説明

燃料タンクの開閉装置

【課題】燃料タンクの開閉装置は、ノズル検知機構およびフラップバルブ機構の構成を簡単にする。
【解決手段】燃料タンクの開閉装置は、タンク開口形成部材11と、開閉部材21を有するフラップバルブ機構20と、開閉部材21の開き動作をロック位置または非ロック位置とを切り換える開閉起動機構40とを備えている。開閉起動機構40は、開閉部材21に装着され給油ノズルFZによる挿入方向への移動力を受ける導入押圧部53を有するノズル検知機構50と、タンク開口形成部材11に装着され、開閉部材21に係合・係脱することでロック位置または非ロック位置を選択的にとるロック部材61を有し、導入押圧部53に押されることでロック部材61をロック位置から非ロック位置へ移動させるロック機構60とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給油ノズルの挿入力を利用してフラップバルブを開いて、燃料タンクへ給油するための燃料タンクの開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の燃料タンクの開閉装置として、特許文献1のように、タンク開口形成部材の注入口を開閉するシャッタ機構(フラップバルブ機構)と、シャッタ機構の開き動作を許容するロック機構とを備えた構成が知られている。ロック機構は、ノズルガイド部の内径位置決め部(ノズル検知機構)と、ロック部材とを備え、給油ノズルの内径側の先端で押されることで、ロック部材をロック位置から非ロック位置に移行させることで、シャッタ機構の開き動作を許容し、給油ノズルの先端で押すことでシャッタを開き、これにより給油を行なっている。
【0003】
しかし、従来の燃料タンクの開閉装置では、シャッタ機構にロック部材や内径位置決め部を搭載しているために、その構成や配置が複雑になり、しかも、給油ノズルの内径で定まる内径位置決め部に、給油ノズルを導くために厳しい寸法公差を必要とするという課題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−49952
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来の技術の問題点を解決することを踏まえ、ノズル検知機構およびフラップバルブ機構の構成を簡単にした燃料タンクの開閉装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
適用例1は、燃料タンクへ燃料を供給する通路を開閉する燃料タンクの開閉装置において、
給油ノズルを挿入するための挿入通路、注入口を経て上記燃料タンクに接続される燃料通路を形成するタンク開口形成部材と、
上記タンク開口形成部材内に配置され、上記給油ノズルの先端で押されることで上記注入口を開閉する開閉部材と、を有するフラップバルブ機構と、
を備え、
上記開閉部材の開き動作をロックするロック位置と、上記給油ノズルにより押圧されたときに上記開閉部材の開き動作を許容する非ロック位置とを切り換える開閉起動機構と、
を備え、
上記開閉起動機構は、
上記開閉部材に装着されるとともに上記挿入通路に配置され、上記給油ノズルによる挿入方向への移動力を受ける導入押圧部を有するノズル検知機構と、
上記注入口の周辺のタンク開口形成部材に装着され、上記開閉部材に係合・係脱することで上記ロック位置または上記非ロック位置を選択的にとるロック部材を有し、上記導入押圧部に押されることで上記該ロック部材を上記ロック位置から上記非ロック位置へ移動させるロック機構と、
を備えていることを特徴とする。
【0008】
適用例1にかかる燃料タンクの開閉装置では、給油ノズルをタンク開口形成部材の挿入通路から挿入して、給油ノズルの先端がノズル検知機構の導入押圧部を押すと、ロック機構のロック部材がロック位置から非ロック位置へ移動して、開閉部材の開き動作を許容する状態になる。さらに、給油ノズルを押し入れると、フラップバルブ機構の開閉部材が開き動作を行ない、これにより、給油ノズルから燃料通路に給油する。給油を終えて、給油ノズルを燃料通路、挿入通路から抜くと、ロック部材が被ロック部に係合する。これにより、開閉部材がロック位置で注入口を閉じた初期状態に戻る。
【0009】
また、開閉起動機構は、ノズル検知機構を構成するノズル検知部材だけが開閉部材に装着され、ロック機構を構成するロック部材が、タンク開口形成部材に装着されており、つまり、開閉部材に、ロック部材を配置しなくてもよいから、開閉部材に複雑な移動機構を設ける必要がなく、その構成を簡単にできる。
