説明

熱測定システムおよび漏れ検出方法

【課題】発電システム、タービンシステム、製油所、加工プラント、または流体通路を含む他のシステム内の流体漏れの早期検出により、流体の損失を制限し、システムの完全性を確保することができるシステムを提供する。
【解決手段】システム(12)は、熱放射センサ(42)から少なくとも1つの流体通路(64、66、68)を含む領域の温度を示す信号を受信するように構成された制御装置(44)を含む。制御装置(44)は、その信号に基づいて少なくとも1つの流体通路(64、66、68)内の漏れを検出するようにも構成される。熱放射センサ(42)は、熱電対列を備えることができる。システム(12)は、領域からの熱放射を熱放射センサ(42)に集束するように構成された光学焦点調整装置を備えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する主題は、熱測定システムおよび漏れ検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発電システム、タービンシステム、製油所、加工プラント、または流体通路を含む他のシステム内の流体漏れの検出により、システムを確実に効率的に運転することができる。漏れの早期検出によって、流体の損失を制限し、システムの完全性を確保することができる。視覚に基づくシステム、抵抗率測定システム、および/または振動測定システムなど、多様な漏れ検出システムを使用することができる。残念なことに、こうしたシステムは、入手、設置、維持が高コストであり、流体通路内のより小さい漏れを検出できないことがある。結果として、漏れが検出される前に、漏れている流体がたまる恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願第12/328,145号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
最初に特許請求された本発明の範囲内の幾つかのふさわしい実施形態を以下に要約する。これらの実施形態は、特許を請求する本発明の範囲を限定するものではなく、むしろ、これらの実施形態は、単に本発明の可能な形態の簡単な要約を提供するものである。実際、本発明は、以下に述べる実施形態と同様でもよく、または異なってもよい多様な形態を包含することができる。
【0005】
第1の実施形態では、システムは、少なくとも1つの流体通路を含む領域に向けられた熱放射センサを含む。熱放射センサは、その領域の温度を示す信号を出力するように構成される。システムは、熱放射センサに通信可能に結合された制御装置も含む。制御装置はその信号に基づいて少なくとも1つの流体通路内の漏れを検出するように構成される。
【0006】
第2の実施形態では、システムは、少なくとも1つの流体通路を含む領域の温度を示す信号を熱放射システムから受信するように構成された制御装置を含む。制御装置は、その信号に基づいて少なくとも1つの流体通路内の漏れを検出するようにも構成される。
【0007】
第3の実施形態では、方法は、少なくとも1つの流体通路を含む領域内の熱放射を測定すること、およびその測定に基づいてその領域の温度を決定することを含む。この方法は、その領域の温度に基づいて少なくとも1つの流体通路内の漏れを検出することも含む。
【0008】
添付の図面と併せて以下の詳細な説明を読めば、本発明の上記その他の特徴、態様、および利点がよりよく理解されるであろう。図面では、図面を通して同様の記号は同様の部分を示す。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本技法の幾つかの実施形態による、ガスタービン、蒸気タービン、HRSG、および発電システムの流体通路内の漏れを検出するように構成された熱測定システムを有する複合サイクル発電システムの一実施形態を示す概略流れ図である。
【図2】本技法の幾つかの実施形態による、ガスタービンシステムの流体通路内の漏れを検出するように構成された熱測定システムを含むガスタービンシステムの一実施形態を示すブロック図である。
【図3】本技法の幾つかの実施形態による、流体通路に向けられた熱測定システムを示すブロック図である。
【図4】本技法の幾つかの実施形態による、流体通路から流体が漏れている図3で示した熱測定システムを示すブロック図である。
【図5】本技法の幾つかの実施形態による、流体通路を含む領域内の熱測放射の測定によって流体通路内の漏れを検出するための方法を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の1つまたは複数の特定の実施形態を以下に記載する。これらの実施形態の簡潔な説明を行うため、実際の実施の全ての特徴を本明細書に記載することはできない。理解されるように、こうした実際の実施の開発ではどれも、どの機械工学または設計のプロジェクトでも同様に、開発者の特定の目的を達成するため、実施によって変わる可能性があるシステム関連およびビジネス関連の制約に従うなど、幾つかの実施に特有の決定を行わなければならない。さらに、理解されるように、こうした開発努力は複雑かつ時間を要するものであるが、それにもかかわらず、本開示の恩恵を有する当業者には、設計、製作、および製造の日常的な仕事であろう。
