説明

熱絶縁層およびそれらを含む直接熱画像化部材

熱絶縁層によって分離された呈色層を備えている多色熱画像化部材であって、表面と接触する熱印刷ヘッドでアドレッシングされることにより、画像を形成可能である多色熱画像化部材を記載する。熱絶縁層は、呈色層の少なくとも部分的に独立したアドレッシングを維持するように、できる限り薄く設計され、かつ印刷の前にも後にも不安定にならないように、または温度もしくは湿度の変化を受けた時に熱画像化部材の寸法変化を生じないように調合される。そのような熱絶縁層を製造するための被覆組成物も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の援用)
本願は、米国特許出願第11/397,251号(2002年7月23日出願、名称「Imaging System」)の一部継続出願であり、該出願は、米国特許出願第10/806,749号(2004年3月23日出願、現在は米国特許第7,166,558号)の継続出願であり、該出願は、米国特許出願第10/157,432号(2002年5月20日出願、現在は米国特許第6,801,233号)の分割出願であり、該出願は、米国仮特許出願第60/294,486号(2001年5月30日出願)および第60/364,198号(2002年3月13日出願)の利益を主張する。これらの開示は、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
本願は、同一人に譲渡された以下の米国特許出願および米国特許に関連する。それらの開示は、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0003】
米国特許第7,008,759 B2号。該特許は、発明における使用のための呈色組成物を記載し、請求している。
【0004】
米国特許第7,176,161 B2号。該特許は、発明における使用のための呈色組成物を記載し、請求している。
【0005】
米国特許第7,282,317 B2号。該特許は、発明における使用のための呈色組成物を記載し、請求している。
【0006】
米国特許出願第11/400734号(2006年4月6日出願)。該出願は、発明における使用のための画像化方法を記載し、請求している。
【0007】
米国特許第7,408,563号。該特許は、発明における使用のための画像化方法を記載し、請求している。
【0008】
米国特許出願第12/022955号(2008年1月30日出願、名称「Printhead pulsing techniques for multicolor printers」)。
【0009】
米国特許出願第12/022969号(2008年1月30日出願、名称 「Thermal Imaging Members and Methods」)。
【0010】
米国特許出願第12/343,234号(2008年12月23日出願、名称「Novel Color−forming Compounds and Use Thereof in Imaging Members and Methods」)。
【0011】
国際出願第PCT/US2009/004436号(本願と同日出願、名称「Optical Disc with Thermally−Printable Surface and Compression−Resistant Layer」)。
【0012】
(発明の分野)
本発明は、一般に、熱画像化に関し、より具体的には、多色熱画像化部材内の熱の拡散速度を制御するための熱絶縁層、およびそのような熱絶縁層を備える画像化部材に関する。
【背景技術】
【0013】
直接熱画像化は、一般的に最初は無色である少なくとも1つの呈色層を担持する基材が、熱印刷ヘッドとの接触によって加熱されて画像を形成する技術である。直接熱画像化では、インク、トナー、または熱転写リボンは不要である。むしろ、画像を形成するために必要とされる化学反応は、画像化部材自体の中に存在する。直接熱画像化は、一般に白黒の画像を作製するために使用され、しばしば、例えばラベルおよび購入の際のレシートの印刷に用いられる。先行技術には、多色直接熱印刷を達成しようとする数多くの試みが記載されてきた。種々のカラー直接熱画像化方法の考察は、特許文献1に提供されている。
【0014】
前述の特許に記載されている好適な直接熱画像化部材は、3つの呈色層を備え、それぞれが減法混色の原色のうちの1つを提供し、かつ単一の熱印刷ヘッドによって印刷されるように設計されている。最上位の呈色層は、画像化部材の表面が比較的に高い温度に加熱された時に、比較的に短時間で発色し、中間の呈色層は、画像化部材の表面が中間の温度に加熱された時に、中間の時間長さで発色し、最下位の呈色層は、画像化部材の表面が比較的に低い温度に加熱された時に、比較的に長時間で発色する。呈色層を分離するのは、熱絶縁層であり、その厚さ、熱伝導性、および熱容量は、画像化部材の表面の加熱条件の適切な選択によって所望の色を提供するために、呈色層内に到達する温度が制御され得るように選択される。
【0015】
熱絶縁層の組成物は、理想的には、呈色層における色の形成に関与する化学反応を損なわず、また最終画像の安定性も低下させないように選択される。
【0016】
各呈色層は、一般的に、結晶形態では無色であるが、非結晶形態では有色である、染料前駆体を含む。色が形成される、またはその呈色の程度が達成される温度を調整するために、熱溶媒または現像剤等の材料が呈色層の中に組み込まれ得る。
【0017】
印刷して画像を形成する時の熱画像化部材の加熱中に、または画像が形成される前または後の画像化部材の長期間の貯蔵中に、呈色層内に最初に組み込まれた成分が、その層から隣接する層の中に移行する場合がある。このような成分の移行は、以下にさらに詳細に論じるように、未印刷領域の不要な呈色、または呈色層の活性化温度もしくは呈色の程度の変化等の問題を生じる場合がある。また、隣接する層の中の材料が、呈色層の中に移行して、その性能を低下させる可能性もある。
【0018】
従来の最先端の技術では、呈色層から絶縁層の中への、または絶縁層から呈色層の中への成分の移行を妨げるために、障壁層を提供することが必要であった。そのような付加的な障壁層は、以下に詳細に論じるように、熱画像化部材を製造するためのプロセスに複雑さをもたらし、また、望ましくない物理的性質を最終製品に与え得る。付加的な障壁層の必要性は、性質を改善した熱絶縁層によって取り除かれることになり、よって、熱絶縁層と隣接する層との間の成分の移行が妨げられることになり、または、そのような移行が生じた場合に、いかなる好ましくない結果ももたらさない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】米国特許第6,801,233号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
したがって、本発明の目的は、熱絶縁層によって分割された、熱印刷ヘッドでアドレッシングして画像を形成することができる、少なくとも2つの呈色層(color−foming layer)を備える、多色熱画像化部材を提供することである。
【0021】
本発明の別の目的は、各色を、単独で、または他の色とともに選択可能な割合で印刷することができる、そのような多色熱画像化システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
一実施形態において、熱画像化部材は、(A)第1および第2の向かい合った表面を有する基材と、(B)基材の第1の表面によって担持された第1および第2の呈色層とを含む。第1の呈色層は、第2の呈色層よりも基材の第1の表面に近い。熱画像化部材はまた、(C)第1および第2の呈色層の間の熱絶縁層も含む。熱絶縁層は、少なくとも50重量%の重合体ラテックス材料と、少なくとも80℃のガラス転移温度を有する少なくとも5重量%の有機材料とを含む。
【0023】
別の実施形態において、熱絶縁層を製造するための被覆組成物は、少なくとも20重量%の水性ラテックス重合体材料と、20重量%未満の疎水的に改質されたポリ(ビニルアルコール)とを含む。1000s−1で測定された被覆組成物の粘度は、50mPa・sよりも大きく、流動挙動指数nは、0.8〜1の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、多色熱画像化部材の実施形態の一部を概略的に表した、側断面図である。
【図2】図2は、多色熱画像化部材の実施形態の、別個の色をアドレッシングするために必要とされる相対的な時間および加熱温度を示す、グラフ図である。
【図3】図3は、多色熱画像化部材の実施形態の一部を概略的に表した、側断面図である。
【図4】図4は、層構造の構成成分層の寸法変化によって歪められた時の、層構造の実施形態の一部を概略的に表した、側断面図である。
【図5】図5は、多色熱画像化部材の好適な実施形態の一部を概略的に表した、側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、熱絶縁層の役割が理解され、それらの性質の要件が十分に認識され得る、本発明の熱画像化部材の印刷の構造および方法を十分に詳しく論じる。
【0026】
ここで、図1を参照すると、透過性、吸収性、または反射性とすることができる、基材102と、加熱した時にそれぞれシアン、マゼンタ、および黄色の呈色を生成する、3つの呈色層(color−foming layer)104、108、および112と、熱絶縁層106および110と、印刷プロセス中に画像化部材の表面を保護し、かつ潤滑を提供する、オーバーコート層114とを含む、熱画像化部材100が示されている。
