説明

燃料タンクのニップル取付構造

【課題】ニップルとニップル取付部からの燃料透過性のきわめて低い、シール性に優れた自動車用燃料タンクのニップル取付構造を提供する。
【解決手段】燃料タンク1は、それぞれ内側樹脂層15、25と、外側シート層16、26とより構成されるアッパーシェル部10とロアシェル部20を溶着形成される。ニップル取付部13は、円筒部13aと底壁部13bを有し、その燃料タンクの外面側は、外側シート層により覆われる。ニップル30は、筒状部31と、溝部35と、フランジ部の下部の筒状部の外周に取付けられるシール部材34とを有する。ニップルがニップル取付部とサポートリング60に挿入され、シール部材34がニップル取付部13の外側シート層16に当接し、サポートリング60の係止爪63がニップル30の溝部35に嵌合してニップルを係止する燃料タンクのニップル取付構造である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用燃料タンクの燃料等の出入口を形成するニップルを燃料タンクに取付けるニップル取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用燃料タンクの構造としては、燃料タンク内に燃料を注入し、あるいは燃料タンクからエンジン側に燃料を輸送するチューブを取付ける複数のニップルが燃料タンクの壁に取付けられている。
このような燃料タンクは、従来、金属製のものが用いられていたが、近年車両の軽量化や、錆が発生しないこと、所望の形状に成形しやすいことなどによって熱可塑性樹脂製のものが用いられるようになってきた。
【0003】
この熱可塑性樹脂製の燃料タンクは、従来は、ブロー成形により形成される場合が多いが、ニップルを取付けるにはまず、別に成形したニップルを燃料タンクに融着する場合がある。この場合には、燃料タンクに穴を開けて、ニップルを熱板融着するため、作業工数が多大であった。
また、ニップルを燃料タンクに嵌合する場合は、予めブロー成形により燃料タンクにニップルを装着するための円筒状の取付部を形成する必要があった。そして、外周にフランジ部を有する円筒状のニップルを射出成形等で形成し、そのニップルを取付部に挿入していた。
【0004】
しかしながら、この場合は、円筒状の取付部にニップルを強力に圧入するため、取付部に無理な力が加わるとともに、圧入作業が大変であった。また、燃料膨潤により、取付部の強打が低下したり、膨張によりシール性が低下する恐れがあった。さらに、取付部にニップル挿入時の残留応力が残り、長時間経過後には経時変化してシール性が低下する恐れもあった。
また、燃料タンクは中空形状を作りやすいため、ブロー成形で成形されることが多く、ブロー成形の場合には射出成形と比べて寸法精度が低いため、取付部を後加工により寸法精度を向上させる必要があった。
【0005】
そこで、近年、合成樹脂製燃料タンクを上下に分割して、アッパーシェル部とロアシェル部をそれぞれ別に射出成形等により成形して、その後、そのアッパーシェル部とロアシェル部の接合周縁部を相互に融着して燃料タンクを形成する方法も行われている(例えば、特許文献1参照。)。この場合には、アッパーシェル部とロアシェル部にニップルを取付けるニップル取付部を形成することも容易であり、アッパーシェル部とロアシェル部の融着前に燃料ポンプ等の付属品を燃料タンク内部に容易に装着することもできる。また、補強用又は装着用のリブや梁等をアッパーシェル部とロアシェル部の内面に容易に形成することができる。
【0006】
このような、アッパーシェル部とロアシェル部をそれぞれ射出成形する燃料タンク101においては、例えば図11に示すように、ニップル取付部113を燃料タンク101と一体に成形する。そして、ニップル取付部113に、円筒部113aと円筒部113aの先端に底壁部113bを有するように形成する。ニップル130は筒状部131と、筒状部131の外周にフランジ部132と先端付近にスリット137と突起部135を形成し、フランジ部132と突起部135の間にシールリング134を取付けている。
【0007】
そしてこのニップル130のスリット137を撓ませて、ニップル取付部113に挿入すると、ニップル130の突起部135がニップル取付部113の底壁部113bに係止されるとともに、フランジ部132がニップル取付部113に当接して、ニップル130が固定され、シールリング134がニップル130とニップル取付部113の間をシールする(例えば、特許文献2参照。)。
【0008】
しかし、この場合に、経年経過により燃料タンク101を構成する材料が変形したり、燃料膨潤により膨張したり、また、材料物性が低下したり、ニップル取付部113の部分の係合強度が低下したりしてシール性の低下や、ニップルに外力が加わった場合脱落する恐れがあった。さらに、ニップル130の円筒部113aの径が小さいときは、円筒部113aにスリット137を設けにくく、ニップル130とニップル取付部113の係合強度を充分に確保しにくかった。
