説明

熱現像性感光材料用バインダー樹脂及び熱現像性感光材料

【課題】かぶりの原因となる水分の浸透が少ないことから、熱現像性感光材料の感光層の
バインダー樹脂としたときに、高い保存安定性を有する熱現像性感光材料が得られる熱現
像性感光材料用バインダー樹脂及び熱現像性感光材料を提供する。
【解決手段】残存アセチル基量が25モル%以下、残存水酸基量が17〜30モル%かつ
重合度が200〜3000であるポリビニルアセタール樹脂からなる熱現像性感光材料用
バインダー樹脂であって、前記ポリビニルアセタール樹脂は、膜厚20μmのシートとし
たときに、JIS Z 0208に準拠した方法により測定される透湿度が500g/m
・day以下であることを特徴とする熱現像性感光材料用バインダー樹脂。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、かぶりの原因となる水分の浸透が少ないことから、熱現像性感光材料の感光層
のバインダー樹脂としたときに、高い保存安定性を有する熱現像性感光材料が得られる熱
現像性感光材料用バインダー樹脂及び熱現像性感光材料に関する。
【背景技術】
【0002】
ハロゲン化銀感光材料は、高解像度、高鮮明度という優れた写真特性を有することから、
従来広範囲かつ高品質な素材として画像形成分野で利用されている。しかし、現像工程や
定着工程が複雑であることに加え、現像工程が湿式である場合には、廃液を生ずることか
ら、環境面や作業性の面で問題となっていた。そこで、近年では、現像工程を乾式の熱処
理で行う熱現像性感光材料が開発され、実用化されている。
【0003】
熱現像性感光材料は、一般に、脂肪酸の銀塩、有機還元剤、感光性ハロゲン化銀等をバイ
ンダー樹脂中に分散して得られる組成物からなる感光層と、支持体とからなる。例えば、
特許文献1には、有機銀塩、還元剤及び有機銀イオンに対して触媒的に接触しているハロ
ゲン化銀を含有する感光層を有する熱現像性感光材料が開示されている。
【0004】
感光層を形成するバインダー樹脂としては、ポリビニルブチラール、ポリメタクリル酸メ
チル、酢酸セルロース、ポリ酢酸ビニル、酢酸プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロ
ース等が挙げられる。なかでも、ポリビニルブチラールが好適に用いられている。
【0005】
しかしながら、一般に、ポリビニルブチラール樹脂は、樹脂中に多数のアセチル基や水酸
基を有するため、得られた熱現像性感光材料を保存したり製膜したりするときに、ポリビ
ニルアセタール樹脂に空気中の水分が浸透し、この水分がかぶりや保存安定性の低下の原
因となるという問題があった。
【0006】
【特許文献1】特公昭43−4924号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記現状に鑑み、かぶりの原因となる水分の浸透が少ないことから、熱現像性
感光材料の感光層のバインダー樹脂としたときに、高い保存安定性を有する熱現像性感光
材料が得られる熱現像性感光材料用バインダー樹脂及び熱現像性感光材料を提供すること
を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、残存アセチル基量が25モル%以下、残存水酸基量が17〜30モル%かつ重
合度が200〜3000であるポリビニルアセタール樹脂からなる熱現像性感光材料用バ
インダー樹脂であって、前記ポリビニルアセタール樹脂は、膜厚20μmのシートとした
ときに、JIS Z 0208に準拠した方法により測定される透湿度が500g/m
・day以下であることを特徴とする熱現像性感光材料用バインダー樹脂である。
以下に本発明を詳述する。
【0009】
本発明者らは、鋭意検討の結果、残存アセチル基量、残存水酸基量、及び、重合度を一定
の数値範囲にしたポリビニルアセタール樹脂を熱現像性感光材料の感光層のバインダー樹
脂として用いれば、感光層の透湿度を低減させることができ、熱現像性感光材料の保存安
定性を飛躍的に向上させることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
上記ポリビニルアセタール樹脂は、アセタール化度の好ましい下限が40モル%、好まし
い上限が78モル%である。40モル%未満であると、有機溶剤に不溶となり熱現像性感
光材料用バインダー樹脂として用いることができないことがあり、78モル%を超えると
、残存水酸基量が少なくなってポリビニルアセタール樹脂の強靱性が損なわれ塗膜の強度
が低下することがある。