【0027】
各呈色層は、本明細書で活性化温度と称される特定の温度まで加熱された場合に、色を、例えば最初の無色から有色に変化させることができる。
【0028】
任意の順序の呈色層の色を選択することができる。1つの好適な色順序は、前述した通りである。別の好適な順序は、3つの呈色層104、108、および112が、それぞれ、黄色、マゼンタ、およびシアンを提供するものである。
【0029】
基材102上に配置される全ての層は、色形成の前は実質的に透明である。基材102が反射性である(例えば、白い)時、画像化部材100上に形成される有色画像は、基材102によって提供される反射背景に対するオーバーコート114を通して見られる。基材上に配置される層の透過性は、呈色層のそれぞれの印刷される色の組み合わせが見られ得ることを確実にする。
【0030】
熱画像化部材が少なくとも3つの呈色層を含む本発明の好適な実施形態では、全ての呈色層を基材の同じ側に配置し得、または呈色層のうちの2つ以上を基材の片側に配置し、1つ以上の呈色層を基材の反対側に配置し得る。
【0031】
呈色層は、2つのパラメータ、すなわち、熱画像化部材の表面の温度、およびその温度での加熱時間または持続時間を変化させることによって、少なくとも部分的に独立してアドレッシングされる。これらのパラメータは、米国特許出願第12/022,955号で詳細に論じられているように、画像化部材100と熱接触している熱印刷ヘッドの抵抗加熱素子に供給する電力の大きさおよび持続時間を調整することによって制御することができる。このようにして、多色画像化部材の各色は、単独で、または他の色とともに選択可能な割合で印刷することができる。
【0032】
印刷時間、利用可能な印刷電力、および他の因子に応じて、呈色層のアドレッシングの種々の程度の独立性を達成することができる。「独立して」という用語は、1つの呈色層を印刷することで、一般的に、他の呈色層の中で、概して、非常に小さいが、目に見える光学密度の変化をもたらさない(例えば、密度<0.05)場合を指すために使用される。同様に、「実質的に独立した」カラー印刷という用語は、別の呈色層または複数の呈色層が呈色する際の故意ではないまたは意図的ではない変化が、多色写真術における画像間の呈色に典型的なレベルである、目に見える密度の変化をもたらす(例えば、密度<0.2)場合を指すために使用される。呈色層の「部分的に独立した」アドレッシングという用語は、アドレッシングされている層における最大密度の印刷が、0.2よりも高いが1.0よりも低い密度量で、別の呈色層または複数の呈色層の呈色の変化をもたらす場合を指すために使用される。「少なくとも部分的に独立して」という句は、前述した全ての程度の独立性を含む。
【0033】
熱画像化部材の呈色層は、色の変化を受けて、画像化部材に所望の画像を提供する。色の変化は、無色から有色、有色から無色、またはある色から別の色への変化であり得る。「呈色層」という用語は、特許請求の範囲を含む、本明細書の全体を通して使用される場合、全てのそのような実施形態を含む。色の変化が無色から有色である場合において、その色の異なるレベルの光学密度(すなわち、異なる「グレーレベル」)を有する画像は、実質的に無色である最小密度Dminから、最大量の色が形成される最大密度Dmaxに、その画像の各画素における色の量を変化させることによって得られ得る。色変化が有色から無色である場合、所与の画素における色の量をDmaxからDminに減少させることによって、異なるレベルが得られ、理想的には、Dminは、実質的に無色である。
【0034】
本発明の好適な実施形態によれば、呈色層104、108、および112のそれぞれは、部材の最上位の層、すなわち図1に示される部材の随意のオーバーコート層114等の、単一の表面と接触している熱印刷ヘッドで熱を印加することによって、独立してアドレッシングされる。第3の呈色層112(基材102から数えた時。すなわち熱画像化部材の表面に最も近い呈色層)の活性化温度(Ta3)は、第2の呈色層108の活性化温度(Ta2)よりも高く、次に、第1の呈色層104の活性化温度(Ta1)よりも高い。熱印刷ヘッドからより遠い距離での呈色層の加熱およびその後の冷却の遅れは、熱が熱絶縁層106および110を通して拡散するために必要とされる時間だけ提供される。熱印刷ヘッドにより近い呈色層の活性化温度が、熱印刷ヘッドからより遠くにある呈色層の活性化温度よりも実質的に高くなる可能性があり得るが、熱絶縁層より下側の層のより低い温度は、熱印刷ヘッドからより遠くにある1つまたは複数の呈色層を活性化することなく、熱印刷ヘッドにより近い呈色層を、それらの活性化温度を超えて加熱することを可能にする。したがって、最上位の呈色層112をアドレッシングする場合、熱印刷ヘッドは、比較的に高い温度であるが、短時間だけ加熱され、よって、画像化部材の他の呈色層には、呈色層108および104のいずれにも画像情報を提供するための十分な熱が伝達されない。以下にさらに詳細に論じるように、熱絶縁層106および110の厚さおよび熱拡散率の組み合わせは、この要件を満たすように選択される。
【0035】
下位の呈色層、すなわち、基材102により近い呈色層(この場合、呈色層108および104)の加熱は、十分な期間にわたって、上位の呈色層をそれらの活性化温度よりも低く保ち、熱がそれらを通して拡散して下位の呈色層に到達することを可能にするような温度に、熱印刷ヘッドを維持することによって達成される。このようにして、下位の呈色層が画像化されている時の、上位の呈色層の呈色は回避される。
【0036】
本発明の方法で使用される熱印刷ヘッドは、一般的に、印刷される画像の幅全体にわたって延在する、抵抗体の実質的に直線のアレイを含む。
【0037】
画像化部材は、一般的に、電流をこれらの抵抗体に印加することによって熱のパルスを提供しながら、印刷ヘッド上の抵抗体のラインに直角な方向に運搬する間に画像化される。熱印刷ヘッドによって熱を熱画像化部材10に印加することができる期間は、一般的に、画像の1ラインあたり約0.001〜約100ミリ秒の範囲である。下限は、熱画像化部材と熱印刷ヘッドとを備えるシステムの、電子回路の制約によって、または熱応答時間によって画定される一方で、上限は、相応な時間の長さで画像を印刷するための必要性によって設定される。画像を構成するドットの間隔は、一般に、運動方向に平行および直角などどちらの方向にも1インチあたり100〜600の範囲であるが、必ずしもこれらの方向のうちのそれぞれにおいて同じであるというわけではない。
【0038】
本発明による呈色層の加熱は、米国特許第7,408,563号に詳細に論じられているように、単一の印刷ヘッドの単一のパスによって、または単一の熱印刷ヘッドの1つを超えるパスによって、または1つを超える熱印刷ヘッドのそれぞれの単一のパスによって達成し得る。
【0039】
画像化部材100の加熱は、好ましくは、熱印刷ヘッドを使用して行われるが、本発明の実践に際して、熱画像化部材の制御された加熱を提供する任意の方法を使用し得る。例えば、変調された光源(レーザ等)を使用し得る。この場合、当技術分野でよく知られているように、レーザによって放射される波長の光のための吸収体を、熱画像化部材の中に、または画像化部材の表面と接触させて提供しなければならない。
【0040】
熱画像化部材100を加熱するために熱印刷ヘッド(または他の接触加熱要素)を使用した時、熱は、熱印刷ヘッドと接触している層(一般的に、オーバーコート層114)から熱画像化部材の大部分の中に拡散する。加熱のために光源を使用した時には、光の吸収体を含む1つまたは複数の層が、光がこれらの層の中で熱に変換されるように加熱され、熱は、これらの層から熱画像化部材の全体を通して拡散する。吸収層から光源を分離する熱画像化部材の層が、吸収される波長の光を透過するのであれば、光吸収層が画像化部材の表面にある必要はない。以下の考察では、直接的に加熱される層がオーバーコート層114であり、熱は、この層から熱画像化部材の中に拡散することを前提としているが、熱画像化部材10の1つまたは複数の層が加熱されるものにはどれでも同様の議論が適用される。
【0041】
図2は、呈色層104、108、および112をアドレッシングするために必要とされる熱画像化ヘッドの温度および加熱時間を示すグラフ図であるが、これらの層は、全てが最初は周囲温度であることを前提としている。図2のグラフの軸は、加熱時間の対数、および熱印刷ヘッドと接触している画像化部材100の表面における絶対温度の逆数を示す。領域200(比較的に高い印刷ヘッド温度および比較的に短い加熱時間)は、呈色層112の画像化を提供し、領域202(中間の印刷ヘッド温度および中間の加熱時間)は、呈色層108の画像化を提供し、そして領域204(比較的に低い印刷ヘッド温度および比較的に長い加熱時間)は、呈色層104の画像化を提供する。呈色層104を画像化するために必要とされる時間は、呈色層112を画像化するために必要とされる時間よりも大幅に長い。
【0042】
呈色層について選択される活性化温度は、一般に、約90℃〜約300℃の範囲である。第1の呈色層104の活性化温度(Ta1)は、好ましくは、発送中および貯蔵中の画像化部材の熱安定性を維持しながら、可能な限り低くし、好ましくは、約90℃以上である。第3の呈色層112の活性化温度(Ta3)は、好ましくは、本発明の方法に従って、それを活性化することなく、この層を通しての加熱によって、第2の呈色層108および第3の呈色層104の活性化を可能にすることを維持しながら、可能な限り低くし、好ましくは、約200℃以上である。第2の呈色層108の活性化温度(Ta2)は、Ta1とTa3との間であり、好ましくは、約140℃〜約180℃の間である。