【0009】
また、近年、地球環境の保護の観点から、燃料タンク1からの燃料透過をきわめて少なくすることが求められている。このため、アッパーシェル部とロアシェル部を融合する燃料タンクにおいては、燃料タンク内からの燃料透過を防止するために、中間にバリヤ層を含む3層構造で形成したものがある(例えば、特許文献3参照。)。
この様な場合にニップル取付部分の燃料透過を確実に防止する必要があった。
【0010】
【特許文献1】特開平11−34180号公報
【特許文献2】特開2005−29100号公報
【特許文献3】特開平5−16938号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで本発明は、燃料タンクのニップル取付部の成形が容易で、かつニップルとニップル取付部からの燃料透過性のきわめて低い、シール性に優れた自動車用燃料タンクのニップル取付構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために請求項1の本発明は、熱可塑性合成樹脂製の燃料タンクの液体又は気体の出入口を形成するニップルを取付ける燃料タンクのニップル取付構造において、
燃料タンクは、それぞれ射出成形により分割して別々に成形されたアッパーシェル部とロアシェル部の接合周縁部が融合して一体に構成されるとともに、アッパーシェル部とロアシェル部は、それぞれ内側樹脂層と、内側樹脂層の外面を覆う外側シート層とより構成され、
ニップル取付構造は、アッパーシェル部又はロアシェル部の外壁の一部に形成されたニップル取付部と、ニップル取付部に取付けられるニップルと、ニップルを係止するサポートリングを有し、
ニップル取付部は、燃料タンクの内部方向に膨出して形成された円筒部と、円筒部の燃料タンク内側の先端に円筒部の内側面から略直角に円筒中心に向かい延設され中心にニップルを挿入する孔を有する底壁部を設け、円筒部と底壁部の燃料タンクの外面側は、外側シート層により覆われ、
ニップルは、ニップル取付部に挿入され、液体又は気体を流通させる筒状部と、筒状部の外周に形成されニップル取付部の周囲の燃料タンクの外面側に当接するフランジ部と、ニップルがニップル取付部に挿入されたときに底壁部よりも燃料タンク内部側の位置の筒状部の外周に形成された溝部と、フランジ部の下部の筒状部の外周に取付けられるシール部材とを有し、
サポートリングは、係止爪を有し、
ニップルがニップル取付部とサポートリングに挿入され、シール部材がニップル取付部の外側シート層に当接し、サポートリングの係止爪がニップルの溝部に嵌合してニップルを係止する燃料タンクのニップル取付構造である。
【0013】
請求項1の本発明では、燃料タンクは、それぞれ射出成形により分割して別々に成形されたアッパーシェル部とロアシェル部の接合周縁部が融合され一体に構成されている。このため、アッパーシェル部とロアシェル部とを組み合わせて形成された燃料タンクは、寸法精度の高い精密な、かつ強度の高い製品を得ることができる。また、アッパーシェル部とロアシェル部の内部に部品取付リブや、補強リブを形成することができ、内蔵部品等を取付けることも、燃料タンクの強度を向上させることも容易にできる。
【0014】
成形されたアッパーシェル部とロアシェル部のそれぞれの接合周縁部が融合されているため、アッパーシェル部とロアシェル部のそれぞれの接合周縁部は強固に一体的に結合しており、アッパーシェル部とロアシェル部の接合部分の強度を大きくし、接合のための接着剤等が不要であるため、製造が容易である。また、接合周縁部のシール性も確保することができる。
【0015】
アッパーシェル部とロアシェル部は、それぞれ内側樹脂層と内側樹脂層の外面を覆う外側シート層とより構成されている。このため、内側樹脂層に強度が大きく、成形性に優れた樹脂を選択することができ、外側シート層に耐燃料透過性に優れたシートを使用することができ、製造が容易である。
また、外側シート層が内側樹脂層の成形により延びたり、破れたりすることがなく、優れた耐燃料透過性を得ることができる。
【0016】
ニップル取付構造は、アッパーシェル部又はロアシェル部の外壁の一部に形成されたニップル取付部と、ニップル取付部に取付けられるニップルと、ニップルを係止するサポートリングを有している。このため、ニップルを燃料タンクの外壁に容易に取付けることができるとともに、ニップルをサポートリングで、ニップル取付部から外れないように係止することができる。
【0017】
