説明

燃料タンクのチューブの取付構造

【課題】燃料タンクの周辺部品とチューブ取付部材との干渉を防止して、簡単な構造で充分なチューブの保持力を有する自動車用燃料タンクのチューブ取付構造を提供する。
【解決手段】燃料タンクに取付けるチューブの取付構造において、チューブ取付部材20を燃料タンクの外壁2に取付けて、チューブ取付部材20の内部にチューブ40を挿入し、チューブ40の内部にインナパイプ30を挿入し、チューブを取付ける。チューブ取付部材20は、取付フランジ部25と、チューブ取付筒22が設けられる。チューブ取付筒22の内径は、チューブ取付筒先端部23よりもチューブ取付筒根元部22が小さく形成される。インナパイプ30の外径は、インナパイプ前部31よりも、インナパイプ後部32が大きく形成される。インナパイプ後部32でチューブ先端部を拡径して、チューブ取付筒先端部23にチューブ先端部を押圧するように取付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用燃料タンクに取付けるチューブの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用燃料タンクには、燃料タンク内に燃料を注入したり、燃料をエンジンに送付したり、燃料ガスをキャニスターに送付したりするチューブが取付けられている。
このような燃料タンクは、従来、金属製のものが用いられていたが、近年車両の軽量化や、錆が発生しないこと、所望の形状に成形しやすいことなどによって熱可塑性樹脂製のものも用いられるようになってきた。
【0003】
このような金属製や熱可塑性樹脂製のいずれの燃料タンク1においても、図5に示すように、各種のホースやケーブルを取付ける取付部材とともに、燃料タンク1に燃料を注入するためのフィラーチューブ140を取付けるためのフィラーチューブ取付部材120が、燃料タンク1の外壁に取付けられている。
【0004】
例えば、図6に示すように、熱可塑性合成樹脂製の燃料タンク1のタンク外壁2にフィラーチューブを取付けるフィラーチューブ取付部材120が溶着されている(例えば、特許文献1参照。)。このフィラーチューブ取付部材120は、ガラス繊維で強化されたナイロン樹脂性のフィラーパイプ121を接合部材122で覆い、接合部材122を燃料タンク1の外壁面に溶着し、フィラーチューブ140を挿入し、Oリング124を使用し、そのフィラーチューブ140をコネクタ123で締結している。
【0005】
また、図7に示すように、熱可塑性合成樹脂製の燃料タンク1のタンク外壁2にフィラーチューブ240を取付けるフィラーチューブ取付部材220が溶着されている(例えば、特許文献2参照。)。このフィラーチューブ取付部材220は、燃料タンク1と溶着する樹脂材で構成された第一部分221と、第一部分221よりも耐燃料透過性及び強度の優れた樹脂材で構成される第二部分222から構成され、第一部分221と第二部分222の界面に沿ってOリング223が取付けられている。
【0006】
このような構造においては、フィラーチューブ取付部材120、220は、燃料タンク1の外壁面から突出しているため、衝突時等において、燃料タンク1の周辺部品の変形によるフィラーチューブ取付部材120、220との干渉を防止する必要がある。このため、フィラーチューブ取付部材120、220と周辺部品のとの距離を大きくするように、燃料タンク1の形状を小さくすることが行われている。しかしながら、この場合には、燃料タンク1の容量が少なくなってしまうこととなる。
【0007】
また、図6と図7のいずれのフィラーチューブ取付部材120、220においても、2種類の材料を使用して、筒部分が二重構造を有して、その構造が複雑であり、Oリング124、223等も使用されているため、組付けに手間がかかるとともに、コストも増加している。
【0008】
さらに、図8に示すように、パイプ等の筒状部材320に樹脂ホース340を取付ける場合に、筒状部材320に環状凸部321を形成し、樹脂ホース340の内面と外面にフッ素ゴム、変性シリコーンゴム等からなる固着層341を取付けて、筒状部材320に挿入するものがある(例えば、特許文献3参照。)。しかし、この場合においても、筒状部材320が燃料タンク1の外壁面から突出するという課題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−205755号公報
【特許文献2】特開2005−24016号公報
【特許文献3】特開平9−100959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで本発明は、燃料タンクの周辺部品とチューブ取付部材との干渉を防止して、簡単な構造で充分なチューブの保持力を有する自動車用燃料タンクのチューブ取付構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために請求項1の本発明は、燃料タンクに取付けるチューブの取付構造において、