【0043】
本発明の1つの実施形態において、呈色層は、米国特許第7,176,161号に詳述されているように、結晶形態では無色であるが、非結晶形態では有色である、材料(以下「結晶呈色材料」と称する)を含む。第3の呈色層112は、前述の米国特許第7,176,161号に記載されているように、この層では、活性化温度が可能な限り加熱時間とは無関係であることが重要であるので、好ましくは、結晶呈色材料を除いて、いかなる他の可融性材料も含まない。
【0044】
熱画像化部材の特定の好ましい実施形態において、結晶可融性材料である1つ以上の熱溶媒が、第1および第2の呈色層に組み込まれる。結晶熱溶媒は、加熱されると融解し、その後に結晶呈色材料を溶解または液化し、それによって、それを非結晶形態に変換して、色の変化(すなわち、画像)を提供する。熱溶媒は、有利なことに、呈色層が結晶呈色材料自体の融解点よりも低い活性化温度を有することが必要とされる時に使用し得る。そのような場合、結晶呈色材料の融解点ではなく、熱溶媒の融解点は、呈色層の活性化温度を確立し得る。
【0045】
当業者には、結晶材料の混合物を含む呈色層の活性化温度が、個々の成分のうちのいずれの融解点とも異なり得ることが明らかであろう。2つの結晶成分の共融混合物は、例えば、分離の際にどちらの成分よりも低い温度で溶解する。逆に、融解熱溶媒中の結晶呈色材料の可溶化速度が遅い場合、混合物の活性化温度は、熱溶媒の融解点よりも高くなり得る。結晶呈色材料および熱溶媒の混合物の活性化温度は、混合物の色が変化する温度、すなわち、十分な量の結晶呈色材料が融解した熱溶媒中に溶解して可視的な色の変化を提供する温度であることを想起されたい。前述の考察から、結晶呈色材料および1つまたは複数の熱溶媒の混合物の活性化温度は、加熱速度に依存し得ることが明らかであろう。したがって、本発明の熱画像化部材の設計において、組成物の実際の活性化温度の決定は、実験的に行われることが好ましい。
【0046】
任意の適切な熱溶媒が、本発明の熱画像化部材の呈色層に組み込まれ得る。適切な熱溶媒には、例えば、芳香族および脂肪族エーテル、ジエーテルおよびポリエーテル、少なくとも約12個の炭素原子を含有するアルカノール、少なくとも約12個の炭素原子を含有するアルカンジオール、少なくとも約12個の炭素原子を含有するモノカルボン酸、エステル、ならびにそのような酸のアミド、アリールアミド、特にベンズアニリド、アリールスルホンアミド、およびヒドロキシアルキル置換アレーンが挙げられる。
【0047】
特定の好適な熱溶媒には、1,2−ジフェノキシエタン、1,2−ビス(4−メチルフェノキシ)エタン、テトラデカン−1−オール、ヘキサデカン−1−オール、オクタデカン−1−オール、ドデカン−1,2−ジオール、ヘキサデカン−1,16−ジオール、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ドコサン酸メチル、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)ベンゼン、ジアリールスルホン(ジフェニルスルホン、4,4´−ジメチルジフェニルスルホン、フェニルp−トリルスルホン、および4,4´−ジクロロジフェニルスルホン等)、およびp−トルエンスルホンアミドが挙げられる。
【0048】
特に好ましい熱溶媒は、1,2−ビス(2,4−ジメチルフェノキシ)エタン、1,4−ビス(4−メチルフェノキシメチル)ベンゼン、ビス(4−フェノキシフェノキシメチル)ベンゼンおよび1,4−ビス(ベンジルオキシ)ベンゼン等のエーテルである。
【0049】
熱溶媒による結晶呈色材料の溶解は、非結晶形態につながり得る可能性があり、そこでは、形成される色の量が、結晶呈色材料を単独で融解することによって(すなわち、熱溶媒との相互作用を伴わずに)生じる非結晶形態の中に存在する量とは異なる。一般的に、本発明の結晶呈色材料は、少なくとも1つの互変異性体が無色であり、かつ少なくとも別の互変異性体が有色である、互変異性化合物である。結晶形態は、実質的に無色の互変異性体を含むが、有色形態は、特定の呈色材料の構造およびそれが位置する環境に依存した割合で、両方の互変異性体を含む。非結晶材料中の有色互変異性体の割合は、水素結合または酸性アジュバントを使用して高められ得る。そのような材料は、呈色材料を実際にプロトン化して、新しい有色化合物を生成し得る可能性がある。以下、有色形態である呈色材料の割合を高める材料を「現像剤」と称する。同じ化合物が、熱溶媒および現像剤の機能を果たし得る可能性がある。好ましい現像剤には、4,4´−ブチリデンビス[2−(1,1−ジメチルエチル)−5−メチルフェノール]、2,2´−メチレンビス(6−tert−ブチル−4−メチルフェノール)、2,2´−メチレンビス(6−tert−ブチル−4−エチルフェノール)、2,2´−エチリデンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、ビス[2−ヒドロキシ−5−メチル−3−(1−メチルシクロヘキシル)フェニル]メタン、1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−tert−ブチルベンジル)イソシアヌレート、2,6−ビス[[3−(1,1−ジメチルエチル)−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル]メチル]−4−メチルフェノール、2,2´−ブチリデンビス[6−(1,1−ジメチルエチル)−4−メチルフェノール、2,2´−(3,5,5−トリメチルヘキシリデン)ビス[4,6−ジメチル−フェノール]、2,2´−メチレンビス[4,6−ビス(1,1−ジメチルエチル)−フェノール、2,2´−(2−メチルプロピリデン)ビス[4,6−ジメチル−フェノール]、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、2,2´−チオビス(4−tert−オクチルフェノール)、および3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−硫化メチルフェニル等のフェノールが挙げられる。
【0050】
非結晶発色剤によって形成した画像を、結晶形態に戻る再結晶に対して安定させるために、好ましくは、発色剤、および熱溶媒、ならびに/または現像剤の非結晶混合物のガラス転移温度(Tg)は、最終画像が残存する任意の温度よりも高くするべきである。一般的に、非結晶有色材料のTgは、少なくとも約50℃であることが好ましく、理想的には約60℃を超える。形成される安定した画像についてTgが十分に高いことを確実にするために、高いTgを有する付加的な材料を呈色組成物に加え得る。そのような材料(以下、「安定剤」と称する)は、発色剤、随意の熱溶媒、および随意の現像剤の非結晶混合物中に溶解した時に、画像の熱安定性を高めるように機能する。
【0051】
好ましい安定剤は、少なくとも約60℃である、好ましくは、約80℃を超えるTgを有する。そのような安定剤の例には、前述の1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−tert−ブチルベンジル)イソシアヌレート(Tg、123℃)、および1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン(Tg、101℃)が挙げられる。安定剤分子はまた、熱溶媒として、または現像剤として機能し得る。
【0052】
例えば、呈色材料は、それ自体が、画像化のための所望の温度を超える融解温度、および約60℃のTg(非結晶形態において)を有し得る。所望の温度で融解する呈色組成物を生成するために、画像化のための所望の温度で融解する熱溶媒と組み合わせ得る。しかしながら、熱溶媒および呈色材料の組み合わせは、60℃よりも大幅に低いTgを有する場合があり、(非結晶)画像を不安定にする。この場合、非結晶材料のTgを上昇させるために1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−tert−ブチルベンジル)イソシアヌレート等の安定剤を加え得る。加えて、非結晶相中で有色形態である呈色材料の割合を高めるために、現像剤(例えば、2,2´−エチリデンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)等のフェノール化合物)が提供され得る。
【0053】
好ましくは、本発明の呈色化合物、(随意の)熱溶媒、(随意の)現像剤、および(随意の)安定剤は、それぞれ、画像化の前には大部分がそれらの結晶形態である。「大部分」とは、少なくとも50%、好ましくはそれ以上を意味する。画像化中に、これらの材料のうちの少なくとも1つが融解し、材料の非結晶混合物が形成される。前述のように、非結晶混合物は有色であるが、結晶出発材料は無色である。
【0054】
それを超えると融解(したがって、呈色)が起こる温度範囲は、特に、結晶呈色化合物が、フルカラー画像を形成することが可能な熱画像化部材の中に組み込まれている場合には、できる限り狭くするべきである。結晶呈色化合物を含む呈色組成物の融解の(異なる示差走査熱量測定で測定した時の)温度範囲は、ピーク高さの中点で測定した時に15℃未満であること、好ましくは、中点で測定した時に10℃未満であることが好ましい。