ニップル取付部は、燃料タンクの内部方向に膨出して形成された円筒部と、円筒部の燃料タンク内側の先端に円筒部の内側面から略直角に円筒中心に向かい延設され中心にニップルを挿入する孔を有する底壁部を設けている。このため、円筒部でニップルの筒状部とシール部材を保持できるとともに、ニップル取付部が燃料タンクの外面から突出することが無く、安全性が高く、見栄えも良い。さらに、底壁部によりニップルの筒状部とサポートリングを保持することができる。
また、円筒部と底壁部の燃料タンクの外面側は、外側シート層により覆われているため、ニップル取付部から燃料が透過することを防止できる。
【0018】
ニップルは、ニップル取付部に挿入され、液体又は気体を流通させる筒状部を有するため、ニップルにホース等を連結して筒状部を通して、燃料タンクへの液体又は気体の出し入れができる。
筒状部の外周に形成されニップル取付部の周囲の燃料タンクの外面側に当接するフランジ部を有しているため、ニップルをニップル取付部に挿入したときに、フランジ部がニップル又はその周囲に当接して、フランジ部がニップルの位置決めをすることができる。
【0019】
ニップルがニップル取付部に挿入されたときに、底壁部よりも燃料タンク内部側の位置の筒状部の外周に形成された溝部を有するため、溝部にサポートリングを係止して、ニップルを固定することができる。
フランジ部の下部の筒状部の外周に取付けられるシール部材を有するため、ニップルがニップル取付部に挿入されたときに、シール部材がニップル取付部の外側シート層に当接して、シールすることができ、ニップル取付部とニップルとの間から燃料の透過を防止することができる。
【0020】
サポートリングは、係止爪を有するため、ニップルがニップル取付部に挿入されたときに、ニップルの溝部に係止爪が係止され、ニップルを固定することができる。
ニップルがニップル取付部とサポートリングに挿入され、シール部材がニップル取付部の外側シート層に当接し、サポートリングの係止爪がニップルの溝部に嵌合してニップルを係止するため、ニップルをニップル取付部に挿入することにより、ニップルはニップル取付部に強固に固定され、ニップル取付部とニップルの間から燃料が透過することを防止できる。
【0021】
請求項2の本発明は、サポートリングは、円筒状に形成された側壁部と、側壁部の先端から側壁部中心の直角方向に延設され中心にニップルの筒状部が挿入される孔を有する底辺部と、底辺部の先端に形成された係止爪を有し、サポートリングの側壁部がニップル取付部の円筒部の外周に嵌挿されるとともに、底辺部がニップル取付部の底壁部の燃料タンク内の面を保持し、係止爪が上記ニップルの溝部に嵌合してニップルを係止する燃料タンクのニップル取付構造である。
【0022】
請求項2の本発明では、サポートリングは、円筒状に形成された側壁部を有し、サポートリングの側壁部がニップル取付部の円筒部の外周に嵌挿される。このため、ニップル取付部の円筒部にサポートリングの側壁部を嵌合させて、ニップル取付部の円筒部の変形や膨潤による膨張を防止することができ、ニップル取付部の強度を維持し、シール性を長期間安定して確保することができる。
【0023】
側壁部の先端から側壁部中心の直角方向に延設され中心にニップルの筒状部が挿入される孔を有する底辺部を有し、底辺部がニップル取付部の底壁部の燃料タンク内の面を保持する。このため、底壁部の変形を防止することができるとともに、サポートリングが燃料タンクの外側に移動することを防止して、ニップルが外れることを防止できる。
底辺部の先端に形成された係止爪を有し、ニップルをサポートリングに挿入することにより、係止爪がニップルの溝部に嵌合してニップルを係止するため、ニップルが燃料タンクの外側に移動することを防止できる。
【0024】
請求項3の本発明は、外側シート層は、耐燃料透過性多層樹脂シートである燃料タンクのニップル取付構造である。
【0025】
請求項3の本発明では、外側シート層は、耐燃料透過性多層樹脂シートであるため、燃料タンクの内部の燃料油の透過を防止することができる。多層シートであるため、多層シート中の耐燃料透過性の層のアッパーシェル部とロアシェル部の内側樹脂層に対向する面に、内側樹脂層と接着性の良い層を形成し、外側に耐摩耗性や耐衝撃性の層を形成することができる。また、燃料タンクの強度を増加させることができる。
【0026】
請求項4の本発明は、ニップルのフランジ部の下面に筒状部から突出する段部を形成し、段部でシール部材をニップル取付部に保持した燃料タンクのニップル取付構造である。
【0027】
請求項4の本発明では、ニップルのフランジ部の下面に筒状部から突出する段部を形成し、段部でシール部材をニップル取付部の円筒部に保持したため、シール部材をニップル取付部の円筒部の内部に保持することができ、シール部材と外側シート層との当接を確実にして、ニップル取付部とニップルとの間のシール性を確保することができる。
【0028】
