対応し得る。バッファゾーンが用いられるある方法は、等式7に関してさらに詳細に後述される。
【0049】
ヘッド温度モデル202は、種々の方法のいずれかで、参照点534の温度予測を生成し得る。例えば、図5Bに示されるように、グリッド530は、さらなる参照点536および538を含む。より詳細に後述されるように、ヘッド温度モデル202は、参照点536および538の中間温度およびエネルギー値を生成し、これは、参照点534と関連した最終の温度予測Taおよび入力エネルギーEを生成するために用いられる。参照点536および538と関連した絶対温度値Taは、プリントヘッド500内の絶対温度の予測に対応し得るが、対応しなくてもよい。このような温度値は、例えば、分解能532cにおける参照点534の絶対温度予測Taを生成する際に用いるために有用な中間値であるにすぎない。同様に、参照点536および538と関連したエネルギー値Eは、プリントヘッド500内の熱の蓄積の予測に対応し得るが、対応しなくてもよい。このようなエネルギー値は、例えば、分解能532cにおける参照点534の温度値を生成する際に用いるために有用な中間値であるにすぎない。
【0050】
ある実施形態において、相対温度値Tは、空間グリッド530における参照点の各々とさらに関連付けられ得る。特定の分解能iにおける参照点の相対温度値Tは、上方の分解能i+1における対応する参照点の絶対温度に対して相対する。後述されるように、「対応する」参照点は、分解能i+1における補間された参照点のことであり得る。
【0051】
特定の分解能における参照点のn座標およびj座標は、記号表記(n,j)を用いて表現される。本明細書中で用いられるように、上付き文字(i)は、分解能の数(すなわち、iの値)を示す。従って、式E(i)(n,j)は、分解能iにおける座標(n,j)を有する参照点と関連したエネルギー値を意味する。同様に、Ta(i)(n,j)は、分解能iにおける座標(n,j)を有する参照点と関連した絶対温度値を意味し、T(i)(n,j)は、分解能iにおける座標(n,j)を有する参照点と関連した相対温度値を意味する。分解能532c(ただし、i=0)における参照点には特別の意味を有するので、ある実施形態において、表現E(0)(n,j)は、タイムインターバルnの間のプリントヘッドエレメントjに供給された入力エネルギーの量を意味する。同様に、Ta(0)(n,j)は、タイムインターバルnの開始点でのプリントヘッドエレメントjの予測絶対温度を意味し、T(0)(n,j)は、タイムインターバルnの開始点でのプリントヘッドエレメントjの予測相対温度を意味する。
【0052】
以下の記載において、サフィックス(*,*)は、時間ディメンジョンおよび空間ディメンジョンのすべての参照点を意味する。例えば、E(k)(*,*)は、分解能kにおけるすべての参照点のエネルギーを示す。記号表記I(k)(m)は、分解能kから分解能mまでの補間またはデシメーション演算子を示す。ここで、k>m,I(k)(m)は、補間演算子として機能し、k<m,I(k)(m)は、デシメーション演算子として機能する。グリッド530の特定の分解能の2次元アレイの値(例えば、E(k)(*,*))に適用された場合、上述のように、演算子I(k)(m)は、新しい値のアレイを生成するために、kおよびmの値に基づいて、空間(すなわち、j軸に沿う)ディメンジョンおよび時間(すなわち、n軸に沿う)ディメンジョンの両方を演算する2次元補間またはデシメーション演算子である。演算子I(k)(m)を適用することによって生成されたアレイにおける値の数は、グリッド530の分解能mにおける参照点の数に等しい。演算子I(k)(m)の適用は、プレフィクスの形態で示される。例えば、I(k)(m)E(k)(*,*)は、エネルギーE(k)(*,*)への演算子I(k)(m)の適用を示す。演算子I(k)(m)の使用は、後述される特定の例により、さらに明らかになる。
【0053】
演算子I(k)(m)は、任意の補間法またはデシメーション法を用い得る。例えば、本発明のある実施形態において、演算子I(k)(m)によって用いられるデシメーション関数は、算術平均であり、補間法は、線形補間である。
【0054】
相対温度値T(i)(n,j)は、レイヤi+1における「対応する」絶対温度値Ta(i+1)に対して相関することがすでに述べられた。ここで、この「対応する」絶対温度値が、より厳密には(I(i+1)(i)Ta(i+1))(n,j)を意味し、アレイにおける座標(n,j)における参照点の絶対温度値は、補間演算子I(i+1)(i)をTa(i+1)(*,*)に適用することによって生成されることが明らかである。
【0055】
ある実施形態において、ヘッド温度モデル202は、等式4
T(i)(n,j)=T(i)(n−1,j)αi+AiE(i)(n−1,j) (等式4)
を用いて、前の相対温度値と、前のタイムインターバルにおいて蓄積されたエネルギーとの重み付きコンビネーション(weighted combination)として相対温度値T(i)(n,j)を生成する。
【0056】
等式4における変数αiおよびAiは、より詳細に後述されるように、種々の方法のいずれかで推定され得るパラメータである。パラメータαIは、プリントヘッドの自然冷却を表し、パラメータAiは、蓄積されたエネルギーに基づく、プリントヘッドの加熱を表す。ヘッド温度モデル202は、さらに、等式5
Ta(nresolutions)(n,*)=Ts(n) (等式5)
および漸化式6
Ta(i)(*,*)=I(i+1)(i)Ta(i+1)(*,*)+T(i)(*,*) (等式6)
(ただし、i=nresolutions−1、nresolutions−2、...0である)を用いて絶対温度値Ta(i)(n,j)をさらに生成する。
【0057】
より具体的には、Tanresolutions(n,*)は、等式5によってTs(n)に初期化され、絶対温度は、温度センサ512によって測定される。等式6は、上述の分解能の相対温度の和として分解能ごとに絶対温度値Taを計算する。
【0058】
ある実施形態において、等式4で生成された相対温度T(i)(n,j)は、等式7
【0059】
【数1】
(等式7)(ただし、j=0〜jmax)
によってさらに改変される。
【0060】
等式7は、プリントヘッドエレメント間の横方向の熱伝達を表す。ヘッド温度モデルに横方向の熱伝達を算入した結果、逆プリンタモデルにおけるイメージの横方向の鮮鋭化を補償する。等式7は、(参照点j、およびこれに最隣接する、位置j+1およびj−1における2つの最隣接点からなる)3点のカーネル(three−point kernel)を用いるが、これは、本発明を限定しないことが理解されるべきである。むしろ、任意のサイズのカーネルが、等式7において用いられ得る。境界条件がT(i)(n,j)に提供されなければならず、ここで、j=0およびj=jmaxであり、これにより、T(i)(n,j)の値(ただし、j=−1およびj=jmax+1)は、等式7において用いるために提供され得る。例えば、T(i)(n,j)は、0に設定され得る(ただし、j=−1およびj=jmax+1)。あるいは、T(i)(n,−1)に、T(i)(n,0)の値が割り当てられ得、T(i)(n,jmax+1)にT(i)(n,jmax)の値が割り当てられ得る。これらの境界条件は、例示のために提供されるにすぎず、本発明を限定するのではなく、むしろ、任意の境界条件が用いられてもよい。
【0061】
ある実施形態において、エネルギーE(0)(n,j)(すなわち、タイムインターバルnの間、プリントヘッドエレメント520a〜iに提供されるエネルギー)が、等式8
E(0)(n,j)=G(d(n,j))+S(d(n,j))Ta(0)(n,j)
(等式8)
を用いて計算される。この等式8は、等式3から導き出される。
【0062】
等式8によって定義された値E(0)(n,j)は、E(i)(n,j)(ただし、i>0)の値が等式9
【0063】
【数2】
(等式9)
(ただし、i=1、2、...、nresolutions−1)を用いて再帰的に計算されることを可能にする。
【0064】
等式4〜等式9が計算される順序は、これら等式間の依存関係によって決まる。等式4〜等式9を適切な順序で計算する技術の例は、以下において詳細に記載される。
【0065】
ヘッド温度モデル202および媒体濃度モデル304は、以下のように較正され得るいくつかのパラメータを含む。再び、図1を参照して、ターゲットイメージ(ソースイメージ100として利用される)を印刷して、印刷イメージ110を生成するためにサーマルプリンタ108が用いられ得る。ターゲットイメージを印刷する間、(1)ターゲットイメージを印刷するために、サーマルプリンタ108によって用いられるエネルギーと、(2)所定の時間にわたるプリントヘッドの周辺温度とが測定され得る。測定されたエネルギーおよび周辺温度は、その後、入力としてサーマルプリンタモデル302に提供される。サーマルプリンタモデル302によって予測された予測印刷イメージ306の濃度分布は、ターゲットイメージを印刷することによって生成された印刷イメージ110の実際の濃度分布と比較される。ヘッド温度モデル202および媒体濃度モデル304のパラメータは、その後、この比較に基づいて改変される。このプロセスは、予測印刷イメージ110の濃度分布が、ターゲットイメージに対応する印刷イメージ306のものと十分に整合するまで繰返される。これにより、ヘッド温度モデル202および媒体濃度モデル304のパラメータが取得され、その後、ヘッド温度モデル202および逆プリンタモデル102の逆媒体濃度モデル206(図2)において用いられる。これらのモデルにおいて用いられ得るパラメータの例は、以下において、より詳細に記載される。
【0066】
本発明のある実施形態において、逆媒体モデルに関してすでに述べられたガンマ関数Γ(E)が、等式10
【0067】
【数3】
(等式10)
に示される非対称S型関数としてパラメータ化される。ここで、ε=E−E0であり、E0は、エネルギーオフセットである。a=0およびb=0である場合、等式10に示されるΓ(E)は、エネルギーE0に関する対称関数であり、E=E0における勾配dmaxσを有する。しかしながら、サーマルプリンタの典型的なガンマ曲線は、非対称的であることが多く、0ではないaおよびbの値でより良好に表される。図4を参照してすでに記載された関数TΓ(d)は、種々の方法のいずれかで推定され得る。関数TΓ(d)は、例えば、ガンマ関数Γ(E)が測定された場合の、プリントヘッドエレメントの温度の推定であり得る。このような推定は、ヘッド温度モデルから取得され得る。
【0068】
ある実施形態において、感度関数S(d)は、等式11
【0069】
【数4】
(等式25)
に示されるように、p次多項式としてモデル化される。
【0070】
好ましい実施形態において、3次多項式p=3が用いられるが、これは、本発明を制限するものではない。むしろ、感度関数S(d)は、任意の次数の多項式であってよい。
【0071】
等式10および等式11に示されたガンマおよび感度関数が、例示のためにのみ示され、本発明を限定するものではないことが理解されるべきである。むしろ、ガンマおよび感度関数の他の数式が用いられてもよい。
【0072】
ヘッド温度モデル202がプリントヘッド500の熱履歴をモデル化する態様が一般的に記載されたが、上述の技術の適用に関するある実施形態が、ここで、より詳細に記載される。特に、図6Aを参照して、本発明のある実施形態によるソースイメージ100(図1)を印刷するために用いられるプロセス600のフローチャートが示される。より具体的には、プロセス600は、入力エネルギー106を生成し、ソースイメージ100および周囲温度104に基づいてサーマルプリンタ108に供給するために、逆プリンタモデル102によって実行され得る。サーマルプリンタ108は、その後、入力エネルギー106に基づいて印刷イメージ110を印刷し得る。
【0073】
上述のように、ヘッド温度モデル202は、相対温度T、絶対温度Ta、およびエネルギーEの値を計算し得る。上述のように、これらの計算を実行するための等式の相互関係は、計算が実行され得る順序を決める。プロセス600は、適切な順序でこれらの計算を実行し、これにより、入力エネルギーE(0)(n,*)を計算して、各タイムインターバルnの間、プリントヘッドエレメント520a〜iに提供する。本明細書中で用いられるように、別個のタイムインターバルnの特定の分解能におけるサフィックス(n,*)は、すべての参照点に関して(絶対温度Ta、相対温度T、またはエネルギーE)値
を意味する。例えば、E(i)(n,*)は、別個のタイムインターバルnの間の分解能iにおけるすべての参照点(すなわち、jのすべての値の)のエネルギー値を意味する。プロセス600は、例えば、任意の適切なプログラム言語を用いてソフトウェアにおいて実現され得る。
【0074】
ある実施形態において、プロセス600は、タイムインターバルnごとに、タイムインターバルnから、および前のタイムインターバルn−1からのエネルギーおよび温度のみを参照する。従って、これらのすべてのnの量の持続的格納を維持することは必要でない。2次元アレイ、T(i)(*,*)、Ta(i)(*,*)、およびE(i)(*,*)は、各々、2つの1次元アレイでしか置換できず、下付き文字「new」および「old」は、時間ディメンジョンの引数nおよびn−1とそれぞれ置換される。特に、以下における1次元アレイは、中間値をタイムインターバルnに格納するために用いられる。
【0075】
(1)Told(i)(*)、前の印刷タイムインターバル(すなわち、印刷タイムインターバルn−1)からの分解能iにおけるすべての参照点の相対温度を格納するためのアレイである。Told(i)(*)は、T(i)(n−1,*)と等価である。
【0076】
(2)Tnew(i)(*)、現在のタイムインターバルnの分解能iにおけるすべての参照点の相対温度を格納するためのアレイである。Tnew(i)(*)は、T(i)(n,*)と等価である。
【0077】
(3)STold(i)(*)、前のタイムインターバルn−1からの分解能iにおけるすべての参照点の絶対温度を格納するためのアレイである。STold(i)(*)は、Ta(i)(n−1,*)と等価である。
【0078】
(4)STnew(i)(*)、現在のタイムインターバルn−1の分解能iにおけるすべての参照点の絶対温度を格納するためのアレイ。STnew(i)(*)は、Ta(i)(n,*)と等価であり、
(5)Eacc(i)(*)、現在のタイムインターバルnの分解能iにおけるすべての参照点の現在蓄積されたエネルギーを格納するためのアレイ。Eacc(i)(*)は、E(i)(n,*)と等価である。
【0079】
補間演算子Iknが上述の5つの1次元アレイのいずれかに適用された場合、空間ドメインの1次元補間またはデシメーションをもたらすことに留意されたい。時間的保管は、明示的に格納されたTまたはSTの「old」および「new」値を参照することによって別々に実行される。
【0080】
プロセス600は、定期的な初期化()を呼出すことによって開始する(ステップ602)。初期化()ルーティンは、例えば、(1)Tnew(i)(*)およびEacc(i)(*)をiのすべての値(すなわち、i=0〜i=nresolutions−1まで)について、0に初期化し、かつ、(2)は、i=0〜i=nresolutionsまでのすべてiの値について、STnew(i)(*)をTs(温度センサ512から読み出す温度)に初期化する。
【0081】
プロセス600は、印刷されるべきソースイメージ100の第1のプリントヘッドサイクルに対応して、nから0の値を初期化する(ステップ604)。プロセス600は、ソースイメージ100全体が印刷されたかどうかを決定するために(ステップ606)、nの値をnmaxの値(ソースイメージ100を印刷するために必要される印刷ヘッドサイクルの総数)と比較する。nがnmaxよりも大きい場合、プロセス600は終了する(610)。nがnmaxよりも大きくない場合、nresolutions−1の値でサブルーチンのCompute_Energy()が呼出される(ステップ608)。
【0082】
