説明

熱転写型アップリケ材、並びに熱転写型アップリケ

【課題】本発明は、織物、編物、不織布等をアップリケ地とする熱転写型アップリケ材、並びにアップリケの輪郭辺からのほつれが生じない熱転写型アップリケ材、並びに熱転写型アップリケを提供するものである。
【解決手段】 所望の色彩、図柄模様を印刷した布地から成るアップリケ地を以て成る熱転写型アップリケ基材から所望の形状に裁断してなり、前記形状の輪郭辺に沿って薄手に形成した熱転写型アップリケ用材に、少なくとも該熱転写型アップリケ用材の形状の輪郭に沿って同形状に短繊維から成る縁取り転写を施す短繊維図柄結束膜と短繊維図柄転写膜から成る短繊維図柄転写層を形成した植毛転写シートを以て前記熱転写型アップリケ用材の前記布地であるアップリケ地面の輪郭辺に沿って短繊維を転写して成る熱転写型アップリケ材、並びに熱転写型アップリケ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、織物、編物、不織布等から成る布地をアップリケ地とする従来型の熱転写型アップリケ基材から所望の構成形式の形状に裁断した熱転写型アップリケ用材に植毛転写技術を活用して、従来型の熱転写型アップリケ材、並びに熱転写型アップリケに改善を施して優れた機能を発揮する熱転写型アップリケ材、並びに熱転写型アップリケを提供する発明である。
【背景技術】
【0002】
例えば、ユニホーム等の被転写対象物に転着する従来の熱転写型アップリケは、所望の色彩、或いは所望の図柄、或いは所望の文字や所望の文字を配列、或いはこれらの組合せ、或いはこれらを所望の形状の枠で囲んだ図柄を印刷した織物、編物、不織布等から成る布地をアップリケ地とし、そのアップリケ地の裏面に、ホットメルト系の熱可塑性合成樹脂から成る溶剤をコーティングするなり、或いは該合成樹脂から成るフィルムをラミネートするなりして転写接着層を形成し、その転写接着層の裏面を剥離シートを以て裏打ちして熱転写型アップリケ基材とし、この熱転写型のアップリケ基材から、被転写対象物に転着する熱転写型アップリケとする部分を所望の輪郭に型取りした形状に裁断して熱転写型アップリケ材を作っていた。
【0003】
そして、前記の手順で作った熱転写型アップリケ材を熱転写型アップリケとして使用するときは、熱転写型アップリケ材から剥離シートを引き剥がして熱転写型アップリケとした。
【0004】
その熱転写型アップリケを以て所望の被転写対象物、例えばユニホーム等(図示しない)に転着しようとするときは、その熱転写型アップリケのアップリケ地の裏面に形成されたホットメルト系の熱可塑性合成樹脂から成るいわゆる転写接着層を被転写対象物に重ね合わせて加熱押圧台上で加熱押圧機具を以て加熱押圧操作を行って、前記した転写接着層を形成しているホットメルト系熱可塑性合成樹脂を溶融温度まで加熱して溶融し、押圧力を以て該樹脂の成分を熱転写型アップリケのアップリケ地と被転写対象物の生地との両者とに滲み込ませて、その後、加熱押圧を止めて冷却を待って前記両者に滲み込ませた前記成分に投錨機能を発揮させて熱転写型アップリケのアップリケ地と被転写対象物を接着すると言う作業が行われていた。
【0005】
前記した熱転写型アップリケは、熱転写型アップリケ基材を所望形状に裁断した熱転写型アップリケ材のアップリケ地と転写接着層を以て作られるものであるから、これを被転写対象物に転写した当初、或いは転写時からしばらくの間は、該熱転写型アップリケのアップリケ地の輪郭はすっきりした輪郭を保持し、従って、熱転写型アップリケを転写したことによる被転写対象物の装飾機能を高める機能を発揮した。しかし、該熱転写型アップリケは前記した布地をアップリケ地として被転写対象物に転写したものであるから平面的である。また、熱転写型アップリケのアップリケ地は、被転写対象物に転写した後、その被転写対象物を永年使用している中にアップリケ地の輪郭にほつれが生じ、そのほつれにより、アップリケ地の輪郭の鮮明性がくずれ、アップリケとしての見映えを悪くし、そのためアップリケも、そのアップリケを接着した被転写対象物も装飾機能を阻害すると言う不都合な事態を生ずることが往々にしてあった。
【0006】
これらの不都合を阻止する手段としてこれまで、前記熱転写型アップリケの輪郭に沿って縁取り刺繍を施すことが行われていた。
ところが、その刺繍を施す作業は、相当な経験を積んだ熟練を要する作業で、初心者には難しい作業とされていた。
【0007】