請求項5の本発明は、ニップルは、燃料タンクに燃料を注入するインレットロア、燃料タンク内部の気体が出入りするブリーザポート又は燃料タンク内部の燃料を排出するフューエルメインポートの少なくともいずれかである燃料タンクのニップル取付構造である。
【0029】
請求項5の本発明では、ニップルは、燃料タンクに燃料を注入するインレットロア、燃料タンク内部の気体が出入りするブリーザポート又は燃料タンク内部の燃料を排出するフューエルメインポートの少なくともいずれかである。このため、燃料タンク内への燃料の注入と排出及び燃料タンク内部の燃料油の蒸気の排出部分のそれぞれにおいて、確実にシール性を確保することができる。
【0030】
請求項6の本発明は、アッパーシェル部とロアシェル部は、内側樹脂層が高密度ポリエチレン(HDPE)で形成され、外側シート層が耐燃料透過性多層樹脂シートで形成され、耐燃料透過性多層樹脂シートの内側樹脂層と接する層は高密度ポリエチレン(HDPE)と相溶性のある材料で形成された燃料タンクである。
【0031】
請求項6の本発明では、アッパーシェル部とロアシェル部の内側樹脂層は、高密度ポリエチレン(HDPE)で形成されているため、射出成形において成形が容易であるとともに中空樹脂成形品の強度を大きくすることができる。
外側シート層は、耐燃料透過性多層樹脂シートで形成され、耐燃料透過性多層樹脂シートの内側樹脂層と接する層は高密度ポリエチレン(HDPE)と相溶性のある材料で形成されているため、中空樹脂成形品の内部に燃料油を入れた場合には、燃料油の透過を防止することができる。多層シートであるため、耐燃料透過性の層のアッパーシェル部とロアシェル部の内側樹脂層に対向する面に高密度ポリエチレン(HDPE)と接着性の良い層を形成し、外側に耐摩耗性や耐衝撃性の層を形成することができる。耐燃料透過性多層樹脂シートが内側樹脂層の融合部分のフランジ部の先端まで被覆し、フランジ部の先端において、それぞれの耐燃料透過性多層樹脂シートの耐燃料透過性を有する層が近接して融合させることができる。このため、アッパーシェル部とロアシェル部の融合部分のフランジ部の先端から燃料が透過することを防止できる。
【発明の効果】
【0032】
ニップルがニップル取付部とサポートリングに挿入され、シール部材がニップル取付部の外側シート層に当接し、サポートリングの係止爪がニップルの溝部に嵌合してニップルを係止するため、ニップルはニップル取付部に強固に固定されるとともにシール性を確保できる。即ち、ニップルがニップル取付部に挿入されたときに、筒状部の外周に形成された溝部を有するため、ニップルがニップル取付部に挿入されたときに、溝部にサポートリングを係止して、ニップルを固定することができる。また、ニップル外周にシール部材を有するため、シール部材がニップル取付部の外側シート層に当接して、シールすることができ、ニップル取付部から燃料の透過を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明の実施の形態を図1〜図10に基づき説明する。
図1は本発明のニップル取付構造が使用される燃料タンク1の断面図である。図2〜図7は、本発明を燃料タンク1のそれぞれの部分に適用したものを示し、図2と図3はインレットロア部に使用し、図6はブリーザポード部に使用し、図7はフューエルメインポート部に使用したものを示すものである。
【0034】
図1に示すように、燃料タンク1は、分割して成形されたアッパーシェル部10とロアシェル部20から構成される。アッパーシェル部10とロアシェル部20は、それぞれ、射出成形で形成される内側樹脂層15、25と、内側樹脂層15、25の成形後に、外側に接着又は融着される耐燃料透過性多層樹脂シート3から構成される外側シート層16、26の2層から形成される。
燃料タンク1の分割はアッパーシェル部10とロアシェル部20の2個ばかりでなく3個以上に分割することも可能である。
【0035】
アッパーシェル部10には、図2に示すインレットロア取付部13と、図6に示すブリーザポート取付部14が形成されている。インレットロア取付部13は、燃料タンク1内に燃料を注入するインレットホース(図示せず)を取付けるものであり、ブリーザポート取付部14は、燃料給油時に燃料タンク1内のガスをタンク外に逃がすためブリーザホース(図示せず)を取付けるものである。また、17は燃料タンク1から車輌転倒時の燃料漏れを防ぐカットオフバルブである。
なお、アッパーシェル部10の上面には、燃料移送用ホース等の各種のホースを保持するホースクランプ(図示せず)を設けてもよい。
【0036】