【0055】
非結晶有色混合物の成分のうちの1つは、画像が形成された後に再結晶し得る可能性がある。そのような再結晶が画像の色を変化させないことが望ましい。発色剤、熱溶媒、現像剤、および安定剤が使用される場合、熱溶媒は、一般的に、画像の色に大幅に影響を及ぼさずに再結晶し得る。
【0056】
呈色層は、前述した画像形成材料のうちのいずれか、または任意の他の熱活性着色剤を含み得、一般的に、厚さが約0.5〜約4.0μmである。呈色層はまた、1つを超える層(以下、「副層」と称する)を備え得、これは、同じ組成を有しなくてもよい。例えば、結晶呈色材料が一方の副層の中に組み込まれてもよく、一方で、熱溶媒がもう一方の副層の中に位置し得る。当業者は、化学拡散の速度を制御するための副層を含む他の構成を見出すであろう。そのような場合、構成成分副層のそれぞれは、一般的に、厚さが約0.1〜約3.0μmである。
【0057】
呈色層は、固体材料の分散体、封入された液体、重合体結合剤中の非結晶材料、もしくは固体材料、もしくは活性材料の溶液、または前述したものの任意の組み合わせを含み得る。
【0058】
呈色層で使用するための好ましい結合剤材料は、ポリ(ビニルアルコール)、エチレンビニルアルコール重合体、ポリアクリルアミド、ゼラチン、セルロース材料、およびカルボキシル化された重合体の塩(例えば、アクリル酸単位を含有する重合体のアンモニウム塩)等の、水溶性高分子を含む。しかしながら、そのような水溶性高分子の使用の1つの不利な点は、それらが、湿気のある環境では水和(したがって、膨張)し易く、逆に、乾燥した環境では脱水し易い場合があることである。水和の変化は、一般的に、結合剤材料の物理的および化学性質を変化させる。例えば、乾燥したポリ(ビニルアルコール)は、75℃のTgを有し得るが、水和した材料は、20℃以下のTgを有し得る。このような著しい性質の変化は、画像化中の成分の混合に影響を及ぼし、したがって、呈色層の活性化温度に影響を及ぼし得る。
【0059】
加えて、以下に詳述するように、Tgの変化と併せて、水和および乾燥中に起こる寸法変化は、カーリング等の熱画像化部材の物理的歪曲につながり得る。
【0060】
このため、呈色層のための結合剤は、(従来の被覆方法によって被覆されることを可能にするように)水分散されるが、乾燥後に再水和の影響を受け難い材料を含むことが好ましい。数多くの水性ラテックス材料が、この所望の性質を呈する。本発明で使用するための好ましいラテックス結合剤は、呈色化学反応の活性化を伴わずに、被覆の乾燥中に達成することができる融合温度を維持しながら、可能な限り高いTgを有する。好ましいTgは、少なくとも約25℃である。加えて、ラテックス結合剤は、約6〜約8の間のpHを有することが好ましい。この範囲外にある材料は、呈色材料の互変異性平衡に影響を及ぼし得る。最後に、ラテックス結合剤はまた、呈色化学反応にも影響を及ぼし得るので、これらの材料は、界面活性剤または共溶媒等の小分子を含まないことが好ましい。本発明で使用するための好ましい水性ラテックス結合剤は、Dow Chemical Co.,Midland,MIから入手可能な、スチレン−ブタジエンゴムCP−655である。
【0061】
本発明の特定の用途について、熱画像化部材は、温度および/または湿度の変化を受けた時に、平坦なままであることが必要とされる。例えば、画像がカールした場合、特に、画像部材が印刷された側に向かってカールした場合、写真画像の知覚品質は著しく低下する。当技術分野でよく知られているように、温度または湿度の変化によって誘発されるカールは、平衡層を基材の反対側に適用することによって補正され得る。そのような平衡層は、画像化部材が受ける可能性が高い全ての環境条件下で、基材の画像側に適用される層に対して、類似した寸法変化を呈するように設計される。しかしながら、特定のラベリング用途において、そのような解決策は、特にカーリングが湿度の変化によって起きた時に、実用的な解決策を提供しない場合がある。
【0062】
ここで、図3を参照すると、印刷ラベルを生成することを意図した、本発明の熱画像化部材が示されている。基材302は、1つの側に、画像を形成するために必要とされる全ての層(層304で表される)が被覆される。層304は、例えば、図1に示される全ての層104〜114を備え得る。基材302の反対側は、随意のカール平衡層306、接着剤層308、および着脱可能な裏打ち310である。カール平衡層306が、環境湿度の変化によって生じる層304の寸法変化によって誘発されるカールを修正する際に有効であるために、接着剤層308および裏打ち310は、水蒸気に対して浸透性がなければならない。実際には、これらの層の十分な透水性を達成することは困難であり得、よって、湿度の変化に対する層306の平衡化は、層304の平衡化よりもかなり遅い。加えて、通常の使用では、ラベルを表面に貼るために、ラベル裏打ち310を除去して、接着剤層308を使用する。表面および基材302が水に対して不浸透性である場合、カール平衡層306を環境に平衡化させることができる方法はない。よって、層304の寸法変化によって生じるカール力は、ラベルと表面との間の接着接合の強度に打ち勝って、表面からラベルを剥がし得る可能性がある。
【0063】
本願と同日に出願された、同時係属の国際特許出願第PCT/US2009/004436号、名称「Optical Disc with Thermally−Printable Surface and Compression−Resistant Layer」に開示されている好ましい1つの用途では、ラベルが光ディスクの表面に適用される。1つの実施形態では、印刷の前に、ラベルがディスクに接着される。そのような場合、層308等のカール平衡層は、画像化層304と同じ、ラベル付けしたディスクの曲げに関する中立軸の側に位置するので、それが効果的ではない可能性がある。そのような場合、画像化層304が、温度および/または湿度の変化を受けた時に、それらが相当なカール力を及ぼさないように設計することが必要になる。
【0064】
本願と同日に出願された、国際特許出願第PCT/2009/004436号、名称「Optical Disc with Thermally−Printable Surface and Compression−Resistant Layer」に記載されているように、光ディスク用のラベルは、基材102がポリカーボネートである、図1に示される部材100に類似した熱画像化部材を含み得る。そのようなポリカーボネート基材102の厚さが50ミクロンである時、熱画像化部材100の温度および/または湿度の変化によって誘発される湾曲は、120m−1未満であることが好ましい。この基準が満たされない場合、ラベルが十分なカール力を及ぼして、ラベルが取り付けられる光ディスクを曲げることになり、よって、ラベルを担持する面と反対側の面をアドレッシングするレーザによって、ディスクに記憶されるデータが確実に書き込まれない、またはリードバックされない可能性が高い。この問題は、本願と同日に出願された、前述の同時係属の国際特許出願第PCT/2009/004436号で詳細に論じられている。その特許出願に示されているように、厚さ62.5ミクロンのポリカーボネートベース上に被覆される完全加水分解されたポリ(ビニルアルコール)の層の最大許容塗布量は、ディスクの曲がり基準を満たす場合、3g/mである。
【0065】
ここで、湿度の変化によって誘発されるカールの機構をさらに詳細に考察する。当技術分野で知られているように、完全に水和した状態からの乾燥中に、ポリ(ビニルアルコール)等の水膨潤性重合体を含む層は、水分の喪失のため収縮を呈する。水膨潤性重合体層内の粘性流れが起こり得る十分な水が維持されるのであれば、そのような収縮は、層がその上に被覆される基材のカーリングを引き起こさないことがある。しかしながら、重合体層と基材との間の接着が十分に強く、この界面で滑りが生じないのであれば、さらに水分を喪失するにつれて、弾性挙動(すなわち、エネルギー貯蔵)が粘性流れに勝り始め、そして、水分の喪失による収縮によって引き起こされるカール力を基材が受け得る。滑りが発生した場合、重合体層は、基材に対して収縮したように観察される。重合体がポリ(ビニルアルコール)である場合、弱く接着された被覆の測定は、完全に水和した被覆を5〜10%の相対湿度(RH)の(乾燥)大気中に配置した時に、収縮の量が、基材の表面に平行な各方向において約2.5%であることを示した。
【0066】
各層の厚さおよびヤング率が分かっているのであれば、層構造の構成成分層の容積が変化した時に層構造が呈するカールの量を推定することが可能である。ここで、図4(a)を参照すると、厚さがT、T、・・・、Tであり、ヤング率の値が□、□、・・・、□である、4つの層402〜408から成る層構造が示されている。図4(b)は、4つの層が寸法変化を受け、現在、各層が異なる長さである状態を示す。そのような状態は、例えば、層のそれぞれが異なる割合の水膨潤性重合体を含有する4つの層を備える、熱画像化部材に関し得る。図4(b)では、各層の寸法変化が示されるが、各層は、互いに接着されていないように示されている。しかしながら、本発明の熱画像化部材において、層間の接着接合は十分に強く、図4(c)に示される状態が得られ、その状態では、構造全体が、式(1)を使用して、各層の寸法変化の程度、その初期厚さ、およびヤング率から予測され得る曲率に曲げられる。
【0067】
【化1】

