説明

熱橋キャップと熱橋キャップを用いた断熱方法

【課題】迅速かつ容易な作業性と確実な熱遮断効果とを両立した熱橋キャップと熱橋キャップを用いた断熱方法とを実現することを目的とする。
【解決手段】軸部が骨材に嵌挿されて骨材を連結するボルトの頭部に嵌合する円筒状の第一の凹部を形成する内壁と、第一の凹部の周囲に円環状の第二の凹部を形成する外壁と、内壁と外壁とが凸設される底面とを備え、骨材の建屋外側の壁面に凹設されたボルトの頭部に、第一の凹部が嵌合した場合に、ボルトの頭部と骨材との間に配置されたワッシャに内壁の端部が当接することでボルトの頭部と底面との間に空間が形成されるとともに、骨材の建屋外側の壁面から底面が突出しないような内壁の高さである熱橋キャップとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取り付けが容易な熱橋キャップと熱橋キャップを用いた断熱方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、柱、梁、土台等の各骨材を連結し、これを骨格フレームとした木造家屋等が建築される。また、このような骨材、例えば柱と梁とを容易に連結するために、骨材に固定された板部の端部にボルトを突設した板部材と、対応するナットと、で構成される連結部材が使用される場合もある。
【0003】
板部材のボルトを柱の貫通孔に内側から挿通し、板部を梁に釘などで固定し、柱外面に突出したボルト端部にナットを螺着することで、柱と梁とを連結する羽子板ボルトと呼ばれる連結板部材が知られている。
【0004】
また、木造家屋に対する高機密性、高断熱性及び高耐久性の要求が増大するのに伴い、柱、梁、土台等の各骨材を連結板部材で連結した場合に生じる種々の問題点も無視できない解決課題となってきている。
【0005】
例えば、羽子板ボルトを使用して骨材を連結する場合、骨材に連結板部材のボルトを挿通させる貫通孔を設けるので、この貫通孔及びボルトを介して熱が伝導され、施工後(連結後)の家屋は機密性及び断熱性に欠けることが懸念される。
【0006】
すなわち、連結板部材を構成する金属製のボルトの両端部、または/およびナットが家屋の屋外側及び屋内側へ各々露出するので、特に家屋の屋外側と屋内側とで大きな寒暖の差が生じる冬場等の環境下においては、ボルトがそれを介して熱が伝導されるいわゆる熱橋となって、断熱効果が低減されることが懸念される
【0007】
また、例えば屋外側の冷たい空気で冷やされたボルトの屋内側端部が、屋内側で暖かい空気及び湿気に触れ、屋内側の端部に結露が生じ、生じた結露に起因してボルトが錆びたり、結露による水分が骨材に浸透・滴下して腐食等の好ましくない状態を招来することが懸念される。
【0008】
このため、特に気温差の激しい地域に建築される家屋の屋外側に位置する骨材の連結部等においては、骨材の老朽化や腐食が加速的に促進されたり、場合によっては家屋全体の耐久性を低下させる等の問題が生じる。
【0009】
また、カバー体を骨材の表面に露出する連結部材の端部内面に設けた凹部を嵌合止着させることで当該端部を覆うようにして付設することで、連結部材の端部を露出したままにしておいた場合に比して機密性及び断熱性が良好となり、例えば冬場などの家屋の外側が冷たく且つ内側が暖かい環境下においては、内側の暖かい空気と冷たい外気とがボルト部材で連結されることがなくなり断熱効果が劣化してしまうことがなく、この連結部材の端部が直接外気に触れることがないため結露の発生を可及的に防止することができる技術思想が、例えば下記特許文献1等に開示されている。
【0010】
また、木造建物の構成骨材(木材)の組付け、固定に用いられているボルトや釘或いは接合金物等の金属製物品は、その一部(例えば、ボルト頭部)が木材表面に露出し、かつ、露出したままの状態におかれているので結露し、多年に渉る該結露水によって当該物品が錆ついたり、木材部が腐食したりして当該物品の機能が劣化するとの問題点を解決するために、木造建物の木材表面に露出する金属製物品部分の表面を、該部分を取り囲んで木材表面に接着した、耐候性、断熱性および非透湿性のあるシート片で套装した構成とする技術思想が、例えば下記特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2000−027835号公報
