説明

熱転写プリンタ

【課題】 サーマルヘッドによる加熱の影響で発生する用紙の反りを軽減することができる熱転写プリンタを提供する。
【解決手段】 サーマルヘッド11と、プラテンローラ14と、回転駆動される搬送ローラ21と、ピンチローラ24とを備えた熱転写プリンタにおいて、サーマルヘッド11と搬送ローラ21との間に、サーマルヘッド11で加熱された用紙61の加熱面に接触して、加熱面を凹面とするように用紙61を湾曲させるデカールローラ31とを設ける。さらに、サーマルヘッド11とデカールローラ31との間に位置する、用紙61の加熱面の反対面に接触するガイドローラ34を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、サーマルヘッドを用いて用紙を加熱することにより用紙に画像を形成する熱転写プリンタに関し、より特定的には、印刷された用紙の反りを軽減することができる熱転写プリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来からサーマルヘッドを用いて用紙を加熱し、用紙に画像を形成する熱転写プリンタが用いられている。この熱転写プリンタにおいて、用紙に画像を形成する方式としては、用紙に感熱発色層を設け、サーマルヘッドで所定温度に加熱することで所定の色に発色させる方式と、用紙にインクリボンを密着させた状態でサーマルヘッドにより加熱し、インクリボンの色を転写する方式(昇華型)とがある。
【0003】
これら熱転写プリンタにおいては、図4に示すように、サーマルヘッド11および搬送ローラ21が配置されている。サーマルヘッド11とプラテンローラ14とが対向して配置され、その下流側には、回転駆動される搬送ローラ21とピンチローラ24とが対向して配置されている。サーマルヘッド11とピンチローラ24との間にはガイドローラ81が設けられている。図4に示すように、プラテンローラ14、ガイドローラ81および搬送ローラ21の用紙61に対する接線は直線となるようにこれらのローラは配置されている。
【0004】
具体的な構造は図4に記載した熱転写プリンタとは異なるが、ロール紙のカールを補正する機構を備えたプリンタとして、特許文献1から4に記載されたようなものがある。
【特許文献1】実開昭60−3751号公報
【特許文献2】特開平10−265110号公報
【特許文献3】実開平04−19541号公報
【特許文献4】特開平07−267449号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
熱転写プリンタにおいては、サーマルヘッド11による用紙61の加熱が不可欠であるが、用紙61を加熱することにより、用紙61の加熱面側に凸の反りが発生するという問題があった。
【0006】
上記の特許文献1から4に記載されたプリンタはいずれも、ロール紙のカールを補正する機構を備えており、これらのプリンタにおいては、ロール紙のカールを軽減することが可能であるが、サーマルヘッド11による加熱の影響で発生する用紙61の反りは全く考慮されておらず、これを補正することはできない。
【0007】
したがって、この発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、サーマルヘッドによる加熱の影響で発生する用紙の反りを軽減することができる熱転写プリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に基づいた熱転写プリンタのある局面に従えば、用紙に接触して用紙の加熱面を加熱するサーマルヘッドと、上記サーマルヘッドに対向して配置され、上記サーマルヘッドに用紙を押し当てるプラテンローラと、上記サーマルヘッドにより用紙を加熱する動作における上記サーマルヘッドの下流側に位置し、上記サーマルヘッドと上記プラテンローラとの間に挟持された用紙を引き出す方向に搬送する、回転駆動される搬送ローラと、上記搬送ローラに対向して配置され、上記搬送ローラに用紙を押し当てるピンチローラと、上記サーマルヘッドと上記搬送ローラとの間に位置し、上記サーマルヘッドで加熱された用紙の加熱面に接触して、加熱面を凹面とするように用紙を湾曲させるデカールローラと、上記サーマルヘッドと上記デカールローラとの間に位置する、用紙の加熱面の反対面に接触するガイドローラとを備え、上記搬送ローラは、用紙の加熱面の反対面に接触し、用紙は、サーマルヘッドの加熱によって形成された画像が紫外線の照射により定着される感熱発色層を設けた感熱紙である。