なお、本明細書において、アセタール化度の計算方法としては、ポリビニルアセタール樹
脂のアセタール基が2個の水酸基からアセタール化されて形成されていることから、アセ
タール化された2個の水酸基を数える方法を採用してアセタール化度のモル%を計算する

【0011】
上記ポリビニルアセタール樹脂は、残存アセチル基量の好ましい上限が25モル%である
。残存アセチル基量が25モル%を超えると、得られる熱現像性感光材料同士のブロッキ
ングが生じたり、得られる画像が鮮明でなくなったりすることがある。より好ましい上限
は15モル%である。
【0012】
上記ポリビニルアセタール樹脂は、残存水酸基量の好ましい下限が17モル%、好ましい
上限が30モル%である。17モル%未満であると、熱現像性感光材料用バインダー樹脂
として用いたときに銀塩の分散性が悪く、感度が低下してしまうことがある。30モル%
を超えると、得られる熱現像性感光材料の感光層の透湿性が高く、かぶりが発生したり、
保存安定性が悪化したり、画像濃度が低下したりすることがある。
【0013】
上記ポリビニルアセタール樹脂は、重合度の好ましい下限が200、好ましい上限が30
00である。この範囲内であると、銀塩の分散性や、塗工したときの塗膜の強度、塗工性
等のバランスを取り易い。より好ましい下限は300、より好ましい上限は1000であ
る。
【0014】
上記ポリビニルアセタール樹脂としては、側鎖に官能基として、下記式(1)で表される
官能基、下記式(2)で表される官能基、下記式(3)で表される官能基、下記式(4)
で表される官能基、下記式(5)で表される官能基、下記式(6)で表される官能基、第
三級アミン基、及び、第四級アンモニウム塩基からなる群より選択される少なくとも1種
の官能基を持つ変性ポリビニルアセタール樹脂が好適である。このような親水性官能基を
側鎖に有することにより、有機銀塩の分散性を向上させることができる。
【0015】
【化1】

【0016】
式中、Mは、H、Li、Na又はKを表し、Rは水素原子又は炭素数1〜20のアルキル
基を表す。
【0017】
上記第三級アミン基としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタ
ノールアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン等が挙げられる。また、Rがアル
キル基の場合、炭素数1〜10のものが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、イソプ
ロピル基、ブチル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0018】
上記変性ポリビニルアセタール樹脂中の官能基量の好ましい下限は0.1モル%、好まし
い上限は5モル%である。0.1モル%未満であると、充分な有機銀塩の分散性向上の効
果が得られないことがあり、5モル%を超えると、有機溶剤に対する溶解性が低下するこ
とがある。
【0019】
上記ポリビニルアセタール樹脂としては、主鎖にα−オレフィン単位を有する変性ポリビ
ニルアセタール樹脂も好適である。上記α−オレフィン単位としては特に限定されないが
、例えば、炭素数1〜20の直鎖状又は環状のアルキル基に由来するものが好適である。
上記範囲内であれば分岐や直鎖状の部位と環状の部位の両方を含んでいても良い。上記α
−オレフィン単位の炭素数が20を超えると、原料として用いる変性ポリビニルアルコー
ル樹脂の溶剤溶解性が低下するためにアセタール化反応が充分に進行せず変性ポリビニル
アセタール樹脂を得ることができなかったり、得られた変性ポリビニルアセタール樹脂の
溶剤溶解性が低く熱現像性感光材料用バインダー樹脂として用いることができなかったり
することがある。より好ましくは炭素数1〜10の直鎖状又は環状のアルキル基に由来す
るものであり、更に好ましくは炭素数2〜6の直鎖状アルキル基に由来するものである。
具体的には、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イ
ソブチレン、ペンチレン、へキシレン、シクロヘキシレン、シクロヘキシルエチレン、シ
クロヘキシルプロピレン等に由来する単位が好適である。
【0020】
上記変性ポリビニルアセタール樹脂の主鎖中における上記α−オレフィン単位の含有量の
好ましい下限は1モル%、好ましい上限は20モル%である。1モル%未満であると、充
分な透湿性低減効果が得られない。20モル%を超えると、原料として用いる変性ポリビ
