説明

熱硬化性白色インク組成物

【課題】太陽光に対する優れた反射率、特に、赤外光に対する優れた反射率を有し、過酷な自然環境に長期間置かれても、上記反射率の低下を防止できる硬化物が得られる熱硬化性白色インク組成物、及びこの熱硬化性白色インク組成物の硬化塗膜を有する反射シートを提供する。
【解決手段】光重合開始剤が含まれない熱硬化性白色インク組成物であって、(A)1分子中に2以上の不飽和基を有する熱硬化性化合物、(B)1分子中にアミノ基またはイミノ基を少なくとも1以上有する化合物、及び(C)平均一次粒子径0.5μm以上のルチル型酸化チタンを含有することを特徴とする熱硬化性白色インク組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性白色インク組成物、これを硬化させた硬化物及びこの硬化塗膜を有する反射シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
化石エネルギー源の燃焼時に発生する二酸化炭素の増加に起因した地球温暖化や、NOX、SOXの放出による大気汚染といった環境破壊への対策が急務となっている。そこで、近年、太陽光から直接電気を得ることができる太陽電池が、環境負荷の無い新エネルギー源として注目されている。太陽電池は複数の光起電力素子が組み合わされており、数枚〜数十枚の光起電力素子を直列、並列に配線した構造となっている。また、太陽電池は長期間にわたって自然環境中に設置されるので、光起電力素子を保護するためにカバー材料でパッケージングした太陽電池モジュールとして使用されている。
【0003】
具体的には、太陽電池モジュールは、太陽光が当たる面側から順に、ガラスや透明なプラスチック等からなる上部透明材料と、エチレン酢酸ビニル共重合体等の熱可塑性樹脂からなる封止層と、光起電力素子を直列、並列に配線した複数枚の太陽電池セルと、封止層(前記封止層と同様の層)と、太陽電池バックシートとが積層されている。
【0004】
前記太陽電池のバックシートは裏面側の保護部材として設置されるものであり、一般的に、耐衝撃性に優れた材料が使用されている。また、バックシートは、太陽電池モジュールへの入射光を有効に利用して電力変換効率を高めるために、太陽光に対して高い反射能を有することが求められている。一方で、太陽電池モジュールは、上記のように自然環境に長期間設置されるので、太陽電池バックシートには、封止層との接着性が良好で、耐候性及び耐光性等の諸特性に優れることが求められている。そこで、太陽電池モジュールを構成する封止層と貼り合わさる最内面に、酸化チタンを主成分とする白色顔料で着色されたポリアクリル酸樹脂からなる接着性塗布層を備えた太陽電池バックシートが提案されている(特許文献1)。
【0005】
しかし、太陽電池モジュールは過酷な自然環境に曝されることから、特許文献1の太陽電池バックシートでは、長期間にわたって日射、太陽熱及び湿気等の影響を受けることによって、次第に太陽光に対する反射能が劣化していくという問題があった。
【0006】
そこで、太陽光に含まれている紫外線や太陽熱による変色及び反射率の低下を抑えるための光硬化性樹脂組成物として、(A)脂環骨格エポキシ樹脂から得られ、1分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する活性エネルギー線硬化性樹脂、(B)チオール系化合物、(C)光重合開始剤、(D)希釈剤、(E)ルチル型酸化チタン、および(F)エポキシ系熱硬化性化合物を含有する感光性樹脂組成物が知られている(特許文献2)。また、高反射率を長期間にわたって維持するために、光硬化性樹脂を使用する場合には光重合開始剤を使用することが望ましいことも知られている。
【0007】
上記した光重合開始剤には、例えば、オキシム系開始剤、ベンゾイン、アセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン等を挙げることができる。しかしながら、光重合開始剤は、それ自体が薄黄色から褐色を帯びているとともに、経時的に酸化分解が進むことでも黄変していくので、上記感光性樹脂組成物では、やはり、塗膜の表面が黄色に変化して反射率が低下してしまうという問題があった。
【0008】
一方で、日射、太陽熱及び湿気等による反射能の劣化と塗膜の黄変とを抑えるだけではなく、太陽電池モジュールの電力変換効率をさらに向上させるために、太陽電池バックシートには、太陽光の赤外光に対しても高い反射能を有することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−109240号公報
【特許文献2】特開2008−211036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記事情に鑑み、本発明の目的は、太陽光に対する優れた反射率、特に、赤外光領域(波長750nm以上1mm以下、特に波長750nm以上2500nm以下)に対する優れた反射率を有し、過酷な自然環境に長期間置かれても、上記反射率の低下を防止できる硬化物が得られる熱硬化性白色インク組成物、及びこの熱硬化性白色インク組成物の硬化塗膜を有する反射シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の態様は、光重合開始剤が含まれない熱硬化性白色インク組成物であって、(A)1分子中に2以上の不飽和基を有する熱硬化性化合物、(B)1分子中にアミノ基またはイミノ基を少なくとも1以上有する化合物、及び(C)平均一次粒子径0.5μm以上のルチル型酸化チタンを含有することを特徴とする熱硬化性白色インク組成物である。