【0009】
この発明に基づいた熱転写プリンタの他の局面に従えば、用紙に接触して用紙の加熱面を加熱するサーマルヘッドと、上記サーマルヘッドに対向して配置され、上記サーマルヘッドに用紙を押し当てるプラテンローラと、上記サーマルヘッドにより用紙を加熱する動作における上記サーマルヘッドの下流側に位置し、上記サーマルヘッドと上記プラテンローラとの間に挟持された用紙を引き出す方向に搬送する、回転駆動される搬送ローラと、上記搬送ローラに対向して配置され、上記搬送ローラに用紙を押し当てるピンチローラと、上記サーマルヘッドと上記搬送ローラとの間に位置し、上記サーマルヘッドで加熱された用紙の加熱面に接触して、加熱面を凹面とするように用紙を湾曲させるデカールローラとを備えている。
【0010】
上記熱転写プリンタにおいて好ましくは、上記サーマルヘッドと上記デカールローラとの間には、用紙の加熱面の反対面に接触するガイドローラが設けられている。
【0011】
上記熱転写プリンタにおいてさらに好ましくは、上記搬送ローラは、用紙の加熱面の反対面に接触する。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る熱転写プリンタによると、サーマルヘッドの下流側に、用紙の加熱面を凹面とするように用紙を湾曲させるデカールローラを備えたので、サーマルヘッドの加熱による用紙の反りを軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態における熱転写プリンタについて、図1から図3を参照して説明する。なお、図1および図2は、本実施の形態における熱転写プリンタの要部の構造を示す説明図であり、図3はその変形例である。
【0014】
本実施の形態の熱転写プリンタは、用紙61に接触して用紙61の加熱面を加熱するサーマルヘッド11と、サーマルヘッド11に対向して配置され、サーマルヘッド11に用紙61を押し当てるプラテンローラ14と、サーマルヘッド11により用紙61を加熱する動作におけるサーマルヘッド11の下流側に位置し、サーマルヘッド11とプラテンローラ14との間に挟持された用紙61を引き出す方向に搬送する、回転駆動される搬送ローラ21と、搬送ローラ21に対向して配置され、搬送ローラ21に用紙61を押し当てるピンチローラ24と、サーマルヘッド11と搬送ローラ21との間に位置し、サーマルヘッド11で加熱された用紙61の加熱面に接触して、加熱面を凹面とするように用紙61を湾曲させるデカールローラ31と、サーマルヘッド11とデカールローラ31との間に位置する、用紙61の加熱面の反対面に接触するガイドローラ34とを備え、搬送ローラ21は、用紙61の加熱面の反対面に接触し、用紙61は、サーマルヘッド11の加熱によって形成された画像が紫外線の照射により定着される感熱発色層を有する感熱紙である。
【0015】
図1に示すように、本実施の形態の用紙61は、ロール紙であり、軸63に巻きつけられた状態でプリンタ内に内蔵されている。軸63に巻きつけられた用紙61を、サーマルヘッド11などを備えた印刷部に送り出すために、給紙ローラ51がロール紙の外周面に接触した状態で設けられている。給紙ローラ51を回転駆動させることで、ロール紙が印刷部に送り出される。
【0016】
給紙ローラ51により印刷部に送り出された用紙61の先端をガイドするため、給紙ガイドローラ54が搬送ローラ21の手前に設けられている。給紙ガイドローラ54に案内されて、用紙61の先端は、搬送ローラ21とそれに対向して配置されたピンチローラ24との間に挟持される。搬送ローラ21は、モータにより回転駆動される。
【0017】
用紙61の先端は、搬送ローラ21に接しながら、印刷部の方向に送られる。搬送ローラ21の印刷部の方向には、第1のペーパーガイド37が設けられている。この第1のペーパーガイド37に隣接してデカールローラ31が設けられている。デカールローラ31と対向して、第2のペーパーガイド38が設けられている。さらに、第2のペーパーガイドに隣接して、ガイドローラ34が設けられている。このデカールローラ31およびガイドローラ34の機能については、後で説明する。ガイドローラ34に対向して、第3のペーパーガイド39が設けられている。
