熱源システム
【課題】システム全体の消費電力が最小となる熱源システム及びその制御方法を提供する。
【解決手段】熱源システム10は、ヒートポンプと、地中熱熱交換器20と、冷却塔30と、熱源水ポンプと、前記冷却塔と前記熱交換器をいずれか一方又は並列又は直列の運転モードで切り替えて接続する切り替え手段と、ヒートポンプ負荷と熱源水負荷を算出し、前記熱源水負荷以上となる冷却能力若しくは加熱能力の前記運転モードを選択し、前記冷却塔の熱源水流量比と前記熱交換器の熱源水流量比と前記冷却塔ファン32の風量比を変化させて算出した前記システム消費電力のうちで最小となる前記冷却塔の熱源水流量比と前記熱交換器の熱源水流量比と前記冷却塔ファンの風量比の最適値を算出するシミュレーター82と、最小となる前記システム消費電力に基づいて前記冷却塔又は前記熱交換器の流量比、前記冷却塔ファンの風量比に制御する制御手段80と、を備える。
【解決手段】熱源システム10は、ヒートポンプと、地中熱熱交換器20と、冷却塔30と、熱源水ポンプと、前記冷却塔と前記熱交換器をいずれか一方又は並列又は直列の運転モードで切り替えて接続する切り替え手段と、ヒートポンプ負荷と熱源水負荷を算出し、前記熱源水負荷以上となる冷却能力若しくは加熱能力の前記運転モードを選択し、前記冷却塔の熱源水流量比と前記熱交換器の熱源水流量比と前記冷却塔ファン32の風量比を変化させて算出した前記システム消費電力のうちで最小となる前記冷却塔の熱源水流量比と前記熱交換器の熱源水流量比と前記冷却塔ファンの風量比の最適値を算出するシミュレーター82と、最小となる前記システム消費電力に基づいて前記冷却塔又は前記熱交換器の流量比、前記冷却塔ファンの風量比に制御する制御手段80と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中熱を利用して省エネルギー化を図る地中熱利用ハイブリッド型の熱源システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素などの地球温暖化ガスの排出を抑制でき、一年を通じて約一定温度である地中熱を熱源として、消費エネルギーを削減しながら冷水を製造できる空調システムがある。近年、省エネルギー、環境負荷低減の観点から地中熱を熱源とする空調システムの普及が進められている。
【0003】
このような空調システムにおいて、効率の高さを基準として地中熱と外気熱の利用を使い分けたCOPの高い空調システムが特許文献1に開示されている。
特許文献1の空調システムは、地中熱利用ヒートポンプに空気熱交換器を組み込み、夏季の冷房利用では、地中温度が外気温度よりも高い場合に、冬季の暖房利用では、地中温度が外気温度より低い場合に、地中熱源側の循環を停止し、空気熱源側ヒートポンプとして運転している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−250555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の地中熱利用ヒートポンプシステムでは、地中熱交換器での交換熱量が小さいため負荷に応じて、従来の外気使用との切り替えや、外気と地中熱の併用など運転方法を切り替える必要がある。このとき空調機以外の空気熱源機器、供給ポンプなどの補機を稼働させる消費エネルギーが存在するため、一部の消費エネルギー化ではなく、システム全体の消費エネルギー化を考慮する必要がある。
そこで本発明は、システム全体の消費電力が最小となる熱源システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の熱源システムは、ヒートポンプと、地中熱と熱交換して前記ヒートポンプに供給する熱源水を製造する熱交換器と、冷却塔ファンで外気と熱交換を行い前記ヒートポンプに供給する前記熱源水を製造する冷却塔と、前記熱源水を前記ヒートポンプに供給する熱源水ポンプと、前記ヒートポンプに対して前記冷却塔と前記熱交換器をいずれか一方又は並列又は直列の運転モードで切り替えて接続する切り替え手段と、ヒートポンプ負荷と熱源水負荷を算出し、前記熱源水負荷以上となる冷却能力若しくは加熱能力の前記運転モードを選択し、前記冷却塔の熱源水流量比と前記熱交換器の熱源水流量比と前記冷却塔ファンの風量比を変化させて算出した前記システム消費電力のうちで最小となる前記冷却塔の熱源水流量比と前記熱交換器の熱源水流量比と前記冷却塔ファンの風量比の最適値を算出するシミュレーターと、最小となる前記システム消費電力に基づいて前記冷却塔又は前記熱交換器の流量比、前記冷却塔ファンの風量比に制御する制御手段と、を備えたことを特徴としている。
【0007】
この場合において、前記切り替え手段は、前記冷却塔と前記熱交換器の間で前記熱源水を循環させて熱交換するとよい。
前記ヒートポンプは、冷水を製造するヒートポンプ式冷凍機と、前記冷水を搬送する冷水ポンプと、を備えているとよい。
また前記シミュレーターは、予め作成したデータベースを有し、冷水に放熱された熱量、外気湿球温度、前記熱交換器の地中温度に応じて前記データベースから前記インバーターの周波数、及び熱原水流量比、冷却塔風量比を抽出するとよい。
【0008】
また前記データベースは、前記冷水に放熱された熱量、外気湿球温度、前記熱交換器の地中温度に応じて、前記インバーター設定値の相対関係を示す制御テーブルであり、あらかじめ想定した冷水に放熱された熱量、外気湿球温度に対して、前記熱交換器の地中温度、熱交換器の熱源水入口温度、熱源水流量、冷却塔風量を変更して繰り返し計算を行い、システム全体の消費エネルギーが最も小さくなるインバーター周波数、及び熱原水流量比、冷却塔風量比が設定値として設けられているとよい。
この場合において、前記データベースは、湿球温度と、冷水負荷と、地中温度と、運転モードの相対関係を示す制御テーブルであるとよい。
【発明の効果】
【0009】
上記構成による本発明の熱源システムによれば、冷凍機に対する冷却塔と熱交換器の複数の接続形態を選択可能とし、シミュレーションにより構成機器の動作範囲であり、かつ熱源システム全体の消費電力が最小となる運転モードの選定と冷却水ポンプ、冷却塔ファンのインバーター周波数、バルブの開閉を決定し、その最適値で制御している。このため、システムを構成する冷却水ポンプ、冷却塔ファン、冷凍機の消費電力の合計を削減し、システム全体の省エネルギー化を図ることができる。
【0010】
また冷却塔と熱交換器の間で冷却水を循環させることにより、熱交換器で放熱が過剰に行われ、熱交換器外部に放熱を行う必要が生じた場合に冷却塔との間で熱交換を行うことで熱交換器の性能を回復させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の熱源システムの構成概略を示す図である。
【図2】熱源システムの運転モード1の説明図である。
【図3】熱源システムの運転モード2の説明図である。
【図4】熱源システムの運転モード3の説明図である。
【図5】熱源システムの運転モード4の説明図である。
【図6】熱源システムの運転モード5の説明図である。
【図7】本発明の熱源システムの制御方法の処理フローである。
【図8】熱源システムの運転方法テーブルの説明図である。
【図9】熱源システムの設定値テーブルの説明図である。
【図10】熱源システムの設定値テーブルの説明図である。
【図11】熱源システムの変形例の構成概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の熱源システムを添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
図1は本発明の熱源システムの構成概略を示す図である。図示のように本発明の熱源システム10は、冷凍機20と、冷却塔30と、熱交換器40と、第1及び第2冷却水供給手段50、60と、冷水供給手段70と、制御手段80とを主な基本構成としている。なお本実施形態ではヒートポンプの一例として冷凍機を用いて以下説明する。
【0013】
冷凍機20は、凝縮器、蒸発器、圧縮機、減圧室から構成されている。圧縮機によって圧力を高めた気体の冷媒は、凝縮器に押し込められる。そして凝縮器は加圧された冷媒から熱を奪う。凝縮器を流れる冷却水は、熱を奪って流出することにより高温となる。一方、蒸発器では冷媒が蒸発する際に冷水の熱を奪う。
【0014】
冷凍機20内の凝縮器(不図示)を冷却して温度上昇した冷却水は、温度を下げるために、本発明では、冷却塔30もしくは熱交換器40を用いて冷却している。
冷却塔30は、冷却塔ファン32を備えている。冷却塔30は冷却水と外気を接触させることにより、冷却水自身が蒸発し、その際に蒸発潜熱によって周囲の水から熱を奪って冷却水の温度を下げることができる。図1に示す冷却塔30は開放式であり、外気との間で熱交換を行って冷却水を製造している。
【0015】
