説明

燃料タンクの給油部構造

【課題】給油ガンを給油口から抜くときに給油ガンの表面の燃料を拭い取ることが可能な燃料タンクの給油部構造を得る。
【解決手段】給油口26を構成する給油口部材16の内面には、給油口26に挿入された給油ガン28の外周面に下側から接触する拭い取り部材24が設けられている。給油ガン28を給油口26から引き抜くとき、給油ガン28の外周面に燃料が付着していても、この燃料の少なくとも一部が接触面34によって拭い取られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンクの給油部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の燃料タンクへの給油時、特に給油ガンを給油口から抜き取るときに、給油ガンの表面に付着した燃料が外部に漏出しないようにすることが好ましい。特許文献1には、給液ノズルのノズルパイプの筒先が給液口に挿入されている状態で、ノズルパイプ内に気体を噴射して内部に付着している残留油液を給液口内に排出することで、給液作業終了後にノズルパイプ先端から液垂れを起さないようにした給液装置が記載されている。
【0003】
しかし、特許文献1の構造では、ノズルパイプ内の油液を除去しているに過ぎず、その表面に付着した燃料を除去することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−292478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、給油ガンを給油口から抜くときに給油ガンの表面の燃料を拭い取ることが可能な燃料タンクの給油部構造を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明では、燃料タンクへの給油用の給油ガンが挿入される給油口を構成する給油口部材と、前記給油口部材の内部に設けられ、前記給油ガンが前記給油口から引き抜かれるときに給油ガンに接触して給油ガン表面の燃料を拭い取る拭い取り部材と、を有する。
【0007】
この燃料タンクの給油部構造では、給油ガンが給油口から引き抜かれるときは、給油口部材の内部に設けられた拭い取り部材が、給油ガンの表面に接触して給油ガン表面の燃料を拭い取って除去する。したがって、このような拭い取り部材が設けられていない構成と比較して、給油ガン表面に付着している燃料の量が少なくなる。給油ガンの表面に付着している燃料の、いわゆる液垂れを抑制できる。
【0008】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、前記給油口を開閉可能な開閉弁を備え、前記拭い取り部材が前記開閉弁よりも前記給油口の奥側に配置されている。
【0009】
したがって、開閉弁を開けて給油口を開放し、給油口部材の給油口に給油ガンを挿入することで燃料タンクへ給油することができる。拭い取り部材は開閉弁よりも給油口の奥側に配置されているので、給油ガンの表面に付着した燃料が開閉弁への転移(再付着)することを抑制できる。
【0010】
請求項3に記載の発明では、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記拭い取り部材に、前記給油ガンから拭い取った燃料が給油ガンに再付着しないように該燃料を給油ガン表面から離間した位置に逃がす逃がし部が形成されている。
【0011】
給油ガンから拭い取り部材により拭い取られた燃料が、逃がし部により、給油ガン表面から離間した位置に逃がされるので、効果的に給油ガン表面から燃料を除去することが可能になる。
【0012】
請求項4に記載の発明では、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の発明において、前記拭い取り部材が前記給油口部材に固定されている。
【0013】
このように拭い取り部材を給油口部材に固定することで、簡単な構造で、給油ガンに対する給油口部材の接触状態を良好に維持できるようになる。
【0014】
請求項5に記載の発明では、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の発明において、前記給油口部材に設けられ、前記拭い取り部材を前記給油口に挿入された給油ガンの外周面に押圧可能に支持する押圧支持部材、を有する。
【0015】
