説明

熱電用途用のドープ処理テルル化鉛

一般式(I)の化合物を含むことを特徴とする、p型またはn型導電性半導体材料:



式中:
いずれの場合も独立して
nは、PbとTeととは異なる化学元素の数であり、
1ppm≦x1...xn≦0.05
−0.05≦z≦0.05
および
n≧2
1....Anは、相互に異なり、
Li、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、As、Sb、Bi,S、Se、Br、I、Sc、Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luからなる元素群から選ばれ、
または n=1、
A1が、Ti、Zr、Ag、Hf、Cu、Gr、Nb、Taから選ばれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉛とテルル、および少なくとも一種または二種以上のドーパントを含む半導体材料、およびそれを含む熱電発電器とペルチェ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在知られている熱電発電器やペルチェ装置はそれ自体、p型およびn型のドープ処理半導体であり、片面が加熱され他面が冷却されると電荷を外部回路に輸送するため、回路に何らかの負荷があると電気的な仕事が行なわれる。この方法での熱エネルギーから電気エネルギーへの変換効率は、カルノー効率により熱力学的な制限を受ける。このため、高温側温度が1000Kで、「低温」側が400Kの場合、(1000−400):1000=60%の効率が期待される。しかしながら、現在のところ最高でも10%が達成されているのみである。
【0003】
一方このような装置に直流を印加すると、熱が一方から他方に輸送される。このようなペルチェ装置は熱ポンプとして作用するため、装置部品や車両または建物の冷却に好適である。ペルチェ原理による加熱も、常に供給エネルギー当たりより大きな熱が輸送されるため、従来の加熱法より好ましい。
【0004】
熱電効果と熱電材料に関する良い総説が、例えば、Cronin B. Vining, ITS Short Course on Thermoelectricity, Nov. 8, 1993 Yokohama, Japanで発表されている。
【0005】
現在のところ、熱電発電器は、宇宙探査機において、直流の発生やパイプラインの陰極腐食の防止や、ライトブイやラジオブイへのエネルギー補給、ラジオやテレビの作動のために使用されている。熱電発電器の利点はその信頼性が極めて高いことである。例えば、これらは大気中の湿気など大気条件に左右されることなく作動する。故障が起こりやすい物質移動がなく、電荷移動のみがおこる。燃料は火炎を発せずに連続的かつ触媒的に燃焼し、ごく少量のCOやNOx、不燃焼燃料を放出するのみである。水素から天然ガス、ガソリン、灯油、ディーゼル燃料や、ナタネ油メチルエステルなどの生物燃料まで、いずれの燃料の使用も可能である。
【0006】
したがって、熱電エネルギー変換は、水素の需給改善や再生可能なエネルギーからのエネルギー製造など、将来のニーズにたいへんうまく合致する。
【0007】
特に魅力的な用途は、電気自動車での電気エネルギーへの変換であろう。このために既存ガソリンスタンド網を変更する必要はないと考えられる。しかしこのような用途に用いるには、30%を超える効率が必要であろう。
【0008】
太陽エネルギーから電気エネルギーへの直接変換もまた、非常に魅力的である。パラボラトラフなどの集光器は、約95〜97%の効率で太陽エネルギーを集光して熱電発電器に導き、そこで電気エネルギーを発生させる。
【0009】
しかしながら、熱ポンプとして使用するには、高い効率がまた必要である。
【0010】
熱電活性物質は、その効率によりその等級が決められる。この点で熱電材料に特徴的なのは、Z係数(性能指数)と呼ばれるもので、ゼーベック係数Sと電気伝導率σと熱伝導率κにより、次式で表される。
【0011】
【数1】

【0012】
非常に小さな熱伝導率と、非常に大きな電気伝導率と非常に大きなゼーベック係数とを持ち、結果として非常に大きな性能指数を持つ熱電材料が好ましい。
【0013】
積のS2・σは、力率と呼ばれ、熱電材料の比較に用いられる。
【0014】
また、無次元の値Z・Tも、よく比較の目的で報告されている。これまでに知られている熱電材料のZ・Tの最大値は、最適温度で約1である。この最適温度を超えると、この数値Z・Tは、1より小さくなることが多い。
より精密な分析よると、効率ηは次のように計算される。
【0015】
【数2】