【0012】
平均一次粒子径0.5μm以上のルチル型酸化チタンを配合することで、平均一次粒子径0.5μm未満のルチル型酸化チタンを配合した場合と比較して、紫外光領域と可視光領域の反射率を損なうことなく、赤外光領域について優れた反射率を有する硬化物が得られる。あわせて、1分子中に2以上の不飽和基を有する熱硬化性化合物に、1分子中にアミノ基またはイミノ基を少なくとも1以上有する化合物を所定量配合することにより、該熱硬化性化合物の重合反応速度が、光硬化性白色インク組成物と同等程度まで速くなるのを見出したことから、本発明では、光重合開始剤を白色インク組成物に配合しないことにより、白色インク組成物の黄色への変化を低減させて、紫外光から赤外光の領域に対する光の反射率低下を抑制したものである。
【0013】
本発明の態様は、前記(A)1分子中に2以上の不飽和基を有する熱硬化性化合物が、脂環式エポキシ樹脂と不飽和モノカルボン酸との反応生成物に、飽和または不飽和の多塩基酸または多塩基酸無水物を反応させてカルボキシル基含有化合物を得、前記カルボキシル基含有化合物のカルボキシル基に、さらに1つ以上のラジカル重合性不飽和基とエポキシ基を有するグリシジル化合物を反応させて得られる化合物であることを特徴とする熱硬化性白色インク組成物である。
【0014】
本発明の態様は、前記(C)ルチル型酸化チタンの平均一次粒子径が、0.6μm以上10μm以下であることを特徴とする熱硬化性白色インク組成物である。
【0015】
本発明の態様は、さらに、(D)エポキシ基を有する化合物を含有することを特徴とする熱硬化性白色インク組成物である。本発明の態様は、前記(D)エポキシ基を有する化合物が、前記(A)1分子中に2以上の不飽和基を有する熱硬化性化合物100質量部に対して、1〜75質量部含有することを特徴とする熱硬化性白色インク組成物である。
【0016】
本発明の態様は、前記(B)1分子中にアミノ基またはイミノ基を少なくとも1以上有する化合物が、メラミンまたはメラミン誘導体であることを特徴とする熱硬化性白色インク組成物である。
【0017】
本発明の態様は、上記熱硬化性白色インク組成物を硬化させたことを特徴とする硬化物である。本発明の態様は、上記熱硬化性白色インク組成物を硬化させた反射皮膜を有することを特徴とする反射シートである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の態様によれば、平均一次粒子径0.5μm以上のルチル型酸化チタンを配合することで、太陽光に含まれる赤外光領域の光の反射率が向上するので、紫外光から赤外光の領域にわたって優れた反射率を有する硬化物が得られる。また、赤外光領域の光の反射率に優れた上記硬化物は耐光性と耐候性に優れるので、過酷な自然環境に長期間置いても、上記反射率の低下を防止できる。さらに、光重合開始剤が含まれないことにより、硬化物が経時的に黄変していくのを抑えることができる。
【0019】
本発明の態様によれば、前記(B)成分をメラミンまたはメラミン誘導体とすることで、熱硬化性白色インク組成物であっても、光重合開始剤を配合した光硬化性白色インク組成物と同程度の反応速度となるので、生産効率を維持できる。さらに、より優れた耐変色性が得られる。
【0020】
本発明の態様によれば、紫外光領域や可視光領域の光の反射率を損なうことなく、赤外光に対する反射率の向上した反射皮膜を形成できるので、太陽電池モジュールの電力変換効率に優れた反射シートが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の熱硬化性白色インク組成物の各成分について説明する。本発明の熱硬化性白色インク組成物は、光重合開始剤が含まれない熱硬化性白色インク組成物であって、(A)1分子中に2以上の不飽和基を有する熱硬化性化合物、(B)1分子中にアミノ基またはイミノ基を少なくとも1以上有する化合物、及び(C)平均一次粒子径0.5μm以上のルチル型酸化チタンを含有することを特徴とする。上記各成分の詳細は、以下の通りである。
【0022】
(A)1分子中に2以上の不飽和基を有する熱硬化性化合物
1分子中に2以上の不飽和基を有する熱硬化性化合物としては、加熱により硬化して電気絶縁性を示す熱硬化性化合物のうち、1分子中に2以上の不飽和結合を有するものであれば、特に限定されない。1分子中に2以上の不飽和基を有する熱硬化性化合物には、例えば、分子内にエチレン性不飽和基を2個以上有するカルボキシル基を含有しない化合物、分子内にエチレン性不飽和基を2個以上有するカルボキシル基含有化合物を挙げることができる。上記したカルボキシル基を含有しない化合物には、例えば、脂環式エポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸との反応生成物がある。また、上記したカルボキシル基含有化合物には、例えば、脂環式エポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸との反応生成物に、飽和または不飽和の多塩基酸または多塩基酸無水物を反応させて得られたものがある。
