説明

熱電変換複合材料、それを用いた熱電変換材料ペースト、およびそれを用いた熱電変換モジュール

【課題】低コストプロセスを用いても高特性を有する熱電変換素子を作製可能とする熱電変換複合材料、該複合材料を用いた熱電変換材料ペースト、および低コストで高効率な熱電変換モジュールを提供する。
【解決手段】本発明に係る複合熱電変換材料は、半導体熱電変換材料と結着材とが複合された熱電変換複合材料であって、前記結着材は、前記半導体熱電変換材料と同極性の半導体ガラスであり、前記半導体ガラスは、成分を酸化物で表したときに酸化バナジウムを含有し、軟化点が480℃以下の無鉛ガラスであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電変換材料に関し、特に、半導体熱電変換材料と半導体ガラスとを複合化した熱電変換複合材料、該複合材料を用いた熱電変換材料ペースト、および該複合材料を用いて製造される熱電変換モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱電変換材料は、温度差を与えると発電し(ゼーベック効果)、逆に、電気を流すと冷える(ペルチェ効果)という性質を示すことから、発電素子や冷却素子として利用されている。前者の性質は、熱を電気に直接変換することができるため排熱を利用した発電等が可能であり、クリーンエネルギー技術の1つとして期待されている。
【0003】
熱電変換材料として、従来からBi-Te系材料、Bi-Sb系材料、Bi-Te-Sb系材料等が知られている。ゼーベック効果による起電力は、熱電変換素子の高温部と低温部との温度差に比例することから、温度差を大きく取るために従来の熱電変換モジュールでは、バルク形の熱電変換素子を利用することが多かった。しかしながら、バルク形の熱電変換素子は、微細加工が容易でない上に出力密度が低く、モジュールの発電単価が高くなる問題があった。そのため、低コストで出力密度の高い熱電変換素子および熱電変換モジュールの開発が強く望まれている。
【0004】
熱電変換素子の1例として、特許文献1には、2〜3μm径のセラミックス系熱電変換材料粒子と、200 nm以下径のセラミックス系熱電変換材料微粒子と、結着材である金属酸化物微粒子と、溶剤とから構成されるペーストをスクリーン印刷によって成形した熱電変換素子が開示されている。特許文献1によれば、焼結性がよく、高効率の熱電変換素子を提供することができるとされている。
【0005】
また、特許文献2には、有機熱電材料と無機熱電材料とが分散状態で一体化されている熱電材料であり、前記有機熱電材料が、ポリアニリン若しくはその誘導体、ポリピロール若しくはその誘導体、ポリチオフェン若しくはその誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリアセン誘導体、及びこれらの材料の共重合体から選択され、前記無機熱電材料が、Bi-(Te,Se)系、Si-Ge系、Pb-Te系、GeTe-AgSbTe系、(Co,Ir,Ru)-Sb系、(Ca,Sr,Bi)Co2O5系から選択される少なくとも一種である熱電材料が開示されている。特許文献2によれば、有機熱電変換材料と無機熱電変換材料をハイブリッド化して、有機熱電変換材料の加工性と無機熱電変換材料の熱電特性とを併せ持つと共に、無機熱電変換材料の特性に応じてn型の熱電特性も得ることができる新規な熱電材料を提供することができるとされている。
【0006】
また、非特許文献1には、スパッタッリング法等の半導体プロセスを用いて作製された薄膜形の熱電変換モジュールが開示されている。非特許文献1によれば、半導体プロセスを用いることで、例えばシリコンウエハの3.3 mm角チップ上に35μm角の熱電対540個を有する熱電変換モジュールが作製可能とされている。そして、該熱電変換モジュールを用いることで廃熱を利用した発電が可能となり、バッテリーレスの無線センサモジュールが実現されるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−225719号公報
【特許文献2】特開2003−46145号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】http://www.micropelt.com/down/thermal_energy_harvesting.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1や特許文献2に記載の熱電変換材料および熱電変換素子は、熱電変換材料をペースト状あるいは液状にしてスクリーン印刷や塗布等の簡易な製造プロセスを用いることができ、所望のパターンを有する厚膜を容易に(すなわち、低い製造コストで)形成することができる。しかしながら、特許文献1の熱電変換材料および熱電変換素子は、無機熱電変換材料の結着剤として金属酸化物微粒子を用いており、該金属酸化物微粒子が熱電変換機能を有しないことから、全体としての熱電変換性能が阻害される問題があった。また、特許文献2の熱電変換材料は、分散混合する(ハイブリッド化する)有機熱電変換材料の熱電変換特性が低いことから、先と同様に全体としての熱電変換性能が阻害される問題があった。
【0010】
