説明

熱現像写真感光材料及びその製造方法

【課題】 印刷製版用として写真性能に優れ、かつ搬送性の改良された熱現像写真感光材料を提供する。
【解決手段】 支持体上に有機銀塩粒子、ハロゲン化銀粒子、還元剤を含有する感光層を有し、かつ該感光層を有する側とは反対側の支持体上にバッキング層を有する熱現像写真感光材料において、下記測定法による垂直カール値が−1mm〜−40mmであることを特徴とする熱現像写真感光材料及びその製造方法。
垂直カールの測定法:熱現像写真感光材料を長さ:45cm、巾:60cmに切り出す。得られた試料を23℃、55%RH条件下に24時間調湿後、試料の上側から7cmの両端部分を垂直な壁にテープ止めし、その時のフィルムの上側のカール値を巾手3点(両端、中央)で測定し、平均したものを垂直カール値とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱現像写真感光材料に関し、更に詳しくは、搬送性に優れた熱現像写真感光材料に関する。
【背景技術】
【0002】
支持体上に感光性層を有し、画像露光することで画像形成を行う感光材料は、数多く知られている。それらの中でも、環境保全や画像形成手段が簡易化できるシステムとして、熱現像により画像を形成する技術が挙げられる。近年写真製版分野において環境保全、省スペースの観点から処理廃液の減量が強く望まれている。そこで、レーザー・スキャナーまたはレーザー・イメージセッターにより効率的に露光させることができ、高解像度及び鮮鋭さを有する鮮明な黒色画像を形成することができる、写真製版用途の熱現像写真感光材料に関する技術が必要とされている。これら熱現像写真感光材料では、溶液系処理化学薬品の使用をなくし、より簡単で環境を損なわない熱現像処理システムを顧客に対して供給することができる。
【0003】
熱現像写真感光材料は、還元可能な非感光性の銀源(例えば、有機銀塩)、触媒活性量の光触媒(例えば、ハロゲン化銀)、及び銀の還元剤を通常有機バインダーマトリックス中に分散した状態で含有している。感光材料は常温で安定であるが、露光後高温(例えば、80℃以上)に加熱した場合に、還元可能な銀源(酸化剤として機能する)と還元剤との間の酸化還元反応を通じて銀を生成する。この酸化還元反応は、露光で発生した潜像の触媒作用によって促進される。露光領域中の還元可能な銀塩の反応によって生成した銀は黒色画像を提供し、これは非露光領域と対照をなし、画像の形成がなされる。
【0004】
この熱現像材料の画像形成には、通常、露光操作がなされるプロッタ、感光材料の現像がなされる自動熱現像処理機及び両者を接続するコンベアとで構成されたユニットで処理される。これらのユニットは各メーカーによって様々な仕様の方式が採られているが、製版メーカーの休日後の最初の出力で、特定コンベアを採用している製版メーカーで、搬送不良が多発する問題が発生することがわかった。上記コンベアはプロッターからコンベアに挿入された感光材料が、自動現像機に供給する際に感光材料の表裏が反転して搬送される構造であった。また搬送不良も最初の1枚目の出力以外、問題ないことがわかった。
【0005】
本発明者等が上記現象を調査した結果、上記コンベアでは表裏反転するため、反転時の巻癖カールが感光層側にカールしている必要があること、最初の1枚目はプロッタ内で平置き状態で待機しているため、経時でロール形態時に付いた巻癖が解消してしまうことがわかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記実状に鑑みてなされたものであり、特に印刷製版用として写真性能に優れ、かつ搬送性の改良された熱現像写真感光材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成することができる。
【0008】
(請求項1)
支持体上に有機銀塩粒子、ハロゲン化銀粒子、還元剤を含有する感光層を有し、かつ該感光層を有する側とは反対側の支持体上にバッキング層を有する熱現像写真感光材料において、下記測定法による垂直カール値が−1mm〜−40mmであることを特徴とする熱現像写真感光材料。
【0009】
垂直カールの測定法:熱現像写真感光材料を長さ:45cm、巾:60cmに切り出す。得られた試料を23℃、55%RH条件下に24時間調湿後、試料の上側から7cmの両端部分を垂直な壁にテープ止めし、その時のフィルムの上側のカール値を巾手3点(両端、中央)で測定し、平均したものを垂直カール値とする。
【0010】
(請求項2)
支持体上に有機銀塩粒子、ハロゲン化銀粒子、還元剤を含有する感光層と該感光層を有する側とは反対側の支持体上にバッキング層を塗布する熱現像写真感光材料の製造方法において、該感光層およびバッキング層を塗布際の巻き取りを該感光層にあたる面を外側にして巻き取ることを特徴とする熱現像写真感光材料の製造方法。
【0011】
(請求項3)
支持体上に有機銀塩粒子、ハロゲン化銀粒子、還元剤を含有する感光層と該感光層を有する側とは反対側の支持体上にバッキング層を有する熱現像写真感光材料の製造方法において、ロール形態で23℃〜40℃で熱処理をすることを特徴とする熱現像写真感光材料の製造方法。
【0012】
(請求項4)
請求項2または3で製造されたことを特徴とする請求項1記載の熱現像写真感光材料。
【0013】
(請求項5)
前記感光層側の最外層がラテックスとワックスエマルジョンで構成された層を有することを特徴とする請求項1又は4記載の熱現像写真感光材料。
【0014】
(請求項6)
前記感光層及びバッキング層が溶剤塗布により形成されることを特徴とする請求項5記載の熱現像写真感光材料。
【0015】
(請求項7)
前記感光層に造核剤を含有することを特徴とする請求項5又は6記載の熱現像写真感光材料。
【0016】
(請求項8)
支持体が低熱収縮性支持体であることを特徴とする請求項5、6又は7記載の熱現像写真感光材料。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、種々の環境条件下での写真性能の変動が少なく、長期保存安定性も良好で、かつ搬送性の改良された熱現像写真感光材料を得た。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明を更に詳しく説明する。本発明者は上記のような問題点と調査結果を反映して鋭意検討した結果、上記コンベアで問題なく搬送するために、経時での垂直カールを特定値以上にすること、また上記特定値を達成するために下記a〜cのいずれかの手段の単独または組み合わせることで、印刷製版用として写真性能の搬送性を改良された熱現像写真感光材料が得られることを見出した。
【0019】
a特定温度でロール形態の感光材料を熱処理する、
b感光材料の製造工程で感光層側を外側にして巻き取りを行う、
c感光層側の最外層にワックスとラテックスを含有した層を設ける。
上記のような知見から本発明に到達した。
【0020】
[垂直カール]
本発明において、24hr後の垂直カールは−1mm〜−40mm、好ましくは−5mm〜−40mmである。垂直カールが−1mmより少ないと、コンベアで反転する際に自動現像部方向にフィルムが倒れずに、搬送不良となる。
【0021】
本発明の垂直カールとは以下の測定法により測定された値である。即ち、熱現像写真感光材料を製版紙面サイズ(長さ:45cm、巾:60cm)に切り出す。得られた試料を23℃、55%RH条件下に24時間調湿後、図1のように試料3の上側2から7cmの両端部分を垂直な壁5に感光層が外側になるようにテープ4で止め、その時の試料3の上側のカール値1を巾手3点(両端、中央)で測定し、平均したものを垂直カール値とした。
【0022】
24hr後の垂直カールを−1mm〜−40mmにする方法としては、感光層側に巻癖を付ける方法、さらにその効果を助長させる方法として、フィルムの腰を低下させる方法がある。
【0023】
巻癖を付ける方法としては、支持体上に感光層及びバッキング層を塗布した後にロール形態に巻き取るときに感光層にあたる面を外側にして巻き取る方法、ロール形態に巻き取った後に、熱処理をする方法が挙げられる。巻癖を付ける効果としては前者より後者の方が大きく、好ましい。さらに好ましくは後者でも塗布工程でのロール形態ではなく、より小さいロール形態で巻かれている製品形態でのロール状態での熱処理が好ましい。
【0024】
ロール形態で熱処理する方法としては、温度は23〜40℃である。好ましくは30℃〜40である。23℃より低い温度であると巻癖を付ける効果が低下し、時間が長くなるので生産効率上好ましくない。また40℃より高い温度では巻癖効果としては短時間で巻癖を付けられるため良方向だが、写真性能(感度やカブリ)に影響を与え好ましくない。
【0025】
フィルムの腰を低下させる方法としては、柔軟な樹脂を最外層に設置することが挙げられる。好ましくは樹脂のガラス転移温度が20〜60℃以下の樹脂を使用することが好ましい。20℃以下であると熱現像の際に、樹脂が溶融し、フィルムの品質を損ねるので、好ましくない。一方、60℃より高いと腰を低下する寄与が低くなり好ましくない。
【0026】
形態として好ましいものとしては、ラテックスのようなものを最外層に塗布することでフィルム全体の腰が低下して好ましい。特にラテックスを使用する最外層にワックスを含有させることで腰の低下させること、さらに懸念される熱現像時の溶融(耐熱性)を向上させるので、好ましい。
【0027】
上記感光層側に巻癖を付ける方法、またフィルムの腰を低下させる方法は、水等に溶解または分散にしないガラス転移温度の高い樹脂を塗布する溶剤塗布で設けられた感光層やバッキング層について、効果を発揮する。それは感光層やバッキング層にガラス転移温度の高い樹脂を用いた場合には、フィルムの腰が強いため、一度付いた巻癖が経時で解消されると発明者等は推定している。
【0028】
[バリヤー層]
本発明のバリヤー層は最外層に設置し、ラテックスとワックスエマルジョンで構成されたものである。ラテックスとエマルジョンの比率は、100:2〜100:100が好ましい。更に好ましくは100:10〜100:50である。100:2を下げると、染料分解物質のバリヤー性及び防湿効果が発揮されず、保存安定性や写真性能の湿度耐性が劣化する。また100:100を越えてWAX量が超過になると、バリヤー層としての耐熱性が弱くなり、保存安定性が劣化する。
【0029】
本発明のバリヤー層の透湿度は、1〜20g/m2・24hrであることが好ましい。更に好ましくは1〜15g/m2・24hrである。1g/m2・24hrより低いと、WAX比率を高くする必要があり、バリヤー層としての耐熱性が弱くなり、保存安定性が劣化する。また20g/m2・24hrを越えると、染料分解物質のバリヤー性及び防湿効果が発揮されず、保存安定性や写真性能の湿度耐性が劣化する。透湿度の測定方法は、JIS Z−208(カップ法)に準じて測定できる。
【0030】
1.ラテックス
本発明のラテックスは、その種類は特に限定されるものではないが、バリヤー性の点で、合成樹脂系または合成ゴム系のラテツクスが好ましい。
【0031】
本発明におけるラテックスは、水不溶な疎水性ポリマーが微細な粒子として水又は水溶性の分散媒中に分散したものにおいてポリマー成分を指す。分散状態としてはポリマーが分散媒中に乳化されているもの、乳化重合されたもの、ミセル分散されたもの、或いはポリマー分子中に部分的に親水的な構造を持ち分子鎖自身が分子状分散したものなどいずれでもよい。尚、本発明に係るラテックスについては「合成樹脂エマルジョン(奥田平、稲垣寛編集、高分子刊行会発行(1978))」、「合成ラテックスの応用(杉村孝明、片岡靖男、鈴木聡一、笠原啓司編集、高分子刊行会発行(1993))」、「合成ラテックスの化学(室井宗一著、高分子刊行会発行(1970))」などに記載されている。
【0032】
ラテックスを構成する重合体のTgは、−20〜60℃であることが好ましい。更に好ましくは0〜50℃である。−20℃より低いと、膜に流動性が発生し、耐熱性が弱くなり、有機酸等の揮発または昇華抑制効果が劣化する。また60℃を越えると、造膜性が劣化し、有機酸等の揮発または昇華抑制効果及び防湿効果が発揮されず、有機酸の昇華量や写真性能の湿度耐性が劣化する。なお、ラテックスのTg(ガラス転移温度)は、1956年発行のBull.Am.Phys.Soc.に記載のT.G.Foxの方法によって、計算で求められる数値を示すものである。複数のラテックスを混合して使用する場合には、構成するラテックスの質量比を加算することで算出する。
【0033】
ラテックスの分散粒子の平均粒径は1〜5万nm、より好ましくは5〜1000nm程度の範囲が好ましい。分散粒子の粒径分布に関しては広い粒径分布を持つものでも単分散の粒径分布を持つものでもよい。
【0034】
本発明に係るラテックスとしては通常の均一構造のラテックス以外、いわゆるコア/シェル型のラテックスでもよい。この場合コアとシェルはガラス転移温度や組成を変えると好ましい場合がある。またラテックスは、2種以上のものを併用する方が造膜性、防湿性、ブロッキング性を両立するためには好ましい。この場合、コアシェル型同様、ガラス転移温度や組成を変えることが好ましい。
【0035】
本発明ラテックスは、下記のエチレン性不飽和単量体を初めとする単量体を乳化重合することによって得られる。この際使用する乳化剤としては、一般に市販されている陰イオン性界面活性剤、非イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両イオン界面活性剤などを使用することができる。
【0036】
(i)合成樹脂
合成樹脂ラテックスとしては、以下に示すエチレン性不飽和単量体をそれぞれ単量重合体又は複数組み合わせて共重合体として製造される。エチレン性不飽和単量体としては例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタルクル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタルリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、メタアクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘプチル、メタクリル酸ヘプチル、アクリル酸オクチル、メタクリル酸オクチル、アクリル酸オクタデシル、メタクリル酸オクタデシル、などで例示されるアクリル酸アルキルエステルおよびメタクリル酸アルキルエステル;1,2ブタジエン、1,3ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等の脂肪族共役ジエン単量体;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロルスチレン2,4−ジブロモスチレン等で示されるエチレン性不飽和芳香族単量体;アクリロニトリル、メタクロニトリル等の不飽和ニトリル;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸およびその無水物、フマル酸、イタコン酸並びに、不飽和ジカルボン酸モノアクキルエステル例えば、マレイン酸モノメチル、フマル酸モノエチル、イタコン酸モノノルマルブチル等のエチレン性不飽和カルボン酸;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の如きビニルエステル;塩化ビニリデン臭化ビニリデン等の如き、ビニリデンハライド;アクリル酸−2−ヒドロキシエチレル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−2−ヒドロキルエチル等の如きエチレン性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル;アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等の如きエチレン性不飽和カルボン酸のグリシジルエステルおよび、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルミド等のラジカル重合可能な単量体が挙げられる。
【0037】
ラテックスの造膜性については、ホモポリマーのTgが0℃以上のアクリル酸メチルやメタクリル酸メチル等のモノマーを含有してポリマーのTgを上昇させた方が良好であり、耐水性についてはスチレン等を含有する方がより好ましい。
【0038】
(ii)合成ゴム