【0023】
光重合開始剤が含まれない本発明では、反射率、耐変色性及びはんだ耐熱性を損なうことなく、反応性を向上させる点から、上記のように反応させて得られたカルボキシル基含有化合物のカルボキシル基に、さらに1つ以上のラジカル重合性不飽和基とエポキシ基を有するグリシジル化合物を反応させて得られる、1分子中に2以上の不飽和基を有する熱硬化性化合物が好ましい。これは、グリシジル化合物のエポキシ基が前記カルボキシル基含有化合物のカルボキシル基と反応することで、ラジカル重合性不飽和基が、前記カルボキシル基含有化合物骨格の側鎖に結合するので、(A)成分である熱硬化性化合物の不飽和度が増加し、上記反応性の向上が得られるためである。
【0024】
前記脂環式エポキシ樹脂とは、脂環骨格を有する樹脂であり、骨格が脂肪族環式化合物の連鎖によって形成されているエポキシ樹脂である。脂環式エポキシ樹脂のエポキシ当量は特に限定されないが、1000以下が好ましく、100〜500が特に好ましい。
【0025】
これらの脂環式エポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸を反応させると、エポキシ基とカルボキシル基の反応によりエポキシ基が開裂して水酸基とエステル結合が生成する。
【0026】
使用するラジカル重合性不飽和モノカルボン酸は、特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸などが挙げられ、(メタ)アクリル酸が好ましく、アクリル酸が特に好ましい。
【0027】
また、脂環式エポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸との反応方法は、特に限定されず、例えば、脂環式エポキシ樹脂とアクリル酸を適当な希釈剤中で加熱することにより反応させることができる。希釈剤としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メタノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール、などのアルコール類、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素類、石油エーテル、石油ナフサ等の石油系溶剤類、セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類、カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート等の酢酸エステル類等を挙げることができる。また触媒としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどのアミン類、トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスフェートなどのリン化合物類等を挙げることができる。
【0028】
上記した脂環式エポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸との反応において、脂環式エポキシ樹脂が有するエポキシ基1当量あたり、ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸を0.7〜1.2当量反応させる。ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸が0.7当量未満であると、後続の工程の合成反応時にゲル化を起こし、樹脂の安定性が低下する。また、ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸が1.2当量を超えると、未反応のカルボン酸が多く残存するため、硬化物の諸特性(例えば耐水性等)が低下する。アクリル酸又はメタクリル酸の少なくとも一方を用いるときは、脂環式エポキシ樹脂が有するエポキシ基1当量あたり、0.8〜1.0当量反応させるのが好ましい。脂環式エポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸の反応は、加熱状態で行うのが好ましく、その反応温度は、80〜140℃が特に好ましい。反応温度が140℃を超えるとラジカル重合性不飽和モノカルボン酸が熱重合を起こして合成が困難になることがあり、また80℃未満では反応速度が遅くなって生産効率が低下するためである。
【0029】