一方、非特許文献1に記載の薄膜形の熱電変換モジュールは、微細パターンを有しかつ緻密質な膜が形成されることから、モジュール単位面積当たりの素子密度が高く、高い出力(起電力)を得られることが期待される。しかしながら、薄膜であるが故に素子の表裏面(モジュールの表裏面)での温度差を取ることが本質的に困難であり、温度差を作り出すために非常に大きな冷却部材(例えば、冷却フィン)を必要とする。そのため、熱電変換モジュールが全体として大型化してしまうという問題があった。また、半導体プロセス(真空プロセス)で製造するため、製造装置コストが大きく、モジュール価格が高くなる問題があった。
【0011】
したがって本発明の目的は、低コストプロセスを用いても高特性を有する熱電変換素子を作製可能とする熱電変換複合材料、および該複合材料を用いた熱電変換材料ペーストを提供することにある。さらに、該複合材料を用いて低コストで高効率な熱電変換モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の1つの態様は、上記目的を達成するため、半導体熱電変換材料と結着材とが複合された熱電変換複合材料であって、前記結着材は、前記半導体熱電変換材料と同極性の半導体ガラスであり、前記半導体ガラスは、成分を酸化物で表したときに酸化バナジウムを含有し、軟化点が480℃以下の無鉛ガラスであることを特徴とする複合熱電変換材料を提供する。なお、本発明における「無鉛」とは、RoHS指令(電子・電気機器における特定有害物質の使用制限についての欧州連合(EU)による指令、2006年7月1日施行)における禁止物質(鉛)を指定値以下の範囲で含有することを容認するものとする。ガラスの軟化点の定義については後述する。
【0013】
また、本発明は、上記の本発明に係る熱電変換複合材料において、以下のような改良や変更を加えることができる。
(i)前記半導体ガラス中で、5価のバナジウムイオンの濃度と4価のバナジウムイオンの濃度とが異なる。言い換えると、「5価のバナジウムイオンの濃度:[V5+]」と「4価のバナジウムイオンの濃度:[V4+]」との比が「1」ではない([V5+]/[V4+]≠1)。なお、本発明における「バナジウムイオンの価数および濃度」とは、JIS G1221に準拠した酸化還元滴定法による定量分析によって測定される価数および濃度と定義する。
(ii)前記半導体ガラスは、成分を酸化物で表したときに二酸化テルルおよび/または五酸化二燐を更に含有し、前記酸化バナジウムを全て五酸化二バナジウムとして換算した場合に、前記五酸化二バナジウム(V2O5)と前記二酸化テルル(TeO2)と前記五酸化二燐(P2O5)との合計配合率が60質量%以上である。
(iii)前記半導体熱電変換材料がp型であり、前記半導体ガラスは、成分を酸化物で表したときに、三酸化二砒素(As2O3)、酸化鉄(III)(Fe2O3)、三酸化アンチモン(Sb2O3)、酸化ビスマス(III)(Bi2O3)、三酸化タングステン(WO3)、三酸化モリブデン(MoO3)、および酸化マンガン(MnO)のうち少なくとも1種類以上を更に含有する。
(iv)前記半導体熱電変換材料がn型であり、前記半導体ガラスは、成分を酸化物で表したときに、酸化銀(I)(Ag2O)、酸化銅(II)(CuO)、アルカリ金属酸化物、およびアルカリ土類金属酸化物のうち少なくとも1種類以上を更に含有する。
(v)前記半導体ガラスの配合率が10〜50体積%である。
(vi)前記半導体熱電変換材料が、Bi-(Te,Se,Sn,Sb)系材料、Pb-Te系材料、Zn-Sb系材料、Mg-Si系材料、Si-Ge系材料、GeTe-AgSbTe系材料、(Co,Ir,Ru)-Sb系材料、(Ca,Sr,Bi)Co2O5系材料、Fe-Si系材料、およびFe-V-Al系材料から選ばれる少なくとも1種である。
(vii)本発明に係る熱電変換材料ペーストは、上記の熱電変換複合材料と溶剤とを含む。
(viii)本発明に係る熱電変換材料ペーストは、前記溶剤がブチルカルビトールアセテートまたはα−テルピネオールであり、樹脂バインダーとしてエチルセルロースまたはニトロセルロースを更に含む。
(ix)本発明に係る熱電変換素子は、上記の熱電変換複合材料からなり、前記半導体ガラスの少なくとも一部が結晶化している。なお、本発明において、熱電変換素子とは、所望の形状・寸法に成形され焼成(焼結)された半導体熱電変換材料と定義する。
(x)本発明に係る熱電変換素子は、前記結晶化している部分がバナジウム複合酸化物結晶である。
(xi)本発明に係る熱電変換モジュールは、基板と、前記基板上に配列された複数の熱電変換素子と、前記基板に形成され隣接する前記熱電変換素子の間を電気的に接続する複数の電極とを具備し、前記熱電変換素子は、上記の熱電変換複合材料からなる熱電変換素子であり、隣接する前記熱電変換素子の極性が交互になるように電気的に直列接続されている。なお、本発明において、熱電変換モジュールとは、複数の熱電変換素子が電気的に接続されているものと定義する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、低コストプロセスを用いても高特性を有する熱電変換素子を作製可能とする熱電変換複合材料、および該複合材料を用いた熱電変換材料ペーストを提供することができる。さらに、該複合材料を用いることで、低コストで高効率な熱電変換モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明における代表的な半導体ガラスに対する示差熱分析(DTA)の昇温過程で得られるチャートの1例である。
【図2】CuxV2O5を析出させた半導体ガラスとV2O5を析出させた半導体ガラスの導電率の温度依存性を示すグラフである。
【図3】本発明に係る熱電変換モジュールの製造工程の1例を示す断面模式図である。
【図4】本発明に係る熱電変換モジュールの製造工程の他の1例を示す断面模式図である。