前述のように、ポリ(ビニルアルコール)層について、完全に水和した状態からの乾燥に応じて一般的に観察される収縮の量は、約2.5%である。乾燥した重合体のヤング率は、1GPa(から最も近い桁まで)の範囲である。層が、ポリ(ビニルアルコール)結合剤中に結晶有機材料(10GPaの範囲と推定されるヤング率を有する)を含む時、(結晶材料が水和に応じて膨張する傾向がないので)層の収縮は低減されるが、複合材料のヤング率は、純粋な重合体のヤング率よりも高い。本発明の発明者らは、これらの2つの因子がほぼ相殺され、そのような層によって及ぼされるカール力は、純粋な重合体の層によって及ぼされる力とほぼ同じであることを見出した。
【0068】
当業者は、ポリ(ビニルアルコール)の等級が、乾燥に応じて見られるカールの程度に影響を及ぼすことを認識するであろう。一般に、分子量または重合体の加水分解の程度が低い時、乾燥に応じて及ぼされるカール力は低い。
【0069】
本発明の発明者らは、ポリ(ビニルアルコール)等の水膨潤性重合体を導入することが必要である場合は、水和に応じて膨張せず、かつ比較的に低いヤング率を有する材料も含有する層中の成分として導入することが好ましいことを見出した。上記にて与えられたヤング率の値は、例示の目的のためだけに引用した近似値であり、いかなる形であれ本発明の範囲を限定するものであるとみなすべきではないことに留意されたい。
【0070】
熱画像化部材の構造および色形成の機構を説明してきたが、ここで、熱絶縁層106および110の要件をさらに詳細に論じる。
【0071】
前述のように、熱絶縁層の主な目的は、上側にある呈色層が熱に曝露された時に、下側にある呈色層がそれらの活性化温度に到達することから保護することである。好ましくは、熱絶縁は、可能な限り薄い熱絶縁層によって達成される。
【0072】
薄い熱絶縁層が好まれるのには、いくつかの理由がある。より厚い熱絶縁層は、より薄い層よりも製造するのが困難であり得、前述のように、カールする傾向等の、物理的問題を導入し得る。また、呈色層112の中に形成される画像は、例えば、熱絶縁層106および110のどちらを通しても見えなければならない。熱絶縁層内での任意の光の散乱は、熱絶縁層の下側の呈色層の中の画像の有効な光学密度を低下させる。したがって、熱絶縁層がより厚くなるにつれて、熱絶縁層が作製される材料の透明性要件はより厳しくなる。
【0073】
熱絶縁層のさらに別の要件は、熱絶縁層が高温に加熱され得る印刷中に、層が物理的に損なわれない(例えば、熱印刷ヘッドが「衝突」しない)、十分な寸法安定性を有しなければならないことである。そのような物理的破損によって、印刷された画像の不要な可視的擦傷が生じることがあり得る。以下に論じるように、熱絶縁層は、一般的に比較的に柔らかい材料から成る。比較的により薄い熱絶縁層は、比較的により厚い熱絶縁層よりも、印刷中の物理的破損の傾向が少なくなり得る。
【0074】
可能な限り薄い熱絶縁層を作製するために、その組成は、好ましくは、所与の密度に対して、可能な限り高い比熱容量と、可能な限り低い熱伝導性とを有する。
【0075】
熱絶縁層の比熱容量の典型的な好ましい値は、(25℃で測定した時に)1500J/kg・K以上である。熱絶縁層の熱伝導性の典型的な好ましい値は、(25℃で測定した時に)0.2W/m・K以下である。
【0076】
これらの熱性質を有する材料を使用して、1〜1.5g/cmの範囲の密度を有する、本発明の画像化部材の熱絶縁層106は、一般的に、本発明の画像化部材において6〜30g/mの塗布量を有する一方で、熱絶縁層110の塗布量は、一般的に、少なくとも3倍薄く、約1〜5g/mの範囲である。
【0077】
一般に、熱絶縁層110の厚さの2乗をその熱拡散率で割ったもの(熱が層を通して拡散するために必要とされる時間に関する量)は、熱絶縁層106の厚さの2乗をその熱拡散率で割ったものよりも少なくとも4倍大きくするべきである。
【0078】
熱絶縁層は、本発明の熱画像化部材を製造する際に、水性被覆プロセスによって蒸着されることが好ましい。被覆技術の当業者には、湿式被覆の乾燥に伴う問題を回避すべきである場合、そのような比較的に高い乾燥塗布量を有する層の生成は、濃縮水性被覆流体の使用を必要とすることが明らかになるであろう。少なくとも約20重量%の固体、好ましくは30重量%以上の固体の流体濃度が好ましい。
【0079】
熱絶縁層のさらに別の所望の性質は、特に画像の屋外使用を意図している場合、乾燥した被覆の耐水性である。
【0080】
本発明の発明者らは、特定の水性ラテックス材料が、20〜50重量%の範囲の固体含有量を有する水性被覆流体から基材上に被覆可能である性質とともに、前述した必要とされる性質(すなわち、乾燥した材料の高い熱容量、低い熱伝導性、および耐水性)の組み合わせを最適に満たすことを見出した。
【0081】
一般に、無機粒子(例えば、シリカ、不溶性金属酸化物、または不溶性金属塩)の分散体の使用はあまり好まれない。その理由は、そのような材料は、濃縮した水性分散体として利用可能であるが、一般的に、有機非結晶重合体の分散体よりも、低い比熱容量および高い熱伝導性を呈するからである。しかしながら、例えば、組成を強化する、または化学的性質もしくは気体バリア性を提供するために、分散した無機粒子を熱絶縁層の組成の中に組み込むことが有利であり得る。例えば、ラポナイト、モンモリロナイト、ベントナイト、およびヘクトライト等の粘土材料は、この点に関して特に有用である。
【0082】
熱絶縁層を作製するために成分の混合物を使用する時は、それらの屈折率が可能な限り密接に一致していること、またはそれらの粒子サイズが十分に小さく、光の散乱が最小化され、かつ可能な限り最大の光の伝達が達成されることが好ましい。
【0083】
本発明の熱絶縁層で使用するための水性ラテックス材料が、適切な範囲のガラス転移温度Tgを有することが重要である。高過ぎるTgを伴う材料は、乾燥する時に、粘着膜を形成できないことがあり得る。一方で、低過ぎるTgを伴う材料を使用した時は、多くの問題に遭遇する。第1に、そのような材料は、熱印刷中に達成される温度で加熱した時に流れてしまう傾向があり、これは、印刷された画像の破損につながる可能性がある。第2に、非結晶材料(ラテックスポリマー等)における小分子の拡散速度は、ガラス転移温度の下側よりも上側で非常に高い。呈色層から熱絶縁層の中への小分子の拡散は、印刷された画像の、または印刷前の熱画像化部材の安定性に関する重大な問題につながり得る。一般的に遭遇する特定の問題は、呈色材料自体の熱絶縁層の中への拡散である。これが生じた時は、呈色材料の予想外の呈色が見られ得る可能性がある。これは、特に、白色にすることを意図した画像の領域で問題となる(すなわち、画像の白色領域の中の光学密度Dminが、望まれるよりも高くなり得る)。本発明の目的は、印刷の前でも後でも熱画像化部材の貯蔵中にDminの最小の増加しか観察されない、熱絶縁層のための組成物を提供することである。
【0084】
本発明の熱絶縁層で使用するための好ましい水性ラテックス材料は、約15〜35℃の範囲のTgを有する。被覆の乾燥中のラテックスの膜形成および融合を維持する、可能な限り高いTgが望まれる。一般的に、感熱被覆の乾燥中に使用される最大温度は、約70℃である。好ましい最低膜形成温度は、20〜60℃の範囲である。
【0085】
当技術分野でよく知られているように、高いTgのコアがより低いTg材料のシェルによって封入された、コア−シェルラテックス材料が知られている。膜の融合は、別様に達成可能であるよりも高い粘着膜の平均Tgを維持しながら、シェル材料の流れによって達成される。本発明の実践に際してはそのような材料が使用され得、その場合、粒子のシェルを含む材料は、上記に概説したTgの要件を満たさなければならない。
【0086】
本発明で使用するための水性ラテックス材料は、4〜8、好ましくは6.5〜7.5の範囲のpHを有することが好ましい。また、ラテックスの酸価が適度である、すなわち18〜35の範囲であることも好ましい。前述のように、本発明の呈色材料は、少なくとも一方の互変異性体が無色であり、少なくとも他方が有色である、互変異性を呈し得る。前述のように、有色および無色の互変異性体の相対的割合は、呈色材料の化学的環境に依存する。呈色層の環境(実質的に無色の形態である)から熱絶縁層の中に移行する任意の呈色材料は、より多く呈色する環境を経験し得る。これは、ラテックス材料のpHまたは酸価が上記に概説した範囲から外れた場合、重大な問題になり得ることが分かっている。
【0087】
また、本発明で使用するための水性ラテックス材料は、最小量の共溶媒または界面活性剤等の小分子を含有することも好ましい。そのような材料は、熱絶縁層から呈色層の中に移行して、画像化の化学反応に影響を及ぼし得る。必要であれば、そのような小分子は、当技術分野でよく知られているように、透析によってラテックス材料から除去し得る。
【0088】
本発明で使用するための好ましい水性ラテックス材料は、DSM NeoResins(Waalwijk,The Netherlands)から入手可能な、スチレン/アクリル材料のNEOCRYL A−6162、およびDow Chemical Co.,Midland,MIから入手可能な、スチレン/ブタジエンゴム材料CP−655である。
【0089】
本発明で使用される水性ラテックス材料の機械的性質は、架橋することによって改善され得る。当技術分野でよく知られているように、そのような架橋は、例えば、多官能エポキシド、アジリジン、イソシアン酸塩、無水物、またはアルデヒドによる、例えば、熱的に誘発される共有結合を使用して、または金属キレート化等の可逆的な機構を使用して達成し得る。また、例えば、遊離基または陽イオン機構を介しての光化学的架橋が使用され得る可能性もある。架橋は、別の試薬の導入によって、または、架橋機能をラテックス材料自体の中に構築することによって達成され得る。当業者は、電子ビームまたは他の放射線源の使用等の、架橋のための他の方法を見出すであろう。
【0090】
本発明の発明者らは、好ましいラテックス材料を使用した場合であっても、付加的な架橋の有無に関わらず、最終画像の、または画像化前の画像化部材の熱安定性が、依然として、特定の厳しい用途には不十分であり得ることを見出した。本発明の発明者らは、この状況が、特定の有機材料を本発明の熱絶縁層の組成に組み込むことによって改善され得ることを発見した。これらの材料は、非結晶形態で80℃を超えるTgを有することが好ましい。該有機材料は、結晶形態または非結晶形態で組成の中に組み込まれ得る。
【0091】
本発明で使用するための好ましい有機材料は、2000未満の分子量を有するフェノール材料である。これらの材料は、本発明の要件ではないが、熱絶縁層の上側にある層の活性化温度よりも低い融解点を伴う結晶固体であり得る。
【0092】
本発明の組成物の中の水性ラテックス材料との組み合わせで使用するための特に好ましい1つの材料は、1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−tert−ブチルベンジル)イソシアヌレートであり、これは、分子量が700、融解点が159℃、かつTgが非結晶状態で123℃である材料である。別の好ましい材料は、Tgが非結晶状態で101℃である、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタンである。
【0093】
有機フェノール材料は、理想的には、結晶状態の材料の水性分散体を調製することによって、熱絶縁層の中に組み込まれる。これは、ミリングプロセス(例えば、当技術分野でよく知られているように、アトライタまたは水平ミルを使用する)により、分散助剤の存在下で、水中の結晶材料のスラリーの粒子寸法を低減することによって行われる。ミリングプロセス中に、有機フェノール材料の一部は、結晶状態から非結晶状態に変換され得るが、好ましくは、これは材料の50%未満である。
【0094】
使用される有機フェノール材料が、1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−tert−ブチルベンジル)イソシアヌレートである時には、分散助剤は、好ましくは、Sartomer Company,Inc.,Exton PAから入手可能なSMA1000MA等の、スチレン−マレイン酸共重合体であるが、他の材料(例えば、分散体を作製する当技術分野でよく知られているように、ポリ(ビニルアルコール)または小分子界面活性剤)が用いられ得る。
【0095】
有機フェノール材料を含む本発明の組成のDminが制御される機構は、完全には理解されていない。呈色材料の移行は起こるが、熱絶縁層の化学的環境が高められた呈色を引き起こすほどではない可能性がある。あるいは、熱絶縁層内の呈色材料の拡散率が低下し、よって、所与の時間量により少ない材料しか熱絶縁層の中に拡散しない可能性がある。熱絶縁層が作製される材料のTgは、有機フェノール材料の添加によって増加することが知られている。
【0096】
本発明の有機フェノール材料の使用の有効性について前述した可能な機構は、推論的なものであり、例示の目的のためだけに提示されているに過ぎず、いかなる形であれ本発明の範囲を限定することを意図していない。
【0097】
前述のように、本発明の熱絶縁層は、少なくとも約20%、好ましくは約30%を超える固体含有量を有する水性組成から被覆可能であることが好ましい。本発明の熱画像化部材を製造するための好ましい被覆方法は、カーテンおよびスライドホッパー(ビード)被覆であり、これらの技術は、被覆技術の当業者にはよく知られているように、被覆流体の粘度が、特定の被覆塗布器の被覆速度、湿潤塗布量、および幾何学形状によって決定される特定の範囲内にあることが必要とされる。
【0098】
本発明で使用される被覆流体等の非ニュートン流体の粘度は、Ostwald−de Waeleべき乗則によって近似され得る。
【0099】
【化2】