ロアシェル部20の内面は、サブタンク5が形成され、サブタンク5内に燃料ポンプユニット4が取付けられている。サブタンク5は、車両が傾いたり振動したりしたときに、燃料タンク1内の燃料を燃料ポンプユニット4が確実にエンジンに送り出すことができるように設けられている。燃料ポンプユニット4からパイプが延びて、図7に示すロアシェル部20のフューエルメインポート取付部23に接続している。フューエルメインポート取付部23にはエンジンに燃料を送る燃料パイプ(図示せず)が取付けられている。
【0037】
アッパーシェル部10とロアシェル部20の開口の全周には、図1に示すように、アッパーシェル部10の接合周縁部11とロアシェル部20の接合周縁部21が形成され、その接合周縁部11、21には、全周に亘りそれぞれ外面から略直角に外側に張り出したフランジ部12,22が形成されている。接合周縁部11、21とフランジ部12,22は、それぞれ相互に対向して融着されている。
フランジ部12,22は、図1に示すように、アッパーシェル部10とロアシェル部20の本体とは断面略L字形に形成される。
【0038】
アッパーシェル部10とロアシェル部20の内側樹脂層15、25の外面は、フランジ部12、22の先端まで全体が、耐燃料透過性多層樹脂シート3が一体的に融着されて、上記の通り、外側シート層16、26を構成している。耐燃料透過性多層樹脂シート3の融着は耐燃料透過性多層樹脂シート3の表面を加熱して行うことができる。このため、アッパーシェル部10とロアシェル部20の全体と、フランジ部12、22の先端まで燃料透過を防止することができる。
【0039】
耐燃料透過性多層樹脂シート3は、例えば、中央の層がエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)又はナイロンで形成された燃料透過を防止するバリヤー層と、そのバリヤー層の上下に変性ポリエチレンから形成される接着層と、その接着層のそれぞれの外面にポリエチレン(PE)から形成される外層から構成される5層のシートである。
【0040】
変性ポリエチレンから形成される接着層は、バリヤー層と外層の両方に対して接着性を有している。このため、バリヤー層と外層を強固に接着することができる。
耐燃料透過性多層樹脂シート3の外側の層は、衝撃や摩耗に強いポリエチレン(PE)から形成されることができ、この場合は、燃料タンク1の強度を増加させ、バリヤー層を保護することができる。内側樹脂層15、25と接合する層は、内側樹脂層15、25がオレフィン系合成樹脂、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)で構成されている場合は、内側樹脂層15、25と融着して、強固に接合されることができる。
【0041】
次に、図2〜図10に基づきニップルとニップル取付部の構造について実施の形態を説明する。
まず、図7〜図10に基づき、本発明の実施の形態であるフューエルメインポート部におけるニップル取付構造を説明する。
【0042】
ロアシェル部20には、ロアシェル部20を形成するときに同時に、図7、図9及び図10に示すように、ニップル取付部であるフューエルメインポート取付部23が形成されている。フューエルメインポート取付部23は、燃料タンク1の内側に向かい円筒状に形成された円筒部23aと、円筒部23aの先端から円筒部23aの中心側に向かって円筒部23aとは略直角に底壁部23bが延設されている。底壁部23bの中心は、後述するフューエルメインポート50を挿入可能な孔が開いている。円筒部23aと底壁部23bは、ロアシェル部20を射出成形するときに同時に成形する。
【0043】
円筒部23aと底壁部23bの外面、即ち燃料タンク1の外側の面には、ロアシェル部20の外面から一体に連続して外側シート層26が密着している。外側シート層26は、ロアシェル部20に接着又は融着されており、円筒部23aと底壁部23bも同様である。外側シート層26は、フューエルメインポート取付部23においては、フューエルメインポート50を挿入可能に孔が開けられている。
【0044】
ニップルであるフューエルメインポート50は、図8に示すように、円筒状の筒状部51と、筒状部51の外周に円盤状に形成されフューエルメインポート取付部23の周囲のロアシェル部20の外面側に当接するフランジ部52と、フューエルメインポート50がフューエルメインポート取付部23に挿入されたときにフューエルメインポート取付部23の底壁部23bよりも燃料タンク1内部側の位置において、筒状部51の外周に形成された溝部55と、フランジ部52の下面に筒状部51から階段状に突出する段部56が形成されている。
【0045】
フューエルメインポート50は、燃料タンク1とは別に射出成形により成形される。その材料は、耐燃料油性の熱可塑性合成樹脂が使用され、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、ポリアミド等の合成樹脂を使用することができる。なお、後述する、インレットロア30及びブリーザポート40も同様の材料を使用して成形することができる。