【0011】
本発明の多様な実施形態の要素を導入する場合、冠詞「a」、「an」、「the」、および「said」は、その要素が1つまたは複数存在することを指すものとする。用語「備える(comprising)」、「含む(including)」、および「有する(having)」は、包括的なものとし、列挙した要素以外の追加の要素があってもよいことを指す。
【0012】
本開示の実施形態は、費用効率が高いシステム、および流体通路を含む領域から出る熱放射の測定によって流体通路内の漏れを検出する方法を提供することができる。たとえば、幾つかの実施形態は、少なくとも1つの流体通路を含む領域に向けられた熱放射センサを含む。この熱放射センサは、その領域の温度を示す信号を熱放射センサに通信可能に結合された制御装置に出力するように構成される。制御装置を、その信号に基づいて少なくとも1つの流体通路内の漏れを検出するように構成することができる。たとえば、制御装置は、その領域の温度を流体の漏れを示す閾値と比較することができる。別法として、制御装置は、温度の変化率を流体の漏れを示す閾値と比較することもできる。制御装置を、その領域の数値および/またはグラフの表示を示すように構成されたユーザインターフェースに結合することができる。幾つかの実施形態では、制御装置を、漏れが検出されると、可聴および/または視覚警報器を作動させて、操作者にその状態を警報するように構成することができる。他の実施形態では、制御装置を、漏れが検出されると、少なくとも1つの流体通路を通る流体の流れを停止させるように構成することができる。こうすると、流体がかなり漏れる前に、流体通路を通る流れを停止させ、それによって流体通路を使用するシステムの完全性を確保することができる。
【0013】
熱放射センサは、入手および設置が低コストであるため、熱測定システムは、光学漏れ検出システム、または振動監視システムなど他の漏れ検出システムよりも実施が低コストである可能性がある。たとえば、光学漏れ検出システムは、漏れる流体を可視指示するための捜査用の高解像度カメラを使用することがある。理解されるように、こうした高解像度カメラは、熱電対列など熱放射センサよりも大幅に高コストである。さらに、光学漏れ検出システムは、監視される領域を照明するためのライトを使用することがある。こうしたライトは、たとえば、タービンシステム内の高温の構成要素に近接するため、設置および交換が高コストになる恐れがある。また、熱放射センサは流体通路の広い面積にわたり温度を測定することができるため、所与の有効範囲に対して高解像度カメラよりも少数の熱放射センサをシステムで使用することができる。
【0014】
さらに、この熱測定システムは、光学漏れ検出システム、および/または振動監視システムよりも精度を向上させることができる。たとえば、振動監視システムは、流体管路内の大きい亀裂形成と関連する振動を検出するだけである。対照的に、この熱測定システムは、より小さい漏れを検出するのに十分な感度があり、それによって、亀裂が広がる前に亀裂を確認することができる。したがって、この漏れ検出システムは、流体がかなり漏れる前に、その状態を操作者に通知することができ、それによって流体通路を含むシステムの完全性が確保される。
【0015】
図1は、ガスタービン、蒸気タービン、および排熱回収ボイラ(HRSG)を有する、複合サイクル発電システム10の一実施形態の概略流れ図である。流体通路内の漏れを検出するための熱測定システムの実施形態についての背景を示す目的で、システム10を以下に記載する。理解されるように、以下に記載する熱測定システムを使用して、他の発電システム、タービンシステム、加工プラント、または、流体通路を含む任意の他のシステム内の流体の漏れを検出することができる。システム10は、電力を発生するための第1の発電機14を駆動するガスタービン12を含むことができる。ガスタービン12は、タービン16、燃焼器または燃焼室18、および圧縮器20を含むことができる。システム10は、第2の発電機24を駆動するための蒸気タービン22を含むこともできる。ガスタービン12および蒸気タービン22は、図で示した実施形態のように、別個の発電機14および24を駆動することができるが、ガスタービン12および蒸気タービン22を直列で使用して、単一シャフトによって単一負荷を駆動することもできる。図で示した実施形態では、蒸気タービン22は1つの低圧セクション26(LP ST)、1つの中圧セクション28(IP ST)、および1つの高圧セクション30(HP ST)を含むことができる。しかし、蒸気タービン22、ならびにガスタービン12の特定の構成は、実施に特有のものでもよく、任意の組合せのセクションを含むことができる。
【0016】