合成ゴム系としては、たとえば、スチレン−ブタジエン−ラテックス(SBR)、メチルメタクリレート−ブタジエンラテックス(MBR)、アクリロニトリル−ブタジエンラテックス(NBR)、ビニルピリジン−ブタジエンラテックス、イソプレンラテックス(IR)などが挙げられるが、耐水性が良好で、伸びがよく、折り割れによる塗工層の亀裂が生じにくいスチレン−ジエン系ラテックスが好ましい。共役ジエン系単量体(1)としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン等、従来ラテックスの製造に通常用いられているものを挙げることができる。これらの共役ジエン系単量体は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。本発明においては、特に1、3−ブタジエンが好ましく用いられる。
【0039】
このような共役ジエン系単量体は、得られる共重合体に適当な弾性及び膜の硬さを付与するために用いられる。スチレン−ジエン系中の共役ジエン系単量体の使用量は、10〜80質量%、好ましくは30〜60質量%の範囲である。10%より低いと造膜性が劣化し、防湿の効果が発揮されず、写真性能の湿度耐性が劣化する。また80%を越えると膜に流動性が発生し、耐傷性が劣化する。
【0040】
またスチレン−ジエン系ラテックスに上記合成樹脂系の単量体を適度に含有し、造膜性等を調整することが好ましい。
【0041】
2.ワックスエマルジョン
本発明に用いられるワックスエマルジョンはワックスを乳化したものである。そのワックスとしては、例えばパラフィンワックス、キャンデリラワックス、カルナバワックス、ライスワックス、モンタンワックス、セレシンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタム、フィッシャー・トリブッシュワックス、ポリエチレンワックス、モンタンワックス及びその誘導体、マイクロクリスタリンワックス及びその誘導体、硬化ひまし油、流動パラフィン、ステアリン酸アミドなどが挙げられ、特にパラフィンワックスが好ましく用いられる。また、これらワックスエマルジョンを調製する方法は公知の方法でよく、例えばワックス、樹脂、及び流動化剤などを混合加熱するなどして溶融し、これに乳化剤を加えて乳化すればよい。樹脂としては、例えばロジン、ロジンエステル化合物、石油樹脂などが用いられ、流動化剤としては、例えば多価アルコール、多価アルコールのエステル化物などが用いられる。これらの混合物は溶融後、例えば、アニオン、カチオン、ノニオンなどの界面活性剤、或いは、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの塩基性化合物、有機アミン、スチレン−マレイン酸共重合体などを添加し乳化することによりワックスエマルジョンとすることができる。
【0042】
ワックスエマルジョンは単独使用してもまたは2種類以上を組合せて使用してもよい。
ワックスエマルジョンの示差走査熱量計(DSC)による融点は好ましくは40〜100℃、より好ましくは50〜80℃である。ここで融点が40℃未満ではブロッキング性が劣化し好ましくない。また100℃より高い温度ではバリヤー層を設ける際の塗膜乾燥に際し、ワックスが十分に軟化、流動しないため、防湿性を損ない結果として湿度耐性が劣化する。
【0043】
3.マット剤
本発明のバリヤー層にはマット剤を用いてもよい。本発明においてマット剤として添加される微粒子は、一般に水に不溶性の有機または無機化合物の微粒子であり、任意のものを使用できる。例えば米国特許第1,939,213号、同第2,701,245号、同第2,322,037号、同第3,262,6782号、同第3,539,344号、同第3,767,448号等の各明細書に記載の有機マット剤、同第1,260,772号、同第2,192,241号、同第3,257,206号、同第3,370,951号、同第3,523,022号、同第3,769,020号等の各明細書に記載の無機マット剤など当業界でよく知られたものを用いることができる。具体的には用いることのできる有機の微粒子の例としては、水分散性ビニル重合体、例えば、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル−α−メチルスチレン共重合体、ポリスチレン、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、ポリビニルアセテート、ポリエチレンカーボネート、ポリテトラフルオロエチレンなど、セルロース誘導体の例としてはメチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネートなど、澱粉誘導体の例としてカルボキシ澱粉、カルボキシニトロフェニル澱粉、尿素−ホルムアルデヒド−澱粉反応物など、公知の硬化剤で硬化したゼラチンおよびコアセルベート硬化して微小カプセル中空粒体とした硬化ゼラチンなどを好ましく用いることができる。無機の微粒子の例としては二酸化ケイ素、二酸化チタン、二酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、公知の方法で減感した塩化銀、同じく臭化銀、ガラス、珪藻土などを好ましく用いることができる。
【0044】
上記のマット剤は必要に応じて異なる種類の物質を混合して用いることができる。マット剤の大きさ、形状に特に限定はなく、任意の粒径のものを用いることができる。本発明の実施に際しては0.1μm〜30μmの粒径のものを用いるのが好ましい。また、マット剤の粒径分布は狭くても広くてもよい。一方、マット剤は感光材料のヘイズ、表面光沢に大きく影響することから、マット剤作製時あるいは複数のマット剤の混合により、粒径、形状および粒径分布を必要に応じた状態にすることが好ましい。
【0045】
[溶剤塗布]
本発明の感光層及びバッキング層は溶剤塗布により形成されることが好ましい。水系塗布によってこれらを設置するとバリヤー層の防湿性が劣化し、好ましくない。溶剤塗布の方法としては一般的なものを使用することができる。
【0046】
[感光層]
1.有機銀
本発明の熱現像写真感光材料の感光性層に含有される有機銀塩は還元可能な銀源であり、還元可能な銀イオン源を含有する有機酸及びヘテロ有機酸の銀塩、特に長鎖(10〜30、好ましくは5〜25の炭素原子数)の脂肪族カルボン酸及び含窒素複素環カルボン酸が好ましい。配位子が、4.0〜10.0の銀イオンに対する総安定定数を有する有機又は無機の銀塩錯体も有用である。好適な銀塩の例は、Research Disclosure(以下RD)第17029及び29963に記載されており、次のものがある:有機酸の塩(例えば、没食子酸、シュウ酸、ベヘン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸等の塩);銀のカルボキシアルキルチオ尿素塩(例えば、1−(3−カルボキシプロピル)チオ尿素、1−(3−カルボキシプロピル)−3,3−ジメチルチオ尿素等);アルデヒドとヒドロキシ置換芳香族カルボン酸とのポリマー反応生成物の銀錯体(例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒドのようなアルデヒド類とサリチル酸、ベンジル酸3,5−ジヒドロキシ安息香酸、5,5−チオジサリチル酸のようなヒドロキシ置換酸類);チオン類の銀塩又は錯体(例えば、3−(2−カルボキシエチル)−4−ヒドロキシメチル−4−チアゾリン−2−チオン及び3−カルボキシメチル−4−メチル−4−チアゾリン−2−チオン);イミダゾール、ピラゾール、ウラゾール、1,2,4−チアゾール及び1H−テトラゾール、3−アミノ−5−ベンジルチオ−1,2,4−トリアゾール及びベンゾトリアゾールから選択される窒素酸と銀との錯体又は塩;サッカリン、5−クロロサリチルアルドキシム等の銀塩;メルカプチド類の銀塩等が挙げられる。好ましい銀源はベヘン酸銀、アラキジン酸銀又はステアリン酸銀である。
【0047】
有機銀塩は、水溶性銀化合物と銀と錯形成する化合物を混合することにより得られるが、正混合法、逆混合法、同時混合法、特開平9−127643号公報に記載されている様なコントロールドダブルジェット法等が好ましく用いられる。例えば、有機酸にアルカリ金属塩(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)を加えて有機酸アルカリ金属塩ソープ(例えば、ベヘン酸ナトリウム、アラキジン酸ナトリウムなど)を作製した後に、コントロールドダブルジェットにより、前記ソープと硝酸銀などを添加して有機銀塩の結晶を作製する。その際にハロゲン化銀粒子を混在させてもよい。
【0048】
2.ハロゲン化銀
本発明の熱現像写真感光材料の感光性層に含有されるハロゲン化銀粒子は光センサーとして機能するものである。本発明においては、画像形成後の白濁を低く抑えるため、及び良好な画質を得るために平均粒子サイズが小さい方が好ましく、平均粒子サイズが好ましくは0.03μm以下、より好ましくは0.01〜0.03μmの範囲である。尚、本発明の熱現像写真感光材料のハロゲン化銀粒子は前記有機銀塩調製時に同時に作製されるか、又は前記有機銀塩調製時に該ハロゲン化銀粒子を混在させて調製することにより、有機銀塩に融着した状態でハロゲン化銀粒子を形成させて微小粒子のいわゆるin situ銀とするのが好ましい。尚、上記ハロゲン化銀粒子の平均粒子径の測定方法は、電子顕微鏡により50000倍で撮影し、それぞれのハロゲン化銀粒子の長辺と短辺を実測し、100個の粒子を測定し、平均したものを平均粒径とする。
【0049】
ここで、上記粒子サイズとは、ハロゲン化銀粒子が立方体或いは八面体のいわゆる正常晶である場合には、ハロゲン化銀粒子の稜の長さをいう。又、正常晶でない場合、例えば、球状、棒状、或いは平板状の粒子の場合には、ハロゲン化銀粒子の体積と同等な球を考えたときの直径をいう。又ハロゲン化銀粒子は単分散であることが好ましい。ここでいう単分散とは、下記式で求められる単分散度が40%以下をいう。更に好ましくは30%以下であり、特に好ましくは0。1〜20%となる粒子である。
【0050】
単分散度=(粒径の標準偏差)/(粒径の平均値)×100
本発明において、ハロゲン化銀粒子は平均粒径0.01〜0.03μmで、かつ単分散粒子であることがより好ましく、この範囲にすることで画像の粒状性も向上する。
【0051】
ハロゲン化銀粒子の形状については、特に制限はないが、ミラー指数〔100〕面の占める割合が高いことが好ましく、この割合が50%以上、更には70%以上、特に80%以上であることが好ましい。ミラー指数〔100〕面の比率は、増感色素の吸着における〔111〕面と〔100〕面との吸着依存性を利用したT.Tani;J.Imaging Sci.、29、165(1985)により求めることができる。
【0052】
又もう一つの好ましいハロゲン化銀粒子の形状は、平板粒子である。ここでいう平板粒子とは、投影面積の平方根を粒径rμmとして、垂直方向の厚みをhμmとした場合のアスペクト比=r/hが3以上のものをいう。その中でも好ましくは、アスペクト比が3以上、50以下である。又粒径は0.03μm以下であることが好ましく、更に0.01〜0.03μmが好ましい。これらの製法は米国特許第5,264,337号、同5,314,798号、同5,320,958号等の各明細書に記載されており、容易に目的の平板状粒子を得ることができる。本発明においてこれらの平板状粒子を用いた場合、更に画像の鮮鋭性も向上する。
【0053】
ハロゲン化銀粒子の組成としては特に制限はなく、塩化銀、塩臭化銀、塩沃臭化銀、臭化銀、沃臭化銀、沃化銀の何れであってもよい。本発明に用いられる写真乳剤は、P.Glafkides著Chimie et Physique Photographique(Paul Montel社刊、1967年)、G.F.Duffin著 Photographic Emulsion Chemistry(The Focal Press刊、1966年)、V.L.Zelikman et al著Making and Coating Photographic Emulsion(The Focal Press刊、1964年)等に記載された方法を用いて調製することができる。
【0054】
本発明に用いられるハロゲン化銀粒子には、照度不軌改良や改良調整のために、元素周期律表の6族から10族に属する金属のイオン又は錯体イオンを含有することが好ましい。上記の金属としては、W、Fe、Co、Ni、Cu、Ru、Rh、Pd、Re、Os、Ir、Pt、Auが好ましい。
【0055】
ハロゲン化銀粒子は、ヌードル法、フロキュレーション法等、当業界で知られている方法の水洗により脱塩することができるが、本発明においては脱塩してもしなくてもよい。
【0056】
本発明におけるハロゲン化銀粒子は、化学増感されていることが好ましい。好ましい化学増感法としては、当業界でよく知られているように硫黄増感法、セレン増感法、テルル増感法、金化合物や白金、パラジウム、イリジウム化合物等の貴金属増感法や還元増感法を用いることができる。
【0057】
本発明においては熱現像写真感光材料の失透を防ぐためには、ハロゲン化銀粒子及び有機銀塩の総量は、銀量に換算して1m2当たり0.3〜2.2gであり、0.5〜1.5gがより好ましい。この範囲にすることで硬調な画像が得られる。又銀総量に対するハロゲン化銀の量は、質量比で50%以下、好ましくは25%以下、更に好ましくは0。1〜15%の間である。
【0058】
本発明におけるハロゲン化銀粒子は350〜450μmに光の極大吸収を有し、特に増感色素を有してなくてもよいが、必要に応じて含有させてもよい。
【0059】
3.還元剤
本発明の熱現像写真感光材料の感光性層に含有される好適な還元剤の例は、米国特許第3,770,448号、同第3,773,512号、同第3,593,863号等の各明細書及びRD第17029号及び同29963に記載されており、次のものが挙げられる。
【0060】
アミノヒドロキシシクロアルケノン化合物(例えば、2−ヒドロキシ−3−ピペリジノ−2−シクロヘキセノン);還元剤の前駆体としてアミノレダクトン類(reductones)エステル(例えば、ピペリジノヘキソースレダクトンモノアセテート);N−ヒドロキシ尿素誘導体(例えば、N−p−メチルフェニル−N−ヒドロキシ尿素);アルデヒド又はケトンのヒドラゾン類(例えば、アントラセンアルデヒドフェニルヒドラゾン);ホスファーアミドフェノール類;ホスファーアミドアニリン類;ポリヒドロキシベンゼン類(例えば、ヒドロキノン、t−ブチル−ヒドロキノン、イソプロピルヒドロキノン及び(2,5−ジヒドロキシ−フェニル)メチルスルホン);スルフヒドロキサム酸類(例えば、ベンゼンスルフヒドロキサム酸);スルホンアミドアニリン類(例えば、4−(N−メタンスルホンアミド)アニリン);2−テトラゾリルチオヒドロキノン類(例えば、2−メチル−5−(1−フェニル−5−テトラゾリルチオ)ヒドロキノン);テトラヒドロキノキサリン類(例えば、1,2,3,4−テトラヒドロキノキサリン);アミドオキシム類;アジン類;脂肪族カルボン酸アリールヒドラザイド類とアスコルビン酸の組み合わせ;ポリヒドロキシベンゼンとヒドロキシルアミンの組み合わせ;レダクトン及び/又はヒドラジン;ヒドロキサン酸類;アジン類とスルホンアミドフェノール類の組み合わせ;α−シアノフェニル酢酸誘導体;ビス−β−ナフトールと1,3−ジヒドロキシベンゼン誘導体の組み合わせ;5−ピラゾロン類;スルホンアミドフェノール還元剤;2−フェニルインダン−1,3−ジオン等;クロマン;1,4−ジヒドロピリジン類(例えば、2,6−ジメトキシ−3,5−ジカルボエトキシ−1,4−ジヒドロピリジン);ビスフェノール類(例えば、ビス(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)メタン、ビス(6−ヒドロキシ−m−トリ)メシトール(mesitol)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、4,4−エチリデン−ビス(2−t−ブチル−6−メチルフェノール))、紫外線感応性アスコルビン酸誘導体;ヒンダードフェノール類;3−ピラゾリドン類。中でも特に好ましい還元剤は、ヒンダードフェノール類である。
【0061】
還元剤の使用量は、好ましくは銀1モル当り1×10-2〜10モル、特に1×10-2〜1.5モルである。
【0062】
4.造核剤(硬調化剤)
本発明において好ましく用いられる熱現像写真感光材料において、下記一般式(1)で表される化合物の少なくとも1種を含有することが好ましい。本発明に係る化合物を含有せしめることにより、高感度、高Dmaxで、かつ硬調な階調を実現すると共に、黒ポツ耐性を有し保存安定性に優れた熱現像写真感光材料を得ることができる。更に、上述の効果は、特開2001−174945号に記載されている、一般式(H−1)又は(H−2)で表される化合物を併用することにより、さらに向上することを見いだした。
【0063】
【化1】