式中、
【0016】
【数3】

【0017】


(Mat. Sci. and Eng. B29 (1995) 228も参照)。
【0018】
したがって、目的は、非常に大きなZ値を持ち、非常に大きな作動温度差をもつ熱電材料を提供することである。固相物理の視点から克服すべき問題点が数多くある。
【0019】
大きなσをとるには、材料中の電子易動性が高いことが必要である。即ち、電子(または、p型電導性材料の場合空孔)は、原子芯に強固に結合していてはいけない。通常、高い電気伝導率σを持つ材料は、同時に高い熱伝導率を有し(ウィーデマン・フランツ則)、Zに好ましい影響を与えない。現在使用されている材料、例えばBi2Te3は、妥協の産物である。例えば、合金化することで、熱伝導率より電気伝導率の低下を少なく抑えている。したがって、US5,448,109に記載のように、合金を使用すること、例えば(Bi2390(Sb235(Sb2Se35またはBi12Sb23Te65を使用することが好ましい。
【0020】
高効率な熱電材料を得るには、さらに厳しい限界条件を満足させる必要がある。特に、大きな効率の低下を伴わずに作動条件下で何年もの間にわたり作動させるためには、これらが十分に熱的に安定でなければならない。このためには、高温下でそれ自体が熱的に安定な相や安定な相組成物が必要であり、また隣接して接触する材料中への合金成分の拡散が無視できるほど小さくなければならない。
【0021】
最近の特許文献には、熱電材料の明細書が散見される。例えばUS6,225,550やEP−A−1102334である。
【0022】
US6,225,550は、実質的には、他元素、好ましくは遷移物質でドープ処理したMgxSbzからなる材料に関する。EP−A−1102334は、珪化物、硼化物、ゲルマニウム化物、テルル化物、硫化物、セレン化物、アンチモン化物、鉛化物、および半導体酸化物からなる少なくとも一種の三元材料を含むp型またはn型ドープ処理半導体材料を開示している。
【0023】
論文「熱プレス法で得たn型(Pb1-xGex)Teの熱電特性」Proceedings ICT, XVI. International Conference on Thermoelectrics, August 26− 29, 1997, Dresden, pages 228 to 231は、式(Pbi-xGex)Te(式中、X=0〜0.15)で表される三元化合物で、さらに0.3%のBiでドープされたものの製造方法について述べている。この材料は、適当な量のPbとGe、Te、Biを、内壁を炭素でコートした石英チューブに入れ、次いで脱気し、密閉して、回転炉中で二時間かけて1000℃に加熱して得られる。続いて、この系を室温に冷却する。溶融ゾーン炉中で、1000℃で、成長速度を1mm/minとして、この(Pbi-xGex)Teのブロックを成長させる。次いで、このブロックを粉砕し、90〜250μmの大きさの粉末とする。さらに、400℃で24時間、H2/Ar雰囲気下で還元処理を行なう。この粉末を冷間圧縮し、次いで減圧下で650〜750℃で熱間圧縮する。このようにして得た材料に関して、熱電材料のゼーベック係数と電気抵抗が半導体材料中のGeTe含量Xの増加とともに上昇し、熱伝導率が半導体材料中のGeTe含量Xの増加に伴い低下することが明らかとなった。得られたゼーベック係数のうちで最もよかったのは、約−150μV/Kであり、電気抵抗は、1mΩ/cmであった。熱伝導率は、最小で2W/(m・K)であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
このような先行技術を基礎として、本発明の目的は、いろいろな応用分野に適す一連の性質を有する高効率な半導体材料(熱電活性材料)を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本目的は、本発明において、一般式(I)の化合物を含むことを特徴とする、p型またはn型導電性半導体材料により達成される。
【0026】
【化1】