システム10は多段型HRSG32を含むこともできる。図で示したHRSG32は、こうしたHRSGシステムの全般的な動作を伝えるところが示されている。ガスタービン12から加熱排気ガス34をHRSG32に輸送し、蒸気タービン22を駆動するのに使用する蒸気の加熱に使用することができる。蒸気タービン22の低圧セクション26からの排気をコンデンサ36に向けることができる。次いで、コンデンサ36からの復水を復水ポンプ38の助けを借りてHRSG32の低圧セクション26に向けることができる。
【0017】
複合サイクル発電システム10は、発電システム10内の流体の漏れを検出するように構成された熱測定システム40も含む。熱測定システム40は、発電システム10の各領域に向けられた熱放射センサ42を含む。各熱放射センサ42は、それぞれ領域の温度を示す信号を出力するように構成される。たとえば、図で示した構成では、1つの熱放射センサ42がタービンシステム12に向けられ、第2の熱放射センサ42が、ガスタービン12から加熱排気ガス34をHRSG32に運搬する流体通路に向けられる。しかし、理解されるように、他の実施形態は、発電システム10の他の領域に向けられる、これよりも多い、または少ない熱放射センサ42を含むことができる。たとえば、1つまたは複数の熱放射センサ42をHP ST30、IP ST28、LP ST26、HRSG32、および/または発電システム10のこれらの要素の間で蒸気を運搬する流体通路に向けることができる。また他の実施形態は、コンデンサ36、復水ポンプ38、および/またはこれらの構成要素とLP ST26、かつ/またはHRSG32との間に延在する流体管路に向けられる1つまたは複数の熱放射センサ42を含むことができる。さらに、複数の熱放射センサ42を発電システム10の個々の構成要素の様々な領域に向けて、各領域内の温度を測定することができる。たとえば、以下で詳細に論じるように、タービンシステム12は、複数の熱放射センサ42を含んで、タービンシステム12内の多様な流体通路の温度を検出することができる。また、理解されるように、熱測定システム40の精度は、熱放射センサ42の視野に少なくとも部分的に依存することができる。したがって、より小さい領域に向けられた熱放射センサ42は、より大きい領域に向けられた熱放射センサ42よりも正確な温度測定値を生成することができる。
【0018】
理解されるように、熱放射センサ42は物体からの電磁エネルギを測定して、その物体の温度を決定する。たとえば、熱放射センサ42は、赤外スペクトル内の周波数を有する熱放射を測定することができる。以下で詳細に論じるように、幾つかの赤外線放射の強度は物体の温度に比例する可能性がある。幾つかの実施形態では、熱放射センサ42は、こうした放射を検出し、温度を示す信号を出力するように構成される。また、理解されるように、多様な熱放射センサ42を使用して、発電システム10内の領域の温度を決定することができる。たとえば、幾つかの実施形態は、熱電対列を使用することができる。理解されるように、熱電対列は、強化した信号出力を得るために直列に接続された複数の熱電対を含む。熱電対は、温接点と冷接点の間の起電力(emf)を生成することによって、その接点の間の温度差を測定する。たとえば、温接点を領域に向けて熱放射を測定し、冷接点を熱吸収装置に結合して、冷接点の温度が周囲温度と実質的に等しくなるようにすることができる。熱電対が直列に接続されるため、熱電対列は、全ての熱電対のemfを合計して、強化した電圧の出力を提供する。代替実施形態は、放射高温計、赤外線検出器(たとえばCCD)、または他の熱放射センサを使用することができる。
【0019】
本実施形態では、熱放射センサ42は制御装置44に通信可能に結合される。制御装置44は、熱放射センサ42からの温度信号出力に基づいて、発電システム10の1つまたは複数の流体通路内の漏れを検出するように構成される。たとえば、ガスタービンシステム12から加熱排気ガス34をHRSG32に運搬する流体通路内に亀裂が発生した場合、漏れるガスのために、その流体通路の周囲の領域の温度が上昇する。したがって、その流体通路に向けられた熱放射センサ42はその領域内の温度上昇を示す信号を出力する。制御装置44は信号を受信し、上昇した温度に基づいて、流体の漏れを確認する。こうすると、漏れを迅速に検出することができ、適切な修正処置をとることができる。同様に、発電システム10中で蒸気を運搬する流体通路に向けた熱放射センサ42によって、蒸気漏れを検出することができる。さらに、以下に詳細に記載するように、タービンシステム12内の流体の漏れを、タービンシステム12に向けられた1つまたは複数の熱放射センサ42によって検出することができる。本実施形態では単一の制御装置44が使用されているが、理解されるように、代替実施形態は、熱放射センサ42ごとに1つの制御装置、またはセンサ42のグループごとに1つの制御装置を含むことができる。
【0020】
