説明

熱移動装置を有するX線発生装置

【課題】電子ビームを平行にする開口および熱移動装置を有するシールド構造物をもつX線発生装置を提供する。
【解決手段】シールド構造物は,熱伝導性材料で作られ,電子源16と回転アノードターゲット20との間の放電空間に配置される。シールド構造物は電子源16に面した凹状の頂面21,アノードターゲット20に面した平坦な面23,および内側および外側壁25,27(ここで,内側壁が,外側壁27よりも実質的に一方向に長い寸法をもつ)により構成される。内側壁25は電子収集開口のまわりにある。熱移動装置はシールド構造物の傾斜部分に配置される。熱移動装置は熱伝導性材料から作られ,シールド構造物の刻みの入った内部に伝導性のあるように取り付けられた,伸長したコイル状のワイヤー30を含み,熱がシールド構造物22の流入24および流出26を通過する冷却流体に移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,高出力X線発生装置に関し,特に,回転可能なアノード組立体を有する流体冷却X線発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線検出器デジタル信号処理,イメージ再構成アルゴリズムおよび計算処理能力における最近の発展により高速で信頼性の高いヘイカルCTスキャナーが開発された。CTスキャナーが達成できる速度,迅速性はX線管の信頼性に依存する。X線管の操作は,走査の間,X線管を冷却するために,CTスキャナーを一時的に停止することにより制限される。
【0003】
在来のX線発生装置は,当業者には周知なように,真空エンベロープを含む外側ハウジングを有する。排気されたエンベロープは,軸線方向に間隔があけられたカソードおよびアノード電極を有する。X線は,タングステンまたはレニウムのような高原子番号のターゲット材での電子の急速な減速および散乱の間に成形される。電子は加熱されたタングステンフィラメントから放出され,負の電位をもつカソードと正の電位をもつアノードとの間の間隙を通過することによりエネルギーを獲得する。電子は典型的に,120-140keVのエネルギーをもって,トラックの表面に衝突する。ターゲットに衝突した電子の運動エネルギーの僅かな部分のみがX線に変換され一方で,残りのエネルギーは熱に変換される。その結果,ターゲット上の焦点スポットの材料が数マイクロ秒の露出で2400℃近くの温度に達する。最も小さいX線管の多くでは,焦点トラックといわれる大きな領域にわたってこの加熱ゾーンを広げるために,アノードを真空中で回転させる。より高性能となるように電子ビーム出力を増加させる試みはまた,この焦点トラックの温度を高く上昇させ,焦点トラックの表面において深刻なストレスにより誘導されるクラックを生じさせる。焦点トラックに,高いエネルギーをもった電子で衝撃が与えられると,これら入射電子の約50%がそこから後方へ散乱する。これら後方に散乱した電子のほとんどは,それらがもともともっていた運動エネルギーに比例してターゲットの表面から離れ,X線を生成する焦点スポットから離れたところにあるアノードに戻っていく。この後方散乱効果により生じる,オフフォーカル放射として知られる付加的な放射が,低強度であるが,イメージの質を悪くする。オフフォーカル放射はCT装置の画像化を複雑にするばかりか,X線管のターゲットを加熱する。後方散乱電子は,排気されたエンベロープの壁またはベリリウムのような低原子番号の材料で作られたX線窓でさえも衝突するのに十分なエネルギーと速度の向きをもっている。これら後者の電子は真空エンベロープおよびベリリウム製窓を加熱する。排気されたエンベロープ構造物内の要素が約350℃に加熱されると,排気されたエンベロープの外側でそれに接して循環する冷却オイルは沸騰し始め,分解する。沸騰過程は関連のないイメージを形成し,オイルの分解は,X線窓と排気されたエンベロープの壁の両方において,付着し時間とともに蓄積する炭素を形成する。
【0004】
