説明

熱源冷却構造

【課題】 送風機2の給気口2bから離れた位置に熱源3が配置されている場合であっても熱源3を効率よく冷却できる熱源冷却構造を得る。
【解決手段】 周囲の気体を所定方向に供給する羽根2cと、この羽根2cを覆い、上記所定方向に対応する位置に給気口2bが設けられたカバー2dとを有する送風機2、この送風機2から供給される気体を入り口4aから取り込んで熱源3に伝搬するダクト4、上記入り口4aの縁と上記給気口2bの縁に介在する弾性部材9を備え、上記送風機2はダクト4に対し着脱自在に取り付けられ、該送風機2がダクト4に取り付けられると上記弾性部材9が圧縮されて、上記給気口2bの縁と上記入り口4aの縁とが密着する熱源冷却構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、熱源を冷却する構造に関するものであって、特に、送風機から離れて配置された熱源を効率よく冷却するものに関する。
【背景技術】
【0002】
通信機器等の電子装置は稼動状況に応じて高温度になるため、冷却することが重要である。また、冷却手段の一つとして、送風機が用いられるが、この送風機から出力される風が熱源に効率よく伝搬されることが望まれる。
従来、送風機から出力される風が熱源に効率よく伝搬される構造として、下記特許文献1に記載された冷却ファン取り付け構造があった。
【0003】
この冷却ファンの取り付け構造は、回路ユニットが収容されて上部に開口を有する筐体、この筐体に対して開閉可能に取り付けられた開閉蓋、この開閉蓋の内壁に突出して取り付けられ、上記開閉動作に応じて上記開口に収容される冷却ファン、この冷却ファンと上記開閉蓋との取り付け位置の周辺に設けられたゴム製ガスケットを備えており、上記開閉蓋を閉状態にすることによって、上記ゴム製ガスケットと上記開口の周縁とが密着するものである。
【0004】
このような冷却ファン取り付け構造によれば、開閉蓋の内壁と筐体の開口の周縁とがゴム製ガスケットによって密着して連結されるので、冷却ファンによって筐体内部へ流入する風が外部へ漏れることを防止でき、回路ユニットを冷却することが可能になる。
【0005】
【特許文献1】特開平8−46379号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、送風機の給気口は、熱源の近傍に配置することができる場合ばかりでなく、スペース上の制約等により、熱源から離れた位置に配置せざるを得ない場合がある。
【0007】
従って、上記特許文献1に記載された冷却ファン取り付け構造のように、冷却ファンから出力される風が拡散する場合は、冷却ファンの給気口が熱源から離れて配置されているときに熱源を効率よく冷却することができない。
【0008】
また、従来技術は、冷却ファンと開閉蓋との取り付け位置の周辺にゴム製ガスケットが設けられているため、冷却ファンの後方で、開閉蓋と開口の周縁とが密着して連結されるに過ぎない。
【0009】
従って、送風機の給気口から出力された風が、冷却ファンの側壁と、この冷却ファンの周りに位置する筐体の壁部との間に生じる隙間に回りこみ、出力した風を高効率で熱源に流すことができない。
【0010】
また、冷却ファンは、開閉蓋の一端に取り付けられた軸を中心にして回転移動することによって、筐体に形成された開口に収容される構造となっているため、開口の大きさは冷却ファンの外形と比べて大きく形成しておく必要がある。そのため、冷却ファンを開口内に収容した状態で、冷却ファンの側壁と、この冷却ファンの周りに位置する筐体の壁部との間に隙間を確保しておく必要がある。
【0011】
従って、冷却ファンの側壁と、この冷却ファンの周りに位置する筐体の壁部との間に形成される隙間に回り込む風の量が大きくなる。
【0012】
そこで、この発明は、送風機の給気口から離れた位置に熱源が配置されている場合であっても熱源を効率よく冷却できる熱源冷却構造を得ることを目的にする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明は、周囲の気体を所定方向に供給する羽根と、この羽根を覆い、上記所定方向に対応する位置に給気口が設けられたカバーとを有する送風機、この送風機から供給される気体を入り口から取り込んで熱源に伝搬するダクト、上記入り口の縁と上記給気口の縁に介在する弾性部材を備え、上記送風機はダクトに対し着脱自在に取り付けられ、該送風機がダクトに取り付けられると上記弾性部材が圧縮されて、上記給気口の縁と上記入り口の縁とが密着する熱源冷却構造である。
【発明の効果】
【0014】
この発明は、送風機の給気口の縁とダクトの入り口の縁との間に介在された弾性部材が圧縮されて、上記送風機の給気口の縁と上記ダクトの入り口の縁とが弾性部材を介して密着して連結されるので、上記送風機の給気口の縁と上記ダクトの入り口の縁との連結箇所から通風が漏れることを防止することができる。従って、給気口から出力される風が、送風機の周辺に回りこまず、この送風機から出力される風が熱源に効率よく伝搬されるため、熱源を効率よく冷却することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
実施の形態1.
