熱電変換温度センサおよびその製造方法
【課題】温度の検出に適した起電力が得られる熱電変換半導体を使用した熱電変換温度センサを提供する。
【解決手段】P型熱電変換半導体1とN型熱電変換半導体2の接合面8の面積(第1面積)に対して、それに続くN型熱電変換半導体2とP型熱電変換半導体3の接合面9の面積(第2面積)を小さくすることで、外側にあるP型熱電変換半導体1から内部にあるP型熱電変換半導体3への熱の伝導が早くすることができる。
【解決手段】P型熱電変換半導体1とN型熱電変換半導体2の接合面8の面積(第1面積)に対して、それに続くN型熱電変換半導体2とP型熱電変換半導体3の接合面9の面積(第2面積)を小さくすることで、外側にあるP型熱電変換半導体1から内部にあるP型熱電変換半導体3への熱の伝導が早くすることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電変換温度センサおよび熱電変換温度センサの製造方法に関し、詳細には温度変化を電気信号に変換して温度を検出する熱電変換温度センサおよび熱電変換温度センサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
温度変化を検出する方法としては、サーミスタによる抵抗値の変化、バイメタルによる物理的な形状変化、空気を使用した圧力の変化を捉える温度センサなどが知られている。また、異種金属を接触させた熱電対のゼーベック効果による起電力により温度を検出する方法も知られている。
【0003】
より具体的には、熱電対を使用したものとしては、図10に示すような棒状に形成された形態の熱電対温度センサが商品化されている。
【0004】
また、図11に示すように、コンスタンタン41、純鉄42の異種金属を密着した接合部46、空洞の接合部47、密着した接合部48と連続して接合した温度センサが商品化されている。このような温度センサは、形状が長く(大きく)、発生する起電力が少ない。
【0005】
そこで、より小型で、起電力が大きな材料として熱電変換半導体を使用した温度センサが開発されている。熱電変換半導体は、P型熱電変換半導体とN型熱電変換半導体にそれぞれ大別される。具体的には、例えば、図3に示すようにP型熱電変換半導体52と、N型熱電変換半導体51が対になった温度センサがある。この熱電変換半導体を使用した温度センサは、熱電対を使用した温度センサに比べ熱源との熱交換により大きな起電圧が発生することが知られている(特許文献1、非特許文献1など)。
【特許文献1】特願2006−155578号公報
【非特許文献1】「FeSi2系熱電変換モジュールのゼーベック係数の測定」、田中勝之他、The 28th Japan Symposium on Thermophysical Properties,Oct.24−26,2007,Sapporo.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、熱電変換半導体を用いた温度センサは、熱電変換半導体配置、接続方法、接続する導線の接続により大きく影響し、熱電変換半導体に発生する起電力が大きく変わることがわかってきた。そこで、起電力を大きくするための効率的な構造を解明することが技術的な課題となっている。
【0007】
本発明の目的は、温度の検出に適した起電力が得られるようにした熱電変換半導体を用いた熱電変換温度センサおよびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に係わる発明は、第1面積の第1面および第2面を有する第1導電型の第1熱電変換半導体と、前記第2面と接する前記第1面積の第3面および前記第1面積より小さな第2面積の第4面を有する第2導電型の第2熱電変換半導体と、前記第4面と接する前記第2面積の第5面および前記第1面積の第6面を有する第1導電型の第3熱電変換半導体と、前記第6面と接する前記第1面積の第7面および前記第1面積の第8面を有する第2導電型の第4熱電変換半導体とを備え、上記各半導体が異なる導電型の順に連続して接合されていることを特徴とする熱電変換温度センサである。
【0009】
請求項2に係わる発明は、請求項1において、前記第1面積が円形状であり、前記第2面積が前記第1面積より直径が小さな円形状であることを特徴とする。
【0010】
請求項3に係わる発明は、請求項1または2において、前記第1面積が円形状であり、前記第2面積が前記第1面積の一部を切り欠いた形状であることを特徴とする。
【0011】
請求項4に係わる発明は、請求項1〜3において、前記各熱電変換半導体同士の接合が放電プラズマ接合法により接合されたものであることを特徴とする。
【0012】
請求項5に係わる発明は、請求項1において、前記各熱電変換半導体が一体的に接合された状態となるように焼結されたものであることを特徴とする。
【0013】
また、上記目的を達成するため、請求項6に係わる発明は、第1面積の第1面および第2面が対向する位置となるように粉体状の第1導電型の第1熱電変換半導体を成形して焼結するステップと、前記第1面積の第3面および前記第1面積より小さな第2面積の第4面が対向する位置となるように粉体状の第2導電型の第2熱電変換半導体を成形して焼結するステップと、前記第2面積の第5面および前記第1面積の第6面が対向する位置となるように粉体状の第1導電型の第3熱電変換半導体を成形して焼結するステップと、前記第1面積の第7面および第8面が対向する位置となるように粉体状の第2導電型の第4熱電変換半導体を成形して焼結するステップと、焼結後の前記第1〜第4熱電変換半導体それぞれを、前記第2面と前記第3面、前記第4面と前記第5面、前記第6面と前記第7面が接するように接合するステップとを含むことを特徴とする熱電変換温度センサである。
【0014】
請求項7に係わる発明は、請求項6において、前記接合するステップにおいて、放電プラズマ接合法により接合することを特徴とする。
【0015】
さらに、上記目的を達成するため、請求項8に係わる発明は、第1面積の第1面および第2面が対向する位置となるように粉体状の第1導電型の第1熱電変換半導体を成形するステップと、前記第1面積の第3面および前記第1面積より小さな第2面積の第4面が対向する位置となるように粉体状の第2導電型の第2熱電変換半導体を成形するステップと、前記第2面積の第5面および前記第1面積の第6面が対向する位置となるように粉体状の第1導電型の第3熱電変換半導体を成形するステップと、前記第1面積の第7面および第8面が対向する位置となるように粉体状の第2導電型の第4熱電変換半導体を成形するステップと、形成後の前記第1〜第4熱電変換半導体それぞれを、前記第2面と前記第3面、前記第4面と前記第5面、前記第6面と前記第7面が接するように焼結するステップとを含むことを特徴とする熱電変換温度センサの製造方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係わる熱電変換温度センサによれば、異種熱電変換半導体の接合部分の面積を変えて複数対の異種熱電変換半導体を接合したので、外側にある第1熱電変換半導体と内部にある第3熱電変換半導体との熱容量の差を大きくすることができる。したがって温度変化に対して、従来の熱電対を使用した温度センサよりも大きな起電力を得ることができる。