【0046】
フューエルメインポート50の段部56の下には、シール部材であるシールリング54が取付けられている。シールリング54は、耐燃料性の合成ゴムで形成されている。
フューエルメインポート取付部23の燃料タンク1の内側には、図9に示すように、サポートリング60が嵌挿されている。サポートリング60の形状は、図10に示すように、円筒状に形成された側壁部61と、側壁部61の先端から中心の直角方向に延設され中心にフューエルメインポート50の筒状部51が挿入される孔を有する底辺部62と、底辺部62の先端に形成された係止爪63を有している。サポートリング60は、フューエルメインポート50をフューエルメインポート取付部23に取付ける前に、図9に示すように、予め、フューエルメインポート取付部23に嵌挿されている。
【0047】
フューエルメインポート50をフューエルメインポート取付部23に挿入すると、図7に示すように、フランジ部52がロアシェル部20の外面に当接し、サポートリング60の係止爪63が溝部55に係止して、フューエルメインポート50がフューエルメインポート取付部23から外れることなく、固定される。さらに、シールリング54がフューエルメインポート取付部23内の外側シート層26とフューエルメインポート50の筒状部51の外面に当接して、フューエルメインポート取付部23から燃料の透過を防止することができる。
【0048】
さらに、サポートリング60の側壁部61がフューエルメインポート取付部23の円筒部23aの外周に嵌挿されているため、円筒部23aが経年変形や燃料の膨潤による膨張や強度低下を防止することができ、フューエルメインポート取付部23のシール性を長期にわたり安定して確保することができる。
また、サポートリング60の底辺部62がフューエルメインポート取付部23の底壁部23bの燃料タンク1内の面を保持するため、底壁部23bの変形や膨潤を防止することができるとともに、サポートリング60の移動を防止して、フューエルメインポート50を強固に固定することができる。
【0049】
次に、図2と図3に基づき、本発明の実施の形態であるインレットロア取付構造を説明する。
アッパーシェル部10には、アッパーシェル部10を形成するときに同時に、ニップル取付部であるインレットロア取付部13が形成されている。インレットロア取付部13は、燃料タンク1の内側に向かい円筒状に形成された円筒部13aと、円筒部13aの先端から円筒部13aの中心側に向かって円筒部13aとは略直角に底壁部13bが設けられている。底壁部13bの中心は、後述するインレットロア30を挿入可能な孔が開いている。
円筒部13aと底壁部13bの外面、即ち燃料タンク1の外側の面には、アッパーシェル部10の外面から一体に連続して外側シート層16が密着している。
【0050】
インレットロア30は、円筒状の筒状部31と、筒状部31の外周に形成されインレットロア取付部13の周囲のアッパーシェル部10の外面側に当接するフランジ部32と、インレットロア30がインレットロア取付部13に挿入されたときにインレットロア取付部13の底壁部13bよりも燃料タンク1内部側の位置において、筒状部31の外周に形成された溝部35と、フランジ部32の下面に筒状部31から階段状に突出する段部36が形成されている。
さらに、筒状部31の燃料タンク1内側の先端には、逆止弁33が設けられ、燃料タンク1から燃料が逆流することを防止している。
【0051】
インレットロア30の段部36の下には、シール部材であるシールリング34が取付けられている。
インレットロア取付部13の燃料タンク1の内側には、サポートリング60が嵌挿されている。サポートリング60は、図4に示すように、円筒状に形成された側壁部61と、側壁部61の先端から中心の直角方向に延設され中心にインレットロア30の筒状部31が挿入される孔を有する底辺部62と、底辺部62の先端に形成された係止爪63を有している。
【0052】
インレットロア30をインレットロア取付部13に挿入すると、フランジ部32がアッパーシェル部10の外面に当接し、サポートリング60の係止爪63が溝部35に係止して、インレットロア30がインレットロア取付部13に外れることなく、固定される。さらに、シールリング34がインレットロア取付部13内の外側シート層16とインレットロア30の筒状部31の外面に当接して、インレットロア取付部13から燃料の透過を防止することができる。
【0053】
さらに、サポートリング60の側壁部61がインレットロア取付部13の円筒部13aの外周に嵌挿されているため、円筒部13aが経年変形や燃料の膨潤することを防止することができ、インレットロア取付部13のシール性を確保することができる。
