説明

熱間変位測定装置及び熱間変位測定方法

【課題】高温域において、簡易にかつ精度良く熱間変位量を測定することができる熱間変位測定装置及び熱間変位測定方法を得る。
【解決手段】試料10が設置される測定室1と、試料10を加熱する加熱手段と、試料10の測定部における温度を測定するための温度測定手段と、試料10の測定部を拡大して投射する投射レンズ22と、投射レンズ22により拡大された試料10の測定部の像における両端部10a及び10bのそれぞれを撮像する一対の撮像手段23及び24とを備えることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱膨張率などを求めるための熱間変位量を測定することができる熱間変位測定装置及び熱間変位測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱膨張率などを求めるための熱間変位量を測定する方法としては、示差式膨張計法、押し棒式膨張計法、測微望遠鏡法などの種々の方法が知られている。
【0003】
示差式及び押し棒式の熱膨張測定方法では、構成する機器類の耐熱性に限界があり、高温域での測定ができないという問題がある。また、高温域においては、精度の高い標準物質がなく、高い測定精度が得られないという問題がある。
【0004】
特許文献1〜4に記載された測微望遠鏡法では、高温域において、試料自らが放射する光により、撮像が困難であり、測定できたとしても高い測定精度が得られなかった。また、カメラを並べて試料の両端を撮像するため、小さな試料を測定することができないという問題がある。
【0005】
特許文献5及び6に記載された測微望遠鏡法においては、レーザーを使用している。高温域(1500℃以上)においては、試料が発光するため、測定波長領域以上の熱放射を生じることがあり、S/N比が悪くなり、高い測定精度が得られないという問題がある。
【0006】
また、特許文献1〜5に記載された測微望遠鏡法においては、試料を間接的に加熱するので、断熱材や冷却設備が必要である。また、特許文献6においては、試料を通電により加熱しているが、試料から熱の輻射が生じ、輻射熱により、周囲の物質が加熱され高温になる。このため、断熱材や冷却設備が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭60−39540号公報
【特許文献2】特開昭61−7452号公報
【特許文献3】特開昭61−172041号公報
【特許文献4】特開平06−167468号公報
【特許文献5】特開2004−333154号公報
【特許文献6】特開2009−128066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、高温域において、簡易にかつ精度良く熱間変位量を測定することができる熱間変位測定装置及び熱間変位測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の熱間変位測定装置は、試料が設置される測定室と、試料を加熱する加熱手段と、試料の測定部における温度を測定するための温度測定手段と、試料の測定部を拡大して投射する投射レンズと、投射レンズにより拡大された試料の測定部の両端部における像のそれぞれを撮像する一対の撮像手段とを備えることを特徴としている。
【0010】
本発明によれば、投射レンズにより拡大された試料の測定部の両端部における像のそれぞれを、異なる撮像手段で撮像し、所定温度間における両端部の変位の差(変位量)から、熱間変位量を求めることができる。このため、試料に直接接触する部分がないので、高温域においても、熱間変位量を容易に測定することができる。
【0011】
また、測定部の両端部における像を拡大して、両端部の像のそれぞれを異なる撮像手段によって撮像しているので、試料が小さくとも測定することができる。つまり、試料の長さ方向だけでなく、試料の径方向の微小な変位量も測定することができる。また、レーザー等を使用しないので、高温域での試料からの発光によるS/N比の低下を生じることがなく、精度良く測定することができる。
【0012】
また、投射レンズと撮像手段によって測定することできるので、簡易な構造で測定することができる。
【0013】
本発明においては、加熱手段が、試料に直流電流を通電するための直流電源であることが好ましい。直流電源からの直流電流を通電することにより、直接試料を加熱することができるため、間接的加熱に必要なヒーターなどの設備が必要なく、簡易な構造で測定することができる。また、測定室内全体の温度を上げる必要がないので、経済的である。
【0014】
また、ヒーターなどによる加熱方式とは異なり、周囲の温度を比較的低くすることができる。このため、投射レンズ及び撮像手段等を試料の近くに設置することができ、装置構成を小さくすることができる。