X線がアノードターゲットに電子のよる衝撃を与えることにより発生するとき,電子のエネルギーの大半は熱に変わるが,そのような熱は流体冷媒により周囲に消散させなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
在来のX線発生装置の設計において,オイルのような,循環冷媒で,電気的に絶縁された流体は管のハウジングを通過するようにしている。特許文献1(Fetterにより米国特許)に開示された管の設計において,冷却オイルは,アノード組立体のシャフトにある通路を通って循環する。改良型では,オフフォーカル放射の効果を減ずるために,アノードターゲットのまわりに覆いが設けられている。このような設計には幾つかの利点はあるものの,覆いは電子源へと伸長し,電子ビームは覆いにある穴を通ってアノードターゲットに向かうように進む。Fetterの装置における覆いは,冷却オイルが通過できるように中空となっている。覆いは電子ビームの焦点をぼかすことになる長いドリフト領域を形成する。覆いの形状は,熱の対流移動が最も必要なところで冷却流体の速度を低下させる。さらに,管のアノードとカソードとの間の距離は管の全長を劇的に増加させることになる。
【0006】
したがって,本発明の目的は,X線発生装置の性能に関連した上記の課題を実質的に解消する改良された冷却システムをもつX線発生装置を提供することである。
【特許文献1】米国特許第4,309,637号明細書 本発明の他の目的は,有効なアノードターゲットの冷却を行うために,通過して流れる冷却流体の速度を部分的に高め,臨界的な熱交換場所の領域を広く,そして後方散乱によるオフフォーカル放射から構造物の加熱を最小にする,コイル状の熱交換装置を有するシールド構造物を提供することである。
【0007】
さらに,本発明の他の目的は,増加する出力の消散を行いながら,連続操作を可能とする,寿命の長いX線発生装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は,アノードターゲットと電子源との間に配置される冷却流体を循環するための,一対のチャンバーを有するシールド構造物をもつX線発生装置を提供することである。
【0009】
シールド構造物が,アノード組立体と電子源との間に配置される。シールド構造物は,電子ビームが通過する開口をもつボディー,当該チャンバー内で循環するための,間に隔壁がある流入および流出チャンバーを含む。流入および流出チャンバーはアノードターゲットおよび電子源にそれぞれ近くにあり,シールド構造物により発生する熱の消散を助成するために,一緒に配置された熱移動装置の近くにある。
【0010】
シールド構造物は,電子源に面する凹状の頂面,アノードターゲットに面する平坦な底面,ならびに外側および内側壁により形成されるボディーを有し,外側壁は内側壁よりも長い寸法をもち,内側壁は電子ビーム開口を画成する。シールド構造物はさらに,流体分離器を間に有する流入および流出チャンバーを含む。熱移動装置はコイルを通過して放射状に流れるようした冷却流体用のチャネルを形成する伸長したコイルワイヤーを含む。
【0011】
本発明の一実施例にしたがって,コイルは電子ビーム開口を取り囲むシールド構造物の傾斜部分内に配置されている。
【0012】
本発明の他の実施例にしたがって,熱移動装置は伸長した複数のコイルをもち,シールド構造物の内部はシールド構造物内で放射方向に配置される伸長した複数のコイルワイヤーのそれぞれを配置する複数の溝を有する。
【0013】
本発明の他の態様にしたがって,排気されるエンベロープ,電子ビームを発生する発生源,電子ビームの電子を減速し,X線を発生するアノードターゲットを有するX線発生装置にあるアノードターゲットから熱を移動する改良された方法を提供する。改良された熱移動方法は,組み入れられるコイル状の熱移動装置および電子ビームの開口をもつボディーを有するシールド組立体を組み立てる工程と,アノードターゲットと電子源との間にこの構造物を配置する工程とから成る。シールド組立体内のチャンバー内に冷却媒体を通過させて,熱を移動させる。
【0014】