【0064】
式中、R11、R12及びR13は各々水素原子又は一価の置換基を表し、X11は電子供与性のヘテロ環基、シクロアルキルオキシ基、シクロアルキルチオ基、シクロアルキルアミノ基又はシクロアルケニル基を表す。
【0065】
一般式(1)で表される化合物について以下詳細に述べるが、まず本発明でいう電子供与性基及び電子吸引性基について説明をする。本発明でいう電子供与性基とは、ハメットの置換基定数σpが負の値を取る置換基のことであり、電子供与性基としては、例えば、ヒドロキシル基(又はその塩)、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、σpが負の値を取るヘテロ環基又はこれらの電子供与性基で置換されたフェニル基等が挙げられる。本発明でいう電子吸引性基とは、ハメットの置換基定数σpが正の値を取る置換基のことであり、電子吸引性基としては、例えば、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、カルバモイル基、カルボンアミド基、スルファモイル基、スルホンアミド基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、ホスホリル基、カルボキシ基(又はその塩)、スルホ基(又はその塩)、イミノ基、σpが正の値を取るヘテロ環基又はこれらの電子吸引性基で置換されたフェニル基等が挙げられる。ハメット則は、ベンゼン誘導体の反応又は平衡に及ぼす置換基の影響を定量的に論じるために1935年に、L.P.Hammetにより提唱された経験則であるが、これは今日広く妥当性が認められている。ハメット則により求められた置換基定数にはσp値とσm値とがあり、これらの値は多くの一般的な成書に記載があり、「Lange’s Handbook of Chemistry (J.A.Dean著)」第12販、1979年(Mc Graw−Hill)や「化学の領域増刊」、第122号、第96〜103頁、1979年(南光堂)、Chemical Reviews、第91巻、第165〜195頁、1991年に詳しく述べられている。本発明における電子吸引性基及び電子供与性基は、σp値により規定しているが、上記の成書に記載の文献既知の値がある置換基にのみ限定されるものではない。
【0066】
一般式(1)において、X11は電子供与性のヘテロ環基、シクロアルキルオキシ基、シクロアルキルチオ基、シクロアルキルアミノ基又はシクロアルケニル基を表す。電子供与性のヘテロ環の代表例としては、「Substituent Constants for Correlation Analysis in Chemistry and Biology(Corwin Hansch and Albert Leo著)」の第66〜339頁に記載のσpが負のヘテロ環であり、ヘテロ環の具体的な例としてはピペリジニル基、ピロリジニル基、モルフォリノ基、ピペラジニル基、3−チエニル基、2−フリル基、3−フリル基、2−ピロロ基等が挙げられる。好ましくは3−チエニル基、2−フリル基又は3−フリル基である。これらのヘテロ環は、σpが0又は正にならない範囲で任意の置換基を有しても良い。
【0067】
また、シクロアルキルオキシ基、シクロアルキルチオ基又はシクロアルキルアミノ基の具体的な例としては、シクロプロピルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、シクロプロピルチオ基、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基、シクロヘプチルチオ基、シクロプロピルメチルアミノ基、シクロペンチルメチルアミノ基、シクロヘキシルメチルアミノ基、シクロヘプチルメチルアミノ基等が挙げられる。好ましくはシクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロペンチルチオ基及びシクロヘキシルチオ基である。シクロアルケニル基の具体的な例としては、シクロプロぺニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基及びシクロヘプテニル基等が挙げられる。好ましくは、シクロペンテニル基又はシクロヘキセニル基である。
【0068】
11、R12及びR13は、各々水素原子又は一価の置換基を表す。一価の置換基としては、例えばアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、4級化された窒素原子を含むヘテロ環基(例えばピリジニウム基)、ヒドロキシ基、アルコキシ基(例えばエチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基単位を繰り返し含む基を含む)、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、ウレタン基、カルボキシル基、イミド基、アミノ基、カルボンアミド基、スルホンアミド基、ウレイド基、チオウレイド基、スルファモイルアミノ基、セミカルバジド基、チオセミカルバジド基、ヒドラジノ基、4級のアンモニオ基、(アルキル、アリール、又はヘテロ環)チオ基、メルカプト基、(アルキル又はアリール)スルホニル基、(アルキル又はアリール)スルフィニル基、スルホ基、スルファモイル基、アシルスルファモイル基、(アルキルもしくはアリール)スルホニルウレイド基、(アルキルもしくはアリール)スルホニルカルバモイル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、リン酸アミド基などが挙げられる。
【0069】
11は好ましくは電子吸引性基であり、さらに好ましくはシアノ基である。また、R12が水素原子、R13が電子供与性基であることが好ましい。最も好ましくは、R11がシアノ基、R12が水素原子、R13がヒドロキシル基である。
【0070】
以下、一般式(1)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下に列挙する化合物において、ケト−エノール型互変異性体又はシス−トランス型幾何異性体が存在する場合には、その両方を表すものとする。
【0071】
【化2】