【0015】
本発明においては、測定室の外周部を構成する壁部が、試料からの輻射による熱線を透過する材質から形成されており、試料からの熱線が測定室の壁部に直接照射されて外部に放射されるように構成されていることが好ましい。測定室の壁部を、熱線を透過する材質から形成することにより、測定室壁部の温度上昇を抑制することができる。このため、断熱材や冷却設備が不要となる。熱線を透過する材質から測定室の壁部を形成することにより、例えば、3000℃程度まで試料を昇温しても、測定室における試料の周囲の温度を200℃程度までの上昇に抑えることができる。
【0016】
また、測定室内の温度上昇を抑制することができるので、アルゴンなどの不活性ガスを測定室内の雰囲気のガスとして用いた場合に、不活性ガスがイオン化し、放電が生じるのを抑制することができる。このため、高温域における撮像に影響を与えることなく、より精度の高い測定が可能となる。
【0017】
本発明において、測定室の壁部の材質は、波長0.4〜2.0μmの光の透過率が80%以上であることが好ましい。すなわち、上記範囲における各波長での光の透過率が80%以上であることが好ましい。試料からの輻射による熱線は、広い範囲の波長域で発生し、温度が高いほど強度が強くなる。しかしながら、低温領域では強度が強くなく、熱線が照射される物体に対する温度上昇への寄与はそれほど大きくはないと考えられる。また、輻射による熱線の強度は、高温になるほどピークが短波長側になり、特に1500℃以上では2.0μm以下の波長でピークとなるとともに、輻射による加熱の影響も無視できなくなる。従って、特に試料の温度が1500℃以上となる場合には、壁部において2.0μm以下の波長域の光をより多く透過させることにより、壁部の温度上昇を抑制し、ひいては測定室内部の温度上昇も抑制することができる。
【0018】
本発明において、測定室の壁部としては、特に限定されるものではないが、好ましいものとして石英ガラス、アルミナ等が挙げられる。これらの材質は、上記熱線を透過しやすいために温度が上昇せず、測定室の壁部及び測定室内の温度の上昇を抑制することができる。特に石英ガラスが好ましく用いられる。特に、石英ガラスは透明であり、耐熱性が高いため、加熱された試料を直接観察することができ好ましい。このため、測定室の壁部に窓等を設置する必要はなく、熱放射型温度計などにより、容易に高い温度の測定を行うことができる。また、試料の観察により測定できる他の物理的特性を容易に測定することができる。また、石英ガラスは、摩擦係数が小さく、保持部材を直接測定室に置いた場合に保持部材が自由に移動しやすくなる。
【0019】
本発明においては、投射レンズにより、試料の測定部の像を拡大し、径方向の両端部を撮像手段によって撮像するので、測定室の壁部は透明であることが必要である。石英ガラスは透明であり、耐熱性が高いため、本発明における測定室の壁部を形成する材料として特に好ましい。また、1つの投射レンズを用いることにより、微小な試料(例えば試料の径方向)であっても拡大することにより熱間変位量を容易に測定することができる。
【0020】
本発明においては、測定室の外周部の壁部と試料との間の距離は、50mm以上であることが好ましい。試料からの輻射による熱線は、その到達距離に応じてより減衰されるため、試料からの距離が長いほど照射された物体は加熱されにくくなる。本発明では測定室の外周部の壁部に輻射の熱線により加熱されにくい材質を用いており、壁部を試料から50mm以上離すことにより、壁部の加熱をさらに抑制することができる。なお、測定室の外周部の壁部は、試料からの距離のとりやすさ等から円柱状であることが好ましく、その直径は100mm以上が好ましい。また、測定室を不活性ガスで置換するためには容積が大きくなりすぎないことが好ましく、直径が200mm以下であることが好ましい。
【0021】
本発明においては、試料の両端部に光を照射する照明装置をさらに備えていてもよい。このような照明装置を備えることにより、低温域から高温域まで十分なコントラストで像を撮像することができる。従って、試料における端部の位置をより正確に検出することができる。高温域において、試料の自己発光により撮像が可能となった場合には、照明装置のスイッチを切って測定することができる。
【0022】
本発明においては、試料と投射レンズの間に、絞りまたはフィルタをさらに備えることが好ましい。絞り及び/またはフィルタにより、光量の調整、不要な波長の光の除去を行うことができ、試料における端部の位置をより正確に検出することができる。
【0023】