【特許文献2】特開2004−218205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ボルトとナット等による連結箇所において、ボルトまたはナットが骨材から突出するか、ボルトまたはナットを被覆するカバー体やシート片が骨材から突出することは、例えば骨材に外壁を隣接して装着する場合などにおいて、好ましくなかった。また、骨材から突出したボルト端部等は、周囲の温度等環境変化の影響を特に受けやすいことが懸念される。
【0013】
また、仮にボルト等に発泡断熱材を吹き付け塗布してこれを被覆した場合には、吹き付けた発泡断熱材が乾燥するまでに時間を要するとともに、吹きつけ後の過剰塗布分に対する削り取り作業工程が必要になるなど、作業効率が高いものではなかった。
【0014】
本願発明は、上述の問題点に鑑み為された発明であって、迅速かつ容易な作業性と確実な熱遮断効果とを両立した熱橋キャップと熱橋キャップを用いた断熱方法とを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の熱橋キャップは、軸部が骨材に嵌挿されて骨材を連結するボルトの頭部に嵌合する円筒状の第一の凹部を形成する内壁と、第一の凹部の周囲に円環状の第二の凹部を形成する外壁と、内壁と外壁とが凸設される底面とを備え、骨材の建屋外側の壁面に凹設されたボルトの頭部に、第一の凹部が嵌合した場合に、ボルトの頭部と骨材との間に配置されたワッシャに内壁の端部が当接することでボルトの頭部と底面との間に空間が形成されるとともに、骨材の建屋外側の壁面から底面が突出しないような内壁の高さであることを特徴とする。
【0016】
本発明の熱橋キャップは、好ましくは第二の凹部の少なくとも一部に配設された断熱材を備えることを特徴とする。
【0017】
本発明の熱橋キャップは、さらに好ましくはボルトの頭部と底面との間に形成される空間に断熱材を備えることを特徴とする。
【0018】
本発明の熱橋キャップは、さらに好ましくは白炭パウダーを含有する材質で形成されることを特徴とする。
【0019】
本発明の熱橋キャップは、さらに好ましくはアクリル系樹脂にゴム素材を含有する合成樹脂で形成されることを特徴とする。
【0020】
本発明の熱橋キャップは、さらに好ましくは外壁の外周の少なくとも一カ所に凸部を備えることを特徴とする。
【0021】
本発明の熱橋キャップを用いた断熱方法は、上述のいずれかに記載の熱橋キャップを用いた断熱方法であって、骨材に装着されたボルトの頭部に第一の凹部を嵌合させる工程と、内壁の端部がワッシャに当接して、骨材の建屋外側の壁面から底面が突出しない状態まで熱橋キャップを押圧する工程と、を有することを特徴とする熱橋キャップを用いた断熱方法。
【0022】
本発明の熱橋キャップを用いた断熱方法は、好ましくは骨材がSE構法により組み立てられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
迅速かつ容易な作業性と確実な熱遮断効果とを両立した熱橋キャップと熱橋キャップを用いた断熱方法とを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施形態の熱橋キャップを、骨材を連結するボルトの頭部に取り付けた状態を説明する概念図である。
【図2】熱橋キャップを骨材の壁面に設けられた凹部に嵌合させようとする工程を説明する斜視図である。
【図3】熱橋キャップの構造概要を説明する概念図であって、(a)が熱橋キャップの斜視図であり、(b)が熱橋キャップに断熱材を配置してさらに断熱効果を向上させた構造を模式的に説明する図であり、(c)は(b)に説明する熱橋キャップのA−A’断面図を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
建屋の骨組みを構成する木またはセメント等の骨材は、比較的熱の伝導効率が低く、一定の断熱効果が期待できる一方、骨材同士を固定するボルト等の金属部材は、比較的熱の伝導効率が高い。
【0026】