チューブを取付けるチューブ取付部材を形成し、チューブ取付部材を燃料タンクの外壁に取付けて、チューブ取付部材の内部にチューブを挿入し、チューブの内部にインナパイプを挿入し、チューブを取付けるチューブの取付構造であって、
チューブ取付部材は、タンクの外壁に取付けられる取付フランジ部と、取付フランジ部の下面から延設されチューブの先端のチューブ先端部を挿入するチューブ取付筒が設けられ、チューブ取付筒の内径は、先端側のチューブ取付筒先端部よりも取付フランジ部側のチューブ取付筒根元部が小さく形成され、チューブ取付筒先端部とチューブ取付筒根元部の間にはチューブ取付筒段部が形成され、
チューブの先端部の内部に挿入されるインナパイプの外径は、先に挿入される側のインナパイプ前部よりも、後から挿入されるインナパイプ後部が大きく形成され、インナパイプ前部とインナパイプ後部の間にはインナパイプ段部が形成され、
チューブ取付筒とインナパイプは、燃料タンクの外壁面よりも実質的に燃料タンクの内部側に位置するように配置し、
タンク取付部に取付けられたチューブ取付部材のチューブ取付筒内にチューブ先端部が位置し、チューブ先端部の内部に上記インナパイプが位置し、インナパイプ後部でチューブ先端部を拡径して、チューブ取付筒先端部にチューブ先端部を押圧するように取付けられたことを特徴とする燃料タンクのチューブの取付構造である。
【0012】
請求項1の本発明では、チューブを取付けるチューブ取付部材を形成し、チューブ取付部材を燃料タンクの外壁に取付けて、チューブ取付部材の内部にチューブを挿入し、チューブの内部にインナパイプを挿入し、チューブを取付けるチューブの取付構造であって、チューブ取付部材は、タンクの外壁に取付けられる取付フランジ部と、取付フランジ部の下面から延設されチューブの先端のチューブ先端部を挿入するチューブ取付筒が設けられる。このため、タンクの外壁に取付フランジ部を強固に固着して、チューブ取付筒にチューブを取付けることで、確実にチューブを燃料タンクに取付けることができる。また、タンクの外壁に取付フランジ部を取付けると、チューブ取付筒を燃料タンクの外壁面よりも実質的に燃料タンクの内部側に位置するように取付けることができる。
【0013】
チューブ取付筒の内径は、先端側のチューブ取付筒先端部よりも取付フランジ部側のチューブ取付筒根元部が小さく形成され、チューブ取付筒先端部とチューブ取付筒根元部の間にはチューブ取付筒段部が形成される。このため、先端側のチューブ取付筒先端部はチューブをチューブ取付筒に取付けたときに、インナパイプをチューブに挿入しやすく、チューブ取付筒先端部によりチューブを拡径することができる。チューブ取付筒段部と後述するインナパイプ段部によりチューブを強く挟持することができ、チューブが抜けることがない。
【0014】
チューブの先端部の内部に挿入されるインナパイプの外径は、先に挿入される側のインナパイプ前部よりも、後から挿入されるインナパイプ後部が大きく形成され、インナパイプ前部とインナパイプ後部の間にはインナパイプ段部が形成される。このため、インナパイプ前部をチューブに挿入しやすく、インナパイプ後部によりチューブを拡径することができる。これにより、チューブを強くチューブ取付部材先端部に圧接することができ、チューブとチューブ取付部材先端部との間のシール性を向上できる。インナパイプ段部とチューブ取付筒段部によりチューブを強く挟持することができる。
【0015】
チューブ取付筒とインナパイプは、燃料タンクの外壁面よりも実質的に燃料タンクの内部側に位置するように配置した。このため、衝突時等において、チューブ取付筒とインナパイプは、燃料タンクの外壁により保護されるため、衝突等により燃料タンクの周辺部品が変形しても、チューブ取付筒とインナパイプに周辺部品が干渉することがなく、チューブの取付部分が破損することがない。また、燃料タンクと車体との間のスペースを小さくすることができ、燃料タンクの容量を大きくすることができる。
【0016】
タンク取付部に取付けられたチューブ取付部材のチューブ取付筒内にチューブ先端部が位置し、チューブ先端部の内部に上記インナパイプが位置し、インナパイプ後部でチューブ先端部を拡径して、チューブ取付筒先端部にチューブ先端部を押圧するように取付けられた。このためチューブ先端部にインナパイプを挿入するのみで、チューブ先端部をインナパイプ後部でチューブ取付筒先端部に強固に押圧して、シールすることができ、簡単な部材で強固なシール性とチューブ保持力を得ることができる。
【0017】
請求項2の本発明は、チューブは、燃料タンクに燃料を注入するフィラーチューブであるチューブの取付構造である。
【0018】