実施の形態1に係る熱源冷却構造について、図1から図5に基づいて説明する。
【0016】
図1は、実施の形態1に係る熱源冷却構造を含む通信装置を示す三面図である。
【0017】
通信装置100は、ラック1、送風機2、通信機器ユニット3、吸気ダクト4、排気ダクト5、スライド棚6、圧縮方向移動用板7、スライド機構8、パッキン9及び制御ユニット23を備えている。
【0018】
ラック1は、底板1g、天板1h、前方側板1i、右方側板1j、後方側板1k及び左方側板1lによって形成された直方体状の筐体であり、この筐体内部にガイドピン15a(突出部)が配置されている。
【0019】
前方側板1iは、フロントパネル22を有しており、前方側板1iを構成する板に形成された開口22aに、フロントパネル22が嵌め込まれた構成になっている。このフロントパネル22は、通信機器ユニット3を制御する信号を外部から与える入力キー(図示せず)を備えた外部インターフェースである。その入力キーは、地上から1m〜1.8m程度の高さに設けられているため、ユーザの作業性は良好である。
【0020】
後方側板1kは、送風機2の後方を覆わない形状及び大きさで配置されている。
【0021】
送風機2は、圧縮方向移動用板7に搭載され、ラック1内の、後方上部に配置されている。送風機2のカバー2dは、周囲の空気をカバー2d内に流入させる内部用吸気口2aと、この内部用吸気口2aから流入した空気をカバー2dから排出するダクト用給気口(給気口)2bとが形成されている。そして、送風機2の後方が後方側板1kに覆われていないため、ラック1から送風機2を取り出すことが可能である。また、送風機2は、ラック1内に配置されている状態で、内部用吸気口2aが後方側板1k等によって覆われていないため、ラック1外部の空気を送風機2のカバー2d内へ十分吸気できる構成になっている。また、送風機2は、圧縮方向移動用板(圧縮方向移動部材)7を介してスライド棚(搬送部材)6に搭載されている。また、ラック1内に配置されているガイドピン15aが、圧縮方向移動用板7に形成されているガイド用溝14と当接するように配置されている。
【0022】
通信機器ユニット3は、ラック1の底板1g上に複数個積み重ねられて配置されている。また、各通信機器ユニット3は、直方体状の外装筐体3eを有する。この外装筐体3eの対向する二つの側壁にそれぞれ開口が形成されており、これらの開口が放熱性筒状部材3dで連結されている。この放熱性筒状部材3dの空洞部分が通風経路3aとして作用する。
【0023】
通風経路3aは、入り口3bから流入する空気を出口3cに排出する。
【0024】
通信機器ユニット3内の電子部品(図示せず)は、外壁である外装筐体3eと、内壁である放熱性筒状部材3dとの間に配置されており、上記電子部品(図示せず)と通風経路3aとは伝熱部材(図示せず)で連結されている。したがって、上記電子部品(図示せず)から生じた熱は、伝熱部材(図示せず)及び放熱性筒状部材3dを通じて、通風経路3aに排出される。また、通信機器ユニット3の背面には、外部装置と信号を交換する入出力端子(図示せず)が設けられている。したがって、通信機器ユニット3の背面から作業を行えることが望ましい。その点、このラック1内の配置では、送風機2が、複数の通信機器ユニット3全体の高さよりも高い位置に配置されているため、通信機器ユニット3の背面に作業用スペース27が確保できる。
【0025】
吸気ダクト4は、右方側板1jに沿って配置されており、底板1g及び天板1hに設けられた支持部材(図示せず)によって支持されて固定されている。また、吸気ダクト4には入り口4aと出口4bとが形成されている。吸気ダクト4の入り口4aから流入した気体は、出口4bまで伝搬され、熱源に伝搬される。
【0026】
吸気用ダクト4は、各通信機器ユニット3内部の通風経路3aに流入する風が均一になるように、各通信機器ユニット3近傍の断面を維持して緩やかなカーブ4cを有する形状になっている。また、入り口4aから見て、カーブ4cを過ぎた地点に、整流板4dが複数枚配設されている。
【0027】
吸気ダクト4の出口4bは、通信機器ユニット3の通風経路3aの入り口3b近傍に配設される。また、排気ダクト5には、通信機器ユニット3の通風経路3aの出口3c近傍に配設される入り口5aと、この入り口5aから流入した気体をラック1の外部へ排出する出口5bが設けられている。
