説明

燃料ガス生成装置

【目的】 木質固形物質の炭化の進行中に発生するタール成分や酢液をも装置内で確実に熱分解してガス化することができる燃料ガス生成装置を提供する。
【構成】
熱分解部が、略テーパ状に形成された内壁面に囲まれており、前記木質固形物質が炭化される過程で発生するタール分や酢液が前記テーパ状の傾斜面に沿って徐々に下降するとき前記炭化が進む空間で生成された高温のガスであって下方の前記ガス通過部に移動する途中の高温のガスに接触してガス化するように構成されている炭化部と、前記略テーパ状の内壁面の下端部により形成された小径部と、前記小径部から下方に移動してきた炭及び燃料ガスが前記ガス通過部の方に下降・移動するように、前記小径部と前記ガス通過部との間に形成されたガス化部とを含むように構成されており、前記内壁面には、斜め方向に延びる段差と傾斜流下部が形成されている、燃料ガス生成装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペレットや木片などの木質固形物質を熱分解して燃料ガスを生成するための燃料ガス生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ペレットや木片などの木質固形物質を熱分解して炭や燃料ガスを得るための炭化炉が知られている。例えば、特許文献1は、密閉した炭化炉内で固形有機物片(木質固形物質)の上部に着火してその上部から下部にかけて酸欠状態で蒸し焼きしながら下部まで炭化を進行させて炭を得る炭化装置を開示している。
【特許文献1】特開平11−236572号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の炭化炉を使用して炭や可燃ガスを得るための装置においては、空気を炭化炉の下方から限定的に供給すると共に、炭化炉で発生した可燃ガスを炭化炉の上方から排出するようにしていたので、炭化炉内で発生した可燃ガスの中に多量のタール成分が含まれるままになってしまっていた。そして、このような多量のタール成分を含む可燃ガスを使用してエンジンなどを駆動するときは、エンジンにタール成分が付着してしまいエンジンが故障する原因になってしまうなどの問題が生じていた。また、このような炭化炉を使用する従来の可燃ガス生成装置においては、炭化の進行中に発生したタール分や酢液がそのまま装置の内部に残存してしまうため装置のメンテナンス上の問題を引き起こしてしまうなどの不都合も発生していた。
【0004】
本発明はこのような従来技術の問題点に着目してなされたものであって、木質固形物質の炭化の進行中に発生するタール成分や酢液をも装置内で確実に熱分解してガス化することができる燃料ガス生成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題を解決するための本発明による燃料ガス生成装置は、ペレットや木片などの木質固形物質を熱分解して燃料ガスを得るための燃料ガス生成装置であって、複数の木質固形物質を後述の熱分解部に連続的に供給する材料供給部と、前記材料供給部の下方に配置され、前記材料供給部から移動してきた木質固形物質を、熱分解することにより炭化させ更にガス化して、燃料ガスを生成するための熱分解部と、前記熱分解部で生成される炭と燃料ガスの中、炭は通過させないで燃料ガスのみを通過させるための複数の穴が形成された部材から成るガス通過部と、前記熱分解部で生成された燃料ガスが下方に移動して前記ガス通過部を通過するように、前記燃料ガスを誘引するための誘引ブロワと、前記ガス通過部を通過した燃料ガスをガス収容タンク又は燃焼設備に導くためのガス案内路と、を備えた燃料ガス生成装置であって、前記熱分解部は、前記木質固形物質の炭化が進む空間の水平方向の断面積が下方に行くに従って徐々に小さくなるように、略テーパ状に形成された内壁面にその側方が囲まれており、前記木質固形物質が炭化される過程で発生するタール分や酢液が、その上を前記テーパ状の傾斜面に沿って徐々に下降するとき、前記炭化が進む空間で生成された高温のガスであって下方の前記ガス化部に移動する途中の高温のガスに接触してガス化するように構成されている炭化部であって、前記空間内の上方に配置され、前記木質固形物質を熱分解するために必要な量の空気を前記空間内に連続的に供給するための空気供給ノズルと