【図5】本発明に係る熱電変換モジュールの1例を示す斜視模式図である。
【図6】本発明に係る熱電変換モジュールを利用した太陽光・太陽熱複合発電システムの1例を示す断面模式図である。
【図7】熱電変換モジュールの変換効率の測定方法を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明者らは、スクリーン印刷や塗布等の低コストプロセスを用いても従来よりも高効率な熱電変換素子を作製可能とする熱電変換材料について鋭意検討を行った結果、半導体熱電変換材料と新規な半導体ガラスとを複合化することにより、前記の目的を達成できることを見出した。以下、本発明に係る実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、本発明はここに取り上げる実施形態に限定されるものではなく、要旨を変更しない範囲で適宜組み合わせや改良が可能である。
【0017】
(熱電変換複合材料)
前述したように、本発明に係る熱電変換複合材料は、半導体熱電変換材料に対して、該半導体熱電変換材料と同極性の半導体ガラスを複合化したものであり、前記半導体ガラスは、成分を酸化物で表したときに酸化バナジウムを含み、軟化点が480℃以下の無鉛ガラスである。より具体的には、本発明で用いる半導体ガラスは、成分を酸化物で表したときに二酸化テルル(TeO2)および/または五酸化二燐(P2O5)を更に含有し、含有される酸化バナジウムを全て五酸化二バナジウム(V2O5)として換算した場合に、五酸化二バナジウムと二酸化テルルと五酸化二燐との合計配合率が60質量%以上である。
【0018】
本発明の半導体ガラスは、ガラス中のバナジウムイオンの価数バランス調整により、p型半導体にもn型半導体にもなる。「4価のバナジウムイオン濃度:[V4+]」に対する「5価のバナジウムイオン濃度:[V5+]」の比が「1」より小さい場合([V5+]/[V4+]<1)にはp型半導体となり、「1」より大きい場合([V5+]/[V4+]>1)にはn型半導体となる。半導体ガラスの極性を半導体熱電変換材料の極性と同極にすることによって、全体としての熱電変換特性を損なうことなく、複合化することができる。なお、「バナジウムイオンの価数および濃度」は、JIS G1221に準拠した酸化還元滴定法による定量分析によって測定できる。また、この半導体ガラスの非晶質状態での導電率は10-2〜10-6 S/m程度である。
【0019】
本発明の半導体ガラスの極性(すなわち、[V5+]/[V4+])は、添加元素によって制御することができる。半導体ガラスの極性をp型([V5+]/[V4+]<1)にする場合、五酸化二バナジウム(V2O5)を還元する効果のある元素を添加すればよい。具体的には、成分を酸化物で表したときに、三酸化二砒素(As2O3)、酸化鉄(III)(Fe2O3)、三酸化アンチモン(Sb2O3)、酸化ビスマス(III)(Bi2O3)、三酸化タングステン(WO3)、三酸化モリブデン(MoO3)、および酸化マンガン(MnO)のうち少なくとも1種類以上を添加すればよい。
【0020】
一方、半導体ガラスの極性をn型([V5+]/[V4+]>1)にする場合、五酸化二バナジウム(V2O5)の還元を抑制する効果のある元素を添加すればよい。具体的には、成分を酸化物で表したときに、酸化銀(I)(Ag2O)、酸化銅(II)(CuO)、アルカリ金属酸化物、およびアルカリ土類金属酸化物のうち少なくとも1種類以上を添加すればよい。いずれの場合にも、これらの元素の添加は、半導体ガラスの極性を制御するだけではなく、ガラス構造を強化する効果(ガラスの安定性を高める効果)と耐水性を向上する効果とを奏する。
【0021】
また、本発明で用いる半導体ガラスは、軟化点が480℃以下と低いことを特徴とする。軟化点が低い半導体ガラスを複合化することにより、従来のバルク形の熱電変換素子における熱電変換材料の焼結温度(例えば、Bi-Te系材料において600〜650℃)よりも低温での焼成が可能となる。焼成温度の低温化は、焼成に要するエネルギーコストの低減に加えて、望まない化学反応を抑制することから熱電変換特性の低下を防止する。
【0022】
ここで、本発明におけるガラスの特性温度(転移点、屈伏点、軟化点、結晶化温度)の定義について説明する。図1は、本発明における代表的な半導体ガラスに対する示差熱分析(DTA)の昇温過程で得られるチャートの1例である。DTA測定は、参照試料としてα−アルミナを用い、大気中5℃/minの昇温速度で行った。参照試料および測定試料の質量は、それぞれ650 mgとした。本発明においては、図1に示したように、第1吸熱ピークの開始温度をガラス転移点Tg(粘度=1013.3 poiseに相当)、該第1吸熱ピークのピーク温度を屈伏点Td(粘度=1011.0 poiseに相当)、第2吸熱ピークのピーク温度を軟化点Ts(粘度=107.65 poiseに相当)、第1発熱ピークの開始温度を結晶化温度Tcと定義する。なお、それぞれの温度は、接線法によって求められる温度とする。本明細書に記載の特性温度(例えば、軟化点Ts)は上記の定義に基づくものである。
【0023】
半導体ガラスと複合化する半導体熱電変換材料は、特に限定されず、使用温度に応じて最適なものを選択することができる。例えば、200℃以下で使用するならば、Bi-(Te,Sb)系材料を好適に用いることができる。また、上記以外にも、例えば、Bi-(Te,Se,Sn,Sb)系材料、Pb-Te系材料、Zn-Sb系材料、Mg-Si系材料、Si-Ge系材料、GeTe-AgSbTe系材料、(Co,Ir,Ru)-Sb系材料、(Ca,Sr,Bi)Co2O5系材料、Fe-Si系材料、Fe-V-Al系材料等を好適に用いることができる。さらに、広範囲な温度域に対応させるために、使用温度の異なる熱電変換材料を組み合わせることも可能である。