ニルアルコール樹脂の溶剤溶解性が低下するためにアセタール化反応が充分に進行せず変
性ポリビニルアセタール樹脂を得ることができず、得られたとしても変性ポリビニルアセ
タール樹脂の溶剤溶解性が低く熱現像性感光材料用バインダー樹脂として用いることがで
きない。より好ましい上限は10モル%である。
【0021】
上記ポリビニルアセタール樹脂は、膜厚20μmのシートとしたときに、JIS Z 0
208「防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)」に準拠した方法により測定される
透湿度が500g/m・day以下である。透湿度が500を超えると、感光層に浸透
する水分が多くなり、かぶりが発生し、保存安定性の悪化や画像濃度の低下等により熱現
像性感光材料の感度が低下する。
【0022】
上記ポリビニルアセタール樹脂は、残存ハロゲン化物量の好ましい上限は、100ppm
である。100ppmを超えると、感光性ハロゲン化銀の生成物質となり、塗工溶液の保
存安定性を低下させ、熱現像性感光材料の保存性低下や、かぶり等の原因になることがあ
る。残存ハロゲン化物量を100ppm以下にする方法としては、例えば、アセタール化
に使用する触媒として非ハロゲン性のものを選択する、ハロゲン性の触媒を使用した場合
には、水、水/アルコールの混合溶液等による洗浄操作にて精製し、規定量以下まで除去
する方法等が挙げられる。より好ましい上限は50ppmである。
【0023】
上記ポリビニルアセタール樹脂は、けん化度が75モル%以上のポリビニルアルコールと
各種アルデヒドとのアセタール化反応により合成することができる。上記ポリビニルアセ
タール樹脂は、一般に、水溶液中、アルコール溶液中、水/アルコール混合溶液中、ジメ
チルスルホキシド(DMSO)溶液中等で、ポリビニルアルコールと各種アルデヒドとを
酸触媒を用いて反応させることにより合成されるが、ポリ酢酸ビニル、又は、変性ポリ酢
酸ビニルのアルコール溶液に酸触媒とアルデヒドとを添加することによっても合成され得
る。
【0024】
上記アルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド、プ
ロピルアルデヒド等アセタール化できるアルデヒドであればどのようなアルデヒドを用い
てもよいが、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒドを単独、又は、併用して用いることが
好ましい。また、ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化された部分のうちアセトアル
デヒドによりアセタール化された部分の割合が30%以上であることが好ましい。アセト
アルデヒドによりアセタール化された部分が30%未満の場合は、得られるポリビニルア
セタール樹脂のガラス転移点が80℃以下となり、感光性銀塩の核成長が進み過ぎ、かつ
、銀塩の分散性が充分に得られず、画像の解像度及び鮮明度が充分に得られないことがあ
る。より好ましくは50%以上である。また、アセトアセタール部分を導入したポリビニ
ルアセタール樹脂を用いることにより、銀塩の分散性が向上し、熱溶融性、冷却硬化性等
がシャープとなり、銀塩の核成長を精度よく制御することが可能であり、結果として画像
及び階調部の鮮明度が向上する。
【0025】
上記酸触媒としては、特に限定されず、有機酸、無機酸のどちらでも使用可能であり、例
えば、酢酸、パラトルエンスルホン酸、硝酸、硫酸、塩酸等が挙げられる。また、上記合
成反応を停止させる際に使用されるアルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸
化カリウム、アンモニア、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸
カリウム、炭酸水素カリウム等が挙げられる。
【0026】
ポリビニルアルコールとアルデヒドとのアセタール化反応においては、通常、アルデヒド
の酸化防止のため、又は、得られる樹脂の酸化防止及び耐熱性向上のために、反応系又は
樹脂系に酸化防止剤が添加されるが、上記ポリビニルアセタール樹脂の合成においては、
通常酸化防止剤として用いられるヒンダードフェノール系、ビスフェノール系、リン酸系
等の酸化防止剤を使用しない。このような酸化防止剤を使用すると、酸化防止剤がポリビ
ニルアセタール樹脂中に残存し、塗工溶液のポットライフの低下、熱現像性感光材料の保
存安定性の低下等を引き起こし、かぶりや画像/階調部の鮮明性が損なわれることがある

【0027】