【0028】
スライド棚6は、スライド機構8によってラック1に対して、前後(前方側板1i側が前、後方側板1j側が後ろ)にスライド自在に取り付けられている。
【0029】
圧縮方向移動用板7は、ガイド用溝14が形成されていると共に、スライド棚6に対してスライド自在に取り付けられている。
【0030】
スライド機構8は、後述するように支持されることによって、ラック1内の所定の高さに配置されている。
【0031】
パッキン9は、吸気ダクト4の入り口4aの縁に貼着されている。また、パッキン9は、送風機2のカバー2dに形成されたダクト用給気口2bの縁に押し当てられる位置に配置されている。
【0032】
ガイド用溝14は、圧縮方向移動用板7に形成されている。また、ガイド用溝14は、、スライド棚9のスライド方向に対して斜め方向に切り欠かれている。スライド棚6がラック1内に収容されると、ガイド用溝14内に、ガイドピン15aが収容される。
【0033】
制御ユニット23は、フロントパネル22から入力された信号に基づいて通信機器ユニット3を制御する装置であり、支持部材(図示せず)に支持されて、通信機器ユニット3の上方に配置されている。
【0034】
図2は、ラック1に設けられたスライド機構8を示す斜視図である。
ラック1の骨格を構成するラックベース1aには、各々板金からなる左後ろ側フレーム1b、左前側フレーム1c、右前側フレーム1d、右後ろ側フレーム1e、左最前フレーム(図示せず)、右最前フレーム(図示せず)が、溶接されることによって植設されている。上述の各フレーム1a〜1dで、スライド機構8が水平に支持されている。また、左後ろ側フレーム1bと右後ろ側フレーム1eには、これらの間を渡すように、図1で示す後方側板1k(図2において図示せず)が取り付けられている。また、左後ろ側フレーム1bと、左最前フレーム(図示せず)とに、これらのフレームによる間を渡すように、図1で示す左方側板1l(図2において図示せず)が取り付けられている。また、右後ろ側フレーム1eと、右最前フレーム(図示せず)とに、これらのフレームによる間を渡すように、図1で示す右方側板1j(図2において図示せず)が取り付けられている。
【0035】
スライド機構8は、左後ろ側フレーム1bと左前側フレーム1cとの間にスライド機構8を構成するスライドレール取り付け用フレーム8dが水平に取り付けられると共に、右後ろ側フレーム1eと右前側フレーム1dとの間にスライド機構8を構成するスライドレール取り付け用フレーム8cが水平に取り付けられている。
【0036】
また、スライドレール取り付け用フレーム8dに取り付けられたスライドレール8bと、スライドレール取り付け用フレーム8cに取り付けられたスライドレール8aとの間に、スライドレール8bとスライドするスライド用金具8m及びスライドレール8aとスライドするスライド用金具(図示せず)を備えたスライド棚6が取り付けられており、スライド棚6は、ラック1から外部へ引き出し可能に配置されている。
【0037】
なお、スライドレール取り付け用フレーム8cは、第1固定面8fが右後ろ側フレーム1eに螺着されると共に、第2固定面8iが右前側フレーム1dに螺着されている。
また、スライドレール取り付け用フレーム8dは、第1固定面8fが、左後ろ側フレーム1bに螺着されると共に、第2固定面8kが、右前側フレーム1cに螺着されている。
【0038】
また、ラック1は、スライド棚6をラック1内に収容した状態で、スライド棚6のスライド移動を規制するロック機構24、25を備えている。
【0039】
ロック機構24は、スライド棚6の厚み方向の第1側面に取り付けられたロック用板金24aを折り曲げて形成したロック用固定面24bが、右後ろ側フレーム1eの一部の面に接しており、ロック用固定面24bに形成されたロック用開口24c、右後ろ側フレーム1eに形成されたロック用開口1f、第2固定面8hに形成されたロック用開口(図示せず)を貫通する螺子24d及びこの螺子24dと嵌め合わさるナット(図示せず)によって、スライド棚6のスライド方向の移動が規制される。
【0040】