Compute_Energy(i)は、入力として分解能の数iを用い、上述の等式により、入力エネルギーEacc(i)(*)を計算する。図6Bを参照して、ある実施形態において、再帰プロセス620を用いてCompute_Energy()が実現される。以下においてより詳細に記載されるように、Eacc(i)(*)を計算するうちに、プロセス620は、さらに、エネルギーEacc(i−1)、Eacc(i−2)(*)、...Eacc(0)(*)の各々を特定のパターンで再帰的に計算する。エネルギーEacc(0)(*)が計算された場合、これらのエネルギーは、プリントヘッドエレメント520a〜iに供給され、所望の出力濃度を生成し、nの値がインクリメントされる。
【0083】
より具体的には、プロセス620は、Tnew(i)の値をこれに割り当てることによってアレイTold(i)を初期化する(ステップ622)。プロセス620は、等式4を用いて一時的アレイTtemp(i)に値を割り当てることによって時間での相対温度を更新する(ステップ624)。プロセス620は、等式7を用いて、Tnew(i)に値を割り当てることによって空間での相対温度を更新する(ステップ626)。
【0084】
プロセス620は、その後、現在および前の絶対温度STnew(i)(*)およびSTold(i)(*)を計算する。より具体的には、STold(i)(*)の値は、STnew(i)(*)に設定される(ステップ627)。その後、プロセス620は、等式6を用いて、分解能iにおける相対温度、および分解能i+1における絶対温度に基づいて、分解能iにおける現在の絶対温度を更新する(ステップ628)。補間演算子I(i+1)(i)は、STnew(i+1)(*)に適用され、補間された絶対温度値のアレイを生成する。このアレイのディメンジョンは、分解能iの空間ディメンジョンと等しい。補間された絶対温度値のこのアレイは、Tnew(i)(*)に加算されて、STnew(i)(*)を生成する。このようにして、絶対温度値は、レイヤi+1からレイヤiまで下方に向かって伝播する。絶対温度は、Compute_Energy()によって実行される再帰の結果として、特定のパターンの連続レイヤ間で所定の時間にわたって下方に向かって伝播することが理解されるべきである。
【0085】
プロセス620は、エネルギーが、現在、底の(最精細)分解能について計算されているかどうかを決定するために、i=0かどうかを試験する(ステップ630)。この試験は、下方のレイヤの基準絶対温度を提供するために、絶対温度が時間で補間される必要があるかどうかを決定するために必要である。i=0である場合、絶対温度は、最精細分解能について計算され、時間的保管は必要とされない。
【0086】
iが0ではない場合、時間的保管が必要とされる。量dec_factor(i)は、分解能iにおける時間ディメンジョンの参照点の数に対する、分解能i−1における数の比率を表す。しかしながら、dec_factor(i)の補間された絶対温度を生成することが必要である。dec_factor(i)は、iの値ごとに任意の値を有し得ることが理解されるべきであり、例えば、dec_factor(i)は、iの値ごとに1と等しくなり得、この場合、当業者に明らかであるように、後述される種々のステップが簡略化され得るか、または、省略され得る。同時に、エネルギーEacc(i)(*)は、時間ディメンジョンのすべてのdec_factor(i)の補間点について、エネルギーEacc(i−1)(*)を蓄積させることによって計算される。これらの2つのタスクは、以下のステップによって達成される。
【0087】
エネルギーEacc(i)(*)は、0に初期化される(ステップ634)。アレイStep(i)(*)は、ステップ値をSTold(i)とSTnew(i)との間の補間に格納するために用いられる。Step(i)(*)における値は、STnew(i)とSTold(i)との間の差をdec_factor(i)で除算することによって初期化される(ステップ636)。
【0088】
図6Cを参照して、プロセス620は、dec_factor(i)反復を有するループに入る(ステップ638)。Step(i)をSTold(i)に加算することによって、STnew(i)に補間値が割り当てられる(ステップ640)。Compute_Energy()は、分解能i−1のエネルギーを計算するために再帰的に呼出される(ステップ642)。計算された分解能i−1エネルギーを取得した後、現在の分解能iのエネルギーEacc(i)(*)が、等式9を用いて部分的に計算される(ステップ644)。
【0089】
等式9において、記号表記は、分解能i−1におけるエネルギーの2次元デシメーションを空間および時間で示すことに留意されたい。Eacc(i−1)(*)は、空間ディメンジョンでの分解能i−1における参照点のエネルギーを表す1次元アレイであるので、ステップ644は、時間ディメンジョンのEacc(i)(*)を明示的に平均化することにより、段階的に同じ結果を達成する。ステップ638において開始されたループがそのすべての反復を完了するまで、エネルギーEacc(i)(*)全体は、計算されないことが理解されるべきである。
【0090】
STold(i)には、ステップ638において開始されたループの次の反復に備えて、STnew(i)の値が割り当てられる(ステップ646)。ループは、ステップ640〜ステップ646を、合計でdec_factor(i)回実行する。ループの完了時点に(ステップ648)、分解能iのすべてのエネルギーEacc(i)(*)が計算され、すべての必要な絶対温度が計算されており、かつ、すべての必要な絶対温度がより精細な分解能に向かって下方に伝播している。従って、Compute_energy(i)は、終了し(ステップ650)、および制御を開始したCompute_Energy(i+1)への制御に戻る(ステップ644)。制御が最終的にレベルi=nresolutions−1に戻された場合、Compute_Energy(i)は終了し(ステップ650)、プロセス600のステップ606への制御に戻る。
【0091】
再び、ステップ630に戻って(図6B)、i=0である場合、従って、Compute_Energy()は、底(最精細)分解能のエネルギーEacc(0)(*)を計算するよう求められている。ある実施形態において、エネルギーEacc(0)(*)は、プリントヘッドエレメント520a〜iに供給されるべきエネルギーである。プロセス620は、等式3(ステップ652)を用いてエネルギーEacc(0)(*)を計算する。プロセス620は、エネルギーEacc(0)(*)をプリントヘッドエレメント520a〜iに供給して、所望の濃度d(n,*)を生成する(ステップ654)。
【0092】
上述のように、分解能i=0における参照点の数は、プリントヘッドエレメント520a〜iの数とは異なり得る(これよりも大きいか、または小さい)。参照点がエレメントよりも少ない場合、絶対温度STnew(0)(*)は、プリントヘッドエレメントの分解能に補間され、従って、ステップ652がステップ654におけるプリントヘッドエレメントに供給されるべきエネルギーEacc(0)(*)を計算するために、適用される。エネルギーEacc(0)(*)は、その後、分解能i=0にデシメーションされて戻され、プロセス620が再び開始される。
【0093】
nの値がインクリメントされ、次のプリントヘッドサイクルへの進行を時間で表す(ステップ656)。n>nmax(ステップ658)である場合、ソースイメージ100の印刷が完了し、かつ、プロセス620およびプロセス600の両方が終了する(ステップ660)。そうでない場合、Compute_Energy(i)は、終了し(ステップ662)、Compute_Energy(i)によって用いられる再帰が終わって抜け出ることを表す。ステップ662におけるCompute_Energy(i)の終了は、ステップ644(図6C)におけるCompute_energy(i+1)への制御に戻る。プロセス600は、デジタルイメージの印刷が完了するまでステップ608を繰返す。
【0094】
従って、図6A〜図6Dに示されるプロセス600およびプロセス620は、上述の熱履歴を補償する技術によりデジタルイメージ(例えば、ソースイメージ100)を印刷するために用いられ得ることが理解されるべきである。
【0095】
上述の、および詳細に後述される本発明の種々の実施形態の特徴は、多くの利点を提供することが理解されるべきである。
【0096】
本発明の種々の実施形態の1つの利点は、これらの実施形態が、上述の「濃度のドリフト」の問題を低減または除去することである。より厳密には、プリントヘッドエレメントに供給されるべきエネルギーを計算する場合に、プリントヘッドの現在の周辺温度、ならびにプリントヘッドの熱履歴およびエネルギー履歴を考慮に入れることによって、プリントヘッドエレメントは、所望の濃度を生成するために必要な温度にのみ、より正確に上昇される。
【0097】
本発明の種々の実施形態のさらなる利点は、これらが、プリントヘッドエレメント520a〜iに供給された入力エネルギーE(0)(*,*)を、所望の濃度d(*,*)を生成するために必要または所望に応じて、増加または減少させ得ることである。熱履歴の影響を補償しようとする従来のシステムは、時間の経過に従ってプリントヘッドエレメントの温度の上昇を補償するために、通常、サーマルプリントヘッドに供給されたエネルギーの量をしだいに減少させる。対照的に、本発明の種々の実施形態によって用いられるモデルの一般性は、これらが、特定のプリントヘッドエレメントに供給されるエネルギーの量を柔軟に増加または減少させることができる。
【0098】
例えば、図7を参照して、時間の経過に従ってプリントヘッドエレメントに供給されるエネルギーの2つのグラフ702および704が示される。グラフ702および704の両方は、2つの高濃度勾配(それぞれ25および50と番号付けされたピクセル位置付近)を含むピクセルのカラムを印刷するために、プリントヘッドエレメントに供給されたエネルギーの量を表す。グラフ702(実線で示される)は、従来のサーマルプリンタによってプリントヘッドエレメントに供給されるエネルギーを表し、グラフ704(破線で示される)は、逆プリンタモデル102のある実施形態によってプリントヘッドエレメントに供給されるエネルギーを表す。グラフ704に示されるように、逆プリンタモデル102は、第1の高濃度勾配において、従来のサーマルプリンタよりも多い量のエネルギーを供給する。これは、プリントヘッドエレメントの温度をより高速で上昇させ、これにより、出力において、より鮮鋭なエッジを生成する傾向がある。同様に、逆プリンタモデル102は、第2の高濃度勾配において、従来のサーマルプリンタよりも少ない量のエネルギーを供給する。これは、プリントヘッドエレメントの温度をより高速で低減し、これにより、出力において、より鮮鋭なエッジを生成する傾向がある。
【0099】
本発明の種々の実施形態が、上述の図7の記載に基づいて、所望の出力濃度dを生成するために、必要に応じて、プリントヘッドエレメントに供給されるエネルギーの量を柔軟に増加または減少させ得るということが理解されるべきである。逆プリンタモデル206の柔軟性は、(入力エネルギーE(n)を生成するために用いられる)補正係数ΔE(n)(図4)が、プリントヘッドエレメントごとに、およびプリントヘッドサイクルごとに任意の適切な態様で、および任意の組み合わせで変更されることを可能にする。例えば、補正係数ΔE(n)は、正、負、または0の任意の組み合わせであり得る。さらに、特定のプリントヘッドエレメントjの補正係数ΔE(n,j)は、あるプリントヘッドサイクルから次のプリントヘッドサイクルに向かって増加するか、減少するか、または同じ状態に留まり得る。複数のプリントヘッドエレメントの補正係数は、任意の組み合わせで、プリントヘッドサイクルごとに増加するか、減少するか、または同じ状態に留まり得る。例えば、第1のプリントヘッドエレメントj1の補正係数は、あるプリントヘッドサイクルから次のプリントヘッドサイクルに向かって増加し得るが、第2のプリントヘッドエレメントj2の補正係数は減少する。
【0100】
逆媒体濃度モデル206によって生成され得る種々の補正係数のこれらの例は、図4に示される逆媒体濃度モデル206の柔軟性を示す例示にすぎない。より一般的に、逆媒体濃度モデル206がサーマルプリンタ108の熱履歴の影響を正確に補償する能力は、濃度ドリフトおよび不鮮明なエッジ(blurred edge)等のサーマルプリンタと通常関連した種々の問題の影響が緩和されることを可能にする。本発明の逆媒体濃度モデル206、ならびに他の局面および実施形態の種々の他の利点は、当業者に明らかである。
【0101】
本発明の種々の実施形態の別の利点は、これらがプリントヘッドエレメントに供給されるべきエネルギーを効率的な計算方法で計算することである。例えば、上述のように、本発明のある実施形態において、入力エネルギーは、2つの1次元関数(G(d)およびS(d))を用いて計算され、これにより、単一の2次元関数F(d,Ts)を用いるよりも入力エネルギーが効率的に計算されることを可能にする。
【0102】
特に、fが任意の2つの分解能間のデシメーション係数である場合、ある実施形態において、ピクセルごとに実行される加算の数の上限が、等式12によって、大きなfの場合、
【0103】
【数5】
(等式12)
が求められる。
【0104】
さらに、ある実施形態において、ある実施形態においてピクセルごとに実行される乗算の数の上限が、等式13によって、大きなfの場合、
【0105】
【数6】
(等式13)
が求められる。
【0106】
ある実施形態において、2つのルックアップがピクセルごとに実行される。実験的使用において、本発明の種々の実施形態は、1.6msのプリントヘッドサイクル周期を有するサーマルプリンタにおけるリアルタイムの使用を可能にするために、入力エネルギーを十分高速で計算することが可能であることが示された。
【0107】
本発明の種々の実施形態に関してこれまで記載されてきた。下記のものを含むが、これらに限定されない種々の他の実施形態も請求項の範囲に含まれる。
【0108】
本明細書中で、熱転写プリンタに関していくつかの実施形態が記載され得るが、これは、本発明を限定するのではないことが理解されるべきである。むしろ、上述の技術は、熱転写プリンタ以外のプリンタ(例えば、ダイレクトサーマルプリンタ)に適用されてもよい。さらに、上述のサーマルプリンタの種々の特徴は、例示のためにのみ記載されるにすぎず、本発明を限定するものではない。
【0109】
上述の実施形態の種々の局面は、例示のために提供されるにすぎず、本発明を限定するものではない。例えば、サーマルプリントヘッドのモデルにおいて、プリントヘッド500における任意の数のレイヤ、および任意の数の分解能があり得る。さらに、プリントヘッドレイヤと分解能との1対1の対応関係は必要ない。むしろ、プリントヘッドレイヤと分解能との多対1または1対多の関係があり得る。各分解能において任意の数の参照点があり得、分解能間に任意のデシメーション係数があり得る。特定のガンマ関数および感度関数が記載されたが、他の関数が用いられてもよい。
【0110】
これまでに示されかつ記載された種々の等式の結果は、種々の方法の任意で生成され得ることが理解されるべきである。例えば、このような等式(等式1のような)は、ソフトウェアにおいて実現され得、その結果がその場で(on−the−fly)計算され得る。あるいは、そのような等式への入力、およびそれらの対応する出力を格納するルックアップテーブルが事前に生成されてもよい。例えば、計算効率を高めるために、等式に対する近似もまた用いられ得る。さらに、これらの任意の組み合わせまたは他の技術が、上述の等式を実行するために用いられ得る。従って、上述の記載における等式の結果を「computing」および「calculating」するなどの用語の使用は、その場で計算することを意味するだけではなく、むしろ、同じ結果を生成するために用いられ得る任意の技術を意味することが理解されるべきである。
【0111】