脂環式エポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸の希釈剤中での反応において、希釈剤の配合量は、反応系の総重量に対して20〜50%が好ましい。脂環式エポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸の反応生成物は単離することなく、希釈剤の溶液のまま、必要に応じて、次の多塩基酸類との反応に供することができる。
【0030】
熱硬化性化合物にカルボキシル基含有化合物を使用する場合には、上記した脂環式エポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸との反応生成物である不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂に、多塩基酸又はその無水物を反応させる。多塩基酸または多塩基酸無水物は、脂環式エポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸との反応で生成した水酸基に反応して、樹脂に遊離のカルボキシル基を持たせる。
【0031】
多塩基酸又はその無水物は、特に限定されず、飽和、不飽和のいずれも使用できる。多塩基酸としては、例えば、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、クエン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、3−メチルテトラヒドロフタル酸、4−メチルテトラヒドロフタル酸、3−エチルテトラヒドロフタル酸、4−エチルテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、3−メチルヘキサヒドロフタル酸、4−メチルヘキサヒドロフタル酸、3−エチルヘキサヒドロフタル酸、4−エチルヘキサヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸及びジグリコール酸等が挙げられ、多塩基酸無水物としてはこれらの無水物が挙げられる。これらの化合物は単独でも2種以上を混合してもよい。
【0032】
多塩基酸または多塩基酸無水物の使用量は、脂環式エポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸との反応生成物が有する水酸基1モルに対して、アミノ基またはイミノ基との反応性の低下防止、はんだ耐熱性の低下防止の点から下限値は0.3モルであり、最終的に得られる硬化塗膜の諸特性(例えば耐水性等)の低下を防止する点から上限値は1.0モルである。
【0033】
多塩基酸は、上記した不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂に添加されて脱水縮合反応するにあたり、脱水縮合反応時に生成した水は反応系から連続的に取り出すことが好ましく、また、その反応は加熱状態で行うのが好ましく、その反応温度は、70〜130℃であることが好ましい。反応温度が130℃を超えると、脂環式エポキシ樹脂に結合されたものや、未反応モノマーのラジカル重合性不飽和基が熱重合を起こして合成が困難になることがあり、また70℃以下では反応速度が遅くなって生産効率が低下するためである。
【0034】
上記した多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂と反応させるグリシジル化合物には、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリアクリレートモノグリシジルエーテル等が挙げられる。なお、グリシジル基は1分子中に複数有していてもよい。これらの化合物は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0035】
このグリシジル化合物は、上記した多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂の溶液に添加して反応させる。グリシジル化合物は、多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂に導入したカルボキシル基1モルに対し、0.05〜0.5モル反応させ、電気絶縁性等の電気特性の点から、0.1〜0.5モル反応させるのが好ましい。また、反応温度は80〜120℃が好ましい。
【0036】
(B)1分子中にアミノ基またはイミノ基を少なくとも1以上有する化合物
1分子中にアミノ基またはイミノ基を少なくとも1以上有する化合物としては、従来公知のものであれば、いずれも使用することができ、例えば、メラミン、メラミン誘導体を挙げることができる。メラミン誘導体には、イミノ基、メチロール基、メトキシメチル基の官能基を有するアルキル化メラミン等を例示することができ、アルキル化メラミンには、例えば、下記一般式(i)
【0037】
【化1】

【0038】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6は、それぞれ相互に独立に、水素、メチロール基またはメトキシメチル基を表す)のものを挙げることができる。
【0039】