被転写対象物にアップリケを転写して、被転写対象物を転写したアップリケにより装飾を施すもう一つの手段として、植毛転写シートを使って、植毛転写シートから短繊維による図柄を被転写対象物に転写する植毛転写手段がある。この手段によって植毛転写シートから短繊維を被転写対象物に図柄として転写したときは、その短繊維は特殊調合された接着剤により形成されたしっかりとした短繊維図柄転写膜に固定されて短繊維による図柄として被転写対象物に転写することになるので転写した短繊維から成る図柄の輪郭にくずれを生ぜず、且つ転写した図柄は、短繊維による立体的な図柄として転写することができるというものである。
この植毛転写に関する技術は、特公昭36−4768号公報、特公昭53−35619号公報に開示され、植毛転写シートの基本材については実公昭55−13077号公報に開示され、これにヒントを得て開発された植毛転写シートに関しての発明が特公平3−7520号公報、特公平2−25667号公報に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公昭36−4768号公報
【特許文献2】特公昭53−35619号公報
【特許文献3】実公昭55−13077号公報
【特許文献4】特公平3−7520号公報
【特許文献5】特公平2−256667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記した熱転写型アップリケ基材から所望の形状に裁断した熱転写型アップリケ用材のアップリケ地の面に植毛転写シートを以て、短繊維から成る所望の図柄模様を転写して熱転写型アップリケ材とし、前記熱転写型アップリケ材から立体感のある熱転写型アップリケを取り出すことができるようにするとともに、その熱転写型アップリケのアップリケ地の形状の輪郭に沿って、短繊維から成る縁取りを転写して形成することによって、その熱転写型アップリケのアップリケ地の裁断面からのほつれを阻止する熱転写型アップリケができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、所望の色彩、或いは所望の装飾印刷を施された織物、編物、不織布等から成る布地をアップリケ地とし、そのアップリケ地裏にホットメルト系の熱可塑性合成樹脂を以て転写接着層を形成し、その裏面に剥離シートを以て裏打ちして成る熱転写型アップリケ基材を形成し、該熱転写型アップリケ基材から所望の形状に裁断して、前記熱転写型アップリケ基材から分離した熱転写型アップリケ用材とするに当たって、前記熱転写型アップリケ材の構成材であるアップリケ地を前記熱転写型アップリケ材の輪郭辺に沿って極薄とした熱転写型アップリケ用材とする。その熱転写型アップリケ用材に対し、植毛シート或いは植毛シートから前記熱転写型アップリケ要材と同じ形状に裁断して分離した植毛転写シートを以て常法に従って熱転写型アップリケ用材の輪郭と、植毛シート或いは植毛転写シートに形成された短繊維図柄転写層の輪郭との位置合わせを行い、これを以て加熱押圧を施して、該植毛シート或いは植毛転写シートから熱転写型アップリケ用材の構成材であるアップリケ地に少なくとも該アップリケ地の輪郭に沿って短繊維による縁取り図柄を転写した熱転写型アップリケ材、並びに熱転写型アップリケとする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る熱転写型アップリケは上記した通りの手段によって作られるものであるから、立体感のある装飾機能をもち、且つ、すっきりとした輪郭をもち、しかも輪郭からのほつれを生じない熱転写型アップリケとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】熱転写型アップリケ基材の一部切欠図の斜視図
【図2】図1のA−A線断面図
【図3】熱転写型アップリケ基材から所望の形状に裁断した熱転写型アップリケ用材の斜視図
【図4】植毛シートの一部切欠斜視図
【図5】図4のA−A線断面図
【図6】植毛シートから裁断した植毛転写シートの斜視図
【図7】植毛転写シートを以て熱転写型アップリケ材に短繊維図柄を転写する手順の説明図
【図8】植毛転写シートを以て熱転写型アップリケ材に短繊維図柄を転写する手順の説明図
【図9】植毛転写シートを以て熱転写型アップリケ材に短繊維図柄を転写する手順の説明図
【図10】植毛転写シートを以て短繊維による図柄を転写した熱転写型アップリケ材の斜視図