、前記空間内の上方に配置され、前記木質固形物質の熱分解の開始時に、熱分解を開始させるために、前記木質固形物質の一部を燻らせるための着火手段と、を備えた炭化部と、前記略テーパ状の内壁面の下端部により形成され、前記炭化が進む空間で生成された炭及び燃料ガスを中央に集めながら下方に通過させる小径部と、前記小径部を通過して下方に移動してきた炭及び燃料ガスが前記ガス通過部の方に下降・移動するように、前記小径部と前記ガス通過部との間に形成されたガス化部であって、その中で、前記炭の相当部分が更に熱分解されてガス化するように構成されているガス化部と、を備えたことを特徴とするものである。
【0006】
また、本発明の燃料ガス生成装置においては、前記炭化部においては、前記炭化が進む空間内の上方に、複数個の空気供給ノズルが互いに離れた位置にそれぞれ配置されており、前記内壁面には、前記複数個の空気供給ノズルの斜め下方の位置に、それぞれ、垂直方向に対して傾斜する段差であって、前記タール分又は酢液を垂直方向に対して傾斜する方向に流すための傾斜流下部を形成するための段差、が形成されている、ことが望ましい。
【0007】
また、本発明による燃料ガス生成装置においては、前記複数個の空気供給ノズルは、前記炭化が進む空間内の水平面上において互いに略等間隔となるように(前記内壁面の円周方向に沿って略等間隔となるように)配置されており、前記段差及び傾斜流下部は、前記各空気供給ノズルの下方又はその斜め下方の位置から前記小径部に向かって斜め方向に延びるように、形成されている、ことが望ましい。
【0008】
また、本発明による燃料ガス生成装置においては、前記段差及び傾斜流下部は、略螺旋状に傾斜するように形成されている、ことが望ましい。
【0009】
また、本発明による燃料ガス生成装置においては、前記材料供給部内には、前記材料供給部内の木質固形物質を下方に押圧しながら略水平方向に回動する撹拌羽根が備えられている、ことが望ましい。
【0010】
また、本発明による燃料ガス生成装置においては、前記空気供給ノズルに接続されており、外部からの空気を取り込んで前記空気供給ノズルに送るための外気供給部であって、前記外部からの空気を約200〜500℃に加熱するためのヒーターと、前記ヒーターを前記熱分解部内の木質固形物質に点火するときだけ作動させるための加熱制御手段とを含む外気供給部、が備えられている、ことが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、前記誘引ブロワにより、前記炭化部で生じた燃料ガスを、前記炭化部で生じた炭と共に下方のガス通過部及びガス案内路の方に移動するようにしているので、従来の装置のように炭化炉で発生した可燃ガスを炭化炉の上方から排出するようにする場合と異なって、炭化部内で発生した可燃ガスの中に多量のタール成分が含まれてしまうという不都合を無くすことができる。
【0012】
また、本発明においては、前記炭化部での炭化の過程で生じたタール分や酢液も、それらが前記炭化部の略テーパ状の内壁面上をゆっくりと流れて下降している間に、前記ガス通過部の方に誘引されて下降している高温のガスと接触して熱分解されてガス化されるので、従来の炭化炉を使用した燃料ガス生成装置におけると異なって、前記タール分や酢液がそのまま装置の内部に残存してしまうことが無くなり、装置のメンテナンスが極めて容易になる。また、前記タール分や酢液もガス化できるので、ガス化効率を向上させることができる。
【0013】
また、本発明において、複数個の空気供給ノズルを前記炭化が進む空間内の上方の互いに離れた位置にそれぞれ配置すると共に、前記内壁面の前記複数個の空気供給ノズルの斜め下方の位置にそれぞれ、垂直方向に対して傾斜する段差を形成し、この段差により、前記タール分や酢液がゆっくりと斜め方向に流下する傾斜流下部を形成するようにしたときは、前記炭化の過程で生じたタール分や酢液が前記内壁面の他の場所から前記傾斜流下部の上に移動してその上をゆっくりと流下するので、その流下する間に、前記誘引ブロワにより下降する高温ガスと接触して、より確実に熱分解されガス化されるようになる。
【0014】
