説明

熱転写プリンタ

【課題】インクリボンを収容するリボンカセット内の温度上昇を極力抑えることのできる熱転写プリンタを提供することである。
【解決手段】インクリボン111を収納したリボンカセット11とサーマルヘッド21とを有し、インクリボン111のサーマルヘッド21による用紙Sへの熱転写によってプリントを行う熱転写プリンタであって、気流を発生させる気流発生機構115と、気流発生機構115による気流の発生を制御する制御手段10とを有し、リボカセット11には、サーマルヘッド21の少なくとも一部が配置される気流通路113が形成され、気流発生機構115は、発生する気流がリボンカセット11の気流通路113を通るように配置された構成となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクリボンの熱転写によって用紙に対するプリントを行う熱転写プリンタ及びそれに用いられるリボンカセットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載のカラープリンタが知られている。このカラープリンタでは、複数の端面型サーマルヘッドが用紙を直線的に搬送する搬送路に沿って直列的に配置され、各サーマルヘッドに対して用紙を挟んで対向するようにプラテンが配置されている。そして、各サーマルヘッドとプランテンとの間に、色インクリボン(イエロー、マゼンタ、シアン、黒の各インクリボン)が供給されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
特開平09−094987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種の熱転写カラープリンタでは、各プリント色に対応したインクリボンをカセット化して、インクリボンの交換を容易にすることが考えられる。しかしながら、そのカセット化に伴って、サーマルヘッドから発生する熱がカセット内にこもってプリント色に影響を与えるおそれがあり、また、サーマルヘッドの耐熱性を更に向上させなければならずコストアップの要因になる。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、インクリボンを収容するリボンカセット内の温度上昇を極力抑えることのできる熱転写プリンタを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る熱転写プリンタは、インクリボンを収納したリボンカセットとサーマルヘッドとを有し、該サーマルヘッドと用紙との間に前記インクリボンが配置されるように前記リボンカセットが着脱自在に設けられ、前記インクリボンのサーマルヘッドによる前記用紙への熱転写によってプリントを行う熱転写プリンタであって、気流を発生させる気流発生機構と、該気流発生機構による気流の発生を制御する制御手段とを有し、前記リボカセットには、前記サーマルヘッドの少なくとも一部が配置される気流通路が形成され、前記気流発生機構は、発生する気流が前記リボンカセットの前記気流通路を通るように配置された構成となる。
【0007】
このような構成により、制御手段の制御のもとに気流発生機構にて発生する気流がリボンカセットの気流通路を通るようになるので、該気流通路にあるサーマルヘッドの少なくとも一部が流れる気流にさらされて当該サーマルヘッドがより効率的に冷却されるようになる。
【0008】
また、本発明に係る熱転写プリンタは、異なる色のインクリボンを収納した複数のリボンカセットと、該複数のリボンカセットのそれぞれに対応させて設けられたサーマルヘッドとを有し、該サーマルヘッドと用紙との間にインクリボンが配置されるように前記複数のリボンカセットのそれぞれが着脱自在に設けられ、各インクリボンのサーマルヘッドによる前記用紙への熱転写によってカラープリントを行う熱転写プリンタであって、各リボンカセットに対して独立して設けられた気流を発生させる気流発生機構と、各リボンカセットに対応して設けられた前記気流発生機器による気流の発生を制御する制御手段とを有し、前記各リボンカセットには、前記サーマルヘッドの少なくとも一部が配置される気流通路が形成され、前記気流発生機構は、発生する気流が対応するリボンカセットの気流通路を通るように配置された構成となる。
【0009】
このような構成により、異なる色のインクリボンを収納した複数のリボンカセットのそれぞれにおいて、制御手段の制御のもとに気流発生機構にて発生する気流が気流通路を通るようになるので、該気流通路にある対応する色のプリントを行うサーマルヘッドの少なくとも一部が流れる気流にさらされて当該サーマルヘッドがより効率的に冷却されるようになる。