【図11】図10の一部拡大図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するのには、先ず図1に示す熱転写型アップリケ基材5を作る。図1に示す熱転写型アップリケ基材を作るのには、所望の色彩に着色し、或いは所望の図柄、或いは所望の文字や文字の配列、或いはこれらを組み合わせ、或いはこれらを所望の形状の輪郭で囲んだ装飾図柄(以下所望の色彩或いは所望の装飾図柄と称する)1を印刷した織物、編物、不織布等から成る布地をアップリケ地2とし、該アップリケ地2裏にホットメルト系の熱可塑性合成樹脂から成る転写接着層3を形成する。該アップリケ地2が化学繊維からできているときは、該アップリケ地2の裏面に、該アップリケ地2の構成材である材料と馴染む性質をもった、即ち、アップリケ地2の材料と親和性のある材料から成るホットメルト系の熱可塑性合成樹脂を以て転写接着層3を形成する。該転写接着層3に剥離シート4を以て裏打ちして形成する。
本発明を実施するのに当たっては、合成樹脂を使い分けして使用する。
合成樹脂には親和性のあるものとないものとがあるとされている。その1例は、ホットメルト系の熱可塑性合成樹脂をウレタン樹脂とした場合、これと親和性のある樹脂としてはウレタン樹脂及び系列樹脂、ポリエステル樹脂、ポり塩化ビニル、ポリ酢酸ビニルが挙げられる。また、親和性の良くない樹脂としてはテフロン(登録商標)樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリエチレン樹脂および系列樹脂、ポリプロピレン樹脂及び系列樹脂、ナイロン樹脂等のアミド系樹脂、ポリ塩化ビニリデンが挙げられる。
図2は、図1に示す熱転写型アップリケ基材5のA−A線断面図である。
図1には、熱転写型アップリケ基材5のアップリケ地2に一つの装飾模様1を印刷した熱転写型アップリケ基材5を図示したが、熱転写型アップリケ基材5のアップリケ地2に表示する装飾模様は一つとは限らないことは勿論である。
複数の装飾模様を表示した熱転写型アップリケ基材5としたときは、該熱転写型アップリケ基材から、複数の熱転写型アップリケ材5を裁断することになることも当然である。
【0014】
前記した図1に示す熱転写型アップリケ基材5から図3に示す熱転写型アップリケ用材6を裁断する。熱転写型アップリケ用材は、図1に示す熱転写型アップリケ基材5の構成材であるアップリケ地2に印刷された色彩或いは、装飾図柄を活かして被転写対象物に装飾物として転写しようとする所望の形状に裁断して図3に示す熱転写型アップリケ用材6とする。
【0015】
図1に示す熱転写型アップリケ基材5から図3に示す熱転写型アップリケ用材6を裁断するときは図7、8、9に示すように、図1に示す熱転写型アップリケ基材5から所望の形状に裁断するときにその輪郭は薄手にカットした構成形状の熱転写型アップリケ用材6として裁断する。
【0016】
前記した図3に示す熱転写型アップリケ用材6から剥離シート4を取り剥がし取ったときは、従来型の熱転写型アップリケとなるが、本発明の図10に示す熱転写型アップリケ材20とする前段階の図3に示す前記熱転写型アップリケ材6の段階で、熱転写型アップリケとするアップリケ地2の表面の所望個所に、図4に示す植毛シート16、或いは図4に示す植毛シート16から図3に示す熱転写型アップリケ材6の形状通りに裁断した図に示す植毛転写シート17を以て植毛シート16或いは植毛転写シート17に植設された短繊維から成る図柄模様、文字、文字の配列、或いはこれらの組合せを少なくとも図3に示す熱転写型アップリケ用材6の輪郭に沿って転写して、図10に示す熱転写型アップリケ材20とし、これをユニホーム等の被転写対象物に立体感のある装飾機能を高めた熱転写型アップリケとして転写できるようにした発明である。
【0017】
それだけでなく、本発明は前記熱転写型アップリケとする図3に示す熱転写型アップリケ用材6のアップリケ地2の表面の輪郭辺に沿って転写シート16或いは、植毛転写シート17を以て短繊維から成る縁取り転写をした図10に示す熱転写型アップリケ材20とすることによって、これから熱転写型アップリケとして被転写対象物に転写したとき、被転写対象物の永年の使用によってもアップリケ地の裁断面は鮮明な輪郭を保ち、しかも裁断面からのほつれが生じるのを阻止できる構成の熱転写型アップリケとして使用できるようにした発明である。
【0018】
