熱間圧延機の張力制御装置および制御方法
【課題】鋼板温度の影響による板幅のバラツキを低減する張力制御装置および制御方法を提供する。
【解決手段】複数の圧延スタンド101を備え,スタンド間にルーパ11を備えた熱間圧延機を制御対象10とし、熱間圧延機を通過する鋼板103の張力を所望の値に制御する熱間圧延機の張力制御装置15において、張力指令値を格納する張力指令格納手段151と、鋼板の温度を計測する温度計13からの検出温度を取り込み、鋼板の目標温度と検出温度の偏差にしたがって張力指令値を補正する張力指令補正手段1101と、補正された張力指令値と検出した張力値の偏差に応じて熱間圧延機を調整する張力制御手段15を備えた熱間圧延機の張力制御装置。
【解決手段】複数の圧延スタンド101を備え,スタンド間にルーパ11を備えた熱間圧延機を制御対象10とし、熱間圧延機を通過する鋼板103の張力を所望の値に制御する熱間圧延機の張力制御装置15において、張力指令値を格納する張力指令格納手段151と、鋼板の温度を計測する温度計13からの検出温度を取り込み、鋼板の目標温度と検出温度の偏差にしたがって張力指令値を補正する張力指令補正手段1101と、補正された張力指令値と検出した張力値の偏差に応じて熱間圧延機を調整する張力制御手段15を備えた熱間圧延機の張力制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱間圧延機の張力制御装置およびその制御方法に係り、特にスタンド間の鋼板の張力制御を安定化し、板厚変動や幅縮みなどの鋼板品質不良を低減するのに好適な熱間圧延機の張力制御装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱間圧延機のスタンド間の鋼板張力を鋼板の板幅や板厚精度に着目して制御する従来技術として、以下の手法があった。
【0003】
特許文献1では、仕上げスタンド出側に備えられた板幅計から板幅の実績値を計測し、これが板幅目標値となるように張力設定値を補正する手法が記載されている。
【0004】
特許文献2には、仕上げスタンド出側の板厚、板幅、板温度の計測値の時系列と、目標板厚、目標板幅の時系列と、仕上げ圧延の動的モデルに基づいて評価関数を最小化する演算で、仕上げ圧延時の圧延条件(圧延スタンドの荷重設定や圧延スタンド間の張力設定等)を最適に設定する制御方法が示されている。
【0005】
加えて特許文献3には、熱間往復圧延機において、鋼板の両端部の張力指令値を高く設定し、両端を除く部分で張力指令値を低く設定することで、鋼板の幅縮みを抑制する制御方式が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−312909号公報
【特許文献2】特開平9−122723号公報
【特許文献3】特開2009−279638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般に鋼板の張力が板幅や板厚に及ぼす効果は、鋼板の温度に依存して変化する。しかるに、上述した従来手法には、この点への配慮が十分でないことに加えて、以下の問題があった。
【0008】
幅精度を高応答に向上させようとすると、下流スタンド間の張力を変更した方が良い。一方、張力変化が板幅を変化させる効果は鋼板板厚が厚い方が大きい。
【0009】
この点に関し、特許文献1の手法で幅制御を高応答化しようとして下流スタンド間の張力を操作すると、下流スタンドではすでに板厚が薄くなっているため、板幅を変化させるためには張力を大きく変化させる必要があり、圧延の安定性を損なう恐れがあった。逆に上流スタンド間の張力を変更して幅制御する場合、効率的な板幅制御が可能であるが、制御の結果が板幅計に現れるまでに多大な時間を必要とするため、板幅制御の応答が遅くなる問題があった。
【0010】
特許文献2に記載の方法は、板幅や板厚の精度を総合的に向上できる可能性があるが、評価関数を用いた多入力の複雑な計算にしたがって制御指令値を決定する手法であるため、最良の結果を得るには多数のパラメータ調整が必要となる。したがって制御系の構築や保守に多大な労力を必要とする恐れがあった。
【0011】
特許文献3に記載の手法は、鋼板の位置に着目して張力制御の設定値を変更することで、一様な板幅を得ることを目的としているが、鋼板の多様な温度変化に対して、これを補償する張力変化はテーパ状であることが示されているに過ぎない。したがって、張力変化の板幅変化への影響の考慮は十分でなく、このため、鋼板の先後端とそれ以外の部位で、板幅が変動する場合があった。
【0012】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、鋼板の温度情報を利用した簡単な方法で鋼板の長手方向に均一な板幅を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明では、上記課題を解決するために、複数の圧延スタンドを備え、隣接する圧延スタンドを1組として少なくとも2組以上に適用される熱間圧延機の張力制御装置であって、各組の圧延スタンドは上流側圧延スタンドと下流側の圧延スタンドとの間にルーパを備え、圧延スタンド間の鋼板の張力を所望の値に制御する熱間圧延機の張力制御装置において、各組の圧延スタンドは、張力指令値を格納する張力指令格納手段と、鋼板の温度を計測する温度計からの検出温度を取り込み、鋼板の目標温度と検出温度の偏差にしたがって張力指令値を補正する張力指令補正手段と、補正された張力指令値と検出した張力値の偏差に応じて各組の圧延スタンドを調整する張力制御手段により制御される。
【0014】
また、鋼板の検出温度がその目標温度より高くなるとき弱め張力制御を行い、鋼板の検出温度がその目標温度より低下するとき強め張力制御を行う。
【0015】
また、熱間圧延機の出側に備えられた熱間圧延機出側温度計の検出温度を取り込み,熱間圧延機出側の目標温度と該検出温度の偏差にしたがって張力指令値を補正する張力指令補正手段を備えた。
【0016】
また、熱間圧延機の入側に備えられた熱間圧延機入側温度計の検出温度を取り込み,熱間圧延機入側の目標温度と該検出温度の偏差にしたがって張力指令値を補正する張力指令補正手段を備えた。
【0017】
また、熱間圧延機の入側に備えられた熱間圧延機入側温度計から検出した第1の検出温度と熱間圧延機の出側に備えられた熱間圧延機出側温度計から検出した第2の検出温度を取り込み,熱間圧延機入側の目標温度と第1の検出温度の偏差を第1の温度偏差として算出するとともに熱間圧延機出側の目標温度と該第2の検出温度の偏差を第2の温度偏差として算出し,張力指令補正手段は第1の温度偏差と第2の温度偏差の和により補正信号を得る。
【0018】
また、複数の圧延スタンドについて、上流側の圧延スタンドの組に対する張力指令補正手段の制御ゲインを、下流側の圧延スタンドの組に対する張力指令補正手段の制御ゲインに対して大きく設定する。
【0019】
本発明では、上記課題を解決するために、複数の圧延スタンドを備え、隣接する圧延スタンドを1組として少なくとも2組以上に適用され、各組の圧延スタンドは上流側の圧延スタンドと下流側の圧延スタンドとの間にルーパを備え、圧延スタンドを通過する鋼板の張力を所望の値に制御する熱間圧延機の張力制御方法において、鋼板の温度を検出し、該圧延スタンド間では,鋼板の検出温度がその目標温度より高くなるとき弱め張力制御を行い、鋼板の検出温度がその目標温度より低下するとき強め張力制御を行う。
【0020】
また、鋼板の温度は、熱間圧延機の下流側の温度とされる。
【0021】
また、鋼板の温度は、熱間圧延機の上流側の温度とされる。
【0022】
また、鋼板の温度は、熱間圧延機の入側の温度と、出側の温度であり、それぞれの目標温度からの温度偏差の和にしたがって弱め張力制御もしくは強め張力制御が行われる。
【0023】
本発明では、上記課題を解決するために、複数の圧延スタンドを備え、隣接する圧延スタンドを1組として少なくとも2組以上に適用され、各組の圧延スタンドは上流側の圧延スタンドと下流側の圧延スタンドとの間にルーパを備え、圧延スタンドを通過する鋼板の張力を所望の値に制御する熱間圧延機の張力制御方法において、鋼板の温度を検出し、目標温度からの温度偏差について、検出温度がその目標温度より高くなるとき弱め張力制御を行い、検出温度がその目標温度より低下するとき強め張力制御を行うとともに、上流側の組の圧延スタンドに対する前記温度偏差に対する制御ゲインを、下流側の組の圧延スタンド間に対する温度偏差に対する制御ゲインに対して大きく設定する。
【発明の効果】
【0024】
張力指令補正手段は、スタンド間張力を操作端として、圧延中の鋼板温度の変動が板厚や板幅に及ぼす影響を補償する。この結果、鋼板長手方向で均一な板幅や板厚を得ることができる。また熱間圧延機の入側又は出側に備えられた温度計で計測した鋼板温度を用いてスタンド間張力を補正することにより、高応答な張力制御を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】熱間圧延機の張力制御装置の第1の実施例を示した図。
【図2】張力指令格納手段151の構成を示す図。
【図3】負荷トルク推定手段155の処理を示す図。
【図4】負荷トルクを推定するモデルの説明図。
【図5】ルーパ高さ指令生成手段156の構成を示す図。
【図6】ルーパ支持トルク推定手段158の処理を示す図。
【図7】ルーパ支持トルクを推定するモデルの説明図。
【図8】張力指令補正手段171の処理を示す図。
【図9】熱間圧延機の張力制御装置の第2の実施例を示した図。
【図10】張力指令補正手段901の処理を示す図。
【図11】熱間圧延機の張力制御装置の第3の実施例を示した図。
【図12】張力指令補正手段1101の処理を示す図。
