説明

熱硬化性水性塗料及び塗膜形成方法

【課題】 塗装作業性幅が広く、かつ、塗面平滑性、メタリック感などの仕上がり性に極めて優れた塗膜を形成しうる熱硬化性水性塗料及び塗膜形成方法を提供すること。
【解決手段】 1分子中に1個以上の水酸基及び1個以上の長鎖炭化水素基を有する化合物に、多価カルボン酸及び/又は多価カルボン酸無水物を反応させて得られる特定の酸価、水酸基価及び数平均分子量を有するオリゴマー(A−1)及び/又は該オリゴマー(A−1)に、さらに、多価カルボン酸及び/又は多価カルボン酸無水物、及び/又はポリイソシアネート化合物を反応させて得られるポリエステル樹脂(A−2)、架橋剤(B)及び水分散性重合体粒子(C)を含有することを特徴とする熱硬化性水性塗料及び該塗料を用いた塗膜形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規なオリゴマー及び/又はポリエステル樹脂を含んでなる、メタリック感、塗面平滑性等の仕上がり性に優れた塗膜を形成しうる水性塗料及び該水性塗料を用いた塗膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塗料分野において、環境保全及び省資源の観点から、有機溶剤の使用量削減が重要な課題となっている。近年、その対策として、塗料中の有機溶剤量を減少させるために、塗料の水性化及び高固形分化の開発が進められている。
【0003】
自動車塗料分野における水性塗料として、例えば、多価カルボン酸樹脂、アミノ樹脂、線状低分子ポリエステルジオールおよびベンゾインを主成分とする熱硬化性水性塗料が知られている(例えば、特許文献1参照)が、固形分濃度が低く、また、塗膜の平滑性等も十分なものではない。
【0004】
自動車塗料の中でも特に、上塗り塗料においては外観品質に優れた塗膜であることが求められており、メタリック塗装に際しては、メタリックベース塗料中のアルミニウムなどの鱗片状光輝性顔料を良好に配向させることによりメタリック感等の仕上がり性に優れた塗膜外観が得られることが求められている。
【0005】
このようなメタリック塗装に用いられる水性メタリックベース塗料として、例えば、架橋重合体微粒子を水性ベース塗料中に含有することを特徴とする、メタリック顔料のフリップフロップ効果を最大限に発揮させ且つメタリック感に優れた塗膜を形成するベースコート組成物が提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、該組成物は塗装条件、特に湿度の変化によりタレ、ムラ等の塗膜欠陥が生じやすいという欠陥がある。
【0006】
また、2コート1ベークの塗装方法において、例えば、水性メタリックベース塗装に使用する塗料として、重合体微粒子を含有する水分散体として例えば、ステアリルアクリレート、ステアリルメタアクリレート等の特定の長鎖のモノマーを共重合した水分散体を使用する塗膜形成方法も提案されている(例えば、特許文献3参照)が、塗装作業性及び平滑性、メタリック感等の仕上がり性が不十分であるなどの問題がある。
【0007】
【特許文献1】特開平4−93374号公報
【特許文献2】特公平3−14869号公報
【特許文献3】特開2001−104878号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、塗装作業性幅が広く、かつ、塗面平滑性、メタリック感などの仕上がり性に優れた塗膜を形成しうる熱硬化性水性塗料及び塗膜形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、今回、特定組成の長鎖炭化水素基を有するオリゴマー及び該オリゴマーをさらに高分子量化してなるポリエステル樹脂を開発し、該オリゴマー及び/又はポリエステル樹脂を使用した熱硬化性水性塗料及びこれを用いた塗膜形成方法により上記の目的を達成することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
かくして、本発明は、(A)オリゴマー(A−1)及び/又はポリエステル樹脂(A−2)、(B)架橋剤並びに(C)水分散性重合体粒子を含有する塗料であって、
前記(A−1)成分が、1分子中に1個以上の水酸基及び1個以上の長鎖炭化水素基を有する化合物(a−1)に、多価カルボン酸及び/又は多価カルボン酸無水物(a−2)を反応させて得られる30〜400mgKOH/gの範囲内の水酸基価、20〜220mgKOH/gの範囲内の酸価及び300〜2000の範囲内の数平均分子量を有するオリゴマー(A−1)であり、
前記(A−2)成分が、前記(A−1)成分にさらに多価カルボン酸及び/又は多価カルボン酸無水物(a−2)、及び/又はポリイソシアネート化合物(a−3)を反応させて得られる10〜200mgKOH/gの範囲内の水酸基価、10〜100mgKOH/gの範囲内の酸価及び400〜6000の範囲内の数平均分子量を有するポリエステル樹脂であることを特徴とする熱硬化性水性塗料を提供するものである。
【0011】
本発明は、また、上記の熱硬化性水性塗料を用いて複層塗膜を形成する方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の熱硬化性水性塗料は、仕上がり性に極めて優れた塗膜を形成し、特に、水性メタリックベースコート塗料として用いた場合には、塗料の高固形分化を図ることができ、平滑性、メタリック感等の仕上がり性に極めて優れた塗膜を得ることができる。また、本発明の熱硬化性水性塗料は、従来の水性塗料に比べ、温度及び湿度の変動に対する塗装作業適正幅が広いという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の熱硬化性水性塗料及び塗膜形成方法についてさらに詳細に説明する。
【0014】
熱硬化性水性塗料
本発明の熱硬化性水性塗料(以下、「本塗料」という)は前記(A)オリゴマー(A−1)及び/又はポリエステル樹脂(A−2)、架橋剤(B)並びに水分散性重合体粒子(C)を必須成分として含有するものである。
【0015】
オリゴマー(A−1)
本塗料のオリゴマー(A−1)は、1分子中に1個以上の水酸基及び1個以上の長鎖炭化水素基を有する化合物(a−1)に、多価カルボン酸及び/又は多価カルボン酸無水物(a−2)を反応させて得られる30〜400mgKOH/gの範囲内の水酸基価、20〜220mgKOH/gの範囲内の酸価及び300〜2000の範囲内の数平均分子量を有するオリゴマーである。
【0016】
オリゴマー(A−1)の合成方法は、特に限定されるものではなく、通常の方法に従って行なうことができ、例えば、上記(a−1)及び(a−2)の各成分を窒素気流中、約80〜185℃で、0.5〜6時間程度加熱して、(a−1)成分中の水酸基と(a−2)成分中のカルボキシル基を反応させることにより酸基を有するオリゴマー(A−1)を合成することができる。
【0017】
1分子中に1個以上の水酸基及び1個以上の長鎖炭化水素基を有する化合物(a−1)としては、例えば、ジグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、長鎖オレフィングリコール等の化合物をあげることができる。
【0018】
ジグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、ジグリセリンラウレート、ジグリセリンステアレート、ジグリセリンオレート、ジグリセリンカプリレート等の化合物をあげることができる。
【0019】
ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、テトラグリセリンステアレート、テトラグリセリンオレート、ヘキサグリセリンステアレート、デカグリセリンラウレート、デカグリセリンステアレート、デカグリセリンオレート等の化合物をあげることができる。
【0020】
ソルビタン脂肪酸エステルとしては、例えば、ソルビタンラウレート、ソルビタンパルミテート、ソルビタンステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンオレート、ソルビタントリオレート、ソルビタントリベヘネート、ソルビタンカプリレート等の化合物をあげることができる。
【0021】
長鎖オレフィングリコールとしては、例えば、AOGX68(ダイセル化学工業社製)等があげられる。
【0022】
上記した1分子中に1個以上の水酸基及び1個以上の長鎖炭化水素基を有する化合物(a−1)のうち、ヌレ性、相溶性等の観点から、炭素数4以上、さらには炭素数6〜20の鎖状もしくは環状の炭化水素基を有するものを特に好適に使用することができる。
【0023】
また、上記炭素数4以上の炭化水素基としては、水酸基などの置換基を有しているものも包含される。
【0024】
これらの1分子中に1個以上の水酸基及び1個以上の長鎖炭化水素基を有する化合物(a−1)は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0025】
上記(a−2)成分の多価カルボン酸は、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する化合物であり、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、2,4−ジエチルグルタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4−ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルメタン−4,4'−ジカルボン酸、ヘット酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロトリメリット酸、メチルヘキサヒドロフタル酸などをあげることができ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0026】