【0010】
本発明に係る熱転写プリンタにおいて、前記リボンカセットの筐体に2つの開口が形成され、前記気流通路は前記リボンカセットの2つの開口の間に形成され、前記リボンカセットの2つの開口のうちの一方の開口から前記気流発生機構にて発生する気流が導入される構成とすることができる。
【0011】
このような構成により、リボンカセットの筐体に形成された2つの開口のうちの一方の開口から気流発生機構にて発生する気流が導入されると、その気流が気流通路を通って他方の開口からリボンカセットの外部に出ていく。
【0012】
また、本発明に係る熱転写プリンタにおいて、前記気流の導入される前記リボンカセットの開口に当該熱転写プリンタの外部に続くダクトが結合した構成とすることができる。
【0013】
このような構成により、熱転写プリンタの外部からダクトを通して取り入れられる空気による気流が、リボンカセットの筐体に形成された2つの開口のうちの一方の開口から気流通路に導入されて、該気流通路を通って他方の開口からリボンカセットの外部に出ていく。
【0014】
本発明に係る熱転写プリンタにおいて、前記リボンカセットの一方の開口に前記気流発生機構にて発生する気流を導入する部分を密閉する第1の密閉部材と、前記リボンカセットの開口と前記ダクトとの接合部に設けられた第2の密閉部材とを有する構成とすることができる。
【0015】
このような構成により、気流通路以外に漏れる気流を極力少なくすることができる。
【0016】
更に、本発明に係る熱転写プリンタにおいて、前記サーマルヘッドに接するように設けられたヒートシングを有し、該ヒートシングの少なくとも一部は、前記気流通路内に配置される構成とすることができる。
【0017】
このような構成により、サーマルヘッドの少なくとも一部とともに該サーマルヘッドに接するヒートシンクの少なくとも一部が気流通路を通る気流にさらされるようになるので、サーマルヘッドを更に良好に冷却することができるようになる。
【0018】
また、本発明に係る熱転写プリンタにおいて、前記気流発生機構はファンを有し、該ファンが、前記気流通路の空気を吸引して、当該気流通路に気流を発生させる構成とすることができる。
【0019】
このような構成により、ファンを動作させることにより、気流通路内に気流が発生するので、該急流通路内に少なくとも一部が配置されるサーマルヘッドをより効率的に冷却することができるようになる。
【0020】
更に、本発明に係る熱転写プリンタにおいて、前記気流発生機構は、前記リボンカセットに一体的に設けられるようにしても、また、前記リボンカセットと別体とすることもできる。前者の場合、リボンカセットの交換を気流発生装置との位置合わせを考慮することなく行うことができる。
【0021】
また、本発明に係る熱転写プリンタにおいて、前記制御手段は、前記サーマルヘッドによるプリントがなされているときに、該サーマルヘッドの温度に応じて前記気流発生機構による第1の量での気流の発生を制御する第1制御手段と、プリントを行っていた前記サーマルヘッドの当該プリントが終了すると、前記サーマルヘッドの温度に応じて前記気流発生機構による前記第1の量より少ない第2の量での発生を制御する第2制御手段とを有する構成とすることができる。
【0022】
このような構成により、プリント中とプリント終了後とでは同じようにサーマルヘッドの温度に応じた気流の制御がなされるが、特にプリントが終了後では、プリント中の第1の量より少ない第2の量での気流の発生になるので、発熱を停止したサーマルヘッドが比較的少ない量の気流にて冷却されるようになる。従って、プリント終了後において、気流発生機構の動作音を低減させつつサーマルヘッドを有効に冷却することができるようになる。また、サーマルヘッドの発熱体が常に高温になる状態を回避することになるので、サーマルヘッドの寿命を延ばすことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る熱転写プリンタによれば、リボンカセットに形成された気流通路にあるサーマルヘッドの少なくとも一部が該気流通路を流れる気流にさらされて当該サーマルヘッドがより効率的に冷却されるようになるので、リボンカセット内の温度上昇を極力抑えることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の一形態にかかる熱転写プリンタの全体的な構造を示す図である。
【図2】図1に示す熱転写リンタのリボンカセットの構造を示す斜視図である。
【図3】図1に示す熱転写プリンタのリボンカセットの構造を示す断面図である。