【0072】
【化3】

【0073】
【化4】

【0074】
【化5】

【0075】
【化6】

【0076】
【化7】

【0077】
5.安定化剤
本発明の安定化剤としては、例えば、特開昭56−159644号、同59−125732号、同61−145552号、同60−262159号、同61−90155号、特開平3−39956号等に記載されたフェノールもしくはフェニルエーテル系化合物、特開昭61−73152号、同61−72246号、同61−189539号、同61−189540号、同63−95439号等に記載された化合物等が好ましいものとして挙げられる。
【0078】
以下に、本発明の熱現像写真感光材料に用いられる安定化剤の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0079】
【化8】

【0080】
【化9】

【0081】
【化10】

【0082】
【化11】

【0083】
【化12】

【0084】
【化13】

【0085】
本発明の熱現像写真感光材料に用いられる安定化剤の添加量は1mg〜500mg/m2であることが好ましい。
【0086】
6.染料
本発明の熱現像写真感光材料のバッキング層中に用いられる600〜850nmに吸収極大を有する染料としては、例えば米国特許506,385号、同3,247,127号、特公昭39−22069号、同43−13168号等に記載されたオキソノール染料、米国特許1,845,404号に代表されるスチリル染料、同2,493,747号、同3,148,187号、同3,282,699号に代表されるメロシアンニン染料等、米国特許2,843,486号に代表されるシアニン染料等、更には米国特許2,865,752号に代表されるアンスラキノン系染料が好ましいものとして挙げられる。中でも、オキソノール染料がより好ましい。
【0087】
以下に、本発明の熱現像写真感光材料のバッキング層中に用いられる600〜850nmに吸収極大を有する染料の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0088】
【化14】