また、サポートリング60の底辺部62がインレットロア取付部13の底壁部13bの燃料タンク1内の面を保持するため、底壁部13bの変形や膨潤を防止することができるとともに、サポートリング60の移動を防止して、インレットロア取付部13を強固に固定することができる。
なお、図3と図5に示したように、サポートリング60の側壁部61をなくして底辺部62と係止爪63のみにすることができる。この場合は、上記と同様に、底壁部13bの変形や膨潤を防止することができるとともに、サポートリング60の移動を防止して、インレットロア取付部13を強固に固定することができる。
【0054】
次に、図6に基づき、本発明の実施の形態であるブリーザポート部におけるニップル取付構造を説明する。
インレットロア取付部13と同様に、アッパーシェル部10には、アッパーシェル部10を形成するときに同時に、ニップル取付部であるブリーザポート取付部14が形成されている。ブリーザポート取付部14は、燃料タンク1の内側に向かい円筒状に形成された円筒部14aと、円筒部14aの先端から円筒部14aの中心側に向かって円筒部14aとは略直角に底壁部14bが設けられている。底壁部14bの中心は、後述するブリーザポート40を挿入可能な孔が開いている。
円筒部14aと底壁部14bの外面、即ち燃料タンク1の外側の面には、アッパーシェル部10の外面から一体に連続して外側シート層16が密着している。
【0055】
ニップルであるブリーザポート40は、外側の先端が直角に屈曲した円筒状の筒状部41と、筒状部41の外周に形成されブリーザポート取付部14の周囲のアッパーシェル部10の外面側に当接するフランジ部42と、ブリーザポート40がブリーザポート取付部14に挿入されたときにブリーザポート取付部14の底壁部14bよりも燃料タンク1内部側の位置において、筒状部41の外周に形成された溝部45と、フランジ部32の下面に筒状部41から階段状に突出する段部46が形成されている。
【0056】
ブリーザポート40の段部46の下には、シール部材であるシールリング44が取付けられている。
ブリーザポート取付部14の燃料タンク1の内側には、サポートリング60が嵌挿されている。サポートリング60は、円筒状に形成された側壁部61と、側壁部61の先端から中心側の直角方向に延設され中心にブリーザポート40の筒状部41が挿入される孔を有する底辺部62と、底辺部62の先端に形成された係止爪63を有している。
【0057】
ブリーザポート40をブリーザポート取付部14に挿入すると、フランジ部42がアッパーシェル部10の外面に当接し、サポートリング60の係止爪63が溝部45に係止して、ブリーザポート40がブリーザポート取付部14に外れることなく、固定される。さらに、シールリング34がブリーザポート取付部14内の外側シート層16とブリーザポート40の筒状部41の外面に当接して、ブリーザポート取付部14から燃料の透過を防止することができる。
【0058】
さらに、サポートリング60の側壁部61がブリーザポート取付部14の円筒部14aの外周に嵌挿されているため、円筒部14aが経年変形や燃料の膨潤を防止することができ、ブリーザポート取付部14のシール性を確保することができる。
また、サポートリング60の底辺部62がブリーザポート取付部14の底壁部14bの燃料タンク1内の面を保持するため、底壁部14bの変形や膨潤を防止することができるとともに、サポートリング60の移動を防止して、ブリーザポート取付部14を強固に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施の態様を示すもので、燃料タンクの断面図である。
【図2】本発明の実施の態様を示すもので、燃料タンクのインレットロア部の断面図である。
【図3】本発明の実施の態様を示すもので、燃料タンクの他のインレットロア部の断面図である。
【図4】本発明の実施の態様を示すもので、サポートリングの斜視図である。
【図5】本発明の実施の態様を示すもので、他のサポートリングの斜視図である。
【図6】本発明の実施の態様を示すもので、燃料タンクのブリーザポート部の断面図である。
【図7】本発明の実施の態様を示すもので、燃料タンクのフューエルメインポート部の断面図である。
【図8】本発明の実施の態様を示すもので、フューエルメインポートの断面図である。
【図9】本発明の実施の態様を示すもので、燃料タンクのフューエルメインポート取付部にフューエルメインポートを挿入する工程を示す断面図である。
【図10】本発明の実施の態様を示すもので、燃料タンクのフューエルメインポート取付部の断面図である。
【図11】従来の燃料タンクのニップル取付け部分の断面図である。
【符号の説明】
【0060】
1 燃料タンク
10 アッパーシェル
13 インレットロア取付部
14 ブリーザポート取付部