また、試料と投射レンズの間に設けることにより、絞りまたはフィルタを1つにすることができる。投射レンズと撮像手段の間に設けると、一対の撮像手段に対し、それぞれ絞り及び/またはフィルタを設ける必要がある。また、それぞれの絞り及び/またはフィルタを個別に調整する必要が生じ、煩雑となる。
【0024】
本発明の熱間変位測定方法は、試料を測定室に設置する工程と、測定室に設置した試料の測定部を拡大して投射し、測定部の像における径方向の両端部のそれぞれを撮像しながら、試料を加熱し、その温度を上昇させる工程と、温度上昇における温度差と、温度上昇による両端部の変位量とから、試料の熱間変位量を求める工程とを備えることを特徴としている。
【0025】
本発明の熱間変位測定方法によれば、高温域において、簡易にかつ精度良く熱間変位量を測定することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、高温域において、簡易にかつ精度良く熱間変位量を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に従う一実施形態の熱間変位測定装置を示す模式図。
【図2】本発明に従う一実施形態の熱間変位測定装置の測定室を示す斜視図。
【図3】図2に示す熱間変位測定装置の測定部を示す斜視図。
【図4】図2に示す熱間変位測定装置の測定部を示す平面図。
【図5】図4に示すA−A線に沿う断面図。
【図6】図2に示す熱間変位測定装置に用いる保持部材を示す平面図。
【図7】図6に示すA−A線に沿う断面図。
【図8】図2に示す熱間変位測定装置に用いる押え板を示す平面図。
【図9】図8に示すA−A線に沿う断面図。
【図10】図2に示す熱間変位測定装置により測定する試料を示す平面図。
【図11】図10に示す試料の側面図。
【図12】図2に示す熱間変位測定装置に用いるリフレクターを示す側面図。
【図13】図12に示すリフレクターを示す平面図。
【図14】図12及び図13に示すリフレクターの作製に用いる金属板を示す側面図。
【図15】本発明に従う一実施形態の熱間変位測定装置を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を具体的な実施形態により説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0029】
図1は、本発明に従う一実施形態の熱間変位測定装置を示す模式図である。
【0030】
試料10は、後述する測定室内に設置されている。なお、図1において、測定室は図示していない。測定室の外部には、光学フィルタ(または絞り)21及び投射レンズ22が設けられている。投射レンズ22は、試料10の測定部における両端部10a及び10bを拡大して投影するためのものである。試料10と投射レンズ22との間に、光学フィルタ(または絞り)21が設けられており、光学フィルタ21により、光量の調整、不要な波長の光の除去等がなされ、光学フィルタ21を通過した光が、投射レンズ22に入射する。試料10の測定部の像は、1つの投射レンズ22に入射した後、一対の撮像手段としての一次元CCD23及び24に投射される。一次元CCD24には、試料10の一方端部10aが撮像される。また、一次元CCD23には、試料10の他方端部10bが撮像される。本発明においては、投射レンズ22により、拡大された試料10の測定部の像における径方向の一方端部10aを一次元CCD24により、他方端部10bを一次元CCD23により、それぞれ撮像する。従って、一次元CCD23及び一次元CCD24のそれぞれの位置を適宜調整することにより、種々の大きさの試料10の測定に対応させることができる。
【0031】
一次元CCD23からの電気信号25における変曲点25aにより、試料10の他方端部10bの位置を検出することができる。同様に、一次元CCD24からの電気信号26の変曲点26aにより、試料10の一方端部10aの位置を検出することができる。これにより、一方端部10a及び他方端部10bの所定の温度の試料に対する変位量を測定することができ、試料10の一方端部10aから他方端部10bまでの距離を測定することができる。
【0032】
試料10が、加熱され熱膨張すると、径方向においても膨張するので、一方端部10aと他方端部10bの間の距離が変化する。これにより、所定の温度差における試料の熱間変位量を求めることができ、熱膨張率を算出することができる。
【0033】
以下、本発明を具体的な実施形態により説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0034】