このように、押圧支持部材によって、拭い取り部材を給油ガンに対し押圧することで、給油ガンがその軸方向に移動した場合でも、この移動に追従して、給油ガンに対する拭い取り部材の接触状態を良好に維持できるようになる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は上記構成としたので、給油ガンを給油口から抜くときに給油ガンの表面の燃料を拭い取ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態の燃料タンクの給油部構造を一部破断して示す斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態の燃料タンクの給油部構造を給油ガンが挿入された状態で示す図1の2−2線断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態の燃料タンクの給油部構造を部分的に拡大して示す一部破断斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態の第1変形例の燃料タンクの給油部構造を部分的に拡大して示す一部破断斜視図である。
【図5】本発明の第1実施形態の第1変形例の燃料タンクの給油部構造を拭い取り部材の近傍で部分的に拡大して示す平面図である。
【図6】本発明の第1実施形態の第2変形例の燃料タンクの給油部構造を部分的に拡大して示す一部破断斜視図である。
【図7】本発明の第2実施形態の燃料タンクの給油部構造を部分的に拡大して示す一部破断斜視図である。
【図8】本発明の第3実施形態の燃料タンクの給油部構造を給油ガンが挿入された状態で示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1及び図2には、本発明の第一実施形態の燃料タンクの給油部構造(以下、単に「給油部構造」とする)12が示されている。図1から分かるように、本実施形態では、給油口を閉塞するためのキャップが不要とされており、いわゆるキャップレスの構造となっている。
【0019】
給油部構造12は、インレットパイプ14の上部に設けられている。インレットパイプ14の下端は、図示しない燃料タンクに接続されている。
【0020】
インレットパイプ14の上端には、略円筒状の給油口部材16が構成されている。給油口部材16の内部が給油口26(その中心を中心線CLで示す)となっており、上端の開口部18から給油ガン28を給油口26に挿入して、燃料タンクに給油することが可能とされている。
【0021】
給油口部材16の上部、すなわち給油口26の開口部18には、フラッパバルブ20が配置されている。フラッパバルブ20は、その上部に設けられたヒンジ22によって、給油口部材16に回動可能に取り付けられている。そして、フラッパバルブ20は、給油口26を閉塞する閉塞位置TP(二点鎖線で示す位置)と、給油口26を開放する開放位置HP(実線で示す位置)との間を回動する。開放位置HPでは、フラッパバルブ20の下部、すなわちヒンジ22が配置された側と反対側が、燃料タンク側に大きく移動している。
【0022】
なお、給油口部材16の内面には図示しないストッパ突起が形成されており、フラッパバルブ20の回動範囲(開放位置)が所定範囲に制限されている。また、ヒンジ22には、フラッパバルブ用バネ44が巻きかけられている。フラッパバルブ用バネ44は、フラッパバルブ20を閉塞位置TPに向かって付勢しており、不用意に給油口26が開放されないようになっている。フラッパバルブ20は、開口部18から挿入した給油ガン28によって押されると、フラッパバルブ用バネ44の付勢力に抗して、開放位置HPへと移動(回動)する。
【0023】
図3にも詳細に示すように、給油口部材16の内面には、給油口26に挿入された給油ガン28の外周面に下側から接触する拭い取り部材24が設けられている。本実施形態では、給油口部材16の内周側に位置する固定台座30が固定されており、拭い取り部材24は、この固定台座30に固定されている。なお、拭い取り部材24を固定台座30と一体化してもよい。
【0024】
固定台座30と拭い取り部材24は、いずれも、フラッパバルブ20側(開口部18側)にテーパー面32が形成されている。テーパー面32は、給油ガン28が挿入時に接触すると、給油ガン28を給油口26の中心(中心線CL)に案内する。
【0025】
拭い取り部材24の上面は、給油ガン28の外周面(表面)に接触する接触面34とされている。特に、拭い取り部材24を矢印A1方向(給油ガン28を給油口26から抜く方向)に見たとき、接触面34の曲率半径は給油ガン28の外周面の曲率半径と等しくなっており、接触面34は給油ガン28の外周面に面接触するように湾曲されている。給油ガン28の外周面が接触面34に接触した状態で給油ガン28が給油口26から抜かれると、接触面34は、給油ガン28の外周面に面接触しているので、この外周面に付着した燃料の一部を拭い取る作用を有している。