一般に、上述の技術は、例えば、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、または、これらの任意の組み合わせで実現され得る。上述の技術は、プロセッサ、このプロセッサによって読み出し可能な格納媒体(例えば、揮発性および不揮発性メモリおよび/または格納素子を含む)、少なくとも1つの入力デバイス、および少なくとも1つの出力デバイスを含むプログラマブルコンピュータおよび/またはプリンタ上で実行する1つ以上のコンピュータプログラムで実現され得る。本明細書中に記載された機能を実行し、かつ、出力情報を生成するために入力デバイス用いて入力されたデータにプログラムコードが適用され得る。出力情報は、1つ以上の出力デバイスに適用され得る。
【0112】
本発明の種々の実施形態と共に用いるための適切なプリンタは、通常、プリントエンジンおよびプリンタコントローラを備える。プリンタコントローラは、ホストコンピュータからプリントデータを受信して、プリントデータに基づいて印刷されるべき論理ハーフトーン等のページ情報を生成する。プリンタコントローラは、印刷されるべきプリントエンジンにページ情報を伝送する。プリントエンジンは、ページ情報によって特定されたイメージの物理的印刷を出力媒体上で実行する。
【0113】
本明細書中に記載されたエレメントおよびコンポーネントは、さらなるコンポーネントにさらに分割され得るか、または、同じ機能を実行する、より少ない数のコンポーネントを形成するために結合される。
【0114】
上記の請求項の範囲に含まれる各コンピュータプログラムは、アセンブラ言語、機械語、高級手続き型プログラム言語、または、オブジェクト指向プログラム言語等の任意のプログラム言語で実現され得る。プログラム言語は、コンパイルまたはインタプリタされたプログラム言語であり得る。
【0115】
各コンピュータプログラムは、コンピュータプロセッサで実行するためのマシン読み取り可能格納デバイスにおいて有形的に組み込まれたコンピュータプログラム製品において実現され得る。本発明の方法ステップは、入力を操作し、かつ出力を生成することによって、本発明の機能を実行するために、コンピュータ読み取り可能媒体上で有形的に組み込まれたプログラムを実行するコンピュータプロセッサによって実行され得る。
【0116】
本発明が、特定の実施形態に関して上述されたが、これまでの実施形態は、例示として提供されたにすぎず、本発明の範囲を限定または定義するものではないことを理解されたい。上記の請求項の範囲によって定義される他の実施形態もまた、本発明の範囲に含まれる。上記の請求項の範囲に含まれる他の実施形態は、上記のものを含むが、これらに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】図1は、本発明の1つの実施形態による、デジタル画像の印刷に用いられるシステムのデータフローの図である。
【図2】図2は、本発明による1つの実施形態に用いられる、逆プリンタのデータフローの図である。
【図3】図3は、本発明による1つの実施形態に用いられる、サーマルプリンタモデルのデータフローの図である。
【図4】図4は、本発明による1つの実施形態に用いられる、逆媒体濃度モデルのデータフローの図である。
【図5A】図5Aは、本発明の1つの実施形態による、サーマルプリントヘッドの概略的側面図である。
【図5B】図5Bは、本発明の1つの実施形態による、ヘッド温度モデルによって使用される空間的/時間的格子の図である。
【図6A】図6Aは、本発明の1つの実施形態による、サーマルプリントヘッド要素に供給されるエネルギーの計算に使用される工程のフローチャートである。
【図6B】図6Bは、本発明の1つの実施形態による、サーマルプリントヘッド要素に供給されるエネルギーの計算に使用される工程のフローチャートである。
【図6C】図6Cは、本発明の1つの実施形態による、サーマルプリントヘッド要素に供給されるエネルギーの計算に使用される工程のフローチャートである。
【図6D】図6Dは、本発明の1つの実施形態による、サーマルプリントヘッド要素に供給されるエネルギーの計算に使用される工程のフローチャートである。
【図7】図7は、従来のサーマルプリンタによってサーマルプリントヘッド要素に供給されるエネルギーと、本発明の1つの実施形態によってサーマルプリントヘッド要素に供給されるエネルギーとを図示するグラフである。
【技術分野】
【0001】
本発明はサーマル印刷に関し、特に、サーマルプリントヘッドの熱履歴の影響を補償することによって、サーマルプリンタの出力を改善する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
サーマルプリンタは、一般的に、熱要素のリニアアレイ(本明細書では「プリントヘッド要素」とも呼ぶ)を含み、例えば顔料をドナーシートから出力媒体に転写することによって、または出力媒体において色形成反応を始めることによって、出力媒体の上に印刷を行う。出力媒体は、一般的に、転写される顔料に対して受容的な多孔性の受像媒体であるか、または、色形成の化学反応を引き起こすものでコーティングされた紙である。プリントヘッド要素のそれぞれは、動作時、特定の濃度を有するスポットをつくって、プリントヘッド要素の下を通過する媒体の上に、色を形成する。より大きい、またはより濃いスポットを有する領域は、より小さい、またはより薄いスポットを有する領域よりも暗い、と認識される。デジタル画像は、非常に小さくかつ密接したスポットの二次元配列であると言い表される。
【0003】
サーマルプリントヘッド要素は、エネルギーが供給されることによってアクティブになる。プリントヘッド要素へエネルギーを供給することによって、プリントヘッド要素の温度が上昇し、顔料の出力媒体への転写、または受像体上での色の形成のどちらか一方が行われる。このような方法でプリントヘッド要素によって生成された出力の濃度は、プリントヘッド要素に供給されるエネルギー量の関数である。プリントヘッド要素に供給されるエネルギー量は、例えば、ある特定の時間インターバル内におけるプリントヘッド要素へのパワーの量を変えるか、またはより長い時間インターバルの間、プリントヘッド要素にパワーを提供するか、によって変化し得る。
【0004】
従来のサーマルプリンタは、デジタル画像が印刷される時間が、本明細書において「プリントヘッドサイクル」とよぶ、固定の時間インターバルに分割される。一般的には、デジタル画像のピクセル(またはその部分)の1行が、1回のプリントヘッドサイクルの間に印刷される。プリントヘッド要素のそれぞれは、一般的には、デジタル画像の特定の列のプリントピクセル(またはサブピクセル)に対して役割を担う。各プリントヘッドサイクルの間、プリントヘッド要素に、所望の濃度を有する出力を生成させるレベルまでプリントヘッド要素の温度を上げるように計算された量のエネルギーが、各プリントヘッド要素に渡される。プリントヘッド要素によって生成される、所望の濃度の違いに基き、異なるエネルギー量が異なるプリントヘッド要素に供給され得る。
【0005】
従来のサーマルプリンタの1つの問題点は、それらのプリントヘッド要素が、各プリントヘッドサイクルの終了後も熱を保持することに起因する。この熱の保持が問題であり得るのは、いくつかのサーマルプリンタでは、概して、プリントヘッドサイクルの開始時におけるプリントヘッド要素の温度は既知の固定温度である、との推測に基いて、特定のプリントヘッドサイクルの間に特定のプリントヘッド要素に渡されるエネルギー量が計算されるためである。実際、あるプリントヘッドサイクルの開始時におけるプリントヘッド要素の温度は、(とりわけ)前のプリントヘッドサイクルの間にプリントヘッド要素に渡されるエネルギー量に依存するので、あるプリントヘッドサイクルの間にプリント要素によってもたらされる実際の温度は、較正された温度と異なり得、よって、所望の濃度より高いかまたは低い出力濃度となる。事態が同様にさらに複雑になるのは、特定のプリントヘッド要素の現時点の温度が、そのプリントヘッド要素自身の前の温度−本明細書では「熱履歴」と呼ぶ−に影響されるだけではなく、環境(部屋)温度およびプリントヘッドの他のプリントヘッド要素の熱履歴によっても影響されるという事実による。
【0006】
上記の記述から推察され得るように、従来のサーマルプリンタのいくつかにおいては、特定のサーマルプリントヘッド要素のそれぞれの平均温度が、デジタル画像の印刷中に徐々に上昇する傾向にあるが、それはプリントヘッド要素による熱保持と、そのような熱保持という観点からみて過剰なエネルギーが、プリントヘッド要素に供給されるためである。この徐々の温度上昇によって、それに対応して、プリントヘッド要素によって生成される出力の濃度が徐々に上昇し、その上昇は、印刷される画像の暗さが増すことによって知覚される。この現象を、本明細書では「濃度シフト」とよぶ。
【0007】
さらに、従来のサーマルプリンタは、一般的に、高速スキャン時、および低速スキャン時の両方において、近傍のピクセル間の鮮明な濃度勾配を、精密に再生することが困難である。例えば、プリントヘッド要素が、黒色ピクセルに引き続き白色ピクセルを印刷するとき、理想的には鮮明であるべき2つのピクセル間のエッジは、印刷されると、一般的に不鮮明になる。白色ピクセルを印刷した後に黒色ピクセルを印刷するためにはプリントヘッド要素の温度を上昇させるが、この問題は、その上昇に必要とされる時間の量に起因する。ごく一般的には、従来のサーマルプリンタのこの特徴は、高い濃度勾配の領域を有する画像を印刷する際、理想的な鮮明さよりも、さらに劣るという結果となる。
【0008】
したがって、必要とされるのは、より精度の高いデジタル画像を表現するために、サーマルプリンタのプリントヘッド要素の温度を制御する、改良された技術である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
より精度の高いデジタル画像を表現するために、サーマルプリンタのプリントヘッド要素の温度を制御する改良された技術である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
時間の経過にしたがった(オーバータイムの)、プリントヘッド要素へのエネルギーの供給に対する、サーマルプリントヘッド要素の熱応答をモデリングしたサーマルプリントヘッドのモデルが提供される。このサーマルヘッドプリントモデルは、以下のことに基き、各プリントヘッドサイクルの開始時における各サーマルプリントヘッド要素の温度の予測を生み出す:(1)サーマルプリントヘッドの現時点の環境温度、(2)プリントヘッドの熱履歴、および(3)プリントヘッドのエネルギー履歴。所望の濃度を有するスポットを生成するために、あるプリントヘッドサイクルの間に各プリントヘッド要素に供給するエネルギーの量は、以下に基いて計算される:(1)そのプリントヘッドサイクルの間に、プリントヘッド要素によって生成される所望の濃度、および(2)そのプリントヘッドサイクルの開始時におけるプリントヘッド要素の予測温度。
本発明は以下をも提供する。
(1) プリントヘッドエレメントを備えるサーマルプリンタにおける方法であって、
(A)該プリントヘッドエレメントの現在の温度、および該プリントヘッドエレメントによって印刷される所望の出力濃度の複数の1次元関数に基づいて、該プリントヘッドエレメントに供給する入力エネルギーを計算するステップを包含する、方法。
(2) (B)前記入力エネルギーを前記プリントヘッドエレメントに供給するステップをさらに包含する、項目1に記載の方法。
(3) 前記プリントヘッドエレメントの前記現在の温度は、該プリントヘッドエレメントの予測された現在の温度を含む、項目1に記載の方法。
(4) 前記予測温度は、周囲温度と、前記プリントヘッドエレメントに事前に供給されたエネルギーとに基づいて予測される、項目3に記載の方法。
(5) 前記サーマルプリンタは、複数のプリントヘッドエレメントを備え、前記予測温度は、周囲温度と、該プリントヘッドエレメントに事前に供給されたエネルギーと、該複数のプリントヘッドエレメントにおける少なくとも1つの別のプリントヘッドエレメントに事前に供給されたエネルギーとに基づいて予測される、項目3に記載の方法。
(6) 前記複数の1次元関数は、
前記所望の出力濃度を入力として、および未補正入力エネルギーを出力として有する逆ガンマ関数と、
前記プリントヘッドエレメントの前記現在の温度を入力として、および、補正係数を出力として有する補正関数とを含み、
前記ステップ(A)は、該補正係数を該未補正入力エネルギーに加算することによって、該入力エネルギーを計算するステップを包含する、項目1に記載の方法。
(7) 前記補正関数は、
前記プリントヘッドエレメントの前記現在の温度から基準温度を引くことによって、温度差値を求めるステップと、
該温度差値と、前記所望の出力濃度を入力として、および、感度値を出力として有する感度関数の出力との積として該補正係数を求めるステップと
を実行することによって、該補正係数を求める、項目6に記載の方法。
(8) 前記補正係数は、正である、項目6に記載の方法。
(9) 前記補正係数は、負である、項目6に記載の方法。
(10) 前記入力エネルギーは、変数Eで表され、前記ステップ(A)は、以下の形態の等式
E=Γ−1(d)+S(d)(Ta−TΓ(d))
を用いて該入力エネルギーを計算するステップを包含し、
ここで、Γ−1(d)は、未補正入力エネルギーEΓに前記所望の出力濃度dを関連付け、Taは、前記プリントヘッドエレメントの前記現在の温度であり、TΓ(d)は、基準温度に該所望の出力濃度dを関連付け、該基準温度は、Γ()が測定された場合の該プリントヘッドエレメントの温度であり、S(d)は、Γ−1(d)の温度依存度の勾配である、項目1に記載の方法。
(11) 前記入力エネルギーは、前記変数Eで表され、前記ステップ(A)は、以下の形態の等
式
E=G(d)+S(d)Ta
を用いて、該入力エネルギーを計算するステップを包含し、
ここで、G(d)は、未補正入力エネルギーEΓに前記所望の出力濃度dを関連付け、Taは、前記プリントヘッドエレメントの前記現在の温度であり、S(d)は、前記G(d)の温度依存度の勾配である、項目1に記載の方法。
(12) 前記ステップ(A)は、サーマルプリンタの単一のプリントヘッドサイクル内で実行される、項目1に記載の方法。
(13) サーマルプリンタであって、
プリントヘッドエレメントと、
該プリントヘッドエレメントの現在の温度、および、該プリントヘッドエレメントによって印刷されるべき所望の出力濃度の複数の1次元関数に基づいて、該プリントヘッドエレメントに供給する入力エネルギーを計算する手段と
を備える、サーマルプリンタ。
(14) 前記入力エネルギーを前記プリントヘッドエレメントに供給する手段をさらに備える、項目13に記載のサーマルプリンタ。
(15) 前記プリントヘッドエレメントの前記現在の温度は、該プリントヘッドエレメントの予測された現在温度を含む、項目13に記載のサーマルプリンタ。
(16) 前記予測温度は、周辺温度、および前記プリントヘッドエレメントに事前に供給されたエネルギーに基づいて予測される、項目15に記載のサーマルプリンタ。
(17) 前記プリントヘッドエレメントは、複数のプリントヘッドエレメントの1つであり、前記サーマルプリンタは、周囲温度と、該プリントヘッドエレメントに事前に供給されたエネルギーと、該複数のプリントヘッドエレメントにおける少なくとも1つの他のプリントヘッドエレメントに事前に供給されたエネルギーとに基づいて前記予測温度を予測する手段をさらに備える、項目15に記載のサーマルプリンタ。
(18) 前記入力エネルギーを計算する手段は、
前記所望の出力濃度を入力として、および未補正入力エネルギーを出力として有する逆ガンマ関数手段と、
前記プリントヘッドエレメントの前記現在の温度を入力として、および補正係数を出力として有する補正関数手段と、
該補正係数を該未補正入力エネルギーに加算することによって、該入力エネルギーを計算する手段と
を備える、項目13に記載のサーマルプリンタ。
(19) 前記補正関数手段は、
前記プリンタヘッドエレメントの前記現在の温度から基準温度を引くことによって、温度差値を求める手段と、
該温度差値と、前記所望の出力濃度を入力として、および感度値を出力として有する前記感度関数の出力との積として該補正係数を求める手段と
を備える、項目18に記載のサーマルプリンタ。