請求項2の本発明では、チューブは、燃料タンクに燃料を注入するフィラーチューブであるため、簡単な構造でフィラーチューブの先端をチューブ取付部材に取付けて、フィラーチューブを強固に保持することができ、燃料を車体に設けられた給油口から燃料タンク内に注入することができる。また、タンクの外壁とチューブ取付部材から燃料蒸気等の漏れもなくすることができる。
【0019】
請求項3の本発明は、チューブ先端部の外面又はチューブ取付筒の内面に接着材が塗布されているチューブの取付構造である。
【0020】
請求項3の本発明では、チューブ先端部の外面又はチューブ取付筒の内面に接着材が塗布されているため、強固にチューブ先端部の外面とチューブ取付筒の内面を接着することができ、チューブ先端部のズレや、チューブ取付部材とチューブの隙間から燃料蒸気等の漏れをなくすることができる。
【0021】
請求項4の本発明は、チューブ取付部材は、合成樹脂で形成されたチューブの取付構造である。
【0022】
請求項4の本発明では、チューブ取付部材は、合成樹脂で形成されたため、合成樹脂製の燃料タンクに強固に溶着することができ、車両の軽量化にも貢献して、錆の発生もなく、耐久性に優れている。
【0023】
請求項5の本発明は、チューブ取付部材は、取付フランジ部は、燃料タンクの外壁と同種の剛性の大きな合成樹脂で形成され、チューブ取付筒は耐燃用油性の合成樹脂で形成されたチューブの取付構造である。
【0024】
請求項5の本発明では、チューブ取付部材は、取付フランジ部は、燃料タンクの外壁と同種の剛性の大きな合成樹脂で形成されたため、取付フランジ部が燃料タンクの外壁と強固に融着又は接着されることができ、取付フランジ部と燃料タンクの外壁との間のシール性を向上させることができる。チューブ取付筒は耐燃用油性の合成樹脂で形成されたため、燃料タンクの内部に位置しても、強度を維持することができ、チューブ先端部を確実に保持することができる。
【0025】
請求項6の本発明は、チューブ取付部材は、金属で形成されたチューブの取付構造である。
【0026】
請求項6の本発明では、チューブ取付部材は、金属で形成されたため、金属製の燃料タンクに溶接することができ、剛性が大きく、強度に優れている。
【0027】
請求項7の本発明は、インナパイプは、合成樹脂又は金属で形成されたチューブの取付構造である。
【0028】
請求項7の本発明では、インナパイプは、合成樹脂又は金属で形成されたため、合成樹脂で形成された場合には、インナパイプに外径を自由に形成することができ、軽く形成することができる。金属で形成された場合には、強度の大きなインナパイプを形成することができる。
【0029】
請求項8の本発明は、取付フランジ部が燃料タンクの外壁の平坦な部分に溶着、接着又は溶接されているチューブの取付構造である。
【0030】
請求項8の本発明では、取付フランジ部が燃料タンクの外壁の平坦な部分に溶着、接着又は溶接されているため、燃料タンクにチューブ取付部材を強固に固着することができ、燃料タンクとチューブ取付部材との固着部分から燃料や燃料蒸気が漏れることがない。
また、チューブ取付部材が燃料タンクの外壁から外方に大きく突出することがない。
【0031】
請求項9の本発明は、燃料タンクは、合成樹脂製又は鉄製である燃料タンクのチューブの取付構造である。
【0032】
請求項9の本発明では、燃料タンクが合成樹脂製である場合には、車体の取付部分に応じて形状を自由に形成することができ、燃料タンク全体の重量を軽減することができ、車輌の軽量化に貢献することができるとともに、錆びの発生がなく、製造も容易である。燃料タンクが鉄製である場合には、燃料タンクの強度と剛性が高く、燃料蒸気の浸透もなく、鉄製のチューブ取付部材を確実に固着することができる。
【発明の効果】
【0033】
チューブ取付筒とインナパイプは、燃料タンクの外壁面よりも実質的に燃料タンクの内部側に位置するように配置したため、燃料タンクの周辺部品が変形しても、チューブ取付筒とインナパイプに周辺部品が干渉することがなく、チューブの取付部分が破損することがない。インナパイプ後部でチューブ先端部を拡径して、チューブ取付筒先端部にチューブ先端部を押圧するように取付けられたため、チューブ先端部にインナパイプを挿入するのみで、チューブ先端部をインナパイプ後部でチューブ取付筒先端部に強固に押圧して、シールすることができ、強固なシール性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示すもので、燃料タンクのフィラーチューブ取付部材を取付ける部分の断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態を示すもので、燃料タンクのフィラーチューブ取付部材を取付ける部分の分解図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態を示すもので、燃料タンクのフィラーチューブ取付部材を取付ける部分の分解図である。