ここで、□effは、有効粘度であり、Sは、剪断率であり、Kは、流れの整合性指数(flow consistency index)と称されるパラメータであり、nは、ニュートン流体について値1を有する流動挙動指数として知られている無次元量である。本発明の典型的な被覆流体は、1未満であるnの値を有する。すなわち、それらは剪断減粘性流体である。本発明の実践に際しては、被覆中の流体の温度(一般的に、20〜50℃の範囲である)で測定した時に、1000s−1の剪断率でμeffが35〜200mPa・sの範囲内にあり、nが0.8〜1の範囲であることが好ましい。これらの範囲外の粘度パラメータを有する流体は、従来のスライドホッパーまたはカーテン被覆法を使用して被覆することが困難であり得る。
【0100】
流動挙動指数nが約0.8未満の値を有する時、流体の剪断減粘性挙動は、均一なクロスウェブ厚さの被覆の生成を困難にし得る。これは、典型的な被覆塗布器が、扇形のチャネルを通して円筒状のホースによって送給される被覆の幅と少なくとも同じ幅のスロットであるからである。流体の流速が、塗布器の縁部において中央と同じであることが重要である。しかしながら、流体の粘度が剪断率に強く依存する時、流体は、「プラグ流れ」を呈し得、よって、中央の流速は、縁部よりも速くなる。
【0101】
本発明の20〜50重量%の水性ラテックス材料の固体含有量を伴い、前述した範囲の粘度パラメータを有する水性被覆流体を調合するために、乾燥した組成物の性能に必要とされる成分に加えて、レオロジー改質剤を組み込むことが必要になり得る。しかしながら、そのようなレオロジー改質剤は、印刷前の、または最終画像における熱画像化部材のその熱的性質またはその安定性に対する影響に関して、乾燥組成物の性能に影響を及ぼしてはならない。残念なことに、レオロジー改質のために設計された数多くの市販の材料は、熱画像化部材の性能に望ましくない効果を呈する。例えば、数多くのポリエーテルポリオールまたはアクリレートベースのレオロジー改質剤は、結晶呈色材料の活性化温度に影響を及ぼす。具体的には、最上位の呈色層(図1の層112)の活性化温度が低減され得るか、または他の場合よりも、加熱速度に依存し得る(おそらくは、隣接する熱絶縁層からの改質剤の一部における結晶呈色材料の拡散律速溶解のためである)。
【0102】
本発明の発明者らは、レオロジー改質剤として、疎水的に改質され、かつ完全加水分解されたポリ(ビニルアルコール)重合体の使用が、熱画像化部材の性能に最小限の悪影響しか導入しない一方で、前述した好ましい範囲内の粘度パラメータを伴う、本発明の熱絶縁層のための被覆流体の調製を可能にすることを見出した。
【0103】
本発明の発明者らは、疎水性改質を伴うポリ(ビニルアルコール)重合体の添加が、本発明の水性ラテックスを含有する被覆液のμeffを、重合体の非存在下で得られ得る値よりも高い値に調整することを可能にするが、流動挙動指数nの低減は、非疎水的に改質されたポリ(ビニルアルコール)重合体、または粘土ベースの材料等の特定の無機レオロジー改質剤の添加によって可能であり得る低減よりも少ないことを見出した。
【0104】
ここで、図5を参照すると、本発明による好ましい熱画像化部材500が概略図の形態で示されている。全ての層は、Dupont Co.,Wilmington,DEから入手可能な、少量の被覆助剤Zonyl FSNを含有する、水性流体から被覆される。
【0105】
基材502は、約75〜約200ミクロンの厚さの、充填された白色の配向ポリプロピレンベースであり得る。そのような材料は、例えば、Yupo Corporation America,Chesapeake,VA 23320から入手可能である。
【0106】
膜ベースのための他の選択肢には、紙基材、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリカーボネート、および当技術分野においてよく知られている他の合成基材を含む。光ディスクを意図したラベルで使用するための特に好ましい基材は、25〜75ミクロンの範囲の厚さを伴う充填された白色のポリカーボネートである。
【0107】
呈色層504は、図5に示されるように、基材502と直接的に接触し得、または、随意の介在接着促進層または酸素バリア層(図示せず)があり得る。層504は、シアン呈色化合物と、同時係属の米国特許出願第12/022,969号のDye X(7.72重量%)と、1,4−ビス(ベンジルオキシ)ベンゼン(熱溶媒、融解点125℃、1ミクロン未満の平均粒子サイズを有する結晶の水性分散体として被覆される、48.6重量%)と、フェノール系酸化防止剤/現像剤(Anox 29、融解点161〜164℃、Chemtura,Middlebury,CTから入手可能、1ミクロン未満の平均粒子サイズを有する結晶の水性分散体として被覆される、7.91重量%)と、Lowinox 1790(第2のフェノール系酸化防止剤/安定剤、Chemtura,Middlebury,CTから入手可能、1ミクロン未満の平均粒子サイズを有する結晶の水性分散体として被覆される、13.28重量%)と、結合剤(水性ラテックスCP655、Dow Chemical Co.,Midland,MIから入手可能、22.31重量%)とから成る。この層は、2.53g/mの塗布量を有する。
【0108】
シアン呈色層504の上側には、熱絶縁層506があり、これは、前述のCP655(69.9重量%)と、前述のLowinox 1790(1ミクロン未満の平均粒子サイズを有する結晶の水性分散体として被覆され、その分散剤は、Sartomer Company,Inc.,Exton,PAから入手可能であるスチレン−マレイン酸共重合体SMA 1000MA、14.25重量%)と、疎水的に改質され、かつ完全加水分解された等級のポリ(ビニルアルコール)(POVAL MP103、Kuraray America.,Inc.,Houston,TXから入手可能、13.5重量%)と、アジリジン架橋剤(CX−100、DSM NeoResins,Waalwijk,The Netherlandsから入手可能、1.7重量%)と、界面活性剤(Alkanol OS、E.I.DuPont de Nemours,Wilmington,DEから入手可能、0.3重量%)とから成る。この層は、18g/mの塗布量を有する。
【0109】
熱絶縁層506の上側には、マゼンタ呈色層508があり、これは、マゼンタ発色剤(Dye 23、同時係属の米国特許出願第12/343,234号に記載、8.93重量%)と、フェノールエーテル熱溶媒、1,4−ビス[(4−メチルフェノキシ)メチル]ベンゼン(融解点172℃、1ミクロン未満の平均粒子サイズを有する結晶の水性分散体として被覆される、46.74重量%)と、フェノール系酸化防止剤/現像剤(Lowinox 44B25、融解点210〜211℃、Chemtura,Middlebury,CTから入手可能、1ミクロン未満の平均粒子サイズを有する結晶の水性分散体として被覆される、18.26重量%)と、第2のフェノール系酸化防止剤/安定剤(Lowinox 1790、Chemtura,Middlebury,CTから入手可能、1ミクロン未満の平均粒子サイズを有する結晶の水性分散体として被覆される、5.13重量%)と、結合剤(ポリ(ビニルアルコール)、Celvol 540、Celanese,Dalase,TXから入手可能、20.39重量%)とから成る。この層は、2.56g/mの塗布量を有する。
【0110】
マゼンタの呈色層508の上側には、第2の熱絶縁層510があり、これは、熱絶縁層506と同じ組成を有する。この層は、4g/mの塗布量を有する。
【0111】
第2の熱絶縁層510の上側には、黄色呈色層512があり、これは、黄色発色剤(Dye XI、米国特許第7,279,264号に記載、融解点202〜203℃を有する、61.3重量%)と、フェノール系酸化防止剤/安定剤(Lowinox 1790、Chemtura,Middlebury,CTから入手可能、1ミクロン未満の平均粒子サイズを有する結晶の水性分散体として被覆される、6.13重量%)と、レオロジー改質剤(前述のPOVAL MP103、10重量%)と、結合剤(Carboset CR717、Lubrizol,Cleaveland,OHから入手可能なラテックス、22.26重量%)とから成る。この層は、2.05g/mの塗布量を有する。