ロック機構25は、スライド棚6の厚み方向の第2側面に取り付けられたロック用板金25aを折り曲げて形成したロック用固定面25bが、スライドレール取り付け用フレーム8dの第2固定面8jに接しており、ロック用固定面25bに形成されたロック用開口25c、第2固定面8jに形成されたロック用開口8lを貫通する螺子25d及びこの螺子25dと嵌め合わさるナット(図示せず)によって、スライド棚6のスライド方向の移動が規制される。
【0041】
また、スライドレール取り付け用フレーム8c、8dは、延出部を有する一枚の板金かが折り曲げられて形成された部材であり、第1固定面8f、8gは、上記延出部の延出方向に平行な方向を軸としてクランク状に折り曲げられて形成された面である。また、この面と異なる面に配置された第2固定面8h、i、j、kは、上記延在部が折り畳まれて形成された面である。
【0042】
また、スライドレール取り付け用フレーム8c、8dには、ガイドピン用金具8eが架設されている。そして、ガイドピン用金具8eは、板金が長手方向に折り曲げられて形成され、折り曲げられた第1面8e1はスライドレール取り付け用フレーム8c、8dへの螺着に用いられ、折り曲げられた第2面8e2は、スライド棚6の収容方向の移動を規制するために用いられる。
【0043】
図3は、ガイドピン(ガイド用部材)15a及びガイドピン用金具8eを組み合わせた構造を示す断面図である。
ガイドピン用金具8eに設けられているガイドピン(突出部)15aの組み付け方法を、図3に基づいて説明する。
【0044】
円柱部材15は、ガイドピン15a及び螺子溝15bからなる。
ガイドピン用金具8eには、開口8kが形成されており、この開口8kには、円柱部材15が貫通し、貫通している螺子溝15bが、ガイドピン用金具8eの裏面に配置されているナット26に固定されることにより、ガイドピン15aがガイドピン用金具8eに組み付けられる。なお、ガイドピン15aの円周面は鏡面仕上げされている。
【0045】
図4は、送風機2、スライド棚(搬送部材)6、圧縮方向移動用板(圧縮方向移動部材)7の構造を示す平面図、図5は、送風機2、スライド棚6、圧縮方向移動用板7の構造を示す断面図である。
【0046】
送風機2、スライド棚6、圧縮方向移動用板7の取り付け構造を図4、図5に基づいて説明する。
送風機2を構成するカバー2dの内壁に形成された開口2eを内側から貫通するボルト11は、圧縮方向移動用板7を厚み方向に貫通して取り付けられたガイドボス10、スライド棚6の圧縮方向移動用板7との接触面に形成されたガイド穴13を貫通し、スライド棚6の上記接触面の裏面に配置されたナット12に固定される。なお、ガイド穴13は、ボルト11及びボルト11の周囲を覆うガイドボス10よりも十分大きく形成されており、スライド棚6に対して、圧縮方向移動用板7が、移動可能に取り付けられている。
【0047】
図6は、送風機2の構造を、遠心型送風機の羽根形状を示す断面図である。なお、この断面図は、(株)工業調査会から発行されている著書である「電子機器設計のためのファンモータと騒音・熱対策」の125頁に記載された図から引用したものである。
遠心型送風機の構成を図6に基づいて説明する。
【0048】
送風機2は遠心型送風機であり、図6に示す羽根の形状を有している。この羽根2cは、図で示す一点鎖線を中心に回転し、この回転面上に複数枚設けられている。なお、羽根2cは、内部用吸気口2aに対応する位置から図6に示すa方向に吸引される風を、反射面2fによって、ダクト用給気口2bに対応する位置に向かうb方向へ供給する。
このように、遠心型送風機の場合、吸引する風の方向と、供給する風の方向とが90°異なるため、内部用吸気口2aと、ダクト用給気口2bとの方向が90°異なる状態で配置すると、ダクト用給気口2bから供給される風の圧力損失を少なくすることが出来る。
【0049】
図7はラック1から送風機2を引き出した状態を示す構成図、図8はラック1へ送風機2を収容している途中で、ガイドピン15aに斜面14aが当接した状態を示す構成図、図9はラック1へ送風機2を完全に収容した状態を示す構成図である。
【0050】
ラック1へ送風機2を収容する動作を図7〜9に基づいて説明する。
【0051】