本実施形態は、制御装置44に通信可能に結合されたユーザインターフェース46も含む。ユーザインターフェース46は、発電システム10内の各測定領域の温度を表示するように構成された数値ディスプレイ、および/または時間の関数として温度を表示するように構成されたグラフィカルインターフェースを含むことができる。こうすると、操作者は温度を監視して、流体の漏れが存在するかどうかを判断することができる。さらに、ユーザインターフェース46は、発電システム10の特定の領域内に漏れが検出された場合に、操作者に警告するように構成された視覚および/または可聴警報器を含むことができる。たとえば、制御装置44が周囲の領域の温度に基づいて流体通路が漏れていると決定した場合、可聴および/または視覚警報器を作動させて、操作者が適切な行動をとることができるようにすることができる。幾つかの実施形態では、ユーザインターフェース46は発電システム10に通信可能に結合され、漏れている通路への流体の流れを自動的に遮断するように構成される。こうすると、かなり漏れる前に、流体の流れを停止させることができ、それによって発電システム10の完全性が確保される。
【0021】
図2は、ガスタービンシステム12の流体通路内の漏れを検出するように構成された熱測定システム40を含む、ガスタービンシステム12の一実施形態のブロック図である。タービンシステム12は、燃料噴射器48、および燃焼器18を含む。液体燃料、および/または天然ガスなどガス状燃料がタービンシステム12に送られ、燃料噴射器48を通って燃焼器18内に送られる。以下で論じるように、燃料噴射器48は燃料を噴射し、圧縮空気と混合するように構成される。燃焼器18は、燃料−空気混合物に点火して燃焼させ、次いで熱い圧縮排気ガスをタービン16内に通す。排気ガスはタービン16内のタービンブレードを通過し、それによってタービン16を回転させる。タービン16内のブレードとシャフト50の結合によって、シャフト50が回転される。図で示したように、シャフト50はタービンシステム12中の幾つかの構成要素にも結合される。燃焼過程の排気は、最終的に、タービンシステム12から排気出口52を通って出ることができる。
【0022】
タービンシステム12の一実施形態では、圧縮器ブレードが圧縮器20の構成要素として含まれる。圧縮器20内のブレードをシャフト50に結合することができる。ブレードは、シャフト50がタービン16によって駆動されて回転するときに回転する。圧縮器20は、空気取入れ口54を通して空気をタービンシステム12に取り入れることができる。さらに、シャフト50を負荷56に結合することができ、シャフト50の回転によって駆動することができる。理解されるように、負荷56は、発電機、または外部機械的負荷など、タービンシステム12の回転出力の力を使用することができる任意の適した装置でもよい。たとえば、負荷56は、発電機、飛行機のプロペラなどを含むことができる。空気取入れ口54は、空気58をタービンシステム12内に冷気取入れ口など適した機構を介して取り入れることができる。次いで、空気58は圧縮器20のブレードを通って流れ、それによって、圧縮空気60を燃焼器18に供給する。具体的には、燃料噴射器48は圧縮空気60と燃料を燃料−空気混合物62として燃焼器18に噴射することができる。別法として、圧縮空気60と燃料を燃焼器18内に直接噴射して、混合し燃焼させることもできる。
【0023】
本実施形態では、燃料噴射器48に燃料管路64を通して燃料を供給することができる。理解されるように、液体燃料および/またはガス状燃料が燃料噴射器48に通過しやすくなるように燃料管路64を構成することができる。たとえば、液体燃料を使用する幾つかのタービンシステム12では、燃料が燃料噴射器48に流れる前に、燃料を予熱する。したがって、燃料管路64内の燃料の温度を周囲環境と比較して、より高くすることができる。したがって、燃料管路64内に漏れが発生した場合、加熱された燃料が存在するため、燃料管路64の周囲の領域の温度が上昇する可能性がある。本実施形態では、熱放射センサ42は燃料管路64に向けられる。前に論じたように、熱放射センサ42は制御装置44に通信可能に結合され、制御装置44は、センサ42の視野内の領域の温度に基づいて、流体の漏れを検出する。この構成の結果、燃料管路64内に漏れが発生し、周囲の領域の温度が上昇した場合、熱放射センサ42は温度の上昇を検出し、制御装置44は漏れを確認する。こうした構成により、燃料漏れが発生した直後に、それを検出して、タービンシステム12内にかなりの燃料が漏れる前に、操作者が管路64を通る燃料の流れを停止することができる。
【0024】