図1に示す熱転写型アップリケ基材5を所望の形状に裁断した図に示す熱転写型アップリケ用材6に植毛シート16或いは植毛転写シート17を以て植毛加工を施した熱転写型アップリケ材20とし、この熱転写型アップリケ材20から作られる熱転写型アップリケを、前記した発明の効果の項に記載した機能を発揮する熱転写型アップリケとするために活用する植毛転写技術について説明する。
【0019】
図4に示す植毛16シートを作る基本的技術を開示した文献は、既に背景技術の項で例示したが、植毛シート16の基本材となる植毛台紙については、実公昭55−13077号公報、特公平3−75205号公報、特公平3−65792号公報に記載されている。
【0020】
前記した文献中実公昭55−13077号公報に開示された考案は、実用新案登録請求の範囲には植毛台紙について、
浸水性を伴う強靱な上質紙である台紙1に水、乳化剤、ナフサの第1混合剤Aに木蝋B、艶出剤C、滲透剤D、及びアクリル系エマルジヨン型接着剤と酢酸ビニール系エマルジヨン型接着剤の第2混合剤Eを配合して形成した剥離性接着剤が台紙内に浸透接着されるように塗布して剥離性接着剤層2を形成し、該剥離性接着剤層2の全表面に短繊維を植設して植毛層3を形成した台紙と短繊維を植設した剥離性接着層とを一体とした構成とするとしている。
【0021】
また、特公平3−75205号公報に開示された発明の特許請求の範囲には、植毛台紙について、
浸透性を有する上質紙に、アクリル共重合樹脂接着剤にポリエチレングリコール、パラフインエマルジヨン等を混入して仮接着剤となした水溶性接着剤を塗布して仮接着層となし、これに短繊維を植設した後、加熱乾燥して台紙に仮接着剤を浸透した状態で強靱にし、且つ台紙と仮接着層とを一体とした構成とするとしている。
【0022】
植毛台紙は、これらの公報に記載されているように、紙或いは合成樹脂シートの中から選択した基材シート10の片面に特殊調合された接着剤を塗布した短繊維植設膜11を形成し、その膜が乾燥しない中に前記した膜面に静電植毛加工法により短繊維12を隙間無く濃密に短繊維群として植設した後、加熱乾燥手段を講じて作る。上記した材料を以て上記した手順で作られた植毛台紙は、上記短繊維群を植設した短繊維植設膜11を上記基材シート10にしっかりと一体化し、同時に上記膜に上記短繊維群をしっかりと固定し、上記した膜が植毛転写時に基材シートから剥がれないようにし、しかも上記短繊維群として密集されて植設された短繊維12は植毛転写時には上記膜から素直に引き抜けやすいようにした構成とするものである。
【0023】
また、植毛台紙を作るのに当たって基材シート10と一体化とする剥離性接着層、仮接着層である前記短繊維植設膜11に植設した短繊維12を前記膜にしっかりと固着しなければならない理由は、植毛台紙を以て植毛シートを作るのには、植毛台紙を構成する基材シートに形成された前記膜に植設された短繊維の先端に、上記した短繊維群の先端を結束する図柄膜を作る作業を行うのに支障がないようにするためである。短繊維結束図柄膜を作る作業を行うのに当たっては、特公平3−7520号公報に記載されているとおり、植毛台紙の基材シートに植設された短繊維群にシルクスクリーン印刷法による手段で着色剤を塗布したり、或いは特殊調合した接着剤を該短繊維群の先端に向けて押し込み、その先端を突入させた短繊維結束図柄膜を作る作業を行うことになるので、上記手段を講ずる際に前記した植毛台紙の基材シートに植設された短繊維群に押圧力がかかることになる。即ち、上記した作業を行うときに、植毛台紙の基材シートに植設された短繊維群がしっかりと前記した植毛台紙の基材シートに一体化した膜に固定していないときは、上記した作業を行うとき、上記した膜に植設された短繊維がいわゆる毛倒れ現象を引き起こし、きちんとした着色、きちんとした短繊維結束図柄膜を作れなくなってしまうからである。
【0024】
次に、植毛台紙に植設された短繊維を被転写対象物に図柄として転写する植毛シートを作るための短繊維図柄結束膜、並びに短繊維図柄転写膜については、上記特公平3−7520号公報に開示された発明は、特許請求の範囲には、
上記植設台紙に植設された短繊維に模様印刷を施し、その印刷上にエマルジヨンタイプのアクリル系樹脂、増粘剤、柔軟剤、顔料からなる樹脂で模様印刷と同形の短繊維移植床を形成した後、粉末状或いは粒状のホットメルト接着剤を上記短繊維移植床に散布し、定着した後、余分な上記ホットメルト接着剤を取り除いて加熱乾燥を行い、上記短繊維移植床を架橋して本発明の短繊維図柄結束膜とし、同時に上記ホットメルト接着剤を、前記架橋した短繊維移植床に融着させて本発明の短繊維図柄転写膜とした構成としている。