本発明の前記および他の目的ならびに利点は以下の説明により明らかになろう。この説明において,好適実施例が示された添付図面が参照される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
添付図面,特に図1に排気されたエンベロープ14を有するハウジング12を含むX線発生装置10が示されている。排気されたエンベロープは電子源16およびターゲット20を有する回転可能なアノード組立体18を含む。図示のシールド構造物22がアノードターゲット20と電子源16との間に配置されている。シールド構造物22は電子源21に面した凹状の頂面21,アノードターゲット20に面した平坦な底面23,内側壁25および外側壁27を有する。シールド構造物の外側壁27は内側壁25のものよりも直線寸法が長い。シールド構造物の内側壁は電子源により発生する電子ビームが通過する開口部を画成する。図2に示されているように,シールド構造物22は電子源16に面した凹状の頂面21,および平坦な底面23により形成されるボディーをもつ。シールド構造物22は,間に流体分離器28をもつ流入チャンバー24および流出チャンバー26を含む。コイル状のワイヤー30が,図3Aに示されているように,頂部を画成するシールド部材の傾斜部分に配置されている。シールド構造物22の内部にはシールド構造物とそこを通過する冷却流体との間で熱移動の増加を行うために刻みが入っている。流体リザーバー32がハウジング12内で,シールド構造物22の下流に配置されている。ハウジングと排気されたエンベロープとの間の空間は冷却流体のために利用され得る。
【0016】
動作において,電子源16からの電子ビームはエンベロープ14とハウジング12のそれぞれの窓15および17を通って出ていくX線を発生するために,回転するアノードターゲットに衝突する。衝突する電子ビームはターゲット20を加熱する。熱はターゲット20により排気されたエンベロープ14へと放射される。シールド構造物は熱を,コイル状のワイヤー30を通して冷却流体に移動することにより,ターゲットアノードの熱負荷を実質的に減ずる。シールド構造物22内のコイル状のワイヤー30は湿った領域を増加させ,局部的にその速度,したがって,多相の伝導冷却の臨界パラメータである冷却流体の局部的な乱流の増加に役立つ。多相冷却は,加熱された表面から局部的な蒸気ポケットまたは泡を取り去り,または除去するために,高速であるが,中程度の温度の多量の流体冷媒を利用する。これらガス相の泡はより冷たい多量の流体により直ぐに液化し,正味の熱負荷はしたがって,加熱された表面から除去され,多量の流体の温度は適度の上昇となる。したがって,多量の流体相の冷媒の僅かな割合のみを蒸気相に変換する気化熱は,コイル状のワイヤーの湿った表面および“溝”の相互コイル表面の両方から熱負荷の大部分を除去する。加熱された表面全体にわたって流れる冷媒の速度が増加すると,局部的な蒸気泡は,それらが近くの泡と一緒になり,熱が逃げる蒸気相を形成する前に,流体が接した熱交換面から除去する。このことを達成するために,局所的な速度は少なくとも1.22m(4フィート)/秒,好ましくは2.44m(8フィート)/秒であるべきである。このような速度はピークとなる熱束のみの領域について要求され,他の領域では冷却システムにおいて不必要な圧力の増加を招く。コイル状のワイヤーはまた,通過する冷却流体の乱流の運動エネルギーの増加を助成する。高い乱流の運動エネルギーは,渦の形成を増加させ,湿った表面に垂直な速度勾配を増加させる(この泡および速度勾配は熱移動の改良に寄与するものである)。シールド構造物の頂部の内部または流体により冷却される側は,熱移動面にわたって流れる流れと組み合って壁厚が最小になるように,曲面をもつように作られる。シールド構造物の意図的に連結し,または内部の表面にそった最小のコイル状のワイヤーは,付加的な湿った領域を冷却されるべき表面に加え,この領域の平均的熱移動パワーの密度を減ずる。
【0017】