【0024】
前述したように、本発明の熱電変換材料は、半導体熱電変換材料と上述した半導体ガラスとを複合化したものであり、半導体熱電変換材料の粉末と半導体ガラスの粉末とを混合し、塗布・焼成して使用される(詳細は後述する)。混合する半導体熱電変換材料粉末と半導体ガラス粉末の粒子径は、塗布工程における塗布性を考慮すると、それぞれ5μm以下であることが好ましい。
【0025】
また、半導体熱電変換材料に対する半導体ガラスの混合比は、10体積%以上50体積%以下(10〜50体積%)が好ましい。半導体ガラスの混合比が10体積%未満であると、半導体熱電変換材料の粒子表面が軟化・溶融した半導体ガラスで十分に濡れないため、半導体熱電変換材料粒子の液相焼結が十分に進行しない。一方、半導体ガラスの混合比が50体積%を超えると、半導体熱電変換材料粒子同士の接触面積が減少するため、全体としての熱電変換特性が低下してしまう。
【0026】
ここで、熱電変換材料の性能について、簡単に説明する。熱電変換材料の性能は、しばしば次式(1)で示される無次元性能指数(ZT)を指標として表わされる。S:ゼーベック係数、σ:導電率、κ:熱伝導率、および、T:動作温度である。このZTが大きいほど、高い変換効率が得られる。
【0027】
【数1】

【0028】
ゼーベック係数は熱電変換材料の物性値であるが、熱電変換材料が焼結体の場合、導電率および熱伝導率は特性値となる。式(1)を本発明に係る熱電変換複合材料(半導体熱電変換材料と半導体ガラスとの複合化)に当てはめて考えると、次のような留意点がある。(a)複合化によって、ゼーベック係数が低下する可能性がある。(b)複合化によって、実効的な導電率が低下する可能性がある。(c)複合化によって、実効的な熱伝導率が低下する可能性がある。言い換えると、ゼーベック係数の低下の抑制(すなわち、半導体熱電変換材料と半導体ガラスとの化学反応の抑制)と、実効的な導電率の低下の抑制とが重要であると言える。
【0029】
半導体熱電変換材料と複合化した半導体ガラスの少なくとも一部は、結晶化していることが好ましい。半導体ガラスの少なくとも一部を結晶化させることで、半導体ガラス自体の導電率(電気導電率)を向上させ、熱電変換複合材料の実効的な導電率の低下を抑制することが可能となる。具体的には、高導電率のバナジウム複合酸化物結晶であるMxV2O5(M: 銅、銀、アルカリ金属、アルカリ土類金属、0<x<1)、LiV2O4、CaVO3、SrVO3、La1-xSrxVO3、Gd1-xSrxVO3、V2O3、VO2等を析出させることが好ましい。本発明の半導体ガラスの結晶化にあたって特段の制約はなく、従前のガラスの結晶化方法を適宜適用できる。
【0030】
図2は、CuxV2O5を析出させた半導体ガラスとV2O5を析出させた半導体ガラスの導電率の温度依存性を示すグラフである。バナジウム複合酸化物結晶を析出させる(ガラスを結晶化させる)前の半導体ガラスの室温での導電率は10-4 S/mオーダーであったことから、図2に示したように、本発明の半導体ガラスを結晶化させることによって、ガラスの導電率が飛躍的に(約5桁)向上することが確認された。
【0031】
(熱電変換材料ペースト)
本発明に係る熱電変換材料ペーストは、上述した熱電変換複合材料と溶剤とを含むものである。該ペーストは、樹脂バインダーを更に含んでいてもよい。溶剤としては、ブチルカルビトールアセテートまたはα−テルピネオールが好ましく用いられる。樹脂バインダーとしては、エチルセルロースまたはニトロセルロースが好ましく用いられる。一方、溶剤としてα−テルピネオールを用い、セルロース系の樹脂バインダーを用いないペーストでもよい。
【0032】
本発明に係る熱電変換複合材料をペースト化することにより、スクリーン印刷や塗布等の低コストプロセスを用いて、基板上に所望の形状(微細パターン)を容易に成形することができる。その後、ペースト中の半導体ガラスの軟化点Tsよりも20〜40℃程度高い温度で焼成することで、ペースト中の半導体熱電材料を液相焼結させ、熱電変換素子および熱電変換モジュールを製造することができる。
【0033】
(熱電変換素子および熱電変換モジュール)
次に、本発明に係る熱電変換素子および熱電変換モジュールについて説明する。前述したように、本発明において、熱電変換素子とは、所望の形状・寸法に成形され焼成(焼結)されたp型半導体熱電変換材料やn型半導体熱電変換材料と定義し、熱電変換モジュールとは、複数の熱電変換素子が電気的に接続されているものと定義している。
【0034】
図3は、本発明に係る熱電変換モジュールの製造工程の1例を示す断面模式図である。以下、図3に沿って本発明の熱電変換モジュールとその製造方法について説明する。
【0035】
(1)電極形成工程
まず、基板101の片側表面に、高絶縁性の絶縁層102を形成する。その後、絶縁層102上に電極103を形成する。電極103が形成された基板101を一対用意する。
【0036】
基板101は高熱伝導性の材質であればよく、特に限定されない。例えば、金属ならばアルミニウムを好適に用いることができる。また、金属以外にも高熱伝導率かつ高絶縁性のアルミナ(Al2O3)、窒化アルミニウム(AlN)、炭化珪素(SiC)、ベリリア(BeO)等を用いても良い。絶縁層102としては、高絶縁性を有するものであればよく、例えば基板がアルミニウムであれば、基板表面の酸化処理あるいは窒化処理により、アルミナあるいは窒化アルミニウムを形成すればよい。絶縁層102が高熱伝導性を有することは、より好ましい。なお、基板が高絶縁性のものである場合には、絶縁層102を形成する必要はない。