【0027】
式中:
いずれの場合も独立して、
nは、PbとTeとは異なる化学元素の数であり、
1ppm≦x1...xn≦0.05
−0.05≦z≦0.05
および
n≧2
1...Anは、相互に異なり、
Li、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、As、Sb、Bi,S、Se、Br、I、Sc、Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luからなる元素群から選ばれ、
好ましくは、相互に異なり、
Al、In、Si、Ge、Sn、Sb、Bi、Se、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、Cu、Ag、Auからなる元素群から選ばれ、
特に、相互に異なり
In、Ge、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、Cu、Agからなる元素群から選ばれ、
または
n=1、
A1が、Ti、Zr、Ag、Hf、Cu、Gr、Nb、Taから選ばれる。
【0028】
nは、好ましくは2、3または4であり、より好ましくは2または3、特に2である.これは、少なくとも四元化合物である。n=1の場合、これは三元化合物であり、例えばまたは好ましくは、(Pb,Ti)Te、(Pb,Zr)Teまたは(Pb,Ag)Te型の三元化合物である。
【0029】
したがって、本発明は、硬い表現で表すと、PbTeを原料とし、
・PbまたはTeが一種または少なくとも二種のドーパントで置換されるもの、
・一種または少なくとも二種のドーパントがPbTeに添加されるもの、または
・一種または少なくとも二種のドーパントがPbまたはTeの位置を占めるものに関する。なおこの際、それぞれのPb:Te比は、初めの1:1から変化する。
【0030】
これら一連の本発明の材料においては、p型導電体では、ゼーベック係数が一般的には150〜400μV/Kの範囲となり、n型導電体では、270℃の温度差で、高温側が300℃の場合、一般的には−150〜−400μV/Kの範囲となる。室温で得られる力率は、通常少なくとも20μW/K2・cmである。
【0031】
本発明によれば、上記のゼーベック係数と力率が保持される限り、これらの材料が他の化合物またはドーパントを含んでいてもよい。例えば、この化合物の0〜10重量%が、同様にp型またはn型ドーパントとして作用する他の金属または金属化合物で置き換わっていてもよい。
【0032】
本発明の材料は、一般的には、反応性の粉砕(grinding)により、または好ましくは特定の構成元素または合金の混合物との共溶融と反応により製造される。反応性粉砕または好ましくは共溶融の反応時間が少なくとも1時間であることが、一般に有利であった。
【0033】
共溶融と反応は、好ましくは少なくとも1時間、より好ましくは少なくとも6時間、特に少なくとも10時間にわたり行う。溶融工程では、出発混合物を混合してもよいし、混合しなくてもよい。出発混合物を混合する場合、混合物の均一性を保証するには、この目的に好適に使用される装置は回転炉または傾注炉である。
【0034】
混合を行わない場合は、通常均一な材料を得るために溶融時間を長くする必要がある。混合を行うと、早い段階で均一な混合物が得られる。
【0035】
出発混合物を特に混合しない場合には、溶融時間は、通常2〜50時間、特に30〜50時間である。
【0036】
共溶融は、通常、混合物の少なくとも一種の成分が溶融して材料が溶融状態となる温度で行われる。一般に、この溶融温度は、少なくとも800℃、好ましくは少なくとも950℃である。通常、溶融温度は800〜1100℃の範囲であり、好ましくは950〜1050℃の範囲である。
【0037】
溶融混合物を放冷後、この材料を、通常少なくとも100℃、好ましくは少なくとも200℃で、得られる半導体材料の融点未満の温度で焼成する。典型的には、焼成温度は450〜750℃であり、好ましくは550〜700℃である。
【0038】
この熱処理は、好ましくは少なくとも1時間、より好ましくは少なくとも2時間、特に少なくとも4時間行われる。通常、焼成時間は1〜8時間である、好ましくは6〜8時間である。本発明のある実施様態においては、得られる半導体材料の融点より100〜500℃低い温度で熱処理を行う。好ましい温度範囲は、得られる半導体材料の融点より150〜350℃低い温度範囲である。
【0039】
本発明の熱電材料は、通常、加熱可能な石英チューブ中で製造される。回転炉及び/又は傾注炉を用いて関連成分の混合を確実にしてもよい。変換終了後にこの炉を冷却する。続いて、この石英チューブを炉から取り出し、ブロック状で存在する半導体材料をスライスに切断する。これらのスライスをさらに切断して、長さが約1〜5mmの部品とする。これより熱電モジュールが得られる。
【0040】
石英チューブに代えて、半導体材料に対して不活性な他の材料、例えばタンタル製のチューブを使用することもできる。この材料の熱伝導率が石英より大きいため、この方法が好ましい。
【0041】
チューブに代えて適当な形状の容器を使用することもできる。半導体材料に対して不活性であるなら、他の材料を、例えばグラファイトを、容器の材料として用いることも可能である。
【0042】
本発明のある実施様態においては、冷却された材料を、適当な温度で湿式、乾式または他の方法で粉砕し、従来より用いられている10μm未満の粒度の本発明の半導体材料としてもよい。この粉砕された本発明の材料を、熱間または冷間押出により、または好ましくは熱間または冷間圧縮により好ましい形状の成形物とする。このように圧縮された成形物の成形密度を、非圧縮状態の粗材料の成形密度と較べて、好ましくは50%を超えて大きく、より好ましくは80%を超えて大きくする必要がある。本発明の材料の厚密化を改善する化合物を、粉末状の本発明の材料に対して、好ましくは0.1〜5体積%、より好ましくは0.2〜2体積%の量で添加してもよい。本発明の材料に添加する添加物は、好ましくはこの半導体材料に対して不活性である必要があり、また好ましくは本発明の材料の焼結温度未満の温度への加熱中に、適当なら不活性な状態及び/又は減圧下で本発明の材料から抜け出てくるものである。圧縮後の圧縮された部品は、好ましくは焼結炉に入れられ、そこで、好ましくは融点よりせいぜい20℃低い温度で加熱される。