【図13】熱間圧延機の張力制御装置の第4の実施例を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。本発明の熱間圧延機の張力制御では、ごく簡単に言えば熱間圧延機の鋼板の温度を計測し、張力制御目標値を鋼板温度により補正し、熱間圧延機の操作端を駆動する。個々の実施例においては、鋼板温度の計測箇所、あるいは操作端が具体的に特定される。また、鋼板の温度と張力の関係が明確にされる。
【0027】
本発明によれば、仕上げスタンドにおける張力制御の安定化が可能で、圧延時の安定性、通板性向上が図れるとともに、高精度な板幅や板厚の鋼板が得られる。
【実施例1】
【0028】
図1に本発明の第1の実施例を示す。第1の実施例の熱間圧延機の張力制御では、熱間圧延機出側温度による補正を行い、スタンドのドライブ装置を駆動する点に特徴がある。図1において、張力制御装置15は制御対象10(熱間圧延機)から種々の信号を受信し、制御信号を制御対象10に出力する。
【0029】
まず制御対象10の構成を説明する。本実施例において、制御対象10は複数のスタンド101により鋼板103が連続的に圧延されるタンデムミルである。鋼板103は、図示の左から右に移動し、上流側の第1スタンド101Fから下流側の第2スタンド101Bに進むにつれ、鋼板103が徐々に薄く圧延される。なお、実際には上流にさらに複数のスタンドがあり、通常の仕上げミルでは6〜7スタンド程度が配置されることが多い。図1ではこのうちの隣接する2台のみを示している。
【0030】
図1では、スタンド101は鋼板103を挟んで、実際に板を圧延するワークロール104とそれを支えるバックアップロール105により構成された4段ミルの例が示されている。ドライブ装置109はワークロール104を駆動する。図では省略されているが、バックアップロールを駆動するドライブ装置も備えられている。
【0031】
スタンド101Fと101B間の鋼板103には、長手方向に鋼板を引っ張る力である張力が発生する。各スタンド101に対して、入側の鋼板張力を後方張力、出側の鋼板張力を前方張力と称する。スタンド101Fの例では後方張力がTb、前方張力はTfである。
【0032】
スタンド101Fと101B間に設けられたルーパ11は、ルーパシリンダ111、ルーパアーム112等からなり、鋼板103を支持することで通板や張力を安定化する役割を果たす。ルーパ11はルーパ駆動装置108により高さ制御され、ルーパ高さは高さ計114で検出される。またスタンド101Fとスタンド101Bの間にある鋼板103の張力(スタンド101Fから見ると前方張力Tf)はルーパアーム112に取り付けられた張力計113で測定できる。ルーパは通常、各スタンド間に取り付けられている。
【0033】
この図と上記説明により明らかなように、本発明の熱間圧延機における操作端は、ドライブ装置109並びにルーパ駆動装置108である。
【0034】
次に本発明の前提となる張力制御装置15の基本構成について、図2から図7を用いて説明する。なお、先に述べたように第1の実施例の熱間圧延機の張力制御では、熱間圧延機出側温度による補正を行い、操作端としてスタンド101Fのドライブ装置109を駆動する点に特徴がある。この特徴部分については、前提構成の説明後に図8を用いて行う。
【0035】
なお、張力制御としては、最適制御を適用した手法等、種々知られているが、本実施例では負荷トルクを推定してフィードフォワード制御する方式を例にして説明する。まず全体の構成について簡単に説明した後、各部の動作を詳細に説明する。
【0036】
張力制御装置15は、前後スタンドとルーパを1組とする圧延設備が複数台列配備された制御対象10の張力制御を行うが、ここでは1組の前後スタンドとルーパの張力制御を行う制御回路部分を図示している。つまり、図1の張力制御装置15において、1組の前後スタンドとルーパが例えば、スタンド101F、101Bとルーパ110であり、この張力制御を行う制御回路部分が、スタンド間張力制御手段155である。
【0037】
従ってスタンド間張力制御手段は、スタンド101Bとその後段のスタンドとそのルーパに対しても設置されている。また同様にスタンド101Fとその前段のスタンドとそのルーパに対してもスタンド間張力制御手段155が設置されている。このように制御対象10全体では複数のスタンドを備え、隣接するスタンドを1組としたとき、少なくとも2組以上の各組にスタンド間張力制御手段155が備えられている。これらのスタンド間張力制御手段155は、前後のスタンドとルーパを1組の操作対象として同様の機能が備えられる。
【0038】
張力制御装置15内のスタンド間張力制御手段155には、制御対象10から実績収集手段16を介して、各スタンドの圧延荷重P、張力Tf、Tb、ルーパ高さθ、鋼板速度等の実績データを取り込む。また、張力制御装置15のスタンド間張力制御手段155からは、操作対象であるスタンド101Fとルーパ11に対して操作信号idとilが与えられる。
【0039】
一方の操作対象であるスタンド101のワークロール104を駆動する操作端であるドライブ装置109は、張力指令Tfsにしたがって制御される。すなわち、前方張力の実績値Tfが張力指令Tfsに一致するように張力制御手段152が動作する。その後、速度制御手段154においてドライブ装置109の速度制御演算を行い、最終的にドライブ装置109を駆動する電流指令idを算出し、ドライブ装置109に対して出力する。なお負荷トルク推定手段155は、ルーパ制御系との非干渉化を行うためのフィードフォワード補償器である。
【0040】
また他方の操作対象であるルーパ110を動作させるルーパ駆動装置108は、ルーパ高さ指令θsにしたがって制御される。すなわち、ルーパ高さの実績値θがルーパ高さ指令値θsに一致するようにルーパ高さ制御手段157が動作し、最終的にルーパ駆動装置108を駆動する電流指令ilを算出し、ルーパ駆動装置108に対して出力する。ルーパ支持トルク推定手段158は、張力制御系との非干渉化を行うためのフィードフォワード補償器である。このように本実施例では、張力はドライブ速度により制御され、ルーパ高さはルーパ高さ制御により制御される。
【0041】
次に各部の動作を詳細に説明する。図2に張力指令格納手段151の構成を示す。図の例で各スタンド間の鋼板103の張力指令は、鋼種、板厚、板幅により層別されている。例えば鋼種がSS400、板厚2.0〜3.0mm、板幅900mmでは1.5kg/mm2であることを示している。ここで、各スタンド間の板厚は圧延スケジュールにより一意に決定されるので、その後、鋼種、板幅と決定された板厚から、張力設定値を決定することができる。なお、図2の例の他にも、層別条件として鋼板103の移動速度や、スタンドを追加して決定することも可能である。
【0042】
このようにして決定された張力設定値を前方張力指令値Tfsとし、張力制御手段152はこの値と検出した前方張力検出値Tfとの差ΔTfを入力し、速度制御手段154への入力となる速度設定値Vsを算出する。速度設定値Vsは、例えば(1)式に示す比例積分演算により算出できる。ただし(1)式において、K1は比例ゲイン、T1は積分時間、Sはラプラス演算子である。
[数1]
Vs=K1(1+1/T1S)ΔTf (1)
その後サクセシブと呼ばれる速度同調処理を行う。すなわち下流スタンド101Bでワークロールギャップやワークロール速度が変化したとき、対応した速度変化量ΔV2を上流スタンド101Fで補償する処理である。補償すべき速度変化量ΔV2は、例えば(2)式で求められる。ただし(2)式において、bは下流スタンド101Bの後進率、fは上流スタンド101Fの先進率、ΔV1は下流スタンドの速度変化量である。
[数2]
ΔV2=(1−b)/(1+f)ΔV1 (2)
速度制御手段154はVs+ΔV2からドライブ装置109を駆動する電流指令(トルク指令)C1を算出する。C1は例えば(3)式により算出する。(3)式は、速度制御手段154を比例積分制御で実現した例であり、K2は比例ゲイン、T2は積分時間、C1nはC1の現在値、Vは速度の実績値である。なお、ΔVはΔV=Vs+ΔV2−Vとして求められる。
[数3]
C1=C1n+K2(1+1/T2S)ΔV (3)
図3に負荷トルク推定手段155が実行する処理を示す。負荷トルク推定手段155はステップS31で、実績収集手段16から前方張力Tf、後方張力Tb、圧延荷重Pを取り込む。ステップS32では以下により、ドライブ装置109の総トルクのうち、負荷トルクに相当する値E1を推定する。
【0043】
図4は、鋼板103がワークロール104で圧延された例を示している。鋼板103は左から右に進み、Pは圧延荷重、P(x)は部位xにおける鋼板103の単位長さあたりの圧延荷重である。単位長さあたりの圧延荷重P(x)を部位xについて積分すると、荷重の総量であるPと一致する。またRはワークロール104の半径である。このとき負荷トルクE1は(4)式で算出できることが知られている。ただし R1は偏平ロール径である。
[数4]
E1=(R/R1)∫Pxdx+(R/2)(Tb−Tf) (4)
負荷トルク推定手段155は(4)式を計算することで負荷トルクE1を推定する。最終的にドライブ装置109にはE1とC1を加算した値が電流指令idとして出力される。
【0044】
次にもう一つの操作信号(電流指令信号il)を求めることについて説明する。ここでは、ルーパ高さの制御を実施するが、その目標信号となるルーパ高さ指令θsを、ルーパ高さ指令生成手段156で求める。図5に一例が示されるルーパ高さ指令生成手段156は、鋼板103の通過長Lに対応してルーパ高さ指令θsが格納されているルーパ高さ指令格納手段502と、ルーパ高さ指令格納手段502に格納されている情報を基にルーパ高さを決定して出力するルーパ高さ指令決定手段501を備えている。
【0045】