【0037】
電極103としては、導電率が105 S/mオーダー以上であり、基材101との熱膨張率差が小さいものであればよく、特段の限定はない。例えば、スパッター法により形成した金属膜でもよいし、導電性ペーストを塗布・焼成した電極膜でもよい。
【0038】
(2)熱電変換材料層形成工程
本発明に係る熱電変換材料ペーストを用意する。p型熱電変換材料ペースト104は、p型半導体熱電変換材料粒子105とp型半導体ガラス106と溶剤(例えば、ブチルカルビトールアセテート)とを混合して作製される。同様に、n型熱電変換材料ペースト107は、n型半導体熱電変換材料粒子108とn型半導体ガラス109と溶剤(例えば、ブチルカルビトールアセテート)とを混合して作製される。
【0039】
熱電変換材料ペーストの極性が交互になるように、各熱電変換材料ペースト104,107を電極103上に塗布する。塗布方法としては、スクリーン印刷法、インクジェット法、スタンプ法、およびフォトレジストフィルム法等を好適に用いることができる。その後、150℃程度に加熱して溶剤を除去し、熱電変換材料層(熱電変換素子の前駆体)を形成する。
【0040】
(3)熱電変換素子・熱電変換モジュール形成工程
次に、前述の電極形成工程で用意した電極103が形成された基板101を熱電変換材料層の上に重ね合わせる。このとき、熱電変換材料の極性が交互に直列接続されるように、電極103が形成された基板101を配置することが好ましい。その後、半導体ガラス106,109の軟化点Tsよりも20〜40℃程度高い温度で焼成することで、電気的に接続された複数の熱電変換素子(すなわち、熱電変換モジュール)が形成される。
【0041】
(4)封着工程
さらに、熱電変換モジュールの耐久性を向上させるために、対となる2枚の基板101の端部をガラス封着することは好ましい。図3に示すように、基板101の端部に封着用ガラスペースト111(封着用ガラスフリットでもよい)を塗布した後、電気炉中で焼成・封着する。このとき、熱電変換モジュール内部を真空引きしながら封着することは好ましい。
【0042】
封着用ガラスペースト111に用いるガラスとして特段の限定はないが、熱電変換素子内の半導体熱電変換材料と半導体ガラスとが化学反応を起こさない温度領域で封着可能なガラスを用いることが望ましい。また、封着用のガラスは、耐水性に優れたガラスであることが好ましい。
【0043】
図4は、本発明に係る熱電変換モジュールの製造工程の他の1例を示す断面模式図である。図4に沿って本発明に係る熱電変換モジュールの製造工程の他の1例について説明する。
【0044】
図3と同様に電極形成工程において、まず、基板201の片側表面に、高絶縁性の絶縁層202を形成する。その後、絶縁層202上に電極203を形成する。電極203が形成された基板201を一対用意する。
【0045】
次に、熱電変換材料層形成工程において、一方の基板201の電極203上に、p型半導体熱電変換材料粒子205とp型半導体ガラス206とを含むp型熱電変換材料ペースト204を塗布し、他方の基板201の電極203上に、n型半導体熱電変換材料粒子208とn型半導体ガラス209とを含むn型熱電変換材料ペースト207を塗布する。その後、それぞれの基板を150℃程度に加熱して溶剤を除去し、熱電変換材料層(熱電変換素子の前駆体)を形成する。
【0046】
次に、熱電変換素子・熱電変換モジュール形成工程において、熱電変換材料層が形成された基板同士を、熱電変換材料の極性が交互に直列接続されるように重ね合わせる。その後、半導体ガラス206,209の軟化点Tsよりも20〜40℃程度高い温度で焼成することで、電気的に接続された複数の熱電変換素子(すなわち、熱電変換モジュール)が形成される。なお、図4においては封着工程を省略したが、封着工程が行われることは、もちろん好ましい。
【0047】
図5は、本発明に係る熱電変換モジュールの1例を示す斜視模式図である。図5に示したように、本発明に係る熱電変換モジュール300は、対向する2枚の基板301の間に複数の熱電変換素子(p型熱電変換素子304、n型熱電変換素子305)が配列されており、p型熱電変換素子304とn型熱電変換素子305とが交互になるように、基板301上に形成された電極302を介して電気的に直列接続されている。直列接続された熱電変換素子の両端には、引出電極303が取り付けられている。なお、図中に示した熱電変換素子の形状・寸法は例示であり、最適な形状・寸法は、使用する熱電変換複合材料の熱伝導率、熱電変換複合材料と電極との界面熱抵抗率や界面電気抵抗率、および熱電変換モジュールの用途などを考慮して適宜設計される。
【0048】
(熱電変換モジュールの使用例)
図6は、本発明に係る熱電変換モジュールを利用した太陽光・太陽熱複合発電システムの1例を示す断面模式図である。図6に示したように、本発明に係る熱電変換モジュールを利用した太陽光・太陽熱複合発電システム400は、太陽電池モジュール401と本発明に係る熱電変換モジュール402と熱交換器403とが積層された構成を有している。
【0049】