【図4】本発明の第3の実施の形態を示すもので、燃料タンクのフィラーチューブ取付部材を取付け部分の分解図である。
【図5】燃料タンクの断面図である。
【図6】従来の燃料タンクのフィラーチューブ取付部材の取付け部分の断面図である。
【図7】従来の他の燃料タンクのフィラーチューブ取付部材の取付け部分の断面図である。
【図8】従来の樹脂ホースとパイプの取付部材の取付け部分の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明は、燃料タンク1に取付けられる多種類のチューブとその取付部材について使用することができるが、本発明を燃料タンク1とフィラーチューブ40を例にとり、その実施の形態を図1〜図5に基づき説明する。
まず、第1の実施の形態について図1、図2及び図5に基づき説明する。
図5は本発明の第1の実施の形態のフィラーチューブ40の取付構造が使用される燃料タンク1の断面図である。
【0036】
図5に示すように、燃料タンク1は、ブロー成形で形成され、タンク外壁2は一体に形成されている。タンク外壁2は、熱可塑性合成樹脂の1層で形成することもできるし、熱可塑性合成樹脂の複数の層を有するように形成することもできる。
複数の層で形成された場合は、剛性を有する層と、燃料透過性の低い層を組み合わせて形成することができる。
【0037】
複数の層で形成された場合は、例えば、中央の層がエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)又はナイロンで形成された燃料透過を防止するバリヤー層と、そのバリヤー層の上下に変性ポリエチレンから形成される接着剤層と、その接着剤層のそれぞれの外面に高密度ポリエチレン(HDPE)から形成される外層から構成される。
【0038】
タンク外壁2の上部には、図1に示すフィラーチューブ取付部材20と、フィラーチューブ取付部材20を取付ける平坦な部分であるタンク取付部10が形成されている。フィラーチューブ取付部材20は、燃料タンク1内に燃料を注入するフィラーチューブ40を取付けるものである。
【0039】
また、図5に示すように、タンク外壁2の上部には、ブリーザポート取付部7も形成されている。ブリーザポート取付部7は、燃料給油時に燃料タンク1内のガスをタンク外に逃がすためブリーザホース(図示せず)を取付けるものである。また、8は燃料タンク1から車輌転倒時の燃料漏れを防ぐカットオフバルブである。
なお、タンク外壁2の上面には、燃料移送用ホース等の各種のホースを保持するホースクランプを設けてもよい。
【0040】
タンク外壁2の上面には、さらに燃料ポンプ取付孔4が形成され、燃料ポンプ取付孔4からタンク外壁2の下部の内面にサブタンク5が取付けられる。燃料ポンプ取付孔4は、蓋体50で塞がれて、蓋体50はロックプレート51で燃料ポンプ取付孔4に周囲を螺着される。燃料ポンプ取付孔4と蓋体50の間にはシールリング52が取付けられて、燃料ポンプ取付孔4と蓋体50の間がシールされる。
【0041】
そして、サブタンク5内に燃料ポンプユニット6が取付けられている。サブタンク5は、車両が傾いたり振動したりしたときに、燃料タンク1内の燃料を燃料ポンプユニット6が確実にエンジンに送り出すことができるように設けられている。燃料ポンプユニット6は蓋体50に取付けられて、修理やメンテナンスが行われる。燃料ポンプユニット6からパイプが延びて、タンク外壁2の上部の蓋体50にフューエルメインポート取付部9が接続している。フューエルメインポート取付部9にはエンジンに燃料を送る燃料パイプ(図示せず)が取付けられている。
【0042】
図1及び図5に示すように、燃料タンク1のタンク外壁2の上部に、タンク取付部10が形成されている。タンク取付部10は、後述するフィラーチューブ取付部材20を取付ける燃料タンク1に形成された孔であるフィラー開口11と、フィラー開口11の周囲に形成され、フィラーチューブ取付部材20を取付ける取付部材保持フランジ12が形成されている。取付部材保持フランジ12は、フィラーチューブ取付部材20を取付けるため、上面が平坦な面に形成されている。
【0043】
フィラーチューブ40は、車体の燃料注入口と燃料タンク1を連結するチューブであり、耐燃料油性の合成樹脂等で形成されている。車体の振動等を吸収するために蛇腹状に形成された蛇腹部43を有し、柔軟性を有している。フィラーチューブ40の先端は円筒状に形成されたフィラーチューブ先端部41が形成されている。図2に示すように、本実施の形態では、フィラーチューブ先端部41の外面には接着剤が塗布された接着剤層42が形成されている。この接着剤層42は後述するように、フィラーチューブ取付部材20の内面に塗布し形成することもできる。