【図4】各リボンカセットの設けられたファンの制御手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0026】
本発明の実施の一形態に係る熱転写プリンタは、図1に示すように構成される。
【0027】
図1において、この熱転写プリンタでは、ロール15に巻かれた所定幅の用紙Sが繰り出しローラ16によって繰り出され、その用紙Sが搬送路100を移動するようになっている。この熱転写プリンタは、イエロー(Y)のインクリボン111を収納したYリボンカセット11、マゼンタ(M)のインクリボン121を収納したMリボンカセット12、シアン(C)のインクリボン131を収納したCリボンカセット13、及び黒(BK)のインクリボン141を収納したBKリボンカセット14の4つのリボンカセットを有している。また、各リボンカセット11、12、13、14には、後述するように、ファンユニット115、125、135、145(気流発生機構)が設けられている。搬送路100に沿って、用紙Sの移動方向における上流側から順次所定の間隔をもって、サーマルヘッド21とプラテンローラ31とが、サーマルヘッド22とプラテンローラ32とが、サーマルヘッド23とプラテンローラ33とが、及びサーマルヘッド24とプランテンローラ34とが、それぞれ搬送路100を移動する用紙Sを挟むように配置されている。
【0028】
用紙Sの移動方向における最上流側のサーマルヘッド21とプラテンローラ31との組に対して、Yリボンカセット11が、サーマルヘッド21と用紙Sとの間にイエロー(Y)のインクリボン111が配置されるように着脱自在にセットされる。用紙Sの移動方向における最下流側のサーマルヘッド24とプラテンローラ34との組に対して、BKリボンカセット14が、サーマルヘッド24と用紙Sとの間に黒(BK)のインクリボン141が配置されるように着脱自在にセットされる。Yリボンカセット11の下流側に隣接して、サーマルヘッド22とプラテンローラ32との組に対して、Mリボンカセット11が、サーマルヘッド22と用紙Sとの間にマゼンタ(M)のインクリボン121が配置されるように着脱自在にセットされる。また、BKリボンカセット14の上流側に隣接して、サーマルヘッド23とプラテンローラ33との組に対して、Cリボンカセット11が、サーマルヘッド23と用紙Sとの間にシアン(C)のインクリボン131が配置されるように着脱自在にセットされる。
【0029】
最上流側のYリボンカセット11のセットされる位置より上流側の所定位置にはロール15から繰り出される用紙Sの先端を検出する用紙位置センサ18が設けられている。また、最下流側のBKリボンカセット14のセットされる位置より下流側の所定位置には、用紙Sを切断するカッター17が設置されている。
【0030】
また、この熱転写プリンタは、各色(Y、M、C、BK)のプリント動作、及び各リボンカセット11、12、13、14に設けられたファンユニット115、125、135、145の動作を制御するコントローラ10を有している。コントローラ10は、用紙位置センサ18からの検出信号、パーソナルコンピュータ等の上位装置50からのプリントモード(モノクロモード、フルカラーモード、2色モード、単色モード)の指定、及びプリントデータ、フォーマットデータ等のプリントに必要なデータに基づいて各色のインクリボン111、121、131、141の用紙Sへの熱転写を行うサーマルヘッド21、22、23、24の駆動制御や用紙Sの送り制御等のプリント動作に係る制御を行う。このプリント動作により、搬送路100を移動する用紙Sの各ラベルに、指定された色(BK、C、M、Yのフルカラー、モノクロ、2色、単色)によるプリントがなされる。そして、そして、プリント済みのラベルがカッター17を通過する毎に、一時的に用紙Sの送り及びプリント動作が止められて、カッター17により用紙Sが切断され、プリント済みのラベルが順次搬送路100から排出される。
【0031】
なお、各ファンユニット115、125、135、145の制御の詳細については後述する。
【0032】
Yリボンカセット11の詳細な構造について、図1とともに図2及び図3を参照して説明する。なお、他のリボンカセット12、13、14についても同様の構造となっているので、その説明は省略する。
【0033】