【0026】
拭い取り部材24には、接触面34側から複数のスリット38が形成されており、スリット38以外の部分が複数のリブ40となっている。スリット38には、給油ガン28の外周面が接触面34によって拭い取られた燃料が一時的に流れ込む。すなわち、スリット38は、給油ガン28の外周面から拭い取られた燃料を一時的に収容することで、効果的な拭い取りが可能をしている。スリット38は、本発明に逃がし部の一例である。
【0027】
本実施形態では、スリット38の長手方向が、給油ガン28を給油口26から抜く方向(矢印A1方向)に沿っており、給油口26の奥側及び手前側ではスリット38は開放されている。このため、スリット38に収容された燃料はスリット38内を移動し、この開放部分からスリット38外(給油口26内)に流れ出る。
【0028】
図1及び図2に示すように、給油口部材16の内面には、拭い取り部材24に対し、挿入された給油ガン28を挟んで対向する位置に、案内凸部36が形成されている。案内凸部36は、その下面の中央部分が、給油ガン28と同様の曲率で円弧状に湾曲した案内面36Sとされている。
【0029】
案内凸部36にも、フラッパバルブ20側(開口部18側)に、給油口26への給油ガン28の挿入時に、給油ガン28を給油口26の中心(中心線CL)に案内するテーパー面42が形成されている。
【0030】
次に、本実施形態の給油部構造12の作用を説明する。
【0031】
通常は、図1に二点鎖線で示すように、フラッパバルブ20が、フラッパバルブ用バネの付勢力を受けて閉塞位置TPを維持しており、給油口26は閉塞されている。
【0032】
給油時には、給油ガン28を給油口26に差し入れる。フラッパバルブ用バネ44の付勢力は給油ガン28から作用する押圧力よりも小さく設定されており、給油ガン28に押されたフラッパバルブ20が開放位置HPへと回動するので、給油ガン28をさらに奥へと挿入することができる。
【0033】
給油ガン28の挿入途中で、給油ガン28の先端がテーパー面32及びテーパー面42のいずれか一方に接触することがある。この状態でさらに給油ガン28を給油口26の奥に差し入れると、テーパー面32又はテーパー面42によって給油ガン28が給油口26の中心に向かって案内される。所定位置まで給油ガン28を挿入した状態で、給油を行うことができる。また、給油ガン28を給油口26の所定位置まで挿入して給油している状態では、接触面34が給油ガン28に接触しており、給油ガン28が安定的に支持される。
【0034】
給油ガン28を給油口26から引き抜くときには、給油ガン28の外周面に接触面34が接触した状態が維持されながら、給油ガン28が引き抜かれる。このため、給油ガン28の外周面に燃料が付着していても、この燃料の少なくとも一部が接触面34によって拭い取られ、給油ガン28の外周面から除去される。このため、給油ガン28に付着した燃料が、給油口26の外部(たとえば車体のパネル)等を流れ落ちること(いわゆる液垂れ)を抑制できる。特に、第1実施形態では、拭い取り部材24は、給油口部材16に対し固定されているので、給油ガン28の外周面に対する接触面34の接触状態を安定的に維持できる。
【0035】
しかも、第1実施形態では、拭い取り部材24は給油口26の下側に位置しており、接触面34は、給油口26に挿入された給油ガン28に対し下側から接触している。給油ガン28の外周面では、燃料は重力により下方に付着しやすいが、接触面34が給油ガン28の外周面に下方から接触するので、効果的に燃料を拭い取ることができる。
【0036】
加えて、第1実施形態では、拭い取り部材24に接触面34にスリット38を形成しており、拭い取った燃料の一部はこのスリット38内に雫状に落下して収容される。したがって、給油ガン28を給油口から引き抜く動作において、効果的に給油ガン28の外周面から燃料を拭い取ることができる。スリット38内に収容された燃料(拭い取られた燃料)は、スリット38の奥側又は手前側の開放部分から給油口26内に流出する。
【0037】
なお、給油ガン28を給油口26から完全に引き抜くと、フラッパバルブ用バネ44の付勢力で、図1に二点鎖線で示すようにフラッパバルブ20が閉塞位置TPへ回動し、給油口26を閉塞する。
【0038】
図4には、第1実施形態の第1変形例の給油部構造に適用される拭い取り部材54が拡大して示されている。第1変形例の拭い取り部材54はが固定台座30と一体化されている。また、第1変形例の拭い取り部材54では、接触面34に形成されたスリット58の形状が第1実施形態と異なっているが、これ以外は同一の構成である。