ルーパ高さ指令格納手段502には、図5に示すように鋼板103の通過長Lに対応して3種類のルーパ高さが設定されている。第1のルーパ高さは、鋼板103の先端部に対してルーパ高さが上昇し鋼板103と接触するまでの長さに対するルーパ高さ指令503、第2のルーパ高さは、ルーパ11が鋼板103を支え通板しているときの定常的なルーパ高さ指令504、第3のルーパ高さは、鋼板103の尾端近くでルーパ高さを減少させ、ルーパ11と鋼板103の接触をなくすときの高さ指令505である。
【0046】
これらは鋼板103の通過長Lに対応して格納されている。ここで通過長信号Lとはルーパ11が支持している鋼板103の部位の鋼板先端からの距離である。したがってルーパ高さ指令は鋼板103の通過にしたがって変化する。
【0047】
ルーパ高さ決定手段501は、実績収集手段16から鋼板103の通過長信号Lを取り込み、ルーパ高さ指令格納手段502を参照してルーパ高さ指令θsを抽出する。そして抽出したθsをルーパ高さ指令として出力する。
【0048】
ルーパ高さ制御手段157には、このルーパ高さ指令値θsとルーパ高さ検出値θとの差Δθが入力される。ルーパ高さ制御手段157は、Δθからルーパ駆動装置108を駆動するための電流指令(トルク指令)C2を算出する。C2は例えば(5)式により算出する。(5)式はルーパ高さ制御を比例・積分制御で実現した例であり、ここでK3は比例ゲイン、T3は積分時間である。
[数5]
C2=K3(1+1/T3S)Δθ (5)
図6にルーパ支持トルク推定手段158の処理を示す。ルーパ支持トルク推定手段158は、ステップS61で実績収集手段16から前方張力Tf、ルーパ高さθを取り込む。ステップS62では以下により、ルーパ駆動装置108の総トルクのうち、ルーパを支持するための負荷トルクに相当する値E2を推定する。
【0049】
図7はスタンド101Fとスタンド101Bで圧延されている鋼板103が、ルーパアーム112で支持された例を示している。鋼板103は左から右に進み、Laはルーパアーム112の長さ、θはルーパ高さ(ルーパ角)、βは鋼板103の水平位置に対する角度を示している。
このときルーパ支持トルクE2は(6)式で算出できることが知られている。但し、ここでDはルーパの角度変化に対する速度摩擦係数である。
[数6]
E2=K1(θ)Tf+K2(θ)+K3(θ)+D(dθ/dt) (6)
また(6)式中の係数K1(θ)は、板厚hと板幅bを用いて、(7)式で表現できる。
[数7]
K1(θ)=2hbLa・conθsinβ (7)
また(6)式中の係数K2(θ)は、鋼板103の比重ρを用いて、(8)式で表現できる。
[数8]
K2(θ)=2ρhbg・(l/conβ)La・cosθ (8)
さらに、(6)式中の係数K3(θ)は、 (9)式で表現できる。
[数9]
K3(θ)=Wlgrl・cosθ (9)
ここでWlはルーパアーム112の重さ、gは重力加速度、rlはルーパアーム112の支点から重心位置までの距離である。
【0050】
これら(7)式から(9)式の係数は、いずれもルーパ角θの関数であり、支持トルクの値は変化する。これら係数の物理的な意味は、K1(θ)は張力により発生する支持トルク、K2(θ)は鋼板103の重さを支えることにより発生する支持トルク、K3(θ)はルーパアーム112の自重により発生する支持トルクである。
【0051】
最終的には、推定したE2を用いて、ルーパ駆動装置108には、E2とC2を加算した値が電流指令ilとして出力される。
【0052】
以上の演算によりドライブ装置109とルーパ駆動装置108が鋼板103の干渉を排除した状態で連動して動作する。
【0053】
本発明は、以上説明した構成を前提として適用されるものであり、図8に本発明の第1の実施例で実現された張力指令補正手段171の処理を示す。この張力指令補正手段171では、まずステップS81で図1の熱間圧延機出側温度目標値格納手段170から熱間圧延機出側温度の目標値Mfsを取り込む。さらにステップS82で図1の熱間圧延機出側温度計130から熱間圧延機出側温度の実績値Mfを取り込む。そして両者の差分ΔFDTを(10)式により算出する。ΔFDTは温度の実績値が高いとき、正の値となる。
[数10]
ΔFDT=Mfs−Mf (10)
次に、ステップS83で(11)式により張力指令の補正値ΔTf1を算出して、出力する。但し、(11)式でKt1は比例ゲインである。
[数11]
ΔTf1=Kt1・ΔFDT (11)
このようにして比例演算処理により求められた張力指令の補正値ΔTf1は、熱間圧延機出側温度の実績値が目標値に対して大きな値であるほど大きな値となり、逆に小さな値であるほど、小さな値となる。
【0054】
また、図1に示すように、張力指令補正手段151が出力した張力指令の補正値ΔTf1は、張力指令格納手段151から出力された張力指令Tfsから減じられ、(Tfs‐ΔTf1)が新たな張力指令値となる。
【0055】
このことは、本発明の第1の実施例によれば、熱間圧延機出側温度の実績値Mfがその目標値Mfsを超過して高くなるほど、張力制御手段152の目標張力を下げる結果になることを意味する。つまり、このときは弱め張力制御を行うことになる。
【0056】
同様に、熱間圧延機出側温度の実績値Mfがその目標値Mfsを超過して低くなるほど、張力制御手段152の目標張力を上げる結果になることを意味する。つまり、このときは強め張力制御を行うことになる。
【0057】
また、複数スタンドを設置した場合に、上流スタンド間と、下流スタンド間では、比例ゲインKt1は、各スタンド間で同じ値でも良いが、上流スタンド間の方が張力修正効果が大きいことから、上流スタンド間を多少大きな値にするのがよい。
【0058】
第1の実施例では一つのスタンドとルーパを例にして説明したが、スタンドが多段に連続したタンデムミルでは、同様の処理をスタンド、ルーパ毎に用意すれば同様の演算で実現できる。
【0059】
圧延機出側温度Mfで張力制御する第1の実施例によれば、スタンド間で水注入する場合などの温度変化を迅速に制御に反映することができる。
【0060】
なお、図1において熱間圧延機出側温度計130は、多くの場合に圧延機制御の他の制御目的で使用したり,鋼板の品質を管理するために既設された温度計であり、本発明では張力制御のためにこの信号を利用している。また、熱間圧延機出側温度計130は、複数スタンドの最後段スタンドの出側に設置されている。
【実施例2】
【0061】
図9に本発明の第2の実施例を示す。図9では圧延機出側温度Mfの代わりに圧延機入側温度Mbを用いて張力指令の補正値を算出し、操作端としてドライブ装置を駆動する。図9の構成及び機能は、この点以外は図1と全く同一に構成されている。
【0062】
図10に張力指令補正手段901が行う処理を示す。張力指令補正手段901は、まずステップS101で熱間圧延機入側温度目標値格納手段903から熱間圧延機入側温度の目標値Mbを取り込む。熱間圧延機入側温度の目標値Mbsは一定でも良いが、鋼板の部位に従って異なった値とすることもできる。
【0063】
さらにステップS102で熱間圧延機入側温度計902から熱間圧延機入側温度の実績値Mbを取り込み、両者の差分ΔFETを(12)式により算出する。ΔFETは温度の実績値が高いとき、正の値となる。
[数12]
ΔFET=Mbs−Mb (12)
また、ステップS103で(13)式により張力指令の補正値ΔTf1を算出して、出力する。ここで Kt2は比例ゲインである。
[数13]
ΔTf1=Kt2・ΔFET (13)
このようにして比例演算処理により求められた張力指令の補正値ΔTf1は、熱間圧延機入側温度の実績値Mbが目標値Mbsに対して大きな値であるほど大きな値となり、逆に小さな値であるほど、小さな値となる。
【0064】
また、図1に示すように、張力指令補正手段901が出力した張力指令の補正値ΔTf1は、張力指令格納手段151から出力された張力指令Tfsから減じられ、(Tfs‐ΔTf1)が新たな張力指令値となる。
【0065】
このことは、本発明の第2の実施例でも、熱間圧延機入側温度の実績値Mbがその目標値Mbsを超過して高くなるほど、張力制御手段152の目標張力を下げる結果になることを意味する。つまり、このときは弱め張力制御を行うことになる。
【0066】
同様に、熱間圧延機入側温度の実績値Mbがその目標値Mbsを超過して低くなるほど、張力制御手段152の目標張力を上げる結果になることを意味する。つまり、このときは強め張力制御を行うことになる。
【0067】
また、複数スタンドを設置した場合に、上流スタンド間と、下流スタンド間では、比例ゲインKt1は、各スタンド間で同じ値でも良いが、上流スタンド間の方が張力修正効果が大きいことから、上流スタンド間を多少大きな値にするのがよい。
【0068】
本実施例では一組の前後スタンドとルーパを例にして説明したが、スタンドが多段に連続したタンデムミルでは、同様の処理をスタンド、ルーパ毎に用意すれば同様の演算で実現できる。
【0069】
圧延機入側温度Mbで張力制御する第2の実施例によれば,上流側の温度変化で制御するので高速応答が期待できる。
【0070】
なお、図1において熱間圧延機入側温度計902は、多くの場合に圧延機制御の他の制御目的で使用したり,鋼板の品質を管理するために既設された温度計であり、本発明では張力制御のためにこの信号を利用している。また、熱間圧延機出側温度計902は、複数スタンドの最前段スタンドの入側に設置されている。
【実施例3】
【0071】
図11に本発明の第3の実施例を示す。図11では圧延機入側温度と圧延機出側温度を用いて張力指令の補正値を算出し、操作端としてドライブ装置を駆動する。図11の構成及び機能は、この点以外は図1と全く同一に構成されている。
【0072】