図3Bに示されているように,複数の伸長したコイル状のワイヤー34を,本発明の他の実施例にしたがってシールド構造物22の流出チャンバー26に組み込むことができる。コイル状のワイヤーは,銅のような熱伝導性材料,たとえばシールド構造物と同様に,形成される。コイル状の各巻き線部は図4Aおよび図4Bにそれぞれ示されているように,環状の断面をもっていてもよく,非環状の断面をもっていてもよい。シールド構造物の冷却性能を高め,熱移動領域を増加させるために,複数の溝が,伸長した複数のコイル状のワイヤーのそれぞれを配置するための,シールド構造物の凹状の頂面および平坦な底面の内部に形成されている。コイル状のワイヤーの各巻き線部は,接触部の熱伝導性を良くするために,ろう付けによりシールド構造物の内部に止め付けられている。シールド構造物内のコイル状のワイヤーの配置は設計的事項である。コイル状のワイヤーは,一つのコイルの端部から続くコイルの端部との間を間隔をあけて配置されている。
【0018】
CT X線発生管の大部分において,鉱物油が熱移動媒体として使用される。本発明の効率的な多相冷却は,ダウケ・ケミカル・カンパニーより商標SylThermとして製造された特殊な熱移動流体を使用することで高められる。SylThermは変性ポリジメチルシロキサンである。冷却流体の流路はX線発生装置の性能を高めるために臨界的なものとなっている。シールド構造物の頂部でコイル状のワイヤーを通過する流れはその周囲について一様でなければならない。流速が減少することによる局所的な“デッドスポット”は過熱を生じさせる。その理由は蒸気層が,流速が減少した場所で急激に形成され,その領域で更なる熱移動を妨げるからである。このような悪い状態を避けるために,流れは,反対方向から間があけられた二つのポートを通って大きな流入チャンバー24にまず入いることにより対称性が保持される。流出チャンバー26は同様の機能をなし,内部圧力を等しくする。流出チャンバー26から出て,流体は,二つの対称に配置されたポートから流体リザーバーに至る。結局,一様な流入および流出圧力,ならびにシールド構造物の頂部における比較的高い圧力降下により,コイル状のワイヤーを通る速度は確実にその頂部の周囲にわたって一様となる。
【0019】
二次電子の衝撃による加熱は,シールド構造物の凹状部分および頂部で生じる。このパワーは,冷却流体がシールド構造物の頂部を通過するときに,冷却流体により除去され,その結果流体の温度は上昇する。シールド構造物に衝突する後方散乱電子の軌道は図5に示されている。シールド構造物に衝突する電子の密度が構造物の頂部で最大(このことは,冷却流体が通過するコイル状のワイヤーによる熱移動が高められることを必要とする)となることがわかるであろう。流体が頂部を流れるときに,結果として生じる流体の温度の上昇は重大である。流体の過冷却のため,多量の流体の温度と局部的な飽和温度との間の温度差は多相熱移動に対して臨界的であり,最も低温の流体がシールド構造物の頂部に最初に衝突することが望ましい。したがって,流体は上述したようにシールド構造物に入り,出ていく。シールド構造物から流出した後,冷却流体は,保護ハウジングの外側の温度における過度の流体温度とならないように,シールド構造物の下流に位置するが,X線発生装置のハウジングの内側にある冷却リザーバー32に入る。シールド構造物は,X線の露出の間,加熱され,したがって限定時間の間に流体の温度を上昇させる。典型的な露出の間,シールド構造物を通る流体の温度の上昇は,約50℃となるが,排気されたエンベロープと接触するために,冷却流体の温度の上昇は5℃と10℃との間となる。システムの流体-空気の熱交換器が,熱質量を与えるための流体リザーバーなしで,流体を約15℃(入り口と出口の間での測定)に冷却するので,流体の温度は長時間の連続露出の終了まで非常に高くなる。“周回”の回数については,流体が,毎分12リットルの流量割合でかつ4リットルの全流量で,連続した露出の間システムを通過すると,流体は12秒毎に1“周”することになる。すべての周回で,温度は露出の間に,正味で約40℃ないし45℃だけ増加する。最大のパワーで,最も長い露出の間,周回の数を最も多くて一回にし,システムの全流量を増加させるために,流体リザーバーを冷却ブロックの下流ではあるがX線管のハウジングの内側に配置することが正解であることをデータが示しており,したがって,ハウジングを出る流体の温度変化は弱まる。