【0043】
圧縮後の部品は、通常は少なくとも100℃、好ましくは少なくとも200℃であり、得られる半導体材料の融点未満の温度で焼結される。通常、焼結温度は、350〜750℃であり、好ましくは600〜700℃である。スパーク・プラズマ焼結(SPS)またはマイクロ波焼結を行ってもよい。
【0044】
焼結時間は、好ましくは0.5時間、より好ましくは少なくとも1時間、特に少なくとも2時間である。通常、焼成時刻は、0.5〜5時間であり、好ましくは1〜3時間である。本発明のある実施様態においては、焼結を、得られる半導体材料の融点より100〜600℃低い温度で行う。好ましい温度範囲は、得られる半導体材料の融点より150〜350℃低い温度範囲である。水素または保護ガス雰囲気下で、例えばアルゴン雰囲気下で焼結を行うことが好ましい。
【0045】
このようにして、圧縮後の部品を理論嵩密度の95〜100%にまで焼結することが好ましい。
【0046】
全体として、この結果得られる本発明の方法のある好ましい実施様態は、次の加工工程を含むことを特徴とするものである。
(1)少なくとも四元または三元の化合物の、特定の構成元素またはその合金の混合物を共溶融する工程;
(2)加工工程(1)で得られた材料を粉砕する工程;
(3)加工工程(2)で得られた材料を成形物へ圧縮する工程、および
(4)加工工程(3)で得られた成形物を焼結する工程。
【0047】
本発明はまた、上記の半導体材料、および上記の方法により得られる半導体材料の、熱電発電器またはペルチェ装置としての利用法を提供する。
【0048】
本発明はまた、上記の半導体材料及び/又は上記の方法により得られる半導体材料を含む熱電発電器またはペルチェ装置を提供する。
【0049】
本発明はまた、直列に繋がる熱電的に活性な脚部と上記の複数枚の熱電材料の薄層とを併用する熱電発電器またはペルチェ装置の製造方法を提供する。
【0050】
この方法の第一の実施様態においては、熱電発電器またはペルチェ装置が、以下のように製造される:
第一の種類の導電体(p型または型のドープ処理品)からなる本発明の半導体を、従来の半導体製造技術により、特にCVD、スパッタリング法または分子線エピタキシにより基板上に付着させる。
【0051】
本発明の半導体は、同様にスパッタリング法または分子線エピタキシにより、この半導体材料の導電体の種類が最初に用いた半導体材料(n型またはp型ドープ処理品)と異なる他の基板に付着される。
【0052】
これらの二枚の基板を、交互にサンドイッチ状に積み重ね、電荷の種類の異なる熱電活性な脚部を相互に積み重ねる。
【0053】
個々の熱電活性を持つ脚部の径は、好ましくは100μm未満、より好ましくは50μm未満、特に20μm未満で、およびその厚みは、好ましくは5〜100μm、より好ましくは10〜50μm、特に15〜30μmである。一個の熱電的に活性な脚部の占める表面積は、好ましくは1mm2未満、好ましくは0.5mm2未満、特に0.4mm2未満である。
【0054】
第二の実施形態においては、この熱電発電器またはペルチェ装置が、電荷の種類の異なる本発明の半導体材料(p型およびn型ドープ処理品)からなる交互層を支持体上に形成するのに、適当な堆積法、例えば分子線エピタキシが用いて、製造される。層厚は、いずれの場合も、好ましくは5〜100nmであり、より好ましくは5〜50nm、特に5〜20nmである。
【0055】
熱電発電器またはペルチェ装置の製造に当たり、当業界の熟練者には公知の方法を、例えば、WO98/44562、US5,448,109、EP−A−1102334あるいはUS5,439,528に記載の方法により、本発明の半導体材料を結合させてもよい。
【0056】
本発明の熱電発電器またはペルチェ装置は、一般的な意味で、現在の熱電発電器とペルチェ装置の範囲を広げるものである。熱電発電器またはペルチェ装置の化学組成を変えることで、多様な用途で必要要件を満たすいろいろなシステムを提供することができるようになる。したがって、本発明の熱電発電器またはペルチェ装置は、これらのシステムの適用範囲を広げることとなる。
【0057】
本発明はまた、本発明の熱電発電器または本発明のペルチェ装置の利用法を提供する。用途としては、次のものがあげられる。
熱ポンプ
・椅子やソファなどの家具、車両、建物の温調用
・冷蔵庫や(洗濯物)乾燥機内
・特に次のような分離工程での流体の同時加熱・冷却、
−吸収
−乾燥
−晶析
−蒸着
−蒸留
・次のような熱源を利用する発電器
−太陽エネルギー
−地熱
−化石燃料の燃焼熱
−車両や固定型装置からの排熱
−蒸着of液体物質の蒸発の吸熱器
−生物的な熱源
・冷却電子部品の冷却用
【0058】
発明はまた、少なくとも一種の本発明の熱電発電器または本発明のペルチェ装置を含む、熱ポンプ、冷蔵庫、(洗濯物)乾燥機、または熱源を利用する発電器に関する。なお、この(洗濯物)乾燥機内では、乾燥すべき材料が直接的または間接的に加熱され、乾燥の過程で発生する水蒸気または溶媒蒸気が直接的または間接的に冷却される。
【0059】
ある好ましい実施様態においては、この乾燥機が洗濯物乾燥機であり、乾燥される材料が洗濯物である。
【0060】
以下に、実施例を参照しながら本発明を詳述する。
【実施例】
【0061】
ゼーベック係数は、測定用材料を高温と低温に接触させて測定した。接点は電気的に加熱し、高温側接点の温度は200〜300℃であった。低温側は室温に維持した。このため、ΔTは通常150〜280℃であった。それぞれ、高温接点と低温接点との間がこの温度差であるときに測定される電圧を、ゼーベック係数とした。
【0062】
電気伝導率は、室温で四点測定法で測定した。本方法は当業界の熟練者には公知である。