本実施形態は、希釈剤(たとえば、窒素、蒸気など)を燃料噴射器48に供給するように構成された希釈剤管路66、および水を水注入システムから、たとえば燃料噴射器48に供給するように構成された水管路68も含む。燃料管路64と同様に、第2の熱放射センサ42が希釈剤管路66に向けられ、第3の熱放射センサ42が水管路68に向けられる。幾つかの構成では、水および/または希釈剤は、それぞれ管路66および/または68の周囲の領域よりも低温でもよい。したがって、それぞれ管路66および/または68から希釈剤および/または水が漏れた場合、周囲の領域の温度が下がる可能性がある。こうした温度の低下を第2および/または第3の熱放射センサ42によって検出することができ、制御装置44に中継することができる。温度の低下に基づいて、制御装置44は、漏れを確認し、その状態を操作者にユーザインターフェース46によって報告する。希釈剤および/または水の漏れが検出された後、操作者は希釈剤管路66および/または水管路68を通る流れを手動で停止することができる。別法として、制御装置44をタービンシステム12に通信可能に結合することができ、漏れの検出に基づいて、流れを自動的に停止するように構成することもできる。
【0025】
本実施形態では、水管路68はタービン16に隣接するように位置付けられる。タービン16の作動中、タービンブレードの周囲のケーシングの温度は、燃焼器18から熱い排気ガスがタービン16を通って流れるときに上昇する。幾つかの実施形態では、ケーシングの温度は、華氏約700、800、または900度よりも上がることがある。水管路68内に漏れが発生した場合、水が熱いタービンケーシングに接触する恐れがある。水の高い熱容量および蒸発の潜熱によって、ケーシングに接触する水が少量であっても、ケーシングに熱衝撃を与え、それによって変形を誘発し、タービンブレードとケーシングの接触を招く恐れがある。この熱測定システム40は、水管路68内の漏れを迅速に確認するように構成されるため、変形を引き起こすのに十分な量の水がタービンケーシングと接触する前に、水流を停止させることができる。したがって、本実施形態は、水漏れに関連する熱衝撃によってタービンブレードと周囲のケーシングが接触する可能性を実質的に低減し、または回避することができる。さらに、単一の熱放射センサ42が水管路68の大きいセクションを監視することができるため、この漏れ検出システムを実施するコストを、たとえば、振動測定、抵抗率、または光学検出を使用することができる代替システムよりも大幅に低下させることができる。
【0026】
図3は、図で示した燃料管路64など流体通路に向けられた熱測定システム40のブロック図である。図で示したように、熱放射センサ42は、検出素子70、フィルタ72、およびレンズ74を含む。幾つかの実施形態では、検出素子70は、直列に電気的に接続されて、強化した出力信号を提供する複数の熱電対を含む熱電対列でもよい。理解されるように、熱電対列は多様な熱放射の周波数を検出することができる。たとえば、幾つかの熱電対列は約0.8から40ミクロンの赤外スペクトル内の電磁波長を検出することができる。さらに理解されるように、赤外スペクトル内の波長の特定のサブセットは、温度決定に大変適している。したがって、熱放射センサ42はバンドパスフィルタ72を使用して、検出素子70に入射する波長の範囲を限定することができる。たとえば、幾つかの実施形態では、バンドパスフィルタ72を、約2から20、4から18、6から16、または約8から14ミクロンの範囲外の波長を有する電磁放射を遮断するように構成することができる。したがって、フィルタ72は、検出素子70に適した範囲の波長を有する熱放射を検出素子70に通過しやすくして、測定された温度に比例する大きさを有する信号を出力するものである。
【0027】
理解されるように、代替実施形態は、他の波長範囲を有する他のバンドパスフィルタを使用することができる。さらに、幾つかの実施形態は、ハイパスフィルタ、ローパスフィルタを使用することができ、あるいはフィルタを省略することができる。また、本実施形態では熱電対列が使用されるが、理解されるように、CCD、または高温計など他の検出素子70を代替実施形態で使用することもできる。
【0028】
この熱放射センサ42は、熱放射を検出素子70上に集束するように構成されたレンズ74など光学焦点調整装置も含む。理解されるように、レンズ74はプラスチック、または硝子など任意の適した材料からなるものでもよい。幾つかの実施形態では、レンズ74をフィルタ72と組み合わせて、単一要素にすることができる。他の実施形態では、レンズ74を省略して、熱放射が熱放射センサ42に直接通るようにすることができる。
【0029】
本実施形態は、図で示した鏡76など第2の光学焦点調整装置も含む。鏡は、熱放射を所望の領域から熱放射センサ42に向けるように構成される。本実施形態は、凹面鏡76を使用して、所望の視野78を確立する。鏡76の形状、および熱放射センサ42の位置により、角度79を有する視野78が確立される。たとえば、幾つかの実施形態では、角度79は、約5、10、20、40、60、80、100、120、140、または160度以上であってもよい。前に論じたように、熱測定システム40の精度は、熱放射センサ42の視野78に少なくとも部分的に依存することができる。したがって、より小さい角度79ではより大きい角度79よりも正確な温度測定値を生成することができる。熱放射センサ42は、視野78内の平均温度を示す信号を出力するように構成される。したがって、周囲環境よりも高い、または低い温度を有する流体が管路64から漏れた場合、視野78内の領域の温度変化が制御装置44によって検出される。理解されるように、代替実施形態は、凸面鏡、または実質的に平坦な鏡を使用して、熱放射をセンサ42に向けることができる。他の実施形態では、鏡76を省略することができ、熱放射センサ42をその領域に向けることができる。こうした実施形態では、レンズ74が存在する場合、レンズ74はレンズ74の形状および光学特性に基づいて、所望の視野78を確立する助けをすることができる。