熱交換器40は、地中に埋設された鋼管杭内部にUチューブ42と呼ばれる配管を挿入し、地中との伝熱を行うための熱媒体(冷却水等)を杭とUチューブ42の間隔部に充填することで構成される。年間を通して温度が一定な地中に熱交換器40を設置することでヒートポンプ(以下HPと略す)式冷凍機用の冷却水を熱交換器40に循環させ地中との間で熱交換を行って冷却水を製造している。
【0016】
本発明の熱源システム10は、熱源水となる冷却水が冷凍機20と冷却塔30の間を流れる第1冷却水供給手段50と、冷却水が冷凍機20と熱交換器40の間を流れる第2冷却水供給手段60を形成している。
第1冷却水供給手段50は、第1送り配管52と、第1戻り配管54と、冷却水ポンプ56を主な基本構成としている。
【0017】
第1送り配管52は、冷凍機20の冷却水出口と、冷却塔30の冷却水入口を繋ぐ配管であり、配管途中に冷却水ポンプ56と、第1流量計57と、第1温度計91と、第1及び第2二方弁101、102を備えている。第1二方弁101は、冷凍機20の冷却水出口側に取り付けている。第1二方弁101は配管を閉塞又は開放して冷却水の供給を制御することができる(以下の第2〜第9開放弁102〜109も同じ)。第2二方弁102は、冷却塔30の冷却水入口側に取り付けている。第1送り配管52は、第1及び第2二方弁101、102の間に冷凍機20側から第1温度センサー91、冷却水ポンプ56、第1流量計57を取り付けている。冷却水ポンプ56は、周波数を任意に調整可能な第1インバーター58と、第1インバーター58の消費電力を測定可能な第1電力計59を備えている。冷却水ポンプ56は冷凍機20から冷却塔30へ冷却水を供給するように構成し、第1流量計57は、第1送り配管52を流れる冷却水の流量を測定することができる。第1温度計91は冷凍機20の冷却水出口温度を測定することができる。
【0018】
第1戻り配管54は、冷却塔30の冷却水出口と冷凍機20の冷却水入口を繋ぐ配管であり、配管途中に第3〜第5二方弁103、104、105と、第2及び第3温度センサー92、93を備えている。第1送り配管52及び第1戻り配管54には、両者を繋ぐ第1バイパス管53を取り付けている。具体的に第1バイパス管53は第1二方弁101と冷却水ポンプ56の間の第1送り配管52と、第4及び第5二方弁104、105の間の第1戻り配管54と接続している。第1バイパス管53には第6二方弁106を取り付けている。第2温度センサー92は冷却塔30の冷却水出口温度を測定することができる。第3温度計93は、冷凍機20の冷却水入口温度を測定することができる。
【0019】
第2冷却水供給手段60は、第2送り配管62と、第2戻り配管64を主な基本構成としている。
第2送り配管62は、第1流量計57と第2二方弁102の間の第1送り配管52と、熱交換器40の冷却水入口を繋ぐ配管であり、電磁二方弁66と、第7二方弁107と、第2流量計67と第4温度計94を備えている。電磁二方弁66は第1送り配管52から第2送り配管62へ流れ込む冷却水の流量を後述する制御手段80の制御信号に基づいて調整することができる。第2流量計67は、第2送り配管64を流れる冷却水の流量を測定することができる。第4温度センサー94は、熱交換器40の冷却水入口温度を測定することができる。
【0020】
第2戻り配管64は、熱交換器40の冷却水出口と、第4二方弁104と第1バイパス管53の接続箇所の間の第1戻り配管54を繋ぐ配管であり、第8二方弁108を備えている。
【0021】
第1及び第2冷却水供給手段50、60には、第1戻り配管54と第2送り配管62を繋ぐ第2バイパス管68を取り付けている。具体的に第2バイパス管68は、第3及び第4二方弁103、104の間の第1戻り配管54と、第7二方弁107と第2流量計67の間の第2送り配管62に接続している。第2バイパス管68は第9二方弁109を取り付けている。
【0022】
冷凍機20の蒸発器(不図示)には、冷水供給手段70が接続している。冷水供給手段70は、第3送り配管72と、第3戻り配管74と、冷水ポンプ76を主な基本構成としている。
【0023】
第3送り配管72は、冷凍機20の冷水出口と接続し、配管途中に第5温度センサー95を取り付けている。第5温度センサー95は、冷凍機20の冷水出口温度を測定することができる。第3戻り配管74は、冷凍機20の冷水入口温度と接続し、配管途中に冷水ポンプ76と、第3流量計77と、第6温度計96を取り付けている。冷水ポンプ76は、周波数を任意に調整可能な第2インバーター78と、第2インバーター78の消費電力を測定可能な第2電力計79を備えている。冷水ポンプ76は外部から冷凍機20へ冷水を供給するように構成し、第3流量計77は、第3戻り配管74を流れる冷水の流量を測定することができる。第6温度計96は冷凍機20の冷水入口温度を測定することができる。
【0024】
前記冷却塔ファン32には第3インバーター33と第3電力計34を取り付けている。冷凍機20には第4電力計22を取り付けている。熱交換器40には、地中温度を測定可能な第7温度センサー97を取り付けている。熱源システム10には、外気の温度を測定可能な第8温度センサー98と、外気の湿度を測定可能な湿度センサー99を屋外に取り付けている。
【0025】
制御手段80は、第1〜第8温度センサー91〜98と、湿度センサー99と、第1〜第3インバーター58、78、33と、第1〜第9二方弁101〜109と、電磁二方弁66と、第1〜第3流量計57、67、77と、第1〜第4電力計59、79、34、22と、電気的に接続(不図示)しており、冷却塔30の冷却水流量比と熱交換器40の冷却水流量比と冷却塔ファン32の風量比の最適値を求めるシミュレーター82と、シミュレーター82で求めた冷却塔30の冷却水流量比と熱交換器40の冷却水流量比と冷却塔ファン32の風量比の最適値を出力するコントローラー84と、記憶回路86とを主な基本構成としている。
【0026】
シミュレーター82は、制御手段80による制御をシミュレーションして熱源システム10全体の消費電力などを算出するものである。
制御手段80には、冷却塔30の冷却水流量比と熱交換器40の冷却水流量比と冷却塔ファン32の風量比の最適値を求めるために必要なシステム上の各種センサーの測定値が入力される。具体的には第1〜第8温度センサー91〜98の測定温度、湿度センサー99の測定湿度、第1〜第4電力計59、79、34、22の測定消費電力、第1〜第3流量計57、67、77の測定流量が入力される。
【0027】
次に上記構成による本発明の熱源システム10の運転モードについて以下説明する。
図2は熱源システムの運転モード1の説明図である。
熱源システム10の運転モード1は、冷凍機20の冷却水を冷却塔30のみ供給している。具体的には第1〜第5二方弁101〜105を開放し、第6〜第9二方弁106〜109と、電磁二方弁66を閉止している。このような構成による熱源システム10は、冷凍機20で加熱された冷却水は、第1冷却水供給手段50の第1送り配管52から冷却塔30の冷却水入口へ供給される。冷却塔30で冷却された冷却水は、第1戻り配管54から冷凍機20の冷却水入口へ供給される。この運転モードは外気温度が低下した場合に適用することができる。
【0028】
図3は熱源システムの運転モード2の説明図である。
熱源システム10の運転モード2は、冷凍機20の冷却水を熱交換器40のみ供給している。具体的には第1、第7、第8、第5二方弁101、107、108、105と、電磁二方弁66を開放し、第2、第3、第4、第6、第9二方弁102〜104、106、109を閉止している。このような構成による熱源システム10は、冷凍機20で加熱された冷却水は、第1冷却水供給手段50の第1送り配管52から第2送り配管62を経由して熱交換器40の冷却水入口へ供給される。熱交換機40で冷却された冷却水は、第2戻り配管64から第1戻り配管54を経由して冷凍機20の冷却水入口へ供給される。この運転モードは外気よりも地中温度が低い場合に適用することができる。
【0029】
図4は熱源システムの運転モード3の説明図である。
熱源システム10の運転モード3は、冷凍機20の冷却水を冷却塔30及び熱交換器40へ並列に供給している。具体的には第6、第9二方弁106、109を閉止し、それ以外の二方弁101〜105、107、108と、電磁二方弁66を開放している。このような構成による熱源システム10は、冷凍機20で加熱された冷却水は、第1冷却水供給手段50の第1送り配管52から冷却塔30の冷却水入口へ供給される。冷却塔30で冷却された冷却水は、第1戻り配管54から冷凍機20の冷却水入口へ供給される。また冷凍機20で加熱された冷却水は、第1冷却水供給手段50の第1送り配管52から第2送り配管62を経由して熱交換器40の冷却水入口へ供給される。熱交換機40で冷却された冷却水は、第2戻り配管64から第1戻り配管54を経由して冷凍機20の冷却水入口へ供給される。このように熱交換器40と冷却塔30にそれぞれ冷却水が流れる並列運転を行うことができる。このとき電磁流量弁66の開度を調整することで熱交換器40と冷却塔30に分岐する流量比率を制御することが可能である。