【0039】
すなわち、第1変形例のスリット58は、図5にも詳細に示すように、長手方向の全体あるいは一部(図5に示す例では長手方向の中間部分)が、給油ガン28の引き抜き方向(矢印A1方向)に対し傾斜している。そして、矢印A1方向に見ると、スリット58による隙間が生じないようになっている。たとえば、スリット58内に、矢印A1と平行な任意の補助線A2を想定すると、補助線A2がスリット58の一端側から他端側(図5における右側から左側)に突き抜けることはない。換言すれば、給油ガン28の外周面が接触面34に接触した状態で矢印A1方向に移動すると、給油ガン28の外周面の周方向では、接触面34が広い範囲(隙間の無い範囲)で確実に給油ガン28の外周面に接触し、燃料を拭い取ることができる。
【0040】
図6には、第1実施形態の第2変形例の給油部構造に適用される拭い取り部材64が拡大して示されている。第2変形例の拭い取り部材64においても、拭い取り部材64が固定台座30と一体化されている。そして、接触面34に形成されたスリット68が第1実施形態のスリット38よりも幅広で、且つスリット68の数は、第1実施形態よりも少なくなっているが、これ以外は同一の構成である。
【0041】
したがって、第2変形例においても、給油ガン28の外周面から拭い取ったスリット68に燃料をスリット68に収容することができる。第2変形例では、リブ70が第1実施形態のリブ40と比較して厚肉になるので、給油ガン28の外周面が接触面34に接触した状態でのリブ40の不用意な変形を抑制できる。
【0042】
なお、これに対し、第1実施形態では、スリット38が第2変形例よりも幅狭であり、この幅を適切に設定することで、燃料に表面張力を作用させて、燃料に対するスリット38の吸収性を高めることが可能である。
【0043】
図7には、本発明の第2実施形態の給油部構造112が部分的に拡大して示されている。第2実施形態において、第1実施形態と同一の構成要素、部材等については同一符号を付して、詳細な説明を省略する。また、給油部構造112の全体的構成は、第1実施形態の給油部構造12と略同一であるので、図示を省略する。
【0044】
第2実施形態の給油部構造112では、拭い取り部材124の接触面134が、第1実施形態の接触面34と同様に、給油口26に挿入された給油ガン28の外周面に面接触可能な湾曲形状とされているが、第1実施形態に係るスリット38(図3参照)は形成されていない。
【0045】
また、固定台座30と拭い取り部材124の間に間隙が構成されており、この間隙に、矢印B1方向に見て略横U字状の板バネ138が配置されている。板バネ138は、拭い取り部材124を所定位置で保持しており、接触面134は、第1実施形態における接触面34よりも、わずかに中心線CLに近い位置となっている。
【0046】
したがって、給油口26に給油ガン28が挿入されると、接触面34が給油ガン28の外周面に押されて中心線CLから離間する方向にわずかに移動する。そして、板バネ138が弾性変形することで、拭い取り部材124に、中心線CLに向かう方向の付勢力を作用させる。第2実施形態では、固定台座30と板バネ138によって、本発明に係る押圧支持部材が構成されている。
【0047】
なお、板バネ138にも、フラッパバルブ20側(開口部18側)にテーパー面32が形成されている。
【0048】
このような構成とされた第2実施形態の給油部構造112においても、第1実施形態の給油部構造12と同様の作用効果を奏する。
【0049】
特に第2実施形態の給油部構造112では、給油ガン28を給油口26から引き抜くときに給油ガン28が上下方向(矢印C1方向)に移動しても、板バネ138の付勢力が拭い取り部材24に作用することで、接触面34が給油ガン28の外周面に接触した状態を維持可能となる。
【0050】
また、給油ガン28が矢印A1方向に移動しない場合でも、板バネ138の付勢力で接触面34を給油ガン28の外周面に押圧できるので、給油ガン28の外周面からより確実に燃料を拭い取ることが可能となる。
【0051】
図8には、本発明の第3実施形態の給油部構造212が示されている。第3実施形態において、第1実施形態又は第2実施形態と同一の構成要素、部材等については同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0052】