市販されているメラミン誘導体には、例えば、(株)三和ケミカル社製の「ニカラックMW−30HM」、「ニカラックMW−390」、「ニカラックMW−100LM」、「ニカラックMX−750LM」等を挙げることができる。
【0040】
(B)成分である1分子中にアミノ基またはイミノ基を少なくとも1以上有する化合物の配合量は、特に限定されないが、(A)成分である熱硬化性化合物100質量部に対して、その下限値は、硬化速度を確保する点から0.2質量部であり、反射率と耐変色性をより高める点から1.0質量部が好ましく、さらにはんだ耐熱性もより高める点から1.5質量部が特に好ましい。一方、その上限値は、耐水性の点から10質量部であり、湿中における電気特性の向上の点から5.0質量部が好ましく、高絶縁抵抗の点から3.0質量部が特に好ましい。
【0041】
(C)平均一次粒子径0.5μm以上のルチル型酸化チタン
ルチル型酸化チタンは、ルチル結晶構造を有する酸化チタン粒子であり、熱硬化性インク組成物を白色に着色する。平均一次粒子径0.5μm以上のルチル型酸化チタンを使用することで、平均一次粒子径0.5μm未満のルチル型酸化チタンを使用した場合と比較して、紫外光領域や可視光領域の光の反射率を損なうことなく、赤外光領域の光の反射率を向上させることができる。このように、本発明で使用するルチル型酸化チタンの平均一次粒子径の下限値は0.5μmであるが、インク製造時の混練容易性の点から0.6μmが好ましく、反射率の点から1.0μmが特に好ましい。一方、その上限値は特に限定されないが、塗膜外観である平滑性の点から10μmが好ましく、5.0μmが特に好ましい。
【0042】
(C)成分であるルチル型酸化チタンの配合量は、特に限定されないが、(A)成分である熱硬化性化合物100質量部に対して、その下限値は、赤外光に対する反射率を確実に向上させる点から30質量部が好ましく、50質量部が特に好ましい。一方、その上限値は、インク製造時の分散性の点から200質量部が好ましく、塗膜の耐衝撃性の点から150質量部が特に好ましい。
【0043】
本発明の熱硬化性白色インク組成物には、上記した成分(A)〜(C)の他に、必要に応じて、(D)エポキシ基を有する化合物を含有させることができる。エポキシ基を有する化合物、すなわちエポキシ化合物を配合することで、硬化物の架橋密度が上がって、十分な硬度とはんだ耐熱性を有する硬化物を得ることができる。エポキシ化合物には、例えば、エポキシ樹脂を挙げることができる。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂(フェノールノボラック型エポキシ樹脂、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、p−tert−ブチルフェノールノボラック型など)、ビスフェノールFやビスフェノールSにエピクロルヒドリンを反応させて得られたビスフェノールF型エポキシ樹脂やビスフェノールS型エポキシ樹脂、さらにシクロヘキセンオキシド基、トリシクロデカンオキシド基、シクロペンテンオキシド基などを有する脂環式エポキシ樹脂、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等のトリアジン環を有するトリグリシジルイソシアヌレート、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、アダマンタン型エポキシ樹脂を挙げることができる。これらの化合物は単独で使用してもよく、2種以上混合して使用してもよい。
【0044】
エポキシ化合物の配合量は、特に限定されないが、(A)成分である熱硬化性化合物100質量部に対して、硬化後に、十分な塗膜硬度と優れたはんだ耐熱性を得る点から1〜75質量部が好ましく、塗膜の硬化性とはんだ耐熱性のバランスの点から20〜60質量部が特に好ましい。
【0045】
本発明の熱硬化性白色インク組成物には、上記した成分(A)〜(D)の他に、必要に応じて、種々の添加成分、例えば、消泡剤、各種添加剤、溶剤などを含有させることができる。
【0046】
消泡剤には、公知のものを使用でき、例えば、シリコーン系、炭化水素系、アクリル系等を挙げることができる。各種添加剤には、例えば、シラン系、チタネート系、アルミナ系等のカップリング剤といった分散剤、アマイド、ウレア、二酸化ケイ素等のチキソ性付与剤、アセチルアセナートZn及びアセチルアセナートCr等のアセチルアセトンの金属塩、エナミン、オクチル酸錫、第4級スルホニウム塩、トリフェニルホスフィン、イミダゾール、イミダゾリウム塩並びにトリエタノールアミンボレート等の熱硬化促進剤を挙げることができる。
【0047】
溶剤は、熱硬化性白色インク組成物の粘度や乾燥性を調節するためのものであり、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メタノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール等のアルコール類、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素類、石油エーテル、石油ナフサ等の石油系溶剤、セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類、カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、エチルジグリコールアセテート等の酢酸エステル類等を挙げることができる。