【0030】
図5は熱源システムの運転モード4の説明図である。
熱源システム10の運転モード4は、冷凍機20の冷却水を冷却塔30及び熱交換器40へ直列に供給している。具体的には第4、第6、第7二方弁104、106、107と電磁二方弁66を閉止し、それ以外の二方弁101〜103、105、108、109を開放している。このような構成による熱源システム10は、冷凍機20で加熱された冷却水は、第1冷却水供給手段50の第1送り配管52から冷却塔30の冷却水入口へ供給される。冷却塔30で冷却された冷却水は、第1戻り配管54から第2バイパス管68を経由して第2送り配管62から熱交換器40の冷却水入口へ供給される。熱交換機40で冷却された冷却水は、第2戻り配管64から第1戻り配管54を経由して冷凍機20の冷却水入口へ供給される。このように冷却水が冷却塔30から熱交換器40へ流れる直列運転を行うことができる。運転モード3は冷却水の温度を最も効率的に低下させることができる。
【0031】
図6は熱源システムの運転モード5の説明図である。
熱源システム10の運転モード5は、冷凍機20の冷却水の供給を停止して冷却水を冷却塔30及び熱交換器40の間で循環させている。具体的には第1、第4、第7、第5二方弁101、104、107、105と電磁二方弁66を閉止し、それ以外の二方弁102、103、106、108、109を開放している。このような構成による熱源システム10は、冷却塔30で冷却された冷却水は、第1戻り配管54から第2バイパス管68を経由して第2送り配管62から熱交換器40の冷却水入口へ供給される。熱交換機40で加熱された冷却水は、第2戻り配管64から第1戻り配管54へ供給され、第1バイパス管53を経由して第1送り配管52から冷却塔30の冷却水入口へ供給される。このような運転モード5は、熱交換器40で放熱が過剰に行われ、熱交換器40外部に放熱を行う必要が生じた場合に冷却塔30との間で熱交換を行うことで熱交換器40の性能を回復するというもので、主に熱交換器40の性能劣化時に活用できる。
【0032】
本実施形態では冷凍機20に対して前記冷却塔30と前記熱交換器40をいずれか一方又は並列又は直列の運転モードで切り替えて接続する切り替え手段として第1〜第9二方弁101〜109と、電磁開放弁66を用いている。
本発明では制御手段80により運転モード1〜4の運転方法を消費電力が最も小さくなるように切り替え、熱交換器40の性能回復時に運転モード5に切り替えている。
【0033】
次に地中熱を熱源とするヒートポンプを利用した熱源システム10の運転方法について以下説明する。図7は本発明の熱源システム10の制御運転の処理フローを示したものである。
【0034】
まず第1〜第3流量計57、67、77で冷却水流量LL1、LL2、冷水流量Lと、第6及び第5温度センサー96、95で冷凍機冷水入口温度Tcw1、冷凍機冷水出口温度Tcw2と、第3及び第1温度センサー93、91で冷凍機冷却水入口温度Tcwd1、冷凍機冷却水出口温度Tcwd2と、第8温度センサー98、湿度センサー99で外気温度Ta、外気湿度RHと、第7温度センサー97で地中温度Tsと、を計測する。
【0035】
これらの計測値は制御システム80に入力されてシミュレーター82で冷水負荷Q1、冷却水負荷Q2が算出される(ステップ1)。
冷水負荷Q1は、測定された冷水流量L、冷凍機冷水入口温度Tcw1、冷凍機冷水出口温度Tcw2と、Cw(冷水比熱)、ρw(冷水密度)を用いて次式により算出することができる。
【0036】
【数1】
【0037】
冷却水負荷Q2は、測定された冷却水流量LL1、冷凍機冷却水入口温度Tcwd1、冷凍機冷却水出口温度Tcwd2と、Cw(冷水比熱)、ρw(冷水密度)を用いて次式により算出することができる。
【0038】
【数2】
【0039】
次に上記の算出値からシミュレーター82を用いて最適な運転モードを選択する(ステップ2)。
本発明における運転モードは5種類あり、図2〜図6に示すように本実施形態では運転モード1:冷却塔運転、運転モード2:熱交換器運転、運転モード3:冷却塔と熱交換器の並列運転、運転モード4:冷却塔と熱交換器の直列運転、運転モード5:冷却塔と熱交換器の冷却水循環運転としている。
【0040】
運転モードの判定に関しては、上記冷却水負荷Q2と、冷却水流量LL1、LL2と、冷凍機冷却水出口温度Tcwd2と、地中温度Tsと、外気温度Taと、外気湿度RHとを用いて、冷却水ポンプ56及び冷却塔ファン32が定格運転したときの運転モードの処理能力(冷却能力)を計算する(ステップ3)。
【0041】
この計算は運転モード1〜5について行う(ステップ4)。
そして処理能力が冷却水負荷Q2以上であり、かつ最も消費電力が小さい運転モードを決定する(ステップ5)。
運転モードを決定した後、コントローラー84を介して第1〜第9二方弁101〜109又は電磁二方弁66を開閉し運転方法を切り替える。
【0042】
次に各運転モードにおける最適値制御について以下説明する。
運転モード1の冷却塔運転では、冷却塔30の冷却水流量比と冷却塔ファン32の風量比を数パーセントずつ変化させながら、冷却塔冷却水出口温度を計算する。
【0043】
運転モード2の熱交換器運転では、熱交換器40の冷却水流量比を数パーセントずつ変化させながら熱交換器冷却水出口温度を計算する。
運転モード3の冷却塔と熱交換器の並列運転では、冷却塔30の冷却水流量比と、熱交換器40の冷却水流量比と、冷却塔ファン32の風量比を数パーセントずつ変化させながら、冷却塔冷却水出口温度と熱交換器冷却水出口温度を計算する。
【0044】
運転モード4の冷却塔と熱交換器の直列運転では、冷却塔運転では冷却塔30の冷却水流量比(=熱交換器40の冷却水流量比)と冷却塔ファン32の風量比を数パーセントずつ変化させながら、熱交換器冷却水出口温度を計算する。
【0045】
運転モードを決定した後、上記の方法で、冷却塔30の冷却水流量比と、熱交換器40の冷却水流量比と、冷却塔ファン32の風量比を数パーセントずつ変化させながら(ステップ6)、最適値を計算する(ステップ7)。
【0046】
そして冷凍機20の冷凍機冷却水入口温度Tcwd1を計算する(ステップ8)。
運転モード1,2,4では計算した冷却塔冷却水出口温度もしくは熱交換器冷却水出口温度が冷凍機冷却水入口温度Tcwd1となる。
【0047】
運転モード3の冷却塔30と熱交換機40の並列運転を行った場合の冷凍機冷却水入口温度Tcwd1は、冷却塔側冷却水流量LL_CT、冷却塔側冷却水出口温度Tout_ct、熱交換器側冷却水流量LL_HEX、熱交換器側冷却水出口温度Tout_hexを用いて次式により算出することができる。
【0048】
【数3】
【0049】
その冷凍機冷却水入口温度Tcwd1と冷水負荷Q1に対応した冷凍機COPを計算する(ステップ9)。冷却水温度と負荷Q1と冷凍機COPの関係については、冷凍機自体の既知の性能曲線をもとに推算する。
そして冷凍機COPと冷水負荷Q1から冷凍機消費電力W0を次式により計算する。
【0050】
【数4】
【0051】
この冷凍機消費電力W0に冷水ポンプ消費電力W1と、冷却水ポンプ消費電力W2と、冷却塔ファン消費電力W3を加えたシステム消費電力WsysとシステムCOP(SCOP)を次式により求める。
【0052】
【数5】
【0053】
【数6】
【0054】
このWsysとシステムCOPを冷却塔30の冷却水流量比と、熱交換器40の冷却水流量比、冷却塔ファン32の風量比について毎回計算を行い、Wsysが最小(システムCOPが最大)となる各流量比及び風量比を算出する(ステップ10)。
【0055】
そして上記の比率をシミュレーター82によって次式を用いて冷却水ポンプ56のインバーター周波数f_pump、冷却塔ファン32のインバーター(INV)周波数f_fanに換算する。
【0056】
ここで運転モード1では
【数7】
となる。
【0057】
運転モード2,4では
【数8】
となる。
【0058】
冷却水ポンプ56のインバーター周波数f_pumpは
【数9】
【0059】
冷却塔ファン32のインバーター(INV)周波数f_fanは
【数10】
と表すことができる。
【0060】
ここで、Fは定格周波数(50Hz又は60Hz)、rate_pumpは冷却水ポンプ流量比、rate_fanは冷却塔ファン風量比、LL0は定格周波数時の冷却水ポンプ流量を示している。
【0061】
これらの周波数をコントローラー84を介して出力し、ポンプ、ファンを運転する。運転モード3の並列運転のように系統が分岐する場合には、電磁二方弁によって、上記で計算した冷却塔30の冷却水流量比と、熱交換器40の冷却水流量比になるように制御を行う(ステップ11)。
【0062】