なお、上記官能基を側鎖に有する変性ポリビニルアセタール樹脂を得る方法としては、例
えば、ビニルエステルと上記官能基を有するモノマーとを共重合した共重合体をケン化し
て得た変性ポリビニルアルコール樹脂を原料として、これをアセタール化する方法;ポリ
ビニルアルコール樹脂又はポリビニルアセタール樹脂の主鎖に結合する水酸基を利用して
官能基を導入する方法等が挙げられる。
上記官能基を有するモノマーとしては、例えば、アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等
が挙げられる。
【0028】
また、上記主鎖にα−オレフィン単位を有する変性ポリビニルアセタール樹脂を得る方法
としては、例えば、ビニルエステルとα−オレフィンとを共重合した共重合体をケン化し
て得た変性ポリビニルアルコール樹脂を原料として、これをアセタール化する方法等が挙
げられる。
【0029】
本発明の熱現像性感光材料用バインダー樹脂を用いてなる熱現像性感光材料もまた、本発
明の1つである。
上記熱現像性感光材料は、上記ポリビニルアセタール樹脂をバインダー樹脂とする感光層
と支持体とからなる。
【0030】
上記感光層は、上記ポリビニルアセタール樹脂をバインダー樹脂として、これに脂肪酸の
銀塩、有機還元剤、感光性ハロゲン化銀等を分散させたものである。
上記有機銀塩としては、光に比較的安定な無色又は白色の銀塩であり、感光したハロゲン
化銀の存在下で80℃以上に加熱されたときに有機還元剤と反応して銀を生ずるものであ
れば特に限定されない。
【0031】
上記有機銀塩としては、例えば、メルカプト基、チオン基又はカルボキシル基を有する有
機化合物の銀塩、ベンゾトリアゾール銀等が挙げられる。具体的には、メルカプト基又は
チオン基を有する化合物の銀塩、3−メルカプト−4−フェニル1,2,4−トリアゾー
ルの銀塩、2−メルカプト−ベンツイミダゾールの銀塩、2−メルカプト−5−アミノチ
アゾールの銀塩、1−フェニル−5−メルカプトテトラチアゾールの銀塩、2−メルカプ
トベンゾチアゾールの銀塩、チオグリコール酸の銀塩、ジチオ酢酸の銀塩のようなジチオ
カルボン酸の銀塩、チオアミド銀、チオピリジン銀塩ジチオヒドロキシベンゾールの銀塩
、メルカプトトリアジンの銀塩、メルカプトオキサジアゾールの銀塩、脂肪族カルボン酸
の銀塩;カプリン酸銀、ラウリン酸銀、ミリスチン酸銀、パルミチン酸銀、ステアリン酸
銀、ベヘン酸銀、マレイン酸銀、フマル酸銀、酒石酸銀、フロイン酸銀、リノール酸銀、
オレイン酸銀、ヒドロキシステアリン酸銀、アジピン酸銀、セバシン酸銀、こはく酸銀、
酢酸銀、酪酸銀、樟脳酸銀等、芳香族カルボン酸銀、チオンカルボン酸銀、チオエーテル
基を有する脂肪族カルボン酸銀、テトラザインデンの銀塩、S−2−アミノフェニルチオ
硫酸銀、含金属アミノアルコール、有機酸金属キレート等が挙げられる。
【0032】
上記有機酸銀塩のうち、好ましくは脂肪族カルボン酸の銀塩であり、より好ましくはベヘ
ン酸銀である。上記有機酸銀塩は、粒子直径の好ましい下限は0.01μm、好ましい上
限は10μmであり、より好ましい下限は0.1μm、より好ましい上限は5μmである

【0033】
上記有機酸銀塩に感光性ハロゲン化銀が触媒的に接触させられる場合がある。この場合は
、例えば、予め調製された有機銀塩の溶液若しくは分散液、又は、有機銀塩を含む熱現像
性感光材料材料に、ハロゲン化銀形成成分を作用させて有機銀の一部をハロゲン化銀に形
成する方法等が挙げられる。
【0034】
感光性ハロゲン化銀形成成分としては、有機銀塩に作用してハロゲン化銀を形成するもの
であれば特に限定されず、有機銀塩100重量部に対して感光性ハロゲン化銀0.000
5〜0.2重量部用いられるのが好ましく、より好ましくは0.01〜0.2重量部であ
る。
【0035】
上記分散液において、ポリビニルアセタール樹脂の割合は、有機銀塩100重量部に対し
て好ましい下限は10重量部、好ましい上限は1000重量部であり、より好ましい下限
は20重量部、より好ましい上限は500重量部である。
【0036】
上記還元剤としては、特に限定されず、併用される有機銀塩により適宜選択され、例えば
、置換フェノール類、ビスフェノール類、ナフトール類、ビスナフトール類、ポリヒドロ
キシベンゼン類、ジヒドロキシナフタレン類又はポリヒドロキシナフタレン類、ハイドロ
キノンモノエーテル類、アスコルビン酸又はその誘導体、還元性糖類、芳香族アミノ化合
物、ヒドロキシアミン類、ヒドラジン類等が挙げられる。なかでも、光分解性の還元剤が
好ましく用いられるが、熱分解性の還元剤も用いられる。更に、光分解を促進する化合物