【0018】
印刷部に送られた用紙61は、サーマルヘッド11とプラテンローラ14との間を通過し、一旦図1および図2の右端まで送られる。図1および図2においては、サーマルヘッド11とプラテンローラ14との間に隙間がない状態を示しているが、サーマルヘッド11は移動自在に構成されている。サーマルヘッド11は、図1および図2に示す用紙61を加熱する加熱位置と、プラテンローラ14との間に隙間を形成した給紙位置との間を移動することができる。
【0019】
用紙61を給紙する工程および後で説明する、感熱発色層を定着させる工程においては、サーマルヘッド11は給紙位置、すなわち、プラテンローラ14との間に隙間を形成した状態となるよう制御される。用紙61を加熱する動作においては、サーマルヘッド11はプラテンローラ14と接触する状態となるように制御される。サーマルヘッド11は加熱部12を有しており、この加熱部12の温度を発色させる色に合わせて種々の温度に変化させることができる。
【0020】
サーマルヘッド11に隣接して、定着装置18が設けられている。この定着装置18は、サーマルヘッド11で加熱されて発色した感熱発色層の色を定着させる紫外線ランプを内蔵している。感熱発色層で発色した色に合わせて二種類の紫外線ランプが内蔵されている。
【0021】
用紙61は、サーマルヘッド11により加熱して感熱発色層を発色させる前に、図1および図2の右端まで送られる。そして、サーマルヘッド11が加熱位置に移動し、プラテンローラ14との間に用紙61を挟持する。続いて用紙61は、回転駆動される搬送ローラ21により図1および図2の左方向に送られる。
【0022】
用紙61に設けられている感熱発色層は、イエローの感熱発色層と、マゼンタの感熱発色層と、シアンの感熱発色層の3層からなり、それぞれ異なる温度で発色する。第1工程では、イエローの感熱発色層に適した温度にサーマルヘッド11で加熱しイエローを発色させる。イエローの発色が終わると、用紙61の先端は、一旦右端まで送られ、再度左方向に送られながら、定着装置18によりイエローの感熱発色層用の紫外線が照射され、イエローが定着する。
【0023】
第2工程では、再度、用紙61の先端が右端まで送られ、左方向に送られながら、マゼンタの感熱発色層に適した温度にサーマルヘッド11で加熱し、マゼンタを発色させる。マゼンタを発色させた用紙61を、右方向に送りながら定着装置18によりマゼンタの感熱発色層用の紫外線が照射され、マゼンタが定着する。
【0024】
第3工程では、用紙61が左方向に送られながら、シアンの感熱発色層に適した温度にサーマルヘッド11により加熱され、シアンを発色させる。シアンは極めて高温で発色するため、定着は不要である。シアンの発色により印刷が終了する。このように、本実施の形態の熱転写プリンタにおいては、印刷が終了するまでに用紙61を4往復させる必要がある。
【0025】
通常、熱転写プリンタにおいて用紙をサーマルヘッドで加熱すると、加熱面側が凸の反りが生ずる。本実施の形態の熱転写プリンタのように、複数回用紙61を加熱する場合には、その影響はさらに大きくなる。そこで、本実施の形態の熱転写プリンタにおいては、サーマルヘッド11で加熱された用紙61に、ガイドローラ34、搬送ローラ21およびデカールローラ31の組み合わせにより、加熱面を凹面とするような湾曲を与える。
【0026】
このガイドローラ34およびデカールローラ31は、サーマルヘッド11の加熱する工程における下流側に隣接して設けられている。これによりサーマルヘッド11により加熱した直後の、用紙61がまだ熱を持っている状態で、用紙61の加熱面を凹面とする湾曲を与えるので、加熱による用紙61の反りを効果的に補正することができる。
【0027】
また、本実施の形態では、デカールローラ31とガイドローラ34とを近接して設けているので、デカールローラ31により、比較的小さい曲率半径の湾曲を用紙61に与えることができる。これにより用紙61の反りを補正する効果をさらに確実なものとすることができる。
【0028】
熱転写プリンタの構造をより構造を簡単にするために、ガイドローラ34を省略し、図3に示すように、デカールローラ31と、プラテンローラ14および搬送ローラ21の組み合わせにより、用紙61に加熱面を凹面とする湾曲を与えるようにしても、用紙61の反りをある程度補正することが可能である。