図2は、本発明に従う一実施形態の熱間変位測定装置の測定室を示す斜視図である。図2に示すように、測定室1は、石英ガラス管からなる壁部1aの両端と、キャップ2及びキャップ3との間にO−リングを配置してクリップで固定することにより構成されている。本実施形態においてキャップ2及びキャップ3は、ベークライトより形成されているが、耐熱性のあるものであれば特に限定されるものではなく、金属や樹脂であってもよい。キャップ2には、測定室1内に不活性ガスを導入するための導入口18となるパイプが挿入されている。導入口18を通り、不活性ガスが測定室1内に導入される。本実施形態においては、不活性ガスとしてアルゴン(Ar)を用いている。不活性ガスとしては、ネオン(Ne)、クリプトン(Kr)など他の不活性ガスを用いてもよい。また、不活性ガスに代えて、窒素ガスを用いることも可能である。
【0035】
また、反対側に設けられたキャップ3には、排気口19が形成されている。排気口19は、測定室1内のガスを排気するため形成されている。なお、図2においては、排気口19を図示していない。排気口19には、測定室1内のガスを排気するための排気手段としての排気ポンプ(図示せず)が接続されている。
【0036】
排気口19から測定室1内のガスを排気した後、導入口18からアルゴンガスを導入することにより、測定室1内の雰囲気をアルゴンガスの雰囲気にすることができる。
【0037】
本実施形態の熱間変位測定装置によって電気抵抗率が測定される試料10は、測定室1内において、保持部材4及び5によって保持されることにより、測定室1内に設置されている。
【0038】
図2に示すように、保持部材4には、電線8が接続されており、電線8は、キャップ2と壁部1aとの間を通り、外部に導き出されている。同様に、保持部材5には電線9が接続されており、電線9はキャップ3と壁部1aとの間を通り外部に導き出されている。電線8及び電線9は、図示されない直流電源に接続されている。電線8に接続された保持部材4と、電線9に接続された保持部材5の間に試料10が保持されることにより、試料10に、直流電源からの直流電流が通電され、試料10が加熱される。
【0039】
壁部1aを構成する石英ガラス管は、支持部材31及び32により、台33の上に支持されている。なお、本実施形態では、石英ガラス管として、直径120mmのものを使用し、石英ガラスの0.4〜2.0μmの波長の光の透過率は、80%以上であった。
【0040】
図3は、図2に示す熱間変位測定装置の測定部を拡大して示す斜視図である。
【0041】
図3に示すように、保持部材4は、台座部4aと、押え板4eとを組み合わせることにより構成されている。同様に、保持部材5も、台座部5aと、押え板5eを組み合わせることにより構成されている。台座部4a及び5aは、本実施形態において、黒鉛から形成されている。押え板4e及び5eは、本実施形態において銅から形成されている。
【0042】
図4は、図2に示す熱間変位測定装置の測定部を示す平面図であり、図5は、図4に示すA−A線に沿う断面図である。
【0043】
図6は、台座部5aを示す平面図であり、図7は図6のA−A線に沿う断面図である。図8は、押え板5eを示す平面図であり、図9は、図8に示すA−A線に沿う断面図である。
【0044】
台座部4aも、台座部5aと同様の構造を有しており、押え板4eも、押え板5eと同様の構造を有している。
【0045】
図3及び図4に示すように、試料10の一方端部は、台座部5aに形成された溝5i(図6及び図7を参照)内に配置され、その上に、押え板5eを配置し、ボルト及びナットからなる固定具5bのボルトを、台座部5aの孔5f及び押え板5eの孔5jに通し、ナットで締め付けることにより、台座部5aと押え板5eの間に挟み固定されている。
【0046】
試料10の他方端部も、同様に、台座部4aと押え板4eを、固定具4bで固定することにより、台座部4aと押え板4eに挟み固定している。
【0047】
図5には、台座部5aと押え板5eの間に試料10を挟み固定した状態が示されている。
【0048】
図5に示すように、台座部5aの底面は、壁部1aの内面に沿う半円形状を有しており、台座部5aは、筒状の壁部1a内に挿入して配置され、壁部1aには固定されていない。台座部4aも同様に、壁部1a内に挿入して配置され、壁部1aには固定されていない。従って、保持部材4及び5は、測定室1内において、試料10の長さ方向に移動可能な状態で、測定室1内に保持されている。
【0049】
図3及び図4に示すように、試料10の測定部、すなわち保持部材4と保持部材5の間に位置する試料10の部分と、保持部材4との間には、リフレクター6が設けられている。同様に、試料10の測定部と保持部材5との間には、リフレクター7が設けられている。リフレクター6とリフレクター7の間の距離は、特に限定されるものではなく、試料10の長さによって変化させればよい。つまり、リフレクター6及び7を保持部材4及び5に固定し、試料10の長さにより保持部材4及び5とともに距離を変化させるようになっている。