【0048】
上記した本発明の熱硬化性白色インク組成物の製造方法は、特定の方法に限定されないが、例えば、上記成分(A)〜(C)および必要に応じてその他の成分を所定割合で配合後、室温にて、三本ロール、ボールミル、サンドミル等の混練手段、またはスーパーミキサー、プラネタリーミキサー等の攪拌手段により混練または混合して製造することができる。また、前記混練または混合の前に、必要に応じて、予備混練または予備混合してもよい。
【0049】
次に、上記した本発明の熱硬化性白色インク組成物の使用方法について説明する。例えば、上記のようにして得られた本発明の熱硬化性白色インク組成物を、シート状のベースフィルム上に塗工することで反射シートを製造できる。本発明の熱硬化性白色インク組成物を、シート状のベースフィルム上に塗工する方法は特に限定されないが、例えば、厚さ40μmのベースフィルムの表面を3%硫酸で処理して表面を洗浄後、洗浄した表面に、スクリーン印刷等公知の印刷方法を用いて熱硬化性白色インク組成物を所定の厚さ、例えば、硬化後の膜厚が20〜23μmとなるように塗工する。熱硬化性白色インク組成物の塗工部位は、太陽電池モジュール裏面に対向したベースフィルム表面の全面または略全面について行なう。塗工後、60〜80℃程度の温度で15〜60分間程度加熱する予備乾燥を行って、塗膜をタックフリーにする。次いで、130〜170℃程度の温度で10〜80分間ポストキュアを行うことにより、シート状のベースフィルム上に目的とする白色の反射皮膜を形成させて、反射シートを製造することができる。
【0050】
本発明の熱硬化性白色インク組成物が塗工されるベースフィルムの材料は、特に限定されないが、例えば、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリビニルフロライド(PVF)、フッ化エチレン・プロピレンコポリマー(FEP)、ポリテトラフロロエチレン(PTFE)、アラミド、ポリアミド・イミド、エポキシ、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエチレンナフタレート(PEN)、液晶ポリマー(LCP)等を挙げることができる。
【0051】
上記のように製造した反射シートは、太陽電池モジュールの裏面側、すなわち日射を受ける表面とは反対側の表面上に配置する。すると、太陽電池モジュールの発電素子に受光されずに太陽電池モジュール内を透過した太陽光が、上記反射シートの反射皮膜により反射されて、太陽電池モジュールの裏面側から再度太陽電池モジュール内部に戻されるので、太陽電池モジュールの発電効率が向上する。
【実施例】
【0052】
次に、本発明の実施例を説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、これらの例に限定されるものではない。
【0053】
実施例1〜7、比較例1〜2
下記表1に示す各成分を下記表1に示す配合割合にて配合し、3本ロールを用いて室温にて混合分散させて、実施例1〜7、比較例1〜2にて使用する熱硬化性白色インク組成物を調製した。なお、下記表1中の配合の数字は質量部を示す。
【0054】
【表1】

【0055】
なお、表1中の各成分についての詳細は以下の通りである。
(A)1分子中に2以上の不飽和基を有する熱硬化性化合物
・アロニックスM‐408:東亜合成(株)製、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート。
・サイクロマーP(ACA)Z−250:ダイセル化学工業(株)製、アクリル共重合構造の樹脂を使用したカルボキシル基含有樹脂。
(B)1分子中にアミノ基またはイミノ基を少なくとも1以上有する化合物
・MX‐750LM:(株)三和ケミカル製、メラミン誘導体(メチル化メチロールメラミン)。
(C)平均一次粒子径0.5μm以上のルチル型酸化チタン
・JR‐1000:テイカ(株)製、平均一次粒子径1.0μm。
(D)エポキシ基化合物
・EPICRON 860:大日本インキ化学工業(株)製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂。
【0056】
その他、CR‐93は石原産業(株)製のルチル型酸化チタン(平均一次粒子径0.28μm)、CR‐80は石原産業(株)製のルチル型酸化チタン(平均一次粒子径0.25μm)、KS−66は信越化学工業(株)製のシリコーン系消泡剤、R−974は日本アエロジル(株)製のチキソ性付与剤(二酸化ケイ素)である。
【0057】
試験片作成工程
厚さ1.2mmのガラス板表面を3%の硫酸で処理して洗浄した。酸洗浄した表面に、上記のように調製した熱硬化性白色インク組成物をDRY膜厚が所定の範囲となるようスクリーン印刷法にて塗布した。次に、BOX炉内にて、70℃、20分間加熱して予備乾燥を行った。予備乾燥後、熱硬化性白色インク組成物を塗布したガラス板を、BOX炉内にて、150℃、60分加熱してポストキュアを行い、硬化塗膜で被覆された試験片を作成した。