【0089】
【化15】

【0090】
【化16】

【0091】
【化17】

【0092】
【化18】

【0093】
【化19】

【0094】
【化20】

【0095】
【化21】

【0096】
【化22】

【0097】
【化23】

【0098】
【化24】

【0099】
【化25】

【0100】
【化26】

【0101】
【化27】

【0102】
【化28】

【0103】
【化29】

【0104】
【化30】

【0105】
【化31】

【0106】
【化32】

【0107】
【化33】

【0108】
【化34】

【0109】
7.その他
本発明の熱現像写真感光材料の感光性層、非感光性層に用いられるバインダーは親水性バインダー(水に溶解するバインダー若しくはラテックス類)又は疎水性バインダー(有機溶剤に溶解するバインダー)の何れでもよいが、各層のバインダーが互いに同一の溶剤系に溶解するバインダーであるのが好ましく、例えば感光性層、中間層、保護層の各層のバインダーが何れも有機溶剤系バインダーであるか、又は親水性バインダーであるのが好ましい。
【0110】
各層に用いられるバインダーは透明又は半透明で、一般に無色であり、天然ポリマーや合成モノポリマー及びコポリマー、その他フィルムを形成する媒体となるものが用いられる。上記バインダーの具体例としては、例えば:ゼラチン、アラビアゴム、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシエチルセルロース、カゼイン、デンプン等の水溶性バインダー、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メチルメタクリル酸)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(メタクリル酸)、コポリ(スチレン−無水マレイン酸)、コポリ(スチレン−アクリロニトリル)、コポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(ビニルアセタール)類(例えば、ポリ(ビニルホルマール)及びポリ(ビニルブチラール))、ポリ(エステル)類、ポリ(ウレタン)類、フェノキシ樹脂、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(エポキシド)類、ポリ(カーボネート)類、ポリ(ビニルアセテート)、セルロースエステル類、ポリ(アミド)等の疎水性バインダー、好ましくはポリビニルブチラール、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリル酸、ポリウレタン等の疎水性バインダー、特にはポリビニルブチラール、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリエステル等の疎水性バインダー、及びそれらのバインダー樹脂のモノマーを乳化重合法又は懸濁重合法等により水中で重合して得られるラテックス等が挙げられる。
【0111】
疎水性バインダーを溶解するための主溶媒としては、例えばアルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン)ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルセルソルブ等が好ましく用いられる。
【0112】
感光層のバインダーのTgは40℃以上であるこが好ましい。好ましくは40〜120℃、更に好ましくは40〜100℃、特に好ましくは40〜80℃である。40℃未満であると、現像性が高くなり、高湿下での感度上昇(文字線巾)が大きく好ましくない。また120℃より高い、熱現像温度とほぼ同じくらいの温度になることから、熱伝達が遅れ、現像性が低くなり、好ましくない。
【0113】
感光性層に通過する光の量又は波長分布を制御するために、感光性層と同じ側にフィルター染料層、又は反対側にアンチハレーション染料層、いわゆるバッキング層等の補助層を形成しても良いし、感光性層に染料又は顔料を含ませても良い。これらの補助層にはバインダーやマット剤の他に、ポリシロキサン化合物、ワックス、流動パラフィンのような滑り剤を含有しても良い。
【0114】
又、本発明の熱現像写真感光材料には、塗布助剤として各種の界面活性剤が用いられ、中でもフッ素系界面活性剤が、帯電特性を改良したり、斑点状の塗布故障を防ぐために好ましく用いられる。
【0115】
本発明の熱現像写真感光材料の感光性層は複数層にしても良く、又階調の調節のため、感光性層の構成として高感度層/低感度層、又は低感度層/高感度層にしても良い。
【0116】
又、本発明に用いられる好適な色調剤の例は、RD第17029号に開示されている。
【0117】
本発明の熱現像写真感光材料にはカブリ防止剤が用いられてもよく、これらの添加剤は感光性層、中間層、保護層又はその他の形成層の何れに添加してもよい。
【0118】
本発明の熱現像写真感光材料には例えば、界面活性剤、酸化防止剤、安定化剤、可塑剤、被覆助剤等を用いても良い。これらの添加剤及び上述したその他の添加剤はRD第17029号(1978年6月p.9〜15)に記載されている化合物を好ましく用いることができる。
【0119】
[低熱収縮性支持体]
本発明の好ましい低熱収縮性支持体とは、印刷製版用の熱現像写真感光材料として使用するにあたって、熱現像時の温度(熱)による版の寸法変化を抑えるために、支持体の熱現像に相当する120℃、60秒での寸法変化率の絶対値がMD(長手)、TD(巾手)方向ともに0.001〜0.06%の範囲、好ましくは0.001〜0.04%の範囲、特に好ましくは0.001〜0.02%の範囲のものである。
【0120】
本発明における前述の寸法変化率の測定は次のように行われる。すなわち支持体を、23℃、55%RH条件下で、該支持体のMD、TD方向に一定のある長さに印を付けてから、120℃に60秒間加熱後、再び23℃、55%RHの条件下に3時間調湿後して、各方向の長さを測定して、その寸法変化率を評価する。加熱前の寸法から加熱後の寸法を引いて、加熱前の寸法で除したものを百分率で寸法変化率を正の値または負の値として表す。
【0121】
支持体の基材となるフィルムは熱可塑性樹脂が好ましく、力学強度、熱寸法安定性、透明性から特に好ましいのがポリエステル樹脂である。さらに好ましいのが芳香族ポリエステル樹脂であり、具体的にはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等を挙げることができる。これらのフィルムの厚みは50μm以上500μm以下が好ましく、75μm以上300μm以下がさらに好ましく、90μm以上200μm以下がさらに好ましい。
【0122】
本発明の支持体は、前述の寸法変化率にするために以下のような熱処理をすることで達成できる。
【0123】
本発明に係わる熱処理は、熱収縮の進行を妨げずに、その後の熱処理(熱現像)時の寸法変化を小さくする上で、出来るだけ搬送張力を低くし、熱処理時間を長くすることが望ましい。処理温度としてはポリエステルフィルムのTg+50〜Tg+150℃の温度範囲が好ましく、その温度範囲で、搬送張力としては9.8kPa〜2MPaが好ましく、より好ましくは9.8kPa〜980kPa、更に好ましくは9.8kPa〜490kPaであり、処理時間としては30〜10分が好ましく、より好ましくは30〜5分である。上記の温度範囲、搬送張力範囲及び処理時間にすることにより、熱処理時に支持体の熱収縮の部分的な差により支持体の平面性が劣化することもなく、搬送ロールとの摩擦等により細かいキズ等の発生も押さえることが出来る。
【0124】
本発明において、熱処理の前の熱固定後に縦弛緩処理及び/または横弛緩処理を行っておくのも好ましい態様である。また熱処理は所望の寸法変化率を得るために、少なくとも1回は必要であり、必要に応じて2回以上実施することも可能である。さらに熱処理したポリエステルフィルムをTg付近の温度から常温まで冷却してから巻き取り、この時の冷却による平面性の劣化を防ぐために、Tgを跨いで常温まで下げるまでに、少なくとも−5℃/秒以上の速度で冷却するのが好ましい。
【0125】
熱処理条件としての熱処理時間は、フィルムの搬送速度を変えたり、熱処理ゾーンの長さを変えたりすることでコントロールできる。この熱処理時間が短すぎると本発明は効果的でなく支持体の熱寸法安定性が低下してしまう。また60分以上であると支持体の平面性や透明性の劣化がみられ、熱現像写真感光材料用の支持体としては不適となるので好ましくない。また熱処理の張力調整は、巻き取りロール及び/または送り出しロールのトルクを調整することにより出来る。また工程内にダンサーロールを設置し、これに加える荷重を調整することでも達成出来る。熱処理中及び/または熱処理後の冷却時に張力を変化させる場合、これらの工程前後及び/または工程内にダンサーロールを設置し、それらの荷重を調整することで所望の張力状態を設定しても良い。また振動的に搬送張力を変化させるには熱処理ロール間スパンを小さくすることにより有効に行うことが出来る。
【0126】
本発明の支持体は、酸化珪素薄膜を設ける前に下引層を設けていることが好ましい。下引層を設ける場合、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、セルロースエステル樹脂、スチレン樹脂及びゼラチン等が好ましい。また必要に応じて、トリアジン系、エポキシ系、メラミン系、ブロックイソシアネートを含むイソシアネート系、アジリジン系、オキサザリン系等の架橋剤、コロイダルシリカ等の無機粒子、界面活性剤、増粘剤、染料、防腐剤などを添加してもよい。
【0127】
また酸化珪素薄膜を設ける側と反対側に帯電防止層を設けることが好ましい。本発明の帯電防止層は、帯電防止剤とバインダーから構成されている。
【0128】
帯電防止剤としては、金属酸化物を用いることが好ましい。金属酸化物の例としては、ZnO、TiO2、SnO2、Al23、In23、SiO2、MgO、BaO、MoO2、V25等、あるいはこれらの複合酸化物が好ましく、特にバインダーとの混和性、導電性、透明性等の点から、SnO2(酸化スズ)が好ましい。異元素を含む例としてはSnO2に対してはSb、Nb、ハロゲン元素等を添加することができる。これらの異元素の添加量は0.01〜25mol%の範囲が好ましいが、0.1〜15mol%の範囲が特に好ましい。酸化スズは、非晶性ゾルまたは結晶性粒子の形態が好ましい。水系塗布の場合は非晶性ゾルが好ましく、溶剤系塗布の場合は結晶性粒子の形態が好ましい。特に環境上、作業の取り扱い性の点で水系塗布の非晶性ゾルの形態が好ましい。
【0129】
非晶性SnO3ゾルの製造方法に関しては、SnO3微粒子を適当な溶媒に分散して製造する方法、もしくは溶媒に可溶なSn化合物の溶媒中における分解反応から製造する方法等、いずれの方法でもよい。一方、結晶性粒子は、特開昭56−143430号公報、同60−258541号公報に詳細に記載されている。これら導電性金属酸化物微粒子の作製法としては、第一に金属酸化物微粒子を焼成により作製し、導電性を向上させるために異種原子の存在下で熱処理する方法、第二に焼成により金属酸化物微粒子作製時に異種原子を共存させる方法、第三に焼成時に酸素濃度を下げて酸素欠陥を導入する方法等の単独及び組み合わせが用いられる。
【0130】
本発明に用いられる金属酸化物の一次粒子の平均粒径は、0.001〜0.5μm、特に0.001〜0.2μmが好ましい。本発明に用いられる金属酸化物の固型分付量は1m2当たり0.05〜2g、特に0.1〜1gが好ましい。また本発明における帯電防止層における金属酸化物の体積分率は、8〜40vol%、好ましくは10〜35vol%がよい。上記範囲は金属酸化物微粒子の色、形態、組成等により変化するが、透明性及び導電性の点から、上記範囲が最も好ましい。
【0131】
帯電防止層を構成するバインダーについては、上記下引層と同じ樹脂を用いることが好ましい特に金属酸化物の分散性や導電性の点から、ポリエステル、アクリル変性ポリエステル、アクリル樹脂、セルロースエステルが好ましい。
【0132】
帯電防止層は、透明性や塗布ムラ(干渉ムラ)の点から、0.30〜0.70μmが好ましい。より好ましくは0.35〜0.55μmである。0.30μm未満であると所望の高温の導電性の確保及びBC層を設けたときのスリキズ性が劣化し、好ましくない。また0.70μ以上では干渉ムラが強く、商品価値上、劣化するとともに、透明性が劣化し、実用に耐えない。
【0133】
下引層、帯電防止層を塗布方法としては、公知の任意の塗工法が適用できる。例えばキスコート法、リバースコート法、ダイコート法、リバースキスコート法、オフセットグラビアコート法、マイヤーバーコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、含浸法、カーテンコート法などを単独または組み合わせて適用するとよい。
【実施例】
【0134】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0135】
実施例1
〔熱現像写真感光材料用支持体の作製〕
以下のようにしてPET樹脂を得た。
【0136】
《PET樹脂》
テレフタル酸ジメチル100質量部、エチレングリコール65質量部にエステル交換触媒として酢酸マグネシウム水和物0.05質量部を添加し、常法に従ってエステル交換を行った。得られた生成物に三酸化アンチモン0.05質量部、リン酸トリメチルエステル0.03質量部を添加した。次いで、徐々に昇温、減圧にし、280℃、4.903Paで重合を行い、固有粘度0.70のポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂を得た。
【0137】
以上のようにして得られたPET樹脂を用いて、以下のようにして下塗り層付二軸延伸PETフィルムを作製した。
【0138】
《下塗り層付二軸延伸PETフィルム》
PET樹脂をペレット化したものを150℃で8時間真空乾燥した後、285℃でTダイから層状に溶融押しだし、30℃の冷却ドラム上で静電印加しながら密着させ、冷却固化させ、未延伸フィルムを得た。この未延伸シートをロール式縦延伸機を用いて、80℃で縦方向に3.3倍延伸した。得られた一軸延伸フィルムに下記下引き塗布液A(固形分4質量%)をキスコート法にて片面にWet膜厚2g/m2になるように塗布した。引き続き、テンター式横延伸機を用いて、第一延伸ゾーン90℃で総横延伸倍率の50%延伸し、更に第二延伸ゾーン100℃で総横延伸倍率3.3倍になるように延伸した。次いで、70℃2秒間、前熱処理し、更に第一固定ゾーン150℃で5秒間熱固定し、第二固定ゾーン220℃で15秒間熱固定した。次いで、160℃で横(幅手)方向に5%弛緩処理し、テンターを出た後に、駆動ロールの周速差を利用して、140℃で縦(長手)方向に弛緩処理を行い、室温まで60秒かけて冷却し、フィルムをクリップから解放、スリットし、それぞれ巻き取り、厚さ125μmの二軸延伸PETフィルムを得た。この二軸延伸PETフィルムのTgは79℃であった。
【0139】
〈下引き塗布液A〉
アクリル共重合体 40質量部
化合物(G) 50質量部
ポリグリセリン 10質量部
塗布液中の全固形分が4%となるように純水にて仕上げた。
【0140】
アクリル共重合体:メタクリル酸メチル/アクリル酸エチル/アクリル酸/メタクリル酸ヒドロキシエチル/アクリルアミド=30/47.5/10/2.5/10、質量平均分子量50万
【0141】
【化35】