シールド構造物は,効果的な対流の熱移動を与え,アノードターゲットの熱負荷を減ずる後方散乱電子を防ぎ,その結果実質的なオフフォーカル放射を減ずる。計算では,(72kWのパワーで)X線発生装置の最大の熱束は,シールド構造物の内壁では約1500watts/sqで,シールド構造物の傾斜部分では600watts/sqで,その凹状部分では350watts/sqとなっている。アノードターゲットに面したシールドの平坦な部分はアノードターゲットからの熱放射により僅かなパワーを受け,後方散乱電子により熱負荷への僅かな寄与を受ける。
【0020】
好適実施例において,電子源とアノードターゲットとの間の電位は従来技術のように分割されていないが,アノード接地の概念は使用できる。それはより効率的なアノードターゲットの新しい冷却法を提供する。排気されたエンベロープがアノードターゲットと同じ電位にあるとき,後方散乱電子が全エネルギーをもって排気されたエンベロープおよびX線窓に衝突するという場合がなくなる。本発明のシールド構造物がアース電位にあることにより,そこで消散するパワーの実質的な増加を可能とする。X線発生装置の最大のパワーは約72kWであるが,約27kWのパワーがシールド構造物により処理される。X線発生装置のこのような設計により,露出の間,熱をシールド構造物から冷却流体に移動させることができる。電子源とアノードターゲットの間に組み込まれるシールド構造物は二次電子により引き起こされる破壊的な加熱からX線窓を保護し,コイル状のワイヤーにより冷却流体への熱伝導は高められる。構造物の凹状形状により,構造物全体にわたって入射電子により生じるパワーを効果的に放散することが可能となり,その結果どの領域も,利用可能な冷却手段で実際上処理できる以上のパワー密度を受けることがない。本発明が,説明した特定の例に限定されるものではないことは理解されよう。請求の範囲に記載された発明の思想から逸脱することなく種々のものに設計変更できる。X線発生装置の性能を強化するために,シールド構造物に選択されたコーティングを適用できる。電子源16に面する凹状の頂面はより効果的な電子の収集のために原子番号の低い材料でコートされている。アノードターゲット20に面する底面はターゲットからの熱移動を増加させるために,高い放射率をもつ材料でコートされている。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は本発明を組み入れたX線発生装置の断面図である。
【図2】図2はシールド構造物を示す本発明の一部切り欠きされた略示図である。
【図3A】図3Aはコイル状の熱移動ワイヤーが組み込まれたシールド構造物の一部切り欠きされた略示図である。
【図3B】図3Bはここに組み込まれた複数のコイル状のワイヤーを有するシールド構造物の一部切り欠きされた略示図である。
【図4A】図4Aは環状の断面図をもつコイルを有するコイル状のワイヤーをもつシールド構造物の頂部の拡大された,部分切り欠き略示図である。
【図4B】図4Bは非環状の断面図をもつコイルを有するコイル状のワイヤーをもつシールド構造物の頂部の拡大された,部分切り欠き略示図である。
【図5】図5は本発明のシールド構造物をもつ排気されたエンベロープ内での後方散乱電子分布の略示断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線発生装置であって,
排気されるエンベロープと,
該エンベロープ内に配置され,環状のアノードターゲットを有するアノード組立体と,
前記エンベロープ内で,前記アノードターゲットの近傍に固着される,X線を形成するために,前記ターゲットの表面で電子ビームを発生するための電子源と,
前記アノード組立体と電子源との間に配置されるシールド構造物と,
を有し,
前記シールド構造物が,前記アノード組立体からの熱の消散を助成する,一緒に配置される熱移動装置と,電子ビームが通過する開口とを有し,前記熱移動装置がコイル状のワイヤーを含み,これにより熱が前記コイル状のワイヤーを通過する冷却流体に移動する,