【0017】
また、本発明に係わる熱電変換温度センサの製造方法によれば、各熱電変換半導体をそれぞれ粉末原料から成形、焼結するだけであるので、温度変化に対して大きな起電力が得られる温度センサを容易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を適用した実施形態について添付した図面を参照して説明する。
【0019】
(実施形態1)
図1は本実施形態1による熱電変換温度センサの構成を示す側面図であり、図2はこの熱電変換温度センサを示す斜視図である。
【0020】
熱電変換温度センサ20は、P導電型(以下P型という)とN導電型(以下N型という)の熱電変換半導体特性を持つ熱電変換半導体を接合したものである。ここで言う熱電変換半導体特性とは、温度差により起電力が発生する特性を言い、P型とN型では発生する起電力極性が逆の特性を表す。
【0021】
本実施形態の熱電変換温度センサ20は、第1熱電変換半導体(P型)1、第2熱電変換半導体(N型)2を備えた第1型の異種熱電半導体、第3熱電変換半導体(P型)3、第4熱電変換半導体(N型)4を有する。第1熱電変換半導体(P型)1は対向する面がともに第1面積である第1面(上端面7という)および第2面8aを有する。第2熱電変換半導体(N型)2は第1面積の第3面8bと第1面積より小さな第2面積の第4面9aを有する。第3熱電変換半導体(P型)3は第2面積の第5面9bと第1面積の第6面10aを有する。第4熱電変換半導体(N型)4は第1面積の第7面10bおよび第8面(下端面11という)を有する。
【0022】
そして、これらがP型、N型、P型、N型の順に連続して密着して接合している。すなわち、第1熱電変換半導体(P型)1の第2面8aと第2熱電変換半導体(N型)2の第3面8bとが接合し、第2熱電変換半導体(N型)2の第4面9aと第3熱電変換半導体(P型)3の第5面9bとが接合し、第3熱電変換半導体(P型)3の第6面10aと第4熱電変換半導体(N型)4の第7面10bとが接合している。
【0023】
したがって、第1熱電変換半導体(P型)1と第2熱電変換半導体(N型)2との接合面(第1面積)8、および第3熱電変換半導体(P型)3と第4熱電変換半導体(N型)4との接合面(第1面積)10の面積に対して、第2熱電変換半導体(N型)2と第3熱電変換半導体(P型)3との接合面(第2面積)9の面積が小さくなっている。
【0024】
そして、熱電変換温度センサ20としては、終端面である第1熱電変換半導体(P型)1の上端面7に導線5をはんだ付けし、第4熱電変換半導体(N型)4の下端面11に導線6をはんだ付けしている。
【0025】
この熱電変換温度センサ20に熱(温度変化)を加えると導線5、導線6間に起電力が発生する。この起電力を例えば別回路で増幅することで、温度検出に用いることができる。
【0026】
第1面積と第2面積の大きさの比は、出来るだけ大きくすることが好ましい。これは、面積比を大きくすることで、その熱容量に差が生じて温度差が発生しやすくなり、最大起電力が面積比に対数関数的に増加するからである。図12は、面積比を変えた場合における起電力E(mV)の時間経過t(s)に伴う変化を示す特性図である。図12に示すように、面積比に応じて発生する起電力が変化することが確認されている。また図13は、面積比と最大起電力E(mV)との関係を示す特性図である。図13に示すように、最大起電力は面積比に対数関数的に増加することが確認されている。
【0027】
一方、各熱電変換半導体の厚さL1〜L4は、特に限定されない。例えば、すべて同じ厚さとしてもよい。また、第2面積となる部分の厚さL5は、接合面9が確実に第2面積で接合できればよい。
【0028】
この熱電変換温度センサ20の製造方法は、例えば、それぞれの熱電変換半導体を形成後、接合してもよいし、すべてを一体的に形成してもよい。
【0029】
より具体的には、まず、一つ一つの熱電変換半導体を形成する場合は、上述した第1〜第4の熱電変換半導体となるように、熱電変換半導体の粉末原料を成形する。成形には、上述の各熱電変換半導体の形状をした型内に粉末原料を投入して、ある程度圧縮する。その後、所定の加圧加熱を行って焼結させる。これにより第1〜第4の熱電変換半導体が形成される。
【0030】
そして形成された第1〜第4の熱電変換半導体を上述のように、それぞれの面が接合されるように、はんだ付けや、銀ペーストなどの導電性接着材を使用して接合する。その後、終端面に導線5および6をハンダ付けすることで、熱電変換温度センサ20が完成する。
【0031】
一体的に製造する方法としては、例えば第1〜第4の熱電変換半導体となる粉末原料を図1および2に示した各熱電変換半導体形状となるように成形し、第1〜第4の熱電変換半導体がそれぞれ接合されるように重ねてそのまま焼結して形成する。このようにすれば、熱電変換半導体の形成と、P−N接合を一度に行うことができ、製造コスト、製造時間の短縮となる。
【0032】
なお、これら鉄シリサイド系熱電変換素子の成形および焼結は、一定の圧力、温度、時間の焼結条件下、放電プラズマ焼結法により製造することにより半導体特性を有する素子となる。なお、通常の電気炉を用いた焼結では金属相ができてしまうため、半導体特性を有する素子は得られない。また、通常の電気炉において成型で粉体加工することも可能であるが、この場合も有効な半導体特性を有する素子は得られない。
【0033】
原料粉末としては、例えばP型FeSi2:FeSi2−4.1質量%Cr、N型FeSi2:FeSi2−2.4質量%Coを使用してそれぞれP型熱電変換半導体とN型熱電変換半導体を製造し得る。
【0034】
なお、P型とN型を接続したものを1対とすれば、図示した形態では、異種熱電変換半導体を2対接続した形態となる。また、さらに3対、4対と連続して接合してもよい。例えば、3対の場合は、図1の第4熱電変換半導体4の下端面11に、第1面積よりも小さな第2面積の面(第2熱電変換半導体2の第4面9aに相当)を形成し、この面に第3熱電変換半導体3、第4熱電変換半導体4と同一構造の一対の半導体を接合した構造となる。または、図1の第1熱電変換半導体1の上端面7に、第1面積よりも小さな第2面積の面(第3熱電変換半導体3の第5面9bに相当)を形成し、この面に第1熱電変換半導体1、第2熱電変換半導体2と同一構造の一対の半導体を接合した構造となる。
【0035】