四元材料

(実施例1)
【0063】
Pb0.992Ge0.005Ti0.003Te1.003(純度:Pb>99.999%、Te>99.999%、Ge>99.999%、Ti>99.99%)の組成に相当する量の元素の粉末を秤量し、内径1cmの石英アンプルに入れた。試料の量は20gであった。このアンプルを脱気し密閉した。続いて、炉中で、このアンプルを500K・h-1の速度で980℃に加熱し、この温度で6時間維持した。炉を傾けてアンプルの内容物を連続的に混合した。反応終了後、直立させた炉を、100K・h-1の速度で600℃まで冷却し、この材料をこの温度で24時間、熱処理した。次いで、炉を、60K・h-1の速度で室温まで冷却した。
【0064】
緻密な、銀光沢を持つ金属塊が得られ、簡単にアンプルから取り出すことができた。ダイヤモンドワイヤソーを用いて、この金属塊を約2mm厚のスライスに切断し、これを用いて、まず室温で電気伝導率を、次いでゼーベック係数を測定した。
【0065】
電気伝導率σは、1641.4S・cm-1であり、ゼーベック係数Sは、−165.4μVK-1(Tcoid:50℃、Thot:280℃)であり、これは、力率S2・σとして、44.9μW・K-2・cm-1に相当する。