【0044】
次に、図1と図2に基づき、チューブ取付部材であるフィラーチューブ取付部材20について説明する。
フィラーチューブ取付部材20は、フィラーチューブ40の先端のフィラーチューブ先端部41を挿入するフィラーチューブ取付筒21と、タンク取付部10の取付部材保持フランジ12に取付けられる取付フランジ部25を有する。
【0045】
取付フランジ部25は、中心にフィラーチューブ取付筒21と連通する中心孔29を有する円盤状に形成され、下面(取付フランジ部25に対向する面)の外周には下方にリング状に突出する取付フランジ部先端部26が形成されている。取付フランジ部先端部26は、取付部材保持フランジ12に溶着又は接着される。このため、取付フランジ部25は、燃料タンク1の外面と同種の材料で形成されることが好ましい。取付フランジ部先端部26が取付部材保持フランジ12に溶着又は接着されるため、タンク取付部10に取付フランジ部25を強固に固着して、取付フランジ部先端部26と取付部材保持フランジ12の間のシール性を確保することができる。
【0046】
取付フランジ部25の下面の中心孔29の周囲から燃料タンク1の内部方向に円筒状のフィラーチューブ取付筒21が形成される。このため、タンク取付部10に取付フランジ部25を取付けると、フィラーチューブ取付筒21を燃料タンク1のタンク外壁2の面よりも実質的に燃料タンク1の内部側に位置するように取付けることができる。
このため、衝突時等において、フィラーチューブ取付筒21とインナパイプ30は、タンク外壁2により保護されるため、燃料タンク1の周辺部品が変形しても、フィラーチューブ取付筒21とインナパイプ30に周辺部品が干渉することがなく、フィラーチューブ40の取付部分が破損することがない。
【0047】
フィラーチューブ取付筒21は、先端まで同じ外径で形成され、フィラーチューブ取付筒21の内径は、先端側のチューブ取付筒先端部23よりも取付フランジ部25側のチューブ取付筒根元部22が小さく形成されている。チューブ取付筒先端部23とチューブ取付筒根元部22は、それぞれの部分では同じ内径で形成され、チューブ取付筒先端部23とチューブ取付筒根元部22の間にはチューブ取付筒段部24が形成される。チューブ取付筒先端部23とチューブ取付筒根元部22の間の内径の差は、10〜30%程度である。例えば、チューブ取付筒根元部22の内径が30mmの場合には、チューブ取付筒先端部23の内径は33mm程度である。
【0048】
このため、後述するように、先端側のチューブ取付筒先端部23はフィラーチューブ先端部41をフィラーチューブ取付筒21に取付けたときに、インナパイプ30をフィラーチューブ40に挿入しやすく、チューブ取付筒先端部23によりフィラーチューブ先端部41を拡径することができる。また、チューブ取付筒段部24と後述するインナパイプ段部33によりフィラーチューブ40を強く挟持することができる。チューブ取付筒先端部23は、その先端から燃料がフィラーチューブ40に逆流しないように、チューブ取付筒先端部23の開口を開閉する逆止弁を取付けてもよい。
【0049】
フィラーチューブ取付部材20は、燃料タンク1とは別に射出成形により成形される。フィラーチューブ取付筒21と取付フランジ部25の部分は、それぞれ別の材料で形成されることが好ましい。図1に示すように、フィラーチューブ取付筒21の材料は、取付フランジ部25の内面の取付フランジ部先端部26の手前まで延設されている。このため、取付フランジ部25の耐燃料油性が向上する。
【0050】
取付フランジ部25は、タンク外壁2の材料と同じ材料が使用される。例えば接着が容易で剛性の高い高密度ポリエチレン、ポリプロピレン等が使用される。これにより取付フランジ部先端部26はタンク外壁2と融着する。
フィラーチューブ取付筒21は、耐燃料油性の材料であるポリアセタール、ポリアミド等の合成樹脂を使用することができる。
【0051】
フィラーチューブ取付部材20に挿入されるフィラーチューブ先端部41の内部に挿入されるインナパイプ30は、円筒状に形成され、先に挿入される側でありフィラーチューブ取付部材20のチューブ取付筒根元部22に挿入されるインナパイプ前部31と、後から挿入される側でありチューブ取付筒先端部23に挿入されるインナパイプ後部32と、インナパイプ前部31とインナパイプ後部32の間に形成されるインナパイプ段部33から構成される。
【0052】
インナパイプ30の外径は、先に挿入される側のインナパイプ前部31よりも、後から挿入されるインナパイプ後部32が大きく形成される。このため、インナパイプ前部31をフィラーチューブ先端部41に挿入しやすく、インナパイプ後部32によりフィラーチューブ先端部41を拡径することができる。そして、前述のとおり、インナパイプ段部33とチューブ取付筒段部24によりフィラーチューブ先端部41を強く挟持することができる。なお、インナパイプ30の内径は同じである。