【0025】
上記した実用新案公報、特許公報が刊行された後、業界では植毛転写技術についての関心が高まり、各社ではそれぞれ研究開発を行い、各種材料を選択して各社独自の植毛転写シートが開発されるようになった。各社の開発した植毛転写シートの製法手順、並びに構成について共通する点は次の通りである。即ち、前記した実用新案公報、特許公報に記載された考え方により植毛台紙を作った後、植毛台紙の基材シートに植設された短繊維群に着色剤を以て着色加工を行ったり、或いは、植毛台紙の基材シートに植設された短繊維群の先端に特殊調合した接着剤を以てシルクスクリーン印刷手段により上記した短繊維群の先端を突入させた短繊維図柄結束膜を作る作業を行う。短繊維図柄結束膜はその膜を作る作業を行った後、前記した膜が乾燥しないうちに、前記した膜を作る特殊調合した接着剤と親和性のある材料から成るホットメルト系の熱可塑性合成樹脂粉末を散布する作業を行う。次いでこれを加熱乾燥させて前記短繊維結束図柄膜の構成成分を架橋させて、該膜を以て短繊維の先端をしっかりと結束した短繊維図柄結束膜とし、その短繊維図柄結束膜にホットメルト系の熱可塑性合成樹脂粉末を溶融して、短繊維図柄転写膜として融着し、これが冷却後短繊維図柄結束膜と、短繊維図柄転写膜の両膜を固定した二層構造の短繊維図柄転写層を形成した植毛シートとすると言うことは前記した公報の記載と同じ考え方によるものであることは明らかである。
【0026】
その結果、業界では図4に示す植毛シート16は、まず、選定された基材シート10の片面に選定された合成樹脂から成る特殊調合した合成樹脂接着剤を塗布した短繊維植設薄膜11を形成し、その薄膜11面に短繊維12を静電植毛法により隙間なく濃密に植設して、乾燥を行って、前記基材シート10と前記短繊維を植設した特殊調合した合成樹脂接着剤による薄膜を短繊維植設膜11としてしっかりと固定するとともに、該短繊維12は植毛転写時には該薄膜11から引き抜けやすいようにした植毛台紙とし、
その植毛台紙の薄膜に植設された短繊維群の先端に選定された合成樹脂から成る特殊調合された合成樹脂接着剤を以て、短繊維群の先端を突入させた状態の所望の図柄薄膜をシルクスクリーン印刷法により形成し、該図柄薄膜面に前記した図柄薄膜を作る合成の構成材である合成樹脂と親和性のあるホットメルト系の熱可塑性合成樹脂を散布して乾燥し、前記図柄薄膜を短繊維図柄結束膜13とするとともに該膜上にたホットメルト系の熱可塑性合成樹脂から成る融着した短繊維図柄転写膜14を形成し、前記短繊維図柄結束膜13と前記短繊維図柄転写膜14とで短繊維図柄転写層15を形成して成る構成としたと言う考え方が定着している。
【0027】
図4に示す図示実施例には、一つの短繊維図柄転写層15を形成した植毛シート16を図示したが、植毛シートに形成する短繊維図柄転写層15は複数個形成した植毛シートとし、これから複数個の植毛転写シート17を分割してもよいことは勿論である。
【0028】
図1に示す熱転写型アップリケ基材5から所望の形状に裁断した図3に示す形状構成とした熱転写型アップリケ用材6に本発明を実施して、本発明が解決しようとする課題の項に記載された構成、並びに機能を達成する熱転写型アップリケを作る手順を例にとって説明する。
【0029】
本発明を実施するのに用いる植毛転写シートは図4に示す植毛シート16、或いは図4に示す植毛シート16から図3に示す熱転写型アップリケ材6の形状通りに裁断した図6に示す植毛転写シート17を用いる。その植毛シート16或いは植毛転写シート17を以て、被植毛対象物である熱転写型アップリケ用材6に短繊維による図柄を転写する手順を図6に示す植毛転写シート17を以て行う手順を例にとって説明する。植毛転写シート17に形成された短繊維図柄転写層15の輪郭と熱転写型アップリケ用材6の輪郭を図7に示す手順で合致させ、即ち、短繊維図柄転写層15の短繊維図柄転写膜14を、被植毛対象物である熱転写型アップリケ用材6の輪郭に重ね合わせ、加熱押圧機具により加熱押圧する。この操作により、上記した短繊維図柄転写膜14に転写機能を発揮させて短繊維図柄結束膜13を被植毛対象物である熱転写型アップリケ用材6のアップリケ地2の輪郭に図8に示すようにしっかりと固着した後、常法通りに植毛転写シート17を被植毛対象物である熱転写型アップリケ材6のアップリケ地2から図9に示すとおりから引き剥がす操作を行う。