このようにさらに多くの熱電変換半導体を接続することで、発生する起電力は対数にほぼ比例して大きな起電力が発生させることができる。したがって、熱電変換温度センサ20として必要な起電力に合わせ、熱電変換半導体接続の対数を選択するとよい。また、各熱電変換半導体の導電型は、N型、P型、N型、P型の順となるように接合してもよい。
【0036】
次に、本実施形態による熱電変換温度センサ20の動作原理を説明する。
【0037】
図3は、熱電変換温度センサの動作原理を説明する説明図である。異種熱電変換半導体を接合した温度センサの基本動作原理は、図3に示すように、導電体53を加熱、電極54、電極55を冷却すると、P型熱電変換半導体52、N型熱電変換半導体51に温度差が発生し、熱電変換半導体のゼーベック効果により起電力が発生して電流56が流れるというものである。
【0038】
この原理と同じく、本実施形態1による熱電変換温度センサ20全体に熱を加えると上端面7は温度上昇する。このとき接合面8は上端面に比べ熱容量が大きく上端面7の方が接合面8に比べ温度が高くなる。このため上端面7と接合面8では温、冷と温度差が生じ熱起電力が発生する。また、接合面9は接合面8に比べ接合面積を小さく加工してあるため、接合面9に比べ接合面8の熱容量は大きい。つまり接合面9の方が、接合面8に比べ熱の伝導は早く内部に到達し、接合面8は冷、接合面9は温となる。また接合面9に比べ接合面10の接合面積が大きく、接合面9は温、接合面10は冷となる。同様に接合面10と下端面11は冷、温となる。
【0039】
P型熱電変換半導体とN型熱電変換半導体の温、冷のゼーベック効果の電流の向きは逆であることから、導線5からP型、N型、P型、N型、導線6と2対の熱電変換モジュールが直列に接続されたものとなっているので、ゼーベック効果により電流が流れ、導線5、導線6間には起電圧が発生する。この起電力はP型−N型−P型−N型の対数により比例して増加することが、後述の図8の特性図により確認されている。
【0040】
本実施形態の熱電変換温度センサ20は、熱の絶対温度を測定するものではなく、熱の温度上昇率を測定するものであり、この熱電変換温度センサ20全体に温度を加えると熱電変換半導体の接合面の温度差により起電力を発生し、その経過時間、起電圧の上昇率により温度差を判定する温度検出機器として使用することができる。
【0041】
(実施形態2)
図4および5は、熱電変換温度センサ40の変形形状を示す図面である。前述した図1および2に示した熱電変換温度センサ20は、熱電変換半導体同士の接合面8、9、および10のいずれも円形状とした。
【0042】
本実施形態2の熱電変換温度センサ40は、図4および5に示すように、円形の一部を切り欠いた切欠形状32としてもよい。その他の構成は実施形態1と同じである。
【0043】
このような形態にした場合でも、実施形態1と全く同じように起電力を発生させることができる。したがって、これらの形状の違いは、焼結または加工の際に様々に選択すればよい。
【実施例】
【0044】
本発明を適用した実施形態1の熱電変換温度センサ20を製作して実験した。また、従来の温度センサも比較例として実験した。
【0045】
(実施例1)
実施例1は、図1および2に示したように、W1=φ20mm、W2=φ10mm、L1〜L4=7mm、L5=4.5mmの熱電変換半導体よりなる円筒状切欠熱電変換温度センサを製作した。
【0046】
製作は、熱電変換半導体として、原料粉末P型FeSi2:FeSi2−4.1質量%Cr、N型FeSi2:FeSi2−2.4質量%Coを使用し、加圧力35MPa、温度1023K、保持時間600sの焼結条件下、放電プラズマ焼結法によりP型熱電変換半導体とN型熱電変換半導体を形成した。各寸法は上記の通りである。これを、P型、N型、P型、N型の順に連続して密着接合した。この接合には銀ペースト等の導電性接着材を用いた。
【0047】
図6は実施例1の熱電変換温度センサ20の起電力の変化を示す特性図である。
【0048】
起電力の測定は、この熱電変換温度センサ20を室温より30度高く、風速85センチメートル毎秒の垂直気流に投入して、時間と起電力を測定した。
【0049】
図6に示すように、約50秒後に約3.1mVに飽和し、その後起電力が減少した。これは、後述する比較例4の熱電対温度センサと同様の応答特性を示しており、かつ、比較例の熱電対温度センサよりも約3.2倍の起電力が発生することを示している。
【0050】
また、この図から、熱電変換温度センサ20は、熱が全体に伝達された状態となった後は、起電力が低下していることがわかる。したがって、熱電変換温度センサ20と指定使用するときは、図6に示したデータのうち、起電力が上昇している間の上昇率により温度差を判定することができる。
【0051】
(比較例1〜3)
比較例1の熱電変換温度センサ20は、実施例1と同様にして、直径20mm、厚さ7mmのP型熱電変換半導体とN型熱電変換半導体をそれぞれ焼結製作して接合し、1対の熱電変換温度センサ20としたものである。同様に比較例2は、直径をその1/2としたもの、比較例3は直径を比較例1の1/4としたものである。そしてこれら熱電変換温度センサ20の温度差における起電力の変化を測定した。
【0052】
測定は、一方(高温側)にヒーター、他方(低温側)にペルチェクーラーを取り付け、温度制御し、導線5および6間の電圧を測定した。
【0053】
図7は比較例1〜3の温度差に対する起電力を示す特性図である。
【0054】
図7から、1/1サイズ、1/2サイズ、1/4サイズの1対で構成された熱電変換温度センサ20はゼーベック係数α(α=V/ΔT、α:ゼーベック係数、V:起電力、温度差:ΔT)=0.302近似データとなることが、この特性図により確認できる。この結果から、本発明を適用した実施例1の形態において、いっそう小型化した場合でも大きな起電力を得られることが期待できる。
【0055】
(実施例2)
実施例1と同じ形状の2対の熱電変換半導体よりなる熱電変換温度センサ20をさらに接合して、合計4対の熱電変換半導体よりなる熱電変換温度センサ20を製作した。
【0056】
図8は、熱電変換半導体の対数の違いによる起電力の変化を示す特性図である。
【0057】
図8においては、比較例1の1対の熱電変換温度センサ20、実施例1の2対の熱電変換温度センサ20、実施例2の4対の熱電変換温度センサ20それぞれにおける温度差に対する起電力の違いを示す特性図である。起電力の測定は、前述した比較例1〜3と同様である。
【0058】
図8から、1対の熱電変換温度センサ20(比較例1)の場合のゼーベック係数αは0.302、2対の熱電変換温度センサ20(実施例1)の場合のゼーベック係数αは0.617、4対の熱電変換温度センサ20(実施例2)の場合のゼーベック係数αは1.31となり、対数に比例して起電圧が発生することがわかる。
【0059】
(比較例4)