【0112】
黄色呈色層512上には、紫外線遮断層514が蒸着され、これは、ナノ粒子等級の二酸化チタン(MS−7、Kobo Products Inc.,South Plainfield,NJから入手可能、62重量%)と、前述のPOVAL MP103(35重量%)と、グリオキサール(3重量%)とから成る。この層は、2g/mの塗布量を有する。
【0113】
紫外線遮断層514上には、オーバーコート516が蒸着され、これは、Carboset 526(ポリマー結合剤、Lubrizol,Cleaveland,OHから入手可能、5重量部)と、前述のPOVAL MP103(2.12重量部)と、NEOREZ R−989(ポリウレタンラテックス、DSM NeoResins,Waalwijk,The Netherlandsから入手可能、4.34重量部)と、Hidorin F−115P(融解可能な潤滑剤、Nagase America Corp.,New York,NYから入手可能、5重量部)と、Pinnacle 2530(エルカミドの等級、Lubrizol Advanced Materials,Inc.,Cleaveland,OHから入手可能、1重量部)と、Ultraflon AD−10(ポリ(テトラフルオロエチレン)潤滑剤、Laurel Products LLC,Elverson,PAから入手可能、1.72重量部)とから成る。この層は、1.2g/mの塗布量を有する。
【0114】
前述した画像化部材は、米国特許第6,801,233号、2006年4月6日に出願された米国特許出願第11/400734号、米国特許第7,408,563号、および2008年1月30日に出願された「Print Head Pulsing Techniques for Multicolor Printers」という名称の米国特許出願第12/022,955号等に記載されているような技術を使用して印刷することができる。
【0115】
ここで、本発明を、実施例として具体的な実施形態に関してさらに詳細に説明するが、これらは、例示を意図したものに過ぎず、本発明は、本明細書に記載される材料、量、手順、およびプロセスパラメータ等に限定されないことを理解されたい。記載される全ての部および百分率は、特に明記しない限り重量によるものである。
【0116】
反射光学密度は、GretagMacbeth AG,Regensdorf,Switzerland製の分光光度計を使用して測定した。
【0117】
実施例の被覆を調製するために以下の市販の材料を使用した。
【0118】
NEOCRYL A−6162(DSM NeoResins,Waalwijk,The Netherlandsから入手可能なスチレン/アクリル水性ラテックス)。
【0119】
CP−655(Tgが27℃である、Dow Chemical Co.,Midland,MIから入手可能なスチレン/ブタジエンゴムラテックス)。
【0120】
PB6692MNA(Tgが1〜5℃である、Dow Chemical Co.,Midland,MIから入手可能なスチレン/ブタジエンゴムラテックス)。
【0121】
Carboset 526(水性アンモニア中の溶液として使用される、Lubrizol,Cleaveland,OHから入手可能なアクリル重合体)。
【0122】
Zonyl FSN(E.I.DuPont de Nemours,Wilmington,DEから入手可能な被覆助剤)。
【0123】
Alkanol XC(E.I.DuPont de Nemours,Wilmington,DEから入手可能な界面活性剤)。
【0124】
NEOREZ R−989(DSM NeoResins,Waalwijk,The Netherlandsから入手可能なポリウレタンラテックス)。
【0125】
Hidorin F−115P(Nagase America Corp.,New York,NYから入手可能な融解可能な潤滑剤)。
【0126】
Ultraflon AD−10(Laurel Products LLC,Elverson,PAから入手可能なポリ(テトラフルオロエチレン)潤滑剤)。
【0127】
Pinnacle 2530(Lubrizol Advanced Materials,Inc.,Cleaveland,OHから入手可能なエルカミドの等級)。
【0128】
Aerosol 501(Cytec Industries,Inc.,West Paterson,NJから入手可能な界面活性剤)。
【0129】
Mirataine H30(Rhodia,Inc.(USA),Cranbury,NJから入手可能な界面活性剤。
【0130】
CX−100(DSM NeoResins,Waalwijk,The Netherlandsから入手可能なアジリジン架橋剤)。
【0131】
実施例では、以下の結晶性固体材料の分散体を使用した。
【0132】
(分散体A)
34重量%の1,4−ビス(ベンジルオキシ)ベンゼンおよび6重量%のポリ(ビニルアルコール)POVAL 403(Kuraray America.,Inc.,Houston,TXから入手可能)の水中スラリーを調製して、粒子の95%が1マイクロメートル未満に低減するまで、水平ミルでの粉砕に供した。
【0133】
(分散体B)
18.75重量%のLowinox 1790(Chemtura,Middlebury,CTから入手可能)および6.25重量%の前述のポリ(ビニルアルコール)POVAL 403の水中スラリーを調製して、粒子の95%が1マイクロメートル未満に低減するまで、水平ミルでの粉砕に供した。
【0134】
(分散体C)
33.5重量%のLowinox 1790(Chemtura,Middlebury,CTから入手可能)および5.9重量%のポリ(ビニルアルコール)Gohseran L3266(Nippon Gohsei,Japanから入手可能)の水中スラリーを調製して、粒子の95%が1マイクロメートル未満に低減するまで、水平ミルでの粉砕に供した。
【0135】
(分散体D)
32%のLowinox 1790(Chemtura,Middlebury,CTから入手可能)および8重量%のスチレン−無水マレイン酸共重合体SMA 1000MA(Sartomer,Inc.,Exton,PAから入手可能)の水中スラリーを調製して、粒子の95%が1マイクロメートル未満に低減するまで、水平ミルでの粉砕に供した。
【0136】
(分散体E)
34.2重量%のAnox 29(Chemtura,Middlebury,CTから入手可能)および5.8重量%の前述のポリ(ビニルアルコール)POVAL 403の水中スラリーを調製して、粒子の95%が1マイクロメートル未満に低減するまで、水平ミルでの粉砕に供した。
【0137】
(分散体F)
30.6重量%の同時係属の米国特許出願第12/022,969号のDye X、5.62重量%の酢酸メチル、および4.6重量%の前述のポリ(ビニルアルコール)POVAL 403の水中スラリーを調製して、粒子の95%が1マイクロメートル未満に低減するまで、水平ミルでの粉砕に供した。
【0138】
(分散体G)
1.45%のAerosol 501、5.24%のMirataine H30、15.8重量%のPinnacle 2530、および1.6重量%の前述のポリ(ビニルアルコール)POVAL 403の水中スラリーを調製して、粒子の95%が1マイクロメートル未満に低減するまで、水平ミルでの粉砕に供した。
【0139】
(実施例1)
この実施例は、本発明の熱絶縁層と接触しているシアン呈色層を備える、本発明の印刷されていない熱画像化部材の熱安定性を例証する。
シアン呈色層のための被覆流体は、以下の表に示される割合で材料を組み合わせることによって調製した。
【0140】
【化3】