ところのX線発生装置。
【請求項2】
前記シールド構造物がボディーを有し,該ボディーが前記電子源に面する頂面,前記アノードターゲットに面する底面,外壁および内壁から構成され,前記外壁が前記内壁よりも一方向に長く,前記内壁が前記開口を画成する,請求項1に記載のX線発生装置。
【請求項3】
前記シールド構造物が,間に流体分離器をもち,当該シールド構造物内で冷却流体を循環させる流入および流出チャンバーを含み,前記流入チャンバーの断面が前記流出チャンバーの断面より実質的に大きい,請求項2に記載のX線発生装置。
【請求項4】
前記流体分離器が,前記冷却流体が前記コイル状のワイヤーを通って放射方向に流れるようにするために,前記コイル状のワイヤーの外径に等しい内径を有する,請求項3に記載のX線発生装置。
【請求項5】
さらに,前記エンベロープとハウジングとの間で,前記シールド構造物の下流に形成される流体リザーバーを有する,請求項4に記載のX線発生装置。
【請求項6】
前記流入および流出チャンバーがそれぞれ,対称的に配置された一対の間隔があいた入口ポート,および一対の間隔があいた出口ポートを有し,それらポートが前記流体を二方向に前記流入および出口チャンバーへと連続的に向け,そして前記冷却流体を前記流体リザーバーにより受け入れる,請求項5に記載のX線発生装置。
【請求項7】
前記冷却流体が前記シールド構造物の傾斜部分内で一様な部分をもつ,請求項6に記載のX線発生装置。
【請求項8】
前記冷却流体が変性ポリジメチルシロキサンである,請求項7に記載のX線発生装置。
【請求項9】
前記凹状の頂面の内部に,前記シールド構造物の冷却面を増加させるための刻みが入っている,請求項1に記載のX線発生装置。
【請求項10】
X線発生装置であって,
保護ハウジングと,
該ハウジングに組み込まれた,排気されるエンベロープと,
該エンベロープ内に配置される,回転可能なアノードターゲットと,
該アノードターゲットから間隔があけられた電子源と,
前記電子源およびアノードターゲットをそれぞれ異なる電位に保持する電力源と,
前記回転可能なアノードと電子源との間に配置されるシールド構造物であって,前記電子源に面する凹状の頂面,前記アノードターゲットに面する平坦な底面,および電子ビームを平行にする開口を取り囲む傾斜部分を有し,前記傾斜部分が前記シール構造物の頂部を形成するところのシールド構造物と,
前記シールド構造物の前記頂部内に配置されるコイル状のワイヤーと,
から構成され,
動作中,熱が前記コイル状のワイヤーを通過する冷却流体に移動する,X線発生装置。
【請求項11】
前記アノードターゲットがアース電位である,請求項10に記載のX線発生装置。
【請求項12】
前記シールド構造物がアース電位である,請求項11に記載のX線発生装置。
【請求項13】
前記シールド構造物の電位が前記アノードターゲットおよび電子源の電位の中間である,請求項10に記載のX線発生装置。
【請求項14】
前記シールド構造物が熱伝導性材料により作られる,請求項12に記載のX線発生装置。
【請求項15】
前記シールド構造物が銅により作られる,請求項14に記載のX線発生装置。
【請求項16】
前記シールド構造物の前記凹状の頂面が前記シールド構造物の前記開口内での電子の収集を高める材料でコートされ,前記シールド構造物の前記平坦な底面が前記アノードターゲットからの熱の移動を高める材料でコートされる,請求項15に記載のX線発生装置。
【請求項17】
前記シールド構造物がさらに,前記シールド構造物の前記頂面および底面に隣接し,隔壁により分離される第一および第二のチャンバーを含み,各チャンバーが前記冷却流体を各チャンバーへ反対向きに向ける,一対の間隔があけられたポートを有する,請求項16に記載のX線発生装置。
【請求項18】
さらに,前記保護ハウジングと前記エンベロープとの間に形成され,前記シールド構造物の下流でかつそこと連通する流体リザーバーを有する,請求項17に記載のX線発生装置。
【請求項19】
前記コイルを通過する前記冷却流体の流量が前記シールド構造物の前記頂部の熱移動領域にそって一様な分布をもつ,請求項18に記載X線発生装置。