【0142】
《支持体の熱処理》
懸垂式熱弛緩装置を用いて、180℃、搬送張力、230kPa、15秒の条件で弛緩熱処理し、更に室温まで10℃/minで冷却してから巻き取った。
【0143】
〈帯電防止層〉
熱処理した支持体に、下記下引き塗布液Bを乾燥膜厚0.35μmになるようにワイヤーバーで塗布し、80℃20分で乾燥し、帯電防止層付き支持体を作製した。
【0144】
〈下引き塗布液B〉
酸化スズゾル(特公昭35−6616号公報の実施例1に記載の方法で合成したSnO2ゾルを、固形分濃度が10質量%になるように加熱、濃縮した後、アンモニア水でpH10に調整したもの) 500g
アクリル変性ポリエステル樹脂(特開2002−156730号公報記載のB−1)
200g
水 300g
〔熱現像写真感光材料の作製〕
《バック層側の塗布》
以下の組成のバック層塗布液1とバック保護層塗布液1を、それぞれ塗布前に絶対濾過精度20μmのフィルターを用いて濾過した後、押し出しコーターで前記作製した帯電防止付き支持体上に、合計ウェット膜厚が30μmになるよう、毎分120mの速度で同時重層塗布し、60℃で4分間乾燥を行った。
【0145】
〈バック層塗布液1〉
メチルエチルケトン 16.4g/m2
赤外染料−A 17mg/m2
安定化剤B−1(住友化学社製スミライザーBPA) 20mg/m2
安定化剤B−2(吉富製薬社製トミソーブ77) 50mg/m2
セルロースアセテートプロピレート(Eastman Chemical社製
CAP504−0.2) 0.5g/m2
セルロースアセテートプロピレート(Eastman Chemical社製
CAP482−20) 1.5g/m2
フッ素系界面活性剤:C817SO3Li 14mg/m2
917O(CH2CH2O)22917 38mg/m2
【0146】
【化36】

【0147】
〈バック保護層塗布液1〉
メチルエチルケトン 22g/m2
917O(CH2CH2O)22917 74mg/m2
フッ素系界面活性剤:C817SO3Li 27mg/m2
セルロースアセテートプロピレート(Eastman Chemical社製
CAP482−20) 2.0g/m2
シリカ(富士デビソン社サイロイド74:平均粒径7μm) 13mg/m2
《溶媒系塗布液A》
上記バック層側を塗布した帯電防止付き支持体のバック層側の反対側に、下記の感光層塗布液、表面保護層塗布液及びバリヤー層(OC層)塗布液を順次塗布、乾燥を行った。尚、OC層は、表1に示すように、塗布しない試料もある。
【0148】
〈ハロゲン化銀粒子の調製〉
純水900ml中にゼラチン7.5g及び臭化カリウム10mgを溶解して温度35℃、pHを3.0に合わせた後、硝酸銀74gを含む水溶液370mlと(96/4)のモル比の臭化カリウムと沃化カリウム0.436モルと(NH42RhCl5(H2O)を5×10-6モル/リットルを含む水溶液370mlをpAg7.7に保ちながらコントロールドダブルジェット法で10分間かけて添加した。その後、4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデン0.3gを添加し、NaOHでpHを5に調整して平均粒子サイズ0.06μm、投影直径面積の変動係数8%、{100}面比率86%の立方体沃臭化銀からなるハロゲン化銀粒子を得た。この乳剤にゼラチン凝集剤を用いて凝集沈降させ脱塩処理後、フェノキシエタノール0.1gを加え、pH5.9、pAg7.5に調整した。
【0149】
〈有機脂肪酸銀乳剤の調製〉
水300ml中にベヘン酸10.6gを入れ90℃に加熱溶解し、十分攪拌した状態で1M/Lの水酸化ナトリウム31.1mlを添加し、そのままの状態で1時間放置した。その後30℃に冷却し、1M/Lのリン酸7.0mlを添加して十分攪拌した状態でN−ブロモコハク酸イミド0.01gを添加した。その後、あらかじめ調製したハロゲン化銀粒子をベヘン酸に対して銀量として10モル%となるように40℃に加温した状態で攪拌しながら添加した。更に1M/L硝酸銀水溶液25mlを2分間かけて連続添加し、そのまま攪拌した状態で1時間放置した。
【0150】
この乳剤に酢酸エチルに溶解したポリビニルブチラールを添加して十分攪拌した後に静置し、ベヘン酸銀粒子とハロゲン化銀粒子を含有する酢酸エチル相と水相に分離した。水相を除去した後、遠心分離にてベヘン酸銀粒子とハロゲン化銀粒子を採取した。その後、東ソー(株)社製合成ゼオライトA−3(球状)20gとイソプロピルアルコール22mlを添加し1時間放置した後濾過した。更にポリビニルブチラール3.4gとイソプロピルアルコール23mlを添加し、35℃にて高速で十分攪拌して分散し有機脂肪酸銀乳剤の調製を終了した。
【0151】
〈感光層塗布液〉
有機脂肪酸銀乳剤 1.4g(銀で)/m2
ピリジニウムヒドロブロミドペルブロミド 1.5×10-4mol/m2
臭化カルシウム 1.8×10-4mol/m2
2−(4−クロロベンゾイル)安息香酸 1.5×10-3mol/m2
赤外増感色素1 4.2×10-6mol/m2
2−メルカプトベンズイミダゾール 3.2×10-3mol/m2
2−トリブロモメチルスルホニルキノリン 6.0×10-4mol/m2
4−メチルフタル酸 1.6×10-3mol/m2
テトラクロロフタル酸 7.9×10-4mol/m2
1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,5,5−トリメチルヘキサン 4.8×10-3mol/m2
赤外染料−A 3×10-5mol/m2
造核剤C−65 0.5×10-3mol/m2
溶媒には、メチルエチルケトン、アセトン、メタノールを適宜用いた。
【0152】
【化37】

【0153】
〈表面保護層塗布液〉
セルロースアセテートプロピオネート(Eastman Chemical社製) CAP381−20/CAP504−05=2/8 4g/m2
フタラジン 3.2×10-3mol/m2
シリカ(富士デビソン社製サイロイド74;平均粒径7μm) 100mg/m2
溶媒には、メチルエチルケトン、アセトン、メタノールを適宜用いた。
【0154】
(バリヤー層(OC層)の塗布)
以下に示す組成となる塗布液を作製し、絶対濾過精度20μmのフィルターを用いて濾過した後、ワイヤーバー塗布で上記作製した熱現像写真感光材料の保護層側に、ウェット膜厚が20μm、毎分30mの速度で塗布し、70℃で4分間乾燥を行った。
【0155】
ラテックスA(30%) 53g
ラテックスC(30%) 5g
ワックス(45%) 3g
F素活性剤(1% 水/メタノール:1/1) 18g
シリカ分散液(1%) 13g
純水で100gに仕上げる。
【0156】
ラテックスA:スチレンーブチルアクリレート−グリシジルメタクリレート=20:40:40(Tg=20℃)
ラテックスC:スチレンーブチルアクリレート−ヒドロキシメチルメタクリレート=25:50:25(Tg=45℃)
ワックス:日本精蝋社製EMUSTAR−0185(融点:80℃)パラフィン
F素活性剤:ネオス社製フタージェント100
シリカ分散液:シリカ(富士デビソン社サイロイド74;平均粒径7μm)の分散液
塗布乾燥済みの熱現像写真感光材料は表1に示す工程の条件で処理を行い、更に、断裁加工の工程においても表1に示す条件で処理を行い製品形態に仕上げた。製品形態は590mm×60mに断裁加工し、紙コアに巻き付けた。尚、熱処理条件aは23℃5日、熱処理条件bは36℃1日である。また、巻き取りの内側とは、感光層が内側になる巻き取りで、外側は感光層が外側になる巻き取り方法である。
【0157】
得られた試料を、上述した方法で垂直カールを測定したが、カールが逆のものは、感光層を内側にして測定した。結果は表1に示す。
【0158】
《水系塗布液B》
上記バック層側を塗布した帯電防止付き支持体のバック層の上に更に以下に示す組成の塗布液を13.8ml/m2となる様に塗布し、125℃で30秒、150℃で30秒、170℃で30秒乾燥した。
【0159】
ラテックス−B 286g
化合物−Bc−B 2.7g
化合物−Bc−C 0.6g
化合物−Bc−D 0.5g
2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジン 2.5g
ポリメチルメタクリレート 7.7g
(10質量%水分散物、平均粒子サイズ5μm、平均粒子の変動係数7%)
蒸留水 全体量が1000gとなる量
【0160】
【化38】