図12に張力指令補正手段1101が行う処理を示す。張力指令補正手段1101はまずステップS101で、熱間圧延機入側温度目標値格納手段903から熱間圧延機入側温度の目標値Mbsを取り込む。次にステップS102で熱間圧延機出側温度目標値格納手段170から熱間圧延機入側温度の目標値Mbfを取り込む。熱間圧延機入側温度の目標値Mbsと熱間圧延機出側温度の目標値Mbfは一定でも良いが、鋼板の部位に従って異なった値とすることもできる。
【0073】
さらにステップS103で熱間圧延機入側温度計902から熱間圧延機入側温度の実績値Mbを取り込み、両者の差分ΔFETを(14)式により算出する。ΔFETは温度の実績値が高いとき、正の値となる。
[数14]
ΔFET=Mbs−Mb (14)
さらにステップS104で熱間圧延機出側温度計13から熱間圧延機出側温度の実績値Mfを取り込み、両者の差分ΔFDTを(15)式により算出する。ΔFDTは温度の実績値が高いとき、正の値となる。
[数15]
ΔFDT=Mfs−Mf (15)
ステップS105で(16)式により張力指令の補正値ΔTf1を算出して、出力する。ここで Kt3、Kt4は比例ゲインである。
[数16]
ΔTf1=Kt3・ΔFDT +Kt4・ΔFET (16)
また、図11に示すように、張力指令補正手段1101が出力した張力指令の補正値ΔTf1は、張力指令格納手段151から出力された張力指令Tfsから減じられ、(Tfs‐ΔTf1)が新たな張力指令値となる。
【0074】
(16)式で用いているふたつの温度偏差(ΔFDTとΔFET)の補償値への影響の大きさは、比例ゲインKt3、Kt4の大きさで調整する。Kt4に対してKt3が大きいほど張力指令補正値に対するΔFDTの寄与が大きくなり、Kt3に対してKt4が大きいほど張力指令補正値に対するΔFETの寄与が大きくなる。
【0075】
このことは、本発明の第3の実施例でも、熱間圧延機温度の実績値がその目標値を超過して高くなるほど、張力制御手段152の目標張力を下げる結果になることを意味し、このときは弱め張力制御を行うことになる。
【0076】
同様に、熱間圧延機温度の実績値がその目標値を超過して低くなるほど、張力制御手段152の目標張力を上げる結果になることを意味し、このときは強め張力制御を行うことになる。
【0077】
また、第3の実施例によれば、上流側で検知した温度変化も下流側で検知した温度変化も制御に反映されるので、第1と第2の実施例の特徴を併せ持つ制御を行うことができる。
【0078】
なお、複数スタンドを設置した場合に、上流スタンド間と、下流スタンド間では、比例ゲインKt3、Kt4は、各スタンド間で同じ値でも良いが、上流スタンド間の方が張力修正効果が大きいことから、上流スタンド間を多少大きな値にするのがよい。
【0079】
本実施例では一つのスタンドとルーパを例にして説明したが、スタンドが多段に連続したタンデムミルでは、同様の処理をスタンド、ルーパ毎に用意すれば同様の演算で実現できる。
【0080】
圧延機入側温度Mbと圧延機出側温度Mfで張力制御する第3の実施例によれば,第1と第2の実施例の特徴を併せ持つ制御とすることができる。
【0081】
なお、図1において熱間圧延機出側と入側の温度計130と902は、多くの場合に圧延機制御の他の制御目的で使用するために既設された温度計であり、本発明では張力制御のためにこの信号を利用している。また、熱間圧延機出側温度計130は、複数スタンドの最後段スタンドの出側に、熱間圧延機出側温度計902は、複数スタンドの最前段スタンドの入側に設置されている。
【実施例4】
【0082】
図13に本発明の第4の実施例を示す。実施例1〜実施例3では,張力の指令値と実績値の偏差を後方スタンドのドライブ速度で解消する例を示したが,図13では張力の指令値と実績値の偏差をルーパ高さの変更で解消する例を示す。
【0083】
すなわち,張力指令格納手段151の出力Tfsを張力指令補正手段171の出力ΔTf1で補正した後,張力実績値Tfとの偏差であるΔTfを用いて,張力制御手段1302によりルーパ高さの補正値Δθ1を算出する。ルーパ高さ指令生成手段1301が出力したルーパ高さの指令値θsを,Δθ1により補正した値をルーパ高さの指令値として,ルーパ高さ制御を行う。
【0084】
このように張力制御の操作端としては,実施例1〜3のドライブ速度と,本実施例のルーパ高さが選択できるが,いずれの場合も本発明を適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、コンベンショナルミル、ミニミル等、仕上げスタンド間にルーパを備えた熱延のタンデムミルのルーパ制御に、広く適用することができる。
【符号の説明】
【0086】
10:制御対象
101:スタンド
103:鋼板
108:ルーパ駆動装置
109:ドライブ装置
11:ルーパ
111:ルーパシリンダ
112:ルーパアーム
113:張力計
114:高さ計
13:熱間圧延機出側温度計
15:張力制御装置
151:張力指令格納手段
152:張力制御手段
153:速度同調手段
155:負荷トルク推定手段
156:ルーパ高さ指令生成手段
157:ルーパ高さ制御手段
158:ルーパ支持トルク推定手段
170:熱間圧延機出側温度目標値
171:張力指令補正手段
901:張力指令補正手段
902:熱間圧延機入側温度計
903:熱間圧延機入側温度目標値
1101:張力指令補正手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱間圧延機の張力制御装置およびその制御方法に係り、特にスタンド間の鋼板の張力制御を安定化し、板厚変動や幅縮みなどの鋼板品質不良を低減するのに好適な熱間圧延機の張力制御装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱間圧延機のスタンド間の鋼板張力を鋼板の板幅や板厚精度に着目して制御する従来技術として、以下の手法があった。
【0003】
特許文献1では、仕上げスタンド出側に備えられた板幅計から板幅の実績値を計測し、これが板幅目標値となるように張力設定値を補正する手法が記載されている。
【0004】
特許文献2には、仕上げスタンド出側の板厚、板幅、板温度の計測値の時系列と、目標板厚、目標板幅の時系列と、仕上げ圧延の動的モデルに基づいて評価関数を最小化する演算で、仕上げ圧延時の圧延条件(圧延スタンドの荷重設定や圧延スタンド間の張力設定等)を最適に設定する制御方法が示されている。
【0005】
加えて特許文献3には、熱間往復圧延機において、鋼板の両端部の張力指令値を高く設定し、両端を除く部分で張力指令値を低く設定することで、鋼板の幅縮みを抑制する制御方式が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−312909号公報
【特許文献2】特開平9−122723号公報
【特許文献3】特開2009−279638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般に鋼板の張力が板幅や板厚に及ぼす効果は、鋼板の温度に依存して変化する。しかるに、上述した従来手法には、この点への配慮が十分でないことに加えて、以下の問題があった。
【0008】
幅精度を高応答に向上させようとすると、下流スタンド間の張力を変更した方が良い。一方、張力変化が板幅を変化させる効果は鋼板板厚が厚い方が大きい。
【0009】
この点に関し、特許文献1の手法で幅制御を高応答化しようとして下流スタンド間の張力を操作すると、下流スタンドではすでに板厚が薄くなっているため、板幅を変化させるためには張力を大きく変化させる必要があり、圧延の安定性を損なう恐れがあった。逆に上流スタンド間の張力を変更して幅制御する場合、効率的な板幅制御が可能であるが、制御の結果が板幅計に現れるまでに多大な時間を必要とするため、板幅制御の応答が遅くなる問題があった。
【0010】
特許文献2に記載の方法は、板幅や板厚の精度を総合的に向上できる可能性があるが、評価関数を用いた多入力の複雑な計算にしたがって制御指令値を決定する手法であるため、最良の結果を得るには多数のパラメータ調整が必要となる。したがって制御系の構築や保守に多大な労力を必要とする恐れがあった。
【0011】
特許文献3に記載の手法は、鋼板の位置に着目して張力制御の設定値を変更することで、一様な板幅を得ることを目的としているが、鋼板の多様な温度変化に対して、これを補償する張力変化はテーパ状であることが示されているに過ぎない。したがって、張力変化の板幅変化への影響の考慮は十分でなく、このため、鋼板の先後端とそれ以外の部位で、板幅が変動する場合があった。
【0012】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、鋼板の温度情報を利用した簡単な方法で鋼板の長手方向に均一な板幅を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明では、上記課題を解決するために、複数の圧延スタンドを備え、隣接する圧延スタンドを1組として少なくとも2組以上に適用される熱間圧延機の張力制御装置であって、各組の圧延スタンドは上流側圧延スタンドと下流側の圧延スタンドとの間にルーパを備え、圧延スタンド間の鋼板の張力を所望の値に制御する熱間圧延機の張力制御装置において、各組の圧延スタンドは、張力指令値を格納する張力指令格納手段と、鋼板の温度を計測する温度計からの検出温度を取り込み、鋼板の目標温度と検出温度の偏差にしたがって張力指令値を補正する張力指令補正手段と、補正された張力指令値と検出した張力値の偏差に応じて各組の圧延スタンドを調整する張力制御手段により制御される。
【0014】
また、鋼板の検出温度がその目標温度より高くなるとき弱め張力制御を行い、鋼板の検出温度がその目標温度より低下するとき強め張力制御を行う。
【0015】