まず、図7で示すように、送風機2をラック1から引き出した状態で圧縮方向移動用板7に形成された斜面14aの入り口14bが、ガイドピン用金具8eに設けられているガイドピン15aとの位置が対応していることを確認して、スライド棚6がスライド機構8に従ってラック1内へ収容する。
【0052】
この状態からスライド棚6がある程度ラック1内へ収容されると、図8に示すように、圧縮方向移動用板7に形成された斜面14aがガイドピン15aに当接する。この状態では、送風機2のダクト用給気口2bの縁とパッキン9とは隙間が空いた状態となっている。
【0053】
この当接状態からさらにスライド棚6をラック1内へ移動させる方向に力を印加すると、図8に示すように、スライド板7がa方向に反力を受ける。この反力を受けた圧縮方向移動用板7は、吸気ダクト4の入り口4aの方向に移動し、送風機2のダクト用給気口2bの縁が、パッキン9に当接されてそのパッキン9を圧縮する。その結果、ダクト用給気口2bの縁と、吸気ダクト4の入り口4aの縁との機密性が高まり、吸気ダクト4に流入する風の圧力損失を低減することができる。
【0054】
その後、図2に示すように、螺子24gによってロック用固定面24bと右後ろ側フレーム1eとを締結すると共に、螺子25gによってロック用固定面25bと第2固定面8jとを締結し、スライド棚6のスライド方向の移動を規制する。その結果、パッキン9の復元力により、スライド棚6がラック1から飛び出ることや、パッキン9が十分圧縮されないことにより、ダクト用給気口2bの縁と、吸気ダクト4の入り口4aの縁との機密性が不十分となることが防止できる。
【0055】
ラック1からスライド棚6を引き出す場合は、図2で示す螺子24d、25dによる締結を解除し、スライド棚6をラック1外へ引き抜く方向へ移動させる。その際、図9に示すd方向に圧縮方向移動用板7が反力を受け、圧縮方向移動用板7がスライド棚6に対してスライドする。その結果、スライド棚6を完全に引き出した状態で、ガイドピン15aの位置は、ガイド用溝14の入り口14bに対応する位置に配置される。
【0056】
実施の形態1に係る通信装置100における通信機器ユニット3の冷却動作を図1に基づいて説明する。
送風機2は、内部用吸気口2aから吸引した風を内部の遠心型送風機用の羽根2cを用いて吸引方向と90°異なる方向へダクト用給気口2bから風を供給する。この供給により、吸気ダクト4内の圧力が高まり、圧力が低い場所へ風の流れが生じる。その結果、通風経路3aへ風が流れ込み、通信機器ユニット3から生じている熱を排気ダクト5へ排気する。排気ダクト5へ流入した風は、より圧力の低い外部へ出口5bから排気される。
【0057】
なお、吸気ダクト4は、カーブ4cを通過した地点で、整流板4dによって、風が吸気ダクト4の断面上で均一な速度になるため、各通信機器ユニット3に流入する風は、各通風経路内においても、均一な風を流すことができる。そのため、各通信機器ユニット3内の電子部品(図示せず)が、場所によって冷却性能を得られない等の問題を抑制できるため、一部の電子部品(図示せず)の寿命は長いが、他の一部の電子部品(図示せず)の寿命は極端に短い等といった症状を抑制できる。そのため、通信装置100全体の寿命を延ばすことができる。
【0058】
以上説明したとおり、実施の形態1に係るラック1によれば、周囲の気体を所定方向に供給する羽根2cと、この羽根2cを覆い、上記所定方向に対応する位置に給気口が設けられたカバー2dとを有する送風機2、この送風機2から供給される気体を入り口4aから取り込んで通信機器ユニット(熱源)3に伝搬するダクト4、上記入り口4aの縁と上記給気口2bの縁に介在するパッキン(弾性部材)9を備え、上記送風機2は吸気ダクト(ダクト)4に対し着脱自在に取り付けられ、該送風機2が吸気ダクト4に取り付けられると上記パッキン9が圧縮されて、上記給気口2bの縁と上記入り口4aの縁とが密着する熱源冷却構造であるので、上記送風機2のダクト用給気口(給気口)2bの縁と上記吸気ダクト(ダクト)4の入り口4aの縁との連結箇所から通風が漏れることを防止することができる。従って、ダクト用給気口(給気口)2bから出力される風が、送風機2の周辺に回りこまず、この送風機2から出力される風が通信機器ユニット(熱源)3に効率よく伝搬されるため、通信機器ユニット3を効率よく冷却することができる
【0059】
