説明

熱転写プリンタ

【課題】安定した印画濃度を得るために熱転写ユニット周辺の温度変動を抑制し、良好な印字を行うことができる熱転写プリンタを提供する。
【解決手段】熱転写プリンタと、少なくともインクを転写するインク転写部を収容するブースと、空気を取り込み、空気を温度調整する温度調整機構を備えた給気装置と、前記給気装置から排出される温度調整された前記外気を前記ブース内に給気する給気ダクトと、前記ブース内の空気を外部に排気する排気ダクトと、備え、前記ブース内の温度が規定された温度に調整される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色インクを転写して画像を形成する熱転写ユニットを備えた熱転写プリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から所定の色インクを転写して画像を形成する熱転写ユニットを備えた熱転写プリンタが知られている。この種の熱転写プリンタは、熱転写ユニットにおいて、インクリボンのフィルム基材と共に転写紙としての連続状原反をサーマルヘッドとプラテンとで挟み当該フィルム基材のインクに所定の熱エネルギを加えることによって、インクが帯状の連続状原反に転写され画像が形成される。
【0003】
この種の熱転写プリンタにおいて、インクリボンの温度上昇対策のためにインクリボンに外気を吹き付ける手段を備えた熱転写プリンタや防塵対策及びサーマルヘッドの温度上昇対策のために熱転写プリンタを1つの筐体内に収容し、サーマルヘッドに外気を吹き付ける手段を備えた熱転写プリンタが存在する。(特許文献1、及び特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−114606号公報
【特許文献2】特開2008−080647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方で、この種の熱転写プリンタは、外気温度と熱転写ユニットのインク転写部周辺に温度差があると、印画濃度が変動し安定した印刷が行えない問題がある。例えば、外気温度が低い場合には、サーマルヘッドや転写紙、及びインクリボンの温度も低くなり、印画濃度が低くなってしまう。
【0006】
本発明は、このような問題の解消を課題の一つとし、安定した印画濃度を得るために熱転写ユニットのインク転写部周辺の温度変動を抑制し、良好な印字を行うことができる熱転写プリンタを提供しようというものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は次のような構成を採用する。なお、本発明の理解を容易にするため括弧付きの符号を付すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0008】
すなわち、請求項1に係る熱転写プリンタ(P)は、サーマルヘッド(17)とプラテン(16)との間でインクリボン(18)と共に転写紙(11)を挟み込み前記サーマルヘッドの発熱素子に熱エネルギを加えることによって、インクリボンの各色インクの画像が当該転写紙に転写されるインク転写部を備えた熱転写プリンタと、少なくとも前記インクを転写するインク転写部を収容するブース(2)と、空気を取り込み、空気を温度調整する温度調整機構を備えた給気装置(5)と、前記給気装置から排出される温度調整された前記外気を前記ブース内に給気する給気ダクト(8)と、前記ブース内の空気を外部に排気する排気ダクト(9)と、を備え、前記ブース内の温度が規定された温度に調整されることを特徴とする。
【0009】
また、請求項2に係る熱転写プリンタは、請求項1に記載の熱転写プリンタにおいて、前記排気ダクトから排気される空気の一部が前記給気ダクトに戻されることを特徴とする。
【0010】
また、請求項3に係る熱転写プリンタは、請求項1、又は2に記載の熱転写プリンタにおいて、前記サーマルヘッドの温度を制御する温度制御手段と、前記プラテンの温度を制御する温度制御手段と、を更に備えている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、印刷濃度が変動することなく安定した印字を行うことができる。また、転写紙に塵や埃が付着して印刷不良を起こすことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】熱転写プリンタの一例を示す簡略図である。
【図2】多色熱転写プリンタ本体の一実施形態を示す概略構成図である。
【図3】他の熱転写プリンタの一例を示す簡略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の熱転写プリンタPの実施の形態について説明する。
【0014】
―第1の実施形態―
