説明

燃料および酸化剤を改質油に転換するための改質装置および方法

本発明は、燃料(12)と酸化剤(16、18、20)を反応させて改質油(22)にするための改質装置に関する。前記改質装置は、酸化ゾーン(24)および改質ゾーン(26)を備える。燃料(12)と酸化剤(16、18、20)の混合物を、前記酸化ゾーン(24)に供給し、前記燃料(12)の少なくとも部分酸化に続いて、少なくとも一部を前記改質ゾーン(26)に供給する。本発明によれば、前記燃料(14)をさらに、前記改質ゾーン(26)に供給することができ、熱(28)を前記改質ゾーン(26)に供給することができる。本発明はさらに、燃料(12)および酸化剤(16、18、20)を反応させて改質油にする方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料および酸化剤を改質油に転換するための改質装置であって、酸化ゾーンおよび改質ゾーンを備え、ここで、燃料と酸化剤の混合物は、酸化ゾーンに供給され、そして、燃料を少なくとも部分酸化した時に、当該混合物は、少なくとも部分的に、改質ゾーンに供給される改質装置に関する。
【0002】
本発明は、さらに、燃料および酸化剤を酸化ゾーンおよび改質ゾーンを有する改質装置中で改質油に転換するための方法であって、ここで、燃料と酸化剤の混合物を酸化ゾーンに供給し、燃料を少なくとも部分酸化した時に、当該混合物を少なくとも部分的に改質ゾーンに供給する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
一般的な改質装置および一般的な方法は、多様な利用分野を提供する。特に、それらは、電気化学的プロセスに基づいて電気エネルギーを発生させることができる水素に富んだガス混合物を燃料電池に供給するのに役に立つ。このような燃料電池は、例えば、自動車分野で補助電源、いわゆるAPU(「補助電源装置」)として使用される。
【0004】
燃料および酸化剤を改質油に転換するための改質プロセスは、様々な概念に従って進行する。例えば、燃料の一部分が発熱反応で酸化される接触改質が知られている。この接触改質は、発熱が大きいという欠点を有しており、そして、それは、システム構成要素、特に触媒コンバータを不可逆的に害する恐れがある。
【0005】
炭化水素から改質油を生成する他の実行可能な方法は、「水蒸気改質」である。このプロセスでは、炭化水素は、水蒸気を利用して、炭化水素を吸熱反応において水素に転換される。
【0006】
発熱反応に基づく改質と、水蒸気改質のためのエネルギーを炭化水素の燃焼から取り出す吸熱反応による水素の生成というこれら両概念の組合せは、自熱的改質と呼ばれる。ここで、水を供給する可能性を提供しなければならないという追加の欠点が生じる。酸化ゾーンと改質ゾーンの間の大きな温度勾配は、システム全体の温度管理においてさらなる問題を構成する。
【0007】
改質装置から分離されている酸化装置を有する改質装置の例は、特許文献1に記載されている。
【特許文献1】独国特許出願公開第199,43,248,A1号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、記載された問題を少なくとも部分的に克服し、また、特に高温および大きな温度勾配による問題がそれぞれ生じない、燃料および酸化剤を改質油に転換するための改質装置および方法を提供する目的に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、独立請求項の特徴により解決される。
【0010】
本発明の有利な実施形態は、従属請求項において定義されている。
【0011】
本発明は、燃料をさらに改質ゾーンに供給することができる点と、熱を改質ゾーンに供給することができるという点において、一般的な改質装置を上回るものである。こうしてさらに供給された燃料は、酸化ゾーンからの排気ガスと共に、改質プロセスのための出発ガス混合物を形成する。排気ガスと燃料の混合のため、小さいλ値(例えば、λ=0.4)が規定され、吸熱改質反応が熱を供給することによって起こり得る。
【0012】
この場合では、酸化ゾーン内での発熱酸化からの熱を、改質ゾーンに供給できることが特に有益である。すなわち、プロセス全体の正味の発熱が改質装置の温度管理において問題を引き起こさないように、酸化ゾーンから得られる熱エネルギーは改質反応の過程で転換される。
【0013】
改質ゾーンに、酸化剤をさらに供給できる酸化剤サプライを備えることが実現されると有利である。この方式では、改質を最適化するために、改質に影響を与えるためのさらなるパラメータを提供する。
【0014】
本発明は、追加の燃料を注入および混合物形成ゾーンに供給できるという点で、また追加の燃料が注入および混合物形成ゾーンから改質ゾーンに流れ得るという点で、さらに発展していることが非常に有益である。すなわち、この注入および混合物形成ゾーンは、改質反応のためのよく混合された出発ガスが改質ゾーンに供給されるように、改質ゾーンの上流に配置されている。
【0015】