また、熱間圧延機の出側に備えられた熱間圧延機出側温度計の検出温度を取り込み,熱間圧延機出側の目標温度と該検出温度の偏差にしたがって張力指令値を補正する張力指令補正手段を備えた。
【0016】
また、熱間圧延機の入側に備えられた熱間圧延機入側温度計の検出温度を取り込み,熱間圧延機入側の目標温度と該検出温度の偏差にしたがって張力指令値を補正する張力指令補正手段を備えた。
【0017】
また、熱間圧延機の入側に備えられた熱間圧延機入側温度計から検出した第1の検出温度と熱間圧延機の出側に備えられた熱間圧延機出側温度計から検出した第2の検出温度を取り込み,熱間圧延機入側の目標温度と第1の検出温度の偏差を第1の温度偏差として算出するとともに熱間圧延機出側の目標温度と該第2の検出温度の偏差を第2の温度偏差として算出し,張力指令補正手段は第1の温度偏差と第2の温度偏差の和により補正信号を得る。
【0018】
また、複数の圧延スタンドについて、上流側の圧延スタンドの組に対する張力指令補正手段の制御ゲインを、下流側の圧延スタンドの組に対する張力指令補正手段の制御ゲインに対して大きく設定する。
【0019】
本発明では、上記課題を解決するために、複数の圧延スタンドを備え、隣接する圧延スタンドを1組として少なくとも2組以上に適用され、各組の圧延スタンドは上流側の圧延スタンドと下流側の圧延スタンドとの間にルーパを備え、圧延スタンドを通過する鋼板の張力を所望の値に制御する熱間圧延機の張力制御方法において、鋼板の温度を検出し、該圧延スタンド間では,鋼板の検出温度がその目標温度より高くなるとき弱め張力制御を行い、鋼板の検出温度がその目標温度より低下するとき強め張力制御を行う。
【0020】
また、鋼板の温度は、熱間圧延機の下流側の温度とされる。
【0021】
また、鋼板の温度は、熱間圧延機の上流側の温度とされる。
【0022】
また、鋼板の温度は、熱間圧延機の入側の温度と、出側の温度であり、それぞれの目標温度からの温度偏差の和にしたがって弱め張力制御もしくは強め張力制御が行われる。
【0023】
本発明では、上記課題を解決するために、複数の圧延スタンドを備え、隣接する圧延スタンドを1組として少なくとも2組以上に適用され、各組の圧延スタンドは上流側の圧延スタンドと下流側の圧延スタンドとの間にルーパを備え、圧延スタンドを通過する鋼板の張力を所望の値に制御する熱間圧延機の張力制御方法において、鋼板の温度を検出し、目標温度からの温度偏差について、検出温度がその目標温度より高くなるとき弱め張力制御を行い、検出温度がその目標温度より低下するとき強め張力制御を行うとともに、上流側の組の圧延スタンドに対する前記温度偏差に対する制御ゲインを、下流側の組の圧延スタンド間に対する温度偏差に対する制御ゲインに対して大きく設定する。
【発明の効果】
【0024】
張力指令補正手段は、スタンド間張力を操作端として、圧延中の鋼板温度の変動が板厚や板幅に及ぼす影響を補償する。この結果、鋼板長手方向で均一な板幅や板厚を得ることができる。また熱間圧延機の入側又は出側に備えられた温度計で計測した鋼板温度を用いてスタンド間張力を補正することにより、高応答な張力制御を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】熱間圧延機の張力制御装置の第1の実施例を示した図。
【図2】張力指令格納手段151の構成を示す図。
【図3】負荷トルク推定手段155の処理を示す図。
【図4】負荷トルクを推定するモデルの説明図。
【図5】ルーパ高さ指令生成手段156の構成を示す図。
【図6】ルーパ支持トルク推定手段158の処理を示す図。
【図7】ルーパ支持トルクを推定するモデルの説明図。
【図8】張力指令補正手段171の処理を示す図。
【図9】熱間圧延機の張力制御装置の第2の実施例を示した図。
【図10】張力指令補正手段901の処理を示す図。
【図11】熱間圧延機の張力制御装置の第3の実施例を示した図。
【図12】張力指令補正手段1101の処理を示す図。
【図13】熱間圧延機の張力制御装置の第4の実施例を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。本発明の熱間圧延機の張力制御では、ごく簡単に言えば熱間圧延機の鋼板の温度を計測し、張力制御目標値を鋼板温度により補正し、熱間圧延機の操作端を駆動する。個々の実施例においては、鋼板温度の計測箇所、あるいは操作端が具体的に特定される。また、鋼板の温度と張力の関係が明確にされる。
【0027】
本発明によれば、仕上げスタンドにおける張力制御の安定化が可能で、圧延時の安定性、通板性向上が図れるとともに、高精度な板幅や板厚の鋼板が得られる。
【実施例1】
【0028】
図1に本発明の第1の実施例を示す。第1の実施例の熱間圧延機の張力制御では、熱間圧延機出側温度による補正を行い、スタンドのドライブ装置を駆動する点に特徴がある。図1において、張力制御装置15は制御対象10(熱間圧延機)から種々の信号を受信し、制御信号を制御対象10に出力する。
【0029】
まず制御対象10の構成を説明する。本実施例において、制御対象10は複数のスタンド101により鋼板103が連続的に圧延されるタンデムミルである。鋼板103は、図示の左から右に移動し、上流側の第1スタンド101Fから下流側の第2スタンド101Bに進むにつれ、鋼板103が徐々に薄く圧延される。なお、実際には上流にさらに複数のスタンドがあり、通常の仕上げミルでは6〜7スタンド程度が配置されることが多い。図1ではこのうちの隣接する2台のみを示している。
【0030】
図1では、スタンド101は鋼板103を挟んで、実際に板を圧延するワークロール104とそれを支えるバックアップロール105により構成された4段ミルの例が示されている。ドライブ装置109はワークロール104を駆動する。図では省略されているが、バックアップロールを駆動するドライブ装置も備えられている。
【0031】
スタンド101Fと101B間の鋼板103には、長手方向に鋼板を引っ張る力である張力が発生する。各スタンド101に対して、入側の鋼板張力を後方張力、出側の鋼板張力を前方張力と称する。スタンド101Fの例では後方張力がTb、前方張力はTfである。
【0032】
スタンド101Fと101B間に設けられたルーパ11は、ルーパシリンダ111、ルーパアーム112等からなり、鋼板103を支持することで通板や張力を安定化する役割を果たす。ルーパ11はルーパ駆動装置108により高さ制御され、ルーパ高さは高さ計114で検出される。またスタンド101Fとスタンド101Bの間にある鋼板103の張力(スタンド101Fから見ると前方張力Tf)はルーパアーム112に取り付けられた張力計113で測定できる。ルーパは通常、各スタンド間に取り付けられている。
【0033】
この図と上記説明により明らかなように、本発明の熱間圧延機における操作端は、ドライブ装置109並びにルーパ駆動装置108である。
【0034】
次に本発明の前提となる張力制御装置15の基本構成について、図2から図7を用いて説明する。なお、先に述べたように第1の実施例の熱間圧延機の張力制御では、熱間圧延機出側温度による補正を行い、操作端としてスタンド101Fのドライブ装置109を駆動する点に特徴がある。この特徴部分については、前提構成の説明後に図8を用いて行う。
【0035】
なお、張力制御としては、最適制御を適用した手法等、種々知られているが、本実施例では負荷トルクを推定してフィードフォワード制御する方式を例にして説明する。まず全体の構成について簡単に説明した後、各部の動作を詳細に説明する。
【0036】
張力制御装置15は、前後スタンドとルーパを1組とする圧延設備が複数台列配備された制御対象10の張力制御を行うが、ここでは1組の前後スタンドとルーパの張力制御を行う制御回路部分を図示している。つまり、図1の張力制御装置15において、1組の前後スタンドとルーパが例えば、スタンド101F、101Bとルーパ110であり、この張力制御を行う制御回路部分が、スタンド間張力制御手段155である。
【0037】
従ってスタンド間張力制御手段は、スタンド101Bとその後段のスタンドとそのルーパに対しても設置されている。また同様にスタンド101Fとその前段のスタンドとそのルーパに対してもスタンド間張力制御手段155が設置されている。このように制御対象10全体では複数のスタンドを備え、隣接するスタンドを1組としたとき、少なくとも2組以上の各組にスタンド間張力制御手段155が備えられている。これらのスタンド間張力制御手段155は、前後のスタンドとルーパを1組の操作対象として同様の機能が備えられる。
【0038】
張力制御装置15内のスタンド間張力制御手段155には、制御対象10から実績収集手段16を介して、各スタンドの圧延荷重P、張力Tf、Tb、ルーパ高さθ、鋼板速度等の実績データを取り込む。また、張力制御装置15のスタンド間張力制御手段155からは、操作対象であるスタンド101Fとルーパ11に対して操作信号idとilが与えられる。
【0039】
一方の操作対象であるスタンド101のワークロール104を駆動する操作端であるドライブ装置109は、張力指令Tfsにしたがって制御される。すなわち、前方張力の実績値Tfが張力指令Tfsに一致するように張力制御手段152が動作する。その後、速度制御手段154においてドライブ装置109の速度制御演算を行い、最終的にドライブ装置109を駆動する電流指令idを算出し、ドライブ装置109に対して出力する。なお負荷トルク推定手段155は、ルーパ制御系との非干渉化を行うためのフィードフォワード補償器である。
【0040】
また他方の操作対象であるルーパ110を動作させるルーパ駆動装置108は、ルーパ高さ指令θsにしたがって制御される。すなわち、ルーパ高さの実績値θがルーパ高さ指令値θsに一致するようにルーパ高さ制御手段157が動作し、最終的にルーパ駆動装置108を駆動する電流指令ilを算出し、ルーパ駆動装置108に対して出力する。ルーパ支持トルク推定手段158は、張力制御系との非干渉化を行うためのフィードフォワード補償器である。このように本実施例では、張力はドライブ速度により制御され、ルーパ高さはルーパ高さ制御により制御される。