(20) 前記入力エネルギーは、変数Eで表され、該入力エネルギーを計算する前記手段は、以下の形態の等式
E=Γ−1(d)+S(d)(Ta−TΓ(d))
を用いて、該入力エネルギーを計算する手段を備え、ここで、Γ−1(d)は、未補正入力エネルギーEΓに前記所望の出力濃度dを関連付け、Taは、前記プリントヘッドエレメントの前記現在の温度であり、TΓ(d)は、基準温度に該所望の出力濃度dを関連付け、該基準温度は、Γ()が測定された場合の該プリントヘッドエレメントの温度であり、S(d)は、Γ−1(d)の温度依存度の勾配である、項目13に記載のサーマルプリンタ。
(21) 前記入力エネルギーは、前記変数Eで表され、該入力エネルギーを計算する前記手段は、以下の形態の等式
E=G(d)+S(d)Ta
を用いて、該入力エネルギーを計算する手段を備え、
G(d)は、未補正入力エネルギーEΓに前記所望の出力濃度dを関連付け、Taは、前記プリントヘッドエレメントの前記現在の温度であり、S(d)は、前記G(d)の温度依存度の勾配である、項目13に記載のサーマルプリンタ。
(22) 前記入力エネルギーを計算する前記手段は、前記サーマルプリンタの単一のプリントヘッドサイクル内で該入力エネルギーを計算する手段を備える、項目13に記載のサーマルプリンタ。
(23) 所望の濃度の分布を有するソースイメージに対応するプリントイメージを生成するために、サーマルプリントヘッドにおける複数のプリントヘッドエレメントに供給するための複数の入力エネルギーを生成するための装置であって、該装置は、
ヘッド温度モデル手段であって、
複数のプリントヘッドサイクルごとに、(1)周囲温度と、(2)少なくとも1つの前のプリントヘッドサイクルの間に該複数のプリントヘッドエレメントに供給された複数の入力エネルギーとを入力として受取り、
複数のプリントヘッドサイクルごとに、該プリントヘッドサイクルの開始点での該複数のプリントヘッドエレメントの複数の予測温度を出力として生成し、該複数の予測温度は、マルチ分解能熱伝達モデルを利用する第1の再帰プロセスを用いて求められる、ヘッド温度モデル手段と、
逆媒体濃度モデル手段であって、
該複数のプリントヘッドサイクルごとに、(1)該複数の予測温度と、(2)該プリントヘッドサイクルの間に印刷されるべき所望の濃度の分布のサブセットとを入力として受取り、
該複数のプリントヘッドサイクルごとに、該プリントヘッドサイクルの間に該複数のプリントヘッドエレメントに供給されるべき複数の入力エネルギーを出力として生成する、逆媒体濃度モデル手段と
を備える装置。
(24) 前記逆媒体濃度モデル手段は、
前記所望の濃度の前記分布の前記サブセットを入力として、および、複数の未補正入力エネルギーを出力として生成する、逆ガンマ関数手段と、
該所望の濃度の分布の該サブセットを入力として受取り、かつ、複数の感度値を出力として生成する、感度関数手段と、
該所望の濃度の分布の該サブセットを入力として受取り、かつ、複数の基準温度を出力として生成する、基準温度関数手段と、
前記複数の予測温度から該複数の基準温度を引いて、複数の温度差を生成するための減算器と、
該複数の感度値に該複数の温度差を乗算して、複数の補正係数を生成するための乗算器と、
該複数の補正係数を該複数の未補正入力エネルギーに加算して、該複数の入力エネルギーを生成するための加算器と
を備える、項目23に記載の装置。
(25) 前記ヘッド温度モデル手段は、該ヘッド温度モデルによって生成された少なくとも1つの前の予測温度を入力としてさらに受取る、項目23に記載の装置。
(26) 複数のプリントヘッドエレメントを備えるプリントヘッドを有するサーマルプリンタにおいて、複数のプリントヘッドサイクルごとに、複数の出力濃度を生成するために、該プリントヘッドサイクルの間に該複数のプリントヘッドエレメントに供給されるべき複数の入力エネルギーを求める方法であって、該方法は、
(A)該複数のプリントヘッドサイクルごとに、該プリントヘッドサイクルの開始点での該複数のプリントヘッドエレメントの複数の予測温度を求めるために、マルチ分解能熱伝達モデルを用いるステップと、
(B)該複数の予測温度および該プリントヘッドサイクルの間に該複数のプリントヘッドエレメントによって出力される複数の濃度に基づいて、該複数の入力エネルギーを求めるために、逆媒体モデルを用いるステップと
を包含する、方法。
(27) 前記ステップ(A)は、周囲温度と、少なくとも1つの前のプリントヘッドサイクルの間に前記複数のプリントヘッドエレメントに供給される複数の入力エネルギーに基づいて、前記複数の予測温度を求めるステップを包含する、項目26に記載の方法。
(28) 前記ステップ(A)は、前記複数のプリントヘッドエレメントの複数の前の予測温度に基づいて、前記複数の予測温度を求めるステップを包含する、項目26に記載の方法。
(29) 前記ステップ(A)は、前記複数のプリントヘッドエレメントについて、少なくとも1つの前のプリントヘッドサイクルの開始点での他のプリントヘッドエレメントの少なくとも1つの予測温度に基づいて、予測温度を求めるステップを包含する、項目26に記載の方法。
(30) (C)i軸、n軸、およびj軸を有する3次元グリッドを定義するステップであって、該3次元グリッドは、複数の分解能を含み、該複数の分解能の各々は、i軸上に別個の座標を有する平面を定義し、該複数の分解能の各々は、参照点の別個の2次元グリッドを含み、該3次元グリッドにおける該参照点の任意の1つは、i座標、n座標、およびj座標によって一意的に参照され得、
該3次元グリッドにおける該参照点の各々は、絶対温度値およびエネルギー値に関連して存在し、
座標(0,n,j)を有する参照点と関連した該絶対温度値は、タイムインターバルnの開始点での位置jのプリントヘッドエレメントの予測温度に対応し、座標(0,n,j)を有する該参照点と関連した該エネルギー値は、タイムインターバルnの間に位置jにおける該プリントヘッドエレメントに供給する入力エネルギーの量に対応する、ステップをさらに包含し、前記ステップ(B)は、
(B)(1)前記複数の出力濃度および0のi座標を有する複数の参照点と関連つけられた該絶対温度値、および0のi座標を有する該複数の参照点と関連したエネルギー値を求めることによって、該複数の入力エネルギーを求めるステップを包含する、項目26に記載の方法。
(31) (D)以下の等式
T(i)(n,j)=T(i)(n−1,j)αi+AiE(i)(n−1,j)およびT(i)(n,j)=(1−2ki)T(i)(n,j)+ki(T(i)(n,j−1)+T(i)(n,j+1))
を用いて、相対温度値を計算するステップであって、
ここで、T(i)(n,j)は、座標(i,n,j)を有する参照点と関連した相対温度値を示す、ステップと、
(E)以下の漸化式
Ta(i)(*,*)=I(i+1)(i)Ta(i+1)(*,*)+T(i)(*,*)
を用いて、絶対温度値を計算するステップであって、ただし、i=nresolutions−1、nresolutions−2、...、0であり、初期条件
Ta(nresolutions)(n,*)=Ts(n)
によって特定され、
nresolutionsは、前記3次元グリッドにおける分解能の数であり、Tsは、周辺温度であり、Ta(i)(n,j)は、座標(i,n,j)を有する参照点と関連した絶対温度値を指し、I(i+1)(i)は、分解能i+1から分解能iへの補間演算子であり、該ステップ(B)(1)は、
以下の漸化式
E(i)(n,j)=I(i+1)(i)E(i−1)(n,j)
を用いて該複数の入力エネルギーを計算するステップを包含し、ただし、i=1、2、...、nresolutions−1であり、
初期条件は、
E(0)(n,j)=G(d(n,j))+S(d(n,j))Ta(0)(n,j)によって特定され、
ここで、G(d(n,j))は、該所望の出力濃度dを未補正入力エネルギーEΓと関係付け、Ta(0)(n,j)は、座標(0,n,j)を有する参照点と関連した絶対温度値であり、S(d(n,j))はG(d(n,j))の温度依存度の勾配である、項目30に記載の方法。
(32) 各タイムインターバルnの間に前記複数の入力エネルギーE(0)(n,j)を前記複数のプリントヘッドエレメントに供給するステップをさらに包含する、項目31に記載の方法。
(33) 前記ステップ(A)および(B)は、前記サーマルプリンタの単一のプリントヘッドサイクルの間に実行される、項目26に記載の方法。
(34) サーマルプリンタであって、
複数のプリントヘッドエレメントを備えるプリントヘッドと、
複数のプリントヘッドサイクルごとに、複数の出力濃度を生成するために、該プリントヘッドサイクルの間に該複数のプリントヘッドエレメントに供給されるべき複数の入力エネルギーを求める手段であって、該複数の入力エネルギーを求める手段は、
該複数のプリントヘッドサイクルごとに、該プリントヘッドサイクルの開始点で、該複数のプリントヘッドエレメントの複数の予測温度を求めるために、マルチ分解能熱伝達モデルを用いる第1の手段と、
該プリントヘッドサイクルの間に該複数の予測温度および該複数のプリントヘッドエレメントによって出力されるべき複数の濃度に基づいて、該複数の入力エネルギーを求めるために、逆媒体モデルを用いる第2の手段と
を備える、サーマルプリンタ。
(35) 前記第1の手段は、周囲温度と、少なくとも1つの前のプリントヘッドサイクルの間に前記複数のプリントヘッドエレメントに供給された複数の入力エネルギーとに基づいて、前記複数の予測温度を求める手段を備える、項目34に記載のサーマルプリンタ。
(36) 前記第1の手段は、前記複数のプリントヘッドエレメントの複数の前の予測温度に基づいて、前記複数の予測温度を求める手段を備える、項目34に記載のサーマルプリンタ。
(37) 前記第1の手段は、前記複数のプリントヘッドエレメントごとに、少なくとも1つの前のプリントヘッドサイクルの開始点での他のプリントヘッドエレメントの少なくとも1つの予測温度に基づいて、予測温度を求める手段を備える、項目34に記載のサーマルプリンタ。
(38) i軸、n軸、およびj軸を有する3次元グリッドを定義する手段であって、該3次元グリッドは、複数の分解能を含み、該複数の分解能の各々は、i軸上の別個の座標を有する平面を定義し、該複数の分解能の各々は、参照点の別個の2次元グリッドを含み、該3次元グリッドにおける該参照点の任意の1つは、i座標、n座標、およびj座標によって一意的に参照され得る手段をさらに備え、
該3次元グリッドにおける該参照点の各々と関連して絶対温度値およびエネルギー値は存在し、
座標(0,n,j)を有する参照点と関連した該絶対温度値は、タイムインターバルnの開始点での位置jのプリントヘッドエレメントの予測温度に対応し、
座標(0,n,j)を有する該参照点と関連した該エネルギー値は、タイムインターバルnの間に位置jにおける該プリントヘッドエレメントに供給する入力エネルギーの量に対応し、該第2の手段は、
該複数の出力濃度および0のi座標を有する複数の参照点と関連した該絶対温度値に基づいて、0の座標iを有する該複数の参照点と関連した該エネルギー値を求めることによって該複数の入力エネルギーを求める手段を備える、項目34に記載のサーマルプリンタ。
(39) 以下の等式
T(i)(n,j)=T(i)(n−1,j)αi+AiE(i)(n−1,j)、および
T(i)(n,j)=(1−2ki)T(i)(n,j)+ki(T(i)(n,j−1)+T(i)(n,j+1))
を用いて相対温度値を計算する手段であって、
ここで、T(i)(n,j)は、座標(i,n,j)を有する参照点と関連した相対温度値を示す、手段と、
以下の等式
Ta(i)(*,*)=I(i+1)(i)Ta(i+1)(*,*)+T(i)(*,*)
を用いて絶対温度値を計算する手段であって、
ただし、i=nresolutions−1、nresolutions−2、...、0であり、
ここで、初期条件は、
Ta(nresolutions)(n,*)=Ts(n)
によって特定され、
nresolutionは、該3次元グリッドにおける該分解能の数であり、Tsは、周囲温度であり、
Ta(i)(n,j)は、座標(i,n,j)を有する参照点と関連した絶対温度値を指し、I(i+1)(i)は、分解能i+1からiへの補間演算子である、手段とをさらに備え、該第2の手段は、
以下の漸化式
E(i)(n,j)=I(i−1)(i)E(i−1)(n,j)
を用いて該複数の入力エネルギーを計算する手段であって、ただし、i=1、2、...、nresolutions−1であり、
初期条件は、
E(0)(n,j)=G(d(n,j))+S(d(n,j))Ta(0)(n,j)
によって特定される手段を備え、
ここで、G(d(n,j))は、前記所望の出力濃度dを未補正入力エネルギーEΓに関係付け、Ta(0)(n,j)は、座標(0,n,j)を有する参照点と関連した絶対温度値であり、S(d(n,j))は、G(d(n,j))の温度依存度の勾配である、項目38に記載のサーマルプリンタ。
(40) 前記複数の入力エネルギーE(0)(n,j)を各タイムインターバルnの間に前記複数のプリントヘッドエレメントに提供する手段をさらに備える、項目39に記載のサーマルプリンタ。
(41) 所望の濃度を有する出力を生成するために、サーマルプリンタのプリントヘッドにおけるプリントヘッドエレメントに供給する入力エネルギーを求める方法であって、該方法は、
(A)該所望の濃度を入力として、および未補正エネルギーを出力として有する第1の関数を用いて該未補正エネルギーを求めるステップと、
(B)該所望の濃度および該プリントヘッドエレメントの温度を入力として、および、補正係数を出力として有する補正関数を用いて該補正係数を求めるステップと、
(C)該入力エネルギーを生成するために、前記補正係数を用いて、該未補正エネルギーを改変するステップとを包含する、方法。
(42) 前記ステップ(C)は、前記未補正エネルギーに前記補正係数を加算するステップを包含する、項目41に記載の方法。
(43) 前記プリントヘッドエレメントの温度は、前記プリントヘッドエレメントの予測温度を含む、項目41に記載の方法。
(44) 前記ステップ(B)は、
(B)(1)前記所望の濃度を入力として、および、感度値を出力として有する感度関数を用いて該感度値を求めるステップと、
(B)(2)該補正係数を生成するために、該感度値に該プリントヘッドエレメントの温度を乗算するステップと
を包含する、項目41に記載のサーマルプリンタ。
(45) 前記ステップ(B)は、
(B)(1)前記所望の濃度を入力として、および、感度値を出力として有する感度関数を用いて該感度値を求めるステップと、
(B)(2)前記プリントヘッドエレメントの温度から基準温度を引くことによって温度差値を求めるステップと、
(B)(3)前記補正係数を生成するために、該感度値に該温度差値を乗算するステップと
を包含する、項目41に記載の方法。
(46) 前記第1の関数は、ガンマ関数の逆を含み、該ガンマ関数は、エネルギーを入力して受
け取り、かつ、該エネルギーが供給された場合に該プリントヘッドエレメントによって生成された濃度を出力として生成し、基準温度関数は、濃度を入力として受け取り、かつ、該プリントヘッドエレメントが該ガンマ関数の測定中に該濃度を生成した場合、該プリントヘッドエレメントの温度を出力として生成し、該ステップ(B)(2)は、
基準温度値を前記所望の濃度を入力とする該基準温度関数の出力として、求めるステップと、
該プリントヘッドエレメントの温度から該基準温度値を引くことによって該温度差値を求めるステップとを包含する、項目45に記載の方法。
(47) 前記ステップ(A)、(B)および(C)は、前記サーマルプリンタの単一のプリントヘッドサイクルの間に実行される、項目41に記載の方法。
(48) サーマルプリンタであって、
プリントヘッドエレメントを備えるプリントヘッドと、
所望の濃度を有する出力を生成するために、サーマルプリンタのプリントヘッドにおける該プリントへッドに供給するための入力エネルギーを求める手段とを備え、該入力エネルギーを求める該手段は、
該所望の濃度を入力として、および、未補正エネルギーを出力として有する第1の関数を用いて、該未補正エネルギーを求める手段と、