上記(a−2)成分の多価カルボン酸無水物は、1分子中に1個以上の酸無水基を有する化合物であり、例えば、上記の多価カルボン酸の無水物などをあげることができ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。なお、ここで、1個の酸無水基は2価であるとする。
【0027】
オリゴマー(A−1)は、300〜2000、好ましくは400〜1500の範囲内の数平均分子量、20〜220mgKOH/g、好ましくは30〜180mgKOH/gの範囲内の酸価、及び30〜400mgKOH/g、好ましくは50〜300mgKOH/gの範囲内の水酸基価を有することができる。なお、水酸基価が30mgKOH/gより小さくなると硬化性が不十分となる傾向がみられる。
【0028】
なお、本明細書において、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(東ソー社製、「HLC8120GPC」)で測定した数平均分子量をポリスチレンの数平均分子量を基準にして換算した値である。カラムは、「TSKgel G−4000H×L」、「TSKgel G−3000H×L」、「TSKgel G−2500H×L」、「TSKgel G−2000H×L」(いずれも東ソー(株)社製、商品名)の4本を用い、移動相;テトラヒドロフラン、測定温度;40℃、流速;1cc/分、検出器;RIの条件で行ったものである。
【0029】
上記(a−1)及び(a−2)成分の使用割合は、得られるオリゴマー(A−1)の数平均分子量、酸価及び水酸基価が上記した範囲となるように選択される。
【0030】
ポリエステル樹脂(A−2)
本塗料のポリエステル樹脂(A−2)は、前記オリゴマー(A−1)を合成し、このオリゴマー(A−1)に対して、さらに、(a−2)多価カルボン酸及び/又は多価カルボン酸無水物、及び/又は(a−3)ポリイソシアネート化合物を反応させ、高分子量化することにより得られるポリエステル樹脂である。
【0031】
上記合成において、オリゴマー(A−1)に多価カルボン酸及び/又は多価カルボン酸無水物(a−2)を反応させるには、(A−1)及び(a−2)を常法により窒素気流中、例えば、約150〜250℃で、1〜10時間加熱し、縮合反応させることによって行うことができる。その際触媒として、ジブチルスズオキサイド、三酸化アンチモン、酢酸亜鉛、酢酸マンガン、酢酸コバルト、酢酸カルシウム、酢酸鉛、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート等のそれ自体既知のエステル化触媒を使用することができる。
【0032】
(a−2)成分としては、前記したオリゴマー(A−1)のところであげたものを同様に使用することができる。
【0033】
特に、ポリエステル樹脂(A−2)における(a−2)成分としては、3官能以上の多価カルボン酸及び/又は多価カルボン酸無水物が好ましく、なかでも特に、無水トリメリット酸、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、1,3−プロパンジオールビス(アンヒドロトリメリテート)及び無水ピロメリット酸から選ばれる少なくとも1種の化合物を好適に使用することができる。
【0034】
オリゴマー(A−1)にポリイソシアネート化合物(a−3)を反応させるには、(A−1)及び(a−3)を常法により窒素気流中、例えば、60〜140℃で、1〜10時間加熱し、水酸基とイソシアネート基の付加反応により行うことができる。その際触媒として、後述する有機金属系の触媒(特に有機錫触媒)を必要に応じて使用することができる。
【0035】
また、必要に応じて、上記イソシアネート化合物との付加反応終了後、さらに、(a−2)成分を加え、約100〜185℃で、0.5〜6時間程度加熱して反応させて酸基を導入することもできる。この場合の(a−2)成分としては、前記したオリゴマー(A−1)のところであげたものを同様に使用することができる。
【0036】
ポリエステル樹脂(A−2)において、オリゴマー(A−1)にポリイソシアネート化合物(a−3)を反応させてなるポリエステル樹脂は樹脂骨格中にウレタン結合を有するので、物性を向上させることができる。
【0037】
ポリイソシアネート化合物(a−3)としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート類;及びこれらのポリイソシアネートのビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;イソホロンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサン−2,4−(又は−2,6−)ジイソシアネート、1,3−(又は1,4−)ジ(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,2−シクロヘキサンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート類;及びこれらのポリイソシアネ−トのビュ−レットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;キシリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,4−ナフタレンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネ−ト、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、(m−又はp−)フェニレンジイソシアネート、4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、ビス(4−イソシアナトフェニル)スルホン、イソプロピリデンビス(4−フェニルイソシアネート)などの芳香族ジイソシアネート化合物;及びこれらのポリイソシアネ−トのビュ−レットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;トリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエン、4,4’−ジメチルジフェニルメタン−2,2’,5,5’−テトライソシアネートなどの1分子中に3個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート類;及びこれらのポリイソシアネートのビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ジメチロールプロピオン酸、ポリアルキレングリコール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールなどのポリオールの水酸基にイソシアネート基が過剰量となる比率でポリイソシアネート化合物を反応させてなるウレタン化付加物;及びこれらのポリイソシアネートのビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;等を挙げることができる。
【0038】
ポリエステル樹脂(A−2)の合成に際し、オリゴマー(A−1)に対して(a−2)成分及び(a−3)成分の両方を反応させる場合、(a−2)成分、(a−3)成分のいずれを先にオリゴマー(A−1)と反応させても良い。その際の反応は前記したと同様の条件下に行なうことができる。
【0039】
得られるポリエステル樹脂(A−2)は、400〜6000、好ましくは500〜5000の範囲内の数平均分子量、10〜200mgKOH/g、好ましくは30〜180mgKOH/gの範囲内の水酸基価、及び10〜100mgKOH/g、好ましくは20〜70mgKOH/gの範囲内の酸価を有することができる。ポリエステル樹脂(A−2)の数平均分子量が6000より大きくなると高固形分化が困難となり、また、水酸基価が10mgKOH/gより小さくなると硬化性が不十分となる傾向がみられる。
【0040】
オリゴマー(A−1)及び、成分(a−2)及び/又は(a−3)の使用割合及び反応条件は、得られるポリエステル樹脂(A−2)の酸価、水酸基価及び数平均分子量が上記した範囲内となるように調節される。
【0041】
オリゴマー(A−1)及びポリエステル樹脂(A−2)は、それぞれの酸基に対して通常0.3〜1.2当量、好ましくは0.5〜1.0当量の塩基性化合物にて中和、水性媒体中に溶解または分散させることにより、水性樹脂組成物を調製することができる。該塩基性化合物としては、例えば、アルカリ金属の水酸化物やアンモニア水のような無機塩基性化合物;メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、2−アミノ−2−メチルプロパノール、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、ピペラジン、2−(ジメチルアミノ)エタノール、2−(ジエチルアミノ)エタノール、ジメチルドデシルアミンなどのアミン化合物をあげることができる。これらの中で特に、トリエチルアミン、2−(ジメチルアミノ)エタノール、2−(ジエチルアミノ)エタノールが好ましい。
【0042】
架橋剤(B)
本塗料の架橋剤(B)は、特に制限されるものではなく、例えば、以下に述べるブロック化ポリイソシアネート硬化剤(b)、水分散性ブロック化ポリイソシアネート硬化剤(b)、メラミン樹脂(b)等を好適に用いることができる。
【0043】