【0050】
図12は、リフレクター6を示す側面図であり、図13は、リフレクター6を示す平面図である。リフレクター6は、図14に示す形状のステンレスSUS304からなる金属板を加工することにより作製される。図14に示すように、試料10を通す切抜き部6aが形成されており、その両側に切込6d及び6eが形成されている。切込6d及び6eの外側のハッチングで示す部分は打ち抜きにより抜き取られる。切込6d及び6eをその根元部分で折り曲げることにより、図12及び図13に示すフラップ部6b及び6cが形成されている。フラップ部6b及び6cには、取り付けねじ4cを通すための切欠が形成されている。リフレクター7も、リフレクター6と同様の形状を有している。
【0051】
図4に示すように、リフレクター6のフラップ部に取り付けねじ4cが通され、リフレクター6が台座部4aに取り付けられている。同様に、リフレクター7のフラップ部に取り付けねじ5cを通すことにより、台座部5aにリフレクター7が取り付けられている。図5、図6及び図7に示すように、取り付けねじ5cは、台座部5aに形成された孔5gにねじ込むことにより取り付けられている。
【0052】
リフレクター6及び7は、上述のように、ステンレスから形成されているので、試料10から放射される熱線を反射することができる。リフレクター6は、試料10の測定部と保持部材4との間に設けられ、リフレクター7は、試料10の測定部と保持部材5との間に設けられている。従って、測定の際、試料10から放射された熱線が、保持部材4及び保持部材5に照射されないように反射することができる。このため、保持部材4及び保持部材5が熱線を吸収して温度上昇するのを抑制することができる。このため、測定室1内の温度が上昇するのを抑制することができる。また、保持部材4及び保持部材5が、試料10からの熱線により劣化するのを防止することができる。前記リフレクター6及び7は、少なくとも赤外線を反射するものが好ましい。
【0053】
図6に示す孔5hには、ボルト及びナットからなる固定具5dが取り付けられ、この固定具5dにより、電線9が保持部材5に取り付けられている。同様に、固定具4dが、台座部4aに形成された孔に取り付けられ、電線8がこの固定具4dにより保持部材4に接続されている。
【0054】
図15は、本実施形態の熱間変位測定装置を模式的に示す図である。
【0055】
図15に示すように、試料10は、壁部1aが石英ガラスからなる測定室1内に配置されている。試料10には、直流電源14に一方端が接続された電線8及び電線9のそれぞれの他方端が接続されている。試料10に直流電流を通電することにより、試料10を加熱し、試料10の温度を上昇させることができる。直流電源14と試料10の間には、電流計15が設けられている。直流電源14としては、定電圧定電流電源を用いることが好ましい。
【0056】
試料10の測定部の温度は、低温域においては、熱電対13により測定される。熱電対13は、接着剤により試料10に取り付けられている。従って、本実施形態において、熱電対13は、使い捨て可能なものを用いている。熱電対13で測定されたデータは、温度計測回路・データロガ17に送られる。また、高温域における試料10の測定部の温度は、測定室1の外部に設けられた放射型温度計16により測定される。放射型温度計16で測定された温度データは、温度計測回路・データロガ17に送られる。このようにして測定された温度データに基づき、温度計測回路・データロガ17から直流電源14に信号が送られ、試料10に通電させる電流または電圧を制御し、試料10の昇温速度を制御することができる。また、光学式変位量測定装置20で測定された変位データも温度計測回路・データロガ17に送られ、所定温度の試料に対する各温度における試料の変位量が導き出される。
【0057】
測定室の外部には、光学式変位量測定装置20が設けられている。光学式変位量測定装置20は、図1を参照して説明した装置である。
【0058】
上述のように、本実施形態においては、測定室1の壁部1aが石英ガラスから形成されている。石英ガラスは、熱線を透過する材質であり、試料10から発生する熱線を透過する。このため、測定室1内の温度上昇を抑えることができ、断熱材や冷却設備等を必要とせず、簡易な構造で精度良く高温域における熱間変位量を測定することができる。
【0059】
放射型温度計16で、試料10の測定部の温度が3000℃程度に昇温している際に、試料10の上方の壁部1aにおける温度を測定したところ、396℃であった。また、試料10の測定部の中央から100mm程度離れた場所、すなわちリフレクター6及び7の上方では149℃であった。また、測定室1の端部、すなわちキャップ2及び3の近傍における温度を測定したところ、約100℃であり、測定室1内の温度が極めて低く抑えられていることがわかる。