また、本発明において、前記複数個の空気供給ノズルを前記炭化が進む空間内の仮想の水平面上において互いに略等間隔となるように前記炭化部内に配置すると共に、前記段差により形成される傾斜流下部を前記各空気供給ノズルの下方の位置から前記ガス化部に向かって斜め方向に延びるように形成する(前記段差は前記各空気供給ノズルの斜め下方の位置から前記ガス化部に向かって斜め方向に延びるように形成する)ようにしたときは、前記炭化の過程で生じたタール分や酢液が前記傾斜流下部の上でより緩慢にゆっくりと時間を掛けて流下するので、そのゆっくりと流下する間に、前記下降する高熱ガスとより多く接触し、より確実に熱分解されガス化されるようになる。また、このような確実なガス化は、前記段差及び傾斜流下部を略螺旋状に傾斜するように形成したときは、より効果的に実現できるようになる。
【0015】
また、本発明において、前記材料供給部内に、前記材料供給部内の木質固形物質を下方に押圧しながら略水平方向に回動する撹拌羽根を備えるようにしたときは、前記材料供給部からの木質固形物質が確実に下方に移動するので、前記炭化部中に空洞が生じてしまうことが無くなる(この撹拌羽根が無いときは、木質固形物質が炭化部の上方で熱により互いに粘着して下降して来なくなり、炭化部内に木質固形物質が存在しない空洞が生じてしまう場合があった)。
【0016】
また、本発明において、前記炭化部において木質固形物質を最初に着火する場合に、前記外気供給部からの外気を前記空気供給ノズルに送るとき、前記加熱制御手段でヒーターを制御して前記外気を約200〜500℃に加熱するようにしたときは、前記着火が極めてスムーズに行えるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明を実施するための最良の形態は、以下の実施例1について述べるような形態である。
【実施例1】
【0018】
図1は本発明の実施例1による燃料ガス生成装置を示す部分断面を含む側面図、図2はそれを上方から見たときの部分断面を含む平面図である。図1,2において、1は略円筒状の炉から成る装置本体、2はガス化の材料となる木質固形物質、例えばペレットを投入するためのペレット投入部、3は前記装置本体1内の材料供給部であって前記ペレット投入部2から投入されたペレットが収容される材料供給部、4は前記装置本体1内の炭化部であって前記材料供給部3から下降・移動して来るペレットがその中で炭化される炭化部、4aは前記炭化部の側方の周囲を囲む内壁面であって前記炭化部の内部空間が図示下方に行くに従って徐々に狭まるように略テーパ状に形成されている内壁面、5は前記略テーパ状の内壁面4aの下端部により囲まれており他より小径となっている小径部、6は前記小径部5の下方に配置され、炭を残してガスだけを下方に通過させるように多数の穴が形成されている(場合により格子状に形成されている)ロストル、7は前記小径部5とロストル6との間を繋ぐ空間を形成するガス化部であってその中では上方から移動してきた炭が更に熱分解されてガス化されるガス化部、8は前記ガス化部7から下方のロストル6を通過したガスを図示していないガス収容タンクや燃焼設備に導くためのガス案内路、9は前記ガス案内路の端部に形成されたガス出口、である。なお、図1において、前記炭化部4の上端部の内径は例えば460mm、前記小径部の内径は例えば130mmである。また、図1において、10は前記材料供給部3及び炭化部4の内部を外から観察するための点検口、20は前記炭化部4やガス化部6の周囲に設けられた耐火材、である。
【0019】
前記ガス案内路8に移動したガスは、前記ガス出口9から出て、サイクロン(図示せず)、熱交換器(図示せず)、及びブロワ(図示せず)を通過して、ガス収容タンクや燃焼設備に導かれる。なお、前記ブロワ(図示せず)は、前記炭化部4で生成されたガスと前記ガス化部7で生成されたガスを、図示下方に移動させて前記ロストル6を通過させ、更に前記ガス案内路8、サイクロン(図示せず)、及び熱交換器(図示せず)などに移動させるためのガス誘引用の送風機、である。
【0020】
また、図1,2において、11は外気を装置内部に導入するためのファン、12は前記ファンで導入した外気を着火のときだけ例えば約200〜500℃に加熱するためのヒーターを備えた加熱部、13は前記ファン11から導入された外気を前記炭化部4の上方から前記炭化部4内に供給するための空気供給ノズル、14は前記炭化部4の例えば略中央近傍のペレットを着火する時に前記ペレットを燻らせるためのヒーターを備えた着火部である。なお、本実施例1では、前記加熱部12による外気の加熱温度及び加熱時間は、図示しない制御装置により制御されている。また、前記空気供給ノズル13から連続的に供給される外気量も、ペレットなどの投入量や投入速度などに対応するように、図示しない制御装置により制御されている。