また、吸気ダクト(ダクト)4に密着させる圧縮方向に送風機2をガイドするガイドピン(ガイド用部材)15aを備え、このガイドピン15aに従って、上記送風機2が収容方向(搬送方向)と異なる方向に移動して上記吸気ダクト4に密着して取り付けられるので、収納方向と機密性を得るための圧縮方向とが異なる場合であっても、通信機器ユニット3を効率良く冷却することができる。
【0060】
また、吸気ダクト(ダクト)4に対して移動可能に配設され、該移動に応じて送風機2が吸気ダクト4に取り付けられるように搬送されるスライド棚(搬送部材)6を備えるので、通信機器ユニット3を効率良く冷却するラック1を、送風機2の取り付け作業を容易にしたうえで提供できる。なお、特に送風機2の重量が大きい場合に有効である。
【0061】
また、スライド棚(搬送部材)6に取り付けられ、送風機2を吸気ダクト(ダクト)4に密着させる圧縮方向に移動自在な圧縮方向移動用板(圧縮方向移動部材)7を備えるので、収納方向と機密性を得るための圧縮方向とが異なるラック1であっても、通信機器ユニット3を効率良く冷却するラック1を、送風機2の取り付け作業を容易にしたうえで提供することができる。なお、特に送風機2の重量が大きい場合に有効である。
【0062】
また、圧縮方向移動用板(圧縮方向移動部材)7は、送風機2を該送風機2の収納方向と異なる方向に移動させる斜面14aと共に、送風機2を引き出す方向と異なる方向に移動させる斜面14cを有しているので、送風機2をラック1から引き出した時に、ガイド用溝14の入り口14bにガイドピン15aの位置をあわせることができる。
【0063】
また、ガイドピン(突出部)15aは、円柱状であり、該円柱の弧を形成する面の一部が、斜面14aに当接するので、収容動作及び引き出し動作に対する摩擦による抵抗が小さくなり、作業性が向上する。さらに、ガイドピン15aの円周面は鏡面仕上げされているため、上記摩擦による抵抗がさらに小さくなる。
【0064】
また、送風機2は、羽根2cが回転することにより、周囲から気体を吸い込み、上記羽根2cの回転軸の遠心方向に気体を給気する遠心型送風機であるため、ラック1内の収納スペースの効率化を図ることができる。
【0065】
実施の形態2.
図10は、実施の形態2に係るスライド用板6と圧縮方向移動用板7との固定構造を示す断面図である。
【0066】
実施の形態2に係るラック1内部の、スライド用板6と圧縮方向移動用板7との固定構造を図10に基づいて説明する。
スライド棚6と圧縮方向移動用板7との間には、摩擦抵抗の小さい樹脂材料製の滑り板16が配置されており、スライド棚6と圧縮方向移動用板7とをスライドさせる際に、摩擦による抵抗が低減する。従って、スライド棚6をラック1内に収容する場合及びスライド棚6をラック1から引き出す場合の作業性が向上する。
また、その他の構成は実施の形態1に係るものと同様であるので説明を省略する。
【0067】
なお、スライド棚6と圧縮方向移動用板7との摩擦が少なくなるものの、実施の形態1で示すように、スライド棚6は、ラック1に設けられているロック用固定面6c、6dに螺着されているため、パッキン9の復元力によってスライド棚6がラック1から飛び出ることや、パッキン9が十分圧縮されないことにより、ダクト用給気口2bの縁と、吸気ダクト4の入り口4aの縁との機密性が不十分となることが防止できる。
【0068】
実施の形態3.
図11は、実施の形態3に係るガイドピン15aと圧縮方向移動用板7との構成を示す断面図である。
【0069】
この実施の形態3に係るラック1内部の、ガイドピン15aと圧縮方向移動用板7との構成を図11に基づいて説明する。
ガイドピン15aには、円筒状のカラー17が遊嵌されており、ガイドピン15aの端部がカラー17の外径よりも大きな径で形成されている。そのため、カラー17はガイドピン15aに対して回転自在となる。その他の構成は、実施の形態1と同様であるため説明を省略する。
【0070】
以上のような構成によれば、スライド棚6をラック1へ収容する場合及びラック1から引き出す場合に、斜辺14aがカラー17との間に生じる摩擦によってカラー17が回転するので、スライド棚6の収容動作及び引き出し動作を行う場合に作業者に要求される力が低減され、作業性が向上する。
【0071】
実施の形態4.