図1とともに図2及び図3を参照するに、Yリボンカセット11のカセット筐体110内において、リボン供給ローラ112aとリボン巻取りローラ112bとの間にインクリボン111が巻きかけられ、リボン供給ローラ112aから送り出されたインクリボン111が複数のテンションローラを介してリボン巻取りローラ112aに巻き取られるようになっている。このようにインクリボン111が収納されたYリボンカセット11は、前述したように、サーマルヘッド21とプラテンローラ31との間にインクリボン111が配置されるようにセットされる。この状態で、用紙Sがインクリボン111とプランテンローラ31との間を通過するようになる。
【0034】
カセット筐体110の用紙Sの搬送方向に沿った2つの対向する側壁に開口110aと開口110bとが形成され、カセット筐体110内のそれら2つの開口110a、110bの間に気流通路113が形成されている。気流通路113は底が開放しており、Yリボンカセット11を所定位置にセットした状態で、サーマルヘッド21全体が気流通路116内に配置される。サーマルヘッド21には、その上面に接するようにヒートシンク211が設けられており、このヒートシンク211全体もサーマルヘッド21とともに気流通路113内に配置される。
【0035】
カセット筐体110には、一方の開口110aを覆うように筒状の遮蔽材(パッキン)116を介してファンユニット115が取り付けられている。当該熱転写プリンタの機器筐体200内には、順次並べられるようにセットされた4つのリボンカセット11、12、13、14に沿ってダクト40が設けられている。ダクト40は当該熱転写プリンタの外部に開放しており、そのダクト40には、Yリボンカセット11のカセット筐体110に形成された他方の開口110bに対向するようにダクト開口41が形成され、同様に、Yリボンカセット11に隣接するMリボンカセット12に対向するようにダクト開口42が形成されるとともに、他のリボンカセット13、14のそれぞれに対向するようにダクト開口(図示略)が形成されている。そして、Yリボンカセット11がセットされた状態で、Yリボンカセット11とダクト40との間に遮蔽材(パッキン)117が挟まれ、開口41及び開口110bを介してダクト40とYリボンカセット11内に形成された気流通路113とが連通するようになっている。他のリボンカセット12、13、14も同様に、セットされた状態で、ダクト40と気流通路とが連通した状態となる。
【0036】
各リボンカセット11、12、13、14がセットされた状態で、各リボンカセット11、12、13、13、14に取り付けられたファンユニット115、125、135、145が当該熱転写プリンタの機器筐体200に形成された通気窓201に対向するようになっている。
【0037】
前述したような熱転写プリンタでは、Yリボンカセット11に設けられたファンユニット115が動作すると、その吸引作用によって、ダクト40を通る外気が当該ダクト40のダクト開口41及びカセット筐体110の開口110bを介して気流通路113に導入され、その外気が気流通路113を通ってカセット筐体110の他方の開口110aから、更にファンユニット115及び通気窓201を通して当該熱転写プリンタの外部に排出される。このように導入された外気の流れにより形成される気流通路113内の気流にサーマルヘッド21及びヒートシンク211がさらされるので、サーマルヘッド21がヒートシンク211の自然放熱よる冷却より更に効率的に冷却されるようになる。その結果、イエロー(Y)のインクリボンを収容するYリボンカセット11(カセット筐体110)内の温度上昇を極力抑えることができる。また、他のリボンカセット12、13、14においても同様に対応するファンユニット125、135、145の動作によって発生する外気の気流によって対応するサーマルヘッド22、23、24がより効率的に冷却されるようになり、各リボンカセット12、13、14(カセット筐体110)内の温度上昇を極力抑えることができる。
【0038】
また、各リボンカセット11(12、13、14)にファンユニット115(125、135、145)が一体的に設けられているので、開口110aとファンユニット115(125、135、145)との位置合わせを考慮することとなく、各リボンカセット11(12、13、14)を所定位置にセットすることができる。ただし、各ファンユニット115(125、135、145)は、各リボンカセット11(12、13、14)と別体として当該熱転写プリンタの機器筐体200内に設けることもできる。この場合は、各リボンカセット11(12、13、14)を所定位置にセットしたときに、当該リボンカセット11(12、13、14)の開口110aとの位置関係が適正となるようにファンユニット115(125、135、145)を機器筐体200内に設置する必要がある。
【0039】