【0021】
また、図1,2において、15は前記材料供給部3の略中央を縦方向に延びるように配置された回転軸、16は前記回転軸15の図示縦方向に沿って互いに離れた5箇所に互いに近いものが約90度の角度だけ交差するように固定された撹拌羽根、17は前記回転軸15をゆっくり遅い速度で例えば1分間に1〜4回転の速度で回転させるためのモーターである(前記モーター17は図示しない制御装置により制御されている)。前記各撹拌羽根16は、それらが略水平面に沿って回転することによって前記材料供給部3内のペレットが下方に押圧されるような角度となるように、傾斜させて配置されている。
【0022】
次に、本実施例1の動作を説明する。本実施例1を使用するときは、まず、多量のペレットを前記ペレット投入部2から順次投入して前記炭化部4内にペレットを充填する。次に、図示しないスイッチの操作により、前記ファン11を回転させて外気を導入し、前記加熱部12を駆動して前記の導入した外気を例えば約200〜500℃に加熱し、これを前記空気供給ノズル13から炭化部4内に供給する。また、これと同時に、前記着火部14のヒーターを駆動して前記炭化部4内のペレットの一部を燻らせる。このとき、前述のように、前記空気供給ノズル13から約200〜500℃に加熱された空気が供給されるので、前記着火がスムーズに行われる。前記着火が終わると、前記制御装置により、前記着火部14と前記加熱部12の動作を終了させる。
【0023】
次に、前記着火が行われて前記炭化部4内のペレットの一部が燻ると、そのペレットから徐々に周囲のペレットに熱が伝わって炭化が進行し、前記炭化部4内のペレットのほぼ全部について炭化が進行する。この炭化が進行する間、前記制御装置により、前記空気供給ノズル13から、炭化に必要な限度で空気が連続的に供給されると共に、前記モーター17により前記撹拌羽根16が回動して前記材料供給部3内のペレットが連続的に前記炭化部4内に下降・供給される。
【0024】
前記炭化部4内では、前記ペレットが炭化して炭とガスが生成される。このとき、炭化の過程でタール分と酢液も生成されるが、これらは前記の傾斜した内壁面4a上をゆっくりと流下する。すなわち、本実施例1では、前述のように、前記炭化部4内でペレットの炭化が進行するが、前記炭化部4の前記空気供給ノズル13のある場所から中央(且つやや下方)及びその近傍の場所では例えば約900−1000℃の高温になるが、その周辺の前記内壁面4aの近傍の場所の温度は例えば約200−300℃の比較的低温に止まるので、前記内壁面4aの近傍の比較的低温の場所ではタール分や酢液が発生しやすい。そして、この内壁面4aの近傍の比較的低温の場所でより多く発生したタール分や酢液は、前記内壁面4a上に付着して、その上を緩やかに流下する。
【0025】
また、前記炭化部4内で前記ペレットが炭化して炭とガスが生成されるが、この中、生成されたガスは前記誘引ブロワにより下降してガス化部7に移動し、また生成された炭も重力により下降してガス化部7に移動する。このとき、前記の内壁面4aの上を緩やかに流下しているタール分や酢液は、前記ガス化部7に移動中の高温ガスと接触して熱分解されてガス化する。
【0026】
すなわち、本実施例1では、図3に示すように、前記炭化部4の中央より下方のAで示す部分は、例えば約800−900℃の高温で活発に炭化が進行している。前記Aよりも上方のBで示す部分は、例えば約300−400℃の比較的低温である。そして、このBの図示左右の周辺のCで示す内壁面4aの近傍の部分は例えば約200−300℃と更に低温となっている。一般に、約250℃くらいから炭化が進行するが、このような比較的低温の場合はタール分や酢液が発生し易いので、本実施例1でも、図3のCで示す部分又はその周辺でタール分や酢液がより多く発生し、それらが内壁面4aの上に付着してその上をゆっくりと流下していく。その過程で、図3のA又はBで示す場所で発生した高温ガスは、前記誘引ブロワにより誘引されて下降・移動するが、前記内壁面4aは、前記小径部5に向かうに従ってより径が小さくなるので、必然的に、前記内壁面4aを流下するタール分や酢液は、前記下降・移動する高温ガスと確実に接触することになり、その結果、前記タール分や酢液は前記高温ガスの熱により分解されてガス化される。このようにしてタール分や酢液がガス化されて生成されたガスは、前記誘引ブロワにより、前記高温ガスと一緒に下降して前記ガス化部7に移動する。