第3実施形態の給油部構造212では、第1実施形態の固定台座30(図1〜図3参照)は設けられておらず、これに代えて、第2フラッパバルブ220が設けられている。第2フラッパバルブ220は、その下部に設けられたヒンジ222により、給油口部材16に回動可能に取り付けられている。そして、回動により、二点鎖線で示す起立位置SPと、実線で示す横臥位置DPとの間を回動する。なお、フラッパバルブ20の回動軌跡と第2フラッパバルブ220の回動軌跡とは重ならないようになっている。
【0053】
ヒンジ222には第2フラッパバルブ用バネ244が装着されており、第2フラッパバルブ220を起立位置SPに向かって回動付勢している。第2フラッパバルブ220の回動は、横臥位置ではストッパ238に当たって制限され、同様に、起立位置SPにおいても、図示しないストッパに当たって制限される。また、給油口部材16には、起立位置SPにある第2フラッパバルブ20に接触して給油口26を閉塞するために、図示しない閉塞部材が形成されている。
【0054】
第2フラッパバルブ220には、回動先端側(ヒンジ222の反対側)で、且つ横臥位置DPにおける中心線CL側の位置に、拭い取り部材224が設けられている。拭い取り部材224には、第1実施形態の拭い取り部材24や第2実施形態の拭い取り部材124と同様に、給油口26に挿入された給油ガン28の外周面に面接触する接触面34が形成されている。拭い取り部材224は、第2フラッパバルブ220が横臥位置DPにあるとき、給油ガン28を挟んで案内凸部36と対向している。第3実施形態では、第2フラッパバルブ220と第2フラッパバルブ用バネ244によって、本発明に係る押圧支持部材が構成されている。
【0055】
このような構成とされた第3実施形態の給油部構造212では、通常は、フラッパバルブ20に加えて、第2フラッパバルブ220によって給油口26が二重に閉塞されている。
【0056】
給油ガン28を給油口26に差し入れると、まず、フラッパバルブ20が給油ガン28に押されて開放位置HPとなり、次に、第2フラッパバルブ220が給油ガン28に押されて横臥位置DPとなる。これにより、給油口26が開放され、給油を行うことができる。給油ガン28の挿入途中では、給油ガン28の先端がテーパー面32又はテーパー面42に接触すると給油ガン28が給油口26の中心に案内される。
【0057】
給油ガン28を給油口26から引き抜くときは、給油ガン28の外周面に接触面34が接触した状態が維持されるので、給油ガン28の外周面に付着した燃料も一部が接触面34によって拭い取られ、給油ガン28の外周面から除去され、いわゆる液垂れを抑制できる。
【0058】
しかも、第3実施形態では、コイルバネの回転付勢力によって第2フラッパバルブ220が横臥位置DPから起立位置SPに向かって付勢されているので、接触面34にも給油ガン28の外周面への押圧力が作用する。このため、給油ガン28を給油口26から引き抜くときに給油ガン28が上下方向(矢印C1方向)に移動しても、接触面34が給油ガン28の外周面に接触した状態を維持可能となる。また、給油ガン28が矢印C1方向に移動しない場合でも、板バネ138の付勢力で接触面34を給油ガン28の外周面に押圧し、給油ガン28の外周面からより確実に燃料を拭い取ることが可能となる。
【0059】
なお、第3実施形態において、フラッパバルブ20のみによって給油口26を閉塞することも可能であるため、この場合には、第2フラッパバルブ220が、起立位置SPにおいて給油口20を閉塞する作用を有していなくてもよい。
【0060】
また、上記第2実施形態及び第3実施形態において、第1実施形態と同様に、接触面34にスリット38、58、68等を形成してもよい。ただし、第2実施形態及び第3実施形態では、板バネ138あるいはコイルバネ238の付勢力が拭い取り部材124、224に作用するので、スリット38、58、68等を形成したことでリブ40があまりに薄肉になると、リブ40が給油ガン28の外周面に押圧されて倒れ込みやすくなる。したがって、このような倒れ込みを抑制可能となるようにリブが十分な幅を有していることが好ましい。もちろん、これとは逆に、第1実施形態の拭い取り部材24において、スリット38を形成しなくてもよい。
【0061】
本発明の逃がし部は、これらのスリット38、58、68等に限定されず、要するに、給油ガン28の外周面から拭い取った燃料を、この外周面から離間した位置に逃がすことで、給油ガン28への燃料の再付着を抑制することが可能であればよい。たとえば、接触面34に形成された1又は複数の窪み(凹部)と、この窪みに溜まった燃料を窪みのそれぞれから排出させる排出流路あるいは流出孔を備えた構造でもよい。
【0062】