【0030】
前に論じたように、この熱放射センサ42は、検出した熱放射を出力信号に変換するように構成された熱電対列を含む。熱電対列は直列に接続された複数の熱電対を含むため、熱電対列は、視野78内の領域の温度に比例する大きさを有する電気信号を出力する。制御装置44は、この信号を受信し、その信号に基づいて(たとえば、参照表、アルゴリズムなどによって)その領域の温度を決定するように構成される。本実施形態では、制御装置44は、時間の関数として領域の温度を表すグラフ表示を示すように構成されたディスプレイ80に通信可能に結合される。図で示したように、ディスプレイ80は、時間を表すx軸84、および温度を表すy軸86を有するグラフ82を含む。曲線88は時間の関数として領域の温度を表す。グラフ82は、正常動作の温度範囲を画定する下限閾値90、および上限閾値92も含む。
【0031】
前に論じたように、熱放射センサ42は、視野78内の領域の平均温度を示す信号を出力するように構成される。周囲環境よりも高い温度を有する流体が流体通路から漏れた場合、その領域の検出される温度が上昇する。逆に、周囲環境よりも低い温度を有する流体が流体通路から漏れた場合、その領域の検出される温度が低下する。したがって、上限閾値92を管路64の正常動作温度より高い温度に設定し、かつ/または下限閾値90を管路64の正常動作温度より低い温度に設定することができる。この構成では、上限閾値92を超えて上昇した温度は熱い流体の漏れを示すことができ、下限閾値90未満に低下した温度は冷たい流体の漏れを示すことができる。
【0032】
幾つかの実施形態では、周囲環境よりも高い温度を有する流体を運搬する流体通路だけを視野78内に存在させることができる。こうした実施形態では、上限閾値92だけを使用して流体の漏れを検出することができる。したがって、制御装置44は、温度の低下に基づいて流体の漏れを確認しない。他の実施形態では、周囲環境よりも低い温度を有する流体を運搬する流体通路だけを視野78内に存在させることができる。こうした実施形態では、下限閾値90だけを使用して流体の漏れを検出することができる。他の実施形態では、高温と低温の両方の流体が視野78を通過することができる。こうした実施形態は、下限閾値90と上限閾値92の両方を含んで、温度が正常動作範囲から逸脱した場合に、漏れを確認することができる。
【0033】
図4は、図3で示したような、熱測定システム40のブロック図であり、流体が流体通路64から漏れている。図で示したように、亀裂91が管路64内に存在し、それによって流体93が燃料管路64から漏れる開口ができている。前に論じたように、この管路64は加熱液体流体を含むことができる。したがって、流体93の温度は周囲環境の温度よりも高くてもよい。その結果、流体の漏れによって、視野78内の領域の温度が上昇する。グラフ82で示したように、この温度上昇が制御装置44によって検出され、ディスプレイ80に示される。
【0034】
図で示したように、グラフ82は、時間の関数として視野78内の領域の温度を表す曲線94を含む。曲線94は、漏れる前の領域の温度を表す第1の部分96、漏れの始まりの間の温度を表す第2の部分98、および漏れが発生した後の温度を表す第3の部分100を含む。図で示したように、第1の部分96の温度は上限閾値92よりも低く、管路64内に漏れが存在しないことを示している。第2の部分98の温度は熱い流体が視野78内の領域内に漏れるに従って徐々に上昇する。制御装置44は、温度が上限閾値92を超えると、流体管路64内の漏れを確認する。本実施形態では、第3の部分100の実質的に一定の温度は、流体の一定の流れが管路64から漏れ、それによって視野78内の領域の温度が上昇した一定状態になることを示すことができる。
【0035】
管路64が周囲環境よりも低い温度を有する流体を輸送する実施形態では、制御装置44は、視野78内の領域の温度が下限閾値90よりも低下したときに漏れを検出することができる。代替実施形態では、制御装置44を、温度の変化率に基づいて漏れを検出するように構成することができる。たとえば、制御装置44を、温度曲線94の勾配101を計算し、勾配101を管路64内の漏れを示す閾値と比較するように構成することができる。たとえば、より高い勾配は漏れを示すことができ、より低い勾配は動作状態の所望の変化(たとえば、燃料の温度の意図的な上昇)を示すことができる。他の実施形態では、勾配および温度を別個の閾値と比較して、流体が管路64から漏れているかどうかを判断することができる。上記で管路64を参照して構成について論じたが、理解されるように、発電システム10の他の管路、および/または領域、および/またはタービンシステム12を熱的に監視して、流体の漏れを検出することができる。