ブロック化ポリイソシアネート硬化剤(b)は、1分子中に2個以上の遊離のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物のイソシアネート基をブロック剤でブロックしたものである。
【0044】
上記のポリイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート類;これらの脂肪族ポリイソシアネートのビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;イソホロンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサン−2,4−(又は−2,6−)ジイソシアネート、1,3−(若しくは1,4−)ジ(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,2−シクロヘキサンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート類;これらの脂環族ジイソシアネ−トのビュ−レットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,4−ナフタレンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネ−ト、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、(m−又はp−)フェニレンジイソシアネート、4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、ビス(4−イソシアナトフェニル)スルホン、イソプロピリデンビス(4−フェニルイソシアネート)などの芳香族ジイソシアネート化合物;及びこれらのポリイソシアネートのビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;水添MDI、及び水添MDIの誘導体;トリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエン、4,4’−ジメチルジフェニルメタン−2,2’,5,5’−テトライソシアネートなどの1分子中に3個以上のイソシアネ−ト基を有するポリイソシアネート類;これらのポリイソシアネートのビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ジメチロールプロピオン酸、ポリアルキレングリコール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールなどのポリオールの水酸基にイソシアネート基が過剰量となる比率でポリイソシアネート化合物を反応させてなるウレタン化付加物;これらのウレタン化付加物のビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物等を挙げることができる。
【0045】
また、ブロック剤は、これらのポリイソシアネート化合物中の遊離のイソシアネート基を封鎖するものであり、例えば、100℃以上、好ましくは130℃以上に加熱すると、ブロック剤が解離して遊離のイソシアネート基が再生し、水酸基と容易に反応することができるようになる。かかるブロック剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、ニトロフェノール、エチルフェノール、ヒドロキシジフェニル、ブチルフェノール、イソプロピルフェノール、ノニルフェノール、オクチルフェノール、ヒドロキシ安息香酸メチルなどのフェノール系;ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピオラクタムなどのラクタム系;メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、ラウリルアルコールなどの脂肪族アルコール系;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メトキシメタノールなどのエーテル系;ベンジルアルコール;グリコール酸;グリコール酸メチル、グリコール酸エチル、グリコール酸ブチルなどのグリコール酸エステル系;乳酸、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチルなどの乳酸エステル系;メチロール尿素、メチロールメラミン、ジアセトンアルコール、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレートなどのアルコール系;ホルムアミドオキシム、アセトアミドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサンオキシムなどのオキシム系;
マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジn−ブチル、メチルマロン酸ジエチル、マロン酸ベンジルメチル、マロン酸ジフェニルなどのマロン酸ジアルキルエステル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸n−プロピル、アセト酢酸ベンジル、アセト酢酸フェニルなどのアセト酢酸エステル、アセチルアセトンなどの活性メチレン系;ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、2−メルカプトベンゾチアゾール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノールなどのメルカプタン系;アセトアニリド、アセトアニシジド、アセトトルイド、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸アミド、ステアリン酸アミド、ベンズアミドなどの酸アミド系;コハク酸イミド、フタル酸イミド、マレイン酸イミドなどのイミド系;ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、キシリジン、N−フェニルキシリジン、カルバゾール、アニリン、ナフチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、ブチルフェニルアミンなどのアミン系;イミダゾール、2−エチルイミダゾールなどのイミダゾール系;3,5−ジメチルピラゾールなどのピラゾール系;尿素、チオ尿素、エチレン尿素、エチレンチオ尿素、ジフェニル尿素などの尿素系;N−フェニルカルバミン酸フェニルなどのカルバミン酸エステル系;エチレンイミン、プロピレンイミンなどのイミン系;重亜硫酸ソーダ、重亜硫酸カリなどの亜硫酸塩系などのブロック剤を挙げることができる。
【0046】
塗料の低有機溶剤量化(低VOC化)のためには架橋剤(B)からも有機溶剤量を減らした方がよく、そのためには、塗膜性能を低下させない範囲で、ブロック化ポリイソシアネート硬化剤(b)に水分散性を付与したブロック化ポリイソシアネート硬化剤(b)を用いることができる。
【0047】
水分散性を付与したブロック化ポリイソシアネート硬化剤(b)には、例えば、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基をヒドロキシモノカルボン酸類を含むブロック剤でブロックし、ヒドロキシモノカルボン酸類により導入されたカルボキシル基を中和することによって水分散性を付与したブロック化ポリイソシアネート化合物をあげることができる。この場合、ポリイソシアネート化合物の少なくとも1個のイソシアネート基がヒドロキシモノカルボン酸類のヒドロキシル基に付加するように反応させるのが、得られるブロック化ポリイソシアネート硬化剤の水分散性の観点から好ましい。
【0048】
上記ポリイソシアネート化合物としては、ブロック化ポリイソシアネート硬化剤(b)において例示したものと同様のポリイソシアネート化合物を用いることができるが、なかでも特に、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)の誘導体、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)の誘導体、水添MDI及び水添MDIの誘導体が好適である。
【0049】
ブロック剤としては、ブロック化ポリイソシアネート硬化剤(b)において例示したブロック剤と同様のものを用いることができる。また、ヒドロキシモノカルボン酸類としては、例えば、2−ヒドロキシ酢酸、3−ヒドロキシプロパン酸、12−ヒドロキシ−9−オクタデカン酸(リシノレイン酸)、3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロパン酸(ヒドロキシピバリン酸)、2,2−ジメチロールプロピオン酸(DMPA)等を挙げることができ、この中で、3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロパン酸(ヒドロキシピバリン酸)が好ましい。反応はイソシアネート基に対して反応性でない溶媒中、例えば、アセトン、メチルエチルケトンのようなケトン類、酢酸エチルのようなエステル類;N−メチルピロリドン(NMP)等の溶媒中で行なうことができる。
【0050】
メラミン樹脂(b)としては、具体的には、ジ−、トリー、テトラ−、ペンタ−、ヘキサ−メチロールメラミンおよびそれらのアルキルエーテル化物(アルキルとしては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、2−エチルヘキシルアルコール等が挙げられる)並びにそれらの縮合物などを挙げることができ、市販品として、例えば、日本サイテックインダストリーズ社製のサイメル254などのサイメルシリーズ;三井化学社製のユーバン20SBなどのユーバンシリーズなどを使用することができる。
