説明

熱電断熱屋根材

屋根断熱材は、複数の熱電素子を備え、各熱電素子は、第1の導電材料からなる第1の導体(1)と、第2の導電材料からなる第2の導体(2)とを有する。第1及び第2の導体は、実質的に、屋根断熱材の両平面(12、13)の間に延在し、少なくとも1つの接点(3,4)によって互いに電気的に接続される。第1の導電材料を第1の導電ポリマーとし、第2の導電材料を第2の導電ポリマーとしてもよい。断熱特性および電気的絶縁特性を有する1つ以上の支持体(6)が、第1および/または第2の導体を支持する。支持体は、実質的に屋根材の長さ方向もしくは幅方向に延在する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明は、屋根ふき用の断熱材に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の屋根面を利用することによって、クリーンで、手ごろな、信頼性の高い方法で建物に供給する電気を発生させることができる。従来のシステムは、太陽光を電気に変換する光起電力システム(太陽光発電システムPV)に基づいて、作動している。これらのパネルは建物の建設時に屋根面に設置されるため、設置コストがかさんでしまう。また、例えば、ケーブルを通すことによって水密性といった屋根建設に関する技術的なリスクを伴う。さらに、PVパネルは屋根の外観にも影響を及ぼす。これらの要素によってPVパネルの設置が制限されるため、発電のために屋根が利用されることが比較的少ない。
【0003】
別の小規模な発電の方法として、熱電発電によるものがある。現在まで、このような熱電システムの多くは、例えばUS2,984,696に開示されているような、テルル化ビスマス(BiTe)等の半導体を用いて行われてきた。これらの材料は、通常毒性があり、高価で、かつ希少である。さらに、これらの材料は、熱伝導特性の観点から、屋根に一体化するには適さない。さらに、熱電モジュールは寸法が小さいため屋根への一体化には適していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、良好な熱的特性と、一体化された熱電発電とを両立した屋根ふき用の断熱材を提供することを目的とする。例えば、屋根と一体化するために、サンドイッチ状の断熱屋根板材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため、屋根材は、複数の断熱素子群によって形成される断熱体を備え、複数の断熱素子は、熱電素子として形成され、それぞれ、第1の導電材料からなる第1の導体と、第2の導電材料からなる第2の導体とを有し、両導体は、実質的に、屋根断熱材の両平面の間に延在し、少なくとも1つの接点によって互いに電気的に接続されることを特徴とする。
【0006】
発電は、ゼーベック効果を利用して行われる。2つの異なる導電材料による接点を有する回路を形成し、接点に温度差を与えると、2つの接点間の温度差によって回路内に電流が流れる。ここでは、太陽側に向けられて比較的高温となる屋根材の外側(上面側)と、低温(大気)温度となる屋根材の内側(下面側)との間の温度差を利用する。屋根材の外側は、例えば、(黒色)エチレンジエンプロピレンモノマー(EPDM)の屋根システムでカバーすると、とくに高温を得られる。
【0007】
第1の導電材料は第1の導電ポリマーであり、第2の導電材料は第2の導電ポリマーであることが好ましい。両方の導電ポリマーは、もともと導電ポリマーの材料を用いてもよいし、付帯的に重合体ポリマーとしてもよい。第1および第2の導電ポリマーは、化学的に異なるものとしてもよいし、実質的には同一で反対極にドープするようにしてもよい。この場合、例えば、一方のポリマーを陽極のドープ剤でドープし、他方のポリマーを陰極のドープ剤でドープする。
【0008】
屋根材は、屋根材の内側に、断熱性および電気的絶縁性がよく、熱電素子を形成する第1および/または第2の導体を支持するように配置された支持体を備えることが好ましい。支持体は、実質的に屋根材の長さ方向もしくは幅方向に延在してもよい。支持体を、電気的および熱的に絶縁なポリマー、例えば発泡ポリスチレンから形成してもよい。第1および/または第2の導体ポリマーは、導体ポリマーがフィルム状である場合には、接着により支持体と接合してもよい。あるいはまた、導体ポリマーを、対応する支持体ポリマーと単一のあるいは複数の共重合体を形成するように構成し、導電性の最上層を形成してもよい。
【0009】
本発明による断熱屋根材のRc値の一例は、1.5〜5mK/Wである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、熱電素子スタックの第3の実施の形態を示す下面図および断面図である。
【図2】図2は、結合屋根材の部分断面図を示す。
【図3】図3は、結合屋根材の下面図を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、複数の熱電素子を有する熱電素子スタックの下面図およびA−B断面図を示す。各熱電素子は、第1の導電材料からなる第1の導体と、第2の導電材料からなる第2の導体とから形成される。第2の導体2は、下面に電気的に絶縁された隙間3を有している。導体1,2は、接点4により上面で互いに接合されている。ここで、上面を熱(屋根)側として、接点4を「熱接点」とし、下面を冷却(建物内)側とする。導体1,2は、支持体6として機能する絶縁構造体によって支持されている。支持体6は、絶縁ポリマー、例えば、発泡ポリスチレン等からなる。第1の導体1および第2の導体2は、導電ポリマー(CPs)、例えば、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリフェニレンビニレンのポリチオフェンから形成される。第1および第2の導体は、同一のCPsで形成することができる。ただし、一方の導体を陽イオンでドープし、他方を陰イオンでドープしたり、あるいはそれぞれを異なるポリマーで形成してもよい。支持体上にCPsの膜を形成してもよい。あるいはまた、CPsを支持体ポリマーと化学的に結合し、導電性を維持した共重合体の支持体最上層として形成してもよい。