また、上記各実施形態では、フラッパバルブ20よりも給油口26の奥側に拭い取り部材を設けた構造のものを例に挙げているが、フラッパバルブ20よりも手前側に拭い取り部材24が設けられていてもよい。各実施形態のようにフラッパバルブ20よりも奥側に拭い取り部材24を設けると、フラッパバルブ20への燃料の付着(給油ガン28からの転移)を抑制できる。
【0063】
拭い取り部材24、124、224は、給油口26から引き抜かれる給油ガン28の外周面に対し、下側から接触する構造のものに限らず、たとえば、給油ガン28の表面の全周にわたって接触する構造でもよい。さらに、給油ガン28の外周面に上側から接触しても、接触した部分では燃料を拭い取ることができる。
【0064】
拭い取り部材24、124、224の材質は、給油ガン28の外周面との接触性を良好に維持して、燃料を拭い取ることが可能であれば特に限定されないが、スリット38を形成しない拭い取り部材の場合は、たとえば樹脂、ゴムあるいはエラストマーを適用できる。スリット38を形成した拭い取り部材であっても、リブ40に所定の剛性を確保可能であれば、これらの樹脂、ゴムあるいはエラストマーを適用可能である。特に、ゴムやエラストマーでは、一般的に燃料が接触したときの接触角が大きくなり、燃料によって拭い取り部材が濡れない(燃料が拭い取り部材にはじかれる)ので、拭い取り部材の燃料切れが良くなる。
【0065】
本発明の開閉弁としては、上記したフラッパバルブ20に限定されず、給油口を確実に開閉できるものであればよい。フラッパバルブ20を用いた構造において、ヒンジ22の位置も限定されず、たとえばフラッパバルブ20の下部にヒンジ22を設けて、いわゆる下開きのフラッパバルブとしてもよい。このような下開きのフラッパバルブでは、フラッパバルブよりも奥側に拭い取り部材24、124、224を設けて、給油ガン28からフラッパバルブへの燃料の転移(付着)を抑制することが好ましい。
【0066】
さらに、フラッパバルブ20等の開閉弁を有さない給油部(たとえばキャップ等で開閉される構造)に本発明を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0067】
12 給油部構造
14 インレットパイプ
16 給油口部材
18 開口部
20 フラッパバルブ(開閉弁)
24 拭い取り部材
26 給油口
28 給油ガン
30 固定台座
34 接触面
38 スリット(逃がし部)
40 リブ
54 拭い取り部材
58 スリット(逃がし部)
64 拭い取り部材
68 スリット(逃がし部)
70 リブ
112 給油部構造
124 拭い取り部材
134 接触面
138 板バネ(押圧支持部材)
212 給油部構造
220 第2フラッパバルブ(押圧支持部材)
222 ヒンジ
224 拭い取り部材
238 コイルバネ(押圧支持部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンクへの給油用の給油ガンが挿入される給油口を構成する給油口部材と、
前記給油口部材の内部に設けられ、前記給油ガンが前記給油口から引き抜かれるときに給油ガンに接触して給油ガン表面の燃料を拭い取る拭い取り部材と、
を有する燃料タンクの給油部構造
【請求項2】
前記給油口を開閉可能な開閉弁を備え、
前記拭い取り部材が前記開閉弁よりも前記給油口の奥側に配置されている請求項1に記載の燃料タンクの給油部構造。
【請求項3】
前記拭い取り部材に、前記給油ガンから拭い取った燃料が給油ガンに再付着しないように該燃料を給油ガン表面から離間した位置に逃がす逃がし部が形成されている請求項1又は請求項2に記載の燃料タンクの給油部構造。
【請求項4】
前記拭い取り部材が前記給油口部材に固定されている請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の燃料タンクの給油部構造。
【請求項5】
前記給油口部材に設けられ、前記拭い取り部材を前記給油口に挿入された給油ガンの外周面に押圧可能に支持する押圧支持部材、を有する請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の燃料タンクの給油部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−144152(P2012−144152A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4210(P2011−4210)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】