13a、14a、23a 円筒部
13b、14b、23b 底壁部
15、25 内側樹脂層
16、26 外側シート層
20 ロアシェル
23 フューエルメインポート取付部
30 インレットロア
31、41、51 筒状部
31,42,52 フランジ部
34、44、54 シールリング
35、45、55 溝部
40 ブリーザポート
50 フューエルメインポート
60 サポートリング
63 係止爪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性合成樹脂製の燃料タンクの液体又は気体の出入口を形成するニップルを取付ける燃料タンクのニップル取付構造において、
上記燃料タンクは、それぞれ射出成形により分割して別々に成形されたアッパーシェル部とロアシェル部の接合周縁部が融合して一体に構成されるとともに、上記アッパーシェル部とロアシェル部は、それぞれ内側樹脂層と、該内側樹脂層の外面を覆う外側シート層とより構成され、
上記ニップル取付構造は、上記アッパーシェル部又はロアシェル部の外壁の一部に形成されたニップル取付部と、該ニップル取付部に取付けられるニップルと、該ニップルを係止するサポートリングを有し、
該ニップル取付部は、上記燃料タンクの内部方向に膨出して形成された円筒部と、該円筒部の燃料タンク内側の先端に上記円筒部の内側面から略直角に円筒中心に向かい延設され中心に上記ニップルを挿入する孔を有する底壁部を設け、上記円筒部と底壁部の上記燃料タンクの外面側は、上記外側シート層により覆われ、
上記ニップルは、上記ニップル取付部に挿入され、液体又は気体を流通させる筒状部と、該筒状部の外周に形成され上記ニップル取付部の周囲の上記燃料タンクの外面側に当接するフランジ部と、上記ニップルが上記ニップル取付部に挿入されたときに上記底壁部よりも燃料タンク内部側の位置の上記筒状部の外周に形成された溝部と、上記フランジ部の下部の上記筒状部の外周に取付けられるシール部材とを有し、
上記サポートリングは、係止爪を有し、
上記ニップルが上記ニップル取付部と上記サポートリングに挿入され、上記シール部材が上記ニップル取付部の外側シート層に当接し、上記サポートリングの係止爪が上記ニップルの溝部に嵌合して上記ニップルを係止することを特徴とする燃料タンクのニップル取付構造。
【請求項2】
上記サポートリングは、円筒状に形成された側壁部と、該側壁部の先端から側壁部中心の直角方向に延設され中心に上記ニップルの筒状部が挿入される孔を有する底辺部と、該底辺部の先端に形成された上記係止爪を有し、上記サポートリングの側壁部が上記ニップル取付部の円筒部の外周に嵌挿されるととともに、上記底辺部が上記ニップル取付部の底壁部の燃料タンク内の面を保持し、上記係止爪が上記ニップルの溝部に嵌合してニップルを係止する請求項1に記載の燃料タンクのニップル取付構造。
【請求項3】
上記外側シート層は、耐燃料透過性多層樹脂シートである請求項1又は請求項2に記載の燃料タンクのニップル取付構造。
【請求項4】
上記ニップルのフランジ部の下面に筒状部から突出する段部を形成し、該段部で上記シール部材を上記ニップル取付部の円筒部に保持した請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の燃料タンクのニップル取付構造。
【請求項5】
上記ニップルは、上記燃料タンクに燃料を注入するインレットロア、上記燃料タンク内部の気体が出入りするブリーザーポート又は燃料タンク内部の燃料を排出するフューエルメインポートの少なくともいずれかである請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の燃料タンクのニップル取付構造。
【請求項6】
上記アッパーシェル部とロアシェル部は、上記内側樹脂層が高密度ポリエチレン(HDPE)で形成され、上記外側シート層が耐燃料透過性多層樹脂シートで形成され、耐燃料透過性多層樹脂シートの上記内側樹脂層と接する層は高密度ポリエチレン(HDPE)と相溶性のある材料で形成された請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の燃料タンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−168766(P2008−168766A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−3308(P2007−3308)
【出願日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(502148037)株式会社エフティエス (34)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】