前記した植毛台紙を形成する短繊維植設膜11は、基材シート10と強固に一体化されて植毛台紙を構成しているので前記引き剥がし操作を行うとき短繊維植設膜11は植毛台紙を構成する基材シート10と剥がれない。その膜11は、また、その膜11に植設された短繊維12を引き抜けやすい膜11として形成されているのでこの引き剥がし操作により、前記被植毛転写対象物である熱転写型アップリケ材6のアップリケ地2に短繊維図柄転写膜14によりしっかりと固着した短繊維図柄結束膜13は、その短繊維図柄結束膜13に先端をしっかりと結束された短繊維群は、植毛台紙に一体化された上記の短繊維植設膜11から上記した短繊維図柄結束膜13通りに引き抜かれ、被植毛対象物である熱転写型アップリケ材6のアップリケ地2に上記した短繊維図柄結束膜13とともに短繊維12による図柄として図10に示すとおり短繊維による図柄を転写した熱転写型アップリケ材20とする。図11は所望の形状に裁断された熱転写型アップリケ材20の薄手の輪郭辺に沿って短繊維が転写された状態を示す拡大図である。
【0030】
この操作を行う過程で、熱転写型アップリケ用材6の基材シートであるアップリケ地2の裏側に形成された転写接着層3は溶融する。ところが、前記転写接着層3は、剥離シート4で裏打ちされているので、溶融した前記転写接着層3の構成成分は、剥離シート4には滲み込まず、熱転写型アップリケ用材6の基材シートであるアップリケ地2側に滲み込むことになる。また、植毛転写シート17の短繊維図柄転写層15を構成する短繊維図柄維結束膜13の面に形成された短繊維図柄転写膜14も上記操作によって熱転写型アップリケ材6の基材シートであるアップリケ地2上で溶融する。
即ち、熱転写型アップリケ用材6の基材シートのアップリケ地2には、熱転写型アップリケ用材6を形成する剥離シート4側と植毛転写シート17の短繊維図柄結束膜13との間で溶融した転写接着層3と短繊維図柄転写膜14の両構成成分が表裏両面から滲み込むことになる。
そして、植毛転写シート17の短繊維図柄転写膜14の構成成分は、植毛転写シート17の短繊維図柄結束層13に融着することになる。
【0031】
即ち、熱転写型のアップリケ用材6上のアップリケ基材シートのアップリケ地2は、熱転写型アップリケ用材6の剥離シート4と植毛転写シート17の短繊維図柄結束膜13の間で、該アップリケ地2の裏側からは転写接着層3の構成成分が、表面からは短繊維図柄転写膜14の構成成分が滲み込む現象が生じることになる。
従って、この現象を所望の形状に裁断された熱転写型アップリケ用材6の基材シートのアップリケ地2の輪郭に沿って縁取りをした枠として生じるようにしたときは、熱転写型アップリケ材6の基材シートのアップリケ地2の裁断面の輪郭には、表裏両側から前記成分が縁取りとした枠として滲み込むことになり、これが冷却したときは、前記成分が基材シートのアップリケ地2に滲み込んだ状態で投錨機能を発揮することになる。この操作が終了した後、植毛転写シート17の植毛台紙の基材である基材シートを図9に示すとおりに引き剥がす操作を行う。この操作により所望の形状に裁断した熱転写型アップリケ材6は、裁断した輪郭に沿って縁取りをした枠状の刺繍を施したと同じように布地の輪郭からほつれを生じない熱転写型アップリケが得られるような図10に示す構成の熱転写型アップリケ材20とすることができることになる。
また、輪郭の内側には短繊維による図柄が転写された立体感を呈する図10に示すような熱転写型アップリケ材20として構成されることになる。図11は、図10に示す図面の熱転写型アップリケ材20の輪郭辺に短繊維が転写された状態を示す断面図である。
【0032】
この操作後、前記した図10に示す構成から成る熱転写型アップリケ材20から剥離シート4を取り剥がして短繊維群による装飾手段を施した熱転写型アップリケとし、この熱転写型アップリケを以て被転写対象物に該熱転写型アップリケを貼着する作業を行うときは、加熱押圧台上に被転写対象物を置き、その基材シートである布地の上に前記した短繊維群による装飾手段を施した熱転写型アップリケを該熱転写型アップリケの基材シート裏に形成された転写接着層を重ねて、加熱押圧機具を以て常法通りに加熱押圧操作を行う。この操作により上記した熱転写型アップリケは、立体感を呈し、且つ、輪郭に刺繍を施したと同じように輪郭からのほつれを生じない熱転写型アップリケとして被転写対象物にしっかりと貼着することになる。
【0033】