比較例4は、図10および11に示したものと同様に、コンスタンタン、純鉄を10対使用した熱電対温度センサを製作した。この熱電対温度センサはφ2.2mm×全長445mm1本の熱電対温度センサである。
【0060】
図9はこの比較例4の熱電対温度センサにおける起電力を測定した特性図である。
【0061】
測定は実施例1と同様に、この比較例4の熱電対温度センサ1本を室温より30度高く、風速85センチメートル毎秒の垂直気流に投入して時間の経過ともに起電力を測定した。
【0062】
図9に示すように、この比較例4の熱電対温度センサでは、約7秒後に約0.98mVに飽和し、その後起電圧は減少した。
【0063】
以上の実施例および比較例の結果から、本発明を適用した熱電変換温度センサ20は、熱電対を使用した温度センサと同様な応答性能を有し、かつ、熱電対温度センサよりも大きな起電力が得られることが明らかとなった。また、必要な起電力は熱電変換温度センサ20の対数、寸法、熱容量をかえることで、容易に調整可能である。また、温度特性を変化させることもできる。また、熱電対温度センサに比較して小型化することができ、特に長手方向において大幅な小型化が可能となる。また、熱電対はコンスタンタン、純鉄を中空の特殊構造に加工する必要があるのに対し熱電変換温度センサ20は、半導体はCr、Coは微少で、主材となるFe、Si粉は安価であるとともに、接合箇所が熱電対に比べ少なくできるというメリットがある。
【0064】
また、粉末原料を焼結させて形成することができるため、製造が容易となる。特に、N型熱電変換半導体とP型熱電変換半導体を放電プラズマ焼結法と同じ製造機械で接合することもできる。さらに複数のP型熱電変換半導体、N型熱電変換半導体を焼結と同時に一体的に形成することもでき、製造行程を短縮することができる。
【0065】
このような特徴を有する本発明に係わる熱電変換温度センサ20は、例えば空調装置、プラントなどの温度センサとして、また、火災報知設備差動式感知器として防災システムにも利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】実施形態1による熱電変換温度センサの構成を示す側面図である。
【図2】実施形態1による熱電変換温度センサを示す斜視図である。
【図3】熱電変換温度センサの動作原理を説明する説明図である。
【図4】本実施形態2による熱電変換温度センサの構成を示す側面図である。
【図5】実施形態2による熱電変換温度センサを示す斜視図である。
【図6】実施例1の熱電変換温度センサの起電力の変化を示す特性図である。
【図7】比較例1〜3の温度差に対する起電力を示す特性図である。
【図8】比較例1の1対の熱電変換温度センサ、実施例1の2対の熱電変換温度センサ、実施例2の4対の熱電変換温度センサそれぞれにおける温度差に対する起電力の違いを示す特性図である。
【図9】比較例4の熱電対温度センサにおける起電力を測定した特性図である。
【図10】比較例4の熱電対温度センサを示す図面である。
【図11】比較例4の熱電対温度センサを示す図面である。
【図12】面積比を変えた場合における起電力の時間経過に伴う変化を示す特性図である。
【図13】面積比と最大起電力との関係を示す特性図である。
【符号の説明】
【0067】
1 第1熱電変換半導体(P型)
2 第2熱電変換半導体(N型)
3 第3熱電変換半導体(P型)
4 第4熱電変換半導体(N型)
7 第1面(上端面)
8 接合面(第1面積)
8a 第2面
8b 第3面
9 接合面(第2面積)
9a 第4面
9b 第5面
10 接合面(第1面積)
10a 第6面
10b 第7面
11 第8面(下端面)
20 熱電変換温度センサ
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電変換温度センサおよび熱電変換温度センサの製造方法に関し、詳細には温度変化を電気信号に変換して温度を検出する熱電変換温度センサおよび熱電変換温度センサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
温度変化を検出する方法としては、サーミスタによる抵抗値の変化、バイメタルによる物理的な形状変化、空気を使用した圧力の変化を捉える温度センサなどが知られている。また、異種金属を接触させた熱電対のゼーベック効果による起電力により温度を検出する方法も知られている。
【0003】
より具体的には、熱電対を使用したものとしては、図10に示すような棒状に形成された形態の熱電対温度センサが商品化されている。
【0004】
また、図11に示すように、コンスタンタン41、純鉄42の異種金属を密着した接合部46、空洞の接合部47、密着した接合部48と連続して接合した温度センサが商品化されている。このような温度センサは、形状が長く(大きく)、発生する起電力が少ない。
【0005】
そこで、より小型で、起電力が大きな材料として熱電変換半導体を使用した温度センサが開発されている。熱電変換半導体は、P型熱電変換半導体とN型熱電変換半導体にそれぞれ大別される。具体的には、例えば、図3に示すようにP型熱電変換半導体52と、N型熱電変換半導体51が対になった温度センサがある。この熱電変換半導体を使用した温度センサは、熱電対を使用した温度センサに比べ熱源との熱交換により大きな起電圧が発生することが知られている(特許文献1、非特許文献1など)。
【特許文献1】特願2006−155578号公報
【非特許文献1】「FeSi2系熱電変換モジュールのゼーベック係数の測定」、田中勝之他、The 28th Japan Symposium on Thermophysical Properties,Oct.24−26,2007,Sapporo.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、熱電変換半導体を用いた温度センサは、熱電変換半導体配置、接続方法、接続する導線の接続により大きく影響し、熱電変換半導体に発生する起電力が大きく変わることがわかってきた。そこで、起電力を大きくするための効率的な構造を解明することが技術的な課題となっている。
【0007】
本発明の目的は、温度の検出に適した起電力が得られるようにした熱電変換半導体を用いた熱電変換温度センサおよびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に係わる発明は、第1面積の第1面および第2面を有する第1導電型の第1熱電変換半導体と、前記第2面と接する前記第1面積の第3面および前記第1面積より小さな第2面積の第4面を有する第2導電型の第2熱電変換半導体と、前記第4面と接する前記第2面積の第5面および前記第1面積の第6面を有する第1導電型の第3熱電変換半導体と、前記第6面と接する前記第1面積の第7面および前記第1面積の第8面を有する第2導電型の第4熱電変換半導体とを備え、上記各半導体が異なる導電型の順に連続して接合されていることを特徴とする熱電変換温度センサである。