この場合では、酸化ゾーンを出るガス混合物の熱エネルギーによって、追加の燃料を少なくとも部分的に蒸発させることが特に有益である。したがって、酸化からの反応熱を、燃料の蒸発プロセスのためにも有益に利用することができる。
【0016】
さらに、注入および混合物形成ゾーンをバイパスして、酸化ゾーンで生成されたガス混合物を改質ゾーンに部分的に供給することができることが有益となり得る。それによって、改質装置を出る改質油のさらなる改善をその使用に関して実現できるというような改質プロセスに影響を与えるさらなる可能性が提供される。
【0017】
本発明は、追加の燃料を改質ゾーンに供給するという点で、また熱を改質ゾーンに供給するという点で、一般的な方法の域を超えて確立されている。この方式では、本発明に係る改質装置の利点および特有の特徴は、単一の方法の過程でも実現される。これは、本発明に係る方法の以下の特に好ましい実施形態にも適用する。
【0018】
この方法は、酸化ゾーンにおける発熱酸化からの熱を改質ゾーンに供給するという点で、さらに発展していることが有益である。
【0019】
さらに、改質ゾーンは追加の酸化剤を供給する酸化剤サプライを備えることが有益となり得る。
【0020】
当該方法の範囲内では、追加の燃料を注入および混合物形成ゾーンに供給すること、および追加の燃料が注入および混合物形成ゾーンから改質ゾーンに流れることが好ましい。
【0021】
当該方法に関しては、酸化ゾーンを出るガス混合物の熱エネルギーによって、追加の燃料を少なくとも部分的に蒸発させることを想定すると有益である。
【0022】
さらに、注入および混合物形成ゾーンをバイパスして、酸化ゾーンで生成されたガス混合物を改質ゾーンに部分的に供給することが実現され得る。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、酸化ゾーンと改質ゾーンを分離することによって、また酸化ゾーンからの排気ガスをさらに供給された燃料と混合させることによって、次の改質についての良好な前提条件を提供し、および/または改質プロセスについての排気ガスおよび酸化剤のさらなる供給により最適化することができるガス混合物を生成できるという結論に基づいている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
次に、添付図面および好ましい実施形態を参照しながら、本発明を例によって説明する。
【0025】
図1は、本発明に係る改質装置の概略図を示す。燃料12および酸化剤16は、それぞれのサプライによって、改質装置10に供給されることができる。燃料12については、例えばディーゼルを考慮することができ、酸化剤16は通常は空気である。初期の燃焼において瞬時に生成された反応熱は、任意に設けられている冷却ゾーン36において部分的に放出されることができる。次いで、混合物は、さらに改質ゾーン26内に配列されたパイプとして実現され得る酸化ゾーン24に進む。他の実施例では、酸化ゾーンは、改質ゾーン26内に配列された複数のパイプまたは特有のパイプで実現される。酸化ゾーン内では、λ≫1を有する発熱反応において、燃料および酸化剤の転換が起こる。それによって生成されたガス混合物32は、注入および混合物形成ゾーン30に入り、そして、そこで、注入された燃料14と混合される。それによって、ガス混合物32の熱エネルギーは、燃料14の蒸発を後押しすることができる。さらに、注入および混合物形成ゾーン30に、酸化剤を供給することが実現され得る。次いで、こうして形成された混合物は改質ゾーン26に入り、そして、そこで、例えばλ≫0.4を有する吸熱反応において当該混合物は転換される。吸熱反応のために必要とされる熱28は、酸化ゾーン24から放出される。改質プロセスを最適化するためには、酸化剤18をさらに改質ゾーン26に供給する。さらに、注入および混合物形成ゾーン30をバイパスして、酸化ゾーン24で生成されたガス混合物34の一部分を改質ゾーン26に直接供給することが可能である。次いで、改質油22は改質ゾーン26から流出して、次の利用のために役に立つ。
【0026】
図2は、本発明による方法を説明するためのフローチャートを示す。ステップS01では、燃料および酸化剤を酸化ゾーンに供給する。その後、ステップS02では、燃料の少なくとも部分酸化が起こる。ステップS03によれば、酸化ゾーンを出るガス混合物を、注入およびガス形成ゾーンに供給する。さらに、ステップS04では、注入およびガス形成ゾーンに、追加の燃料を供給する。次いで、注入および混合物形成ゾーンで生成された混合物を、ステップS05で改質ゾーンに供給し、そして、そこで、ステップS06で発熱酸化の反応熱を利用して吸熱反応において当該混合物を改質する。ステップS07では、改質油を抽出する。
【0027】
先行する説明、図面、および特許請求の範囲において開示された本発明の特徴は、個別にかつ組み合せて、本発明を実施するのに不可欠となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る改質装置の概略図である。