本発明の熱絶縁層(TI−1)のための被覆流体は、以下の表に示される割合で材料を組み合わせることによって調製した。
【0141】
【化4】

被覆は、以下のように調製した。
被覆A:シアン呈色層を、Yupo Corporation America,Chesapeake,VAから入手可能な、厚さ200ミクロンの充填された白色の配向ポリプロピレンベース上に、4g/mの乾燥厚さに被覆した。
被覆B:前述のポリプロピレンベース上の4g/mの乾燥厚さのシアン呈色層の上および下に、1g/mのNEOCRYL A−6162の層を提供した。
被覆C:前述のポリプロピレンベース上の4g/mの乾燥厚さのシアン呈色層の上および下に、1.28g/mの本発明の熱絶縁層TI−1の層を提供した。TI−1の最上層を適用するために、0.25%の被覆助剤Zonyl FSNを被覆流体に加えた。
以下の表に示されるように、被覆A、B、およびCを環境調整に供した後、赤色反射濃度(Dmin)の変化を記録した。
【0142】
【化5】

本発明の熱絶縁層を用いた被覆Cは、いかなる有機フェノール材料も含有しない対照の熱絶縁バリアを伴う被覆Bよりも安定しており、また、いかなる熱絶縁バリア層もない被覆Aとほぼ同じくらい安定していた。
【0143】
(実施例2)
この実施例は、本発明の熱絶縁層と接触しているシアン呈色層を備える、本発明の印刷後の熱画像化部材の熱安定性を例証する。
シアン呈色層のための被覆流体は、以下の表に示される割合で材料を組み合わせることによって調製した。
【0144】
【化6】

熱絶縁層TI−2〜TI−5のための被覆流体は、以下の表に示される流体中の固体の%で材料を組み合わせることによって調製した。
【0145】
【化7】

耐熱性オーバーコートのための被覆流体は、以下の表に示される割合で材料を組み合わせることによって調製した。
【0146】
【化8】

被覆は、以下のように調製した。
シアン呈色層を、Yupo Corporation America,Chesapeake,VAから入手可能な、厚さ95ミクロンの充填された白色の配向ポリプロピレンベース上に、3g/mの乾燥厚さに被覆した。
シアン呈色層の上に、熱絶縁層TI−2〜TI−5(4つの別々の被覆)を3g/mの乾燥厚さに被覆した。
熱絶縁層の上に、耐熱性オーバーコートを1.7g/mの乾燥厚さに被覆した。
各被覆は、0.07(Dmin)から2.00(Dmax)まで変動するほぼ等間隔のシアン染料密度を与えるために、米国特許第6,801,233号に記載されているように印刷した。これらの画像は、環境調整に供し、そして、結果として生じた染料密度の変化を以下の表に示す。
【0147】
【化9】

本発明の熱絶縁層を用いた被覆TI−3およびTI−5は、いかなる有機フェノール材料も含有しない対照の熱絶縁バリアである被覆TI−2およびTI−4よりも安定していた(すなわち、より少ない変化を示した)ことが分かる。27℃のTgを有するラテックスCP655を用いた被覆TI−3は、1〜5℃のTgを有するラテックスPB6692MNAを使用した被覆TI−5よりも安定していた。
【0148】
(実施例3)
この実施例は、本発明の熱絶縁層を生成することを意図する流体を被覆するためのレオロジー修飾剤としての、種々の等級のポリ(ビニルアルコール)の使用を例証する。
6つの被覆流体(A〜F)は、各流体が水中に33.5%の固体含有量を有する、6つの異なる等級のポリ(ビニルアルコール)を使用して調製した。各流体は、以下の表に示される順序で、試薬を水に加えることによって調製した。各流体において、固体(したがって、乾燥した被覆)の組成は、以下の通りである。
【0149】
【化10】

使用したポリ(ビニルアルコール)の等級:
【0150】
【化11】

流体A〜Fの粘度は、10〜1000s−1の剪断率、25℃の温度で、コーンアンドプレートジオメトリを使用し、TA Instruments,Newcastle,DEから入手可能なAR 1000N流量計を使用して測定した。結果を以下の表に示す。
【0151】
【化12】

流体Aだけが、1000s−1の剪断率で35〜200mPa・sの範囲内のμeffであり、nが0.8〜1の範囲であることが分かる。流体Aは、POVAL MP103(疎水性改質を伴う完全加水分解されたポリ(ビニルアルコール))を含有する。試験を行った他のポリ(ビニルアルコール)等級は、そのような疎水性改質を有しない。
【0152】
種々の好適な実施形態に関して本発明を説明してきたが、本発明をそれらに限定することは意図しておらず、当業者であれば、本発明の精神および添付の特許請求の範囲の範囲内にある変形形態および修正形態が可能であることを認識するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱画像化部材であって、
(A)向かい合った第1の表面および第2の表面を有する基材と、
(B)該基材の第1の表面によって担持された第1の呈色層および第2の呈色層であって、該第1の呈色層は、該第2の呈色層よりも該基材の第1の表面に近い、第1の呈色層および第2の呈色層と、
(C)該第1の呈色層と該第2の呈色層との間の熱絶縁層であって、少なくとも50重量%の重合体ラテックス材料と、少なくとも80℃のガラス転移温度を有する少なくとも5重量%の有機材料とを含む熱絶縁層と
を備えている、熱画像化部材。
【請求項2】
前記有機材料は、分子量が2000未満であるフェノール化合物である、請求項1に記載の熱画像化部材。
【請求項3】
前記有機材料は、1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−tert−ブチルベンジル)イソシアヌレート、および1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタンから成る群より選択される、請求項1に記載の熱画像化部材。
【請求項4】
前記基材の第1の表面によって担持された第3の呈色層をさらに備え、該第3の呈色層は、前記第2の呈色層よりも、該基材の第1の表面から遠くにある、請求項1に記載の熱画像化部材。
【請求項5】
前記第2の呈色層と前記第3の呈色層との間に第2の熱絶縁層をさらに備え、該第2の熱絶縁層は、少なくとも50重量%の重合体ラテックス材料と、少なくとも80℃のガラス転移温度を有する少なくとも5重量%の有機材料とを含む、請求項4に記載の熱画像化部材。
【請求項6】
前記有機材料は、分子量が2000未満であるフェノール化合物である、請求項5に記載の熱画像化部材。
【請求項7】
前記有機材料は、1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−tert−ブチルベンジル)イソシアヌレート、および1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタンから成る群より選択される、請求項5に記載の熱画像化部材。
【請求項8】
前記第1の呈色層と前記第2の呈色層とを分離している熱絶縁層の厚さの2乗を該熱絶縁層の熱拡散率で割ったものは、前記第2の熱絶縁層の厚さの2乗を該第2の熱絶縁層の熱拡散率で割ったものよりも少なくとも4倍大きい、請求項5に記載の熱画像化部材。
【請求項9】
被覆組成物であって、
少なくとも20重量%の水性ラテックス重合体材料と、
20重量%未満の疎水的に改質されたポリ(ビニルアルコール)と
を含み、
1000s−1で測定された粘度は、50mPa・sよりも大きく、かつ、流動挙動指数nは、約0.8〜約1の範囲内である、
被覆組成物。
【請求項10】
少なくとも30重量%の水性ラテックス重合体材料と、10重量%未満の疎水的に改質されたポリ(ビニルアルコール)とを含み、1000s−1で測定された粘度は、50mPa・sよりも大きく、かつ、流動挙動指数nは、約0.8〜約1の範囲内である、請求項9に記載の被覆組成物。
【請求項11】
前記重合体ラテックス材料の重量の少なくとも10%である量の有機材料をさらに含み、該有機材料は、少なくとも80℃のガラス転移温度を有している、請求項9に記載の被覆組成物。
【請求項12】
前記有機材料は、分子量が2000未満であるフェノール化合物である、請求項9に記載の被覆組成物。
【請求項13】
前記有機材料は、1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−tert−ブチルベンジル)イソシアヌレート、および1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタンから成る群より選択される、請求項9に記載の被覆組成物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4(a)】
image rotate

【図4(b)】
image rotate

【図4(c)】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2013−500892(P2013−500892A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−523656(P2012−523656)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際出願番号】PCT/US2010/043638
【国際公開番号】WO2011/017184
【国際公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(511029637)ズィンク イメージング, インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】