図7に示す熱源システムの制御運転の処理フローの計算を予め想定される湿球温度(外気温度と外気湿度から換算する)と、地中温度と負荷について行い、得られた運転モードと最適値をテーブル化することにより制御方法の処理を低減することができる。
【0063】
図8は熱源システムの運転方法テーブルの説明図である。具体的に図8は縦軸に冷水負荷を示し、横軸に湿球温度を示しており、各冷水負荷、湿球温度に基づいて最適値となる運転モード1〜5を示したデータベースである。
【0064】
図8に示すテーブルは任意の地中温度に対して作成されたデータである。このようなテーブルは任意の地中温度毎に作成することができる。
図9、図10は熱源システムの設定値テーブルの説明図である。具体的に図9、図10の縦軸に冷水負荷を示し横軸に湿球温度を示している。
【0065】
各冷水負荷、湿球温度、熱交換器40の地中温度に基づいて、図9に冷却水ポンプインバーター周波数(Hz)、冷却塔ファンインバーター周波数(Hz)、図10に熱交換器冷却水流量比(%)、冷却塔冷却水流量比(%)、冷却塔風量比(%)、冷凍機冷却水入口温度Tcwd1(℃)、冷却塔冷却水出口温度(℃)、熱交換器冷却水出口温度(℃)を示したデータベースである。
ここで、熱交換器冷却水流量比(%)、冷却塔冷却水流量比(%)はそれぞれの流量を冷却水ポンプ56の定格流量(定格周波数時の流量)で除算したものである。
【0066】
図10の熱交換器流量比(%)、冷却塔冷却水流量比(%)は、図8の運転モードに対応している。つまり運転モードが1の場合、熱交換器に冷却水は流れないため熱交換器冷却水流量比は0となる。運転モードが2の場合は、冷却塔に冷却水が流れないため、冷却塔冷却水流量比は0となる。運転モードが3の場合は、熱交換器、冷却塔に並列して流れているため、それぞれに流れる流量の比率が記載されている。運転モード4の場合は、熱交換器、冷却塔に直列して流れているため、それぞれに流れる流量の比率は等しく、その比率が記載されている。
なお、図9、図10の制御テーブルはある1つの地中温度に対して作成されたものであり、複数の地中温度に対して、上記の制御テーブルが存在する。
【0067】
あらかじめ図7の計算フローに基づいてシミュレーションを行い、図8、9、10に示すような最適値をデータベース(テーブル化)として制御手段80の記憶回路86を格納する。このようなデータベースにより計測値から算出された冷水負荷QQ1、外気湿球温度TWB、地中温度Tsに応じた冷却水流量、冷却塔ファン流量の最適値を記憶回路86に格納したテーブルから読み取り、インバーター周波数(冷却塔ファン32、冷却水ポンプ56)をシミュレーター82によって計算する。そしてコントローラー84を介して冷水ポンプ76のインバーター78、電磁二方弁66、冷却水ポンプ56のインバーター58、冷却塔ファン32のインバーター33に出力して、また電磁二方弁66の開閉によって熱交換器冷却水流量比(%)、冷却塔冷却水流量比(%)、冷却塔風量比(%)をテーブルから読み取った比率になるように制御することで最も消費電力が小さい運転を行うことができる。
【0068】
なお第1〜第4電力計59、79、34、22はシミュレーター82で予測する冷凍機20、冷却水ポンプ56、冷水ポンプ76、冷却塔ファン32の消費電力の実測値を測定している。この実測値と計算値を用いて計算時の補正係数を求めることができる。その補正係数をシミュレーター82での最適値計算やテーブルデータ等の作成時に反映させることでシミュレーター82での計算精度を高めることが可能になる。
【0069】
ここで冷却塔は、経年劣化等の影響で計算値と実測値との間に誤差が生じる場合がある。そのため計算精度を上げるための補正係数を求めるために、温度センサー92を冷却塔出口に設置し、出口温度を計測している。
【0070】
また図1に示す熱源システム10は開放式の冷却塔30を使用している場合、冷却塔30通過時に冷却水が大気開放される。しかし冷却水に大気開放による大気への拡散を避ける必要がある媒体を用いる場合、(一例として凍結防止のために凝固点が0℃未満である不凍液は、水以外の液体、もしくは水に添加物を加えて生成した液体であり、大気への拡散が好ましくない場合があり)は、開放式に換えて密閉式の冷却塔を用いることができる。
【0071】
次に本発明の熱源システム10の変形例について説明する。図11は熱源システムの変形例の構成概略を示す図である。図示のように変形例の熱源システム100は熱源システム10の開放式の冷却塔30に熱交換手段120、冷却水ポンプ122、配管130を加えた場合である。その他の構成は図1に示す熱源システム10と同一の構成でありその詳細な説明を省略する。
【0072】
冷凍機20の冷却水に不凍液を用いる場合、冷凍機20と熱交換器40と熱交換手段120の第1及び第2冷却水供給手段50、60では不凍液を用いる。一方、開放式の冷却塔30と熱交換手段120、冷却水ポンプ122、配管130の経路では冷却水を循環させて冷却塔30で冷却水を製造する。そして冷却水は熱交換手段120で不凍液(冷凍機冷却水)と熱交換を行い冷却する。
【0073】
このような変形例の熱源システム100によれば不凍液は大気開放することなく冷却することができる。なお変形例の熱源システム100に対しても運転モード1〜5を適用することができる。
本発明の熱源システムは、冷凍機のみならず、熱媒体を用いた熱移動可能なヒートポンプを備えた他の熱交換手段であっても適用することができる。
【符号の説明】
【0074】
10………熱源システム、20………冷凍機、22………第4電力計、30………冷却塔、32………冷却塔ファン、33………第3インバーター、34………第3電力計、40………熱交換器、42………Uチューブ、50………第1冷却水供給手段、52………第1送り配管、53………第1バイパス管、54………第1戻り配管、56………冷却水ポンプ、57………第1流量計、58………第1インバーター、59………第1電力計、60………第2冷却水供給手段、62………第2送り配管、64………第2戻り配管、66………電磁二方弁、67………第2流量計、68………第2バイパス管、70………冷水供給手段、72………第3送り配管、74………第3戻り配管、76………冷水ポンプ、77………第3流量計、78………第2インバーター、79………第2電力計、80………制御手段、82………シミュレーター、84………コントローラー、86………記憶回路、91………第1温度センサー、92………第2温度センサー、93………第3温度センサー、94………第4温度センサー、95………第5温度センサー、96………第6温度センサー、97………第7温度センサー、98………第8温度センサー、99………湿度センサー、101………第1二方弁、102………第2二方弁、103………第3二方弁、104………第4二方弁、105………第5二方弁、106………第6二方弁、107………第7二方弁、108………第8二方弁、109………第9二方弁。
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中熱を利用して省エネルギー化を図る地中熱利用ハイブリッド型の熱源システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素などの地球温暖化ガスの排出を抑制でき、一年を通じて約一定温度である地中熱を熱源として、消費エネルギーを削減しながら冷水を製造できる空調システムがある。近年、省エネルギー、環境負荷低減の観点から地中熱を熱源とする空調システムの普及が進められている。
【0003】
このような空調システムにおいて、効率の高さを基準として地中熱と外気熱の利用を使い分けたCOPの高い空調システムが特許文献1に開示されている。
特許文献1の空調システムは、地中熱利用ヒートポンプに空気熱交換器を組み込み、夏季の冷房利用では、地中温度が外気温度よりも高い場合に、冬季の暖房利用では、地中温度が外気温度より低い場合に、地中熱源側の循環を停止し、空気熱源側ヒートポンプとして運転している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−250555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の地中熱利用ヒートポンプシステムでは、地中熱交換器での交換熱量が小さいため負荷に応じて、従来の外気使用との切り替えや、外気と地中熱の併用など運転方法を切り替える必要がある。このとき空調機以外の空気熱源機器、供給ポンプなどの補機を稼働させる消費エネルギーが存在するため、一部の消費エネルギー化ではなく、システム全体の消費エネルギー化を考慮する必要がある。
