説明

熱転写プリンタ

【課題】
印刷媒体を搬送するローラ表面に形成された突起のピッチと前記搬送ローラに取り付けたギア1歯あたりの印刷媒体の搬送量から高画質印画を実現する条件を求める方法を提供する。
【解決手段】
搬送ローラに取り付けたギア1歯あたりの印刷媒体の搬送量を前記搬送ローラに形成された突起のピッチ以下にし、前記ギアの歯数を前記突起の数以上にすることにより、搬送ズレなどのギア固有の印刷画質を劣化させる要因が発生する周期を遅くし、色ズレによるスジなどを消していく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルカメラやデジタルビデオカメラなどで撮影した画像を印刷するような熱転写プリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラやデジタルビデオカメラの普及が目覚しい。特にデジタルカメラはCCDの画素数の多いものが増え、より高画質の静止画が求められている。一方、撮影した画像を忠実に印刷できるようなインクジェット方式や熱転写方式のプリンタが開発、提供されている。何れのプリンタも印刷時の色ズレなどのない、撮影した画像を忠実に印刷できるものでなければならない。
【0003】
画像などを印刷する熱転写プリンタでは、印刷媒体を給紙した後、イエロー、マゼンダとシアンの各色を印刷媒体に印刷する。各色を印刷するために印刷媒体は前記印刷媒体を搬送するローラで往復搬送される。
【0004】
ここで例えば、イエロー、マゼンダ、シアンの各色の印刷開始ポイントがズレてしまうような場合など、印刷媒体の搬送にズレが生じると印刷物にも色ズレが生じてしまう。
【0005】
また、熱転写プリンタで使用される印刷媒体は、通常使用されるコピー用紙などに比べると厚さが厚いため硬い。このように厚く硬い印刷媒体にイエロー、マゼンダとシアンを印刷し、印刷媒体の搬送ズレを起こさず、高画質印刷を実現するような熱転写プリンタでは、印刷媒体を搬送するローラの表面に規則的に並べた突起(例として図3参照)を設け、その突起を印刷媒体に喰いつかせるようにしている。前記突起の形状や配列などに関しては、特許文献1が参考になる。
【0006】
一方、印刷媒体への印刷画質は搬送ローラ表面に設けられた突起のみでなく、前記搬送ローラを駆動する駆動系の構成による影響もある。実際には、搬送ローラに取り付けたギア1歯あたりの印刷媒体の搬送量が前記搬送ローラに形成された突起のピッチより大きく、前記ギアの歯数が前記突起の数より少なくなると、搬送ズレなどのギア固有の印刷画質を劣化させる要因が発生する周期が速くなり、色ズレによるスジなどを生じてしまう。また、ギアの歯数が突起の数より少ないため、搬送ローラに形成された突起から次の突起に印刷媒体を受け渡す間にギア歯面の接触などによる振動により、色ズレによるスジを生じ、印刷画質を劣化させてしまうことも考えられる。
【0007】
そこで、ギアの減速比を変えずにギアの歯数を増やし、搬送ローラに取り付けたギア1歯あたりの印刷媒体の搬送量を前記搬送ローラに形成された突起のピッチ以下にし、前記ギアの歯数を前記突起の数以上にすることにより、搬送ズレなどのギア固有の印刷画質を劣化させる要因が発生する周期を遅くし、色ズレによるスジなどを消していく。また、ギアの歯数が突起の数以上であるため、搬送ローラに形成された突起から次の突起に印刷媒体を受け渡す間にギア歯面の接触などによる振動をなくすことにより、色ズレによるスジを消し、印刷画質の劣化を防止する。
【0008】
しかし、ギアの歯数を何歯にすれば良いかということは分かっていないので、実験的に数種類の歯数のギアを用意し、印刷画像を評価しながらギアの歯数を決めている。さらに、前記ギアの歯数が同一であっても、平歯車とハスバ歯車といったギアの種類による影響も印刷画像に現れてしまう。
【0009】
以上のことより、イエロー、マゼンダ、シアンの3色のインクリボンを用いてフルカラー印刷をするような熱転写プリンタでは、高画質印刷を実現するために印刷媒体を搬送するローラ表面に形成する突起の形状や配列の工夫(特許文献1)や前記搬送ローラを駆動するギアの歯数とギアの種類といったものを検討しなければならなかった。このような実験的な方法で高画質の印刷物を得ることは、時間と費用がかかり合理的でない。
【特許文献1】特開2002−167071号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明では、印刷媒体を搬送するローラ表面に形成された突起のピッチと前記搬送ローラに取り付けたギア1歯あたりの印刷媒体の搬送量から高画質印画を実現する条件を求める方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