該所望の濃度および該プリントヘッドエレメントの温度を入力として、かつ、補正係数を出力として有する補正関数を用いて該補正係数を求める手段と、
該入力エネルギーを生成するために、該補正係数を用いて、該未補正エネルギーを改変する手段と
を備える、サーマルプリンタ。
(49) 前記未補正エネルギーを改変する前記手段は、前記補正係数を前記未補正エネルギーに加算する手段を備える、項目48に記載のサーマルプリンタ。
(50) 前記プリントヘッドエレメントの前記温度は、前記プリントヘッドエレメントの予測温度を含む、項目48に記載のサーマルプリンタ。
(51) 前記補正係数を求める前記手段は、
前記所望の濃度を入力として、および、感度値を出力として有する感度関数を用いて該感度値を求める手段と、
前記補正係数を生成するために、該感度値に前記プリンタヘッドエレメントの温度を乗算する手段と
を備える、項目48に記載のサーマルプリンタ。
(52) 前記補正係数を求める前記手段は、
前記所望の濃度を入力として、および、感度値を出力として有する感度関数を用いて、該感度値を求める手段と、
前記プリントヘッドエレメントの温度から基準温度を引くことによって、温度差値を求める手段と、
該補正係数を生成するために、該感度値に該温度差値を乗算する手段と
を備える、項目48に記載のサーマルプリンタ。
(53) 前記第1の関数は、ガンマ関数の逆であり、該ガンマ関数は、エネルギーを入力して受け取り、かつ、該エネルギーが供給された場合、前記プリントヘッドエレメントによって生成された濃度を出力として生成し、基準温度関数は、濃度を入力として受け取り、かつ、該プリントヘッドエレメントが、該ガンマ関数の測定中に該濃度を生成した場合、該プ
リントヘッドエレメントの温度を出力として生成し、該温度差値を求める手段は、
該基準温度値を該所望の濃度を入力する該基準関数の出力として求める手段と、
該プリントヘッドエレメントの温度から該基準温度値を引くことによって該温度差値を求める手段と
とを備える、項目52に記載のサーマルプリンタ。
【0011】
本発明による追加の局面および実施形態を、以下に、より詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明による1つの局面において、時間の経過にしたがった、プリントヘッド要素へのエネルギーの供給に対するサーマルプリントヘッド要素の熱反応をモデリングした、サーマルプリントヘッドのモデルが提供される。サーマルプリントヘッドのプリントヘッド要素の温度の履歴を、本明細書において、プリントヘッドの「熱履歴」とよぶ。時間の経過に従った、プリントヘッド要素へのエネルギーの分配を、本明細書において、プリントヘッドの「エネルギー履歴」とよぶ。
【0013】
とくに、サーマルプリントヘッドモデルが、以下に基き、各プリントヘッドサイクルの
開始時におけるサーマルプリントヘッド要素の温度予測を生成する:(1)サーマルプリントヘッドの現時点の環境温度、(2)プリントヘッドの熱履歴、および(3)プリントヘッドのエネルギー履歴。本発明による1つの実施形態において、サーマルプリントヘッドモデルが、以下に基き、あるプリントヘッドサイクル開始時におけるある特定のサーマルプリントヘッド要素の温度の予測を生成する:(1)サーマルプリントヘッドの環境温度、(2)プリントヘッド要素の予測温度、および前回のプリントヘッドサイクル開始時における、プリントヘッドの、1つ以上の他のプリントヘッド要素の予測温度、ならびに(3)そのプリントヘッド要素に供給されるエネルギー量、および前回のプリントヘッドサイクルの間に、プリントヘッドの、1つ以上の他のプリントヘッド要素に供給されたエネルギーの量。
【0014】
本発明による1つの実施形態において、所望の濃度を有するスポットを生成するために、1回のプリントヘッドサイクルの間に各プリントヘッド要素に供給されるエネルギーの量は、以下に基いて計算される:(1)プリントヘッドサイクルの間にプリントヘッド要素によって生成される所望の濃度、および(2)プリントヘッドサイクル開始時におけるプリントヘッド要素の予測温度。このような技術を用いて、ある特定のプリントヘッド要素に供給されるエネルギーの量は、従来のサーマルプリンタによって供給されるエネルギー量よりも、多いかまたは少ない、と理解されたい。例えば、濃度ドリフトを補償するために、より少ない量のエネルギーが供給され得る。鮮やかな濃度勾配を生成するために、より多い量のエネルギーが供給され得る。本発明における様々な実施形態によって用いられるモデルは、所望の出力濃度の生成に適切なように、エネルギーの入力を増加あるいは減少させるのに十分なフレキシビリティを有する。
【0015】
サーマルプリントヘッドモデルの使用は、環境温度および前回プリントされた画像内容に対するプリントエンジンの感度を減少させるが、その感度の減少はプリントヘッド要素の熱履歴に明らかに現われる。
【0016】
例えば、図1を参照に、本発明における1つの実施形態による画像プリントのシステムを示す。このシステムは逆プリンタモデル102を含み、逆プリンタモデル102は、特定の画像ソース100をプリントする際に、サーマルプリンタ108の各プリントヘッド要素に供給される入力エネルギー106の量を計算するために用いられる。以下に、図2および図3において詳細を説明するように、サーマルプリンタモデル302は、サーマルプリンタ108に供給される入力エネルギー106に基いて、サーマルプリンタ108によって生成された出力(例えば、印刷画像110)をモデリングする。サーマルプリンタモデル302は、プリントヘッド温度モデルと、媒体応答のモデルの両方を含むことに留意されたい。逆プリンタモデル102は、サーマルプリンタモデル302のインバースである。具体的には、逆プリンタモデル102は、ソース画像100(これは、例えば、2次元のグレースケール、あるいはカラーのデジタル画像であり得る)およびサーマルプリンタのプリントヘッドの現時点の環境温度104とに基いて、各プリントヘッドサイクルへの入力エネルギー106を計算する。サーマルプリンタ108は、入力エネルギー106を用いて、ソース画像100の印刷イメージ110を印刷する。入力エネルギー106は、経過時間により異なり得、また各プリントヘッド要素で異なり得ると理解されたい。同様に環境温度104は、経過時間によって異なり得る。
【0017】
一般的に、逆プリンタモデル102は、(例えば、上記に説明したように、濃度ドリフトに起因するもの、および媒体応答に起因するもののような)サーマルプリンタ108によって通常生成される歪みをモデリングし、印刷画像110を印刷する際に、もし相殺しなければサーマルプリンタ108によって生成される歪みを、逆方向に効果的に相殺するために、ソース画像100を”予め歪ませる”。したがって、サーマルプリンタ108への、入力エネルギー106の供給が、印刷画像110の所望の濃度を生成し、したがって、上記のような問題(例えば濃度ドリフトおよび鮮明さの劣化など)を被らない。とくに、プリント画像110の濃度分布は、従来のサーマルプリンタによって一般的に生成される濃度分布よりも、はるかによくソース画像100の濃度分布と合致する。
【0018】
図3に示すように、サーマルプリンタモデル302は、サーマルプリンタ108(図1)の挙動をモデリングするのに使用される。図2においてさらに詳細に説明されるように、サーマルプリンタモデル302は、逆プリンタモデル102の展開に使用され、逆プリンタモデル102は、入力エネルギー106を発生させてサーマルプリンタ108に供給し、サーマルプリンタ108の熱履歴を考慮に入れることによって、プリント画像110の所望の出力濃度を生成する。さらに、サーマルプリンタモデル302は、以下に述べるように、較正の目的にも使用される。
【0019】
サーマルプリンタモデル302をより詳細に説明する前に、いくつかの符号について述べる。ソース画像100(図1)はr行とc列を有する2次元の濃度分布dsとして見なし得る。本発明による1つの実施形態では、サーマルプリンタ108は、各プリントヘッドサイクルの間、ソース画像100の1行を印刷する。本明細書において、変数nは離散時間インターバル(例えば特定のプリントヘッドサイクル)を表す。したがって、時間インターバルnの開始時におけるプリントヘッドの環境温度104は、本明細書において、Ts(n)として表される。同様に、ds(n)は時間インターバルnの間に印刷されるソース画像100の行の濃度分布を表す。
【0020】
同様に、入力エネルギー106は2次元のエネルギー分布Eとして見なし得ると理解されたい。いま説明した符号を用いると、E(n)は、時間インターバルnの間に、プリントヘッド要素のサーマルプリンタのリニアアレイに与えられる1次元のエネルギー分布を表す。プリントヘッド要素の予測温度は、本明細書において、Taとして表される。時間インターバルnの開始時におけるプリントヘッド要素のリニアアレイの予測温度は、本明細書において、Ta(n)として表される。
【0021】
図3に示すように、サーマルプリンタモデル302は、各時間インターバルnの入力として、(1)時間インターバルnの開始時のサーマルプリントヘッドの環境温度Ts(n)104と、(2)時間インターバルnの間にサーマルプリントヘッド要素に供給される入力エネルギーE(n)106とをとる。サーマルプリンタモデル302は、出力として、1回に1行、予測印刷画像306を生成する。予測印刷画像306は、濃度dp(n)の2次元の分布として見なし得る。サーマルプリンタモデル302は、(図2において、以下により詳細に述べる)ヘッド温度モデル202と、媒体濃度モデル304とを含む。媒体濃度モデル304は、ヘッド温度モデル202によって生成された予測温度Ta(n)204と、入力エネルギーE(n)106とを入力としてとり、予測印刷画像306を出力として生成する。
【0022】
図2を参照して、逆プリンタモデル102の1つの実施形態を示す。逆プリンタモデル102は、(1)時間インターバルnの開始時におけるプリントヘッドの環境温度104のTs(n)と、(2)時間インターバルnの間に印刷されるソース画像100の行の濃度ds(n)とを、各時間インターバルnへの入力として受け取る。逆プリンタモデル102は入力エネルギーE(n)106を出力として生成する。
【0023】
逆プリンタモデル102は、ヘッド温度モデル202と、逆媒体濃度モデル206とを含む。一般的に、ヘッド温度モデル202は、印刷画像110が印刷される間に、時間の経過に従った、プリントヘッド要素の温度を予測する。具体的には、ヘッド温度モデル202は、(1)現時点の環境温度Ts(n)104と、(2)時間インターバル(n−1)の間にプリントヘッド要素に供給された入力エネルギーE(n−1)とに基いて、特定
の時間インターバルnの開始時におけるプリントヘッド要素の予測温度Ta(n)を出力する。
【0024】
概して、逆媒体濃度モデル206は、(1)タイムインターバルnの開始点での各プリントヘッドエレメントの予測温度Ta(n)と、(2)タイムインターバルnの間のプリントヘッドエレメントによって出力されるべき所望の濃度ds(n)100とに基づいて、タイムインターバルnの間の各プリントヘッドエレメントに供給するエネルギーE(n)106の量を計算する。入力エネルギーE(n)106は、次のタイムインターバルn+1の間に用いるためにヘッド温度モデル202に供給される。逆媒体濃度モデル206は、従来のサーマルプリンタによって用いられる技術とは異なり、エネルギーE(n)106を計算する際に、プリントヘッドエレメントの現在の(予測)温度Ta(n)と温度依存媒体応答の両方を考慮に入れ、これにより、熱履歴および他のプリンタによって誘導された(printer−induced)欠陥の補正を改善することが理解されるべきである。
【0025】
図2に明示されないが、ヘッド温度モデル202が、予測された温度Ta(n)の少なくともいくつかを内部に格納し得、従って、事前に予測された温度(Ta(n−1)等)は、さらに、Ta(n)を計算する際に用いるためのヘッド温度モデル202への入力であると考えられ得ることが理解されるべきである。
【0026】
図4を参照して、逆媒体濃度モデル206のある実施形態(図2)が、ここで、より詳細に記載される。逆媒体濃度モデル206は、各タイムインターバルnの間に入力として、(1)ソースイメージ濃度ds(n)100と、(2)タイムインターバルnの開始点での各サーマルプリントヘッドエレメントの予測温度Ta(n)とを受取る。逆媒体濃度モデル206は、入力エネルギーE(n)106を出力として生成する。
【0027】
換言すると、逆媒体濃度モデル206によって定義された伝達関数は、2次元関数E=F(d,Ta)である。非サーマルプリンタにおいて、入力エネルギーEおよび出力濃度dに関する伝達関数は、通常、本明細書中でガンマ関数と呼ばれる1次元関数d=Γ(E)である。ガンマ関数等のサーマルプリンタは、一意的ではない。なぜなら、出力濃度dは、入力エネルギーEに依存するだけでなく、現在のサーマルプリントヘッドエレメント温度にも依存するからである。しかしながら、ガンマ関数d=Γ(E)が測定される際にプリントヘッドエレメントの温度を表す第2の関数TΓ(d)が導入された場合、関数Γ(E)とTΓ(d)との組み合わせが、サーマルプリンタの応答を一意的に表す。
【0028】
ある実施形態において、上述の関数E=F(d,Ta)は、等式1
E=Γ−1(d)+S(d)(Ta−TΓ(d)) (等式1)
によって示される形式を用いて表される。
【0029】
この等式は、所望の濃度を提供する正確なエネルギーの(Ta−TΓ(d))のテイラー級数展開の最初の2項と解釈され得る。等式1において、Γ−1(d)は、上述の関数Γ(E)の逆であり、S(d)は、任意の形態(その1例がより詳細に後述される)をとり得る感度関数である。等式1は、Γ−1(d)、S(d)、およびTΓ(d)という3つの1次元関数を用いて2次元関数E=F(d,Ta)を表すことに留意されたい。本発明のある実施形態において、逆媒体濃度モデル206は、図4に図式的に示されるように、入力エネルギーE(n)106を計算するために等式1を用いる。プリントヘッドエレメントの基準温度TΓ(d)408は、温度差ΔT(n)を求めるために、プリントヘッドエレメントの現在の(予測)温度Ta(n)(これは、例えば、ヘッド温度モデル202によって生成されるか、または、実際の温度測定値であり得る)から引かれる。温度差ΔT(n)は、補正係数ΔE(n)を生成するために、感度関数S(d)406の出力で乗算され、かつ、入力エネルギーE(n)106を生成するために、Γ−1(d)404によって出力された未補正エネルギーEΓ(n)に加算される。補正係数ΔE(n)は、計算されて、ログドメインまたは線形ドメインにおいて計算および適用され得、対応して、較正が実行されることが理解されるべきである。
【0030】
本発明のある実施形態による等式1の代替的実現が、ここで記載される。等式1は、等式2
E=Γ−1(d)−S(d)TΓ(d)+S(d)Ta (等式2)
として書き直され得る。
【0031】
ある実施形態において、項Γ−1(d)−S(d)TΓ(d)は、1つの1次元関数G(d)として表され、かつ格納され、これにより、等式2は、
E=G(d)+S(d)Ta (等式3)
として書き直され得る。実際、等式3を用いて、Eの値は、dの値に基づいて、2つのルックアップG(d)およびS(d)を用いて計算され得る。このような表現は、種々の理由で有利であり得る。例えば、2次元関数としてのE=F(d,Ta)をソフトウェアおよび/またはハードウェアで直接実現すると、エネルギーEを計算するために、大容量のストレージ、または著しい計算の数が必要とされ得る。対照的に、1次元関数G(d)およびS(d)は、比較的少量のメモリを用いて格納され得、かつ、逆媒体濃度モデル206は、比較的少数の計算を用いて、等式3の結果を計算し得る。
【0032】
ヘッド温度モデル202のある実施形態(図2〜図3)は、ここで、より詳細に記載される。図5Aを参照して、サーマルプリントヘッド500の模式的側面図が示される。プリントヘッド500は、ヒートシンク502a、セラミック502b、およびグレーズ(glaze)502cを含むいくつかのレイヤを備える。グレーズ502cの下に、プリントヘッドエレメント520a〜i線形アレイがある。説明を容易にするために、図5Aには9個の加熱エレメント520a〜iしか示されないが、通常のサーマルプリントヘッドは、インチごとに数百の、非常に小さく、かつ、接近した間隔のプリントヘッドエレメントを有することが理解されるべきである。