このため、冬場等外気温と内気温との差が生じる環境下においては、建屋の外壁側に位置するボルト頭部から熱が逃げて冷却されるので、建屋内側に位置するボルト軸端部やナット等が建屋内側の環境温度よりも低温となり、ここに結露が生じる一因となることが知られている。建屋形状を支える構造部材において、このような結露が生じることは好ましくない。
【0027】
本実施形態において説明する熱橋キャップは、建屋の建築時等に使用されるボルトに装着し、ボルト頭部が冷却されたり加熱されたりすることを抑制し、すなわちボルト頭部を介した熱の伝導を遮断する。
【0028】
図1は、実施形態の熱橋キャップ100を、骨材300を連結するボルト200の頭部に取り付けた状態説明する概念図である。図1において、骨材300は、例えば4寸角程度の木材とすることができる。
【0029】
図1から理解できるように、骨材300にはボルト200の頭部とワッシャ400とが配置される凹部320が設けられている。凹部320の深さは、ボルト200を完全に取り付けた状態で、ボルト200の頭部が骨材300の外壁側の壁面310から突出しない程度に、十分なクリアランスを設けられている。
【0030】
また、図1には示していないが、ボルト200の軸部は骨材300内を貫通するとともに、ワッシャ400に対向する他のワッシャを介してナットが嵌め込まれて締結される。この状態において、ボルト200の頭部及びワッシャ400を含めた凹部320を充填するように、発泡断熱材をスプレー等により吹き付け塗布する断熱対策も考えられる。
【0031】
しかし、発泡断熱材の吹きつけ塗布は、溶剤等が乾燥するまでの時間を要するだけではなく、凹部320からはみ出した過剰な発泡断熱材を、壁面310と面一になるように削り取る研磨工程が追加的に必要となる。
【0032】
このため、発泡断熱材の吹きつけ塗布は、施工現場における作業効率が必ずしも良いとはいえない。この点、実施形態で提示する熱橋キャップ100は、ボルト200の頭部に嵌め込むだけでよいので、極めて簡易かつ短時間で容易にボルト200に対する断熱処理を遂行することが可能である。
【0033】
図1に示すように、熱橋キャップ100は、底面110と、底面110に垂直に立設された外壁130と内壁120とを備える。外壁130の外径は、骨材300に設けられる凹部320の内径と略同一であるか、やや小さい程度とされる。
【0034】
また、外壁130の外周には3ミリメートル程度以内で外方に突出した凸部140が設けられており、凹部320との間で適切な摩擦力を生じて、熱橋キャップ100の脱落を防止する。
【0035】
また、骨材300は、建屋の完成後時間の経過とともに、乾燥等が進むこと等によりある程度収縮することが知られている。このため、施工時に嵌合させた熱橋キャップ100は、骨材300が収縮するまでは、凸部140と凹部320との間の摩擦力等により脱落しない程度に保持され、その後骨材300の収縮が進行して凹部320の内径が小さくなれば、外壁130の外周全体が凹部320の内壁により支持されて強固に保持される。
【0036】
また、凸部140の凸高さが高すぎれば、外壁130の外周と凹部320との間に過剰に空間が形成されることとなるので、好ましくない。凹部320の内径と外壁130の外径とが略一致することが理想的といえるが、製造上及び作業公差の観点からは、凸部140の凸高さは2mm〜3mmとすることが好ましい。また、凸部140は、熱橋キャップ100の装着時に不要な部分が脱落する程度の強度となるように1mm程度以内の径(または厚さ)を有することが好ましい。
【0037】
また、図1に示すように熱橋キャップ100を装着した状態においては、熱橋キャップ100の底面110は、骨材300の壁面310から突出することはない。これにより、外壁側の壁面310に隣接(典型的には接触)して外壁パネル等種々の外壁材を安定して配置することができる。また、壁面310が曲面で構成される場合であれば、当該曲面に整合しかつ曲面から突出しないような底面110の形状とすることが好ましい。
【0038】
凹部320の内径は、規格によりφ60mm,φ50mm,φ40mm,φ30mm等が用いられるが、凹部320の内径に対応する外径を有する熱橋キャップ100を予め準備しておくことで、現実の組み立て工程における施工作業をスムースに遂行できる。