【0036】
熱放射センサ42は、視野78内の領域の温度の毎分の変化を検出するのに十分な感度があるため、振動測定、抵抗率、または光学検出を使用する他の漏れ検出システムよりも迅速に、漏れている管路を確認することができる。理解されるように、熱測定システム40の全体の感度は、幾つかある要因の中でも、熱放射センサ42の感度、熱放射センサ42の精度、システム40内の光学および/または電気的雑音、制御装置44内の信号調整器の精度、熱放射センサの光学系の品質、熱放射センサ42の視野、および/または温度を計算するために制御装置44によって使用される技法に依存することができる。たとえば、幾つかの実施形態では、熱測定システム40は、華氏約2、1、0.75、0.5、または0.25度未満の温度変化を確認することができる。したがって、熱測定システム40は、流体がかなり漏れる前に管路の漏れを検出することができ、それによって操作者がその状態に迅速に対応することができる。さらに、視野78は管路64のより大きい領域をカバーすることができるため、他の漏れ検出装置(たとえば、視覚、振動など)と比較して、発電システム10および/またはタービンシステム12、より少数のセンサ42を使用して、管路/システム12中の流体の漏れを検出することができる。その結果、この熱測定システム40は、配設および維持がより低コストである。
【0037】
図5は、流体通路を含む領域内の熱放射を測定することによって、流体通路内の漏れを検出する方法102の流れ図である。最初に、ブロック104で示したように、流体通路を含む領域内の熱放射が測定される。前に論じたように、熱電対列など熱放射センサ42によって熱放射を測定することができる。次に、ブロック106で示したように、領域の温度が熱放射測定に基づいて決定される。たとえば、熱電対列は、領域の平均温度に比例する大きさを有する信号を生成することができる。次いで、制御装置44がこの信号を受信し、信号の大きさに基づいて温度を決定する。次いで、ブロック108で示したように、測定した温度に基づいて、流体通路内の漏れを検出することができる。たとえば、前に論じたように、領域の温度と漏れを示す閾値を比較することができる。別法として、温度の変化率を閾値と比較して、漏れが流体通路内に存在するかどうかを判断することができる。
【0038】
次に、ブロック110で示したように、温度のグラフ表示を生成し、表示することができる。たとえば、ディスプレイ80は時間の関数として温度を示す曲線を示すことができる。別法として、温度の数値表示を示すこともできる。ブロック112で示したように、漏れが検出された場合、可聴および/または視覚警報器を作動させて、操作者にその状態を警報することができる。たとえば、操作者にその状態が通知された後、操作者は漏れている管路を通る流体の流れを停止させることができ、それによって追加の流体の損失が実質的に低減され、かつ/または流体通路を含むシステムの構造的完全性が確保される。さらに、ブロック114で示したように、漏れが検出されると、流体通路を通る流れを自動的に停止させることができる。たとえば、幾つかの実施形態では、流体通路を含むシステムに制御装置44を通信可能に結合し、漏れが検出されると、システムを非作動状態にするように構成することができる。
【0039】
理解されるように、漏れが検出された場合に、操作者および/または制御装置44は代わりの行動をとることができる。たとえば、幾つかの実施形態では、漏れている流体通路を冷却操作に使用することができる。こうした実施形態では、流体通路を通る流れを停止する前に、冷却流体を受けるシステムを遮断することができる。別法として、流体通路を通る流れを弁によって減少させ、かつ/または調整することもできる。こうした動作によって、流体を使用するシステムが動作を継続し、かつ/またはシステムの遮断手順を容易にすることができるようになる。他の実施形態では、漏れている通路を通る流体の流れを緩やかに停止させ、代わりの無傷の通路を通る流体の流れを増加させ、それによって流体をシステムに継続して供給することができる。
【0040】
上記に熱測定システム40について流体管路内の漏れの検出を参照して記載したが、理解されるように、本実施形態を使用して、他の流体通路内の漏れを検出することができる。たとえば、熱測定システム40を使用して、弁、シール、コネクタ、継手、または流体を運搬するように構成された他の通路内の漏れを検出することができる。さらに、理解されるように、熱測定システム40を使用して、発電システム10および/またはタービンシステム12の構成要素からの流体の漏れを検出することができる。たとえば、熱測定システム40は、HP ST30、IP ST28、LP ST26、または発電システム10の他の構成要素内の蒸気漏れを検出することができる。また、熱測定システム40は、圧縮器20、燃焼器18、および/またはタービンシステム12のタービン16からの流体の漏れを検出することができる。さらに、この熱測定システム40を使用して、たとえば、加工プラント、製油所、または燃焼エンジンなど、他のシステムの構成要素からの流体の漏れを検出することができる。