を併用することもでき、ハロゲン化銀と還元剤との反応を阻害するための被覆剤を併用す
ることもできる。
【0037】
上記有機溶剤としては、ポリビニルアセタール樹脂を溶解し、水分の含有量がほとんどな
いものが好適に用いられる。なかでも、ケトン、エステル類が好ましく、より好ましくは
、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル等である。また、溶剤として、エタ
ノール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール等を用いる場合には、脱
水したものを用いることが好ましい。
【0038】
上記分散液は、銀により黒色画像を形成させる場合には、添加剤として色調剤を含有して
もよい。また、カラー画像を形成させる場合には、カラーカプラー、ロイコ染料等を含有
してもよい。更に、必要に応じて増感剤等の従来公知の添加剤を含有してもよい。
【0039】
上記分散液を製造する方法としては特に限定されず、例えば、上記ポリビニルアセタール
樹脂、有機銀塩、有機還元剤及び有機溶剤をボールミルで分散させた後、必要に応じて更
にハロゲン化銀やハロゲン化銀形成成分、各種添加剤を加えボールミルで分散させる方法
等が挙げられる。
【0040】
熱現像性感光材料を製造する方法としては、例えば、上記分散液を支持体上に有機銀塩が
規定の量となるように塗布し、溶剤を蒸発させる方法等が挙げられる。なお、上記有機銀
塩と有機還元剤とは、これらを一括してポリビニルアセタール樹脂に配合し支持体上に一
層に形成してもよいし、上記有機銀塩と有機還元剤とを各別にポリビニルアセタール樹脂
に配合し、これらを支持体上に各別に二層に形成してもよい。
【0041】
上記支持体としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエ
チレン、ポリビニルアセタール、セルロースエステル、セルローストリアセテート、ニト
ロセルロース、ポリエチレンナフタレート等のプラスチックフィルム、ガラス、紙;アル
ミニウム板等の金属板等が用いられる。
【0042】
上記支持体上に塗布される銀の量としては、支持体1mあたりの好ましい下限が0.1
g、好ましい上限が5gである。0.1g未満であると、画像濃度が低くなることがあり
、5gを超えても、画像濃度の向上はみられない。より好ましい下限は0.3g、より好
ましい上限は3gである。
【0043】
また、上記ポリビニルアセタール樹脂は、支持体と感光層の間、又は、感光層と表面保護
層の間等に透湿防止層として使用することもできる。上記ポリビニルアセタール樹脂を透
湿防止層として用いる場合には、感光層に用いられるポリビニルアセタール樹脂の透湿度
は500以上であってもよい。
【発明の効果】
【0044】
本発明によれば、かぶりの原因となる水分の浸透が少ないことから、熱現像性感光材料の
感光層のバインダー樹脂としたときに、高い保存安定性を有する熱現像性感光材料が得ら
れる熱現像性感光材料用バインダー樹脂及び熱現像性感光材料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定
されるものではない。
【0046】
(実施例1)
重合度500、ケン化度98%のポリビニルアルコール100gを700gの蒸留水に加
温溶解した後、20℃に保ち、これに70%硝酸26gを加え、更にブチルアルデヒド1
6gを添加した。次に、10℃まで冷却し、ブチルアルデヒド70gを加えた。樹脂が析
出した後、30分間保持し、その後、硝酸93gを加え35℃に昇温して6時間保った。
反応終了後、蒸留水にて10時間流水洗浄した後、蒸留水に分散し、水酸化ナトリウムを
添加して溶液のpHを8に調整した。溶液を50℃で6時間保持した後冷却した。
【0047】
次に、蒸留水で10時間流水洗浄した。洗浄後、脱水及び乾燥し、ポリビニルブチラール
樹脂を得た。
この樹脂の残存アセチル基量は1.7モル%、残存水酸基量は20モル%であった。
この樹脂をメチルエチルケトンに20重量%となるように溶解し、コーターバーポリエチ
レンテレフタレート(PET)フィルム上に塗工し、50℃で5時間乾燥した。その後、
PETフィルムから剥離し、ポリビニルアセタール樹脂の膜厚35μmの熱現像性感光材
料を得た。開口面積25cmの透湿カップに塩化カルシウム粉末を入れ、上記ポリビニ
ルアセタール樹脂膜で蓋をし、ろうで密封した。このカップを温度40℃、湿度90%の
恒温恒湿槽に入れ、24時間後カップの重量を測定した。このとき、カップの質量は0.