図12は、実施の形態4に係るスライド棚6と圧縮方向移動用板7との構成を示す断面図、図13は、実施の形態4に係る圧縮方向移動用板7と送風機2との一部の構成を示す斜視図である。
【0072】
この実施の形態4に係るラック1内部の、スライド棚6と圧縮方向移動用板7との構成を図12、図13に基づいて説明する。
送風機2のカバー2dの内側から、カバー2d、圧縮方向移動用板7を貫通するように金具20がカバー2dに接着されている。また、この金具20には、図12の断面と垂直に交わる方向の平面に開口20aが形成されている。一方、スライド棚6の表面には、金具21が圧縮方向移動用板7から突出している部分に対応した位置に、圧縮方向移動用板7のスライド範囲に対応した大きさの開口19が形成され、この開口19に、金具20の突出している部分が挿入されるように配置されている。
【0073】
また、スライド棚6は、圧縮方向移動用板7との接触面と反対の面に、金具21が溶接されており、この金具21は、図12の断面と垂直に交わる方向の平面に開口21aが形成されている。
【0074】
また、金具20と金具21とは、引っ張りコイルスプリング18で連結されており、この引っ張りコイルスプリング18は、圧縮方向移動用板7のスライド方向に沿って配置される。また、ガイドピン15aの位置が、ガイド用溝14の入り口14bに対応している状態で、引っ張りコイルスプリング18に復元力が生じないように配置する。
その他の構成は実施の形態1と同様であるため説明を省略する。
【0075】
実施の形態4に係るラック1は以上のように構成されているので、スライド棚6をラック1から引き出しているときに、スライド棚6に対して圧縮方向移動用板7がスライドすることによって、ガイドピン15aの位置がガイド用溝14の入り口から離れてしまった場合が生じても、引っ張りコイルスプリング18には、図12で示す方向cに復元力が生じることにより、ガイドピン15aの位置をガイド用溝14の入り口14bに対応する位置まで戻すことができる。
【0076】
実施の形態5.
図14、図15は、圧縮方向移動用板7に形成されたガイド用溝14の形状を示す平面図である。
【0077】
実施の形態5に係るラック1の構成を図14に基づいて説明する。
圧縮方向移動用板7は、ガイド用溝14の入り口14b付近の斜面14dが、入り口14bを広げるように形成されている。その他の構成は実施の形態1に係るラック1と同様であるので説明を省略する。
【0078】
このような構成によれば、スライド棚6をラック1から引き出した状態で、ガイドピン15aとガイド用溝14の入り口14bとのずれを吸収することができる。
なお、ガイド用溝14は、図15に示すような長円形とし、斜面14a及び斜面14cを連続的に形成しても、入り口14bを広げていることにより、同様の効果を得ることができる。
【0079】
実施の形態6.
