説明

燃料カートリッジ

【課題】燃料漏れを確実に抑えることができ、安全性を高めることができる燃料カートリッジを提供する。
【解決手段】カートリッジ本体10の燃料供給口11を、シール部材20により直接塞ぐ。物流時などにおける振動および環境温度または気圧の変動に対して、燃料漏れが確実に抑えられ、安全性が向上する。更に、カートリッジ本体10を、アルミラミネートフィルムなどの袋状の包装部材に収容し、物流時においてカートリッジ本体10を保護すると共にシール部材20の意図しない剥離等を防止するようにしてもよい。カートリッジ本体10に、燃料供給口11のほかに、大気連通口を設け、これら燃料供給口11および大気連通口をシール部材20で直接塞ぐようにしてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池に用いられる燃料カートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、アノード電極(燃料電極)とカソード電極(酸素電極)との間に電解質が配置された構成を有し、アノード電極には燃料、カソード電極には酸化剤がそれぞれ供給される。このとき、燃料が酸化剤によって酸化される酸化還元反応が起こり、燃料がもっていた化学エネルギーが電気エネルギーに変換される。
【0003】
このような燃料電池は、燃料および酸化剤を供給し続けることで継続的に発電可能であり、従来の一次電池または二次電池とは異なる新たな携帯型電子機器用電源として期待されている。すなわち、燃料電池は、燃料と酸化剤との化学反応を利用して発電を行うものでありから、酸化剤として空気中の酸素を用い、燃料を外部から補給し続けることによって、故障しない限り電源として使い続けることが可能である。よって、小型化された燃料電池は、携帯型電子機器に適した充電不要の高エネルギー密度電源となりうる。
【0004】
燃料電池に外部から燃料を補給する方法としては、交換型の燃料カートリッジを用いることが考えられている。このような燃料カートリッジとして、従来では、燃料を収容した容器本体を包装材に収納したものが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2006−224989号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された従来技術では、物流時などにおける振動および環境温度または気圧の変動によって、開封以前の包装材の中で燃料が漏れ出してしまっているという可能性があり、安全性に重大な問題があった。
【0006】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、燃料漏れを確実に抑えることができ、安全性を高めることができる燃料カートリッジを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による燃料カートリッジは、燃料供給口を有するカートリッジ本体と、燃料供給口を直接塞ぐシール部材とを備えたものである。
【0008】
本発明の燃料カートリッジでは、カートリッジ本体の燃料供給口がシール部材で直接塞がれているので、燃料供給口が確実に封止され、燃料漏れが起こりにくくなる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の燃料カートリッジによれば、カートリッジ本体の燃料供給口をシール部材で直接塞ぐようにしたので、燃料漏れを確実に抑えることができ、安全性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0011】
(第1の実施の形態)
図1および図2は本発明の第1の実施の形態に係る燃料カートリッジの外観を表すものである。この燃料カートリッジ1は、携帯電話,ノート型PC(Personal Computer )等の携帯型電子機器の電源として搭載される燃料電池に用いられる交換型燃料カートリッジであり、燃料電池の発電モジュール(図示せず)とは別体に構成され、燃料供給管(図示せず)等を介して燃料電池の発電モジュールに連結されて燃料を供給することができるようになっている。燃料カートリッジ1は、例えば、角型(直方体形状)のカートリッジ本体10の内部に、燃料であるメタノール等を収容している。
【0012】
カートリッジ本体10は、例えば、厚みが約6mmであり、アルミニウムあるいはステンレス鋼などの金属材料、またはPET(ポリエチレンテレフタレート)あるいはポリプロピレン(PP)等の樹脂材料により構成されている。カートリッジ本体10の上面10Aには、カートリッジ本体10内に燃料を注入し、あるいはカートリッジ本体10から燃料電池(図示せず)に燃料を送出するための燃料供給口11が設けられている。この燃料供給口11は、シール部材20により直接塞がれている。これにより、この燃料カートリッジ1では、物流時などにおける振動および環境温度または気圧の変動に対して、燃料漏れを確実に抑えることができ、安全性を高めることができるようになっている。
【0013】
シール部材20は、例えば、燃料供給口11およびその近傍に貼り付けられる封止部21と、封止部21の一端に設けられた操作部22とを有している。封止部21は、熱融着,超音波融着,接着剤等の樹脂接着など、カートリッジ本体10の形状および材質に合わせた適当な方法で貼り付けられている。操作部22は、シール部材20をカートリッジ本体10から剥離する際に、封止部21に剥離力を加えるためのものである。また、カートリッジ本体10に収容されているメタノールは、温まるとカートリッジ本体10の内圧を上昇させるので、シール部材20は、そのような内圧上昇に耐えうることが望ましい。
【0014】