また、メラミン樹脂(b)を硬化剤として使用する場合は、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸などのスルホン酸、およびこれらの酸とアミンとの塩を触媒として使用することができる。
【0051】
水分散性重合体粒子(C)
本塗料の水分散性重合体粒子(C)は、特に制限されるものではなく、通常水性塗料に用いられるものを同様に使用することができ、好ましいものとしては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂(アルキド樹脂を含む)、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等の水分散化物が挙げられ、これらはいずれもその分子構造中に水酸基やカルボキシル基等を有しているものを好適に使用することができる。
【0052】
これらのうち、以下に述べる水分散性アクリル重合体粒子(C−1)及び水分散性ウレタン重合体粒子(C−2)が特に好ましく、水性ベースコート塗料用途として最適である。
【0053】
水分散性アクリル重合体粒子(C−1)
ビニルモノマーを界面活性剤のような分散安定剤の存在下で、ラジカル重合開始剤を用いて乳化重合せしめることによって得られる水分散性アクリル重合体粒子である。
【0054】
水分散性アクリル重合体粒子(C−1)は、通常の均一構造又はコア/シェル構造などの多層構造のいずれの構造を有していてもよい。また、粒子内未架橋タイプ又は粒子内架橋タイプのいずれのタイプのものであってもよい。コア/シェル構造においては、例えば、コア部分を粒子内架橋タイプ、シェル部分を未架橋タイプとするなど、コア部、シェル部いずれについても架橋タイプ又は未架橋タイプとすることができる。
【0055】
乳化重合せしめるビニルモノマーはカルボキシル基含有ビニルモノマー(M−1)、水酸基含有ビニルモノマー(M−2)及びその他のビニルモノマー(M−3)から選ばれるものが好ましく、更に、例えば、重合性不飽和結合を1分子中に2個以上有する多ビニル化合物(M−4)を少量併用する方法、1分子中にグリシジル基を有するビニルモノマーとカルボキシル基含有ビニルモノマー(M−1)とをそれぞれ少量併用する方法、水酸基含有ビニルモノマー(M−2)と1分子中にイソシアネート基を有するビニルモノマーとをそれぞれ少量併用する方法などにより、粒子内架橋した水分散性アクリル重合体粒子を得ることができる。
【0056】
コア/シェル構造の水分散性アクリル重合体粒子(C−1)は、具体的には、例えば、最初にカルボキシル基含有ビニルモノマー(M−1)を全く又は殆んど含有しないビニルモノマー成分を乳化重合し、その後、カルボキシル基含有ビニルモノマー(M−1)を多量に含んだビニルモノマー成分を加えて乳化重合することによって得ることができる。
【0057】
コア部架橋タイプのコア/シェル構造の水分散性アクリル重合体粒子(C−1)は、具体的には、例えば、最初に少量の多ビニル化合物(M−4)及びカルボキシル基含有ビニルモノマー(M−1)を全く又は殆んど含有しないビニルモノマー成分を乳化重合し、その後、カルボキシル基含有ビニルモノマー(M−1)を多量に含んだビニルモノマー成分を加えて乳化重合することによって得ることができる。
【0058】
コア部とシェル部との結合は、例えば、コア部の表面に有せしめた加水分解性官能基又はシラノール基を介して導入される重合性不飽和結合、又はコア部の表面に残存するアリル(メタ)アクリレート由来の重合性不飽和結合に、カルボキシル基含有ビニルモノマー(M−1)を含むビニルモノマー成分を共重合させることにより行なうことができる(シェル部が形成される)。
【0059】
カルボキシル基含有ビニルモノマー(M−1)には、1分子中に1個以上のカルボキシル基と1個の重合性不飽和結合とを有する化合物が包含され、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸等が挙げられる。さらに、これらの化合物の酸無水物や半エステル化したモノカルボン酸なども、本明細書において、該モノマー(M−1)に包含されるものとする。
【0060】
水酸基含有ビニルモノマー(M−2)には、1分子中に水酸基と重合性不飽和結合とを有する化合物が包含され、この水酸基は架橋剤と反応する官能基として作用することができる。該モノマー(M−2)としては、具体的には、アクリル酸又はメタクリル酸と炭素数2〜10個の2価アルコールとのモノエステル化物が好適であり、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレートなど、また、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなどを挙げることができる。
【0061】
その他のビニルモノマー(M−3)としては、上記両モノマー(M−1)、(M−2)以外のモノマーであって、1分子中に1個の重合性不飽和結合を有する化合物が包含され、その具体例を以下の(1)〜(8)に列挙する。
【0062】
(1)アクリル酸又はメタクリル酸と炭素数1〜20の1価アルコールとのモノエステル化物:例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート等。
【0063】
(2)芳香族系ビニルモノマー:例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等。
【0064】
(3)グリシジル基含有ビニルモノマー:1分子中にグリシジル基と重合性不飽和結合とをそれぞれ1個有する化合物で、具体的には、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等。
【0065】
(4)含窒素アルキル(炭素数1〜20)アクリレート:例えばジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート等。
【0066】
(5)重合性不飽和結合含有アミド系化合物:例えば、アクリル酸アミド、メタクリル酸アミド、ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルプロピルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等。
【0067】
(6)ビニル化合物:例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、塩化ビニル等。
【0068】
(7)重合性不飽和結合含有ニトリル系化合物:例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等。
【0069】
(8)ジエン系化合物:例えばブタジエン、イソプレン等。
【0070】
これらのその他のビニルモノマー(M−3)は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0071】
前記多ビニル化合物(M−4)としては、例えば、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリアクリレート、メチレンビスアクリルアミド等が挙げられ、ここでは前記ジエン系化合物は含まれない。
【0072】
他方、乳化重合に使用される分散安定剤としては、アニオン系乳化剤、ノニオン系乳化剤、両性イオン乳化剤などがあげられる。具体的にはアニオン系乳化剤としては、例えば、脂肪酸、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルリン酸塩などが挙げられる。ノニオン系乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミドなどが挙げられる。両性イオン乳化剤としては、アルキルベダイン等が挙げられる。
【0073】
これらの乳化剤の濃度は、水分散性アクリル重合体粒子の固形分重量を基準にして、0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%の範囲内が適している。
【0074】
また、ラジカル重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、4、4’−アゾビス(4−シアノブタン酸)などを挙げることができ、開始剤の使用量は水分散性アクリル重合体粒子の固形分重量を基準にして、通常、0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%の範囲内が適している。
【0075】
乳化重合の際の反応温度は、通常60〜90℃、反応時間は通常5〜10時間とすることができる。
【0076】
得られる水分散性アクリル重合体粒子(C−1)は、得られる塗膜の耐水性や硬化性等の観点から、一般に1〜100mgKOH/g、好ましくは5〜80mgKOH/gの範囲内の水酸基価を有するのが好適である。また、水分散性アクリル重合体粒子(C−1)は、得られる塗膜の耐水性や硬化性等の観点から、一般に、1〜100mgKOH/g、好ましくは5〜80mgKOH/gの範囲内の酸価を有するのが好適である。さらに、水分散性アクリル重合体粒子(C−1)は、一般に10〜1000nm、好ましくは20〜500nmの範囲内の粒子径を有することができる。
【0077】
水分散性アクリル重合体粒子(C−1)は塩基性化合物で中和することが好ましい。