(実施例2)
【0066】
Pb0.992Ge0.005Ti0.003Te1.003(純度:Pb>99.999%、Te>99.999%、Ge>99.999%、Zr>99.95%)の組成に相当する量の元素の粉末を秤量し、内径1cmの石英アンプルに入れた。試料の量は20gであった。このアンプルを脱気し密閉した。続いて、炉中で、このアンプルを500K・h-1の速度で980℃に加熱し、この温度で6時間維持した。炉を傾けてアンプルの内容物を連続的に混合した。反応終了後、直立させた炉を、100K・h-1の速度で600℃まで冷却し、この材料をこの温度で24時間、熱処理した。次いで、炉を、60K・h-1の速度で室温まで冷却した。
【0067】
緻密な、銀光沢を持つ金属塊が得られ、簡単にアンプルから取り出すことができた。ダイヤモンドワイヤソーを用いて、この金属塊を約2mm厚のスライスに切断し、これを用いて、まず室温で電気伝導率を、次いでゼーベック係数を測定した。
【0068】
電気伝導率σは、2485.9S・cm-1であり、ゼーベック係数Sは、−132.1μVK-1(Tcoid:50℃、Thot:280℃)であり、これは、力率S2・σとして、43.4μW・K-2・cm-1に相当する。

(実施例3)
【0069】
Pb0.99Bi0.005Al0.005Te1.001(純度:Pb>99.999%、Te>99.999%、Al>99.999%、Bi>99.998%)の組成に相当する量の元素の粉末を秤量し、内径1cmの石英アンプルに入れた。試料の量は20gであった。このアンプルを脱気し密閉した。続いて、炉中で、このアンプルを100K・h-1の速度で1000℃に加熱し、この温度で15時間維持した。炉を傾けてアンプルの内容物を連続的に混合した。反応終了後、直立させた炉の電源を切り、室温まで冷却させた。
【0070】
緻密な、いぶし銀光沢を持つ金属塊が得られ、簡単にアンプルから取り出すことができた。ダイヤモンドワイヤソーを用いて、この金属塊を約2mm厚のスライスに切断し、これを用いて、まず室温で電気伝導率を、次いでゼーベック係数を測定した。
【0071】
電気伝導率σは、992.0S・cm-1であり、ゼーベック係数Sは、−154.6μVK-1(Tcoid:50℃、Thot:280℃)であり、これは、力率S2・σとして、23.7μW・K-2・cm-1に相当する。

(実施例4)
【0072】
Pb0.989Ge0.01Ag0.001Te1.001(純度:Pb>99.999%、Te>99.999%、Ge>99.999%、Ag>99.9999%)の組成に相当する量の元素の粉末を秤量し、内径1cmの石英アンプルに入れた。試料の量は20gであった。このアンプルを脱気し密閉した。続いて、炉中で、このアンプルを500K・h-1の速度で980℃に加熱し、この温度で6時間維持した。炉を傾けてアンプルの内容物を連続的に混合した。反応終了後、直立させた炉を、100K・h-1の速度で600℃まで冷却し、この材料をこの温度で24時間、熱処理した。次いで、炉を、60K・h-1の速度で室温まで冷却した。
【0073】
緻密な、銀光沢を持つ金属塊が得られ、簡単にアンプルから取り出すことができた。ダイヤモンドワイヤソーを用いて、この金属塊を約2mm厚のスライスに切断し、これを用いて、まず室温で電気伝導率を、次いでゼーベック係数を測定した。
【0074】
電気伝導率σは、407.3S・cm-1であり、ゼーベック係数Sは、−326.5μVK-1(Tcoid:50℃、Thot:280℃)であり、これは、力率S2・σとして、43.4μW・K-2・cm-1に相当する。