そこで本発明は、システム全体の消費電力が最小となる熱源システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の熱源システムは、ヒートポンプと、地中熱と熱交換して前記ヒートポンプに供給する熱源水を製造する熱交換器と、冷却塔ファンで外気と熱交換を行い前記ヒートポンプに供給する前記熱源水を製造する冷却塔と、前記熱源水を前記ヒートポンプに供給する熱源水ポンプと、前記ヒートポンプに対して前記冷却塔と前記熱交換器をいずれか一方又は並列又は直列の運転モードで切り替えて接続する切り替え手段と、ヒートポンプ負荷と熱源水負荷を算出し、前記熱源水負荷以上となる冷却能力若しくは加熱能力の前記運転モードを選択し、前記冷却塔の熱源水流量比と前記熱交換器の熱源水流量比と前記冷却塔ファンの風量比を変化させて算出した前記システム消費電力のうちで最小となる前記冷却塔の熱源水流量比と前記熱交換器の熱源水流量比と前記冷却塔ファンの風量比の最適値を算出するシミュレーターと、最小となる前記システム消費電力に基づいて前記冷却塔又は前記熱交換器の流量比、前記冷却塔ファンの風量比に制御する制御手段と、を備えたことを特徴としている。
【0007】
この場合において、前記切り替え手段は、前記冷却塔と前記熱交換器の間で前記熱源水を循環させて熱交換するとよい。
前記ヒートポンプは、冷水を製造するヒートポンプ式冷凍機と、前記冷水を搬送する冷水ポンプと、を備えているとよい。
また前記シミュレーターは、予め作成したデータベースを有し、冷水に放熱された熱量、外気湿球温度、前記熱交換器の地中温度に応じて前記データベースから前記インバーターの周波数、及び熱原水流量比、冷却塔風量比を抽出するとよい。
【0008】
また前記データベースは、前記冷水に放熱された熱量、外気湿球温度、前記熱交換器の地中温度に応じて、前記インバーター設定値の相対関係を示す制御テーブルであり、あらかじめ想定した冷水に放熱された熱量、外気湿球温度に対して、前記熱交換器の地中温度、熱交換器の熱源水入口温度、熱源水流量、冷却塔風量を変更して繰り返し計算を行い、システム全体の消費エネルギーが最も小さくなるインバーター周波数、及び熱原水流量比、冷却塔風量比が設定値として設けられているとよい。
この場合において、前記データベースは、湿球温度と、冷水負荷と、地中温度と、運転モードの相対関係を示す制御テーブルであるとよい。
【発明の効果】
【0009】
上記構成による本発明の熱源システムによれば、冷凍機に対する冷却塔と熱交換器の複数の接続形態を選択可能とし、シミュレーションにより構成機器の動作範囲であり、かつ熱源システム全体の消費電力が最小となる運転モードの選定と冷却水ポンプ、冷却塔ファンのインバーター周波数、バルブの開閉を決定し、その最適値で制御している。このため、システムを構成する冷却水ポンプ、冷却塔ファン、冷凍機の消費電力の合計を削減し、システム全体の省エネルギー化を図ることができる。
【0010】
また冷却塔と熱交換器の間で冷却水を循環させることにより、熱交換器で放熱が過剰に行われ、熱交換器外部に放熱を行う必要が生じた場合に冷却塔との間で熱交換を行うことで熱交換器の性能を回復させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の熱源システムの構成概略を示す図である。
【図2】熱源システムの運転モード1の説明図である。
【図3】熱源システムの運転モード2の説明図である。
【図4】熱源システムの運転モード3の説明図である。
【図5】熱源システムの運転モード4の説明図である。
【図6】熱源システムの運転モード5の説明図である。
【図7】本発明の熱源システムの制御方法の処理フローである。
【図8】熱源システムの運転方法テーブルの説明図である。
【図9】熱源システムの設定値テーブルの説明図である。
【図10】熱源システムの設定値テーブルの説明図である。
【図11】熱源システムの変形例の構成概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の熱源システムを添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
図1は本発明の熱源システムの構成概略を示す図である。図示のように本発明の熱源システム10は、冷凍機20と、冷却塔30と、熱交換器40と、第1及び第2冷却水供給手段50、60と、冷水供給手段70と、制御手段80とを主な基本構成としている。なお本実施形態ではヒートポンプの一例として冷凍機を用いて以下説明する。
【0013】
冷凍機20は、凝縮器、蒸発器、圧縮機、減圧室から構成されている。圧縮機によって圧力を高めた気体の冷媒は、凝縮器に押し込められる。そして凝縮器は加圧された冷媒から熱を奪う。凝縮器を流れる冷却水は、熱を奪って流出することにより高温となる。一方、蒸発器では冷媒が蒸発する際に冷水の熱を奪う。
【0014】
冷凍機20内の凝縮器(不図示)を冷却して温度上昇した冷却水は、温度を下げるために、本発明では、冷却塔30もしくは熱交換器40を用いて冷却している。
冷却塔30は、冷却塔ファン32を備えている。冷却塔30は冷却水と外気を接触させることにより、冷却水自身が蒸発し、その際に蒸発潜熱によって周囲の水から熱を奪って冷却水の温度を下げることができる。図1に示す冷却塔30は開放式であり、外気との間で熱交換を行って冷却水を製造している。
【0015】
熱交換器40は、地中に埋設された鋼管杭内部にUチューブ42と呼ばれる配管を挿入し、地中との伝熱を行うための熱媒体(冷却水等)を杭とUチューブ42の間隔部に充填することで構成される。年間を通して温度が一定な地中に熱交換器40を設置することでヒートポンプ(以下HPと略す)式冷凍機用の冷却水を熱交換器40に循環させ地中との間で熱交換を行って冷却水を製造している。
【0016】
本発明の熱源システム10は、熱源水となる冷却水が冷凍機20と冷却塔30の間を流れる第1冷却水供給手段50と、冷却水が冷凍機20と熱交換器40の間を流れる第2冷却水供給手段60を形成している。
第1冷却水供給手段50は、第1送り配管52と、第1戻り配管54と、冷却水ポンプ56を主な基本構成としている。
【0017】
第1送り配管52は、冷凍機20の冷却水出口と、冷却塔30の冷却水入口を繋ぐ配管であり、配管途中に冷却水ポンプ56と、第1流量計57と、第1温度計91と、第1及び第2二方弁101、102を備えている。第1二方弁101は、冷凍機20の冷却水出口側に取り付けている。第1二方弁101は配管を閉塞又は開放して冷却水の供給を制御することができる(以下の第2〜第9開放弁102〜109も同じ)。第2二方弁102は、冷却塔30の冷却水入口側に取り付けている。第1送り配管52は、第1及び第2二方弁101、102の間に冷凍機20側から第1温度センサー91、冷却水ポンプ56、第1流量計57を取り付けている。冷却水ポンプ56は、周波数を任意に調整可能な第1インバーター58と、第1インバーター58の消費電力を測定可能な第1電力計59を備えている。冷却水ポンプ56は冷凍機20から冷却塔30へ冷却水を供給するように構成し、第1流量計57は、第1送り配管52を流れる冷却水の流量を測定することができる。第1温度計91は冷凍機20の冷却水出口温度を測定することができる。
【0018】
第1戻り配管54は、冷却塔30の冷却水出口と冷凍機20の冷却水入口を繋ぐ配管であり、配管途中に第3〜第5二方弁103、104、105と、第2及び第3温度センサー92、93を備えている。第1送り配管52及び第1戻り配管54には、両者を繋ぐ第1バイパス管53を取り付けている。具体的に第1バイパス管53は第1二方弁101と冷却水ポンプ56の間の第1送り配管52と、第4及び第5二方弁104、105の間の第1戻り配管54と接続している。第1バイパス管53には第6二方弁106を取り付けている。第2温度センサー92は冷却塔30の冷却水出口温度を測定することができる。第3温度計93は、冷凍機20の冷却水入口温度を測定することができる。
【0019】
第2冷却水供給手段60は、第2送り配管62と、第2戻り配管64を主な基本構成としている。
第2送り配管62は、第1流量計57と第2二方弁102の間の第1送り配管52と、熱交換器40の冷却水入口を繋ぐ配管であり、電磁二方弁66と、第7二方弁107と、第2流量計67と第4温度計94を備えている。電磁二方弁66は第1送り配管52から第2送り配管62へ流れ込む冷却水の流量を後述する制御手段80の制御信号に基づいて調整することができる。第2流量計67は、第2送り配管64を流れる冷却水の流量を測定することができる。第4温度センサー94は、熱交換器40の冷却水入口温度を測定することができる。
【0020】
第2戻り配管64は、熱交換器40の冷却水出口と、第4二方弁104と第1バイパス管53の接続箇所の間の第1戻り配管54を繋ぐ配管であり、第8二方弁108を備えている。
【0021】
第1及び第2冷却水供給手段50、60には、第1戻り配管54と第2送り配管62を繋ぐ第2バイパス管68を取り付けている。具体的に第2バイパス管68は、第3及び第4二方弁103、104の間の第1戻り配管54と、第7二方弁107と第2流量計67の間の第2送り配管62に接続している。第2バイパス管68は第9二方弁109を取り付けている。