【0027】
前記ガス化部7には、前記誘引ブロワにより誘引されるガスと重力により下降する炭とが移動してくる。このガス化部7の内部も例えば約800−1000℃の高温となるので、ここに移動してきた炭は、このガス化部7で、そのほとんどの部分が更に熱分解されてガス化する。これらのガスは、前記誘引ブロワに誘引されて、前記ロストル6を通過し、前記ガス案内路8に移動する。本実施例1の装置が駆動されている間は以上の動作が繰り返される。
【0028】
以上のように、本実施例1によれば、前記誘引ブロワにより、前記炭化部4で生じた燃料ガスを炭と一緒に下方のガス化部7の方に移動するようにしているので、従来の装置と異なって、前記炭化部4内で発生した可燃ガスの中に多量のタール成分が含まれてしまうという不都合が無くなる。また、本実施例1によれば、前記炭化部4内での炭化の過程で生じたタール分や酢液も、それらが前記炭化部4の略テーパ状の内壁面4a上をゆっくりと流下している間に、前記ガス化部7の方に誘引されて下降している高温のガスと接触して加熱されてガス化されるので、従来の装置と異なって、前記タール分や酢液がそのまま装置の内部に残存してしまうことなどが無くなり、装置のメンテナンスなどが極めて容易になる。また、前記タール分や酢液もガス化できるのでガス化効率が向上する。
【0029】
また、本実施例1では、前記材料供給部3内に、前記材料供給部3内のペレットを下方に押圧しながら略水平方向に回動する撹拌羽根16を備え、前記材料供給部3内のペレットが常時下方に移動するようにしているので、前記炭化部4内にペレットが存在していない空洞が生じてしまうことが無くなる(従来は、ペレットが炭化部4の上方で熱により互いに粘着して下降して来なくなり、炭化部4内にペレットが存在しない空洞が生じてしまう場合があった)。
【0030】
また、本実施例1では、前記炭化部4においてペレットを最初に着火する場合に、前記ファン11から導入した外気を前記空気供給ノズル13に送るとき、前記加熱部12で前記外気を約200〜500℃に加熱するようにしているので、前記着火が極めてスムーズに行えるようになる。
【実施例2】
【0031】
次に、本発明の実施例2を図4及び図5を参照して説明する。本実施例2は前記実施例1と基本的に同一であるので、以下では、前記実施例1と異なる部分についてのみ説明する。
【0032】
図4(a)は本実施例2の炭化部4の内壁面4aを上方から見たときの一部断面を含む平面図、図4(b)は本実施例2の炭化部4を側方から見たときの一部断面を含む側面図、図5は本実施例2の炭化部4の内壁面4aを上方から見たときの斜視図である。本実施例2においては、前記炭化部4の前記炭化が進む空間内の上方に、計4個の空気供給ノズル13が前記炭化部4内の仮想の水平面の円周上に約90度の角度だけ互いに離れた位置にそれぞれ配置されている。すなわち、前記各空気供給ノズル13は、図4(a)において、それぞれ、45度、135度、225度、及び315度の各位置から、中心方向に向かって配置されている。また、前記内壁面4aには、前記各空気供給ノズル13の斜め下方の各位置に、それぞれ、垂直方向(図4(a)の紙面と垂直な方向=図4(b)の上下方向)に対して傾斜する方向に延びる段差22が形成されている。そして、その段差22により、前記タール分又は酢液が前記垂直方向に対して傾斜する方向に流れる傾斜流下部21(図4(a)で斜線を付した部分)が形成されている。前記段差22は、例えば約20mmの寸法に形成されている。図4(a)に示すように、前記各段差22は、前記各空気供給ノズル13の斜め下方の位置にそれぞれ形成されている。また、図4(a)に示すように、前記各傾斜流下部21は、前記各空気供給ノズル13の下方の位置にそれぞれ形成されている。なお、図4(a)及び(b)において、20(斜線を付した部分)は前記炭化部4の側方周囲を囲む耐火材(1500℃に耐えるもの)である。