以上の説明は、図1に示す熱転写型アップリケ基材から所望の形状に裁断した図3に示す熱転写型アップリケ用材6に、図4に示す植毛シート16から、図3に示す熱転写型アップリケ用材6と同形に裁断した図6に示す植毛転写シート17を以て植毛転写を行う手段を説明したが、図4に示す植毛シートに、図3に示す熱転写型アップリケ用材6を以て植毛シート17の短繊維転写層15と、熱転写型アップリケ用材6の輪郭を合致させて加熱押圧し、その後、植毛シートを熱転写型アップリケ材から剥がし取っても同じことになる。
【0034】
この熱転写型アップリケ20のアップリケ地2に短繊維を転写する短繊維図柄結束膜13は、特殊調合した接着剤によって極薄の印刷膜として形成される。従って、被植毛転写対象物である熱転写型アップリケのアップリケ地2に、該膜13に結束されて転写された短繊維群による図柄は、介在物を介在させずに直接に被植毛転写対象物である熱転写型アップリケのアップリケ地2に形成された観を呈する機能を発揮する特徴がある。
【0035】
ところで、上記した図4に示す植毛シート16或いは図5に示す植毛転写シート17から上記の手段で転写された短繊維12による図柄を、図1に示す熱転写型アップリケ基材5から所望の形状に裁断した図3に示す熱転写型アップリケ用材6の基材シートであるアップリケ地2の輪郭に沿って短繊維を植設して装飾機能を高める図10に示す熱転写型アップリケ材20から剥離紙4を剥がし取って熱転写型アップリケとして、被転写対象物に貼着したときは、上記した構成の熱転写型アップリケの形状の輪郭は、被転写対象物に直接短繊維による図柄が植設されているような外観を呈するものとして貼着するようにしなければ装飾効果を向上したことにはならない。
【0036】
ところが、図1に示す熱転写型アップリケ基材5から従来通りに所望形状に型取って裁断した熱転写型アップリケ用材は、その裁断面は図1に示す熱転写型アップリケ基材の断面と同じように図2に示すとおり垂直面として裁断される。従って、この熱転写型アップリケ材から剥離紙4を剥がし取った熱転写型アップリケ用材のアップリケ地2の裁断面も垂直面となる。即ち、アップリケ地2は厚みをもった裁断面となることは当然である。
【0037】
仮に、被転写対象物に転写された熱転写型アップリケの基材シートであるアップリケ地2が厚手の布地からできているものであったとすれば、熱転写型アップリケのアップリケ地2に転写された短繊維群による図柄は短繊維図柄結束膜によって、該熱転写型アップリケのアップリケ地2に直接に植設されるように見えるように植設されたとしても、被転写対象物に貼着した熱転写型アップリケの基材シートのアップリケ地2の裁断面が被転写対象物と短繊維による図柄の植設面である植毛転写シート17の短繊維結束図柄膜13の間から見えてしまって不体裁な貼着となってしまうと言う不都合が生じることがある。
【0038】
そこで、熱転写型アップリケ基材5のシートであるアップリケ地2が厚手のものであるときは、熱転写型アップリケ基材5から所望の形状のアップリケ材6に裁断するとき、その裁断手段を考えなければならない。
【0039】
本発明者等は、前記したアップリケ地2が厚手のものであるときは、熱転写型アップリケ基材5から熱転写型アップリケ用材6を所望の形状に裁断するときの手段として、熱転写型アップリケ用材6の輪郭に沿って図7、8、9に示すように輪郭辺が極薄となるよう裁断することを考えた。
【0040】
この手段は、図1に示す熱転写型アップリケ基材5から、図3に示す熱転写型アップリケ用材6に裁断して型取りするのに当たって、これまで通常行われていた打ち抜き手段による裁断によるものでなく、熱転写型アップリケ基材5から所望の形状に型取りした熱転写型アップリケ用材6として裁断を行う手段を、熱転写型アップリケ用材6の裁断面の輪郭辺を図7、8、9に示すように輪郭辺に沿って薄くする傾斜面とした輪郭辺を形成するように裁断することによって前記不都合を解消することができると考えた。
本発明者等は、この考え方に基づく裁断手段に使われる打ち抜き型、ヒートカット、レーザーカットの裁断機具に工夫を凝らすことによって熱転写型アップリケ基材5から輪郭を押し潰し、或いは傾斜面として削ぎ落として輪郭片を薄くした熱転写型アップリケ材6として裁断することを実現することができた。この案出した裁断手段によるときは、熱転写型アップリケ材6の裁断面を輪郭に沿って薄くする傾斜面として裁断した熱転写型アップリケ材6を構成するアップリケ地2、並びにその裏に形成された転写接着層3の輪郭辺は、剥離シート4に裏打ちされた状態で極薄の輪郭辺となる。熱転写型アップリケ材を作ることができた。従って、そのアップリケ地2、並びにその裏に形成された転写接着層3の輪郭辺は裏打ちされた剥離シート4によって支持された比較的しっかりとした極薄の輪郭となる。