【0033】
上述のように、プリントヘッドエレメント520a〜iを加熱するために、これらにエネルギーが供給され、これにより、プリントヘッドエレメントは、出力媒体に顔料を移送する。プリントヘッドエレメント520a〜iによって生成された熱は、レイヤ502a〜cを通じて上方に拡散する。
【0034】
個々のプリントヘッドエレメント520a〜iの温度をある期間にわたって(例えば、デジタルイメージが印刷されている間)、直接測定することは、困難か、または、過度な負担がかかり得る。従って、本発明のある実施形態において、プリントヘッドエレメント520a〜iの温度をある期間にわたって予測するために、プリントヘッドエレメント520a〜iの温度を直接測定するのではなく、ヘッド温度モデル202が用いられる。特に、ヘッド温度モデル202は、(1)プリントヘッド500の周囲温度と、(2)プリントヘッドエレメント520a〜iに事前に供給されたエネルギーとに関する情報を用いて、プリントヘッドエレメント520a〜iの熱履歴をモデル化することによって、プリントヘッドエレメント520a〜iの温度を予測し得る。プリントヘッド500の周囲温度は、ヒートシンク512上の特定のポイントにおける温度Ts(n)を測定する温度センサ512を用いて測定され得る。
【0035】
ヘッド温度モデル202は、種々の方法のいずれかで、プリントヘッドエレメント520a〜iの熱履歴をモデル化し得る。例えば、本発明のある実施形態において、ヘッド温度モデル202は、プリントヘッドエレメント520a〜iの現在の温度を予測するために、プリントヘッド500のレイヤを通じて、プリントヘッドエレメント520a〜iから温度センサ512への熱拡散のモデルと共に、温度センサ512によって測定された温度Ts(n)を用いる。しかしながら、ヘッド温度モデル202は、プリントヘッドエレメント520a〜iの温度を予測するために、プリントヘッド500を通る熱拡散をモデル化する以外の技術を用い得ることが理解されるべきである。
【0036】
図5Bを参照して、本発明のある実施形態による、ヘッド温度モデル202によって用いられる3次元の空間および時間グリッド530が図式的に示される。ある実施形態において、マルチ分解能熱伝達モデルは、プリントヘッド500を通る熱の伝播をモデル化するために、グリッド530を用いる。
【0037】
図5Bに示されるように、グリッド530の1つのディメンジョンがi軸でラベル標示される。グリッド530は、3つの分解能532a〜cを含み、各々は、iの別個の値に対応する。図5Bに示されるグリッド530に関して、i=0は、分解能532cに対応し、i=1は、分解能532bに対応し、かつ、i=2は、分解能532aに対応する。従って、変数iは、本明細書中で「分解能の数(resolution number)」と呼ばれる。3つの分解能532a〜cが図5Bのグリッド530に示されるが、これは、例示にすぎず、本発明を限定するものではない。むしろ、ヘッド温度モデル202によって用いられる時間グリッドおよび空間グリッドは、任意の数の分解能を有し得る。本明細書中で用いられるように、変数nresolutionsは、ヘッド温度モデル202によって用いられる空間および時間グリッドの分解能の数を意味する。例えば、グリッド530に関するnresolutions=3が、図5Bに示される。iの最大値は、nresolutions−1である。
【0038】
さらに、プリントヘッド500において、レイヤと同じ数の分解能があり得るが(図5A)、これは、本発明の必要条件ではない。むしろ、材料の物理的レイヤよりも多いか、または少ない数の分解能があり得る。
【0039】
3次元グリッド530の分解能532a〜cの各々は、参照点の2次元グリッドを含む。例えば、分解能532cは、集合的に参照番号534と呼ばれる参照点の9×9のアレイを含む(説明を容易にするために、分解能532cにおける参照点のただ1つのみが参照番号534でラベル標示される)。同様に、分解能532bは、集合的に参照番号536と呼ばれる参照点の3×3のアレイを含み、分解能532aは、単一の参照点538を含む1×1のアレイを含む。
【0040】
図5Bにさらに示されるように、j軸は、分解能532a〜cの各々の1つのディメンジョン(高速走査方向)をラベル標示する。ある実施形態において、j軸は、j=0で開始して、左から右へ、参照点ごとにjmaxの最大値まで1づつ大きくなって伸びる。図5Bにさらに示されるように、n軸は、分解能532a〜cの各々における第2のディメンジョンをラベル標示する。ある実施形態において、n軸は、n=0で開始して、対応する矢印が示す方向に(すなわち、図5Bの平面に対して)参照点ごとに1つづつ大きくなって伸びる。説明を容易にするために、以下の記載において、分解能iにおけるnの特定の値は、分解能iにおける参照点の対応する「ロウ」を意味すると述べられる。
【0041】
ある実施形態において、n軸は、連続したプリントヘッドサイクル等の別個のタイムインターバルに対応する。例えば、n=0は、第1のプリントヘッドサイクルに対応し得、n=1は、後続のプリントヘッドサイクルに対応し得る等である。その結果、ある実施形態において、nディメンジョンは、本明細書中で、空間および時間グリッド530の「時間」ディメンジョンと呼ばれる。サーマルプリンタ108がオンにされるか、または、デジタルイメージの印刷が開始された場合、プリントヘッドサイクルは、例えば、n=0で開始して、順次、番号付けされ得る。
【0042】
しかしながら、nは、概して、タイムインターバルを意味し、この持続時間は、単一のプリントヘッドサイクルのものと等しいか、または等しくなくてもよいことが理解されるべきである。さらに、nが対応するタイムインターバルの持続時間は、異なった分解能532a〜cごとに異なり得る。例えば、ある実施形態において、分解能532c(i=0)における変数nによって参照されるタイムインターバルは、単一のプリントヘッドサイクルに等しく、これに対して、他の分解能532a〜bにおける変数nによって参照されるタイムインターバルは、単一のプリントヘッドサイクルよりも長い。
【0043】
ある実施形態において、分解能532c(この場合、i=0)における参照点534は、特別な重要性を有する。この実施形態において、分解能532cにおける参照点の各ロウは、プリントヘッド500におけるプリントヘッドエレメント520a〜iの線形アレイに対応する(図5A)。例えば、i=0およびn=0の場合の参照点534a〜iのロウを想定されたい。ある実施形態において、これらの参照点534a〜iの各々は、図5Aに示されるプリントヘッドエレメント520a〜iの1つに対応する。例えば、参照点534aは、プリントヘッドエレメント520aに対応し得、参照点534bは、プリントヘッドエレメント520bに対応し得る等である。分解能532cにおける参照点の残りのロウの各々と、プリントヘッドエレメント520a〜iとの間に同じ対応関係が当てはまり得る。参照点のロウの範囲内の参照点と、プリントヘッド500におけるロウに配置されたプリントヘッドエレメントとの間に、この対応関係に基づいて、ある実施形態において、jディメンジョンは、空間および時間グリッド530の「空間」ディメンジョンと呼ばれ得る。ヘッド温度モデル202によって、この対応関係がどのように用いられ得るかの例は、より詳細に後述される。
【0044】
jおよびnディメンジョンのこれらの意味を用いることによって、分解能532cにおける参照点534(この場合、i=0)の各々は、時間の特定のポイント(例えば、特定のプリントヘッドサイクルの開始点)でのプリントヘッドエレメント520a〜iの特定の1つに対応することが見出され得る。例えば、j=3およびn=2は、タイムインターバルn=2の開始点での参照点540(プリントヘッドエレメント520dに対応する)を意味する。
【0045】
ある実施形態において、分解能532c(i=0)における座標(n,j)の参照点534の各々と関連した絶対温度値Taは、タイムインターバルnの開始点でのプリントヘッドエレメントjの予測絶対温度を表す。さらに、分解能532c(i=0)における座標(n,j)の参照点534の各々と関連したエネルギー値Eは、タイムインターバルnの間にプリントヘッドエレメントjに供給されるべきエネルギーの量を表す。
【0046】
より詳細に後述されるように、本発明のある実施形態において、ヘッド温度モデル202は、タイムインターバルnごとの開始点での分解能532cのロウnにおける参照点と関連した絶対温度値Taを更新し、これにより、タイムインターバルnの開始点でのプリントヘッドエレメント520a〜iの絶対温度を予測する。さらに詳細に後述されるように、ヘッド温度モデル202は、更新された温度値Taおよび所望の出力濃度dsに基づいて、タイムインターバルnごとの開始点での分解能532cのロウnにおける参照点と関連したエネルギー値Eを更新する。その後、所望の濃度を有する出力を生成するために、プリントヘッドエレメント520a〜iにエネルギーEが供給される。
【0047】
グリッド530の分解能532cの各ロウにおける参照点と、プリントヘッド500におけるプリントヘッドエレメントとの間の1対1の対応関係は必要ないことが理解されるべきである。例えば、そのような各ロウにおける参照点の数が、プリントヘッドエレメントの数よりも多いか、または少なくてもよい。分解能532cの各ロウにおける参照点の数がプリントヘッドエレメントの数と等しくない場合、参照点の温度予測は、例えば、補間またはデシメーションの任意の形態を用いて、プリントヘッドエレメントにマッピングされ得る。
【0048】
より一般的には、分解能532c(i=0)は、プリントヘッドエレメント520a〜iのいくつか、またはすべてを含む領域をモデル化する。モデル化される領域は、例えば、プリントヘッドエレメント520a〜iによって占められる領域と等しいか、これよりも大きいか、またはこれよりも小さくなり得る。分解能532cの各ロウにおける参照点の数は、モデル化された領域におけるプリントヘッドエレメントの数よりも大きいか、少ないか、またはこれと等しくなり得る。例えば、モデル化された領域が、プリントヘッドエレメント520a〜iのすべてによって占められる領域よりも大きい場合、分解能532cにおける各ロウの各終了点での1つ以上の参照点は、第1のプリントヘッドエレメント520aの前、および最後のプリントヘッドエレメント520iの後に伸びる「バッファゾーン」に対応し得る。バッファゾーンが用いられるある方法は、等式7に関してさらに詳細に後述される。
【0049】
ヘッド温度モデル202は、種々の方法のいずれかで、参照点534の温度予測を生成し得る。例えば、図5Bに示されるように、グリッド530は、さらなる参照点536および538を含む。より詳細に後述されるように、ヘッド温度モデル202は、参照点536および538の中間温度およびエネルギー値を生成し、これは、参照点534と関連した最終の温度予測Taおよび入力エネルギーEを生成するために用いられる。参照点536および538と関連した絶対温度値Taは、プリントヘッド500内の絶対温度の予測に対応し得るが、対応しなくてもよい。このような温度値は、例えば、分解能532cにおける参照点534の絶対温度予測Taを生成する際に用いるために有用な中間値であるにすぎない。同様に、参照点536および538と関連したエネルギー値Eは、プリントヘッド500内の熱の蓄積の予測に対応し得るが、対応しなくてもよい。このようなエネルギー値は、例えば、分解能532cにおける参照点534の温度値を生成する際に用いるために有用な中間値であるにすぎない。
【0050】
ある実施形態において、相対温度値Tは、空間グリッド530における参照点の各々とさらに関連付けられ得る。特定の分解能iにおける参照点の相対温度値Tは、上方の分解能i+1における対応する参照点の絶対温度に対して相対する。後述されるように、「対応する」参照点は、分解能i+1における補間された参照点のことであり得る。
【0051】
特定の分解能における参照点のn座標およびj座標は、記号表記(n,j)を用いて表現される。本明細書中で用いられるように、上付き文字(i)は、分解能の数(すなわち、iの値)を示す。従って、式E(i)(n,j)は、分解能iにおける座標(n,j)を有する参照点と関連したエネルギー値を意味する。同様に、Ta(i)(n,j)は、分解能iにおける座標(n,j)を有する参照点と関連した絶対温度値を意味し、T(i)(n,j)は、分解能iにおける座標(n,j)を有する参照点と関連した相対温度値を意味する。分解能532c(ただし、i=0)における参照点には特別の意味を有するので、ある実施形態において、表現E(0)(n,j)は、タイムインターバルnの間のプリントヘッドエレメントjに供給された入力エネルギーの量を意味する。同様に、Ta(0)(n,j)は、タイムインターバルnの開始点でのプリントヘッドエレメントjの予測絶対温度を意味し、T(0)(n,j)は、タイムインターバルnの開始点でのプリントヘッドエレメントjの予測相対温度を意味する。
【0052】
以下の記載において、サフィックス(*,*)は、時間ディメンジョンおよび空間ディメンジョンのすべての参照点を意味する。例えば、E(k)(*,*)は、分解能kにおけるすべての参照点のエネルギーを示す。記号表記I(k)(m)は、分解能kから分解能mまでの補間またはデシメーション演算子を示す。ここで、k>m,I(k)(m)は、補間演算子として機能し、k<m,I(k)(m)は、デシメーション演算子として機能する。グリッド530の特定の分解能の2次元アレイの値(例えば、E(k)(*,*))に適用された場合、上述のように、演算子I(k)(m)は、新しい値のアレイを生成するために、kおよびmの値に基づいて、空間(すなわち、j軸に沿う)ディメンジョンおよび時間(すなわち、n軸に沿う)ディメンジョンの両方を演算する2次元補間またはデシメーション演算子である。演算子I(k)(m)を適用することによって生成されたアレイにおける値の数は、グリッド530の分解能mにおける参照点の数に等しい。演算子I(k)(m)の適用は、プレフィクスの形態で示される。例えば、I(k)(m)E(k)(*,*)は、エネルギーE(k)(*,*)への演算子I(k)(m)の適用を示す。演算子I(k)(m)の使用は、後述される特定の例により、さらに明らかになる。
【0053】
演算子I(k)(m)は、任意の補間法またはデシメーション法を用い得る。例えば、本発明のある実施形態において、演算子I(k)(m)によって用いられるデシメーション関数は、算術平均であり、補間法は、線形補間である。
【0054】
相対温度値T(i)(n,j)は、レイヤi+1における「対応する」絶対温度値Ta(i+1)に対して相関することがすでに述べられた。ここで、この「対応する」絶対温度値が、より厳密には(I(i+1)(i)Ta(i+1))(n,j)を意味し、アレイにおける座標(n,j)における参照点の絶対温度値は、補間演算子I(i+1)(i)をTa(i+1)(*,*)に適用することによって生成されることが明らかである。
【0055】
ある実施形態において、ヘッド温度モデル202は、等式4
T(i)(n,j)=T(i)(n−1,j)αi+AiE(i)(n−1,j) (等式4)
を用いて、前の相対温度値と、前のタイムインターバルにおいて蓄積されたエネルギーとの重み付きコンビネーション(weighted combination)として相対温度値T(i)(n,j)を生成する。
【0056】
等式4における変数αiおよびAiは、より詳細に後述されるように、種々の方法のいずれかで推定され得るパラメータである。パラメータαIは、プリントヘッドの自然冷却を表し、パラメータAiは、蓄積されたエネルギーに基づく、プリントヘッドの加熱を表す。ヘッド温度モデル202は、さらに、等式5
Ta(nresolutions)(n,*)=Ts(n) (等式5)
および漸化式6