【0022】
冷凍機20の蒸発器(不図示)には、冷水供給手段70が接続している。冷水供給手段70は、第3送り配管72と、第3戻り配管74と、冷水ポンプ76を主な基本構成としている。
【0023】
第3送り配管72は、冷凍機20の冷水出口と接続し、配管途中に第5温度センサー95を取り付けている。第5温度センサー95は、冷凍機20の冷水出口温度を測定することができる。第3戻り配管74は、冷凍機20の冷水入口温度と接続し、配管途中に冷水ポンプ76と、第3流量計77と、第6温度計96を取り付けている。冷水ポンプ76は、周波数を任意に調整可能な第2インバーター78と、第2インバーター78の消費電力を測定可能な第2電力計79を備えている。冷水ポンプ76は外部から冷凍機20へ冷水を供給するように構成し、第3流量計77は、第3戻り配管74を流れる冷水の流量を測定することができる。第6温度計96は冷凍機20の冷水入口温度を測定することができる。
【0024】
前記冷却塔ファン32には第3インバーター33と第3電力計34を取り付けている。冷凍機20には第4電力計22を取り付けている。熱交換器40には、地中温度を測定可能な第7温度センサー97を取り付けている。熱源システム10には、外気の温度を測定可能な第8温度センサー98と、外気の湿度を測定可能な湿度センサー99を屋外に取り付けている。
【0025】
制御手段80は、第1〜第8温度センサー91〜98と、湿度センサー99と、第1〜第3インバーター58、78、33と、第1〜第9二方弁101〜109と、電磁二方弁66と、第1〜第3流量計57、67、77と、第1〜第4電力計59、79、34、22と、電気的に接続(不図示)しており、冷却塔30の冷却水流量比と熱交換器40の冷却水流量比と冷却塔ファン32の風量比の最適値を求めるシミュレーター82と、シミュレーター82で求めた冷却塔30の冷却水流量比と熱交換器40の冷却水流量比と冷却塔ファン32の風量比の最適値を出力するコントローラー84と、記憶回路86とを主な基本構成としている。
【0026】
シミュレーター82は、制御手段80による制御をシミュレーションして熱源システム10全体の消費電力などを算出するものである。
制御手段80には、冷却塔30の冷却水流量比と熱交換器40の冷却水流量比と冷却塔ファン32の風量比の最適値を求めるために必要なシステム上の各種センサーの測定値が入力される。具体的には第1〜第8温度センサー91〜98の測定温度、湿度センサー99の測定湿度、第1〜第4電力計59、79、34、22の測定消費電力、第1〜第3流量計57、67、77の測定流量が入力される。
【0027】
次に上記構成による本発明の熱源システム10の運転モードについて以下説明する。
図2は熱源システムの運転モード1の説明図である。
熱源システム10の運転モード1は、冷凍機20の冷却水を冷却塔30のみ供給している。具体的には第1〜第5二方弁101〜105を開放し、第6〜第9二方弁106〜109と、電磁二方弁66を閉止している。このような構成による熱源システム10は、冷凍機20で加熱された冷却水は、第1冷却水供給手段50の第1送り配管52から冷却塔30の冷却水入口へ供給される。冷却塔30で冷却された冷却水は、第1戻り配管54から冷凍機20の冷却水入口へ供給される。この運転モードは外気温度が低下した場合に適用することができる。
【0028】
図3は熱源システムの運転モード2の説明図である。
熱源システム10の運転モード2は、冷凍機20の冷却水を熱交換器40のみ供給している。具体的には第1、第7、第8、第5二方弁101、107、108、105と、電磁二方弁66を開放し、第2、第3、第4、第6、第9二方弁102〜104、106、109を閉止している。このような構成による熱源システム10は、冷凍機20で加熱された冷却水は、第1冷却水供給手段50の第1送り配管52から第2送り配管62を経由して熱交換器40の冷却水入口へ供給される。熱交換機40で冷却された冷却水は、第2戻り配管64から第1戻り配管54を経由して冷凍機20の冷却水入口へ供給される。この運転モードは外気よりも地中温度が低い場合に適用することができる。
【0029】
図4は熱源システムの運転モード3の説明図である。
熱源システム10の運転モード3は、冷凍機20の冷却水を冷却塔30及び熱交換器40へ並列に供給している。具体的には第6、第9二方弁106、109を閉止し、それ以外の二方弁101〜105、107、108と、電磁二方弁66を開放している。このような構成による熱源システム10は、冷凍機20で加熱された冷却水は、第1冷却水供給手段50の第1送り配管52から冷却塔30の冷却水入口へ供給される。冷却塔30で冷却された冷却水は、第1戻り配管54から冷凍機20の冷却水入口へ供給される。また冷凍機20で加熱された冷却水は、第1冷却水供給手段50の第1送り配管52から第2送り配管62を経由して熱交換器40の冷却水入口へ供給される。熱交換機40で冷却された冷却水は、第2戻り配管64から第1戻り配管54を経由して冷凍機20の冷却水入口へ供給される。このように熱交換器40と冷却塔30にそれぞれ冷却水が流れる並列運転を行うことができる。このとき電磁流量弁66の開度を調整することで熱交換器40と冷却塔30に分岐する流量比率を制御することが可能である。
【0030】
図5は熱源システムの運転モード4の説明図である。
熱源システム10の運転モード4は、冷凍機20の冷却水を冷却塔30及び熱交換器40へ直列に供給している。具体的には第4、第6、第7二方弁104、106、107と電磁二方弁66を閉止し、それ以外の二方弁101〜103、105、108、109を開放している。このような構成による熱源システム10は、冷凍機20で加熱された冷却水は、第1冷却水供給手段50の第1送り配管52から冷却塔30の冷却水入口へ供給される。冷却塔30で冷却された冷却水は、第1戻り配管54から第2バイパス管68を経由して第2送り配管62から熱交換器40の冷却水入口へ供給される。熱交換機40で冷却された冷却水は、第2戻り配管64から第1戻り配管54を経由して冷凍機20の冷却水入口へ供給される。このように冷却水が冷却塔30から熱交換器40へ流れる直列運転を行うことができる。運転モード3は冷却水の温度を最も効率的に低下させることができる。
【0031】
図6は熱源システムの運転モード5の説明図である。
熱源システム10の運転モード5は、冷凍機20の冷却水の供給を停止して冷却水を冷却塔30及び熱交換器40の間で循環させている。具体的には第1、第4、第7、第5二方弁101、104、107、105と電磁二方弁66を閉止し、それ以外の二方弁102、103、106、108、109を開放している。このような構成による熱源システム10は、冷却塔30で冷却された冷却水は、第1戻り配管54から第2バイパス管68を経由して第2送り配管62から熱交換器40の冷却水入口へ供給される。熱交換機40で加熱された冷却水は、第2戻り配管64から第1戻り配管54へ供給され、第1バイパス管53を経由して第1送り配管52から冷却塔30の冷却水入口へ供給される。このような運転モード5は、熱交換器40で放熱が過剰に行われ、熱交換器40外部に放熱を行う必要が生じた場合に冷却塔30との間で熱交換を行うことで熱交換器40の性能を回復するというもので、主に熱交換器40の性能劣化時に活用できる。
【0032】
本実施形態では冷凍機20に対して前記冷却塔30と前記熱交換器40をいずれか一方又は並列又は直列の運転モードで切り替えて接続する切り替え手段として第1〜第9二方弁101〜109と、電磁開放弁66を用いている。
本発明では制御手段80により運転モード1〜4の運転方法を消費電力が最も小さくなるように切り替え、熱交換器40の性能回復時に運転モード5に切り替えている。
【0033】
次に地中熱を熱源とするヒートポンプを利用した熱源システム10の運転方法について以下説明する。図7は本発明の熱源システム10の制御運転の処理フローを示したものである。
【0034】
まず第1〜第3流量計57、67、77で冷却水流量LL1、LL2、冷水流量Lと、第6及び第5温度センサー96、95で冷凍機冷水入口温度Tcw1、冷凍機冷水出口温度Tcw2と、第3及び第1温度センサー93、91で冷凍機冷却水入口温度Tcwd1、冷凍機冷却水出口温度Tcwd2と、第8温度センサー98、湿度センサー99で外気温度Ta、外気湿度RHと、第7温度センサー97で地中温度Tsと、を計測する。
【0035】
これらの計測値は制御システム80に入力されてシミュレーター82で冷水負荷Q1、冷却水負荷Q2が算出される(ステップ1)。
冷水負荷Q1は、測定された冷水流量L、冷凍機冷水入口温度Tcw1、冷凍機冷水出口温度Tcw2と、Cw(冷水比熱)、ρw(冷水密度)を用いて次式により算出することができる。
【0036】
【数1】
【0037】
冷却水負荷Q2は、測定された冷却水流量LL1、冷凍機冷却水入口温度Tcwd1、冷凍機冷却水出口温度Tcwd2と、Cw(冷水比熱)、ρw(冷水密度)を用いて次式により算出することができる。