【0009】
請求項2に係わる発明は、請求項1において、前記第1面積が円形状であり、前記第2面積が前記第1面積より直径が小さな円形状であることを特徴とする。
【0010】
請求項3に係わる発明は、請求項1または2において、前記第1面積が円形状であり、前記第2面積が前記第1面積の一部を切り欠いた形状であることを特徴とする。
【0011】
請求項4に係わる発明は、請求項1〜3において、前記各熱電変換半導体同士の接合が放電プラズマ接合法により接合されたものであることを特徴とする。
【0012】
請求項5に係わる発明は、請求項1において、前記各熱電変換半導体が一体的に接合された状態となるように焼結されたものであることを特徴とする。
【0013】
また、上記目的を達成するため、請求項6に係わる発明は、第1面積の第1面および第2面が対向する位置となるように粉体状の第1導電型の第1熱電変換半導体を成形して焼結するステップと、前記第1面積の第3面および前記第1面積より小さな第2面積の第4面が対向する位置となるように粉体状の第2導電型の第2熱電変換半導体を成形して焼結するステップと、前記第2面積の第5面および前記第1面積の第6面が対向する位置となるように粉体状の第1導電型の第3熱電変換半導体を成形して焼結するステップと、前記第1面積の第7面および第8面が対向する位置となるように粉体状の第2導電型の第4熱電変換半導体を成形して焼結するステップと、焼結後の前記第1〜第4熱電変換半導体それぞれを、前記第2面と前記第3面、前記第4面と前記第5面、前記第6面と前記第7面が接するように接合するステップとを含むことを特徴とする熱電変換温度センサである。
【0014】
請求項7に係わる発明は、請求項6において、前記接合するステップにおいて、放電プラズマ接合法により接合することを特徴とする。
【0015】
さらに、上記目的を達成するため、請求項8に係わる発明は、第1面積の第1面および第2面が対向する位置となるように粉体状の第1導電型の第1熱電変換半導体を成形するステップと、前記第1面積の第3面および前記第1面積より小さな第2面積の第4面が対向する位置となるように粉体状の第2導電型の第2熱電変換半導体を成形するステップと、前記第2面積の第5面および前記第1面積の第6面が対向する位置となるように粉体状の第1導電型の第3熱電変換半導体を成形するステップと、前記第1面積の第7面および第8面が対向する位置となるように粉体状の第2導電型の第4熱電変換半導体を成形するステップと、形成後の前記第1〜第4熱電変換半導体それぞれを、前記第2面と前記第3面、前記第4面と前記第5面、前記第6面と前記第7面が接するように焼結するステップとを含むことを特徴とする熱電変換温度センサの製造方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係わる熱電変換温度センサによれば、異種熱電変換半導体の接合部分の面積を変えて複数対の異種熱電変換半導体を接合したので、外側にある第1熱電変換半導体と内部にある第3熱電変換半導体との熱容量の差を大きくすることができる。したがって温度変化に対して、従来の熱電対を使用した温度センサよりも大きな起電力を得ることができる。
【0017】
また、本発明に係わる熱電変換温度センサの製造方法によれば、各熱電変換半導体をそれぞれ粉末原料から成形、焼結するだけであるので、温度変化に対して大きな起電力が得られる温度センサを容易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を適用した実施形態について添付した図面を参照して説明する。
【0019】
(実施形態1)
図1は本実施形態1による熱電変換温度センサの構成を示す側面図であり、図2はこの熱電変換温度センサを示す斜視図である。
【0020】
熱電変換温度センサ20は、P導電型(以下P型という)とN導電型(以下N型という)の熱電変換半導体特性を持つ熱電変換半導体を接合したものである。ここで言う熱電変換半導体特性とは、温度差により起電力が発生する特性を言い、P型とN型では発生する起電力極性が逆の特性を表す。
【0021】
本実施形態の熱電変換温度センサ20は、第1熱電変換半導体(P型)1、第2熱電変換半導体(N型)2を備えた第1型の異種熱電半導体、第3熱電変換半導体(P型)3、第4熱電変換半導体(N型)4を有する。第1熱電変換半導体(P型)1は対向する面がともに第1面積である第1面(上端面7という)および第2面8aを有する。第2熱電変換半導体(N型)2は第1面積の第3面8bと第1面積より小さな第2面積の第4面9aを有する。第3熱電変換半導体(P型)3は第2面積の第5面9bと第1面積の第6面10aを有する。第4熱電変換半導体(N型)4は第1面積の第7面10bおよび第8面(下端面11という)を有する。
【0022】
そして、これらがP型、N型、P型、N型の順に連続して密着して接合している。すなわち、第1熱電変換半導体(P型)1の第2面8aと第2熱電変換半導体(N型)2の第3面8bとが接合し、第2熱電変換半導体(N型)2の第4面9aと第3熱電変換半導体(P型)3の第5面9bとが接合し、第3熱電変換半導体(P型)3の第6面10aと第4熱電変換半導体(N型)4の第7面10bとが接合している。
【0023】
したがって、第1熱電変換半導体(P型)1と第2熱電変換半導体(N型)2との接合面(第1面積)8、および第3熱電変換半導体(P型)3と第4熱電変換半導体(N型)4との接合面(第1面積)10の面積に対して、第2熱電変換半導体(N型)2と第3熱電変換半導体(P型)3との接合面(第2面積)9の面積が小さくなっている。
【0024】
そして、熱電変換温度センサ20としては、終端面である第1熱電変換半導体(P型)1の上端面7に導線5をはんだ付けし、第4熱電変換半導体(N型)4の下端面11に導線6をはんだ付けしている。
【0025】
この熱電変換温度センサ20に熱(温度変化)を加えると導線5、導線6間に起電力が発生する。この起電力を例えば別回路で増幅することで、温度検出に用いることができる。
【0026】
第1面積と第2面積の大きさの比は、出来るだけ大きくすることが好ましい。これは、面積比を大きくすることで、その熱容量に差が生じて温度差が発生しやすくなり、最大起電力が面積比に対数関数的に増加するからである。図12は、面積比を変えた場合における起電力E(mV)の時間経過t(s)に伴う変化を示す特性図である。図12に示すように、面積比に応じて発生する起電力が変化することが確認されている。また図13は、面積比と最大起電力E(mV)との関係を示す特性図である。図13に示すように、最大起電力は面積比に対数関数的に増加することが確認されている。
【0027】
一方、各熱電変換半導体の厚さL1〜L4は、特に限定されない。例えば、すべて同じ厚さとしてもよい。また、第2面積となる部分の厚さL5は、接合面9が確実に第2面積で接合できればよい。