(実施例5)
【0075】
Pb0.987Ge0.001Sn0.003Te1.001(純度:Pb>99.999%、Te>99.999%、Ge>99.999%、Sn>99.9985%)の組成に相当する量の元素の粉末を秤量し、内径1cmの石英アンプルに入れた。試料の量は20gであった。このアンプルを脱気し密閉した。続いて、炉中で、このアンプルを500K・h-1の速度で980℃に加熱し、この温度で6時間維持した。炉を傾けてアンプルの内容物を連続的に混合した。反応終了後、直立させた炉を、100K・h-1の速度で600℃まで冷却し、この材料をこの温度で24時間、熱処理した。次いで、炉を、60K・h-1の速度で室温まで冷却した。
【0076】
緻密な、銀光沢を持つ金属塊が得られ、簡単にアンプルから取り出すことができた。ダイヤモンドワイヤソーを用いて、この金属塊を約2mm厚のスライスに切断し、これを用いて、まず室温で電気伝導率を、次いでゼーベック係数を測定した。
【0077】
電気伝導率σは、249.4S・cm-1であり、ゼーベック係数Sは、−290.4μVK-1(Tcoid:40℃、Thot:280℃)であり、これは、力率S2・σとして、21.0μW・K-2・cm-1に相当する。

三元材料

(実施例1)
【0078】
Pb0.997Zr0.003Te1.003(純度:Pb>99.999%、Te>99.999%、Zr>99.95%)の組成に相当する量の元素の粉末を秤量し、内径1cmの石英アンプルに入れた。試料の量は20gであった。このアンプルを脱気し密閉した。続いて、炉中で、このアンプルを500K・h-1の速度で980℃に加熱し、この温度で6時間維持した。炉を傾けてアンプルの内容物を連続的に混合した。反応終了後、直立させた炉を、100K・h-1の速度で600℃まで冷却し、この材料をこの温度で24時間、熱処理した。次いで、炉を、60K・h-1の速度で室温まで冷却した。
【0079】
緻密な、銀光沢を持つ金属塊が得られ、簡単にアンプルから取り出すことができた。ダイヤモンドワイヤソーを用いて、この金属塊を約2mm厚のスライスに切断し、これを用いて、まず室温で電気伝導率を、次いでゼーベック係数を測定した。
【0080】
電気伝導率σは、3895.7S・cm-1であり、ゼーベック係数Sは、−139.4μVK-1(Tcoid:40℃、Thot:280℃)であり、これは、力率S2・σとして、75.7μW・K-2・cm-1に相当する。

(実施例2)
【0081】
Pb0.997Zr0.003Te1.003(純度:Pb>99.999%、Te>99.999%、Zr>99.95%)の組成に相当する量の元素の粉末を秤量し、内径1cmの石英アンプルに入れた。試料の量は20gであった。このアンプルを脱気し密閉した。続いて、炉中で、このアンプルを500K・h-1の速度で980℃に加熱し、この温度で6時間維持した。炉を傾けてアンプルの内容物を連続的に混合した。反応終了後、直立させた炉を、100K・h-1の速度で600℃まで冷却し、この材料をこの温度で24時間、熱処理した。次いで、炉を、60K・h-1の速度で室温まで冷却した。
【0082】
緻密な、銀光沢を持つ金属塊が得られ、簡単にアンプルから取り出すことができた。ダイヤモンドワイヤソーを用いて、この金属塊を約2mm厚のスライスに切断し、これを用いて、まず室温で電気伝導率を、次いでゼーベック係数を測定した。
【0083】
電気伝導率σは、23587.4S・cm-1であり、ゼーベック係数Sは、−137.7μVK-1(Tcoid:40℃、Thot:280℃)であり、これは、力率S2・σとして、68.0μW・K-2・cm-1に相当する。

(実施例3)
【0084】
Pb0.999Ag0.001Te1.003(純度:Pb>99.999%、Te>99.999%、Ag>99.9999%)の組成に相当する量の元素の粉末を秤量し、内径1cmの石英アンプルに入れた。試料の量は20gであった。このアンプルを脱気し密閉した。続いて、炉中で、このアンプルを500K・h-1の速度で980℃に加熱し、この温度で6時間維持した。炉を傾けてアンプルの内容物を連続的に混合した。反応終了後、直立させた炉を、100K・h-1の速度で600℃まで冷却し、この材料をこの温度で24時間、熱処理した。次いで、炉を、60K・h-1の速度で室温まで冷却した。
【0085】
緻密な、銀光沢を持つ金属塊が得られ、簡単にアンプルから取り出すことができた。ダイヤモンドワイヤソーを用いて、この金属塊を約2mm厚のスライスに切断し、これを用いて、まず室温で電気伝導率を、次いでゼーベック係数を測定した。
【0086】
電気伝導率σは、451.2S・cm-1であり、ゼーベック係数Sは、−314.5μVK-1(Tcoid:40℃、Thot:280℃)であり、これは、力率S2・σとして、44.6μW・K-2・cm-1に相当する。