太陽電池モジュール401は、太陽光に面する位置に配置され、一例として、リードフレーム407を介して接続された複数の太陽電池セル406が透明樹脂408によって固定されている構造を有している。太陽光の入射面は、強化ガラス405によって保護されている。太陽電池モジュール401の裏面に配設される熱電変換モジュール402は、図3〜5と同様の構造を有し、対向する2枚の基板409の間に複数の熱電変換素子(p型熱電変換素子412、n型熱電変換素子413)が配列されており、p型熱電変換素子412とn型熱電変換素子413とが交互になるように、基板409上に絶縁層410を介して形成された電極411により電気的に直列接続されている。熱電変換モジュール402の他方の面には、熱交換器403が配設されている。また、太陽光・太陽熱複合発電システム400の側面は、封着ガラス414を介して側板404が取り付けられている。
【0050】
太陽光・太陽熱複合発電システム400は、太陽電池モジュール401による太陽光発電と、太陽電池モジュール401の下面と熱交換器403の上面との温度差を利用した熱電変換モジュール402による太陽熱発電と、熱電変換モジュール402で利用できなかった廃熱の熱交換器403による回収(例えば、給湯)とを行うことができる。すなわち、電力と熱とのコージェネレーションシステムを構築することができる。
【0051】
また、太陽光・太陽熱複合発電システム400は、太陽電池モジュール401の熱を熱電変換モジュール402で積極的に抜熱することにより、太陽電池セル406の温度上昇による効率低下を抑制することができる。さらに、熱電変換モジュール402の他方の面(太陽電池モジュール401と反対側の面)の熱を熱交換器403で積極的に抜熱することにより、熱電変換モジュール402の上下面における温度差を拡大し熱電変換効率を向上することができる。
【実施例】
【0052】
以下、本発明を具体的な実施例に基づいてより詳細に説明する。ただし、本発明は、ここで取り上げた実施例に限定されることはなく、そのバリエーションを含むものとする。
【0053】
[実施例1]
本実施例においては、種々の組成を有する半導体ガラスを作製し、該半導体ガラスの評価を行った。
【0054】
(半導体ガラスの評価)
(1−1)半導体ガラスの軟化点
表1に示す名目組成を有する半導体ガラス(SG-01〜SG-19)を作製した。表中の組成は、各成分の酸化物換算における質量比率で表示してある。出発原料としては、(株)高純度化学研究所製の酸化物粉末(純度99.9%)を用いた。表に示した質量比で各出発原料粉末を混合し、白金るつぼに入れた。混合にあたっては、原料粉末への余分な吸湿を避けることを考慮して、金属製スプーンを用いて白金るつぼ内で混合した。
【0055】
【表1】

【0056】
原料混合粉末が入った白金るつぼをガラス溶融炉内に設置し、加熱・融解した。5℃/minの昇温速度で昇温し、設定温度(900〜1000℃)で融解しているガラスを撹拌しながら1時間保持した。その後、白金るつぼをガラス溶解炉から取り出し、あらかじめ150〜300℃に加熱しておいた黒鉛鋳型に鋳込んだ。次に、鋳込まれたガラスを、あらかじめ歪取り温度に加熱しておいた歪取り炉に移動し、1時間保持により歪を除去した後、1℃/minの速度で室温まで冷却した。室温まで冷却したガラスブロックを粉砕し、表に示した名目組成を有する半導体ガラスSG-01〜SG-19の粉末を作製した。
【0057】
上記で得られた各半導体ガラス粉末に対して、示差熱分析(DTA)により軟化点Tsを測定した。DTA測定は、参照試料(α−アルミナ)および測定試料の質量をそれぞれ650 mgとし、大気中5℃/minの昇温速度で行い、第2吸熱ピークのピーク温度を軟化点Tsとして求めた(図1参照)。結果を表2に示す。DTA測定の結果、本発明に係る半導体ガラスSG-01〜SG-19は、いずれも軟化点が480℃以下であることが確認された。
【0058】
【表2】

【0059】
(1−2)半導体ガラスの極性
前記(1−1)で作製した半導体ガラスSG-01〜SG-19中のバナジウムイオンの価数と濃度とを、JIS G1221に準拠した酸化還元滴定法によって測定した。得られた測定結果から、「4価のバナジウムイオン濃度:[V4+]」に対する「5価のバナジウムイオン濃度:[V5+]」の比が「1」より小さい場合([V5+]/[V4+]<1)にはp型半導体と判定し、「1」より大きい場合([V5+]/[V4+]>1)にはn型半導体と判定した。その結果を表2に併記する。表2に示したように、添加元素によって半導体ガラスの極性を制御できることが確認された。
【0060】
(1−3)半導体熱電変換材料との化学反応性
前記(1−1)で作製した半導体ガラスSG-01〜SG-19と、半導体熱電変換材料であるBi2Te3(株式会社豊島製作所製、粒径:200メッシュ以下、純度:3N以上)との化学反応性を調査した。半導体ガラス粉末とBi2Te3粉末との混合粉末(Bi2Te3に対して半導体ガラスを30体積%混合)を冷間プレスにより成型した後、アルゴン雰囲気中または大気中にて所定の温度で30分間焼成した。焼成温度は、熱電変換素子を作製する際の焼成条件を考慮して、混合した半導体ガラスの軟化点Tsよりも20〜40℃高い温度とした。
【0061】
焼成後の成型体を乳鉢にて粉砕し、広角X線回折測定法(いわゆる、θ-2θ法)により反応生成物の同定を行った。なお、検出されたピークの同定には、X線回折標準データ集であるICDD(International Centre for Diffraction Data)カードを用いた。測定装置には、広角X線回折装置(株式会社リガク製、型式:RU200B)を用いた。測定条件は、X線としてCuKα線を用い、X線出力を50 kV×150 mAとし、走査範囲を2θ=5〜100 degとし、発散スリットをDS=1.0 degとし、走査速度を2.0 deg/minとした。