水分散性アクリル重合体粒子(C−1)のための中和剤としては、アンモニア又は水溶性アミノ化合物、例えば、モノエタノールアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリエタノールアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、メチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、2−アミノ−2−メチルプロパノール、ジエタノールアミン、モルホリン等を好適に使用することができる。
【0078】
水分散性ウレタン重合体粒子(C−2)
水分散性ウレタン重合体粒子(C−2)は、例えば、応力緩和効果等の塗膜物性を向上させる目的で用いられるものであり、例えば、自動車用途に用いた場合、塗膜の走行中の石はねによる塗膜の耐損傷性(耐チッピング性という)等の向上や付着性の向上などに効果がある。
【0079】
水分散性ウレタン重合体粒子(C−2)は、活性水素含有化合物、分子内に活性水素及び、アニオン基またはアニオン形成性基を有する化合物、及び有機ポリイソシアネート化合物を反応させてなるウレタン重合体を、水中に分散、又は溶解することにより得ることができる。
【0080】
活性水素含有化合物としては、例えば、高分子ポリオール、低分子ポリオールおよびポリアミンが挙げられる(例えば、特開平3−9951号公報明細書に記載のもの)。
【0081】
高分子ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールおよびポリカーボネートポリオールが好ましい。該高分子ポリオールは通常200〜3000、好ましくは250〜2000の範囲内のOH基当量を有することができる。低分子ポリオールとしては、1,4−ブタンジオール、3−メチルペンタンジオール、ペンタエリスリトールおよびトリメチロールプロパンが好ましい。ポリアミンとしては、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、N−ヒドロキシエチルエチレンジアミンおよび4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタンが好ましい。
【0082】
分子内に活性水素及び、アニオン基またはアニオン形成性基を有する化合物としては、例えば、ジヒドロキシカルボン酸(α,α’−ジメチロールプロピオン酸、α,α’−ジメチロール酪酸など)、ジヒドロキシスルホン酸化合物〔3−(2,3−ジヒドロキシプロポキシ)−1−プロパンスルホン酸ナトリウム塩など〕、ジアミノカルボン酸(例えば、ジアミノ安息香酸など)が挙げられ、これらを中和するための塩基性化合物としては、有機塩基(例えば、トリエチルアミン、トリメチルアミンなど)、無機塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)が挙げられる。
【0083】
有機ポリイソシアネート化合物としては、例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、2,4又は2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等が挙げられる。
【0084】
前記ウレタン重合体を製造するにあたって、活性水素含有化合物、分子内に活性水素及び、アニオン基またはアニオン形成性基を有する化合物、及び有機ポリイソシアネート化合物の反応は、各成分を一度に反応させるワンショット法、又は、例えば、活性水素含有化合物(たとえば高分子ポリオール)の一部、分子内に活性水素及び、アニオン基またはアニオン形成性基を有する化合物、及び有機ポリイソシアネート化合物を反応させてイソシアネート末端のプレポリマーを生成した後、活性水素含有化合物の残部を反応させる多段法のいずれの方法によっても行なうことができる。
【0085】
上記の反応は、通常40〜140℃、好ましくは60〜120℃で行うことができる。反応はイソシアネートに不活性な有機溶媒(アセトン、トルエン、ジメチルホルムアミド等)中で行なってもよく、該有機溶媒は反応の途中又は反応後のいずれにおいて添加してもよい。
【0086】
水分散性ウレタン重合体粒子(C−2)は、上記の如くして得られる親水基を有するウレタン重合体を、塩基性化合物で中和してアニオン基を形成させた後、水中に分散又は溶解することにより得ることができる。
【0087】
また、ウレタン重合体を水中に分散又は溶解する際に、必要に応じて、アニオン性及び/又はノニオン性の界面活性剤を併用することもできる。
【0088】
本発明の熱硬化性水性塗料は、例えば、中和塩基を含む水性媒体に(A−1)成分のオリゴマー及び/又は(A−2)成分のポリエステル樹脂を溶解または分散して水性ワニスを製造し、これに(B)成分の架橋剤、さらに(C)成分の水分散性重合体粒子を加えて分散することによって調整することができる。その際、中和塩基は通常、熱硬化性水性塗料のpHが7〜9となる範囲内で使用することができる。
【0089】
本塗料中の(A)オリゴマー(A−1)及び/又はポリエステル樹脂(A−2)、(B)架橋剤並びに(C)水分散性重合体粒子の配合量は、厳密に制限されるものではなく、該塗料の用途等に応じて広い範囲で変えることができるが、一般には、熱硬化性水性塗料中の樹脂固形分100重量部を基準として、固形分として、(A)オリゴマー(A−1)及び/又はポリエステル樹脂(A−2)は5〜50重量%、好ましくは5〜40重量%の範囲内、架橋剤(B)は5〜60重量%、好ましくは10〜40重量%の範囲内、そして水分散性重合体粒子(C)は5〜80重量%、好ましくは20〜60重量%の範囲内とすることができる。
【0090】
本塗料には、前記した(A)、(B)及び(C)成分の他に、必要に応じてさらに、その他の樹脂も含有させることができる。このような樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン変性ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等を挙げることができ、なかでも、以下に述べるアクリル樹脂、ポリエステル樹脂が好適である。
【0091】
アクリル樹脂
ラジカル重合性モノマーを常法に従い溶液重合により共重合することによって合成することができるアクリル樹脂である。溶液重合に使用し得る有機溶剤としては、例えば、プロピレングリコール系、ジプロピレングリコール系等の親水性有機溶剤が好ましい。また、水分散性の観点から、該アクリル樹脂はカルボキシル基等の酸基を有しているものが好ましい。
【0092】
ラジカル重合性モノマーとしては、従来から既知のものを使用することができ、例えば、水酸基含有ラジカル重合性モノマー、カルボキシル基含有ラジカル重合性モノマー及びその他のラジカル重合性モノマーを使用することができる。
水酸基含有ラジカル重合性モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン変性ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロピル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどをあげることができる。
【0093】
カルボキシル基含有ラジカル重合性モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸などを挙げることができる。
【0094】
その他のラジカル重合性モノマーとしては、例えば、スチレン、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキセニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、アロニックスM110(東亞合成)、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシ(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルホリン、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−ビニル−2−ピロリドン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシランなどを挙げることができる。
【0095】
なお、上記において、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート又はメタアクリレート」を意味する。
【0096】
アクリル樹脂は一般に1,000〜200,000、好ましくは2,000〜100,000の範囲内の重量平均分子量を有するのが好ましい。また、アクリル樹脂は一般に10〜250mgKOH/g、好ましくは30〜150mgKOH/gの範囲内の水酸基価及び一般に10〜100mgKOH/g、好ましくは20〜60mgKOH/gの範囲内の酸価を有することができる。
【0097】
アクリル樹脂を使用する場合、その量は熱硬化性水性塗料中の樹脂固形分100重量部を基準として、固形分として、0.1〜35重量%、好ましくは1〜30重量%の範囲内とすることができる。
【0098】
ポリエステル樹脂
本塗料のポリエステル樹脂(A−2)以外の、通常、多塩基酸と多価アルコ−ルとをエステル化反応させることによって既知の方法で合成することができるポリエステル樹脂である。
【0099】
多塩基酸は1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する化合物であり、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘット酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、トリメリット酸およびこれらの無水物などをあげることができ、また、多価アルコ−ルは1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物であり、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどをあげることができる。