【0060】
従って、本実施形態においては、測定室1の測定部周辺の温度上昇を抑制することができる。従って、従来必要であった、断熱材や冷却設備が不要となる。
【0061】
また、測定室の1の温度上昇を抑制することができるので、アルゴンなどの不活性ガスを測定室1内の雰囲気ガスとして用いた場合、不活性ガスがイオン化し、放電が生じるのを抑制することができる。このため、高温域における撮像に悪影響を与えることなく、より精度の高い測定が可能となる。
【0062】
以上のように、本実施形態においては、投射レンズ22により拡大された試料10の測定部の像における両端部10a及び10bのそれぞれを、一対の撮像手段23及び24で撮像し、両端部10a及び10bの所定温度の試料に対する変位量から、熱間変位量を求めることができる。このため、試料10に直接接触する部分がないので、高温域においても、熱間変位量を容易に測定することができる。
【0063】
また、レーザー等を使用していないので、高温域での試料からの発光により、S/N比の低下を生じることなく、精度良く測定することができる。
【0064】
また、投射レンズ22と撮像手段23及び24によって測定することができるので、簡易な構造で測定することができる。
【符号の説明】
【0065】
1…測定室
1a…壁部
2…キャップ
3…キャップ
4…保持部材
4a…台座部
4b…固定具
4c…取り付けねじ
4d…固定具
4e…板
5…保持部材
5a…台座部
5b…固定具
5c…取り付けねじ
5d…固定具
5e…板
5f…孔
5g…孔
5h…孔
5i…溝
5j…孔
6…リフレクター
6a…切抜き部
6b,6c…フラップ部
6d,6e…切込
7…リフレクター
8…電線
9…電線
10…試料
10a…一方端部
10b…他方端部
13…熱電対
14…直流電源
15…電流計
16…放射型温度計
17…温度計測回路・データロガ
18…導入口
19…排気口
20…光学式変位量測定装置
21…光学フィルタ
22…投射レンズ
23…一次元CCD
24…一次元CCD
25…電気信号
25a…変曲点
26…電気信号
26a…変曲点
31,32…支持部材
33…台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料が設置される測定室と、
前記試料を加熱する加熱手段と、
前記試料の測定部における温度を測定するための温度測定手段と、
前記試料の前記測定部を拡大して投射する投射レンズと、
前記投射レンズにより拡大された前記試料の前記測定部の両端部における像のそれぞれを撮像する一対の撮像手段とを備える熱間変位測定装置。
【請求項2】
前記加熱手段は、前記試料に直流電流を通電するための直流電源であることを特徴とする請求項1に記載の熱間変位測定装置。
【請求項3】
前記測定室の外周部を構成する壁部が、前記試料からの輻射による熱線を透過する材質から形成されており、前記試料からの前記熱線が前記測定室の前記壁部に直接照射されて外部に放射されることを特徴とする請求項1または2に記載の熱間変位測定装置。
【請求項4】
前記測定室の前記壁部の材質は、波長0.4〜2.0μmの光の透過率が80%以上であることを特徴とする請求項3に記載の熱間変位測定装置。
【請求項5】
前記測定室の前記壁部が、石英ガラスから形成されていることを特徴とする請求項3または4に記載の熱間変位測定装置。
【請求項6】
前記測定室の壁部と前記試料との間の距離が、50mm以上であることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の熱間変位測定装置。
【請求項7】
前記試料の前記両端部に光を照射する照明装置をさらに備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱間変位測定装置。
【請求項8】
前記試料と前記投射レンズとの間に、絞り及び/またはフィルタをさらに備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の熱間変位測定装置。
【請求項9】
試料を測定室に設置する工程と、
前記測定室に設置した前記試料の測定部を拡大して投射し、前記測定部の両端部における像のそれぞれを一対の撮像手段で撮像しながら、前記試料を加熱し、その温度を上昇させる工程と、
前記温度上昇における温度差と、前記温度上昇による前記両端部の変位量とから、前記試料の熱間変位量を求める工程とを備える熱間変位測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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