【0028】
この熱電変換温度センサ20の製造方法は、例えば、それぞれの熱電変換半導体を形成後、接合してもよいし、すべてを一体的に形成してもよい。
【0029】
より具体的には、まず、一つ一つの熱電変換半導体を形成する場合は、上述した第1〜第4の熱電変換半導体となるように、熱電変換半導体の粉末原料を成形する。成形には、上述の各熱電変換半導体の形状をした型内に粉末原料を投入して、ある程度圧縮する。その後、所定の加圧加熱を行って焼結させる。これにより第1〜第4の熱電変換半導体が形成される。
【0030】
そして形成された第1〜第4の熱電変換半導体を上述のように、それぞれの面が接合されるように、はんだ付けや、銀ペーストなどの導電性接着材を使用して接合する。その後、終端面に導線5および6をハンダ付けすることで、熱電変換温度センサ20が完成する。
【0031】
一体的に製造する方法としては、例えば第1〜第4の熱電変換半導体となる粉末原料を図1および2に示した各熱電変換半導体形状となるように成形し、第1〜第4の熱電変換半導体がそれぞれ接合されるように重ねてそのまま焼結して形成する。このようにすれば、熱電変換半導体の形成と、P−N接合を一度に行うことができ、製造コスト、製造時間の短縮となる。
【0032】
なお、これら鉄シリサイド系熱電変換素子の成形および焼結は、一定の圧力、温度、時間の焼結条件下、放電プラズマ焼結法により製造することにより半導体特性を有する素子となる。なお、通常の電気炉を用いた焼結では金属相ができてしまうため、半導体特性を有する素子は得られない。また、通常の電気炉において成型で粉体加工することも可能であるが、この場合も有効な半導体特性を有する素子は得られない。
【0033】
原料粉末としては、例えばP型FeSi2:FeSi2−4.1質量%Cr、N型FeSi2:FeSi2−2.4質量%Coを使用してそれぞれP型熱電変換半導体とN型熱電変換半導体を製造し得る。
【0034】
なお、P型とN型を接続したものを1対とすれば、図示した形態では、異種熱電変換半導体を2対接続した形態となる。また、さらに3対、4対と連続して接合してもよい。例えば、3対の場合は、図1の第4熱電変換半導体4の下端面11に、第1面積よりも小さな第2面積の面(第2熱電変換半導体2の第4面9aに相当)を形成し、この面に第3熱電変換半導体3、第4熱電変換半導体4と同一構造の一対の半導体を接合した構造となる。または、図1の第1熱電変換半導体1の上端面7に、第1面積よりも小さな第2面積の面(第3熱電変換半導体3の第5面9bに相当)を形成し、この面に第1熱電変換半導体1、第2熱電変換半導体2と同一構造の一対の半導体を接合した構造となる。
【0035】
このようにさらに多くの熱電変換半導体を接続することで、発生する起電力は対数にほぼ比例して大きな起電力が発生させることができる。したがって、熱電変換温度センサ20として必要な起電力に合わせ、熱電変換半導体接続の対数を選択するとよい。また、各熱電変換半導体の導電型は、N型、P型、N型、P型の順となるように接合してもよい。
【0036】
次に、本実施形態による熱電変換温度センサ20の動作原理を説明する。
【0037】
図3は、熱電変換温度センサの動作原理を説明する説明図である。異種熱電変換半導体を接合した温度センサの基本動作原理は、図3に示すように、導電体53を加熱、電極54、電極55を冷却すると、P型熱電変換半導体52、N型熱電変換半導体51に温度差が発生し、熱電変換半導体のゼーベック効果により起電力が発生して電流56が流れるというものである。
【0038】
この原理と同じく、本実施形態1による熱電変換温度センサ20全体に熱を加えると上端面7は温度上昇する。このとき接合面8は上端面に比べ熱容量が大きく上端面7の方が接合面8に比べ温度が高くなる。このため上端面7と接合面8では温、冷と温度差が生じ熱起電力が発生する。また、接合面9は接合面8に比べ接合面積を小さく加工してあるため、接合面9に比べ接合面8の熱容量は大きい。つまり接合面9の方が、接合面8に比べ熱の伝導は早く内部に到達し、接合面8は冷、接合面9は温となる。また接合面9に比べ接合面10の接合面積が大きく、接合面9は温、接合面10は冷となる。同様に接合面10と下端面11は冷、温となる。
【0039】
P型熱電変換半導体とN型熱電変換半導体の温、冷のゼーベック効果の電流の向きは逆であることから、導線5からP型、N型、P型、N型、導線6と2対の熱電変換モジュールが直列に接続されたものとなっているので、ゼーベック効果により電流が流れ、導線5、導線6間には起電圧が発生する。この起電力はP型−N型−P型−N型の対数により比例して増加することが、後述の図8の特性図により確認されている。
【0040】
本実施形態の熱電変換温度センサ20は、熱の絶対温度を測定するものではなく、熱の温度上昇率を測定するものであり、この熱電変換温度センサ20全体に温度を加えると熱電変換半導体の接合面の温度差により起電力を発生し、その経過時間、起電圧の上昇率により温度差を判定する温度検出機器として使用することができる。
【0041】
(実施形態2)
図4および5は、熱電変換温度センサ40の変形形状を示す図面である。前述した図1および2に示した熱電変換温度センサ20は、熱電変換半導体同士の接合面8、9、および10のいずれも円形状とした。
【0042】
本実施形態2の熱電変換温度センサ40は、図4および5に示すように、円形の一部を切り欠いた切欠形状32としてもよい。その他の構成は実施形態1と同じである。
【0043】
このような形態にした場合でも、実施形態1と全く同じように起電力を発生させることができる。したがって、これらの形状の違いは、焼結または加工の際に様々に選択すればよい。
【実施例】
【0044】
本発明を適用した実施形態1の熱電変換温度センサ20を製作して実験した。また、従来の温度センサも比較例として実験した。
【0045】
(実施例1)
実施例1は、図1および2に示したように、W1=φ20mm、W2=φ10mm、L1〜L4=7mm、L5=4.5mmの熱電変換半導体よりなる円筒状切欠熱電変換温度センサを製作した。
【0046】
製作は、熱電変換半導体として、原料粉末P型FeSi2:FeSi2−4.1質量%Cr、N型FeSi2:FeSi2−2.4質量%Coを使用し、加圧力35MPa、温度1023K、保持時間600sの焼結条件下、放電プラズマ焼結法によりP型熱電変換半導体とN型熱電変換半導体を形成した。各寸法は上記の通りである。これを、P型、N型、P型、N型の順に連続して密着接合した。この接合には銀ペースト等の導電性接着材を用いた。
【0047】
図6は実施例1の熱電変換温度センサ20の起電力の変化を示す特性図である。
【0048】
起電力の測定は、この熱電変換温度センサ20を室温より30度高く、風速85センチメートル毎秒の垂直気流に投入して、時間と起電力を測定した。
【0049】