更に、ファンユニット115(125、135、145)の吸気作用によって気流通路113に気流を発生させるものであったが、ファンユニット115(125、135、145)の気体の吹き出し作用によって気流通路113に気流を発生させるようにすることもできる。
【0040】
なお、図示されてはいないが、ダクト40の当該熱転写プリンタにおける機器筐体200の開口部分、及び/または、各ダクト開口41、42には、防塵フィルタが設けられている。これにより、外部からのダストが熱転写プリンタの機器筐体200内や、各リボンカセット11、12、13、14内に進入することを防止することができる。
【0041】
この熱転写プリンタの動作について更に詳細に説明する。
【0042】
この熱転写プリンタが起動されると、図1に示すように、ロール15から繰り出される用紙Sが、その先端が用紙位置センサ18にて検出される位置(初期位置)にセットされる。そして、コントローラ10は、上位装置50(パーソナルコンピュータ)からプリント要求とともに指定されるプリントモード、例えば、プリント色が黒(BK)のモノクロモード、プリント色が全4色(イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(BK))のフルカラーモード、プリント色が2色だけの2色モード、及びプリント色が単一色(黒を除く)の単色モードのいずれかに応じて決められる駆動すべきサーマルヘッドによるプリント動作を前記初期位置から搬送路100上を送られる用紙Sの移動に同期させて制御する。その過程で、コントローラ10は、プリントを行うサーマルヘッドに対してセットされたリボンカセットのファンユニットを図4に示す手順に従って制御する。
【0043】
例えば、上位装置50からの単色モードまたはフルカラーモードでのプリントジョブの指示に従ってサーマルヘッド21がYリボンカセット11のイエロー(Y)のインクリボン111を用紙Sとともにプラテンローラ31に押し付けつつプリントがなされている場合を例に、ファンユニット115の制御について説明する。他のファンユニット125、135、145についても、対応するサーマルヘッド22、23、24によるプリントがなされる場合に同様に制御される。
【0044】
図1において、コントローラ10は、プリント中であるサーマルヘッド21の温度Tを取得する(S11)。例えば、サーマルヘッド21のヒートシンク211にはサーミスタ等の温度検出器(図示略)が設けられており、コントローラ10は、この温度検出器にて検出される温度Tをサーマルヘッド21の温度として取得する。そして、コントローラ10は、取得したサーマルヘッド21の温度Tが第1閾値T1を超えたか否かを判定する(S12)。コントローラ10は、プリント中のサーマルヘッド21の温度Tの取得(S11)及びその温度Tが第1閾値T1を超えたか否かの判定(S12)を繰り返し実行する過程で、そのサーマルヘッド21の温度Tが第1閾値T1を超えると(S12でYES)、ファンユニット115をオンさせる(S13)。
【0045】
コントローラ10は、所定の風量(通常風量:第1の量の気流)が発生するようにファンユニット115を駆動制御する。この場合、ファンユニット115のファンモータを一定の回転速度で制御するようにしても、ファンモータに対するPWM駆動信号を検出温度Tに応じてデューティ制御するようにしてもよい。その駆動制御に従ったファンユニット115の動作によって、前述したように、ダクト40から導入される外気による通常風量の気流がYリボンカセット11の気流通路113内で発生し、その気流にさらされるサーマルヘッド21及びヒートシング211が冷却される。コントローラ10は、このようにファンユニット115を制御しつつ、サーマルヘッド21の温度Tの取得(S14)、サーマルヘッド21によるプリント(1つのプリントジョブ)が終了したか否かの判定(S15)、及び取得されるサーマルヘッド21の温度Tが前記第1閾値T1より小さい第2閾値T2を下回るか否かの判定(S16)を繰り返し実行する。
【0046】
その過程で、冷却されるサーマルヘッド21の温度Tが第2閾値を下回ると(S16でYES)、コントローラ10は、ファンユニット115をオフさせ(S17)、再び、プリント中のサーマルヘッド21の温度Tが比較的高い第1閾値T1を超えるか否かを監視する(S11、S12)状態になる。その後、前述したのと同様の制御(S11〜S17)がなされる。その結果、サーマルヘッド21の温度Tが第1閾値T1を超えると(S1でYES)、ファンユニット115がオンされて(S13)、通常風量が発生するようにそのファンユニット115の駆動制御がなされ、サーマルヘッド21の温度Tが第2閾値T2を下回るとファンユニット21がオフされる(S17)。