(実施例4)
【0087】
Pb0.995Cu0.005Te1.003(純度:Pb>99.999%、Te>99.999%、Cu:電気分解純度)の組成に相当する量の元素の粉末を秤量し、内径1cmの石英アンプルに入れた。試料の量は20gであった。このアンプルを脱気し密閉した。続いて、炉中で、このアンプルを500K・h-1の速度で980℃に加熱し、この温度で6時間維持した。炉を傾けてアンプルの内容物を連続的に混合した。反応終了後、直立させた炉を、100K・h-1の速度で600℃まで冷却し、この材料をこの温度で24時間、熱処理した。次いで、炉を、60K・h-1の速度で室温まで冷却した。
【0088】
緻密な、銀光沢を持つ金属塊が得られ、簡単にアンプルから取り出すことができた。ダイヤモンドワイヤソーを用いて、この金属塊を約2mm厚のスライスに切断し、これを用いて、まず室温で電気伝導率を、次いでゼーベック係数を測定した。
【0089】
電気伝導率σは、1936.5S・cm-1であり、ゼーベック係数Sは、−136.7μVK-1(Tcoid:40℃、Thot:280℃)であり、これは、力率S2・σとして、36.2μW・K-2・cm-1に相当する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)の化合物を含むことを特徴とする、p型またはn型導電性半導体材料:
【化1】

式中:
いずれの場合も独立して
nは、PbとTeとは異なる化学元素の数であり、
1ppm≦x1...xn≦0.05
−0.05≦z≦0.05
および
n≦2
1...Anは、相互に異なり、
Li、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、As、Sb、Bi,S、Se、Br、I、Sc、Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luからなる元素群から選ばれ、
またはn=1、
1が、Ti、Zr、Ag、Hf、Cu、Gr、Nb、Taから選ばれる。
【請求項2】
1...Anが、相互に異なり、Al、In、Si、Ge、Sn、Sb、Bi、Se、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、Cu、Ag、Auからなる元素群から選ばれる請求項1に記載の半導体材料。
【請求項3】
1...Anが、相互に異なり、In、Ge、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、Cu、Agからなる元素群から選ばれる請求項1または2に記載の半導体材料。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の半導体材料の製造方法であって、前記化合物が、特定の構成元素またはその合金の混合物を反応性粉砕または共溶融して製造されることを特徴とする方法。
【請求項5】
次の加工工程を含むことを特徴とする請求項4記載の本方法:
(1)特定の構成元素またはその合金の混合物を共溶融する工程、
(2)加工工程(1)で得られた材料を粉砕する工程、
(3)加工工程(2)で得られた材料を圧縮して成形物とする工程、および
(4)加工工程(3)で得られた成形物を焼結する工程。
【請求項6】
請求項4および5のいずれか一項に記載の方法により得られることを特徴とする半導体材料。
【請求項7】
請求項1〜3または6のいずれか一項に記載の半導体材料を、熱電発電器またはペルチェ装置として使用する方法。
【請求項8】
請求項1〜3または6のいずれか一項に記載の半導体材料を含むことを特徴とする
熱電発電器またはペルチェ装置。
【請求項9】
請求項8に記載の熱電発電器またはペルチェ装置を、腰掛け用家具、車両及び建物の温度調節器のための、冷蔵庫及び(洗濯物)乾燥機内において、または分離工程中の流体の同時の加熱および冷却のための、熱ポンプとして、或いは熱源を利用するかまたは電子部品の冷却のための発電器として利用する方法。
【請求項10】
少なくとも一種の請求項8記載の熱電発電器またはペルチェ装置を含むことを特徴とする熱ポンプ、冷蔵庫、(洗濯物)乾燥機、熱源利用の発電器。

【公表番号】特表2009−529799(P2009−529799A)
【公表日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−558741(P2008−558741)
【出願日】平成19年1月29日(2007.1.29)
【国際出願番号】PCT/EP2007/050851
【国際公開番号】WO2007/104601
【国際公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】