以上の実施の形態1〜5においては、ガイドピン15aをラック1に取り付け、ガイド用溝14を圧縮方向移動用板7に形成した構造であったが、ガイドピン15aが圧縮方向移動用板7に取り付けられ、ガイド用溝14がラック1に取り付けられた構成であっても同様の効果を得ることができる。
【0080】
また、以上の実施の形態1〜5においては、ガイド用溝14は、圧縮方向移動用板7に取り付けられたものであったが、送風機2の一部に形成したとしても同様の効果を得ることができる。
また、ラック1にガイド用溝14が形成される場合、ガイドピンは、圧縮方向移動用板7に限らず、送風機2の一部に形成するようにしても同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本願発明の実施の形態1に係るラックの構成を示す三面図である。
【図2】本願発明の実施の形態1に係るラックの構成を示す斜視図である。
【図3】本願発明の実施の形態1に係るガイドピンの構成を示す断面図である。
【図4】本願発明の実施の形態1に係るスライド機構を示す平面図である。
【図5】本願発明の実施の形態1に係るスライド機構を示す拡大断面図である。
【図6】本願発明の実施の形態1に係る送風機の羽根形状を示す断面図である。
【図7】本願発明の実施の形態1に係るラックの第1状態を示す動作説明図である。
【図8】本願発明の実施の形態1に係るラックの第2状態を示す動作説明図である。
【図9】本願発明の実施の形態1に係るラックの第3状態を示す動作説明図である。
【図10】本願発明の実施の形態2に係るスライド機構を示す断面図である。
【図11】本願発明の実施の形態3に係るガイドピンを示す断面図である。
【図12】本願発明の実施の形態4に係るスライド機構を示す断面図である。
【図13】本願発明の実施の形態4に係るスライド機構を示す斜視図である。
【図14】本願発明の実施の形態5に係るガイド用溝を示す平面図である。
【図15】本願発明の実施の形態5に係るガイド用溝を示す平面図である。
【符号の説明】
【0082】
2:送風機、2c:羽根、2b:ダクト用給気口(給気口)、2d:カバー、4:吸気ダクト(ダクト)、4a:入り口、6:スライド棚(搬送部材)、7:圧縮方向移動用板(圧縮方向移動部材)、9:パッキン(弾性部材)、15a:ガイドピン(突出部、ガイド用部材)、14a:斜面、18:引っ張りコイルスプリング(弾性接続部材)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲の気体を所定方向に供給する羽根と、この羽根を覆い、上記所定方向に対応する位置に給気口が設けられたカバーとを有する送風機、
この送風機から供給される気体を入り口から取り込んで熱源に伝搬するダクト、
上記入り口の縁と上記給気口の縁に介在する弾性部材を備え、
上記送風機はダクトに対し着脱自在に取り付けられ、該送風機がダクトに取り付けられると上記弾性部材が圧縮されて、上記給気口の縁と上記入り口の縁とが密着することを特徴とする熱源冷却構造。
【請求項2】
ダクトに密着させる圧縮方向に送風機をガイドするガイド用部材を備え、
このガイド用部材に従って、上記送風機が搬送方向と異なる方向に移動して上記ダクトに密着して取り付けられることを特徴とする請求項1記載の熱源冷却構造。
【請求項3】
送風機は、
該送風機又は該送風機に取り付けられた部材に、該送風機の搬送方向に対して斜めに形成された斜面を有し、
ガイド用部材は、
上記斜面に当接して、上記送風機又は上記送風機に取り付けられた部材及び上記送風機を、上記送風機の搬送方向と異なる方向に移動させる突出部を有することを特徴とする請求項2記載の熱源冷却構造。
【請求項4】
送風機は、
該送風機又は該送風機に取り付けられた部材に突出部が形成され、
ガイド用部材は、
上記送風機の搬送方向に対して斜めに形成され、上記送風機が搬送される時に、上記突出部が当接されて摺動する斜面を有することを特徴とする請求項2記載の熱源冷却構造。
【請求項5】
ダクトに対して移動可能に配設され、該移動に応じて送風機がダクトに取り付けられるように搬送される搬送部材を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の熱源冷却構造。
【請求項6】
搬送部材に取り付けられ、送風機をダクトに密着させる圧縮方向に移動自在な圧縮方向移動部材を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載の熱源冷却構造。
【請求項7】
圧縮方向移動部材は、
送風機を第1搬送方向と異なる方向に移動させる斜面を有すると共に、
上記送風機を上記第1搬送方向と反対方向である第2方向に移動させる斜面を有することを特徴とする請求項6記載の熱源冷却構造。
【請求項8】
圧縮方向移動部材は、
弾性接続部材で搬送用部材と接続され、
上記弾性接続部材は、圧縮方向移動部材に形成された斜面のガイド用部材側端と、ガイド用部材に設けられた突出部との距離が離れるに従って、上記ガイド用部材側端と上記突出部とを近づける方向に復元力が増加するように配置されていることを特徴とする請求項6又は7記載の熱源冷却構造。
【請求項9】
ガイド用部材又は送風機若しくは送風機に取り付けられた部材に形成された突出部は、
円柱状であり、該円柱の弧を形成する面の一部が、送風機若しくは送風機に取り付けられた部材又はガイド用部材に形成された斜面に当接することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項記載の熱源冷却構造。
【請求項10】
送風機は、
羽根が回転することにより、周囲から気体を吸い込み、上記羽根の回転軸の遠心方向に気体を給気する遠心型送風機であることを特徴とする請求項2〜9のいずれか一項記載の熱源冷却構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−54250(P2006−54250A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−233364(P2004−233364)
【出願日】平成16年8月10日(2004.8.10)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】