【0041】
次に各部の動作を詳細に説明する。図2に張力指令格納手段151の構成を示す。図の例で各スタンド間の鋼板103の張力指令は、鋼種、板厚、板幅により層別されている。例えば鋼種がSS400、板厚2.0〜3.0mm、板幅900mmでは1.5kg/mm2であることを示している。ここで、各スタンド間の板厚は圧延スケジュールにより一意に決定されるので、その後、鋼種、板幅と決定された板厚から、張力設定値を決定することができる。なお、図2の例の他にも、層別条件として鋼板103の移動速度や、スタンドを追加して決定することも可能である。
【0042】
このようにして決定された張力設定値を前方張力指令値Tfsとし、張力制御手段152はこの値と検出した前方張力検出値Tfとの差ΔTfを入力し、速度制御手段154への入力となる速度設定値Vsを算出する。速度設定値Vsは、例えば(1)式に示す比例積分演算により算出できる。ただし(1)式において、K1は比例ゲイン、T1は積分時間、Sはラプラス演算子である。
[数1]
Vs=K1(1+1/T1S)ΔTf (1)
その後サクセシブと呼ばれる速度同調処理を行う。すなわち下流スタンド101Bでワークロールギャップやワークロール速度が変化したとき、対応した速度変化量ΔV2を上流スタンド101Fで補償する処理である。補償すべき速度変化量ΔV2は、例えば(2)式で求められる。ただし(2)式において、bは下流スタンド101Bの後進率、fは上流スタンド101Fの先進率、ΔV1は下流スタンドの速度変化量である。
[数2]
ΔV2=(1−b)/(1+f)ΔV1 (2)
速度制御手段154はVs+ΔV2からドライブ装置109を駆動する電流指令(トルク指令)C1を算出する。C1は例えば(3)式により算出する。(3)式は、速度制御手段154を比例積分制御で実現した例であり、K2は比例ゲイン、T2は積分時間、C1nはC1の現在値、Vは速度の実績値である。なお、ΔVはΔV=Vs+ΔV2−Vとして求められる。
[数3]
C1=C1n+K2(1+1/T2S)ΔV (3)
図3に負荷トルク推定手段155が実行する処理を示す。負荷トルク推定手段155はステップS31で、実績収集手段16から前方張力Tf、後方張力Tb、圧延荷重Pを取り込む。ステップS32では以下により、ドライブ装置109の総トルクのうち、負荷トルクに相当する値E1を推定する。
【0043】
図4は、鋼板103がワークロール104で圧延された例を示している。鋼板103は左から右に進み、Pは圧延荷重、P(x)は部位xにおける鋼板103の単位長さあたりの圧延荷重である。単位長さあたりの圧延荷重P(x)を部位xについて積分すると、荷重の総量であるPと一致する。またRはワークロール104の半径である。このとき負荷トルクE1は(4)式で算出できることが知られている。ただし R1は偏平ロール径である。
[数4]
E1=(R/R1)∫Pxdx+(R/2)(Tb−Tf) (4)
負荷トルク推定手段155は(4)式を計算することで負荷トルクE1を推定する。最終的にドライブ装置109にはE1とC1を加算した値が電流指令idとして出力される。
【0044】
次にもう一つの操作信号(電流指令信号il)を求めることについて説明する。ここでは、ルーパ高さの制御を実施するが、その目標信号となるルーパ高さ指令θsを、ルーパ高さ指令生成手段156で求める。図5に一例が示されるルーパ高さ指令生成手段156は、鋼板103の通過長Lに対応してルーパ高さ指令θsが格納されているルーパ高さ指令格納手段502と、ルーパ高さ指令格納手段502に格納されている情報を基にルーパ高さを決定して出力するルーパ高さ指令決定手段501を備えている。
【0045】
ルーパ高さ指令格納手段502には、図5に示すように鋼板103の通過長Lに対応して3種類のルーパ高さが設定されている。第1のルーパ高さは、鋼板103の先端部に対してルーパ高さが上昇し鋼板103と接触するまでの長さに対するルーパ高さ指令503、第2のルーパ高さは、ルーパ11が鋼板103を支え通板しているときの定常的なルーパ高さ指令504、第3のルーパ高さは、鋼板103の尾端近くでルーパ高さを減少させ、ルーパ11と鋼板103の接触をなくすときの高さ指令505である。
【0046】
これらは鋼板103の通過長Lに対応して格納されている。ここで通過長信号Lとはルーパ11が支持している鋼板103の部位の鋼板先端からの距離である。したがってルーパ高さ指令は鋼板103の通過にしたがって変化する。
【0047】
ルーパ高さ決定手段501は、実績収集手段16から鋼板103の通過長信号Lを取り込み、ルーパ高さ指令格納手段502を参照してルーパ高さ指令θsを抽出する。そして抽出したθsをルーパ高さ指令として出力する。
【0048】
ルーパ高さ制御手段157には、このルーパ高さ指令値θsとルーパ高さ検出値θとの差Δθが入力される。ルーパ高さ制御手段157は、Δθからルーパ駆動装置108を駆動するための電流指令(トルク指令)C2を算出する。C2は例えば(5)式により算出する。(5)式はルーパ高さ制御を比例・積分制御で実現した例であり、ここでK3は比例ゲイン、T3は積分時間である。
[数5]
C2=K3(1+1/T3S)Δθ (5)
図6にルーパ支持トルク推定手段158の処理を示す。ルーパ支持トルク推定手段158は、ステップS61で実績収集手段16から前方張力Tf、ルーパ高さθを取り込む。ステップS62では以下により、ルーパ駆動装置108の総トルクのうち、ルーパを支持するための負荷トルクに相当する値E2を推定する。
【0049】
図7はスタンド101Fとスタンド101Bで圧延されている鋼板103が、ルーパアーム112で支持された例を示している。鋼板103は左から右に進み、Laはルーパアーム112の長さ、θはルーパ高さ(ルーパ角)、βは鋼板103の水平位置に対する角度を示している。
このときルーパ支持トルクE2は(6)式で算出できることが知られている。但し、ここでDはルーパの角度変化に対する速度摩擦係数である。
[数6]
E2=K1(θ)Tf+K2(θ)+K3(θ)+D(dθ/dt) (6)
また(6)式中の係数K1(θ)は、板厚hと板幅bを用いて、(7)式で表現できる。
[数7]
K1(θ)=2hbLa・conθsinβ (7)
また(6)式中の係数K2(θ)は、鋼板103の比重ρを用いて、(8)式で表現できる。
[数8]
K2(θ)=2ρhbg・(l/conβ)La・cosθ (8)
さらに、(6)式中の係数K3(θ)は、 (9)式で表現できる。
[数9]
K3(θ)=Wlgrl・cosθ (9)
ここでWlはルーパアーム112の重さ、gは重力加速度、rlはルーパアーム112の支点から重心位置までの距離である。
【0050】
これら(7)式から(9)式の係数は、いずれもルーパ角θの関数であり、支持トルクの値は変化する。これら係数の物理的な意味は、K1(θ)は張力により発生する支持トルク、K2(θ)は鋼板103の重さを支えることにより発生する支持トルク、K3(θ)はルーパアーム112の自重により発生する支持トルクである。
【0051】
最終的には、推定したE2を用いて、ルーパ駆動装置108には、E2とC2を加算した値が電流指令ilとして出力される。
【0052】
以上の演算によりドライブ装置109とルーパ駆動装置108が鋼板103の干渉を排除した状態で連動して動作する。
【0053】
本発明は、以上説明した構成を前提として適用されるものであり、図8に本発明の第1の実施例で実現された張力指令補正手段171の処理を示す。この張力指令補正手段171では、まずステップS81で図1の熱間圧延機出側温度目標値格納手段170から熱間圧延機出側温度の目標値Mfsを取り込む。さらにステップS82で図1の熱間圧延機出側温度計130から熱間圧延機出側温度の実績値Mfを取り込む。そして両者の差分ΔFDTを(10)式により算出する。ΔFDTは温度の実績値が高いとき、正の値となる。
[数10]
ΔFDT=Mfs−Mf (10)
次に、ステップS83で(11)式により張力指令の補正値ΔTf1を算出して、出力する。但し、(11)式でKt1は比例ゲインである。
[数11]
ΔTf1=Kt1・ΔFDT (11)
このようにして比例演算処理により求められた張力指令の補正値ΔTf1は、熱間圧延機出側温度の実績値が目標値に対して大きな値であるほど大きな値となり、逆に小さな値であるほど、小さな値となる。
【0054】
また、図1に示すように、張力指令補正手段151が出力した張力指令の補正値ΔTf1は、張力指令格納手段151から出力された張力指令Tfsから減じられ、(Tfs‐ΔTf1)が新たな張力指令値となる。
【0055】
このことは、本発明の第1の実施例によれば、熱間圧延機出側温度の実績値Mfがその目標値Mfsを超過して高くなるほど、張力制御手段152の目標張力を下げる結果になることを意味する。つまり、このときは弱め張力制御を行うことになる。
【0056】
同様に、熱間圧延機出側温度の実績値Mfがその目標値Mfsを超過して低くなるほど、張力制御手段152の目標張力を上げる結果になることを意味する。つまり、このときは強め張力制御を行うことになる。
【0057】
また、複数スタンドを設置した場合に、上流スタンド間と、下流スタンド間では、比例ゲインKt1は、各スタンド間で同じ値でも良いが、上流スタンド間の方が張力修正効果が大きいことから、上流スタンド間を多少大きな値にするのがよい。
【0058】
第1の実施例では一つのスタンドとルーパを例にして説明したが、スタンドが多段に連続したタンデムミルでは、同様の処理をスタンド、ルーパ毎に用意すれば同様の演算で実現できる。