搬送ローラに取り付けたギア1歯あたりの印刷媒体の搬送量を前記搬送ローラに形成された突起のピッチ以下にし、前記ギアの歯数を前記突起の数以上にすることにより、搬送ズレなどのギア固有の印刷画質を劣化させる要因が発生する周期を遅くし、色ズレによるスジなどを消していく。また、ギアの歯数が突起の数以上であるため、搬送ローラに形成された突起から次の突起に印刷媒体を受け渡す間にギア歯面の接触などによる振動をなくすことにより、色ズレによるスジを消し、印刷画質の劣化を防止する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、印刷媒体を搬送するローラ表面に形成された突起のピッチと前記印刷媒体を搬送するローラに取り付けたギア1歯あたりの印刷媒体の搬送量から高画質印刷を実現するための条件を求めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は本発明の熱転写プリンタの断面図である。ここで1は印刷媒体である印刷用紙である。2は印刷用紙1を給紙する給紙ローラである。3は印刷用紙1を搬送する搬送ローラである。また、4は搬送ローラ3によって搬送される印刷用紙1を挟みながら従動する搬送押えローラである。5はサーマルヘッド、6はプラテンである。7は印刷用紙1に着色するインクリボンが収納されているインクリボンカセットである。
【0014】
多くの熱転写プリンタは、図1で、左方の印刷用紙1を給紙ローラ2で給紙し、印刷用紙1を右方に搬送する。印刷用紙1はその左端が搬送ローラ3と搬送押えローラ4に到達するまで搬送される。その後、サーマルヘッド5が印刷位置にされ、印刷用紙1とインクリボンカセット7内のインクリボンを搬送しながら印刷用紙1に着色する。イエロー、マゼンダ、シアンの各色の印刷をするために前記動作を繰り返してフルカラー印刷を行う。
【0015】
ここで、印刷用紙1を搬送する搬送ローラ3の表面には、印刷時、サーマルヘッド5とプラテン6で挟み込む数十Nという力がかかっても印刷用紙1を正確に搬送するよう多数の突起が規則的に形成されている。
【0016】
その外観を図2に示す。8は印刷用紙1を搬送する突起部である。この突起部8は、円周方向と長手方向にそれぞれ規則的に形成されている。突起部8の拡大図を図3に、円周方向の断面を図4に示す。
【0017】
本発明では、突起部8の円周方向のピッチは約0.34mmである。なお、搬送ローラ3の直径は6mmである。また、図2の9は搬送ローラ3を回転させるギアである。本発明では、ギア9の歯数は60である。
【0018】
従来、搬送ローラ3に形成された突起部8の円周方向でのピッチと搬送ローラ3を回転させる駆動系、特にギア9、1歯あたりの印刷用紙1の搬送量は関連付けられずに設計されることが多かった。一方、搬送ローラ3に形成される突起の形状や配列などに関しては、前述の特許文献1などがある。
【0019】
しかし、印刷媒体である印刷用紙1への印刷画質は、搬送ローラ3の表面に設けられた突起のみでなく、搬送ローラ3を駆動する駆動系の構成による影響もある。
【0020】
搬送ローラ3に取り付けたギア9の1歯あたりの印刷用紙1の搬送量が搬送ローラ3に形成された突起のピッチより大きく、前記ギア9の歯数が前記突起の数より少なくなると、搬送ズレなどのギア固有の印刷画質を劣化させる要因が発生する周期が速くなり、色ズレによるスジなどを生じてしまう。また、ギア9の歯数が突起の数より少ないため、搬送ローラに形成された突起から次の突起に印刷媒体を受け渡す間にギア歯面の接触などによる振動により、色ズレによるスジを生じ、印刷画質を劣化させてしまうことがある。
【0021】
そこで、駆動系の減速比を変えずにギア9の歯数を増やし、搬送ローラ3に取り付けたギア9の1歯あたりの印刷用紙1の搬送量を前記搬送ローラ3に形成された突起のピッチ以下にし、前記ギア9の歯数を前記突起の数以上にすることにより、搬送ズレなどのギア固有の印刷画質を劣化させる要因が発生する周期を遅くし、色ズレによるスジなどを消していく。また、ギア9の歯数が突起の数以上であるため、搬送ローラに形成された突起から次の突起に印刷媒体を受け渡す間にギア歯面の接触などによる振動をなくすことにより、色ズレによるスジを消し、印刷画質の劣化を防止する。
【0022】
また、ギア9の歯数を多くし、ギア9の1歯あたりの印刷用紙1の搬送量を少なくしすぎると、印刷画質の劣化は防げるが、歯数:zが多くなるためギア9の直径:DがD=mz(m:モジュール)という関係より大きくなってしまう。