【0053】
インナパイプ30は、本実施の形態では合成樹脂で形成されるが、金属製にすることもできる。合成樹脂で形成した場合には、耐燃料油性の材料を使用する。例えば、ポリアセタール、ポリアミド等の合成樹脂を使用することができる。
【0054】
次に、第1の実施の形態において、フィラーチューブ40をフィラーチューブ取付部材20に取付ける方法について説明する。
燃料タンク1がブロー成形等で、アッパーシェル部2aとロアシェル部2bとが一体的に形成される場合には、まず、フィラーチューブ先端部41をフィラーチューブ取付部材20の中心孔29に挿入する。そして、フィラーチューブ先端部41の開口部側からインナパイプ30をインナパイプ前部31から挿入する。
【0055】
そうすると、インナパイプ前部31は、フィラーチューブ取付部材20のチューブ取付筒根元部22部分に挿入される。インナパイプ前部31の外径と、チューブ取付筒根元部22の内径は、それぞれ先端まで同じである。フィラーチューブ先端部41をインナパイプ前部31の外面34とチューブ取付筒根元部22の内面27で挟持することができる。このとき、フィラーチューブ先端部41の外面には接着剤層42が塗布されているので、フィラーチューブ先端部41とチューブ取付筒根元部22は強固に接着することができる。
【0056】
さらに、インナパイプ後部32は、フィラーチューブ先端部41の開口側を拡径しつつ挿入される。そうすると、インナパイプ後部32の外径は、フィラーチューブ先端部41内径よりも大きいので、インナパイプ段部33がチューブ取付筒段部24に近接するまで挿入される。そして、フィラーチューブ先端部41は、フィラーチューブ取付筒21のチューブ取付筒先端部23に密着することができる。
【0057】
このため、フィラーチューブ先端部41にインナパイプ30を挿入するのみで、フィラーチューブ先端部41をインナパイプ後部32の外面34でチューブ取付筒先端部23の内面27に強固に押圧して、シールすることができ、簡単な部材で強固なシール性を得ることができる。接着剤層42を設けないこともできるが、本実施の形態では、フィラーチューブ先端部41の外面に接着剤層42が塗布されているため、より強固に固着することができる。
【0058】
このとき、インナパイプ段部33は、チューブ取付筒段部24に近接するように位置しているため、インナパイプ段部33の外面34とチューブ取付筒段部24の内面27でフィラーチューブ先端部41を挟持することができ、フィラーチューブ先端部41を抜けにくくするとともに、シール性を向上させることができる。
この様にして、フィラーチューブ40をフィラーチューブ取付部材20に取付けることができる。その後、フィラーチューブ取付部材20の取付フランジ部25の先端である取付フランジ部先端部26を、燃料タンク1のタンク取付部10の取付部材保持フランジ12に溶着する。燃料タンク1とフィラーチューブ取付部材20は熱可塑性合成樹脂で形成されているため、強固に固着され、固着部分から燃料蒸気等が漏れることがない。
【0059】
なお、燃料タンク1のアッパーシェル部2aとロアシェル部2bとが別々に形成される場合や、燃料タンク1のタンク取付部10が燃料ポンプ取付孔4に近接している場合のように、フィラーチューブ取付部材20をタンク取付部10に取付けた後に、フィラーチューブ40を挿入して、フィラーチューブ先端部41にインナパイプ30を挿入することが可能な場合には、フィラーチューブ取付部材20をタンク取付部10に取付けた後に、フィラーチューブ40とインナパイプ30を取付けることができる。
【0060】
次に、図3の基づき、本発明の第2の実施の形態について説明する。
第2の実施の形態は、第1の実施の形態が、フィラーチューブ先端部41の外面に接着剤層42を設けていたのに対して、フィラーチューブ取付部材20のフィラーチューブ取付筒21の内面27に接着剤層28を設けた点が異なり、他の部分は同様である。このため、異なる部分を説明し同様な部分の説明は省略する。
【0061】
フィラーチューブ取付部材20のフィラーチューブ取付筒21は、チューブ取付筒根元部22、チューブ取付筒段部24及びチューブ取付筒先端部23から形成されるが、その全体の内面27に接着剤層28が形成されている。そのため、フィラーチューブ取付部材20の中心孔29からフィラーチューブ先端部41が挿入され、インナパイプ30がフィラーチューブ先端部41の開口側から挿入されると、フィラーチューブ先端部41の外面とフィラーチューブ取付筒21の内面27の接着剤層28が密着して、フィラーチューブ先端部41の外面34とフィラーチューブ取付筒21の内面27が強固に接着されることができる。これにより、フィラーチューブ取付部材20とフィラーチューブ40との間のシール性を向上させることができる。