【0100】
また、ポリエステル樹脂として、あまに油脂肪酸、やし油脂肪酸、サフラワ−油脂肪酸、大豆油脂肪酸、ゴマ油脂肪酸、エノ油脂肪酸、麻油脂肪酸、ト−ル油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸などの(半)乾性油脂肪酸などで変性した脂肪酸変性ポリエステル樹脂も使用することができる。これらの脂肪酸による変性量は一般に、油長で30重量%以下であることが好ましい。また、安息香酸などの一塩基酸を一部反応させたものであってもよい。また、例えば、ポリエステル樹脂に酸基を導入するために、前記多塩基酸と多価アルコールのエステル化反応後、さらに、トリメリット酸、無水トリメリット酸などの多塩基酸及びそれらの無水物を反応させることもできる。
【0101】
ポリエステル樹脂は一般に1,000〜200,000、好ましくは2,000〜50,000の範囲内の重量平均分子量を有することが好ましい。また、ポリエステル樹脂は一般に10〜250mgKOH/g、好ましくは30〜150mgKOH/gの範囲内の水酸基価及び一般に10〜100mgKOH/g、好ましくは20〜60mgKOH/gの範囲内の酸価を有することができる。
【0102】
(A−2)成分以外のポリエステル樹脂を使用する場合、その量は熱硬化性水性塗料中の樹脂固形分100重量部を基準として、固形分として、0.1〜35重量%、好ましくは1〜30重量%の範囲内とすることができる。
【0103】
本塗料には、その他必要に応じて、顔料、硬化触媒、紫外線吸収剤、光安定剤、表面調整剤、劣化防止剤、流れ防止剤、沈降防止剤等の通常の塗料用添加剤を含有させることができる。
【0104】
顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、カドミウムレッド、モリブデンレッド、クロムエロー、酸化クロム、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリン顔料、スレン系顔料、ペリレン顔料などの着色顔料;タルク、クレー、カオリン、バリタ、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナホワイトなどの体質顔料;アルミニウム粉末、雲母粉末、酸化チタンで被覆した雲母粉末などの光輝性顔料などをあげることができる。
【0105】
本塗料をメタリック仕様の水性ベースコート塗料として使用する場合には、光輝性顔料及び必要に応じて着色顔料を添加することができる。顔料は前記した樹脂の一部を使用して顔料ペーストをつくり、これを残りの水性ワニスに他の成分と共に添加することができる。顔料ペーストの作製にあたっては必要に応じて適宜、消泡剤、分散剤、表面調整剤などの慣用の添加剤を使用することができる。
【0106】
顔料の配合量は、樹脂成分の固形分合計重量100重量部あたり、一般に1〜250重量部、特に3〜150重量部の範囲内が適している。
【0107】
硬化触媒としては、例えば、有機金属系、酸系及び塩基系の化合物をあげることができる。
有機金属系の化合物としては、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、酢酸リチウム、アセチルアセトン鉄(III)、2−エチルヘキサン酸亜鉛、酢酸銅、三塩化バナジウム、オクチル酸錫、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクトエート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジマレート、テトラブチル錫、ジブチル錫オキシド、テトラ−n−ブチル−1,3−ジアセチルオキシジスタノキサン、テトラ−n−プロピル−1,3−ジアセチルオキシジスタノキサン、テトラ−n−ブチル−1,3−ジラウリルオキシジスタノキサン等の金属触媒を挙げることができ、特に、オクチル酸錫、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジスタノキサン類等の有機錫系化合物が好ましく、更に、低温焼き付けが要求される場合には、ジブチル錫ジアセテートが好適に用いられる。
【0108】
酸系の化合物としては、例えば、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、ブチルリン酸、オクチルリン酸などをあげることができ、これらの酸のアミン中和物なども好適に用いられる。
【0109】
塩基系の化合物としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N−テトラメチルヘキサン−1,6−ジアミン、N−ペンタメチルジエチレントリアミン、2−メチル−1,4−ジアザビシクロ〔2,2,2〕オクタン等の化合物をあげることができる。
【0110】
硬化触媒として上記したこれらの化合物は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。硬化触媒の使用量はその種類により異なるが、樹脂成分合計固形分重量100重量部に対し、通常、0.05〜5重量部程度が好適である。
【0111】
紫外線吸収剤としては、それ自体既知のものを使用することができ、例えば、ベンゾトリアゾール系吸収剤、トリアジン系吸収剤、サリチル酸誘導体系吸収剤、ベンゾフェノン系吸収剤等をあげることができる。
【0112】
紫外線吸収剤を含有させる場合、塗料中の含有量としては、樹脂固形分総合計量100重量部に対して、通常0.1〜10重量部、特に0.2〜5重量部、さらに特に0.3〜2重量部の範囲内が耐侯性、耐黄変性等の面から好ましい。
【0113】
光安定剤としては、それ自体既知のものを使用することができ、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤をあげることができる。
【0114】
光安定剤を含有させる場合、塗料中の含有量としては、樹脂固形分総合計量100重量部に対して、通常0.1〜10重量部、特に0.2〜5重量部、さらに特に0.3〜2重量部の範囲内が耐侯性、耐黄変性の面から好ましい。
【0115】
塗膜形成方法
本塗料を適用し得る被塗物としては、特に限定されないが、例えば、自動車、二輪車、コンテナ等の各種車両の車体が好ましい。また、これら車体を形成する冷延鋼板、亜鉛メッキ鋼板、亜鉛合金メッキ鋼板、ステンレス鋼板、錫メッキ鋼板等の鋼板;アルミニウム板、アルミニウム合金板等の金属基材;各種プラスチック素材等であってもよい。
【0116】
また、被塗物としては、上記車体や金属基材の金属表面に、リン酸塩処理、クロメート処理、複合酸化物処理等の表面処理が施されたものであってもよい。更に、被塗物は、上記車体、金属基材等に、各種電着塗料等の下塗り塗膜及び/又は中塗り塗膜が形成されたものであってもよい。
【0117】
本塗料の塗装方法は、特に限定されるものではなく、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装、カーテンコート塗装などが挙げられ、これらの塗装方法でウエット塗膜を形成することができる。これらの塗装方法は、必要に応じて、静電印加されていてもよい。この中でも特にエアスプレー塗装方法が好ましい。熱硬化性水性塗料の塗布量は、通常、硬化膜厚として、10〜70μm程度となる量が好ましい。
【0118】
また、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装及び回転霧化塗装する場合には、熱硬化性水性塗料の粘度を、該塗装に適した粘度範囲、通常、フォードカップ#No.4粘度計において、20℃で15〜60秒程度の粘度範囲となるように、適宜、有機溶剤及び/又は水を用いて調整しておくことが好ましい。
【0119】
ウエット塗膜の硬化は、被塗物に本塗料を塗装した後、加熱することにより行われる。
【0120】
加熱は、公知の加熱手段により行うことができる。例えば、熱風炉、電気炉、赤外線誘導加熱炉等の乾燥炉を使用することができる。加熱温度は、通常80〜180℃、好ましくは100〜160℃の範囲内が適している。加熱時間は、特に制限されるものではないが、通常、20〜40分間程度とすることができる。
【0121】
本塗料は、自動車用塗料として好適に用いることができ、とくに、上塗りベースコート塗料としてより好適に用いることができる。
【0122】
上塗りベースコート塗料として使用するにあたっては、例えば、電着塗装及び/又は中塗り塗装が施された被塗物上に、本塗料を塗装し、該塗膜を硬化させることなく、その未硬化の塗膜上にクリヤコート塗料を塗装してベースコートとクリヤコートを同時に加熱硬化させることにより、2コート1ベーク方式によって複層塗膜を形成せしめることができる。
【0123】
また、被塗物上に中塗り塗料を塗装し、該塗膜を硬化させることなくその未硬化の中塗り塗膜上に上塗りベースコート塗料として本塗料を塗装し、さらに該塗膜を硬化させることなく、その未硬化の上塗りベースコート塗膜上にクリヤコート塗料を塗装して、中塗り、上塗りベースコート及びクリヤコートの3層の塗膜を同時に加熱硬化させることにより、3コート1ベーク方式によって複層塗膜を形成せしめることもできる。
【0124】