【0047】
上述した制御の過程で、ファンユニット115がオンして(S13)、通常風量が発生するように制御される状態において、サーマルヘッド21によるプリント(1つのプリントジョブ)が終了すると(S15でYES)、コントローラ10は、前記プリント中の場合より少ない所定の風量(弱風量:第2の量の気流)が発生するようにファンユニット115を駆動制御する(S18)。このときサーマルヘッド21は、上昇してYインクリボン111及び用紙Sのプラテンローラ31への押圧を解除している。そして、前記駆動制御に従ったファンユニット115の動作によって、前述したように、ダクト40から導入される外気による弱風量の気流がYリボンカセット11の気流通路113内で発生し、既に発熱動作(プリント)を終えているサーマルヘッド21がその弱風量の気流にさらされて冷却される。
【0048】
その後、コントローラ10は、ファンユニット115を弱風量が発生するように駆動制御しつつ(S18)、プリントが再開(次のプリントジョブの開始)されたか否か(S15でYES、S19)の確認、及びサーマルヘッド21の温度Tが第2閾値T2を下回ったか否かを監視する(S14、S15、S16)。その過程で、ファンユニット115の温度Tが第2閾値T2を下回ると(S16でYES)、コントローラ10は、前記弱風量にて制御されていたファンユニット115をオフさせる(S17)。その後、サーマルヘッド21によるプリントがなされていないとして、コントローラ10は、サーマルヘッド21の温度に基づいたファンユニット115を制御対象から外す。
【0049】
なお、コントローラ10は、ファンユニット115を弱風量にて制御している過程で、サーマルヘッド21によるプリントが再開されると(S19でYES)、そのファンユニット115の通常風量での駆動制御(S20)を開始する。そして、コントローラ10は、プリントジョブが終了したか否か(S15)、及びサーマルヘッド21の温度Tが第2閾値T2を下回るか否か(S14、16、S17)の監視動作を続ける。
【0050】
上述したようなファンユニット115の駆動制御によれば、プリント中とプリント終了後とでは同じようにサーマルヘッド21の温度に応じた気流の制御がなされるが、特にプリントが終了後では、プリント中の通常風量より少ない弱風量の気流の発生になるので、一連のプリントジョブが終了して発熱を停止したサーマルヘッド21が比較的少ない量の気流にて冷却されるようになる。従って、プリント終了後におけるファンユニット115の動作音を低減させつつサーマルヘッド21を有効に冷却することができるようになる。
【0051】
なお、ファンユニット115(125、135、145)の駆動制御(S13)では、プリントデータから算出される印字率に応じてファンモータの回転速度(風量)を制御することもできる。
【0052】
なお、前述した熱転写プリンタは、ダクト40を設けることなく構成することができる。この場合、ファンユニット115(125、135、145)が動作すると、当該熱転写プリンタの機器筐体200内の空気が各リボンカセット11(12、13、14)の気流通路113に導入され、気流通路113を流れる空気が通気窓201から外部に排出されるようになる。
【0053】
また、各リボンカセットにおける気流通路113は、サーマルヘッド21やヒートシンク211の全体がその中に配置されるものでなくてもよい。サーマルヘッド21及び又はヒートシンク211の少なくも一部が気流通路113に配置されていればよい。
【0054】
更に、また、前述した熱転写プリンタは、異なる色(BK、C、M、Y)のインクリボン111、121、131、141を収容する4つのリボンカセット11、12、13、14を備えたフルカラープリントが可能となるものであったが、これに限られず、単一あるいは、4つ以外の複数のリボンカセットを備える熱転写プリンタであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上、説明したように、本発明に係る熱転写カラープリンタは、インクリボンを収容するリボンカセット内の温度上昇を極力抑えることができるという効果を有し、インクリボンの熱転写によって用紙に対するプリントを行う熱転写プリンタとして有用である。
【符号の説明】
【0056】
10 コントローラ
11 Cリボンカセット
12 Mリボンカセット
13 Cリボンカセット
14 BKリボンカセット
15 ロール
16 繰り出しローラ
17 カッター