【0041】
本書は、最良の形態を含む実施例を使用して、本発明を開示し、また、任意の装置またはシステムを製作および使用し、任意の組み込まれた方法を実行することを含めて、当業者が本発明を実施することができるようにするものである。本発明の特許性のある範囲は、特許請求の範囲によって定義され、当業者が思いつく他の実施例を含むことができる。こうした他の実施例は、特許請求の範囲の文言と相違しない構造的要素を有する場合、または特許請求の範囲の文言と実質的に相違しない等価の構造的要素を含む場合に、特許請求の範囲内に包含されるものとする。
【符号の説明】
【0042】
10 複合サイクル発電システム
12 ガスタービン
14 第1の発電機
16 タービン
18 燃焼器
20 圧縮器
22 蒸気タービン
24 第2の発電機
26 低圧蒸気タービンセクション
28 中圧蒸気タービンセクション
30 高圧蒸気タービンセクション
32 排熱回収ボイラ
34 加熱排気ガス
36 コンデンサ
38 復水ポンプ
40 熱測定システム
42 熱放射センサ
44 制御装置
46 ユーザインターフェース
48 燃料噴射器
50 シャフト
52 排気出口
54 空気取入れ口
56 負荷
58 空気
60 圧縮空気
62 燃料−空気混合物
64 燃料管路
66 希釈剤管路
68 水管路
70 検出素子
72 フィルタ
74 レンズ
76 鏡
78 視野
79 視野角
80 ディスプレイ
82 時間の関数としての温度のグラフ
84 X軸
86 Y軸
88 曲線
90 下限閾値
91 亀裂
92 上限閾値
93 漏れる流体
94 曲線
96 曲線の第1の部分
98 曲線の第2の部分
100 曲線の第3の部分
101 曲線の勾配
102 方法の流れ図
104 流れ図を参照
106 流れ図を参照
108 流れ図を参照
110 流れ図を参照
112 流れ図を参照
114 流れ図を参照

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの流体通路(64、66、68)を含む領域に向けられ、前記領域の温度を示す信号を出力するように構成された熱放射センサ(42)と、
前記熱放射センサ(42)に通信可能に結合され、前記少なくとも1つの流体通路(64、66、68)内の漏れ(93)を前記信号に基づいて検出するように構成された制御装置(44)とを備える、システム(10、12)。
【請求項2】
前記熱放射センサ(42)が熱電対列を備える、請求項1記載のシステム(10、12)。
【請求項3】
前記領域からの熱放射を前記熱放射センサ(42)に集束するように構成された光学焦点調整装置(74、76)を備える、請求項1記載のシステム(10、12)。
【請求項4】
前記光学焦点調整装置(74、76)が鏡(76)、レンズ(74)、またはその組合せを備える、請求項3記載のシステム(10、12)。
【請求項5】
前記熱放射センサ(42)と前記領域の間に配置され、約8ミクロン未満および約14ミクロンより大きい波長を有する電磁放射の通過を遮断するように構成されたバンドパスフィルタ(72)を備える、請求項1記載のシステム(10、12)。
【請求項6】
前記熱放射センサ(42)が赤外スペクトル内の周波数を有する熱放射を検出するように構成された、請求項1記載のシステム(10、12)。
【請求項7】
前記制御装置(44)が、前記領域の前記温度が第1の閾値(92)を超えた場合、第2の閾値(90)未満に低下した場合、またはその組合せの場合に、前記少なくとも1つの流体通路(64、66、68)内の前記漏れ(93)を検出するように構成された、請求項1記載のシステム(10、12)。
【請求項8】
前記制御装置(44)が、前記領域の前記温度の変化率が第3の閾値を超えた場合に、前記少なくとも1つの流体通路(64、66、68)内の前記漏れ(93)を検出するように構成された、請求項1記載のシステム(10、12)。
【請求項9】
前記少なくとも1つの流体通路(64、66、68)を含む発電システム(10)を備える、請求項1記載のシステム(10、12)。
【請求項10】
熱放射センサ(42)から少なくとも1つの流体通路(64、66、68)を含む領域の温度を示す信号を受信するように構成され、前記信号に基づいて前記少なくとも1つの流体通路(64、66、68)内の漏れ(93)を検出するように構成された制御装置(44)を備える、システム(10、12)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−185926(P2011−185926A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44794(P2011−44794)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】