【0033】
なお、図4,図5では、前記内壁面4aの中、前記傾斜流下部を符号21で示し、前記段差を符号22で示し、それら以外の部分を符号4aで示しているが、前記傾斜流下部21と前記段差22も、前記内壁面4aの中の一部である。すなわち、図4において、符号4aで示す部分は、略円筒状の炭化部4の水平面上の中心を中心とする円周面と平行な面となっている部分である。これに対して、図4において符号21で示す傾斜流下部(斜線を付した部分)は、略円筒状の炭化部4の水平面上の中心を中心とする円周面と平行ではない面となっている。すなわち、図4において符号21で示す傾斜流下部(斜線を付した部分)は、前記段差22により、略円筒状の炭化部4の水平面上の中心を中心とする円周面に対して傾斜するように形成されている。また、前記傾斜流下部21の平面形状は、図4(a)及び図4(b)に示すように、炭化部4の上方から下方に行くに従って(図4(b)の上方から下方に行くに従って)徐々に幅が狭くなるように、且つ、炭化部4の上方から下方に行くに従ってその全体が略螺旋状に湾曲するように、形成されている。
【0034】
本実施例2では、図4(a)及び(b)に示すように、前記段差22及び傾斜流下部21は、前記各空気供給ノズル13の斜め下方及び下方の位置から、それぞれ、前記小径部5に向かって略螺旋状に傾斜しながら延びるように、形成されている。図5はこのような前記段差22及び傾斜流下部21の形状を説明するための斜視図で、前記炭化部4の内壁面4aを図4(b)の上方から見たときの状態を示すものである。
【0035】
以上のように、本実施例2においては、前記炭化部4を構成する内壁面4aの中に、前記空気供給ノズル13の斜め下方から斜め方向に螺旋状に延びる段差22を形成し、さらに、この段差22により、前記空気供給ノズル13の下方から斜め方向に螺旋状に旋回するように延びる(しかも上方から下方に行くに従って幅が狭くなるように延びる)傾斜流下部21を形成するようにしている。この傾斜流下部21は、略円筒状の炭化部4の水平面上の中心を中心とする円周面に対して傾斜するように形成されているものである。
【0036】
このような本実施例2によれば、前記炭化部4での炭化の過程で発生したタール分や酢液は、主として前記傾斜流下部21の上を、前述のように略螺旋状に延びる斜め方向にゆっくりと緩慢に流下していくので、そのゆっくりと流下する間に、より多量の高熱ガス(前記炭化部4で生成され前記誘引ブロワにより誘引されて下降している高温ガス)と接触することになり、より確実にガス化されるようになる。
【0037】
以上、本発明の各実施例について説明したが、本発明は前記の各実施例として述べたものに限定されるものではなく、様々な修正及び変更が可能である。例えば、前記実施例1,2においては、前記材料供給部3からペレットを前記炭化部4に供給するようにしたが、本発明においては前記材料供給部から供給される材料はペレットに限られるものではなく、例えば木片、木屑などの有機物片であればよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施例1による燃料ガス生成装置を示す部分断面を含む側面図。
【図2】図1の燃料ガス生成装置の部分断面を含む平面図。
【図3】本実施例1の燃料ガス生成装置の炭化部の動作を説明するための模式図。
【図4】本発明の実施例2による燃料ガス生成装置の炭化部の内壁面の形状を説明するための図で、(a)は上方から見たときの図、(b)は側方から見たときの図である。
【図5】本実施例2による燃料ガス生成装置の炭化部の内壁面を説明するための図で、図4(a)に示す部分を上方から見たときの斜視図。
【符号の説明】
【0039】
1 装置本体
2 ペレット投入部
3 材料供給部
4 炭化部
4a 内壁面
5 小径部
6 ロストル
7 ガス化部
8 ガス案内路
9 ガス出口
11 ファン
12 加熱部
13 空気供給ノズル
14 着火部
15 回転軸
16 撹拌羽根
17 モーター
21 傾斜流下部
22 段差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペレットや木片などの木質固形物質を熱分解して燃料ガスを得るための燃料ガス生成装置であって、