【0161】
テックス−B:メチルメタクリレート/スチレン/2−エチルヘキシルアクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸=59/9/26/5/1(質量%の共重合体)
搬送熱処理
このようにして作製したバック/下塗り層のついたPET支持体を160℃設定した全長200m熱処理ゾーンに入れ、張力2kg/cm2、搬送速度20m/分で搬送した。上記熱処理に引き続き、40℃のゾーンに15秒間通して後熱処理を行い、巻き取った。この時の巻き取り張力は10kg/cm2であった。バック側の反対側に、下記の感光層塗布液、表面保護層塗布液及びバリヤー層(OC層)塗布液を順次塗布、乾燥を行った。尚、OC層は、表1に示すように、塗布しない試料もある。
【0162】
(ハロゲン化銀乳剤の調製)
下記のように調製されたヨウ化銀粒子aを38℃に加熱溶解し、ベンゾチアゾリウムヨーダイドを1質量%水溶液で銀1mol当たり7×10-3mol添加した。さらに水を加えて1kg当たり含まれる銀量が38.2gとなるように調製した。
【0163】
(ヨウ化銀乳剤粒子aの調製)
蒸留水1420mlに1質量%ヨウ化カリウム溶液4.3mlを加え、さらに0.5mol/L濃度の硫酸を3.5ml、フタル化ゼラチン36.7gを添加した液をステンレス製反応壺中で攪拌しながら、42℃に液温を保ち、硝酸銀22.22gに蒸留水を加195.6mlに希釈した溶液Aとヨウ化カリウム21.8gを蒸留水にて容量218mlに希釈した溶液Bを一定流量で9分間かけて全量添加した。その後、3.5質量%の過酸化水素水溶液を10ml添加し、さらにベンツイミダゾールの10質量%水溶液を10.8ml添加した。さらに、硝酸銀51.86gに蒸留水を加えて317.5mlに希釈した溶液Cとヨウ化カリウム60gを蒸留水にて容量600mlに希釈した溶液Dを、溶液Cは一定流量で12分間かけて全量添加し、溶液DはpAgを8.1に維持しながらコントロールドダブルジェット法で添加した。銀1mol当たり1×10-4molになるよう六塩化イリジウム(III)酸カリウム塩を溶液Cおよび溶液Dを添加しはじめてから10分後に全量添加した。また、溶液Cの添加終了の5秒後に六シアン化鉄(II)カリウム水溶液を銀1mol当たり3x10−4mol全量添加した。0.5mol/L濃度の硫酸を用いてpHを3.8に調整し、攪拌を止め、沈降/脱塩/水洗工程を行った。1mol/L濃度の水酸化ナトリウムを用いてpH5.9に調整し、pAg8.0のヨウ化銀分散物を作製した。
【0164】
上記ヨウ化銀分散物を攪拌しながら47℃に維持して、0.34質量%の1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンのメタノール溶液を5ml加え、20分後にベンゼンチオスルホン酸ナトリウムをメタノール溶液で銀1molに対して7.6×10-5mol加え、さらに5分後にチオ硫酸ナトリウムを銀1mol当たり6.2×10-5mol加えて91分間熟成した。N,N′−ジヒドロキシ−N′′−ジエチルメラミンの0.8質量%メタノール溶液1.3mlを加え、さらに4分後に、5−メチル−2−メルカプトベンヅイミダゾールをメタノール溶液で銀1mol当たり4.8×10-3mol及び1−フェニル−2−ヘプチル−5−メルカプト−1,3,4−トリアゾールをメタノール溶液で銀1molに対して5.4×10-3mol添加して、ヨウ化銀乳剤aを作製した。
【0165】
得られたヨウ化銀乳剤a中の粒子は、平均球相当径0.040μm、球相当径の変動係数18%の純ヨウ化銀粒子であった。粒子サイズ等は、電子顕微鏡を用い1000個の粒子の平均から求めた。
【0166】
(脂肪酸銀分散物の調製)
ベヘン酸(ヘンケル社製、製品名Edenor C22−85R)87.6kg、蒸留水423L、5mol/L濃度のNaOH水溶液49.2L、tert−ブタノール120Lを混合し、75℃にて1時間攪拌し反応させ、ベヘン酸ナトリウム溶液を得た。別に、硝酸銀40.4kgの水溶液206.2L(pH4.0)を用意し、10℃にて保温した。635Lの蒸留水と30Lのtert−ブタノールを入れた反応容器を30℃に保温し、十分に撹拌しながら先のベヘン酸ナトリウム溶液の全量と硝酸銀水溶液の全量を流量一定でそれぞれ93分15秒と90分かけて添加した。このとき、硝酸銀水溶液添加開始後11分間は硝酸銀水溶液のみが添加されるようにし、そのあとベヘン酸ナトリウム溶液を添加開始し、硝酸銀水溶液の添加終了後14分15秒間はベヘン酸ナトリウム溶液のみが添加されるようにした。このとき、反応容器内の温度は30℃とし、液温度が一定になるように外温コントロールした。また、ベヘン酸ナトリウム溶液の添加系の配管は、2重管の外側に温水を循環させる事により保温し、添加ノズル先端の出口の液温度が75℃になるよう調整した。また、硝酸銀水溶液の添加系の配管は、2重管の外側に冷水を循環させることにより保温した。ベヘン酸ナトリウム溶液の添加位置と硝酸銀水溶液の添加位置は撹拌軸を中心として対称的な配置とし、また反応液に接触しないような高さに調整した。
【0167】
ベヘン酸ナトリウム溶液を添加終了後、そのままの温度で20分間撹拌放置し、30分かけて35℃に昇温し、その後210分熟成を行った。熟成終了後直ちに、遠心濾過で固形分を濾別し、固形分を濾過水の伝導度が30/cmになるまで水洗した。こうして脂肪酸銀塩を得た。得られた固形分は、乾燥させないでウエットケーキとして保管した。
【0168】
得られたベヘン酸銀粒子の形態を電子顕微鏡撮影により評価したところ、平均投影面積0.52μm、平均粒子厚み0.14μm、球相当径の変動係数15%のりん片状の結晶であった。
【0169】
乾燥固形分260kg相当のウエットケーキに対し、ポリビニルアルコール(商品名:PVA−217)19.3kgおよび水を添加し、全体量を1000kgとしてからディゾルバー羽根でスラリー化し、更にパイプラインミキサー(みづほ工業製:PM−10型)で予備分散した。
【0170】
次に予備分散済みの原液を分散機(マイクロフルイデックス・インターナショナル・コーポレーション製、商品名:マイクロフルイダイザーM−610、Z型インタラクションチャンバー使用)の圧力を1260kg/cm2に調節して、三回処理し、ベヘン酸銀分散物を得た。冷却操作は蛇管式熱交換器をインタラクションチャンバーの前後に各々装着し、冷媒の温度を調節することで18℃の分散温度に設定した。
【0171】
(還元剤分散物Aの調製)
1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−ブタンを10kg、および変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の10質量%水溶液16kgに、水7.2kgを添加して、良く混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(アイメックス(株)製、UVM−2)にて4時間30分分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて還元剤の濃度が25質量%になるように調製し、還元剤分散物Aを得た。こうして得た還元剤分散物に含まれる還元剤粒子はメジアン径0.46μm、最大粒子サイズ1.6μm以下であった。得られた還元剤分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0172】
(有機ポリハロゲン化合物Aの固体微粒子分散物の調製)
有機ポリハロゲン化合物Aを10kgと、変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製ポバールMP203)の20質量%水溶液10kgと、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液639gと、サーフィノール104E(日信化学(株)製)400gと、メタノール640gと水16kgを添加して、良く混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて5時間分散したのち水を加えて有機ポリハロゲン化合物Aの濃度が25質量%になるように調製し、有機ポリハロゲン化合物Aの固体微粒子分散物を得た。こうして得た分散物に含まれる有機ポリハロゲン化合物粒子はメジアン径0.36μm、最大粒子サイズ2.0μm以下、平均粒子サイズの変動係数18%であった。得られた分散物は、孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0173】
(有機ポリハロゲン化合物Bの固体微粒子分散物の調製)
有機ポリハロゲン化合物Bを5kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製ポバールMP203)の20質量%水溶液2.5kgと、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液213gと、水10kgを添加して、良く混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(アイメックス(株)製、UVM−2)にて5時間分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩2.5gと水を加えての有機ポリハロゲン化合物Bの濃度が23.5質量%になるように調製し、有機ポリハロゲン化合物Bの固体微粒子分散物を得た。こうして得た分散物に含まれる有機ポリハロゲン化合物粒子はメジアン径0.38μm、最大粒子サイズ2.0μm以下、平均粒子サイズの変動係数20%であった。得られた分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0174】
【化39】

【0175】
(6−イソプロピルフタラジン化合物の分散液の調製)
室温で水62.35gを攪拌しながら、変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)2.0gが塊状にならない様に添加し10分間攪拌混合した。その後加熱し、内温が50℃になるまで昇温した後、内温50〜60℃の範囲で90分間攪拌し均一に溶解させた。内温を40℃以下に降温し、ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、PVA−217)の10質量%水溶液25.5g、トリプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液3.0g、および6−イソプロピルフタラジン(70質量%水溶液)7.15gを添加し、30分攪拌し透明分散液100gを得た。得られた分散物は、孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0176】
(現像促進剤1の固体微粒子分散物の調製)
現像促進剤1を10kgと、変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製ポバールMP203)の20質量%水溶液10kgと、水20kgを添加して、良く混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(アイメックス(株)製、UVM−2)にて5時間分散したのち水を加えて現像促進剤の濃度が20質量%になるように調製し、現像促進剤の固体微粒子分散物を得た。こうして得た分散物に含まれる有機ポリハロゲン化合物粒子はメジアン径0.5μm、最大粒子サイズ2.0μm以下、平均粒子サイズの変動係数18%であった。得られた分散物は、孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0177】
【化40】

【0178】
塗布液の調製
(画像形成層塗布液の調製)
上記で作製したベヘン酸銀分散物Aの銀1molに対して、以下のバインダー、素材、およびハロゲン化銀乳剤Aを添加して、水を加えて、画像形成層塗布液とした。完成後、減圧脱気を圧力5.47×104Paで45分間行った。塗布液のpHは7.7、粘度は25℃で50mPa・sであった。
【0179】
バインダー;ラックスター3307B(固形分として) 397g
(大日本インキ化学工業(株)製;SBRラテックスでガラス転移温度17℃)
還元剤分散物A(固形分として) 149.5g
有機ポリハロゲン化合物A 3.1g
有機ポリハロゲン化合物B 1.9g
現像促進剤1 2.0g
エチルチオスルホン酸ナトリウム 0.47g
ベンゾトリアゾール 1.02g
ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、PVA−235) 10.8g
6−イソプロピルフタラジン 15.0g
ハロゲン化銀乳剤A Ag量として0.06mol
防腐剤として化合物−A 塗布液中に40ppm
なお、塗布膜のガラス転移温度は17℃であった。
【0180】
【化41】