上記で用いられる中塗塗料としては、従来から公知の熱硬化型中塗塗料を使用することができ、具体的には、例えば、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂系などの基体樹脂にアミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロックポリイソシアネート化合物等の硬化剤を、基体樹脂が含有する反応性官能基と反応性を有する硬化剤を適宜組み合わせてなる塗料を使用することができる。上記ポリイソシアネ−ト化合物及びブロックポリイソシアネート化合物としては、例えば前記架橋剤(B)について述べたものと同じものを使用することができる。また、中塗塗料としては、環境問題、省資源等の観点から、有機溶剤の使用量の少ないハイソリッド型塗料、水性塗料、粉体塗料等を用いることもできる。また、上記3コート1ベーク方式の中塗塗料として、本塗料を使用することもできる。
【0125】
上記で用いられるクリヤコート塗料としては、従来から公知の熱硬化型クリヤコート塗料を使用することができ、具体的には、例えば、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、ウレタン樹脂系などの基体樹脂にアミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロックポリイソシアネート化合物、ポリカルボン酸又はその無水物、反応性シラン化合物等の硬化剤を、基体樹脂が含有する反応性官能基と反応性を有する硬化剤を適宜組み合わせてなる有機溶剤希釈塗料を使用することができる。上記ポリイソシアネ−ト化合物及びブロックポリイソシアネート化合物としては、例えば前記架橋剤(B)について述べたものと同じものを使用することができる。また、クリヤコート塗料としては、環境問題、省資源等の観点から、有機溶剤の使用量の少ないハイソリッド型塗料、水性塗料、粉体塗料等を用いることもできる。
【0126】
とくに、アクリル樹脂/メラミン樹脂系、アクリル樹脂/ポリイソシアネート硬化剤系、アクリル樹脂/ブロックポリイソシアネート硬化剤系又は酸基含有樹脂/エポキシ基含有樹脂系のクリヤコート塗料を好適に用いることができる。
【0127】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。しかし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、「部」及び「%」はいずれも重量基準によるものであり、また、塗膜の膜厚は硬化塗膜に基くものである。
(実施例)
オリゴマー(A−1)の製造例
(製造例1)
攪拌機、還流冷却器、水分離器及び温度計を備えた反応器に、リケマールL−71−D(理研ビタミン社製、ジグリセリンラウレート)348部及びヘキサヒドロ無水フタル酸154部を仕込み、120℃で3時間反応させて、水酸基価が223mgKOH/g、酸価が111mgKOH/g、数平均分子量が510であるオリゴマー1を得た。
【0128】
ポリエステル樹脂(A−2)の製造例
(製造例2)
攪拌機、還流冷却器、水分離器及び温度計を備えた反応器に、リケマールL−71−D348部及びヘキサヒドロ無水フタル酸77部を仕込み、120℃で3時間反応させた。その後、無水トリメリット酸154部を加え、160℃でさらに4時間反応させて、水酸基価が141mgKOH/g、酸価が50mgKOH/g、数平均分子量が2000であるポリエステル樹脂1を得た。
(製造例3)
攪拌機、還流冷却器、水分離器及び温度計を備えた反応器に、リケマールL−71−D348部及びヘキサヒドロ無水フタル酸77部を仕込み、120℃で3時間反応させた。その後、80℃に冷却し、イソホロンジイソシアネート111部を加え、さらに80℃で6時間反応させて、水酸基価が157mgKOH/g、酸価が52mgKOH/g、数平均分子量が1100であるポリエステル樹脂2を得た。
(製造例4)
攪拌機、還流冷却器、水分離器及び温度計を備えた反応器に、トリメチロールプロパン95.6部、1,6−ヘキサンジオール120.4部、ヘキサヒドロ無水フタル酸169.4部、無水コハク酸60部及びカージュラE10P 68.6部を仕込み、160℃〜230℃の間を3時間かけて昇温させた後、230℃で4時間反応させた。次いで、得られた反応生成物にカルボキシル基を付加するために、さらに無水トリメリット酸42.2部を加え、180℃で1時間反応させて、水酸基価が118mgKOH/g、酸価が49mgKOH/g、数平均分子量が1700であるポリエステル樹脂3を得た。
【0129】
架橋剤(B)の製造例
(製造例5)
温度計、サーモスタット、攪拌機、還流冷却器、滴下ポンプ等を備え付けた反応装置にスミジュールN−3300(住友バイエルウレタン社製、イソシアヌレート構造含有ポリイソシアヌレート、数平均分子量約600、イソシアヌレート含量21.6%)605部、マロン酸ジエチル413部、酢酸エチル181部を配合し、窒素気流下で28%水酸化ナトリウムのメタノール溶液を7.0部加え、60℃に12時間保持した。その後、NCO価を測定したところ、イソシアネート含有量は0.2%であった。これに酢酸エチル99部を加え、樹脂溶液を得た。この樹脂溶液505部を別の同様の反応装置に取り出し、プロピレングリコールモノプロピルエーテル450部を加え、90℃に昇温し、減圧条件下で、系の温度を80〜90℃に保ちながら2時間かけて溶剤を留出・除去し、ブロック化ポリイソシアネート硬化剤溶液624部を得た。除去溶媒簡易トラップには、エタノールが42部含まれていた。得られたブロック化ポリイソシアネート硬化剤溶液をプロピレングリコールモノプロピルエーテルで希釈し、固形分含有率80%のブロック化ポリイソシアネート硬化剤溶液1を得た。該ブロック化ポリイソシアネート硬化剤の数平均分子量は約1,800であった。
【0130】
水分散性重合体粒子(C)の製造例
(製造例6)
温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器及び滴下装置を備えた反応容器に脱イオン水145部、Newcol562SF(注1)1.2部を仕込み、窒素気流中で撹拌混合し、80℃に昇温した。次いで下記のモノマー乳化物1のうちの全量の1%及び3%過硫酸アンモニウム水溶液5.2部とを反応容器内に導入し80℃で15分間保持した。その後、残りのモノマー乳化物1を3時間かけて反応容器内に滴下し、滴下終了後1時間、熟成を行なった。その後、下記のモノマー乳化物2及び3%過硫酸アンモニウム水溶液1.5部を2時間かけて滴下し、1時間熟成した後、1.5%ジメチルエタノールアミン水溶液89部を反応容器に徐々に加えながら30℃まで冷却し、100メッシュのナイロンクロスで濾過しながら排出し、平均粒子径100nm(サブミクロン粒度分布測定装置「COULTER N4型」(ベックマン・コールター社製)を用いて、脱イオン水で希釈し20℃で測定した。)、酸価30.7mgKOH/gで水酸基価22.1mgKOH/gの水分散性アクリル重合体粒子1(固形分25.2%)を得た。
(注1)Newcol562SF;日本乳化剤社製、商品名、ポリオキシエチレンアルキルベンゼンスルホン酸アンモニウム、有効成分60%。
【0131】
モノマー乳化物1:脱イオン水94.3部、メチルメタクリレート17部、n−ブチルアクリレート80部、アリルメタクリレート3部及びNewcol562SF1.2部を混合攪拌して、モノマー乳化物1を得た。
【0132】
モノマー乳化物2:脱イオン水39部、メチルメタクリレート15.4部、n−ブチルアクリレート2.9部、ヒドロキシエチルアクリレート5.9部、メタクリル酸5.1部及びNewcol562SF 0.5部を混合攪拌して、モノマー乳化物2を得た。
【0133】
熱硬化性水性塗料の製造(水性上塗りベースコート塗料)
【実施例1】
【0134】
製造例1で得たオリゴマー1 20部に、攪拌しながらサイメル325(日本サイテックインダストリーズ社製、メチル/ブチル混合エーテル化メラミン樹脂、固形分80%)43.8部及び製造例6で得た水分散性アクリル重合体粒子1(固形分25.2%)178.6部を添加した。その後、アルミ顔料分として20部となる量のアルミペーストGX180A(旭化成社製、アルミニウムフレークペースト)を攪拌しながら添加して混合分散し、さらに、ジメチルエタノールアミン及び脱イオン水を添加してpH8.0、フォードカップNo.4による測定で20℃にて40秒の粘度となるように調製し、水性上塗りベースコート塗料1を得た。
【実施例2】
【0135】
実施例1において、オリゴマー1を製造例2で得たポリエステル樹脂1とする以外は、実施例1と同様にして調整し、水性上塗りベースコート塗料2を得た。
【実施例3】
【0136】
実施例1において、オリゴマー1を製造例3で得たポリエステル樹脂2とする以外は、実施例1と同様にして調整し、水性上塗りベースコート塗料3を得た。
【実施例4】
【0137】
実施例1において、サイメル325の量を43.8部から31.3部に変更し、さらにスーパーフレックス410(第一工業製薬社製、商品名、水性ポリカーボネ−ト系ウレタン樹脂液、固形分40%)25部を添加する以外は、実施例1と同様にして、水性上塗りベースコート塗料4を得た。
【実施例5】
【0138】
実施例1において、オリゴマー1の量を20部から10部に変更し、さらにスーパーフレックス410を25部添加する以外は、実施例1と同様にして、水性上塗りベースコート塗料5を得た。
【実施例6】
【0139】
実施例1において、オリゴマー1の量を20部から10部に変更し、サイメル325の量を43.8部から31.3部に変更して、さらに製造例5で得たブロック化ポリイソシアネート硬化剤溶液1(固形分含有率80%)12.5部及びスーパーフレックス410を25部添加する以外は、実施例1と同様にして、水性上塗りベースコート塗料6を得た。
(比較例1)