複数の木質固形物質を後述の熱分解部に連続的に供給する材料供給部と、
前記材料供給部の下方に配置され、前記材料供給部から移動してきた木質固形物質を、熱分解することにより炭化させ更にガス化して、燃料ガスを生成するための熱分解部と、
前記熱分解部で生成される炭と燃料ガスの中、炭は通過させないで燃料ガスのみを通過させるための複数の穴が形成された部材から成るガス通過部と、
前記熱分解部で生成された燃料ガスが下方に移動して前記ガス通過部を通過するように、前記燃料ガスを誘引するための誘引ブロワと、
前記ガス通過部を通過した燃料ガスをガス収容タンク又は燃焼設備に導くためのガス案内路と、を備えた燃料ガス生成装置であって、
前記熱分解部は、
前記木質固形物質の炭化が進む空間の水平方向の断面積が下方に行くに従って徐々に小さくなるように、略テーパ状に形成された内壁面に囲まれており、前記木質固形物質が炭化される過程で発生するタール分や酢液が、その上を前記テーパ状の傾斜面に沿って徐々に下降するとき、前記炭化が進む空間で生成された高温のガスであって下方の前記ガス通過部に移動する途中の高温のガスに接触してガス化するように構成されている炭化部であって、前記空間内の上方に配置され、前記木質固形物質を熱分解するために必要な量の空気を前記空間内に連続的に供給するための空気供給ノズルと、前記空間内の上方に配置され、前記木質固形物質の熱分解の開始時に、熱分解を開始させるために、前記木質固形物質の一部を燻らせるための着火手段と、を備えた炭化部と、
前記略テーパ状の内壁面の下端部により形成され、前記炭化が進む空間で生成された炭及び燃料ガスを中央に集めながら下方に通過させる小径部と、
前記小径部を通過した炭及び燃料ガスが前記ガス通過部の方に下降・移動するように、前記小径部と前記ガス通過部との間に形成されたガス化部であって、その中で、前記炭の相当部分が更に熱分解されてガス化するように構成されているガス化部と、
を備えたことを特徴とする、燃料ガス生成装置。
【請求項2】
請求項1において、前記炭化部においては、前記炭化が進む空間内の上方に、複数個の空気供給ノズルが互いに離れた位置にそれぞれ配置されており、前記内壁面には、前記複数個の空気供給ノズルの斜め下方の位置に、それぞれ、垂直方向に対して傾斜する段差であって前記タール分又は酢液を垂直方向に対して傾斜する方向に流下させるための傾斜流下部を形成するための段差、が形成されている、ことを特徴とする、燃料ガス生成装置。
【請求項3】
請求項2において、前記複数個の空気供給ノズルは、前記炭化が進む空間内の水平面上において互いに略等間隔となるように配置されており、前記段差及び傾斜流下部は、前記各空気供給ノズルの下方又はその斜め下方の位置から前記小径部に向かって斜め方向に延びるように、形成されている、ことを特徴とする、燃料ガス生成装置。
【請求項4】
請求項3において、前記段差及び傾斜流下部は、略螺旋状に傾斜するように形成されている、ことを特徴とする、燃料ガス生成装置。
【請求項5】
請求項1において、前記材料供給部内には、前記材料供給部内の木質固形物質を下方に押圧しながら略水平方向に回動する撹拌羽根が備えられている、ことを特徴とする、燃料ガス生成装置。
【請求項6】
請求項1において、
外部からの空気を取り込んで前記空気供給ノズルに送るための外気供給部であって、前記外部からの空気を約200〜500℃に加熱するためのヒーターと、前記ヒーターを前記炭化部内の木質固形物質に点火するときだけ作動させるための加熱制御手段と、を含む外気供給部、が備えられている、ことを特徴とする、燃料ガス生成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−263428(P2009−263428A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−111619(P2008−111619)
【出願日】平成20年4月22日(2008.4.22)
【特許番号】特許第4187783号(P4187783)
【特許公報発行日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(592031709)有限会社東根製作所 (3)
【出願人】(507133485)
【出願人】(507133500)
【Fターム(参考)】