【0023】
最近ではプリンタの用途が拡大し、デジタルカメラやデジタルビデオカメラで撮影した画像などを室内のみでなく、外出先や野外で使用するため携行することもあるため、モバイル性を高めようと外形サイズの小型化にも注力している。このような状況で、ギア9の1歯あたりの印刷用紙1の搬送量は少なくしつつ、小型化しなければならない。
【0024】
従来、最適な印画品位を得るために、ギア9の歯数を数種類用意して実験的に決めていた。しかし、このようにして最適な印画条件を得るのでは時間とコストを要し合理的でない。
【0025】
そこで本発明では、下記のような搬送ローラ3の突起部8の突起数:nと、ギア9の歯数:zの関係から、最適な印画品位を得るための条件の目安を示す。
【0026】
πD/n>=πD/z・・・・・・・・・・(1)
π:円周率
D:搬送ローラ3の直径
n:突起部8の同一円周断面における数
z:ギア9の歯数
式(1)より、n=<z・・・・・・・・・・(2)となる。
【0027】
但し、上記式(2)において、印刷用紙1を搬送する搬送ローラ3表面の同一円周上での突起のピッチは、前記搬送ローラ3に取り付けたギア9の1歯あたりの印刷用紙1の搬送量以上であること、および
上記式(1)より、搬送ローラ3に取り付けたギア9の1歯あたりの印刷用紙1の搬送量を前記搬送ローラ3に形成された突起のピッチ以下にすることにより、搬送ズレなどのギア固有の印刷画質を劣化させる要因が発生する周期を遅くし、色ズレによるスジなどを消し、印刷画質の劣化を防止する。
【0028】
さらに式(2)のようにすると搬送ローラ3に取り付けるギア9の歯数:zが搬送ローラ3に形成された突起の数:n以上であっても印刷画質の劣化を防止できる。
【0029】
但し、印刷用紙1を搬送する搬送ローラ3表面の同一円周上での突起のピッチは、前記搬送ローラ3に取り付けたギア9の1歯あたりの印刷用紙1の搬送量以上であることである。
【0030】
実施例では、搬送ローラ3の直径:D=6mm、突起部8の突起数:n=55、ギア9の歯数:z=60で、印刷画質の劣化の少ない、高画質な印刷ができるようになった。
【0031】
以上のように、印刷用紙1を搬送する搬送ローラ3表面の同一円周上での突起のピッチと前記搬送ローラ3に取り付けたギア9の1歯あたりの印刷用紙1の搬送量が略同一である、或いは、搬送ローラ3表面の同一円周上での突起の数とギア9の歯数が略同一であると印刷画質の劣化の少ない、高画質印刷が可能となる。
【0032】
また、プリンタの外形サイズの大型化を防ぐことができる。
【0033】
図1で示す実施例では、一組の搬送ローラ3と搬送押えローラ4が設けられているが、これに加えて、サーマルヘッド5の反対側に他の搬送ローラ(図示せず)と搬送押えローラ(図示せず)が設けられてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の熱転写プリンタの断面図
【図2】搬送ローラ3とギア9の外観図
【図3】突起部8の拡大図
【図4】搬送ローラ3の円周方向断面図
【符号の説明】
【0035】
1 印刷用紙
2 給紙ローラ
3 搬送ローラ
5 サーマルヘッド
6 プラテン
7 インクリボンカセット
8 突起部
9 ギア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタルカメラやデジタルビデオカメラなどで撮影した画像を印刷するような熱転写プリンタにおいて、印刷媒体を搬送するローラ表面の同一円周上での突起のピッチと前記ローラに取り付けたギア1歯あたりの前記印刷媒体の搬送量が略同一であることを特徴とする熱転写プリンタ。
【請求項2】
デジタルカメラやデジタルビデオカメラなどで撮影した画像を印刷するような熱転写プリンタにおいて、印刷媒体を搬送するローラ表面の同一円周上での突起のピッチが前記ローラに取り付けたギア1歯あたりの前記印刷媒体の搬送量より大きいことを特徴とする熱転写プリンタ。
【請求項3】
前記ギアを取り付けたローラが1箇所以上設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の熱転写プリンタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−282356(P2006−282356A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−106973(P2005−106973)
【出願日】平成17年4月4日(2005.4.4)
【出願人】(000104652)キヤノン電子株式会社 (876)
【Fターム(参考)】