図6に示すように、約50秒後に約3.1mVに飽和し、その後起電力が減少した。これは、後述する比較例4の熱電対温度センサと同様の応答特性を示しており、かつ、比較例の熱電対温度センサよりも約3.2倍の起電力が発生することを示している。
【0050】
また、この図から、熱電変換温度センサ20は、熱が全体に伝達された状態となった後は、起電力が低下していることがわかる。したがって、熱電変換温度センサ20と指定使用するときは、図6に示したデータのうち、起電力が上昇している間の上昇率により温度差を判定することができる。
【0051】
(比較例1〜3)
比較例1の熱電変換温度センサ20は、実施例1と同様にして、直径20mm、厚さ7mmのP型熱電変換半導体とN型熱電変換半導体をそれぞれ焼結製作して接合し、1対の熱電変換温度センサ20としたものである。同様に比較例2は、直径をその1/2としたもの、比較例3は直径を比較例1の1/4としたものである。そしてこれら熱電変換温度センサ20の温度差における起電力の変化を測定した。
【0052】
測定は、一方(高温側)にヒーター、他方(低温側)にペルチェクーラーを取り付け、温度制御し、導線5および6間の電圧を測定した。
【0053】
図7は比較例1〜3の温度差に対する起電力を示す特性図である。
【0054】
図7から、1/1サイズ、1/2サイズ、1/4サイズの1対で構成された熱電変換温度センサ20はゼーベック係数α(α=V/ΔT、α:ゼーベック係数、V:起電力、温度差:ΔT)=0.302近似データとなることが、この特性図により確認できる。この結果から、本発明を適用した実施例1の形態において、いっそう小型化した場合でも大きな起電力を得られることが期待できる。
【0055】
(実施例2)
実施例1と同じ形状の2対の熱電変換半導体よりなる熱電変換温度センサ20をさらに接合して、合計4対の熱電変換半導体よりなる熱電変換温度センサ20を製作した。
【0056】
図8は、熱電変換半導体の対数の違いによる起電力の変化を示す特性図である。
【0057】
図8においては、比較例1の1対の熱電変換温度センサ20、実施例1の2対の熱電変換温度センサ20、実施例2の4対の熱電変換温度センサ20それぞれにおける温度差に対する起電力の違いを示す特性図である。起電力の測定は、前述した比較例1〜3と同様である。
【0058】
図8から、1対の熱電変換温度センサ20(比較例1)の場合のゼーベック係数αは0.302、2対の熱電変換温度センサ20(実施例1)の場合のゼーベック係数αは0.617、4対の熱電変換温度センサ20(実施例2)の場合のゼーベック係数αは1.31となり、対数に比例して起電圧が発生することがわかる。
【0059】
(比較例4)
比較例4は、図10および11に示したものと同様に、コンスタンタン、純鉄を10対使用した熱電対温度センサを製作した。この熱電対温度センサはφ2.2mm×全長445mm1本の熱電対温度センサである。
【0060】
図9はこの比較例4の熱電対温度センサにおける起電力を測定した特性図である。
【0061】
測定は実施例1と同様に、この比較例4の熱電対温度センサ1本を室温より30度高く、風速85センチメートル毎秒の垂直気流に投入して時間の経過ともに起電力を測定した。
【0062】
図9に示すように、この比較例4の熱電対温度センサでは、約7秒後に約0.98mVに飽和し、その後起電圧は減少した。
【0063】
以上の実施例および比較例の結果から、本発明を適用した熱電変換温度センサ20は、熱電対を使用した温度センサと同様な応答性能を有し、かつ、熱電対温度センサよりも大きな起電力が得られることが明らかとなった。また、必要な起電力は熱電変換温度センサ20の対数、寸法、熱容量をかえることで、容易に調整可能である。また、温度特性を変化させることもできる。また、熱電対温度センサに比較して小型化することができ、特に長手方向において大幅な小型化が可能となる。また、熱電対はコンスタンタン、純鉄を中空の特殊構造に加工する必要があるのに対し熱電変換温度センサ20は、半導体はCr、Coは微少で、主材となるFe、Si粉は安価であるとともに、接合箇所が熱電対に比べ少なくできるというメリットがある。
【0064】
また、粉末原料を焼結させて形成することができるため、製造が容易となる。特に、N型熱電変換半導体とP型熱電変換半導体を放電プラズマ焼結法と同じ製造機械で接合することもできる。さらに複数のP型熱電変換半導体、N型熱電変換半導体を焼結と同時に一体的に形成することもでき、製造行程を短縮することができる。
【0065】
このような特徴を有する本発明に係わる熱電変換温度センサ20は、例えば空調装置、プラントなどの温度センサとして、また、火災報知設備差動式感知器として防災システムにも利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】実施形態1による熱電変換温度センサの構成を示す側面図である。
【図2】実施形態1による熱電変換温度センサを示す斜視図である。
【図3】熱電変換温度センサの動作原理を説明する説明図である。
【図4】本実施形態2による熱電変換温度センサの構成を示す側面図である。
【図5】実施形態2による熱電変換温度センサを示す斜視図である。
【図6】実施例1の熱電変換温度センサの起電力の変化を示す特性図である。
【図7】比較例1〜3の温度差に対する起電力を示す特性図である。
【図8】比較例1の1対の熱電変換温度センサ、実施例1の2対の熱電変換温度センサ、実施例2の4対の熱電変換温度センサそれぞれにおける温度差に対する起電力の違いを示す特性図である。
【図9】比較例4の熱電対温度センサにおける起電力を測定した特性図である。
【図10】比較例4の熱電対温度センサを示す図面である。
【図11】比較例4の熱電対温度センサを示す図面である。
【図12】面積比を変えた場合における起電力の時間経過に伴う変化を示す特性図である。
【図13】面積比と最大起電力との関係を示す特性図である。
【符号の説明】
【0067】
1 第1熱電変換半導体(P型)
2 第2熱電変換半導体(N型)
3 第3熱電変換半導体(P型)
4 第4熱電変換半導体(N型)
7 第1面(上端面)
8 接合面(第1面積)
8a 第2面
8b 第3面
9 接合面(第2面積)
9a 第4面
9b 第5面
10 接合面(第1面積)
10a 第6面
10b 第7面
11 第8面(下端面)
20 熱電変換温度センサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面積の第1面および第2面を有する第1導電型の第1熱電変換半導体と、
前記第2面と接する前記第1面積の第3面および前記第1面積より小さな第2面積の第4面を有する第2導電型の第2熱電変換半導体と、
前記第4面と接する前記第2面積の第5面および前記第1面積の第6面を有する第1導電型の第3熱電変換半導体と、