【0059】
圧延機出側温度Mfで張力制御する第1の実施例によれば、スタンド間で水注入する場合などの温度変化を迅速に制御に反映することができる。
【0060】
なお、図1において熱間圧延機出側温度計130は、多くの場合に圧延機制御の他の制御目的で使用したり,鋼板の品質を管理するために既設された温度計であり、本発明では張力制御のためにこの信号を利用している。また、熱間圧延機出側温度計130は、複数スタンドの最後段スタンドの出側に設置されている。
【実施例2】
【0061】
図9に本発明の第2の実施例を示す。図9では圧延機出側温度Mfの代わりに圧延機入側温度Mbを用いて張力指令の補正値を算出し、操作端としてドライブ装置を駆動する。図9の構成及び機能は、この点以外は図1と全く同一に構成されている。
【0062】
図10に張力指令補正手段901が行う処理を示す。張力指令補正手段901は、まずステップS101で熱間圧延機入側温度目標値格納手段903から熱間圧延機入側温度の目標値Mbを取り込む。熱間圧延機入側温度の目標値Mbsは一定でも良いが、鋼板の部位に従って異なった値とすることもできる。
【0063】
さらにステップS102で熱間圧延機入側温度計902から熱間圧延機入側温度の実績値Mbを取り込み、両者の差分ΔFETを(12)式により算出する。ΔFETは温度の実績値が高いとき、正の値となる。
[数12]
ΔFET=Mbs−Mb (12)
また、ステップS103で(13)式により張力指令の補正値ΔTf1を算出して、出力する。ここで Kt2は比例ゲインである。
[数13]
ΔTf1=Kt2・ΔFET (13)
このようにして比例演算処理により求められた張力指令の補正値ΔTf1は、熱間圧延機入側温度の実績値Mbが目標値Mbsに対して大きな値であるほど大きな値となり、逆に小さな値であるほど、小さな値となる。
【0064】
また、図1に示すように、張力指令補正手段901が出力した張力指令の補正値ΔTf1は、張力指令格納手段151から出力された張力指令Tfsから減じられ、(Tfs‐ΔTf1)が新たな張力指令値となる。
【0065】
このことは、本発明の第2の実施例でも、熱間圧延機入側温度の実績値Mbがその目標値Mbsを超過して高くなるほど、張力制御手段152の目標張力を下げる結果になることを意味する。つまり、このときは弱め張力制御を行うことになる。
【0066】
同様に、熱間圧延機入側温度の実績値Mbがその目標値Mbsを超過して低くなるほど、張力制御手段152の目標張力を上げる結果になることを意味する。つまり、このときは強め張力制御を行うことになる。
【0067】
また、複数スタンドを設置した場合に、上流スタンド間と、下流スタンド間では、比例ゲインKt1は、各スタンド間で同じ値でも良いが、上流スタンド間の方が張力修正効果が大きいことから、上流スタンド間を多少大きな値にするのがよい。
【0068】
本実施例では一組の前後スタンドとルーパを例にして説明したが、スタンドが多段に連続したタンデムミルでは、同様の処理をスタンド、ルーパ毎に用意すれば同様の演算で実現できる。
【0069】
圧延機入側温度Mbで張力制御する第2の実施例によれば,上流側の温度変化で制御するので高速応答が期待できる。
【0070】
なお、図1において熱間圧延機入側温度計902は、多くの場合に圧延機制御の他の制御目的で使用したり,鋼板の品質を管理するために既設された温度計であり、本発明では張力制御のためにこの信号を利用している。また、熱間圧延機出側温度計902は、複数スタンドの最前段スタンドの入側に設置されている。
【実施例3】
【0071】
図11に本発明の第3の実施例を示す。図11では圧延機入側温度と圧延機出側温度を用いて張力指令の補正値を算出し、操作端としてドライブ装置を駆動する。図11の構成及び機能は、この点以外は図1と全く同一に構成されている。
【0072】
図12に張力指令補正手段1101が行う処理を示す。張力指令補正手段1101はまずステップS101で、熱間圧延機入側温度目標値格納手段903から熱間圧延機入側温度の目標値Mbsを取り込む。次にステップS102で熱間圧延機出側温度目標値格納手段170から熱間圧延機入側温度の目標値Mbfを取り込む。熱間圧延機入側温度の目標値Mbsと熱間圧延機出側温度の目標値Mbfは一定でも良いが、鋼板の部位に従って異なった値とすることもできる。
【0073】
さらにステップS103で熱間圧延機入側温度計902から熱間圧延機入側温度の実績値Mbを取り込み、両者の差分ΔFETを(14)式により算出する。ΔFETは温度の実績値が高いとき、正の値となる。
[数14]
ΔFET=Mbs−Mb (14)
さらにステップS104で熱間圧延機出側温度計13から熱間圧延機出側温度の実績値Mfを取り込み、両者の差分ΔFDTを(15)式により算出する。ΔFDTは温度の実績値が高いとき、正の値となる。
[数15]
ΔFDT=Mfs−Mf (15)
ステップS105で(16)式により張力指令の補正値ΔTf1を算出して、出力する。ここで Kt3、Kt4は比例ゲインである。
[数16]
ΔTf1=Kt3・ΔFDT +Kt4・ΔFET (16)
また、図11に示すように、張力指令補正手段1101が出力した張力指令の補正値ΔTf1は、張力指令格納手段151から出力された張力指令Tfsから減じられ、(Tfs‐ΔTf1)が新たな張力指令値となる。
【0074】
(16)式で用いているふたつの温度偏差(ΔFDTとΔFET)の補償値への影響の大きさは、比例ゲインKt3、Kt4の大きさで調整する。Kt4に対してKt3が大きいほど張力指令補正値に対するΔFDTの寄与が大きくなり、Kt3に対してKt4が大きいほど張力指令補正値に対するΔFETの寄与が大きくなる。
【0075】
このことは、本発明の第3の実施例でも、熱間圧延機温度の実績値がその目標値を超過して高くなるほど、張力制御手段152の目標張力を下げる結果になることを意味し、このときは弱め張力制御を行うことになる。
【0076】
同様に、熱間圧延機温度の実績値がその目標値を超過して低くなるほど、張力制御手段152の目標張力を上げる結果になることを意味し、このときは強め張力制御を行うことになる。
【0077】
また、第3の実施例によれば、上流側で検知した温度変化も下流側で検知した温度変化も制御に反映されるので、第1と第2の実施例の特徴を併せ持つ制御を行うことができる。
【0078】
なお、複数スタンドを設置した場合に、上流スタンド間と、下流スタンド間では、比例ゲインKt3、Kt4は、各スタンド間で同じ値でも良いが、上流スタンド間の方が張力修正効果が大きいことから、上流スタンド間を多少大きな値にするのがよい。
【0079】
本実施例では一つのスタンドとルーパを例にして説明したが、スタンドが多段に連続したタンデムミルでは、同様の処理をスタンド、ルーパ毎に用意すれば同様の演算で実現できる。
【0080】
圧延機入側温度Mbと圧延機出側温度Mfで張力制御する第3の実施例によれば,第1と第2の実施例の特徴を併せ持つ制御とすることができる。
【0081】
なお、図1において熱間圧延機出側と入側の温度計130と902は、多くの場合に圧延機制御の他の制御目的で使用するために既設された温度計であり、本発明では張力制御のためにこの信号を利用している。また、熱間圧延機出側温度計130は、複数スタンドの最後段スタンドの出側に、熱間圧延機出側温度計902は、複数スタンドの最前段スタンドの入側に設置されている。
【実施例4】
【0082】
図13に本発明の第4の実施例を示す。実施例1〜実施例3では,張力の指令値と実績値の偏差を後方スタンドのドライブ速度で解消する例を示したが,図13では張力の指令値と実績値の偏差をルーパ高さの変更で解消する例を示す。
【0083】
すなわち,張力指令格納手段151の出力Tfsを張力指令補正手段171の出力ΔTf1で補正した後,張力実績値Tfとの偏差であるΔTfを用いて,張力制御手段1302によりルーパ高さの補正値Δθ1を算出する。ルーパ高さ指令生成手段1301が出力したルーパ高さの指令値θsを,Δθ1により補正した値をルーパ高さの指令値として,ルーパ高さ制御を行う。
【0084】
このように張力制御の操作端としては,実施例1〜3のドライブ速度と,本実施例のルーパ高さが選択できるが,いずれの場合も本発明を適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、コンベンショナルミル、ミニミル等、仕上げスタンド間にルーパを備えた熱延のタンデムミルのルーパ制御に、広く適用することができる。
【符号の説明】
【0086】
10:制御対象
101:スタンド
103:鋼板
108:ルーパ駆動装置
109:ドライブ装置
11:ルーパ
111:ルーパシリンダ
112:ルーパアーム
113:張力計
114:高さ計
13:熱間圧延機出側温度計
15:張力制御装置
151:張力指令格納手段
152:張力制御手段
153:速度同調手段
155:負荷トルク推定手段
156:ルーパ高さ指令生成手段
157:ルーパ高さ制御手段
158:ルーパ支持トルク推定手段
170:熱間圧延機出側温度目標値
171:張力指令補正手段
901:張力指令補正手段
902:熱間圧延機入側温度計
903:熱間圧延機入側温度目標値
1101:張力指令補正手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の圧延スタンドを備え、隣接する圧延スタンドを1組として少なくとも2組以上に適用される熱間圧延機の張力制御装置であって、各組の圧延スタンドは上流側圧延スタンドと下流側の圧延スタンドとの間にルーパを備え、圧延スタンド間の鋼板の張力を所望の値に制御する熱間圧延機の張力制御装置において、