シール部材20は、燃料に対するバリア性の高い材料により構成されている。具体的には、ポリエチレン,ポリエチレンテレフタレート,エチレンビニルアルコール共重合樹脂,ポリアミド樹脂,ポリグリコール酸,ポリプロピレン,ポリビニルアルコール,ポリアクリルニトリル,セロハン,ポリカーボネート,ポリスチレン,ポリ塩化ビニリデンおよびポリ塩化ビニルからなる群のうち一種または二種以上の混合体よりなる樹脂フィルムが挙げられる。また、この樹脂フィルムにアルミニウム等の金属箔を重ね合わせたラミネートフィルムでもよい。更に、この樹脂フィルムに、アルミニウム等の金属,酸化アルミニウム(アルミナ)等の金属化合物,あるいは二酸化ケイ素(シリカ)等のうち一種または二種以上よりなる蒸着層を形成したものでもよい。
【0015】
このようなカートリッジ本体10は、図3に示したように、袋状の包装部材30に収容されている。包装部材30は、物流時においてカートリッジ本体10を保護すると共にシール部材20の意図しない剥離等を防止するためのものであり、例えば、厚みが100μmであり、樹脂フィルム,アルミニウム箔および樹脂フィルムをこの順に張り合わせたアルミラミネートフィルムにより構成されている。なお、包装部材30は、シール部材20の構造によっては省略することも可能である。
【0016】
包装部材30は、シール部材20の操作部22と結合されていることが望ましい。包装部材30を開封してカートリッジ本体10から分離させるのと同時に、操作部22に剥離力が加えられるようにすることができるからである。また、シール部材20を剥がして燃料供給口11を開封する際に、かりに燃料が外部に飛散したとしても、飛散する燃料を包装部材30に受容させて、ユーザの手や服などを汚すおそれをなくすことができるからである。
【0017】
この燃料カートリッジ1は、例えば、次のようにして製造することができる。
【0018】
まず、上述した材料よりなるカートリッジ本体10を用意し、燃料供給口11から燃料を注入する。次いで、上述した材料よりなるシール部材20の封止部21を燃料供給口11およびその近傍に貼り付けることにより、燃料供給口11を直接塞ぐ。シール部材20の貼り付け方法は、熱融着,超音波融着,接着剤等の樹脂接着など、カートリッジ本体10の形状および材質に合わせた適当な方法を用いることができる。
【0019】
続いて、必要に応じて、上述した材料よりなる包装部材30を用意し、シール部材20を貼り付けたカートリッジ本体10を包む。以上により、図1ないし図3に示した燃料カートリッジ1が完成する。
【0020】
この燃料カートリッジ1では、シール部材20により燃料供給口11が直接塞がれているので、包装部材30未開封時の包装部材30内での不慮の漏洩が確実に抑えられ、安全性が向上する。
【0021】
また、この燃料カートリッジ1を開封する際には、図4に示したように、封止部21の一端に設けられた操作部22を引き、封止部21に剥離力を加えることにより、シール部材20をカートリッジ本体10から剥離し、燃料供給口11を開放する。
【0022】
このように本実施の形態では、カートリッジ本体10の燃料供給口11をシール部材20で直接塞ぐようにしたので、物流時などにおける振動および環境温度または気圧の変動に対して、燃料漏れを確実に抑えることができ、安全性を高めることができる。
【0023】
(第2の実施の形態)
図5および図6は、本発明の第2の実施の形態に係る燃料カートリッジの外観を表すものである。この燃料カートリッジ1Aでは、カートリッジ本体10の上面10Aに、燃料供給口11および大気連通口12が設けられている。これら燃料供給口11および大気連通口12はシール部材20で直接塞がれており、これにより、第1の実施の形態と同様に、燃料漏れを確実に抑え、安全性を高めることができるようになっている。このことを除いては、本実施の形態の燃料カートリッジ1Aは、上記第1の実施の形態と同様に構成され、同様にして製造することができる。よって、同一の構成要素には同一の符号を付して説明する。
【0024】
シール部材20の封止部21は、一構成部材で燃料供給口11と大気連通口12との両方を覆っている。封止部21の一端には、第1の実施の形態と同様の操作部22が設けられている。
【0025】
また、このシール部材20は、図7(A)に示したように、操作部22と燃料供給口11を封止する第1封止部21Aとの距離L1よりも、操作部22と大気連通口12を封止する第2封止部21Bとの距離L2が短いことが好ましい。また、第1封止部21Aの剥離抵抗よりも、第2封止部21Bの剥離抵抗を小さくするようにしてもよい。このようにすることにより、操作部22に加えられる剥離力が、燃料供給口11を封止する第1封止部21Aよりも、大気連通口12を封止する第2封止部21Bに伝達されやすくなり、図7(B)に示したように、大気連通口12が燃料供給口11よりも先に開放される。よって、カートリッジ本体10の内圧により燃料が放出されるのを抑えることができ、開封時の燃料漏れを防ぐことができる。
【0026】
このようなカートリッジ本体10は、第1の実施の形態と同様の包装部材30(図5ないし図7には図示せず、図3参照。)に収容されている。
【0027】
この燃料カートリッジ1Aでは、シール部材20により燃料供給口11および大気連通口12が直接塞がれているので、包装部材30未開封時の包装部材30内での不慮の漏洩が確実に抑えられ、安全性が向上する。
【0028】