Ta(i)(*,*)=I(i+1)(i)Ta(i+1)(*,*)+T(i)(*,*) (等式6)
(ただし、i=nresolutions−1、nresolutions−2、...0である)を用いて絶対温度値Ta(i)(n,j)をさらに生成する。
【0057】
より具体的には、Tanresolutions(n,*)は、等式5によってTs(n)に初期化され、絶対温度は、温度センサ512によって測定される。等式6は、上述の分解能の相対温度の和として分解能ごとに絶対温度値Taを計算する。
【0058】
ある実施形態において、等式4で生成された相対温度T(i)(n,j)は、等式7
【0059】
【数1】
(等式7)(ただし、j=0〜jmax)
によってさらに改変される。
【0060】
等式7は、プリントヘッドエレメント間の横方向の熱伝達を表す。ヘッド温度モデルに横方向の熱伝達を算入した結果、逆プリンタモデルにおけるイメージの横方向の鮮鋭化を補償する。等式7は、(参照点j、およびこれに最隣接する、位置j+1およびj−1における2つの最隣接点からなる)3点のカーネル(three−point kernel)を用いるが、これは、本発明を限定しないことが理解されるべきである。むしろ、任意のサイズのカーネルが、等式7において用いられ得る。境界条件がT(i)(n,j)に提供されなければならず、ここで、j=0およびj=jmaxであり、これにより、T(i)(n,j)の値(ただし、j=−1およびj=jmax+1)は、等式7において用いるために提供され得る。例えば、T(i)(n,j)は、0に設定され得る(ただし、j=−1およびj=jmax+1)。あるいは、T(i)(n,−1)に、T(i)(n,0)の値が割り当てられ得、T(i)(n,jmax+1)にT(i)(n,jmax)の値が割り当てられ得る。これらの境界条件は、例示のために提供されるにすぎず、本発明を限定するのではなく、むしろ、任意の境界条件が用いられてもよい。
【0061】
ある実施形態において、エネルギーE(0)(n,j)(すなわち、タイムインターバルnの間、プリントヘッドエレメント520a〜iに提供されるエネルギー)が、等式8
E(0)(n,j)=G(d(n,j))+S(d(n,j))Ta(0)(n,j)
(等式8)
を用いて計算される。この等式8は、等式3から導き出される。
【0062】
等式8によって定義された値E(0)(n,j)は、E(i)(n,j)(ただし、i>0)の値が等式9
【0063】
【数2】
(等式9)
(ただし、i=1、2、...、nresolutions−1)を用いて再帰的に計算されることを可能にする。
【0064】
等式4〜等式9が計算される順序は、これら等式間の依存関係によって決まる。等式4〜等式9を適切な順序で計算する技術の例は、以下において詳細に記載される。
【0065】
ヘッド温度モデル202および媒体濃度モデル304は、以下のように較正され得るいくつかのパラメータを含む。再び、図1を参照して、ターゲットイメージ(ソースイメージ100として利用される)を印刷して、印刷イメージ110を生成するためにサーマルプリンタ108が用いられ得る。ターゲットイメージを印刷する間、(1)ターゲットイメージを印刷するために、サーマルプリンタ108によって用いられるエネルギーと、(2)所定の時間にわたるプリントヘッドの周辺温度とが測定され得る。測定されたエネルギーおよび周辺温度は、その後、入力としてサーマルプリンタモデル302に提供される。サーマルプリンタモデル302によって予測された予測印刷イメージ306の濃度分布は、ターゲットイメージを印刷することによって生成された印刷イメージ110の実際の濃度分布と比較される。ヘッド温度モデル202および媒体濃度モデル304のパラメータは、その後、この比較に基づいて改変される。このプロセスは、予測印刷イメージ110の濃度分布が、ターゲットイメージに対応する印刷イメージ306のものと十分に整合するまで繰返される。これにより、ヘッド温度モデル202および媒体濃度モデル304のパラメータが取得され、その後、ヘッド温度モデル202および逆プリンタモデル102の逆媒体濃度モデル206(図2)において用いられる。これらのモデルにおいて用いられ得るパラメータの例は、以下において、より詳細に記載される。
【0066】
本発明のある実施形態において、逆媒体モデルに関してすでに述べられたガンマ関数Γ(E)が、等式10
【0067】
【数3】
(等式10)
に示される非対称S型関数としてパラメータ化される。ここで、ε=E−E0であり、E0は、エネルギーオフセットである。a=0およびb=0である場合、等式10に示されるΓ(E)は、エネルギーE0に関する対称関数であり、E=E0における勾配dmaxσを有する。しかしながら、サーマルプリンタの典型的なガンマ曲線は、非対称的であることが多く、0ではないaおよびbの値でより良好に表される。図4を参照してすでに記載された関数TΓ(d)は、種々の方法のいずれかで推定され得る。関数TΓ(d)は、例えば、ガンマ関数Γ(E)が測定された場合の、プリントヘッドエレメントの温度の推定であり得る。このような推定は、ヘッド温度モデルから取得され得る。
【0068】
ある実施形態において、感度関数S(d)は、等式11
【0069】
【数4】
(等式25)
に示されるように、p次多項式としてモデル化される。
【0070】
好ましい実施形態において、3次多項式p=3が用いられるが、これは、本発明を制限するものではない。むしろ、感度関数S(d)は、任意の次数の多項式であってよい。
【0071】
等式10および等式11に示されたガンマおよび感度関数が、例示のためにのみ示され、本発明を限定するものではないことが理解されるべきである。むしろ、ガンマおよび感度関数の他の数式が用いられてもよい。
【0072】
ヘッド温度モデル202がプリントヘッド500の熱履歴をモデル化する態様が一般的に記載されたが、上述の技術の適用に関するある実施形態が、ここで、より詳細に記載される。特に、図6Aを参照して、本発明のある実施形態によるソースイメージ100(図1)を印刷するために用いられるプロセス600のフローチャートが示される。より具体的には、プロセス600は、入力エネルギー106を生成し、ソースイメージ100および周囲温度104に基づいてサーマルプリンタ108に供給するために、逆プリンタモデル102によって実行され得る。サーマルプリンタ108は、その後、入力エネルギー106に基づいて印刷イメージ110を印刷し得る。
【0073】
上述のように、ヘッド温度モデル202は、相対温度T、絶対温度Ta、およびエネルギーEの値を計算し得る。上述のように、これらの計算を実行するための等式の相互関係は、計算が実行され得る順序を決める。プロセス600は、適切な順序でこれらの計算を実行し、これにより、入力エネルギーE(0)(n,*)を計算して、各タイムインターバルnの間、プリントヘッドエレメント520a〜iに提供する。本明細書中で用いられるように、別個のタイムインターバルnの特定の分解能におけるサフィックス(n,*)は、すべての参照点に関して(絶対温度Ta、相対温度T、またはエネルギーE)値
を意味する。例えば、E(i)(n,*)は、別個のタイムインターバルnの間の分解能iにおけるすべての参照点(すなわち、jのすべての値の)のエネルギー値を意味する。プロセス600は、例えば、任意の適切なプログラム言語を用いてソフトウェアにおいて実現され得る。
【0074】
ある実施形態において、プロセス600は、タイムインターバルnごとに、タイムインターバルnから、および前のタイムインターバルn−1からのエネルギーおよび温度のみを参照する。従って、これらのすべてのnの量の持続的格納を維持することは必要でない。2次元アレイ、T(i)(*,*)、Ta(i)(*,*)、およびE(i)(*,*)は、各々、2つの1次元アレイでしか置換できず、下付き文字「new」および「old」は、時間ディメンジョンの引数nおよびn−1とそれぞれ置換される。特に、以下における1次元アレイは、中間値をタイムインターバルnに格納するために用いられる。
【0075】
(1)Told(i)(*)、前の印刷タイムインターバル(すなわち、印刷タイムインターバルn−1)からの分解能iにおけるすべての参照点の相対温度を格納するためのアレイである。Told(i)(*)は、T(i)(n−1,*)と等価である。
【0076】
(2)Tnew(i)(*)、現在のタイムインターバルnの分解能iにおけるすべての参照点の相対温度を格納するためのアレイである。Tnew(i)(*)は、T(i)(n,*)と等価である。
【0077】
(3)STold(i)(*)、前のタイムインターバルn−1からの分解能iにおけるすべての参照点の絶対温度を格納するためのアレイである。STold(i)(*)は、Ta(i)(n−1,*)と等価である。
【0078】
(4)STnew(i)(*)、現在のタイムインターバルn−1の分解能iにおけるすべての参照点の絶対温度を格納するためのアレイ。STnew(i)(*)は、Ta(i)(n,*)と等価であり、
(5)Eacc(i)(*)、現在のタイムインターバルnの分解能iにおけるすべての参照点の現在蓄積されたエネルギーを格納するためのアレイ。Eacc(i)(*)は、E(i)(n,*)と等価である。
【0079】
補間演算子Iknが上述の5つの1次元アレイのいずれかに適用された場合、空間ドメインの1次元補間またはデシメーションをもたらすことに留意されたい。時間的保管は、明示的に格納されたTまたはSTの「old」および「new」値を参照することによって別々に実行される。
【0080】
プロセス600は、定期的な初期化()を呼出すことによって開始する(ステップ602)。初期化()ルーティンは、例えば、(1)Tnew(i)(*)およびEacc(i)(*)をiのすべての値(すなわち、i=0〜i=nresolutions−1まで)について、0に初期化し、かつ、(2)は、i=0〜i=nresolutionsまでのすべてiの値について、STnew(i)(*)をTs(温度センサ512から読み出す温度)に初期化する。
【0081】
プロセス600は、印刷されるべきソースイメージ100の第1のプリントヘッドサイクルに対応して、nから0の値を初期化する(ステップ604)。プロセス600は、ソースイメージ100全体が印刷されたかどうかを決定するために(ステップ606)、nの値をnmaxの値(ソースイメージ100を印刷するために必要される印刷ヘッドサイクルの総数)と比較する。nがnmaxよりも大きい場合、プロセス600は終了する(610)。nがnmaxよりも大きくない場合、nresolutions−1の値でサブルーチンのCompute_Energy()が呼出される(ステップ608)。
【0082】
Compute_Energy(i)は、入力として分解能の数iを用い、上述の等式により、入力エネルギーEacc(i)(*)を計算する。図6Bを参照して、ある実施形態において、再帰プロセス620を用いてCompute_Energy()が実現される。以下においてより詳細に記載されるように、Eacc(i)(*)を計算するうちに、プロセス620は、さらに、エネルギーEacc(i−1)、Eacc(i−2)(*)、...Eacc(0)(*)の各々を特定のパターンで再帰的に計算する。エネルギーEacc(0)(*)が計算された場合、これらのエネルギーは、プリントヘッドエレメント520a〜iに供給され、所望の出力濃度を生成し、nの値がインクリメントされる。
【0083】
より具体的には、プロセス620は、Tnew(i)の値をこれに割り当てることによってアレイTold(i)を初期化する(ステップ622)。プロセス620は、等式4を用いて一時的アレイTtemp(i)に値を割り当てることによって時間での相対温度を更新する(ステップ624)。プロセス620は、等式7を用いて、Tnew(i)に値を割り当てることによって空間での相対温度を更新する(ステップ626)。
【0084】
プロセス620は、その後、現在および前の絶対温度STnew(i)(*)およびSTold(i)(*)を計算する。より具体的には、STold(i)(*)の値は、STnew(i)(*)に設定される(ステップ627)。その後、プロセス620は、等式6を用いて、分解能iにおける相対温度、および分解能i+1における絶対温度に基づいて、分解能iにおける現在の絶対温度を更新する(ステップ628)。補間演算子I(i+1)(i)は、STnew(i+1)(*)に適用され、補間された絶対温度値のアレイを生成する。このアレイのディメンジョンは、分解能iの空間ディメンジョンと等しい。補間された絶対温度値のこのアレイは、Tnew(i)(*)に加算されて、STnew(i)(*)を生成する。このようにして、絶対温度値は、レイヤi+1からレイヤiまで下方に向かって伝播する。絶対温度は、Compute_Energy()によって実行される再帰の結果として、特定のパターンの連続レイヤ間で所定の時間にわたって下方に向かって伝播することが理解されるべきである。
【0085】
プロセス620は、エネルギーが、現在、底の(最精細)分解能について計算されているかどうかを決定するために、i=0かどうかを試験する(ステップ630)。この試験は、下方のレイヤの基準絶対温度を提供するために、絶対温度が時間で補間される必要があるかどうかを決定するために必要である。i=0である場合、絶対温度は、最精細分解能について計算され、時間的保管は必要とされない。
【0086】
iが0ではない場合、時間的保管が必要とされる。量dec_factor(i)は、分解能iにおける時間ディメンジョンの参照点の数に対する、分解能i−1における数の比率を表す。しかしながら、dec_factor(i)の補間された絶対温度を生成することが必要である。dec_factor(i)は、iの値ごとに任意の値を有し得ることが理解されるべきであり、例えば、dec_factor(i)は、iの値ごとに1と等しくなり得、この場合、当業者に明らかであるように、後述される種々のステップが簡略化され得るか、または、省略され得る。同時に、エネルギーEacc(i)(*)は、時間ディメンジョンのすべてのdec_factor(i)の補間点について、エネルギーEacc(i−1)(*)を蓄積させることによって計算される。これらの2つのタスクは、以下のステップによって達成される。
【0087】
エネルギーEacc(i)(*)は、0に初期化される(ステップ634)。アレイStep(i)(*)は、ステップ値をSTold(i)とSTnew(i)との間の補間に格納するために用いられる。Step(i)(*)における値は、STnew(i)とSTold(i)との間の差をdec_factor(i)で除算することによって初期化される(ステップ636)。
【0088】
図6Cを参照して、プロセス620は、dec_factor(i)反復を有するループに入る(ステップ638)。Step(i)をSTold(i)に加算することによって、STnew(i)に補間値が割り当てられる(ステップ640)。Compute_Energy()は、分解能i−1のエネルギーを計算するために再帰的に呼出される(ステップ642)。計算された分解能i−1エネルギーを取得した後、現在の分解能iのエネルギーEacc(i)(*)が、等式9を用いて部分的に計算される(ステップ644)。
【0089】
等式9において、記号表記は、分解能i−1におけるエネルギーの2次元デシメーションを空間および時間で示すことに留意されたい。Eacc(i−1)(*)は、空間ディメンジョンでの分解能i−1における参照点のエネルギーを表す1次元アレイであるので、ステップ644は、時間ディメンジョンのEacc(i)(*)を明示的に平均化することにより、段階的に同じ結果を達成する。ステップ638において開始されたループがそのすべての反復を完了するまで、エネルギーEacc(i)(*)全体は、計算されないことが理解されるべきである。
【0090】