18 用紙位置センサ
21、22、23、24 サーマルヘッド
31、32、33、34 プラテンローラ
40 ダクト
41、42 ダクト開口
50 上位装置(パーソナルコンピュータ)
100 搬送路
110 カセット筐体
110a、110a 開口
111、121、131、141 インクリボン
112a リボン供給ローラ
112b リボン巻取りローラ
113 気流通路
115、125、135、145 ファンユニット(気流発生機構)
116、117 遮蔽材(パッキン)
200 機器筐体
201 通気窓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクリボンを収納したリボンカセットとサーマルヘッドとを有し、該サーマルヘッドと用紙との間に前記インクリボンが配置されるように前記リボンカセットが着脱自在に設けられ、前記インクリボンのサーマルヘッドによる前記用紙への熱転写によってプリントを行う熱転写プリンタであって、
気流を発生させる気流発生機構と、
該気流発生機構による気流の発生を制御する制御手段とを有し、
前記リボカセットには、前記サーマルヘッドの少なくとも一部が配置される気流通路が形成され、
前記気流発生機構は、発生する気流が前記リボンカセットの前記気流通路を通るように配置された熱転写プリンタ。
【請求項2】
異なる色のインクリボンを収納した複数のリボンカセットと、該複数のリボンカセットのそれぞれに対応させて設けられたサーマルヘッドとを有し、該サーマルヘッドと用紙との間にインクリボンが配置されるように前記複数のリボンカセットのそれぞれが着脱自在に設けられ、各インクリボンのサーマルヘッドによる前記用紙への熱転写によってカラープリントを行う熱転写プリンタであって、
各リボンカセットに対して独立して設けられた気流を発生させる気流発生機構と、
各リボンカセットに対応して設けられた前記気流発生機器による気流の発生を制御する制御手段とを有し、
前記各リボンカセットには、前記サーマルヘッドの少なくとも一部が配置される気流通路が形成され、
前記気流発生機構は、発生する気流が対応するリボンカセットの気流通路を通るように配置された熱転写プリンタ。
【請求項3】
前記リボンカセットの筐体に2つの開口が形成され、
前記気流通路は前記リボンカセットの2つの開口の間に形成され、
前記リボンカセットの2つの開口のうちの一方の開口から前記気流発生機構にて発生する気流が導入される請求項1または2記載の熱転写プリンタ。
【請求項4】
前記気流の導入される前記リボンカセットの開口に当該熱転写プリンタの外部に続くダクトが結合した請求項3記載の熱転写プリンタ。
【請求項5】
前記リボンカセットの一方の開口に前記気流発生機構にて発生する気流を導入する部分を密閉する第1の密閉部材と、
前記リボンカセットの開口と前記ダクトとの接合部に設けられた第2の密閉部材とを有する請求項4記載の熱転写プリンタ。
【請求項6】
前記サーマルヘッドに接するように設けられたヒートシングを有し、
該ヒートシングの少なくとも一部は、前記気流通路内に配置される請求項1乃至5のいずれかに記載の熱転写プリンタ。
【請求項7】
前記気流発生機構はファンを有し、
該ファンが、前記気流通路の空気を吸引し、または、前記気流通路に空気を吹き出して、当該気流通路に気流を発生させる請求項1乃至6のいずれかに記載の熱転写プリンタ。
【請求項8】
前記気流発生機構は、前記リボンカセットに一体的に設けられた請求項1乃至7のいずれかに記載の熱転写プリンタ。
【請求項9】
前記制御手段は、前記サーマルヘッドによるプリントがなされているときに、該サーマルヘッドの温度に応じて前記気流発生機構による第1の量での気流の発生を制御する第1制御手段と、
プリントを行っていた前記サーマルヘッドの当該プリントが終了すると、前記サーマルヘッドの温度に応じて前記気流発生機構による前記第1の量より少ない第2の量での発生を制御する第2制御手段とを有する請求項1乃至8のいずれかに記載の熱転写プリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−218384(P2012−218384A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88936(P2011−88936)
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(307010993)株式会社サトー知識財産研究所 (588)
【出願人】(000130581)サトーホールディングス株式会社 (1,153)
【Fターム(参考)】