【0041】
前記したように本発明者が創作した手段によって裁断した熱転写型アップリケ用材6に対し、前記したように、植毛転写シート17を以て、図7、図8に示すとおり熱転写型アップリケ用材6の輪郭と植毛転写シート17の短繊維図柄転写層15の輪郭とを合致させて前記した手段による植毛転写を行うときは、前記した熱転写型アップリケ用材6の剥離紙4上で、極薄となった熱転写型アップリケ材の基材シートであるアップリケ地2の輪郭辺面と植毛転写シート17の短繊維図柄結束膜13が図11に示す状態で貼着されることになる。
この操作を行った図11に示す熱転写型アップリケ材20から剥離紙4を剥がし取ったときは、熱転写型アップリケ材20を構成する熱転写型アップリケ材20の基材シートであるアップリケ地2の厚みの輪郭は全く目立たないものとなる。
即ち、熱転写型アップリケ材20から剥離紙4を剥がし取った熱転写型アップリケの輪郭は、植毛転写シート17からアップリケ地2に転写された短繊維図柄結束膜13の輪郭そのものがその輪郭となる。
【0042】
この熱転写型アップリケ20が剥離シート4を剥がし取った熱転写型アップリケを以て被転写対象物、例えば、ユニホームに転写すると、この熱転写型アップリケの輪郭は、この熱転写型アップリケの基材シートである布地のアップリケ地の厚みは全く目立たず、その輪郭は植毛転写シートからアップリケ地2に転写された短繊維図柄結束膜13の輪郭がその輪郭となり、その輪郭通りの短繊維による図柄が形成されることになる。従って、その輪郭はいつまでも鮮明な輪郭を保ち、その輪郭にほつれが生じるようなことはない。
【符号の説明】
【0043】
1 装飾図柄
2 アップリケ地
3 転写接着層
4 剥離シート
5 熱転写型アップリケ基材
6 熱転写型アップリケ用材
7 熱転写型アップリケ材
10 基材シート
11 短繊維植設薄膜
12 短繊維
13 短繊維図柄結束膜
14 短繊維図柄転写膜
15 短繊維図柄転写層
16 植毛シート
17 植毛転写シート
20 熱転写型アップリケ材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所望の色彩、図柄模様を印刷した布地から成るアップリケ地裏にホットメルト系熱可塑性合成樹脂から成る転写接着層を形成し、該転写接着層に剥離シートを裏打ちして成る熱転写型アップリケ基材から所望の形状に裁断してなる熱転写型アップリケ用材を、前記形状の輪郭辺に沿って薄手に形成した熱転写型アップリケ用材とするとともに、少なくとも該熱転写型アップリケ用材の形状の輪郭に沿って同形状に短繊維から成る縁取り転写を施す短繊維図柄結束膜と短繊維図柄転写膜から成る短繊維図柄転写層を形成した植毛転写シートを以て前記熱転写型アップリケ用材の前記布地であるアップリケ地面の輪郭辺に沿って短繊維を転写して成ることを特徴とする熱転写型アップリケ材。
【請求項2】
所望の色彩、図柄模様を印刷した布地から成るアップリケ地裏にホットメルト系熱可塑性合成樹脂から成る転写接着層を形成し、該転写接着層に剥離シートを裏打ちして成る熱転写型アップリケ基材から所望の形状に裁断してなる熱転写型アップリケ用材を、前記形状の輪郭辺に沿って薄手に形成した熱転写型アップリケ用材とするとともに、少なくとも該熱転写型アップリケ用材の形状の輪郭に沿って同形状に短繊維から成る縁取り転写を施す短繊維図柄結束膜と短繊維図柄転写膜から成る短繊維図柄転写層を形成した植毛転写シートを以て前記熱転写型アップリケ用材の前記布地であるアップリケ地面の輪郭辺に沿って短繊維を転写して成ることを特徴とする熱転写型アップリケ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−214867(P2010−214867A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−66328(P2009−66328)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(399132386)株式会社宝來社 (12)
【Fターム(参考)】