図1に示すように、本実施形態の熱転写プリンタPは、多色熱転写プリンタ本体10が所定の空間を形成するブース2内に収容される。このブース2はクリーンルームとして機能し、ブース2の天上面には、複数の給気口2aが設けられており、この給気口2aは、空気をブース内に給気するための給気装置5と給気用ダクト8を介して連絡している。
【0015】
給気用ダクト8は、各給気口2aに応じて分岐しており、それぞれの給気口2aと連絡する。
【0016】
一方、給気装置5は、外部から空気を取り入れるファン6と、ブース2内に給気する空気の温度を調整するための温度調整装置7と、を備えており、例えば、ファン6によって外部から取り込まれた空気が温度調整装置7によって所定の温度に加熱(調整)され、その調整された空気が給気用ダクト8を介してブース2内に給気される。
【0017】
なお、温度調整装置7は、ブース2内の温度が規定された温度となるように給気する空気の温度を調整する。よって、図示しないが、ブース2内にはブース2内の温度を測定する測定手段が設けられており、温度調整装置7は当該測定手段により測定された温度情報に応じて給気する温度を調整する。ブース内の温度は30℃以上60℃未満の範囲で調整され、好適には、35℃〜40℃の範囲で調整される。一般的にサーマルヘッド本体の温度は40℃、プラテン本体の温度は60℃程度に設定されて調整されるため、30℃未満であればサーマルヘッド、インクリボン、転写紙の温度も低下し印画濃度が低くなってしまい、60℃以上であれば本来であれば印画されない部分にも印画されてしまう場合があるなどの不具合が発生するおそれがあるからである。
【0018】
また、給気口2aと吸気用ダクト8との間には、フィルタ4が設けられている。このフィルタ4は、例えば、0.3μm程度の粒子を除去可能な一般的にHEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルタと称されるものが用いられる。このフィルタ4によって、ブース2内に給気される空気から塵や埃が除去される。
【0019】
このようにしてブース2の内部は、一定の温度にコントロールされるので、印刷時において、インクが転写紙に転写されるインク転写部を構成するサーマルヘッド17、プラテン16、インクリボン18、及び転写紙が外気温度の変動を受けない。よって、印画濃度が安定し、良好な印字を行うことができる。また、ブース2の内部は、クリーンな空気で常時満たされるため、転写紙に塵や埃が付着して印刷不良を起こすことを防止できる。
【0020】
また、ブース2の下端面には複数の排気口2bが設けられており、この排気口2bは外部と連絡する排気ダクト9と接続される。そして、ブース2内の空気を当該排気ダクト9から排気することでブース2内の空気が清潔に保たれる。
【0021】
また、この排気ダクト9は、その一部が分岐されて給気装置5(又は給気用ダクト8)と連絡し、排気される空気の一部を給気用の空気として循環させるようになっている。このようにすれば、一度温度調整された一部の空気が再度用いられることになり、省エネルギ化を図れる。
【0022】
ここで、ブース2内に設けられる多色熱転写プリンタ本体10について図2を用いて説明する。図2に示すように、この多色熱転写プリンタ本体10は、各々所定の色インクの画像を転写紙としての連続状転写箔原反11に転写する複数個の熱転写ユニット15(I、II、III、IV)が、直列で配列されることにより構成される。
【0023】
連続状転写箔原反11の多色熱転写プリンタ本体10内における流れ方向に見て、上流側には未転写の連続状転写箔原反11を繰り出す繰り出しロール12が設置され、下流側には既転写の連続状転写箔原反11を巻き取る巻き取りロール13が設置される。そして当該連続状転写箔原反11が両ロール12、13間を所定速度で走行するように制御される。
【0024】
熱転写ユニットI、II、III、IVは、上記繰り出しロール12と上記巻き取りロール13との間において、連続状転写箔原反7の上流側から下流側に向かって、藍、赤、黄、下地色としての白の各色インクを刷るように並べられる。もちろん、この熱転写ユニットI、II、III、IVの配列は、藍、赤、黄、白の順に限られるものではない。また、四ユニットに限られるものでもなく、三色刷りの三ユニット、二色刷りの二ユニットにしてもよいし、他の色インクをさらに印刷することができるようにユニットを四基からさらに増設してもよい。
【0025】
図2に示すように、藍色インクの熱転写ユニットIには、水平方向に走行する連続状転写箔原反7を上方向に迂回させるためのガイドローラ14が設けられる。これらガイドローラ14の上方には、迂回する連続状転写箔原反11を走行させるプラテン16が配置される。プラテン16の上方には、サーマルヘッド17がプラテン16に対向するように配置される。プラテン16とサーマルヘッド17との間には藍色のインクリボン18が配置される。
【0026】