【0012】
上面と下面との間に温度差を与えると、ゼーベック効果により、第1の導体1と第2の導体2によって形成される各部材の隙間3に電圧(+,−によって示す)が発生する。図示のように全ての部材を相互接続線によって順に接続することにより、接点4,5に温度差を与えた場合に、構造体6全体の各部材で発生した全電圧が加算され、総合的な電圧がクランプ7,8で発生することになる。
【0013】
支持構造体6の主な機能は、屋根の断熱である。第2の機能は、熱電素子を形成する導電層を支持し、分離することである。支持構造体6は、発泡ポリスチレン等から形成され、例えば、ポリアニリンまたはポリアセチレンから形成される第1および第2の導電層1,2を支持する。あるいは、支持構造体を硬質ポリウレタン発泡体から形成し、CPで共重合体の支持体最上層を形成することもできる。第1および第2の導体は、互いに反対極にドープされ、図示のように連続して接続された熱電素子群を形成している。
【0014】
図2,3は、結合された屋根材の一部を示す。図7の断面図は、図6に示す一対の熱電素子スタックを示し、図2にも示すように中間分離部材9によって分離されている様子を示している。屋根材は、例えば木製のフレーム10によって囲まれ、絶縁コーティングが施された金属シート11、および、木等の熱伝導性のある軽い材料の上板12によってカバーされている。屋根材の下側は、木等の熱伝導性のある軽い材料の下板13によってカバーされている。
【0015】
図3に示すように、各クランプ7(不図示)、8を、それぞれ結合ストリップ14によって接続してもよい。熱電素子スタックを、それぞれ接続ストリップによって図示のように並列に、あるいは、図示はしないが直列に接続してもよい。どのように接続するかは、組み合わせた熱電素子スタックの直流(DC)電圧、および本線に流れる交流(AC)電流へ変換するための所望の電圧によって決めることができる。
【0016】
屋根構造に沿った温度差は、多くの場合、50K以上に達する。特に夏場には、上側(例えば、黒いEPDM層の下)の温度は、約70℃をはるかに超え、一方で、断熱屋根の下側は約25℃となる。しかし、小さい温度差(3〜5K)であっても、発電には十分である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根を断熱するための屋根断熱材であって、
複数の断熱素子群によって形成される断熱体を備え、
前記複数の断熱素子は、熱電素子として形成され、それぞれ、第1の導電材料からなる第1の導体(1)と、第2の導電材料からなる第2の導体(2)とを有し、
前記第1及び第2の導体は、実質的に、前記屋根断熱材の両平面(12、13)の間に延在し、少なくとも1つの接点(3)によって互いに電気的に接続されることを特徴とする屋根断熱材。
【請求項2】
請求項1に記載の屋根断熱材において、
前記第1の導電材料は第1の導電ポリマーであり、前記第2の導電材料は第2の導電ポリマーであることを特徴とする屋根断熱材。
【請求項3】
請求項1に記載の屋根断熱材において、
断熱特性および電気的絶縁特性を有し、前記複数の断熱素子群を支持する1つ以上の支持体(6)をさらに備えることを特徴とする断熱屋根材。
【請求項4】
請求項3に記載の断熱屋根材において、
前記支持体は、実質的に前記屋根材の長さ方向もしくは幅方向に延在することを特徴とする断熱屋根材。
【請求項5】
請求項1に記載の断熱屋根材において、
前記断熱体の断熱値は、1.5〜5.0mK/Wの範囲内であることを特徴とする断熱屋根材。
【請求項6】
請求項3に記載の断熱屋根材において、
前記支持体は、絶縁ポリマーによって形成されることを特徴とする断熱屋根材。
【請求項7】
請求項1および3に記載の断熱屋根材において、
前記第1および/または第2の導体は、接着により前記1つ以上の支持体(6)に接合されていることを特徴とする断熱屋根材。
【請求項8】
請求項2および5に記載の断熱屋根材において、
前記第1および/または第2の導電ポリマーは、それぞれ対応する支持体ポリマーと共重合体を形成することにより、前記1つ以上の支持体(6)に結合されていることを特徴とする断熱屋根材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−526151(P2009−526151A)
【公表日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−554165(P2008−554165)
【出願日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際出願番号】PCT/NL2007/050051
【国際公開番号】WO2007/091890
【国際公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(506297485)ネーデルランデ オルガニサティー ヴール トゥーヘパストナツールウェテンスハペライク オンデルズーク テーエヌオー (30)
【Fターム(参考)】