【0039】
また、熱橋キャップ100の内壁120の内径は、ボルト200の頭部に整合してちょうどこれに嵌合する程度の径とする。また、熱橋キャップ100の内壁120の底面110からの高さは、ボルト200の頭部の高さよりやや高く構成する。
【0040】
これにより、図1に示すように内壁120の端部がワッシャ400に接触・当接した状態で、頭部200と底面110との間に、空間500が形成される。また、この空間500内の空気は流動しないので熱を運搬することがなく、空間500は頭部200を介した熱の伝導を遮断するのに極めて効果的である。
【0041】
また、外壁130の高さは、内壁120の高さより高くしてもよく、内壁120の高さより低くしてもよい。しかし、外壁130の高さを内壁120の高さより高くする場合には、内壁120の高さとワッシャ400の厚さとの和より低く構成することが好ましい。
【0042】
すなわち、外壁130の高さが高すぎれば、内壁120の端部がワッシャ400に当接するよりも先に、外壁130の端部が凹部320の底面に当接するので、内壁120の端部とワッシャ400との当接等に基づく、空間500内等の空気の密閉効果が低減されてしまう。
【0043】
好ましくは、熱橋キャップ100の内壁120と底面110とワッシャ400とで空間500を包含する密閉空間を形成し、ボルト200の頭部を介した熱の伝導を遮断するのがよい。
【0044】
図2は、熱橋キャップ100を骨材300の壁面310に設けられた凹部320に嵌合させようとする工程を説明する斜視図である。
【0045】
熱橋キャップ100は、アクリル樹脂等の素材により形成されてもよく、好ましくはゴム素材を含有するアクリル樹脂を用いて形成される。これにより、耐衝撃性にすぐれた熱橋キャップ100となるので、図2に示す装着時に木槌ハンマー等で底面110を叩いて凹部320に熱橋キャップ100を確実に嵌め込むことが可能となる。
【0046】
例えば、通常良く知られたアクリル樹脂においては、引張弾性率が3200MPa(試験法:ISO527−2/1A/1)、曲げ強さが120Mpa(試験法:ISO178)、シャルビー衝撃強さ(ノッチなし)が20kJ/m(試験法:ISO179/1aU)、シャルビー衝撃強さ(ノッチあり)が1.9kJ/m(試験法:ISO179/1aA)である。
【0047】
一方、ゴム素材を含有するアクリル樹脂として、例えば引張弾性率が2400MPa(試験法:ISO527−2/1A/1)、曲げ強さが100Mpa(試験法:ISO178)、シャルビー衝撃強さ(ノッチなし)が25kJ/m(試験法:ISO179/1aU)、シャルビー衝撃強さ(ノッチ付)が2.0kJ/m(試験法:ISO179/1aA)の素材を用いることで、より適切な熱橋キャップ100とすることができる。
【0048】
熱橋キャップの材質としては、例えば旭化成ケミカルズ株式会社製のデルペット(登録商標)SR6200等を用いることができる。デルペットは優れた透明性・表面硬度・耐薬品性を備えたメタクリル樹脂成型材料として知られており、特にSR6200においては適度なゴム特性を有することで耐衝撃性にも優れていることが知られている。
【0049】
図1と図2とに説明するように、熱橋キャップ100を装着した状態においては、ボルト200の頭部が外気に触れる懸念が実質的にはなくなる。すなわち、ボルト200の頭部周辺の空気は、内壁120により移動制限されるとともに、さらにその周囲の外壁130及び底面100により、凹部320内に保持される。これにより、熱橋キャップ100は、ボルト200の頭部を介した熱循環の形成を効果的に遮断することができる。
【0050】
図3は、熱橋キャップの構造概要を説明する概念図であって、図3(a)が熱橋キャップ100の斜視図であり、図3(b)が熱橋キャップ100に断熱材を配置してさらに断熱効果を向上させた構造を模式的に説明する図であり、図3(c)は図3(b)に説明する熱橋キャップ100のA−A’断面図を説明する図である。
【0051】