また、本実施形態の多色熱転写プリンタ本体10は、プラテン12を加温する加温手段を備えている。この加温手段には、図示しないが、例えば、遠赤外線ヒータが用いられ、この遠赤外線ヒータは、プラテン16の下方に設置される。この遠赤外線ヒータは、この多色熱転写プリンタが印刷を開始する前にプラテン16が所定の温度(好ましくは連続印刷時の飽和温度)に加温制御される。プラテン16はその表面がゴムでできているため、転写し続けることにより蓄熱し、径が変動し、それに伴い連続状転写箔原反11の走行速度が変化するが、この加温手段によってプラテン16をあらかじめ連続印刷時の飽和温度まで加温しておくことによって、そのような不都合を解消することができる。
【0027】
なお、本実施形態では、加温手段として遠赤外線ヒータを用いたが、特にこの形態に限られるものではなく、公知の技術を用いることが可能である。
【0028】
サーマルヘッド17は、垂直方向に上下に移動可能であり、画像を転写する際には、インクリボン18をプラテン16に向かって押し付けるようになっている。
【0029】
このサーマルヘッド17は、その走査方向にライン状に配列され解像度分の抵抗を備えた複数の発熱素子を備えている。そして、図示しない制御部によってサーマルヘッド17の各発熱素子に所定の熱エネルギが加えられるように制御され、各発熱素子に対応する当該インクリボン18のインクが連続状転写箔原反11に転写されることで所定の印刷画像を形成するためのインク層が形成される。
【0030】
また、本実施形態の多色熱転写プリンタ本体10は、サーマルヘッド17を加温する加温手段を備えている。本実施形態の加温手段は、図示しないが、印刷前にサーマルヘッド17が所定の温度(連続印刷時の飽和温度)まで加温制御され、サーマルヘッド17周辺の温度とプラテン16周辺の温度とがほぼ一定に保たれるように制御される。なお、このようなサーマルヘッド17を加温する加温手段は、従来から公知の他の加温手段を適用することができる。
【0031】
ところで、藍色インクの熱転写ユニットIにおけるインクリボン18は、連続状フィルム等の表面に藍色インクが塗布されてなるもので、その繰り出しロール23と巻き取りロール24が、プラテン16及びサーマルヘッド17を連続状転写箔原反11の上流側と下流側から挟むように配置される。インクリボン18の繰り出しロール23と巻き取りロール24は、印刷時において、インクリボン18がプラテン16の回りを連続状転写箔原反11と同じ速度で走行するように制御される。
【0032】
このようにして、連続状転写箔原反11がプラテン16とサーマルヘッド17との間をインクリボン18と重なった状態で通過しつつ、その表面に藍色インクの画像が熱転写される。
【0033】
藍色インクの熱転写ユニットIは、以上のように構成されるが、他の色インクの熱転写ユニットII、及び図示しない熱転写ユニットIII、IVも同様に構成される。ただ、インクリボン18のインクの色が異なるのみである。従って、他の色インクの熱転写ユニットII、III、IVについての詳細な説明は省略する。
【0034】
本実施形態の多色熱転写プリンタ本体10は、サーマルヘッド17とプラテン16に温度調整機構が設けられているため、サーマルヘッド17周辺の温度も一定の温度にコントロールされる。また、上述したように、ブース2内の温度も一定の温度にコントロールされるため、インク転写部付近のプラテン16、サーマルヘッド17、インクリボン18、及び転写紙は、極端な温度変動を受けないため、印画濃度が安定し、良好な印字を行うことができる。
【0035】
―第2の実施形態―
上述した実施形態の熱転写プリンタPは、熱転写プリンタ本体10の全体をブースによって覆うのに対して本実施形態の熱転写プリンタP1は、熱転写プリンタ本体10の各熱転写ユニット15の一部(インク転写部)のみをブースで覆う点で異なる。
【0036】
本実施形態の熱転写プリンタP1は、各熱転写ユニット15のサーマルヘッド17、プラテン16、及びサーマルヘッド17及びプラテン16の間に配置されるインクリボン18及び転写紙11を囲むようにして設けられる複数のブース30を備えている。このブース30には、インクリボン18の出入口として機能するインクリボン出入口部31と、転写紙の出入口として機能する転写紙出入口部32と、を備える。
【0037】
各ブース30の天上面には、給気口2aが設けられており、この給気口2aは、空気をブース内に給気するための給気装置5と給気用ダクト8を介して連絡している。
【0038】
給気用ダクト8は、各ブース30の給気口2aに応じて分岐しており、それぞれの給気口2aと連絡する。
【0039】
一方、給気装置5は、外部から空気を取り入れるファン6と、ブース2内に給気する空気の温度を調整するための温度調整装置7と、を備えており、例えば、ファン6によって外部から取り込まれた空気が温度調整装置7によって所定の温度に加熱(調整)され、その調整された空気が給気用ダクト8を介してブース30内に給気される。
【0040】