STold(i)には、ステップ638において開始されたループの次の反復に備えて、STnew(i)の値が割り当てられる(ステップ646)。ループは、ステップ640〜ステップ646を、合計でdec_factor(i)回実行する。ループの完了時点に(ステップ648)、分解能iのすべてのエネルギーEacc(i)(*)が計算され、すべての必要な絶対温度が計算されており、かつ、すべての必要な絶対温度がより精細な分解能に向かって下方に伝播している。従って、Compute_energy(i)は、終了し(ステップ650)、および制御を開始したCompute_Energy(i+1)への制御に戻る(ステップ644)。制御が最終的にレベルi=nresolutions−1に戻された場合、Compute_Energy(i)は終了し(ステップ650)、プロセス600のステップ606への制御に戻る。
【0091】
再び、ステップ630に戻って(図6B)、i=0である場合、従って、Compute_Energy()は、底(最精細)分解能のエネルギーEacc(0)(*)を計算するよう求められている。ある実施形態において、エネルギーEacc(0)(*)は、プリントヘッドエレメント520a〜iに供給されるべきエネルギーである。プロセス620は、等式3(ステップ652)を用いてエネルギーEacc(0)(*)を計算する。プロセス620は、エネルギーEacc(0)(*)をプリントヘッドエレメント520a〜iに供給して、所望の濃度d(n,*)を生成する(ステップ654)。
【0092】
上述のように、分解能i=0における参照点の数は、プリントヘッドエレメント520a〜iの数とは異なり得る(これよりも大きいか、または小さい)。参照点がエレメントよりも少ない場合、絶対温度STnew(0)(*)は、プリントヘッドエレメントの分解能に補間され、従って、ステップ652がステップ654におけるプリントヘッドエレメントに供給されるべきエネルギーEacc(0)(*)を計算するために、適用される。エネルギーEacc(0)(*)は、その後、分解能i=0にデシメーションされて戻され、プロセス620が再び開始される。
【0093】
nの値がインクリメントされ、次のプリントヘッドサイクルへの進行を時間で表す(ステップ656)。n>nmax(ステップ658)である場合、ソースイメージ100の印刷が完了し、かつ、プロセス620およびプロセス600の両方が終了する(ステップ660)。そうでない場合、Compute_Energy(i)は、終了し(ステップ662)、Compute_Energy(i)によって用いられる再帰が終わって抜け出ることを表す。ステップ662におけるCompute_Energy(i)の終了は、ステップ644(図6C)におけるCompute_energy(i+1)への制御に戻る。プロセス600は、デジタルイメージの印刷が完了するまでステップ608を繰返す。
【0094】
従って、図6A〜図6Dに示されるプロセス600およびプロセス620は、上述の熱履歴を補償する技術によりデジタルイメージ(例えば、ソースイメージ100)を印刷するために用いられ得ることが理解されるべきである。
【0095】
上述の、および詳細に後述される本発明の種々の実施形態の特徴は、多くの利点を提供することが理解されるべきである。
【0096】
本発明の種々の実施形態の1つの利点は、これらの実施形態が、上述の「濃度のドリフト」の問題を低減または除去することである。より厳密には、プリントヘッドエレメントに供給されるべきエネルギーを計算する場合に、プリントヘッドの現在の周辺温度、ならびにプリントヘッドの熱履歴およびエネルギー履歴を考慮に入れることによって、プリントヘッドエレメントは、所望の濃度を生成するために必要な温度にのみ、より正確に上昇される。
【0097】
本発明の種々の実施形態のさらなる利点は、これらが、プリントヘッドエレメント520a〜iに供給された入力エネルギーE(0)(*,*)を、所望の濃度d(*,*)を生成するために必要または所望に応じて、増加または減少させ得ることである。熱履歴の影響を補償しようとする従来のシステムは、時間の経過に従ってプリントヘッドエレメントの温度の上昇を補償するために、通常、サーマルプリントヘッドに供給されたエネルギーの量をしだいに減少させる。対照的に、本発明の種々の実施形態によって用いられるモデルの一般性は、これらが、特定のプリントヘッドエレメントに供給されるエネルギーの量を柔軟に増加または減少させることができる。
【0098】
例えば、図7を参照して、時間の経過に従ってプリントヘッドエレメントに供給されるエネルギーの2つのグラフ702および704が示される。グラフ702および704の両方は、2つの高濃度勾配(それぞれ25および50と番号付けされたピクセル位置付近)を含むピクセルのカラムを印刷するために、プリントヘッドエレメントに供給されたエネルギーの量を表す。グラフ702(実線で示される)は、従来のサーマルプリンタによってプリントヘッドエレメントに供給されるエネルギーを表し、グラフ704(破線で示される)は、逆プリンタモデル102のある実施形態によってプリントヘッドエレメントに供給されるエネルギーを表す。グラフ704に示されるように、逆プリンタモデル102は、第1の高濃度勾配において、従来のサーマルプリンタよりも多い量のエネルギーを供給する。これは、プリントヘッドエレメントの温度をより高速で上昇させ、これにより、出力において、より鮮鋭なエッジを生成する傾向がある。同様に、逆プリンタモデル102は、第2の高濃度勾配において、従来のサーマルプリンタよりも少ない量のエネルギーを供給する。これは、プリントヘッドエレメントの温度をより高速で低減し、これにより、出力において、より鮮鋭なエッジを生成する傾向がある。
【0099】
本発明の種々の実施形態が、上述の図7の記載に基づいて、所望の出力濃度dを生成するために、必要に応じて、プリントヘッドエレメントに供給されるエネルギーの量を柔軟に増加または減少させ得るということが理解されるべきである。逆プリンタモデル206の柔軟性は、(入力エネルギーE(n)を生成するために用いられる)補正係数ΔE(n)(図4)が、プリントヘッドエレメントごとに、およびプリントヘッドサイクルごとに任意の適切な態様で、および任意の組み合わせで変更されることを可能にする。例えば、補正係数ΔE(n)は、正、負、または0の任意の組み合わせであり得る。さらに、特定のプリントヘッドエレメントjの補正係数ΔE(n,j)は、あるプリントヘッドサイクルから次のプリントヘッドサイクルに向かって増加するか、減少するか、または同じ状態に留まり得る。複数のプリントヘッドエレメントの補正係数は、任意の組み合わせで、プリントヘッドサイクルごとに増加するか、減少するか、または同じ状態に留まり得る。例えば、第1のプリントヘッドエレメントj1の補正係数は、あるプリントヘッドサイクルから次のプリントヘッドサイクルに向かって増加し得るが、第2のプリントヘッドエレメントj2の補正係数は減少する。
【0100】
逆媒体濃度モデル206によって生成され得る種々の補正係数のこれらの例は、図4に示される逆媒体濃度モデル206の柔軟性を示す例示にすぎない。より一般的に、逆媒体濃度モデル206がサーマルプリンタ108の熱履歴の影響を正確に補償する能力は、濃度ドリフトおよび不鮮明なエッジ(blurred edge)等のサーマルプリンタと通常関連した種々の問題の影響が緩和されることを可能にする。本発明の逆媒体濃度モデル206、ならびに他の局面および実施形態の種々の他の利点は、当業者に明らかである。
【0101】
本発明の種々の実施形態の別の利点は、これらがプリントヘッドエレメントに供給されるべきエネルギーを効率的な計算方法で計算することである。例えば、上述のように、本発明のある実施形態において、入力エネルギーは、2つの1次元関数(G(d)およびS(d))を用いて計算され、これにより、単一の2次元関数F(d,Ts)を用いるよりも入力エネルギーが効率的に計算されることを可能にする。
【0102】
特に、fが任意の2つの分解能間のデシメーション係数である場合、ある実施形態において、ピクセルごとに実行される加算の数の上限が、等式12によって、大きなfの場合、
【0103】
【数5】
(等式12)
が求められる。
【0104】
さらに、ある実施形態において、ある実施形態においてピクセルごとに実行される乗算の数の上限が、等式13によって、大きなfの場合、
【0105】
【数6】
(等式13)
が求められる。
【0106】
ある実施形態において、2つのルックアップがピクセルごとに実行される。実験的使用において、本発明の種々の実施形態は、1.6msのプリントヘッドサイクル周期を有するサーマルプリンタにおけるリアルタイムの使用を可能にするために、入力エネルギーを十分高速で計算することが可能であることが示された。
【0107】
本発明の種々の実施形態に関してこれまで記載されてきた。下記のものを含むが、これらに限定されない種々の他の実施形態も請求項の範囲に含まれる。
【0108】
本明細書中で、熱転写プリンタに関していくつかの実施形態が記載され得るが、これは、本発明を限定するのではないことが理解されるべきである。むしろ、上述の技術は、熱転写プリンタ以外のプリンタ(例えば、ダイレクトサーマルプリンタ)に適用されてもよい。さらに、上述のサーマルプリンタの種々の特徴は、例示のためにのみ記載されるにすぎず、本発明を限定するものではない。
【0109】
上述の実施形態の種々の局面は、例示のために提供されるにすぎず、本発明を限定するものではない。例えば、サーマルプリントヘッドのモデルにおいて、プリントヘッド500における任意の数のレイヤ、および任意の数の分解能があり得る。さらに、プリントヘッドレイヤと分解能との1対1の対応関係は必要ない。むしろ、プリントヘッドレイヤと分解能との多対1または1対多の関係があり得る。各分解能において任意の数の参照点があり得、分解能間に任意のデシメーション係数があり得る。特定のガンマ関数および感度関数が記載されたが、他の関数が用いられてもよい。
【0110】
これまでに示されかつ記載された種々の等式の結果は、種々の方法の任意で生成され得ることが理解されるべきである。例えば、このような等式(等式1のような)は、ソフトウェアにおいて実現され得、その結果がその場で(on−the−fly)計算され得る。あるいは、そのような等式への入力、およびそれらの対応する出力を格納するルックアップテーブルが事前に生成されてもよい。例えば、計算効率を高めるために、等式に対する近似もまた用いられ得る。さらに、これらの任意の組み合わせまたは他の技術が、上述の等式を実行するために用いられ得る。従って、上述の記載における等式の結果を「computing」および「calculating」するなどの用語の使用は、その場で計算することを意味するだけではなく、むしろ、同じ結果を生成するために用いられ得る任意の技術を意味することが理解されるべきである。
【0111】
一般に、上述の技術は、例えば、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、または、これらの任意の組み合わせで実現され得る。上述の技術は、プロセッサ、このプロセッサによって読み出し可能な格納媒体(例えば、揮発性および不揮発性メモリおよび/または格納素子を含む)、少なくとも1つの入力デバイス、および少なくとも1つの出力デバイスを含むプログラマブルコンピュータおよび/またはプリンタ上で実行する1つ以上のコンピュータプログラムで実現され得る。本明細書中に記載された機能を実行し、かつ、出力情報を生成するために入力デバイス用いて入力されたデータにプログラムコードが適用され得る。出力情報は、1つ以上の出力デバイスに適用され得る。
【0112】
本発明の種々の実施形態と共に用いるための適切なプリンタは、通常、プリントエンジンおよびプリンタコントローラを備える。プリンタコントローラは、ホストコンピュータからプリントデータを受信して、プリントデータに基づいて印刷されるべき論理ハーフトーン等のページ情報を生成する。プリンタコントローラは、印刷されるべきプリントエンジンにページ情報を伝送する。プリントエンジンは、ページ情報によって特定されたイメージの物理的印刷を出力媒体上で実行する。
【0113】
本明細書中に記載されたエレメントおよびコンポーネントは、さらなるコンポーネントにさらに分割され得るか、または、同じ機能を実行する、より少ない数のコンポーネントを形成するために結合される。
【0114】
上記の請求項の範囲に含まれる各コンピュータプログラムは、アセンブラ言語、機械語、高級手続き型プログラム言語、または、オブジェクト指向プログラム言語等の任意のプログラム言語で実現され得る。プログラム言語は、コンパイルまたはインタプリタされたプログラム言語であり得る。
【0115】
各コンピュータプログラムは、コンピュータプロセッサで実行するためのマシン読み取り可能格納デバイスにおいて有形的に組み込まれたコンピュータプログラム製品において実現され得る。本発明の方法ステップは、入力を操作し、かつ出力を生成することによって、本発明の機能を実行するために、コンピュータ読み取り可能媒体上で有形的に組み込まれたプログラムを実行するコンピュータプロセッサによって実行され得る。
【0116】
本発明が、特定の実施形態に関して上述されたが、これまでの実施形態は、例示として提供されたにすぎず、本発明の範囲を限定または定義するものではないことを理解されたい。上記の請求項の範囲によって定義される他の実施形態もまた、本発明の範囲に含まれる。上記の請求項の範囲に含まれる他の実施形態は、上記のものを含むが、これらに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】図1は、本発明の1つの実施形態による、デジタル画像の印刷に用いられるシステムのデータフローの図である。
【図2】図2は、本発明による1つの実施形態に用いられる、逆プリンタのデータフローの図である。
【図3】図3は、本発明による1つの実施形態に用いられる、サーマルプリンタモデルのデータフローの図である。
【図4】図4は、本発明による1つの実施形態に用いられる、逆媒体濃度モデルのデータフローの図である。
【図5A】図5Aは、本発明の1つの実施形態による、サーマルプリントヘッドの概略的側面図である。
【図5B】図5Bは、本発明の1つの実施形態による、ヘッド温度モデルによって使用される空間的/時間的格子の図である。
【図6A】図6Aは、本発明の1つの実施形態による、サーマルプリントヘッド要素に供給されるエネルギーの計算に使用される工程のフローチャートである。
【図6B】図6Bは、本発明の1つの実施形態による、サーマルプリントヘッド要素に供給されるエネルギーの計算に使用される工程のフローチャートである。
【図6C】図6Cは、本発明の1つの実施形態による、サーマルプリントヘッド要素に供給されるエネルギーの計算に使用される工程のフローチャートである。
【図6D】図6Dは、本発明の1つの実施形態による、サーマルプリントヘッド要素に供給されるエネルギーの計算に使用される工程のフローチャートである。
【図7】図7は、従来のサーマルプリンタによってサーマルプリントヘッド要素に供給されるエネルギーと、本発明の1つの実施形態によってサーマルプリントヘッド要素に供給されるエネルギーとを図示するグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【図1】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【公開番号】特開2008−94108(P2008−94108A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−1652(P2008−1652)
【出願日】平成20年1月8日(2008.1.8)
【分割の表示】特願2003−522813(P2003−522813)の分割
【原出願日】平成14年5月16日(2002.5.16)
【出願人】(591193347)ポラロイド コーポレイション (27)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月8日(2008.1.8)
【分割の表示】特願2003−522813(P2003−522813)の分割
【原出願日】平成14年5月16日(2002.5.16)
【出願人】(591193347)ポラロイド コーポレイション (27)
【Fターム(参考)】
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