【0062】
得られたX線回折パターンが、ガラスに由来するハローパターンおよびBi2Te3に由来する回折ピークのみで構成されている場合、混合した半導体ガラスはBi2Te3と化学反応しなかったと判断し「合格」と評価した。得られたX線回折パターンが、ガラスに由来するハローパターンとBi2Te3に由来する回折ピークの他に、半導体ガラスとBi2Te3との反応生成物(例えば、Bi2TeO5やBi4TeO8)と思われる回折ピークで構成されており、回折ピーク強度から計算される反応生成物の体積分率がBi2Te3の体積分率の1/5以下であった場合、「許容」と評価した。回折ピーク強度から計算される反応生成物の体積分率がBi2Te3の体積分率の1/5超であった場合には、「不合格」と評価した。評価した結果を表2に併記する。
【0063】
表2に示したように、本発明の半導体ガラスSG-01〜SG-19は、アルゴン雰囲気中で焼成した場合に、いずれもBi2Te3との化学反応性が低いことが確認された。また、SG-01,SG-02,SG-15,SG-17では、大気中の焼成においても、Bi2Te3との化学反応性が低いことが確認された。これらの結果は、本発明の半導体ガラスが高い化学的安定性を有すると共に、低い軟化点を有することに起因すると考えられた。
【0064】
なお、詳細は省略するが、Pb-Te系材料、Zn-Sb系材料、Mg-Si系材料、Si-Ge系材料、GeTe-AgSbTe系材料、(Co,Ir,Ru)-Sb系材料、(Ca,Sr,Bi)Co2O5系材料、Fe-Si系材料、およびFe-V-Al系材料においても、同様の結果が得られることを別途確認した。
【0065】
[実施例2]
本実施例においては、本発明に係る熱電変換素子を作製し、その特性評価を行った。
【0066】
(熱電変換素子の特性評価)
半導体熱電変換材料として、p型のBi0.3Sb1.7Te3粉末(株式会社豊島製作所製、純度:3N以上、粒径(D50):3.2μm)と、n型のBi2Te3粉末(株式会社豊島製作所製、純度:3N以上、粒径(D50):2.5μm)とを用意した。また、複合する半導体ガラスとして、p型のSG-07とn型のSG-15とを用意した。p型のBi0.3Sb1.7Te3粉末(70体積%)とp型のSG-07(30体積%)とを混合し、該混合粉末に対して、エチルセルロース(EC)とブチルカルビトールアセテート(BCA)との混合溶液を15質量%配合して、p型の熱電変換材料ペーストを作製した。同様に、n型のBi2Te3粉末(70体積%)とn型のSG-15(30体積%)とを混合し、該混合粉末に対して、ECとBCAとの混合溶液を15質量%配合して、n型の熱電変換材料ペーストを作製した。
【0067】
次に、これらのペーストをステンレス製の型に流し込み、アルゴンガス雰囲気中430℃で30分間焼成することにより、約3×3×10 mm3の角柱状の熱電変換素子を作製した。また、比較試料として、半導体熱電変換材料のみをホットプレスにより圧粉成型・焼結した熱電変換素子(株式会社豊島製作所製)も用意した。これらの熱電変換素子のゼーベック係数および電気導電率を熱電特性評価装置(アルバック理工株式会社製、型式:ZEM-3)により測定した。測定は、低圧ヘリウムガス中で、323 K、373 K、423 Kの各温度でそれぞれ3回ずつ行い、平均値を求めた。結果を表3に示す。
【0068】
【表3】

【0069】
表3に示したように、本発明に係る熱電変換素子は、従来のバルク形熱電変換素子と比較して、同等の熱電特性を維持していることが確認された。言い換えると、本発明の半導体ガラスおよびそれを用いた熱電変換材料ペーストは、半導体熱電変換材料の熱電特性に悪影響を与えないことが確認された。さらに、本発明に係る熱電変換複合材料を用いると、従来のバルク形熱電変換素子の場合よりも低温焼成で、熱電変換素子が作製可能であることが確認された。
【0070】
[実施例3]
本実施例においては、本発明に係る熱電変換モジュールを作製し、その変換効率を測定した。
【0071】
(熱電変換モジュールの評価)
実施例2で作製した熱電変換材料ペーストを用いて、図5に示した熱電変換モジュールを作製した。熱電変換素子304、305の寸法・形状を一辺約100μmの立方体状とし、該熱電変換素子を70 cm角の基板301上に144万個集積させた。製造条件の概略を表4に示す。
【0072】
【表4】

【0073】
図7は、熱電変換モジュールの変換効率の測定方法を示す断面模式図である。作製した熱電変換モジュール502を加熱ヒータ501と熱伝導率が既知の銅ブロック504との間に設置した。銅ブロック504の他端側には、抜熱するためのヒートシンク505を配設した。
【0074】
加熱ヒータ501で熱電変換モジュール502の一方の面を加熱し、引出電極503から出力されるモジュール出力Pと銅ブロック504を流れる熱流束Qとを測定した。測定した出力Pと熱流束Qとから次式「η=P/(Q+P)」を用いて変換効率ηを求めた。ヒータ温度を150℃に設定し、熱電変換モジュール502の上下面の温度差ΔTが50 K、銅ブロック504に流れる熱流束Qが10 W/cm2の条件下で測定した結果、熱電変換モジュール502の変換効率ηは約2%と十分に高い性能が得られることが確認された。
【符号の説明】
【0075】
101, 201…基板、102, 202…絶縁層、103, 203…電極、
104, 204…p型熱電変換材料ペースト、105, 205…p型半導体熱電変換材料粒子、