なお、温度調整装置7は、ブース30内の温度が規定された温度となるように給気する空気の温度を調整する。よって、図示しないが、ブース30内にはブース30内の温度を測定する測定手段が設けられており、温度調整装置7は当該測定手段により測定された温度情報に応じて給気する温度を調整する。ブース内の温度は30℃以上60℃未満の範囲で調整され、好適には、35℃〜40℃の範囲で調整される。一般的にサーマルヘッド本体の温度は40℃、プラテン本体の温度は60℃程度に設定されて調整されるため、30℃未満であればサーマルヘッド、インクリボン、転写紙の温度も低下し印画濃度が低くなってしまい、60℃以上であれば本来であれば印画されない部分にも印画されてしまう場合があるなどの不具合が発生するおそれがあるからである。
【0041】
また、給気口2aと吸気用ダクト8との間には、フィルタ4が設けられている。このフィルタ4は、例えば、0.3nm程度の粒子を除去可能な一般的にHEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルタと称されるものが用いられる。このフィルタ4によって、ブース30内に給気される空気から塵や埃が除去される。
【0042】
このようにしてブース30の内部は、一定の温度にコントロールされるので、印刷時において、インク転写部としてのサーマルヘッド17、プラテン16、インクリボン18、及び転写紙が外気温度の変動を受けない。よって、印画濃度が安定し、良好な印字を行うことができる。また、ブース30の内部は、クリーンな空気で常時満たされるため、転写紙に塵や埃が付着して印刷不良を起こすことを防止できる。また、実施の形態1に示す熱転写プリンタPは熱転写プリンタ全体をブース2で覆うために装置全体が大型化するものの、本実施形態の熱転写プリンタP1は温度コントロールが必要な領域(インク転写部)のみをブース30で囲むようになっているため小型化が図れる。
【0043】
また、各ブース30の下端面には排気口2bが設けられており、この排気口2bは外部と連絡する排気ダクト9と接続される。そして、ブース30内の空気を当該排気ダクト9から排気することでブース30内の空気が清潔に保たれる。
【0044】
また、この排気ダクト9は、その一部が分岐されて給気装置5(又は給気用ダクト8)と連絡し、排気される空気の一部を給気用の空気として循環させるようになっている。このようにすれば、一度温度調整された一部の空気が再度用いられることになり、省エネルギ化を図れる。
【0045】
このように本実施形態の熱転写プリンタP1は、特に印刷時に温度変動によって印字に影響する部分のみをブース30で覆い、ブース内部の温度をコントロールすることにより印刷濃度が変動することなく安定して印字を行うことができる。
【0046】
なお、本発明は、上述した実施の形態及び実施例に限定されることなく種々の形態にて実施可能である。例えば、本実施形態の熱転写プリンタは、各々所定の色インクの画像を連続状転写箔原反に印刷する複数個の熱転写ユニット15を備えた多色熱転写プリンタを一例として説明しているものの、一般に熱転写プリンタと称される他のプリンタにも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0047】
I、II、III、IV…熱転写ユニット
7…連続状転写箔原反
12…プラテン
13…サーマルヘッド
14…インクリボン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーマルヘッドとプラテンとの間でインクリボンと共に転写紙を挟み込み前記サーマルヘッドの発熱素子に熱エネルギを加えることによって、インクリボンの各色インクの画像が当該転写紙に転写されるインク転写部を備えた熱転写プリンタと、
少なくとも前記インクを転写するインク転写部を収容するブースと、
空気を取り込み、空気を温度調整する温度調整機構を備えた給気装置と、
前記給気装置から排出される温度調整された前記外気を前記ブース内に給気する給気ダクトと、
前記ブース内の空気を外部に排気する排気ダクトと、
を備え、
前記ブース内の温度が規定された温度に調整されることを特徴とする熱転写プリンタ。
【請求項2】
前記排気ダクトから排気される空気の一部が前記給気ダクトに戻されることを特徴とする請求項1に記載の熱転写プリンタ。
【請求項3】
前記サーマルヘッドの温度を制御する温度制御手段と、
前記プラテンの温度を制御する温度制御手段と、
を更に備えていることを特徴とする請求項1、又は2に記載の熱転写プリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−148496(P2012−148496A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9293(P2011−9293)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】