【0038】
【数2】
【0039】
次に上記の算出値からシミュレーター82を用いて最適な運転モードを選択する(ステップ2)。
本発明における運転モードは5種類あり、図2〜図6に示すように本実施形態では運転モード1:冷却塔運転、運転モード2:熱交換器運転、運転モード3:冷却塔と熱交換器の並列運転、運転モード4:冷却塔と熱交換器の直列運転、運転モード5:冷却塔と熱交換器の冷却水循環運転としている。
【0040】
運転モードの判定に関しては、上記冷却水負荷Q2と、冷却水流量LL1、LL2と、冷凍機冷却水出口温度Tcwd2と、地中温度Tsと、外気温度Taと、外気湿度RHとを用いて、冷却水ポンプ56及び冷却塔ファン32が定格運転したときの運転モードの処理能力(冷却能力)を計算する(ステップ3)。
【0041】
この計算は運転モード1〜5について行う(ステップ4)。
そして処理能力が冷却水負荷Q2以上であり、かつ最も消費電力が小さい運転モードを決定する(ステップ5)。
運転モードを決定した後、コントローラー84を介して第1〜第9二方弁101〜109又は電磁二方弁66を開閉し運転方法を切り替える。
【0042】
次に各運転モードにおける最適値制御について以下説明する。
運転モード1の冷却塔運転では、冷却塔30の冷却水流量比と冷却塔ファン32の風量比を数パーセントずつ変化させながら、冷却塔冷却水出口温度を計算する。
【0043】
運転モード2の熱交換器運転では、熱交換器40の冷却水流量比を数パーセントずつ変化させながら熱交換器冷却水出口温度を計算する。
運転モード3の冷却塔と熱交換器の並列運転では、冷却塔30の冷却水流量比と、熱交換器40の冷却水流量比と、冷却塔ファン32の風量比を数パーセントずつ変化させながら、冷却塔冷却水出口温度と熱交換器冷却水出口温度を計算する。
【0044】
運転モード4の冷却塔と熱交換器の直列運転では、冷却塔運転では冷却塔30の冷却水流量比(=熱交換器40の冷却水流量比)と冷却塔ファン32の風量比を数パーセントずつ変化させながら、熱交換器冷却水出口温度を計算する。
【0045】
運転モードを決定した後、上記の方法で、冷却塔30の冷却水流量比と、熱交換器40の冷却水流量比と、冷却塔ファン32の風量比を数パーセントずつ変化させながら(ステップ6)、最適値を計算する(ステップ7)。
【0046】
そして冷凍機20の冷凍機冷却水入口温度Tcwd1を計算する(ステップ8)。
運転モード1,2,4では計算した冷却塔冷却水出口温度もしくは熱交換器冷却水出口温度が冷凍機冷却水入口温度Tcwd1となる。
【0047】
運転モード3の冷却塔30と熱交換機40の並列運転を行った場合の冷凍機冷却水入口温度Tcwd1は、冷却塔側冷却水流量LL_CT、冷却塔側冷却水出口温度Tout_ct、熱交換器側冷却水流量LL_HEX、熱交換器側冷却水出口温度Tout_hexを用いて次式により算出することができる。
【0048】
【数3】
【0049】
その冷凍機冷却水入口温度Tcwd1と冷水負荷Q1に対応した冷凍機COPを計算する(ステップ9)。冷却水温度と負荷Q1と冷凍機COPの関係については、冷凍機自体の既知の性能曲線をもとに推算する。
そして冷凍機COPと冷水負荷Q1から冷凍機消費電力W0を次式により計算する。
【0050】
【数4】
【0051】
この冷凍機消費電力W0に冷水ポンプ消費電力W1と、冷却水ポンプ消費電力W2と、冷却塔ファン消費電力W3を加えたシステム消費電力WsysとシステムCOP(SCOP)を次式により求める。
【0052】
【数5】
【0053】
【数6】
【0054】
このWsysとシステムCOPを冷却塔30の冷却水流量比と、熱交換器40の冷却水流量比、冷却塔ファン32の風量比について毎回計算を行い、Wsysが最小(システムCOPが最大)となる各流量比及び風量比を算出する(ステップ10)。
【0055】
そして上記の比率をシミュレーター82によって次式を用いて冷却水ポンプ56のインバーター周波数f_pump、冷却塔ファン32のインバーター(INV)周波数f_fanに換算する。
【0056】
ここで運転モード1では
【数7】
となる。
【0057】
運転モード2,4では
【数8】
となる。
【0058】
冷却水ポンプ56のインバーター周波数f_pumpは
【数9】
【0059】
冷却塔ファン32のインバーター(INV)周波数f_fanは
【数10】
と表すことができる。
【0060】
ここで、Fは定格周波数(50Hz又は60Hz)、rate_pumpは冷却水ポンプ流量比、rate_fanは冷却塔ファン風量比、LL0は定格周波数時の冷却水ポンプ流量を示している。
【0061】
これらの周波数をコントローラー84を介して出力し、ポンプ、ファンを運転する。運転モード3の並列運転のように系統が分岐する場合には、電磁二方弁によって、上記で計算した冷却塔30の冷却水流量比と、熱交換器40の冷却水流量比になるように制御を行う(ステップ11)。
【0062】
図7に示す熱源システムの制御運転の処理フローの計算を予め想定される湿球温度(外気温度と外気湿度から換算する)と、地中温度と負荷について行い、得られた運転モードと最適値をテーブル化することにより制御方法の処理を低減することができる。
【0063】
図8は熱源システムの運転方法テーブルの説明図である。具体的に図8は縦軸に冷水負荷を示し、横軸に湿球温度を示しており、各冷水負荷、湿球温度に基づいて最適値となる運転モード1〜5を示したデータベースである。
【0064】
図8に示すテーブルは任意の地中温度に対して作成されたデータである。このようなテーブルは任意の地中温度毎に作成することができる。
図9、図10は熱源システムの設定値テーブルの説明図である。具体的に図9、図10の縦軸に冷水負荷を示し横軸に湿球温度を示している。
【0065】
各冷水負荷、湿球温度、熱交換器40の地中温度に基づいて、図9に冷却水ポンプインバーター周波数(Hz)、冷却塔ファンインバーター周波数(Hz)、図10に熱交換器冷却水流量比(%)、冷却塔冷却水流量比(%)、冷却塔風量比(%)、冷凍機冷却水入口温度Tcwd1(℃)、冷却塔冷却水出口温度(℃)、熱交換器冷却水出口温度(℃)を示したデータベースである。
ここで、熱交換器冷却水流量比(%)、冷却塔冷却水流量比(%)はそれぞれの流量を冷却水ポンプ56の定格流量(定格周波数時の流量)で除算したものである。
【0066】
図10の熱交換器流量比(%)、冷却塔冷却水流量比(%)は、図8の運転モードに対応している。つまり運転モードが1の場合、熱交換器に冷却水は流れないため熱交換器冷却水流量比は0となる。運転モードが2の場合は、冷却塔に冷却水が流れないため、冷却塔冷却水流量比は0となる。運転モードが3の場合は、熱交換器、冷却塔に並列して流れているため、それぞれに流れる流量の比率が記載されている。運転モード4の場合は、熱交換器、冷却塔に直列して流れているため、それぞれに流れる流量の比率は等しく、その比率が記載されている。
なお、図9、図10の制御テーブルはある1つの地中温度に対して作成されたものであり、複数の地中温度に対して、上記の制御テーブルが存在する。
【0067】
あらかじめ図7の計算フローに基づいてシミュレーションを行い、図8、9、10に示すような最適値をデータベース(テーブル化)として制御手段80の記憶回路86を格納する。このようなデータベースにより計測値から算出された冷水負荷QQ1、外気湿球温度TWB、地中温度Tsに応じた冷却水流量、冷却塔ファン流量の最適値を記憶回路86に格納したテーブルから読み取り、インバーター周波数(冷却塔ファン32、冷却水ポンプ56)をシミュレーター82によって計算する。そしてコントローラー84を介して冷水ポンプ76のインバーター78、電磁二方弁66、冷却水ポンプ56のインバーター58、冷却塔ファン32のインバーター33に出力して、また電磁二方弁66の開閉によって熱交換器冷却水流量比(%)、冷却塔冷却水流量比(%)、冷却塔風量比(%)をテーブルから読み取った比率になるように制御することで最も消費電力が小さい運転を行うことができる。
【0068】
なお第1〜第4電力計59、79、34、22はシミュレーター82で予測する冷凍機20、冷却水ポンプ56、冷水ポンプ76、冷却塔ファン32の消費電力の実測値を測定している。この実測値と計算値を用いて計算時の補正係数を求めることができる。その補正係数をシミュレーター82での最適値計算やテーブルデータ等の作成時に反映させることでシミュレーター82での計算精度を高めることが可能になる。
【0069】
ここで冷却塔は、経年劣化等の影響で計算値と実測値との間に誤差が生じる場合がある。そのため計算精度を上げるための補正係数を求めるために、温度センサー92を冷却塔出口に設置し、出口温度を計測している。
【0070】