また、この燃料カートリッジ1を開封する際には、封止部21の一端に設けられた操作部22を引き、封止部21に剥離力を加えることにより、シール部材20をカートリッジ本体10から剥離する。ここで、シール部材20は、操作部22と燃料供給口11を封止する第1封止部21Aとの距離L1よりも、操作部22と大気連通口12を封止する第2封止部21Bとの距離L2が短くされているので、操作部22に加えられる剥離力は、燃料供給口11を封止する第1封止部21Aよりも、大気連通口12を封止する第2封止部21Bに伝達されやすくなっている。よって、図7(B)に示したように、先に大気連通口12が開放されてカートリッジ本体10の内圧が大気圧と等しくなったのち、図7(C)に示したように、燃料供給口11が開放される。従って、カートリッジ本体10の内圧が気温または気圧の変化により大気圧よりも高くなっていても、燃料供給口11から燃料が漏れ出すおそれがなくなる。また、カートリッジ本体10内に燃料と共に空気などの気体が密封されている場合にも、内部気体の膨張圧によって燃料供給口11から燃料が漏れ出すおそれがなくなる。
【0029】
このように本実施の形態では、カートリッジ本体10の燃料供給口11および大気連通口12を、シール部材20で直接塞ぐようにしたので、第1の実施の形態と同様に、物流時などにおける振動および環境温度または気圧の変動に対して、燃料漏れを確実に抑えることができ、安全性を高めることができる。
【0030】
なお、本実施の形態では、燃料供給口11および大気連通口12が、カートリッジ本体10の上面10Aに設けられている場合について説明したが、燃料供給口11および大気連通口12のそれぞれの位置は特に限定されない。また、燃料供給口11と大気連通口12との位置関係も特に限定されない。例えば、図8に示したように、燃料供給口11はカートリッジ本体10の上面10A、大気連通口12は側面10Bに設けられていてもよい。また、例えば図9に示したように、燃料供給口11はカートリッジ本体10の上面10A、大気連通口12は他の側面10Cに設けられていてもよい。
【0031】
また、シール部材20の形状は、一構成部材で燃料供給口11および大気連通口12の両方を塞ぐことができれば、特に限定されない。例えば、図8に示した場合、シール部材20は、図10に示したように、カートリッジ本体10の上面10Aおよび側面10Bに貼り付けられていてもよいし、図11に示したように、カートリッジ本体10の上面10Aおよび側面10C,10Bに貼り付けられていてもよい。また、図9に示した場合、シール部材20は、図12に示したように、カートリッジ本体10の上面10Aおよび側面10Cに貼り付けるようにすることができる。
【0032】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形することができる。例えば、上記実施の形態では、カートリッジ本体10,シール部材20および包装部材30の構成について具体的に説明したが、他の構成としてもよい。例えば、カートリッジ本体10の形状は、上記実施の形態で説明した角型(直方体)に限らず、円筒型などの他の形状であってもよい。
【0033】
また、例えば、上記実施の形態において説明した各構成要素の材料および厚み、またはシール部材20の貼り付け方法などは限定されるものではなく、他の材料および厚みとしてもよく、または他の貼り付け方法としてもよい。
【0034】
更に、例えば、カートリッジ本体10に収容される液体燃料は、メタノールのほか、エタノールやジメチルエーテルなどの他の液体燃料でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る燃料カートリッジの外観を表す図である。
【図2】図1に示したカートリッジ本体の構成を表す図である。
【図3】図1に示したカートリッジ本体を包装部材に収容した状態を表す図である。
【図4】図1に示した燃料カートリッジの開封方法を説明するための図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係る燃料カートリッジの外観を表す図である。
【図6】図5に示したカートリッジ本体の構成を表す図である。
【図7】図5に示した燃料カートリッジの開封方法を説明するための図である。
【図8】図6の変形例を表す図である。
【図9】図6の他の変形例を表す図である。
【図10】図8に示したカートリッジ本体に貼り付けられるシール部材の形状の例を表す図である。
【図11】図10の変形例を表す図である。
【図12】図9に示したカートリッジ本体に貼り付けられるシール部材の形状の例を表す図である。
【符号の説明】
【0036】
1…燃料カートリッジ、10…カートリッジ本体、10A…上面、10B,10C…側面、20…シール部材、21…封止部、21A…第1封止部、21B…第2封止部、22…操作部、30…包装部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料供給口を有するカートリッジ本体と、
前記燃料供給口を直接塞ぐシール部材と
を備えた燃料カートリッジ。
【請求項2】
前記カートリッジ本体は大気連通口を有し、
前記シール部材は、前記燃料供給口および前記大気連通口を直接塞いでいる
ことを特徴とする請求項1記載の燃料カートリッジ。
【請求項3】
前記シール部材は、一構成部材で前記燃料供給口と前記大気連通口との両方を覆う封止部と、前記封止部の一端に設けられた操作部とを有し、
前記操作部と前記燃料供給口を封止する第1封止部との距離L1よりも、前記操作部と前記大気連通口を封止する第2封止部との距離L2が短い
ことを特徴とする請求項2記載の燃料カートリッジ。
【請求項4】
前記カートリッジ本体を収容する包装部材を有する
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の燃料カートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−163891(P2009−163891A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−339155(P2007−339155)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】