図3(b),(c)に説明する熱橋キャップ100においては、上述した空間500の少なくとも一部または全部を充填する断熱材150が配置されている。すなわち、内壁120により形成される円筒形状の第一の凹部の底面110側の少なくとも一部を被覆するように、断熱材150が設けられる。これにより、ボルト200の頭部を介した熱伝導をさらに効果的に遮断することが可能となる。
【0052】
また、図3(b),(c)から理解できるようにさらに好ましくは、内壁120と外壁130との間に形成される第二の凹部の少なくとも一部または全部を充填する断熱材160が配置される。この場合に、断熱材160の底面110からの高さは、断熱材150の底面110からの高さよりも高くすることができる。
【0053】
また、第二の凹部内からの熱移動を効果的に遮断する観点から、断熱材160は、第二の凹部内における底面110側と外壁130側と内壁側120との少なくとも一部または全部を被覆することが好ましい。これにより、ボルト200の頭部を介した熱伝導をさらに効果的に遮断することが可能となる。断熱材150,160は、例えば発泡樹脂で形成してもよい。
【0054】
上述した熱橋キャップ100は、木造建築工法の一つである、いわゆるSE構法によるボルト頭に適用することができる。SE構法とは、コンピュータ制御による高精度プレカットによって作られた集成材を軸組部分に採用し、接合部にSE金物を使用することによって、強い構造強度を実現し、大空間や大開口を可能にした住宅構法であり、株式会社エヌ・シー・エヌが国土交通大臣の一般認定を取得している手法である。
【0055】
また、熱橋キャップ100は、好ましくは白炭パウダー(典型的には備長炭パウダー)を5重量パーセント程度含有することが好ましい。白炭は、1000℃程度以上で焼成された炭であって、遠赤外線効果に優れることが知られている。
【0056】
また、白炭を含有させた熱橋キャップ100とすることにより、優れた温熱特性が得られることが実証確認できた。すなわち、白炭入りの熱橋キャップ100を装着したボルト200頭部と、白炭入りではない熱橋キャップ100を装着したボルト200頭部と、熱橋キャップ100を装着しないボルト200頭部と、に対し、各々0.5℃の冷風を30分吹き付けた場合の直後のボルト200の頭部表面温度と、対向端に締結されたナット表面の温度とを測定して各々比較した。
【0057】
その結果、白炭入りの熱橋キャップ100を装着した場合には、熱橋キャップ100を装着しない場合に比べてナットの温度下降を平均して1.5℃抑制できた。さらに、白炭入りの熱橋キャップ100を装着した場合には、白炭入りではない熱橋キャップ100を装着した場合に比べてナットの温度下降を平均して1.0℃抑制できることが確認された。
【0058】
また、白炭入りの熱橋キャップ100を装着した場合には、熱橋キャップ100を装着しない場合に比べてボルト200頭部の温度下降を平均して0.5℃抑制できた。さらに、白炭入りの熱橋キャップ100を装着した場合には、白炭入りではない熱橋キャップ100を装着した場合に比べてボルト200頭部の温度下降を平均して0.2℃抑制できることが確認された。
【0059】
また、上述した白炭入りの熱橋キャップ100による断熱効果の確認実験は、断熱材150,160を配置した熱橋キャップで実施したので、断熱材150,160を配置することによる白炭との相乗効果による高い断熱効果を有することが確認できた。
【0060】
実施形態で説明した熱橋キャップ100は、別途切削・研磨工程を必要とせず高い施工効率を有しながら簡易かつ確実にボルト200を介した熱伝導を抑制することができる。また、実施形態で説明した熱橋キャップ100は、骨材300の外壁側壁面310から突出しないので、壁面310に隣接した状態で各種外壁材等を安定かつ確実に配置することが可能である。
【0061】
また、実施形態で説明した熱橋キャップ100は、木槌等で底面110を叩いて装着嵌合させることができ、凸部140により凹部320と適切な摩擦力を有して保持される。
【0062】
また、実施形態で説明した熱橋キャップ100は、装着後の時間経過とともに、外壁130の外周全体が凹部320の内壁から押圧・固定されるので、確実かつ強固に保持されるとともに、その内部に略密閉された空気の外部との対流を遮断して高い断熱効果を奏することができる。
【0063】