4g増加した。従って、この膜の透湿度は、0.4g÷0.0025m=160g/m
・dayとなり、これに35/20を乗じて膜厚を20μmに換算した結果、240g
/m・dayとなった。
【0048】
ベヘン酸銀5g、ポリビニルブチラール5g、メチルエチルケトン40gを24時間ボー
ルミルで混合し、更に、N−ラウリル−1−ヒドロキシ−2−ナフトアミド0.2gを加
え、再びボールミルで粉砕して塗工溶液を得た。
【0049】
上記塗工溶液を、ポリエステル基材上に乾燥後の厚みが10μmとなるように塗布して乾
燥した。この塗工面上に、N,N−ジメチル−p−フェニレンジアミン・硫酸塩0.5g
、ポリビニルピロリドン2g、メタノール30mLからなる溶液を乾燥後の厚みが1μm
となるように塗布して乾燥することにより、熱現像性感光材料を作製した。
【0050】
(実施例2)
重合度800のポリビニルアルコールを用いた以外は、実施例1と同様にして、残存アセ
チル基量11モル%、残存水酸基量28モル%のポリビニルブチラール樹脂を得た。この
樹脂の透湿度は390g/m・dayとなった。実施例1と同様にして塗工溶液を調製
し、熱現像性感光材料を作製した。
【0051】
(実施例3)
重合度500、ケン化度98%のポリビニルアルコール132gを1600gの蒸留水に
加温溶解した後、20℃に保ち、これに70%硝酸90gを加え、更にアセトアルデヒド
28gを添加した。次に、13℃まで冷却し、ブチルアルデヒド36gを加えた。樹脂が
析出した後、30分間保持し、その後55℃に昇温して5時間保った。反応終了後、蒸留
水にて10時間流水洗浄し、水洗後のビニルアセタール樹脂を脱水乾燥した後、60メッ
シュの篩にかけて通過した粒子のみを蒸留水に分散し、分散液に炭酸水素ナトリウムを添
加して溶液のpHを8に調整した。溶液を70℃で6時間保持した後冷却した。このとき
の溶液のpHは8であった。
【0052】
次に、蒸留水により溶液を2時間流水洗浄した後、脱水し、40℃で12時間乾燥した後
、ポリビニルアセタール樹脂の粒子を乳鉢で粉砕し、60メッシュの篩にかけ、通過した
粒子のみを蒸留水で10時間流水洗浄した。洗浄後、脱水、乾燥してポリビニルアセター
ル樹脂を得た。
このようにして得られたポリビニルアセタール樹脂の残存アセチル基量は1.8モル%、
残存水酸基量は26モル%、アセトアセタール化度は37.3モル%(全アセタール化部
分における割合は51.7%)、ブチラール化度は34.9モル%であった。また、この
樹脂の透湿度は410g/m・dayであった。実施例1と同様にして塗工溶液を調製
し、熱現像性感光材料を作製した。
【0053】
(実施例4)
重合度1700のポリビニルアルコールを用いた以外は、実施例3と同様にして、残存ア
セチル基量1.9モル%、残存水酸基量30モル%、アセトアセタール化度40.1モル
%(全アセタール化部分における割合は58.9%)、ブチラール化度28.0モル%の
ポリビニルアセタール樹脂を得た。また、この樹脂の透湿度は450g/m・dayで
あった。実施例1と同様にして塗工溶液を調製し、熱現像性感光材料を作製した。
【0054】
(実施例5)
重合度800のポリビニルアルコールを用いた以外は、実施例3と同様にして、残存アセ
チル基量12モル%、残存水酸基量25モル%、アセトアセタール化度50モル%(全ア
セタール化部分における割合は79.4%)、ブチラール化度の13モル%のポリビニル
アセタール樹脂を得た。また、この樹脂の透湿度は350g/m・dayであった。実
施例1と同様にして塗工溶液を調製し、熱現像性感光材料を作製した。
【0055】
(比較例1)
重合度500のポリビニルアルコールを用いて、実施例1と同様の方法により、重合度5
00、残存アセチル基量1.8モル%、残存水酸基量37モル%のポリビニルブチラール
樹脂を得た。この樹脂の透湿度は780g/m・dayであった。実施例1と同様にし
て塗工溶液を調製し、熱現像性感光材料を作製した。