前記第6面と接する前記第1面積の第7面および前記第1面積の第8面を有する第2導電型の第4熱電変換半導体と、
を備え、上記各半導体が異なる導電型の順に連続して接合されていることを特徴とする熱電変換温度センサ。
【請求項2】
前記第1面積は円形状であり、前記第2面積は前記第1面積より直径が小さな円形状であることを特徴とする請求項1記載の熱電変換温度センサ。
【請求項3】
前記第1面積は円形状であり、前記第2面積は前記第1面積の一部を切り欠いた形状であることを特徴とする請求項1または2記載の熱電変換温度センサ。
【請求項4】
前記各熱電変換半導体同士の接合が放電プラズマ接合法により接合されたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱電変換温度センサ。
【請求項5】
前記各熱電変換半導体が一体的に接合された状態となるように焼結されたものであることを特徴とする請求項1記載の熱電変換温度センサ。
【請求項6】
第1面積の第1面および第2面が対向する位置となるように粉体状の第1導電型の第1熱電変換半導体を成形して焼結するステップと、
前記第1面積の第3面および前記第1面積より小さな第2面積の第4面が対向する位置となるように粉体状の第2導電型の第2熱電変換半導体を成形して焼結するステップと、
前記第2面積の第5面および前記第1面積の第6面が対向する位置となるように粉体状の第1導電型の第3熱電変換半導体を成形して焼結するステップと、
前記第1面積の第7面および第8面が対向する位置となるように粉体状の第2導電型の第4熱電変換半導体を成形して焼結するステップと、
焼結後の前記第1〜第4熱電変換半導体それぞれを、前記第2面と前記第3面、前記第4面と前記第5面、前記第6面と前記第7面が接するように接合するステップと、
を含むことを特徴とする熱電変換温度センサの製造方法。
【請求項7】
前記接合するステップにおいて、放電プラズマ接合法により接合することを特徴とする請求項6記載の熱電変換温度センサの製造方法。
【請求項8】
第1面積の第1面および第2面が対向する位置となるように粉体状の第1導電型の第1熱電変換半導体を成形するステップと、
前記第1面積の第3面および前記第1面積より小さな第2面積の第4面が対向する位置となるように粉体状の第2導電型の第2熱電変換半導体を成形するステップと、
前記第2面積の第5面および前記第1面積の第6面が対向する位置となるように粉体状の第1導電型の第3熱電変換半導体を成形するステップと、
前記第1面積の第7面および第8面が対向する位置となるように粉体状の第2導電型の第4熱電変換半導体を成形するステップと、
形成後の前記第1〜第4熱電変換半導体それぞれを、前記第2面と前記第3面、前記第4面と前記第5面、前記第6面と前記第7面が接するように焼結するステップと、
を含むことを特徴とする熱電変換温度センサの製造方法。
【請求項1】
第1面積の第1面および第2面を有する第1導電型の第1熱電変換半導体と、
前記第2面と接する前記第1面積の第3面および前記第1面積より小さな第2面積の第4面を有する第2導電型の第2熱電変換半導体と、
前記第4面と接する前記第2面積の第5面および前記第1面積の第6面を有する第1導電型の第3熱電変換半導体と、
前記第6面と接する前記第1面積の第7面および前記第1面積の第8面を有する第2導電型の第4熱電変換半導体と、
を備え、上記各半導体が異なる導電型の順に連続して接合されていることを特徴とする熱電変換温度センサ。
【請求項2】
前記第1面積は円形状であり、前記第2面積は前記第1面積より直径が小さな円形状であることを特徴とする請求項1記載の熱電変換温度センサ。
【請求項3】
前記第1面積は円形状であり、前記第2面積は前記第1面積の一部を切り欠いた形状であることを特徴とする請求項1または2記載の熱電変換温度センサ。
【請求項4】
前記各熱電変換半導体同士の接合が放電プラズマ接合法により接合されたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱電変換温度センサ。
【請求項5】
前記各熱電変換半導体が一体的に接合された状態となるように焼結されたものであることを特徴とする請求項1記載の熱電変換温度センサ。
【請求項6】
第1面積の第1面および第2面が対向する位置となるように粉体状の第1導電型の第1熱電変換半導体を成形して焼結するステップと、
前記第1面積の第3面および前記第1面積より小さな第2面積の第4面が対向する位置となるように粉体状の第2導電型の第2熱電変換半導体を成形して焼結するステップと、
前記第2面積の第5面および前記第1面積の第6面が対向する位置となるように粉体状の第1導電型の第3熱電変換半導体を成形して焼結するステップと、
前記第1面積の第7面および第8面が対向する位置となるように粉体状の第2導電型の第4熱電変換半導体を成形して焼結するステップと、
焼結後の前記第1〜第4熱電変換半導体それぞれを、前記第2面と前記第3面、前記第4面と前記第5面、前記第6面と前記第7面が接するように接合するステップと、
を含むことを特徴とする熱電変換温度センサの製造方法。
【請求項7】
前記接合するステップにおいて、放電プラズマ接合法により接合することを特徴とする請求項6記載の熱電変換温度センサの製造方法。
【請求項8】
第1面積の第1面および第2面が対向する位置となるように粉体状の第1導電型の第1熱電変換半導体を成形するステップと、
前記第1面積の第3面および前記第1面積より小さな第2面積の第4面が対向する位置となるように粉体状の第2導電型の第2熱電変換半導体を成形するステップと、
前記第2面積の第5面および前記第1面積の第6面が対向する位置となるように粉体状の第1導電型の第3熱電変換半導体を成形するステップと、
前記第1面積の第7面および第8面が対向する位置となるように粉体状の第2導電型の第4熱電変換半導体を成形するステップと、
形成後の前記第1〜第4熱電変換半導体それぞれを、前記第2面と前記第3面、前記第4面と前記第5面、前記第6面と前記第7面が接するように焼結するステップと、
を含むことを特徴とする熱電変換温度センサの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−224634(P2009−224634A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−68764(P2008−68764)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(591077003)沖電気防災株式会社 (17)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(591077003)沖電気防災株式会社 (17)
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