また、実施形態で説明した熱橋キャップ100は、ボルト200の頭部を直接覆う内壁120と、内壁120から間隔を隔ててボルト200の頭部を間接的に覆う外壁130とを備えるので、ボルト200を介する熱伝導を効果的に遮断することができる。
【0064】
また、実施形態で説明した熱橋キャップ100は、ボルト200の頭部が、内壁120とワッシャ400と底面110とにより略密閉されるので、好ましい断熱効果を奏することができる。
【0065】
上述した熱橋キャップ100は、実施形態での説明に限定されるものではなく、本実施形態で説明する技術思想の範囲内かつ自明な範囲内で、適宜その構成や材質及び装着方法等を変更することができる。
【0066】
また、熱橋キャップ100は、凹部320への挿入をさらに容易とするため、外壁130の外周にテーパーを設けてもよい。底面110側から端部側にかけて次第に外壁130の外周がやや小さくなるようにテーパーを設けることで、嵌合作業がさらに容易となる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の熱橋キャップは、SE構法をはじめとする各種建築工法等に広く適用できる。
【符号の説明】
【0068】
100・・熱橋キャップ、110・・底面、120・・内壁、130・・外壁、140・・凸部、150・・断熱材、160・・断熱材、200・・ボルト、300・・骨材、310・・壁面、400・・ワッシャ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部が骨材に嵌挿されて骨材を連結するボルトの頭部に嵌合する円筒状の第一の凹部を形成する内壁と、
前記第一の凹部の周囲に円環状の第二の凹部を形成する外壁と、
前記内壁と前記外壁とが凸設される底面と、を備え、
前記骨材の建屋外側の壁面に凹設された前記ボルトの頭部に、前記第一の凹部が嵌合した場合に、
前記ボルトの頭部と前記骨材との間に配置されたワッシャに前記内壁の端部が当接することで前記ボルトの頭部と前記底面との間に空間が形成されるとともに、前記骨材の建屋外側の前記壁面から前記底面が突出しないような前記内壁の高さである
ことを特徴とする熱橋キャップ。
【請求項2】
請求項1に記載の熱橋キャップにおいて、
前記第二の凹部の少なくとも一部に配設された断熱材を備える
ことを特徴とする熱橋キャップ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の熱橋キャップにおいて、
前記ボルトの頭部と前記底面との間に形成される空間に断熱材を備える
ことを特徴とする熱橋キャップ。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の熱橋キャップにおいて、
白炭パウダーを含有する材質で形成される
ことを特徴とする熱橋キャップ。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の熱橋キャップにおいて、
アクリル系樹脂にゴム素材を含有する合成樹脂で形成される
ことを特徴とする熱橋キャップ。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の熱橋キャップにおいて、
前記外壁の外周の少なくとも一カ所に凸部を備える
ことを特徴とする熱橋キャップ。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の熱橋キャップを用いた断熱方法であって、
前記骨材に装着された前記ボルトの頭部に前記第一の凹部を嵌合させる工程と、
前記内壁の端部が前記ワッシャに当接して、前記骨材の建屋外側の前記壁面から前記底面が突出しない状態まで前記熱橋キャップを押圧する工程と、を有する
ことを特徴とする熱橋キャップを用いた断熱方法。
【請求項8】
請求項7に記載の熱橋キャップを用いた断熱方法において
前記骨材はSE構法により組み立てられる
ことを特徴とする熱橋キャップを用いた断熱方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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