【0056】
(比較例2)
重合度1000のポリビニルアルコールを用いた以外は、実施例3と同様にして、残存ア
セチル基量2モル%、残存水酸基量36モル%、アセトアセタール化度37モル%(全ア
セタール化部分における割合は59.7%)、ブチラール化度25モル%のポリビニルア
セタール樹脂を得た。また、この樹脂の透湿度は930g/m・dayであった。実施
例1と同様にして塗工溶液を調製し、熱現像性感光材料を作製した。
<評価>
【0057】
このようにして得られた塗工溶液及び熱現像性感光材料について以下の評価を行った。結
果を表1に示した。
【0058】
<塗工溶液の評価>
得られた塗工溶液を、常温で3日間、室内の蛍光灯下に置き、以下の評価基準で溶液の着
色変化を評価した。
○:白色のままほとんど変化が見られなかった。
△:僅かに着色した。
×:完全に着色した。
【0059】
<熱現像性感光材料の評価>
階調パターンフィルムを通して250ワットの高圧水銀等で20cmの距離で0.3秒間
露光後、120℃の熱板を用いて5秒間加熱して現像することにより、パターン画像を得
た。その後、形成されたパターン画像について、階調性、及び、かぶりを評価した。
【0060】
階調性については、以下の評価基準で評価した。
○:階調パターンにほとんど変化が見られなかった。
△:階調パターンに僅かに変化が見られた。
×:階調パターンに大きな変化が見られた。
【0061】
かぶりについては、以下の評価基準で評価した。
○:かぶりが全く発生していなかった。
△:僅かにかぶりが発生していた。
×:かぶりが多く発生していた。
【0062】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明によれば、かぶりの原因となる水分の浸透が少ないことから、熱現像性感光材料の
感光層のバインダー樹脂としたときに、高い保存安定性を有する熱現像性感光材料が得ら
れる熱現像性感光材料用バインダー樹脂及び熱現像性感光材料を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
残存アセチル基量が25モル%以下、残存水酸基量が17〜30モル%かつ重合度が20
0〜3000であるポリビニルアセタール樹脂からなる熱現像性感光材料用バインダー樹
脂であって、前記ポリビニルアセタール樹脂は、膜厚20μmのシートとしたときに、J
IS Z 0208に準拠した方法により測定される透湿度が500g/m・day以
下であることを特徴とする熱現像性感光材料用バインダー樹脂。
【請求項2】
ポリビニルアセタール樹脂は、側鎖に下記式(1)で表される官能基、下記式(2)で表
される官能基、下記式(3)で表される官能基、下記式(4)で表される官能基、下記式
(5)で表される官能基、下記式(6)で表される官能基、第三級アミン基、及び、第四
級アンモニウム塩基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を0.1〜5モル
%有する変性ポリビニルアセタール樹脂であることを特徴とする請求項1記載の熱現像性
感光材料用バインダー樹脂。
【化1】

式中、Mは、H、Li、Na又はKを表し、Rは水素原子又は炭素数1〜20のアルキル
基を表す。
【請求項3】
ポリビニルアセタール樹脂は、主鎖にα−オレフィン単位を1〜20モル%有する変性ポ
リビニルアセタール樹脂であることを特徴とする請求項1記載の熱現像性感光材料用バイ
ンダー樹脂。
【請求項4】
請求項1、2又は3記載の熱現像性感光材料用バインダー樹脂を用いてなることを特徴と
する熱現像性感光材料。

【公開番号】特開2006−17876(P2006−17876A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−193700(P2004−193700)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】