【図2】本発明に係る方法を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0029】
12 燃料
14 燃料
16 酸化剤
18 酸化剤
20 酸化剤
22 改質油
24 酸化ゾーン
26 改質ゾーン
28 熱
30 注入および混合物形成ゾーン
34 ガス混合物
36 冷却ゾーン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料(12)および酸化剤(16、18、20)を改質油(22)に転換するための改質装置であって、
酸化ゾーン(24)および改質ゾーン(26)を備え、
燃料(12)と酸化剤(16、18、20)の混合物を前記酸化ゾーン(24)に供給することができ、
前記燃料(12)を少なくとも部分酸化した時に、前記混合物を少なくとも部分的に前記改質ゾーンに供給することができ、
燃料(14)を前記改質ゾーン(26)にさらに供給することができ、
熱(28)を前記改質ゾーン(26)に供給できることを特徴とする改質装置。
【請求項2】
前記酸化ゾーン(24)内での発熱酸化からの熱(28)を、前記改質ゾーン(26)に供給できることを特徴とする請求項1に記載の改質装置。
【請求項3】
前記改質ゾーン(26)が、酸化剤(16、18、20)をさらに供給することができる酸化剤サプライを備えることを特徴とする請求項1または2に記載の改質装置。
【請求項4】
前記追加の燃料(14)を、注入および混合物形成ゾーン(30)に供給することができ、
前記追加の燃料(14)が、前記注入および混合物形成ゾーン(30)から前記改質ゾーン(26)に流れ得ることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の改質装置。
【請求項5】
前記酸化ゾーン(24)を出る前記ガス混合物(34)の熱エネルギーによって、前記追加の燃料(14)を、少なくとも部分的に蒸発させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の改質装置。
【請求項6】
前記酸化ゾーン(24)で生成された前記ガス混合物(34)を、前記注入および混合物形成ゾーン(30)をバイパスして、前記改質ゾーンに部分的に供給することができることを特徴とする請求項4または5に記載の改質装置。
【請求項7】
燃料(12)および酸化剤(16、18、20)を、酸化ゾーン(24)および改質ゾーン(26)を有する改質装置中で改質油(22)に転換するための方法であって、
燃料(12)と酸化剤(16、18、20)の混合物を、前記酸化ゾーン(24)に供給し、
前記燃料(12)を少なくとも部分酸化した時に、前記混合物を少なくとも部分的に前記改質ゾーン(26)に供給し、
追加の燃料(14)を、前記改質ゾーン(26)に供給し、
熱(28)を、前記改質ゾーン(26)に供給することを特徴とする方法。
【請求項8】
前記酸化ゾーン(24)内での発熱酸化からの熱(28)を、前記改質ゾーン(26)に供給することを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記改質ゾーン(26)が、追加の酸化剤(16、18、20)を供給する酸化剤サプライを備えることを特徴とする請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記追加の燃料(14)を、注入および混合物形成ゾーン(30)に供給し、
前記追加の燃料(14)が、前記注入および混合物形成ゾーン(30)から前記改質ゾーン(26)に流れることを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記酸化ゾーン(24)を出る前記ガス混合物(34)の熱エネルギーによって、前記追加の燃料(14)を、少なくとも部分的に蒸発させることを特徴とする請求項7〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記酸化ゾーン(24)で生成された前記ガス混合物(34)を、前記注入および混合物形成ゾーン(30)をバイパスして、前記改質ゾーンに部分的に供給することを特徴とする請求項10または11に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−516328(P2007−516328A)
【公表日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−544209(P2006−544209)
【出願日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【国際出願番号】PCT/DE2004/002758
【国際公開番号】WO2005/058751
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(591018763)ベバスト・アクチィエンゲゼルシャフト (102)
【Fターム(参考)】