【0058】
評価
反射率(%)
「初期」:ポストキュア後の試験片について、分光光度計U‐4100((株)日立製作所製:φ60mm積分球)にて、作成した試験片の1500nm及び2000nmおける反射率を測定した。
「加温加湿後」:耐候性を評価するものであり、試験片を85℃、85%RHにて200時間放置後、分光光度計U‐4100((株)日立製作所製:φ60mm積分球)にて、作成した試験片の1500nm及び2000nmおける反射率を測定した。
「紫外線照射後」:耐光性と耐候性を評価するものであり、照射環境50℃にて、48時間、紫外線を照射(照射機は「SUV‐W151」(岩崎電気製))後、分光光度計U‐4100((株)日立製作所製:φ60mm積分球)にて、作成した試験片の1500nm及び2000nmおける反射率を測定した。
【0059】
実施例1〜7及び比較例1〜2の反射率の測定結果を表2に示す。
【表2】

【0060】
上記表2に示すように、平均一次粒子径0.5μm以上のルチル型酸化チタンを配合した実施例1〜7では、平均一次粒子径0.5μm未満のルチル型酸化チタンを配合した比較例1〜2と比較して、初期、加温加湿後及び紫外線照射後における赤外光(1500nm及び2000nm)の反射率が、いずれも向上した。従って、耐光性と耐候性に優れた反射皮膜が得られた。また、実施例2と実施例1、3〜7から、平均一次粒子径1.0μm以上のルチル型酸化チタンを配合すると、初期、加温加湿後及び紫外線照射後における赤外光の反射率が、いずれも、さらに向上した。さらに、硬化塗膜の厚さ20〜40μmの範囲で、いずれも、赤外光の反射率に優れていた。なお、メラミンを配合した実施例とメラミン誘導体を配合した実施例とは、お互いにほぼ同等の反射率特性が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、赤外光に対する優れた反射率を有し、耐光性と耐候性に優れている硬化物が得られるので、反射シート等の光反射用部材、特に、高反射率と耐変色性が要求される太陽電池モジュールのバックシートの分野で利用価値が高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光重合開始剤が含まれない熱硬化性白色インク組成物であって、
(A)1分子中に2以上の不飽和基を有する熱硬化性化合物、
(B)1分子中にアミノ基またはイミノ基を少なくとも1以上有する化合物、
及び(C)平均一次粒子径0.5μm以上のルチル型酸化チタンを含有することを特徴とする熱硬化性白色インク組成物。
【請求項2】
前記(A)1分子中に2以上の不飽和基を有する熱硬化性化合物が、脂環式エポキシ樹脂と不飽和モノカルボン酸との反応生成物に、飽和または不飽和の多塩基酸または多塩基酸無水物を反応させてカルボキシル基含有化合物を得、前記カルボキシル基含有化合物のカルボキシル基に、さらに1つ以上のラジカル重合性不飽和基とエポキシ基を有するグリシジル化合物を反応させて得られる化合物であることを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性白色インク組成物。
【請求項3】
前記(C)ルチル型酸化チタンの平均一次粒子径が、0.6μm以上10μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性白色インク組成物。
【請求項4】
さらに、(D)エポキシ基を有する化合物を含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の熱硬化性白色インク組成物。
【請求項5】
前記(D)エポキシ基を有する化合物が、前記(A)1分子中に2以上の不飽和基を有する化合物100質量部に対して、1〜75質量部含有することを特徴とする請求項4に記載の熱硬化性白色インク組成物。
【請求項6】
前記(B)1分子中にアミノ基またはイミノ基を少なくとも1以上有する化合物が、メラミンまたはメラミン誘導体であることを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性白色インク組成物。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の熱硬化性白色インク組成物を硬化させたことを特徴とする硬化物。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の熱硬化性白色インク組成物を硬化させた反射皮膜を有することを特徴とする反射シート。

【公開番号】特開2013−72005(P2013−72005A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212009(P2011−212009)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(390005223)株式会社タムラ製作所 (526)
【Fターム(参考)】