また図1に示す熱源システム10は開放式の冷却塔30を使用している場合、冷却塔30通過時に冷却水が大気開放される。しかし冷却水に大気開放による大気への拡散を避ける必要がある媒体を用いる場合、(一例として凍結防止のために凝固点が0℃未満である不凍液は、水以外の液体、もしくは水に添加物を加えて生成した液体であり、大気への拡散が好ましくない場合があり)は、開放式に換えて密閉式の冷却塔を用いることができる。
【0071】
次に本発明の熱源システム10の変形例について説明する。図11は熱源システムの変形例の構成概略を示す図である。図示のように変形例の熱源システム100は熱源システム10の開放式の冷却塔30に熱交換手段120、冷却水ポンプ122、配管130を加えた場合である。その他の構成は図1に示す熱源システム10と同一の構成でありその詳細な説明を省略する。
【0072】
冷凍機20の冷却水に不凍液を用いる場合、冷凍機20と熱交換器40と熱交換手段120の第1及び第2冷却水供給手段50、60では不凍液を用いる。一方、開放式の冷却塔30と熱交換手段120、冷却水ポンプ122、配管130の経路では冷却水を循環させて冷却塔30で冷却水を製造する。そして冷却水は熱交換手段120で不凍液(冷凍機冷却水)と熱交換を行い冷却する。
【0073】
このような変形例の熱源システム100によれば不凍液は大気開放することなく冷却することができる。なお変形例の熱源システム100に対しても運転モード1〜5を適用することができる。
本発明の熱源システムは、冷凍機のみならず、熱媒体を用いた熱移動可能なヒートポンプを備えた他の熱交換手段であっても適用することができる。
【符号の説明】
【0074】
10………熱源システム、20………冷凍機、22………第4電力計、30………冷却塔、32………冷却塔ファン、33………第3インバーター、34………第3電力計、40………熱交換器、42………Uチューブ、50………第1冷却水供給手段、52………第1送り配管、53………第1バイパス管、54………第1戻り配管、56………冷却水ポンプ、57………第1流量計、58………第1インバーター、59………第1電力計、60………第2冷却水供給手段、62………第2送り配管、64………第2戻り配管、66………電磁二方弁、67………第2流量計、68………第2バイパス管、70………冷水供給手段、72………第3送り配管、74………第3戻り配管、76………冷水ポンプ、77………第3流量計、78………第2インバーター、79………第2電力計、80………制御手段、82………シミュレーター、84………コントローラー、86………記憶回路、91………第1温度センサー、92………第2温度センサー、93………第3温度センサー、94………第4温度センサー、95………第5温度センサー、96………第6温度センサー、97………第7温度センサー、98………第8温度センサー、99………湿度センサー、101………第1二方弁、102………第2二方弁、103………第3二方弁、104………第4二方弁、105………第5二方弁、106………第6二方弁、107………第7二方弁、108………第8二方弁、109………第9二方弁。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートポンプと、
地中熱と熱交換して前記ヒートポンプに供給する熱源水を製造する熱交換器と、
冷却塔ファンで外気と熱交換を行い前記ヒートポンプに供給する前記熱源水を製造する冷却塔と、
前記熱源水を前記ヒートポンプに供給する熱源水ポンプと、
前記ヒートポンプに対して前記冷却塔と前記熱交換器をいずれか一方又は並列又は直列の運転モードで切り替えて接続する切り替え手段と、
ヒートポンプ負荷と熱源水負荷を算出し、前記熱源水負荷以上となる冷却能力若しくは加熱能力の前記運転モードを選択し、前記冷却塔の熱源水流量比と前記熱交換器の熱源水流量比と前記冷却塔ファンの風量比を変化させて算出した前記システム消費電力のうちで最小となる前記冷却塔の熱源水流量比と前記熱交換器の熱源水流量比と前記冷却塔ファンの風量比の最適値を算出するシミュレーターと、
最小となる前記システム消費電力に基づいて前記冷却塔又は前記熱交換器の流量比、前記冷却塔ファンの風量比に制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とする熱源システム。
【請求項2】
前記切り替え手段は、前記冷却塔と前記熱交換器の間で前記熱源水を循環させて熱交換することを特徴とする請求項1に記載の熱源システム。
【請求項3】
前記ヒートポンプは、
冷水を製造するヒートポンプ式冷凍機と、
前記冷水を搬送する冷水ポンプと、
を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の熱源システム。
【請求項4】
前記シミュレーターは、予め作成したデータベースを有し、前記冷水に放熱された熱量、外気湿球温度、前記熱交換器の地中温度、に応じて前記データベースから前記インバーターの周波数、及び熱原水流量比、冷却塔風量比を抽出することを特徴とする請求項3に記載の熱源システム。
【請求項5】
前記データベースは、前記冷水に放熱された熱量、外気湿球温度、前記熱交換器の地中温度に応じて、前記インバーター設定値の相対関係を示す制御テーブルであり、あらかじめ想定した冷水に放熱された熱量、外気湿球温度に対して、前記熱交換器内の地中温度、前記熱交換器の熱源水入口温度、熱源水流量、冷却塔風量を変更して繰り返し計算を行い、システム全体の消費エネルギーが最も小さくなるインバーター周波数、及び熱原水流量比、冷却塔風量比が設定値として設けられていることを特徴とする請求項4に記載の熱源システム。
【請求項6】
前記データベースは、湿球温度と、冷水負荷と、地中温度と、運転モードの相対関係を示す制御テーブルであることを特徴とする請求項4に記載の熱源システム。
【請求項1】
ヒートポンプと、
地中熱と熱交換して前記ヒートポンプに供給する熱源水を製造する熱交換器と、
冷却塔ファンで外気と熱交換を行い前記ヒートポンプに供給する前記熱源水を製造する冷却塔と、
前記熱源水を前記ヒートポンプに供給する熱源水ポンプと、
前記ヒートポンプに対して前記冷却塔と前記熱交換器をいずれか一方又は並列又は直列の運転モードで切り替えて接続する切り替え手段と、
ヒートポンプ負荷と熱源水負荷を算出し、前記熱源水負荷以上となる冷却能力若しくは加熱能力の前記運転モードを選択し、前記冷却塔の熱源水流量比と前記熱交換器の熱源水流量比と前記冷却塔ファンの風量比を変化させて算出した前記システム消費電力のうちで最小となる前記冷却塔の熱源水流量比と前記熱交換器の熱源水流量比と前記冷却塔ファンの風量比の最適値を算出するシミュレーターと、
最小となる前記システム消費電力に基づいて前記冷却塔又は前記熱交換器の流量比、前記冷却塔ファンの風量比に制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とする熱源システム。
【請求項2】
前記切り替え手段は、前記冷却塔と前記熱交換器の間で前記熱源水を循環させて熱交換することを特徴とする請求項1に記載の熱源システム。
【請求項3】
前記ヒートポンプは、
冷水を製造するヒートポンプ式冷凍機と、
前記冷水を搬送する冷水ポンプと、
を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の熱源システム。
【請求項4】
前記シミュレーターは、予め作成したデータベースを有し、前記冷水に放熱された熱量、外気湿球温度、前記熱交換器の地中温度、に応じて前記データベースから前記インバーターの周波数、及び熱原水流量比、冷却塔風量比を抽出することを特徴とする請求項3に記載の熱源システム。
【請求項5】
前記データベースは、前記冷水に放熱された熱量、外気湿球温度、前記熱交換器の地中温度に応じて、前記インバーター設定値の相対関係を示す制御テーブルであり、あらかじめ想定した冷水に放熱された熱量、外気湿球温度に対して、前記熱交換器内の地中温度、前記熱交換器の熱源水入口温度、熱源水流量、冷却塔風量を変更して繰り返し計算を行い、システム全体の消費エネルギーが最も小さくなるインバーター周波数、及び熱原水流量比、冷却塔風量比が設定値として設けられていることを特徴とする請求項4に記載の熱源システム。
【請求項6】
前記データベースは、湿球温度と、冷水負荷と、地中温度と、運転モードの相対関係を示す制御テーブルであることを特徴とする請求項4に記載の熱源システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−127573(P2012−127573A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279428(P2010−279428)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】
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