【請求項20】
前記シールド構造物がさらに,そこで放射方向に配置される複数の伸長したコイル状のワイヤーを含む,請求項19に記載のX線発生装置。
【請求項21】
前記コイル状のワイヤーが熱伝導性材料から作られる,請求項20に記載のX線発生装置。
【請求項22】
前記複数のコイル状のワイヤーの各コイルが円形状の断面を有する,請求項21に記載のX線発生装置。
【請求項23】
前記複数のコイル状のワイヤーの各コイルが非円形状の断面を有する,請求項21に記載のX線発生装置。
【請求項24】
前記シールド構造物の内部表面が複数のコイル状のワイヤーのそれぞれを配置し,伝導性のある取付を行うための複数の溝を有する,請求項21に記載のX線発生装置。
【請求項25】
X線発生のための電子を減速する回転可能なアノードターゲットから離れて固着される,電子ビームを発生する電子源を有する,排気されるエンベロープから構成されるX線発生装置において,X線発生装置の動作中に,アノードターゲットにより形成される熱を,アノードターゲットから移動させる方法であって,
前記アノードターゲットと前記電子源との間に配置され,前記電子ビームが通過する開口をもつボディーおよび分割チャンバーを有するシールド組立体の前記分割チャンバーに冷却流体を通過させる工程からなる方法。
【請求項26】
前記シールド組立体の前記ボディーが,前記電子源に面する凹状面,前記アノードターゲットに面する平坦な底面,内および外壁ならびに前記開口を画成する前記内壁内にある頂部を有し,冷却流体を循環させるための前記分割チャンバーが,間に設けられた流体分離器により流入および流出チャンバーを有する,請求項25に記載の方法。
【請求項27】
さらに,前記シールド組立体内に,複数の熱移動装置が配置されている,請求項26に記載の方法。
【請求項28】
少なくとも一つの熱移動装置が熱伝導性材料により作られるコイル状のワイヤーである,請求項26に記載の方法。
【請求項29】
X線発生のための電子を減速する回転可能なアノードターゲットから離れて固着される,電子ビームを発生する電子源を有する,排気されるエンベロープから構成されるX線発生装置において,X線発生装置の動作中に,アノードターゲットにより形成される熱を,アノードターゲットから移動させる方法であって,
電子源とアノードターゲットとの間にボディーを有するシールド組立体を構成する工程と,
電子源とアノードターゲットからの電子ビームが通過する,シールド組立体のボディーにある開口を形成する工程と,
開口に隣接し,少なくとも部分的に電子源に向く電子収集表面を設ける工程と,
シールド組立体から冷却流体に熱を移動するために,冷却流体がシールド組立体の少なくとも一部を通過して循環できるようにする,少なくとも一つの流体チャネルを形成する工程と,
を含む方法。
【請求項30】
さらに流体チャネル内に,少なくとも一つの熱移動装置を配置する工程を含む,請求項29に記載の方法。
【請求項31】
熱移動装置が熱伝導性材料から作られたコイル状のワイヤーである,請求項30に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−66402(P2006−66402A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−275921(P2005−275921)
【出願日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【分割の表示】特願平10−500602の分割
【原出願日】平成9年5月16日(1997.5.16)
【出願人】(503427245)バリアン・メディカル・システムズ・テクノロジーズ・インコーポレイテッド (25)
【氏名又は名称原語表記】Varian Medical Systems Technologies, Incorporated
【住所又は居所原語表記】3100 Hansen Way,Palo Alto,California 94304,the United States of America
【Fターム(参考)】