【0062】
次に、図4の基づき、本発明の第3の実施の形態について説明する。
本発明の第3の実施の形態では、燃料タンク1とフィラーチューブ取付部材20が鉄製であり、フィラーチューブ40とインナパイプ30は合成樹脂製である。燃料タンク1とフィラーチューブ取付部材20が鉄製である点が第1の実施の形態と異なり、他の部分は同様である。このため、異なる部分を説明し同様な部分の説明は省略する。
なお、インナパイプ30は、金属製にすることもできるが、本実施の形態では、合成樹脂製のものを使用する。
【0063】
燃料タンク1は、アッパーシェル部2aとロアシェル部2bが別々に形成されて、その外周に形成されたフランジ部2cの部分で、溶接されて形成される。アッパーシェル部2aには、第1の実施の形態と同様に、燃料タンク1のアッパーシェル部2aに、タンク取付部10が形成されている。タンク取付部10は、フィラーチューブ取付部材20を取付ける燃料タンク1に形成された孔であるフィラー開口11と、フィラー開口11の周囲に形成され、フィラーチューブ取付部材20を取付ける取付部材保持フランジ12が形成されている。取付部材保持フランジ12は、フィラーチューブ取付部材20を取付けるため、上面が平坦な面に形成されている。
【0064】
フィラーチューブ取付部材20は、鉄製であり、形状的には第1の実施の形態と同様に、フィラーチューブ40の先端のフィラーチューブ先端部41を挿入するフィラーチューブ取付筒21と、タンク取付部10の取付部材保持フランジ12に取付けられる取付フランジ部25を有する。
【0065】
取付フランジ部25は、中心にフィラーチューブ取付筒21と連通する中心孔29を有する円盤状に形成され、下面(取付フランジ部25に対向する面)の外周には下方にリング状に突出する取付フランジ部先端部26が形成されている。取付フランジ部先端部26は、取付部材保持フランジ12に溶接される。取付フランジ部先端部26が取付部材保持フランジ12に溶接されるため、タンク取付部10に取付フランジ部25を強固に固着して、取付フランジ部先端部26と取付部材保持フランジ12の間のシール性を確保することができる。
【0066】
取付フランジ部25の下面の中心孔29の周囲から燃料タンク1の内部方向にフィラーチューブ取付筒21が形成される。このため、タンク取付部10に取付フランジ部25を取付けると、フィラーチューブ取付部材20を燃料タンク1の外壁面よりも実質的に燃料タンク1の内部側に位置するように取付けることができる。
【0067】
フィラーチューブ取付筒21の内径は、先端側のチューブ取付筒先端部23よりも取付フランジ部25側のチューブ取付筒根元部22が小さく形成されている。チューブ取付筒先端部23とチューブ取付筒根元部22は、それぞれの部分では同じ内径で形成され、チューブ取付筒先端部23とチューブ取付筒根元部22の間にはチューブ取付筒段部24が形成される。チューブ取付筒先端部23とチューブ取付筒根元部22の間の内径の差は、10〜30%程度である。例えば、チューブ取付筒根元部22の内径が30mmの場合には、チューブ取付筒先端部23の内径は33mm程度である。
このフィラーチューブ取付筒21の内径に対応して、インナパイプ30の外径が形成される。
【0068】
次に、第3の実施の形態において、フィラーチューブ40をフィラーチューブ取付部材20に取付ける方法について説明する。
燃料タンク1のアッパーシェル部2aのタンク取付部10にフィラーチューブ取付部材20を溶接する。その後、フィラーチューブ先端部41をフィラーチューブ取付部材20に挿入する。そして、フィラーチューブ先端部41の開口部側からインナパイプ30をインナパイプ前部31から挿入する。
【0069】
そうすると、インナパイプ前部31は、フィラーチューブ取付部材20のチューブ取付筒根元部22部分に挿入され、フィラーチューブ先端部41をインナパイプ前部31とチューブ取付筒根元部22で挟持することができる。
さらに、インナパイプ後部32は、フィラーチューブ先端部41の開口側を拡径しつつインナパイプ段部33がチューブ取付筒段部24に近接するまで挿入される。
【0070】
そうすると、フィラーチューブ先端部41にインナパイプ30を挿入するのみで、フィラーチューブ先端部41をインナパイプ後部32でチューブ取付筒先端部23に強固に押圧して、シールすることができ、簡単な部材で強固なシール性を得ることができる。このとき、インナパイプ段部33は、チューブ取付筒段部24に近接するように位置しているため、インナパイプ段部33とチューブ取付筒段部24でフィラーチューブ先端部41を挟持することができ、シール性を向上させることができる。
【0071】