【0029】
なお、本実施の形態においては、感熱発色層を有する用紙61を用いる熱転写プリンタについて説明したが、インクリボンを用紙に接触させた状態で加熱して用紙に画像を形成する昇華型プリンタを構成することも可能である。この場合でも、上記のようなデカールローラを、サーマルヘッドの下流側に設けることにより、用紙に加熱面を凹面とする湾曲を与えることができるので、加熱により発生する用紙の反りを補正することができる。
【0030】
また、本実施の形態では、用紙61に対して、プラテンローラ14と搬送ローラ21とを同じ側に配置している。これにより、搬送ローラ21は、用紙61の裏面(加熱面と反対側の面)に接触することになるので、用紙61の表面(加熱面)の損傷を最小限にすることができる。ただし、装置の配置の都合などにより、これらの配置は適宜変更することができる。
【0031】
なお、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施の形態のみによって解釈されるのではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】この発明に基づいた実施の形態における熱転写プリンタの要部の構造を示す説明図である。
【図2】この発明に基づいた実施の形態における熱転写プリンタの要部の構造を示す説明図である。
【図3】この発明に基づいた実施の形態における熱転写プリンタの要部の構造を示す説明図である。
【図4】従来の熱転写プリンタの要部の構造を示す説明図である。
【符号の説明】
【0033】
11 サーマルヘッド、14 プラテンローラ、18 定着装置、21 搬送ローラ、24 ピンチローラ、31 デカールローラ、34 ガイドローラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙に接触して用紙の加熱面を加熱するサーマルヘッドと、
前記サーマルヘッドに対向して配置され、前記サーマルヘッドに用紙を押し当てるプラテンローラと、
前記サーマルヘッドにより用紙を加熱する動作における前記サーマルヘッドの下流側に位置し、前記サーマルヘッドと前記プラテンローラとの間に挟持された用紙を引き出す方向に搬送する、回転駆動される搬送ローラと、
前記搬送ローラに対向して配置され、前記搬送ローラに用紙を押し当てるピンチローラと、
前記サーマルヘッドと前記搬送ローラとの間に位置し、前記サーマルヘッドで加熱された用紙の加熱面に接触して、加熱面を凹面とするように用紙を湾曲させるデカールローラと、
前記サーマルヘッドと前記デカールローラとの間に位置する、用紙の加熱面の反対面に接触するガイドローラとを備え、
前記搬送ローラは、用紙の加熱面の反対面に接触し、
用紙は、サーマルヘッドの加熱によって形成された画像が紫外線の照射により定着される感熱発色層を設けた感熱紙である、熱転写プリンタ。
【請求項2】
用紙に接触して用紙の加熱面を加熱するサーマルヘッドと、
前記サーマルヘッドに対向して配置され、前記サーマルヘッドに用紙を押し当てるプラテンローラと、
前記サーマルヘッドにより用紙を加熱する動作における前記サーマルヘッドの下流側に位置し、前記サーマルヘッドと前記プラテンローラとの間に挟持された用紙を引き出す方向に搬送する、回転駆動される搬送ローラと、
前記搬送ローラに対向して配置され、前記搬送ローラに用紙を押し当てるピンチローラと、
前記サーマルヘッドと前記搬送ローラとの間に位置し、前記サーマルヘッドで加熱された用紙の加熱面に接触して、加熱面を凹面とするように用紙を湾曲させるデカールローラとを備えた、熱転写プリンタ。
【請求項3】
前記サーマルヘッドと前記デカールローラとの間には、用紙の加熱面の反対面に接触するガイドローラが設けられている、請求項2に記載の熱転写プリンタ。
【請求項4】
前記搬送ローラは、用紙の加熱面の反対面に接触する、請求項2または3に記載の熱転写プリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−7662(P2006−7662A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−190054(P2004−190054)
【出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】