実施例1において、オリゴマー1を製造例4で得たポリエステル樹脂3とする以外は、実施例1と同様にして、水性上塗りベースコート塗料7を得た。
【0140】
塗膜形成方法(試験板の作製1)
実施例1〜6及び比較例1で得られた水性上塗りベースコート塗料1〜7について、以下のようにしてそれぞれ試験板を作製した。
(被塗物)
リン酸亜鉛化成処理を施した厚さ0.8mmのダル鋼板上に、エレクロン9600(関西ペイント社製、商品名、熱硬化性エポキシ樹脂系カチオン電着塗料)を膜厚が20μmになるように電着塗装し、170℃で30分間加熱し硬化させ、その上にアミラックTP−65−2(関西ペイント社製、商品名、ポリエステル・メラミン樹脂系自動車中塗り塗料)を膜厚35μmとなるようにエアスプレー塗装し、140℃で30分間加熱硬化させて被塗物とした。
【0141】
被塗物上に上記実施例1にて製造した水性上塗りベースコート塗料1を回転式静電塗装機を用いて吐出量300cc、回転数25,000rpm、シェ−ピングエア圧1.5kg/cm、ガン距離30cm、コンベアスピード5m/分、ブース温湿度25℃/75%で、膜厚15μmとなるように塗装し、2分間放置後、80℃で3分間プレヒートを行なった。次いでその未硬化のベースコート塗面上にマジクロンTC−71(関西ペイント社製、商品名、アクリル・メラミン樹脂系溶剤型上塗りクリヤ塗料)をフォードカップ#No.4を用いて、スワゾール1000(コスモ石油社製、石油系芳香族炭化水素溶剤)を添加して塗料温度20℃で30秒の粘度に調整して、ミニベル型回転式静電塗装機を用い、吐出量200cc、回転数40,000rpm、シェ−ピングエア圧1kg/cm、ガン距離30cm、コンベアスピード4.2m/分、ブース温湿度25℃/75%で、膜厚40μmとなるように塗装し、7分間放置した後、140℃で30分間加熱してこの両塗膜を同時に硬化させることにより試験板を作製した。
【0142】
水性上塗りベースコート塗料2〜7についても、上記水性上塗りベースコート塗料1と同様にして、塗装を行い試験板を作製した。
性能試験結果1
上記のようにして形成された各々の試験板及び水性上塗りベースコート塗料1〜7の性能試験結果を表1に示す。試験方法及び評価方法は以下の通りである。
【0143】
塗膜の平滑性:試験板の外観を目視にて評価した。
○:平滑性、ツヤ、鮮映性がすべて良好
△:平滑性、ツヤ、鮮映性のいずれかが、やや劣る
×:平滑性、ツヤ、鮮映性のいずれかが、顕著に劣る
IV値:レーザー式メタリック感測定装置(アルコープLMR−200(関西ペイント社製))を用いて測定したIVの値。IVはメタリック塗膜の白さのことで、メタリック顔料が塗面に対して平行に均一に配向するほど白くなり、メタリック感がよく、IV値が大きくなるほど白いことを示す。
【0144】
メタリックムラ:試験板のメタリックムラの具合を目視にて評価した。○:メタリックムラが認められない、△:メタリックムラが少し認められる、×:メタリックムラが多く認められる。
【0145】
塗料固形分:実施例1〜6及び比較例1で得られた塗料を2gほど試料として直径約5cmのアルミ箔カップに採取し、固形分重量濃度(%)を測定した(固形分測定条件:110℃で1時間乾燥後、測定)。
【0146】
【表1】

【0147】
塗膜形成方法(試験板の作製2)
実施例1及び比較例1で得られた水性上塗りベースコートについてはさらに以下の実施例7及び比較例2の記載にしたがって、2種類の試験板を作製した。
(被塗物)リン酸亜鉛化成処理を施した厚さ0.8mmのダル鋼板上に、エレクロン9600(関西ペイント社製、商品名、熱硬化性エポキシ樹脂系カチオン電着塗料)を膜厚が20μmになるように電着塗装し、170℃で30分間加熱して電着塗膜を形成させたものを被塗物とした。
【実施例7】
【0148】
被塗物上にWP−300T(ポリエステル樹脂/ポリイソシアネート硬化剤系水性中塗り塗料、関西ペイント社製)を膜厚35μmとなるように塗装した。2分間放置後、80℃で5分間プレヒートを行なってから、その未硬化の中塗り塗面上に実施例1で製造した水性上塗りベースコート塗料1を回転式静電塗装機を用いて吐出量300cc、回転数25,000rpm、シェ−ピングエア圧1.5kg/cm、ガン距離30cm、コンベアスピード5m/分、ブース温湿度25℃/75%で、膜厚15μmとなるように塗装し、2分間放置後、80℃で3分間プレヒートを行なった。
次いで、その未硬化のベースコート塗面上にマジクロンTC−71(関西ペイント社製、商品名、アクリル・メラミン樹脂系溶剤型上塗りクリヤ塗料)をフォードカップ#No.4を用いて、スワゾール1000を添加して塗料温度20℃で30秒の粘度に調整して、ミニベル型回転式静電塗装機を用い、吐出量200cc、回転数40,000rpm、シェ−ピングエア圧1kg/cm、ガン距離30cm、コンベアスピード4.2m/分、ブース温湿度25℃/75%で、膜厚40μmとなるように塗装し、7分間放置した後、140℃で30分間加熱して3層の塗膜を同時に硬化させることにより試験板を作製した。
(比較例2)
上記実施例7において、水性上塗りベースコート塗料1を比較例1で得た水性上塗りベースコート塗料7とする以外は、実施例7と同様にして試験板を作製した。
性能試験結果2
上記のようにして作製した2つの試験板の性能試験結果を表2に示した。試験方法及び評価方法は性能試験結果1で示した方法と同様にして試験及び評価を行なった。
【0149】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)オリゴマー(A−1)及び/又はポリエステル樹脂(A−2)、(B)架橋剤並びに(C)水分散性重合体粒子を含有する塗料であって、
前記(A−1)成分が、1分子中に1個以上の水酸基及び1個以上の長鎖炭化水素基を有する化合物(a−1)に、多価カルボン酸及び/又は多価カルボン酸無水物(a−2)を反応させて得られる30〜400mgKOH/gの範囲内の水酸基価、20〜220mgKOH/gの範囲内の酸価及び300〜2000の範囲内の数平均分子量を有するオリゴマー(A−1)であり、
前記(A−2)成分が、前記(A−1)成分にさらに多価カルボン酸及び/又は多価カルボン酸無水物(a−2)、及び/又はポリイソシアネート化合物(a−3)を反応させて得られる10〜200mgKOH/gの範囲内の水酸基価、10〜100mgKOH/gの範囲内の酸価及び400〜6000の範囲内の数平均分子量を有するポリエステル樹脂であることを特徴とする熱硬化性水性塗料。
【請求項2】
前記(a−1)成分がジグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル及び長鎖オレフィングリコールから選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性水性塗料。
【請求項3】
前記(A−2)成分における(a−2)成分が無水トリメリット酸、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、1,3−プロパンジオールビス(アンヒドロトリメリテート)及び無水ピロメリット酸から選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱硬化性水性塗料。
【請求項4】
架橋剤(B)がメラミン樹脂及び/又はブロックポリイソシアネート化合物である請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱硬化性水性塗料。
【請求項5】
水分散性重合体粒子(C)が、1〜100mgKOH/gの範囲内の酸価及び1〜100mgKOH/gの範囲内の水酸基価を有する水分散性アクリル重合体粒子(C−1)を含有するものである請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱硬化性水性塗料。
【請求項6】
熱硬化性水性塗料中の樹脂固形分100重量部を基準として、固形分として、(A)成分を5〜50重量部、(B)成分を5〜60重量部及び(C)成分を5〜80重量部含有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱硬化性水性塗料。
【請求項7】
被塗物に、請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱硬化性水性塗料をベースコート塗料として塗装し、さらに該未硬化のベースコート塗面上にクリヤコート塗料を塗装してベースコート及びクリヤコートを同時に加熱して硬化させることを特徴とする複層塗膜形成方法。
【請求項8】
被塗物に、中塗り塗料を塗装し、該未硬化の中塗り塗面上に請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱硬化性水性塗料をベースコート塗料として塗装し、さらに該未硬化のベースコート塗面上にクリヤコート塗料を塗装し、中塗り、ベースコート及びクリヤコートの3層の塗膜を同時に加熱して硬化させることを特徴とする複層塗膜形成方法。
【請求項9】
クリヤコート塗料がアクリル樹脂/メラミン樹脂系、アクリル樹脂/ポリイソシアネート硬化剤系、アクリル樹脂/ブロックポリイソシアネート硬化剤系又は酸基含有樹脂/エポキシ基含有樹脂系塗料である請求項7又は8に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれか1項に記載の方法で塗装されてなる物品。

【公開番号】特開2006−131696(P2006−131696A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−320064(P2004−320064)
【出願日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】