この様にして、フィラーチューブ40をフィラーチューブ取付部材20に取付けることができる。なお、フィラーチューブ先端部41の外面又はフィラーチューブ取付部材20の内面27に接着剤を塗布することもできる。その後、アッパーシェル部2aとロアシェル部2bのフランジ部2cの部分を溶接して、燃料タンク1を作成する。
また、アッパーシェル部2aとロアシェル部2bのフランジ部2cの部分を溶接した後に、フィラーチューブ取付部材20を溶接する。その後、フィラーチューブ取付部材20にフィラーチューブ先端部41を挿入し、燃料ポンプ取付孔4からインナパイプ30を燃料タンク1内に入れて、フィラーチューブ先端部41にインナパイプ30を挿入して取付けることもできる。
【符号の説明】
【0072】
1 燃料タンク
2 タンク外壁
10 タンク取付部
20 フィラーチューブ取付部材
21 フィラーチューブ取付筒
22 チューブ取付筒根元部
23 チューブ取付筒先端部
24 チューブ取付筒段部
30 インナパイプ
31 インナパイプ前部
32 インナパイプ後部
33 インナパイプ段部
40 フィラーチューブ
41 フィラーチューブ先端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンクに取付けるチューブの取付構造において、
上記チューブを取付けるチューブ取付部材を形成し、該チューブ取付部材を上記燃料タンクの外壁に取付けて、上記チューブ取付部材の内部に上記チューブを挿入し、上記チューブの内部にインナパイプを挿入し、上記チューブを取付けるチューブの取付構造であって、
上記チューブ取付部材は、上記タンクの外壁に取付けられる取付フランジ部と、該取付フランジ部の下面から延設され上記チューブの先端のチューブ先端部を挿入するチューブ取付筒が設けられ、上記チューブ取付筒の内径は、先端側のチューブ取付筒先端部よりも取付フランジ部側のチューブ取付筒根元部が小さく形成され、上記チューブ取付筒先端部と上記チューブ取付筒根元部の間にはチューブ取付筒段部が形成され、
上記チューブの先端部の内部に挿入されるインナパイプの外径は、先に挿入される側のインナパイプ前部よりも、後から挿入されるインナパイプ後部が大きく形成され、上記インナパイプ前部と上記インナパイプ後部の間にはインナパイプ段部が形成され、
上記チューブ取付筒と上記インナパイプは、上記燃料タンクの外壁面よりも実質的に燃料タンクの内部側に位置するように配置し、
上記タンク取付部に取付けられた上記チューブ取付部材のチューブ取付筒内に上記チューブ先端部が位置し、上記チューブ先端部の内部に上記インナパイプが位置し、上記インナパイプ後部で上記チューブ先端部を拡径して、上記チューブ取付筒先端部にチューブ先端部を押圧するように取付けられたことを特徴とする燃料タンクのチューブの取付構造。
【請求項2】
上記チューブは、上記燃料タンクに燃料を注入するフィラーチューブである請求項1に記載のチューブの取付構造。
【請求項3】
上記チューブ先端部の外面又は上記チューブ取付筒の内面に接着材が塗布されている請求項1又は請求項2に記載のチューブの取付構造。
【請求項4】
上記チューブ取付部材は、合成樹脂で形成された請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のチューブの取付構造。
【請求項5】
上記チューブ取付部材は、上記取付フランジ部は、燃料タンクの外壁と同種の剛性の大きな合成樹脂で形成され、上記チューブ取付筒は耐燃用油性の合成樹脂で形成された請求項4に記載のチューブの取付構造。
【請求項6】
上記チューブ取付部材は、金属で形成された請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のチューブの取付構造。
【請求項7】
上記インナパイプは、合成樹脂又は金属で形成された請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のチューブの取付構造。
【請求項8】
上記取付フランジ部が上記燃料タンクの外壁の平坦な部分に溶着、接着又は溶接されている請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載のチューブの取付構造。
【請求項9】
上記燃料タンクは、合成樹脂製又は鉄製である請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の燃料タンクのチューブの取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【図5】
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【図6】
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