前記各組の圧延スタンドは、張力指令値を格納する張力指令格納手段と、前記鋼板の温度を計測する温度計からの検出温度を取り込み、鋼板の目標温度と検出温度の偏差にしたがって前記張力指令値を補正する張力指令補正手段と、補正された張力指令値と検出した張力値の偏差に応じて前記各組の圧延スタンドを調整する張力制御手段により制御されることを特徴とする熱間圧延機の張力制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の熱間圧延機の張力制御装置において、
鋼板の検出温度がその目標温度より高くなるとき弱め張力制御を行い、鋼板の検出温度がその目標温度より低下するとき強め張力制御を行うことを特徴とする熱間圧延機の張力制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の熱間圧延機の張力制御装置において、
熱間圧延機の出側に備えられた熱間圧延機出側温度計の検出温度を取り込み,熱間圧延機出側の目標温度と該検出温度の偏差にしたがって前記張力指令値を補正する張力指令補正手段を備えたことを特徴とする熱間圧延機の張力制御装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2記載の熱間圧延機の張力制御装置において、
熱間圧延機の入側に備えられた熱間圧延機入側温度計の検出温度を取り込み,熱間圧延機入側の目標温度と該検出温度の偏差にしたがって前記張力指令値を補正する張力指令補正手段を備えたことを特徴とする熱間圧延機の張力制御装置。
【請求項5】
請求項1または請求項2記載の熱間圧延機の張力制御装置において、
熱間圧延機の入側に備えられた熱間圧延機入側温度計から検出した第1の検出温度と前記熱間圧延機の出側に備えられた熱間圧延機出側温度計から検出した第2の検出温度を取り込み,熱間圧延機入側の目標温度と第1の検出温度の偏差を第1の温度偏差として算出するとともに熱間圧延機出側の目標温度と該第2の検出温度の偏差を第2の温度偏差として算出し,前記張力指令補正手段は第1の温度偏差と第2の温度偏差の和により補正信号を得ることを特徴とする熱間圧延機の張力制御装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の熱間圧延機の張力制御装置において、
複数の圧延スタンドについて、上流側の圧延スタンドの組に対する張力指令補正手段の制御ゲインを、下流側の圧延スタンドの組に対する張力指令補正手段の制御ゲインに対して大きく設定することを特徴とする熱間圧延機の張力制御装置。
【請求項7】
複数の圧延スタンドを備え、隣接する圧延スタンドを1組として少なくとも2組以上に適用され、各組の圧延スタンドは上流側の圧延スタンドと下流側の圧延スタンドとの間にルーパを備え、圧延スタンドを通過する鋼板の張力を所望の値に制御する熱間圧延機の張力制御方法において、
前記鋼板の温度を検出し、該圧延スタンド間では,鋼板の検出温度がその目標温度より高くなるとき弱め張力制御を行い、鋼板の検出温度がその目標温度より低下するとき強め張力制御を行うことを特徴とする熱間圧延機の張力制御方法。
【請求項8】
請求項7記載の熱間圧延機の張力制御方法において、
前記鋼板の温度は、熱間圧延機の下流側の温度とされることを特徴とする熱間圧延機の張力制御方法。
【請求項9】
請求項7記載の熱間圧延機の張力制御方法において、
前記鋼板の温度は、熱間圧延機の上流側の温度とされることを特徴とする熱間圧延機の張力制御方法。
【請求項10】
請求項7記載の熱間圧延機の張力制御方法において、
前記鋼板の温度は、熱間圧延機の入側の温度と、出側の温度であり、それぞれの目標温度からの温度偏差の和にしたがって弱め張力制御もしくは強め張力制御が行われることを特徴とする熱間圧延機の張力制御方法。
【請求項11】
複数の圧延スタンドを備え、隣接する圧延スタンドを1組として少なくとも2組以上に適用され、各組の圧延スタンドは上流側の圧延スタンドと下流側の圧延スタンドとの間にルーパを備え、圧延スタンドを通過する鋼板の張力を所望の値に制御する熱間圧延機の張力制御方法において、
前記鋼板の温度を検出し、目標温度からの温度偏差について、検出温度がその目標温度より高くなるとき弱め張力制御を行い、検出温度がその目標温度より低下するとき強め張力制御を行うとともに、
上流側の組の圧延スタンドに対する前記温度偏差に対する制御ゲインを、下流側の組の圧延スタンド間に対する前記温度偏差に対する制御ゲインに対して大きく設定することを特徴とする熱間圧延機の張力制御方法。
【請求項1】
複数の圧延スタンドを備え、隣接する圧延スタンドを1組として少なくとも2組以上に適用される熱間圧延機の張力制御装置であって、各組の圧延スタンドは上流側圧延スタンドと下流側の圧延スタンドとの間にルーパを備え、圧延スタンド間の鋼板の張力を所望の値に制御する熱間圧延機の張力制御装置において、
前記各組の圧延スタンドは、張力指令値を格納する張力指令格納手段と、前記鋼板の温度を計測する温度計からの検出温度を取り込み、鋼板の目標温度と検出温度の偏差にしたがって前記張力指令値を補正する張力指令補正手段と、補正された張力指令値と検出した張力値の偏差に応じて前記各組の圧延スタンドを調整する張力制御手段により制御されることを特徴とする熱間圧延機の張力制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の熱間圧延機の張力制御装置において、
鋼板の検出温度がその目標温度より高くなるとき弱め張力制御を行い、鋼板の検出温度がその目標温度より低下するとき強め張力制御を行うことを特徴とする熱間圧延機の張力制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の熱間圧延機の張力制御装置において、
熱間圧延機の出側に備えられた熱間圧延機出側温度計の検出温度を取り込み,熱間圧延機出側の目標温度と該検出温度の偏差にしたがって前記張力指令値を補正する張力指令補正手段を備えたことを特徴とする熱間圧延機の張力制御装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2記載の熱間圧延機の張力制御装置において、
熱間圧延機の入側に備えられた熱間圧延機入側温度計の検出温度を取り込み,熱間圧延機入側の目標温度と該検出温度の偏差にしたがって前記張力指令値を補正する張力指令補正手段を備えたことを特徴とする熱間圧延機の張力制御装置。
【請求項5】
請求項1または請求項2記載の熱間圧延機の張力制御装置において、
熱間圧延機の入側に備えられた熱間圧延機入側温度計から検出した第1の検出温度と前記熱間圧延機の出側に備えられた熱間圧延機出側温度計から検出した第2の検出温度を取り込み,熱間圧延機入側の目標温度と第1の検出温度の偏差を第1の温度偏差として算出するとともに熱間圧延機出側の目標温度と該第2の検出温度の偏差を第2の温度偏差として算出し,前記張力指令補正手段は第1の温度偏差と第2の温度偏差の和により補正信号を得ることを特徴とする熱間圧延機の張力制御装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の熱間圧延機の張力制御装置において、
複数の圧延スタンドについて、上流側の圧延スタンドの組に対する張力指令補正手段の制御ゲインを、下流側の圧延スタンドの組に対する張力指令補正手段の制御ゲインに対して大きく設定することを特徴とする熱間圧延機の張力制御装置。
【請求項7】
複数の圧延スタンドを備え、隣接する圧延スタンドを1組として少なくとも2組以上に適用され、各組の圧延スタンドは上流側の圧延スタンドと下流側の圧延スタンドとの間にルーパを備え、圧延スタンドを通過する鋼板の張力を所望の値に制御する熱間圧延機の張力制御方法において、
前記鋼板の温度を検出し、該圧延スタンド間では,鋼板の検出温度がその目標温度より高くなるとき弱め張力制御を行い、鋼板の検出温度がその目標温度より低下するとき強め張力制御を行うことを特徴とする熱間圧延機の張力制御方法。
【請求項8】
請求項7記載の熱間圧延機の張力制御方法において、
前記鋼板の温度は、熱間圧延機の下流側の温度とされることを特徴とする熱間圧延機の張力制御方法。
【請求項9】
請求項7記載の熱間圧延機の張力制御方法において、
前記鋼板の温度は、熱間圧延機の上流側の温度とされることを特徴とする熱間圧延機の張力制御方法。
【請求項10】
請求項7記載の熱間圧延機の張力制御方法において、
前記鋼板の温度は、熱間圧延機の入側の温度と、出側の温度であり、それぞれの目標温度からの温度偏差の和にしたがって弱め張力制御もしくは強め張力制御が行われることを特徴とする熱間圧延機の張力制御方法。
【請求項11】
複数の圧延スタンドを備え、隣接する圧延スタンドを1組として少なくとも2組以上に適用され、各組の圧延スタンドは上流側の圧延スタンドと下流側の圧延スタンドとの間にルーパを備え、圧延スタンドを通過する鋼板の張力を所望の値に制御する熱間圧延機の張力制御方法において、
前記鋼板の温度を検出し、目標温度からの温度偏差について、検出温度がその目標温度より高くなるとき弱め張力制御を行い、検出温度がその目標温度より低下するとき強め張力制御を行うとともに、
上流側の組の圧延スタンドに対する前記温度偏差に対する制御ゲインを、下流側の組の圧延スタンド間に対する前記温度偏差に対する制御ゲインに対して大きく設定することを特徴とする熱間圧延機の張力制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−236203(P2012−236203A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105755(P2011−105755)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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