【0181】
(保護層塗布液の調製)
メチルメタクリレート/スチレン/2−エチルヘキシルアクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸=58.9/8.6/25.4/5.1/2(質量%)のポリマーラテックス溶液(共重合体でガラス転移温度46℃(計算値)、固形分濃度として21.5質量%、化合物−Aを100ppm含有させ、さらに造膜助剤として化合物Bをラテックスの固形分に対して15質量%含有させ塗布液のガラス転移温度を24℃とした、平均粒子サイズ116nm)943gに水を加え、化合物C1.62g、オルトリン酸二水素ナトリウム・二水和物を固形分として0.69g、マット剤(ポリスチレン粒子、平均粒子サイズ7μm、平均粒子サイズの変動係数8%)1.58gおよびポリビニルアルコール(クラレ(株)製,PVA−235)29.3gを加え、さらに水を加えて塗布液(メタノール溶媒を0.8質量%含有)を調製した。完成後、減圧脱気を圧力4.76×104Paで60分間行った。塗布液のpHは5.5、粘度は25℃で45mPa・sであった。
【0182】
【化42】

【0183】
(バリヤー第一層塗布液の調製)
メチルメタクリレート/スチレン/2−エチルヘキシルアクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸=58.9/8.6/25.4/5.1/2(質量%)のポリマーラテックス溶液(共重合体でガラス転移温度46℃(計算値)、固形分濃度として21.5質量%、化合物−Aを100ppm含有させ、さらに造膜助剤として化合物Bをラテックスの固形分に対して15質量%含有させ、塗布液のガラス転移温度を24℃とした、平均粒子サイズ74nm)625gに水を加え、化合物Dを11.7g、化合物Fを2.7gおよびポリビニルアルコール(クラレ(株)製,PVA−235)11.5gを加え、さらに水を加えて塗布液(メタノール溶媒を0.1質量%含有)を調製した。完成後、減圧脱気を圧力4.76×104Paで60分間行った。塗布液のpHは2.6、粘度は25℃で30mPa・sであった。
【0184】
(バリヤー第二層塗布液の調製)
メチルメタクリレート/スチレン/2−エチルヘキシルアクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸=58.9/8.6/25.4/5.1/2(質量%)のポリマーラテックス溶液(共重合体でガラス転移温度46℃(計算値)、固形分濃度として21.5質量%、化合物−Aを100ppm含有させ、さらに造膜助剤として化合物Bをラテックスの固形分に対して15質量%含有させ、塗布液のガラス転移温度を24℃とした、平均粒子サイズ116nm)649gに水を加え、カルナヴァワックス(中京油脂(株)製、セロゾール524:シリコーン含有量として5ppm未満)30質量%溶液18.4g、化合物Cを1.85g、化合物Eを1.0g、マット剤(ポリスチレン粒子、平均粒子サイズ7μm、平均粒子サイズの変動係数8%)3.45gおよびポリビニルアルコール(クラレ(株)製,PVA−235)26.5gを加え、さらに水を加えて塗布液(メタノール溶媒を1.1質量%含有)を調製した。完成後、減圧脱気を圧力4.76×104Paで60分間行った。塗布液のpHは5.3、粘度は25℃で25mPa・sであった。
【0185】
【化43】

【0186】
塗布
前記バック層を設けたPET支持体の上に、スライドビート塗布方式を用いて、前記の画像形成層塗布液を塗布銀量1.5g/m2、さらにその上に、前記保護層塗布液をポリマーラテックスの固形分塗布量が1.29g/m2になるように同時重層塗布した。その後、保護層の上に前記バリヤー第一層塗布液をポリマーラテックスの固形分塗布量が1.97g/m2および前記バリヤー第二層塗布液をポリマーラテックスの固形分塗布量が1.07g/m2になるように2つのバリヤー塗布液を共に同時重層塗布し、熱現像画像記録材料を作製した。塗布時の乾燥は、恒率過程、減率過程とも露点14〜25℃、液膜表面温度35〜40℃の範囲で、塗布液の流動がほぼなくなる乾燥点近傍までは水平乾燥ゾーン(塗布機の水平方向に対し支持体が1.5°〜3°の角度)で行った。
【0187】
塗布乾燥済みの熱現像写真感光材料は、表1に示す方法で、上記溶媒系熱現像写真感光材料と同じく、製品形態まで仕上げ、上述した方法で垂直カールを測定し、結果は表1に示す。
【0188】
搬送性の評価
(露光処理)
作製した、溶媒系塗布液A及び水系塗布液Bから作製した製品形態の試料を785nmの半導体レーザーを有する日本電気製FT−286R(熱現像写真感光材料面上における主走査速度1300m/秒)に30℃80%RH条件下で、露光状態に待機させ、12時間放置した。このプロッターと、図2に示す熱現像機とをそれぞれドッキングし、露光・熱現像処理した。
【0189】
(熱現像処理)
熱現像写真感光材料は、オンラインで、上記露光装置からコンベアを経て、図2に示した熱現像機で、熱現像処理を行った。熱現像部のローラー表面材質はシリコンゴム、平滑面はテフロン(登録商標)不織布にして、熱現像部での搬送のラインスピードは27mm/秒に設定した。予備加熱部12.2秒(予備加熱部と熱現像部の駆動系は独立しており、熱現像部との速度差は−0.5%〜−1%に設定、コンベアの予備加熱部との速度差は0%〜−1.0%に設定、各予熱部の金属ローラーの温度設定、時間は第1ローラー温度67℃、2.0秒、第2ローラー温度82℃、2.0秒、第3ローラー温度98℃、2.0秒、第4ローラー温度107℃、2.0秒、第5ローラー温度115℃、2.0秒、第6ローラー温度120℃、2.0秒にした)、熱現像部120℃(熱現像写真感光材料面温度)で17.2秒、徐冷部13.6秒で熱現像処理を行った。なお、幅方向の温度精度は±0.5℃であった。各ローラー温度の設定は熱現像写真感光材料の幅(例えば幅61cm)よりも両側それぞれ5cm長くして、その部分にも温度をかけて、温度精度が出るようにした。なお、各ローラーの両端部分は温度低下が激しいので、熱現像写真感光材料の幅よりも5cm長くした部分はローラー中央部よりも1〜3℃温度が高くなるように設定し、熱現像写真感光材料(例えば幅61cmの中で)の画像濃度が均質な仕上がりになるように留意した。
【0190】
(搬送性評価)
コンベア部分の搬送性を以下の評価基準で評価し、試料20枚実施した結果を示す。
【0191】
○: 20枚ジャムなし、搬送時の音もない
○△:20枚ジャムなし、搬送時にわずかに音あり
△: 20枚ジャムなし、搬送時にフィルム反発音あり
△×:15枚ジャムなし、5枚ジャムあり
×: 10枚ジャムなし、10枚ジャムあり
××:5枚以下ジャムなし。結果を表1に示す。
【0192】
【表1】

【0193】
表1から、本発明の熱現像写真感光材料は、特に印刷製版用として、搬送性が良好なことが判る。
【図面の簡単な説明】
【0194】
【図1】本発明の垂直カールの測定法を示す概略図である。
【図2】本発明の熱現像写真感光材料の熱現像処理に用いられる熱現像機の一構成例を示す側面図である。
【符号の説明】
【0195】
1 垂直カール値
2 試料の上端
3 試料
4 テープ
5 垂直な壁
10 熱現像写真感光材料
11 搬入ローラー対
12 搬出ローラー対
13 ローラー
14 平滑面
15 加熱ヒーター
16 ガイド板
A 予備加熱部
B 熱現像部
C 徐冷部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に有機銀塩粒子、ハロゲン化銀粒子、還元剤を含有する感光層を有し、かつ該感光層を有する側とは反対側の支持体上にバッキング層を有する熱現像写真感光材料において、下記測定法による垂直カール値が−1mm〜−40mmであることを特徴とする熱現像写真感光材料。
垂直カールの測定法:熱現像写真感光材料を長さ:45cm、巾:60cmに切り出す。得られた試料を23℃、55%RH条件下に24時間調湿後、試料の上側から7cmの両端部分を垂直な壁にテープ止めし、その時のフィルムの上側のカール値を巾手3点(両端、中央)で測定し、平均したものを垂直カール値とする。
【請求項2】
支持体上に有機銀塩粒子、ハロゲン化銀粒子、還元剤を含有する感光層と該感光層を有する側とは反対側の支持体上にバッキング層を塗布する熱現像写真感光材料の製造方法において、該感光層およびバッキング層を塗布際の巻き取りを該感光層にあたる面を外側にして巻き取ることを特徴とする熱現像写真感光材料の製造方法。
【請求項3】
支持体上に有機銀塩粒子、ハロゲン化銀粒子、還元剤を含有する感光層と該感光層を有する側とは反対側の支持体上にバッキング層を有する熱現像写真感光材料の製造方法において、ロール形態で23℃〜40℃で熱処理をすることを特徴とする熱現像写真感光材料の製造方法。
【請求項4】
請求項2または3で製造されたことを特徴とする請求項1記載の熱現像写真感光材料。
【請求項5】
前記感光層側の最外層がラテックスとワックスエマルジョンで構成された層を有することを特徴とする請求項1又は4記載の熱現像写真感光材料。
【請求項6】
前記感光層及びバッキング層が溶剤塗布により形成されることを特徴とする請求項5記載の熱現像写真感光材料。
【請求項7】
前記感光層に造核剤を含有することを特徴とする請求項5又は6記載の熱現像写真感光材料。
【請求項8】
支持体が低熱収縮性支持体であることを特徴とする請求項5、6又は7記載の熱現像写真感光材料。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−47820(P2006−47820A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−230624(P2004−230624)
【出願日】平成16年8月6日(2004.8.6)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】