106, 206…p型半導体ガラス、
107, 207…n型熱電変換材料ペースト、108, 208…n型半導体熱電変換材料粒子、
109, 209…n型半導体ガラス、111…封着ガラスペースト、
300…熱電変換モジュール、301…基板、302…電極、303…引出電極、
304…p型熱電変換素子、305…n型熱電変換素子、
400…太陽光・太陽熱複合発電システム、401…太陽電池モジュール、
402…熱電変換モジュール、403…熱交換器、404…側板、405…強化ガラス、
406…太陽電池セル、407…リードフレーム、408…透明樹脂、409…基板、
410…絶縁層、411…電極、412…p型熱電変換素子、413…n型熱電変換素子、
414…封着ガラス、
501…加熱ヒータ、502…熱電変換モジュール、503…引出電極、504…銅ブロック、
505…ヒートシンク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体熱電変換材料と結着材とが複合された熱電変換複合材料であって、
前記結着材は、前記半導体熱電変換材料と同極性の半導体ガラスであり、
前記半導体ガラスは、成分を酸化物で表したときに酸化バナジウムを含有し、軟化点が480℃以下の無鉛ガラスであることを特徴とする熱電変換複合材料。
【請求項2】
請求項1に記載の熱電変換複合材料において、
前記半導体ガラス中で、5価のバナジウムイオンの濃度と4価のバナジウムイオンの濃度とが異なることを特徴とする熱電変換複合材料。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の熱電変換複合材料において、
前記半導体ガラスは、成分を酸化物で表したときに二酸化テルルおよび/または五酸化二燐を更に含有し、前記酸化バナジウムを全て五酸化二バナジウムとして換算した場合に、前記五酸化二バナジウムと前記二酸化テルルと前記五酸化二燐との合計配合率が60質量%以上であることを特徴とする熱電変換複合材料。
【請求項4】
請求項3に記載の熱電変換複合材料において、
前記半導体熱電変換材料がp型であり、
前記半導体ガラスは、成分を酸化物で表したときに、三酸化二砒素、酸化鉄(III)、三酸化アンチモン、酸化ビスマス(III)、三酸化タングステン、三酸化モリブデン、および酸化マンガンのうち少なくとも1種類以上を更に含有することを特徴とする熱電変換複合材料。
【請求項5】
請求項3に記載の熱電変換複合材料において、
前記半導体熱電変換材料がn型であり、
前記半導体ガラスは、成分を酸化物で表したときに、酸化銀(I)、酸化銅(II)、アルカリ金属酸化物、およびアルカリ土類金属酸化物のうち少なくとも1種類以上を更に含有することを特徴とする熱電変換複合材料。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の複合熱電変換材料において、
前記半導体ガラスの配合率が10〜50体積%であることを特徴とする熱電変換複合材料。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の熱電変換複合材料において、
前記半導体熱電変換材料が、Bi-(Te,Se,Sn,Sb)系材料、Pb-Te系材料、Zn-Sb系材料、Mg-Si系材料、Si-Ge系材料、GeTe-AgSbTe系材料、(Co,Ir,Ru)-Sb系材料、(Ca,Sr,Bi)Co2O5系材料、Fe-Si系材料、およびFe-V-Al系材料から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする熱電変換複合材料。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の熱電変換複合材料と、溶剤とを含むことを特徴とする熱電変換材料ペースト。
【請求項9】
請求項8に記載の熱電変換材料ペーストにおいて、
前記溶剤がブチルカルビトールアセテートまたはα−テルピネオールであり、
樹脂バインダーとしてエチルセルロースまたはニトロセルロースを更に含むことを特徴とする熱電変換材料ペースト。
【請求項10】
請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の熱電変換複合材料からなる熱電変換素子であって、
前記半導体ガラスの少なくとも一部が結晶化していることを特徴とする熱電変換素子。
【請求項11】
請求項10に記載の熱電変換素子において、
前記結晶化している部分はバナジウム複合酸化物結晶であることを特徴とする熱電変換素子。
【請求項12】
基板と、前記基板上に配列された複数の熱電変換素子と、前記基板に形成され隣接する前記熱電変換素子の間を電気的に接続する複数の電極とを具備する熱電変換モジュールであって、
前記熱電変換素子は、請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の熱電変換複合材料からなる熱電変換素子であり、隣接する前記熱電変換素子の極性が交互になるように電気的に直列接続されていることを特徴とする熱電変換モジュール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−93397(P2013−93397A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233584(P2011−233584)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】