【0010】
さらに、ノズル検知部材は、開閉部材に装着されているので、タンク開口形成部材の挿入通路に面した箇所に複数の部材を配設する必要がなく、構成を簡単にできる。
【0011】
また、導入押圧部は、開閉部材に連動して燃料通路の奥側へ移動し、導入口から注入口に至る挿入通路から待避する。よって、給油ノズルは、導入押圧部に干渉することなく、注入口より燃料タンク側へ挿入できるから、満タン検知孔に、燃料通路を上昇する燃料が早い段階にて接触し、オートストップを作動させることができる。よって、タンク開口形成部材の導入口から燃料が溢れ難い。
【0012】
[その他の適用例]
他の適用例は、ノズル検知部材の導入押圧部の移動方向とロック部材の移動方向とが径方向で同一とする構成をとることができる。この構成により、作動方向を変換するカムなどの機構が不要であり、構成を簡単にできる。
【0013】
さらに、他の適用例にかかるロック機構のロック部材は、ロック係合部と、ロック係合部と一体に形成され長穴に注入口形成部材の支持突部をそれぞれ挿入して支持するとともに、開口形成部材の上壁で抑える構成をとることができる。この構成により、ロック部材は、注入口形成部材に保持されているので、ロック部材を抜止めするための別の機構が不要であり、構成を簡単にできる。
【0014】
別の適用例にかかる導入押圧部は、開閉部材の立壁に回動可能に支持され、導入押圧部の回動により、ロック係合部が径方向の外方に移動して、被ロック部から外れるように構成することができる。さらに、導入押圧部は、挿入通路の両側に配置するとともに、該導入押圧部を連結するアームを備える構成をとることができる。この構成により、アームにリターンスプリングとして作用を付加するとともに、複数の導入押圧部が複数個あっても、一体になるから、組付作業などが簡単になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施例にかかる燃料タンクの開閉装置の給油蓋を開いた状態を示す斜視図である。
【図2】燃料タンクの開閉装置の開口部を示す平面図である。
【図3】図2の3−3線に沿った断面図である。
【図4】タンク開口形成部材を一部破断しかつ分解した斜視図である。
【図5】図3の燃料タンクの開閉装置の上部を示す断面図である。
【図6】図5の6−6線に沿った断面図である。
【図7】燃料タンクの開閉装置の要部を分解した断面図である。
【図8】フラップバルブ機構および開閉起動機構を一部破断しかつ分解して示す斜視図である。
【図9】開閉起動機構の一部を破断して示す斜視図である。
【図10】開閉起動機構を分解した斜視図である。
【図11】燃料タンクの開閉装置の給油動作を説明する説明図である。
【図12】図11に続く動作を説明する説明図である。
【図13】燃料タンクの開閉装置の給油動作を説明する説明図である。
【図14】図13に続く動作を説明する説明図である。
【図15】本発明の第2実施例にかかる燃料タンクの開閉装置を示す断面図である。
【図16】図15に続く給油動作を説明する説明図である。
【図17】ノズル検知部材および押圧部材の一部を破断しかつ分解して示す斜視図である。
【図18】第2実施例の作用を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以上説明した本発明の構成・作用を一層明らかにするために、以下本発明の好適な実施例について説明する。
【0017】
A.第1実施例
(1) 燃料タンクの開閉装置の概略構成
図1は本発明の第1実施例にかかる燃料タンクの開閉装置を説明する斜視図である。自動車の車体の後部には、燃料を給油するための給油蓋FLが開閉可能に支持されている。給油蓋FLは、車体の外板に倣った蓋本体FLaがヒンジFLbを介して車体の外板に開閉可能に支持されている。給油蓋FLを開いたスペースは、給油室FRになっており、この給油室FR内に、基板BPに支持された燃料タンクの開閉装置10が配置されている。燃料タンクの開閉装置10は、燃料キャップを用いないで、燃料タンクに燃料を供給するための機構であり、給油蓋FLを開いた後に、給油ノズルからの外力で燃料通路を開閉することで、給油ノズルから燃料タンクへ燃料を供給することができる機構である。以下、燃料タンクの開閉装置の詳細な構成について説明する。
【0018】
(2) 各部の構成および動作
図2は燃料タンクの開閉装置10の開口部を示す平面図、図3は図2の3−3線に沿った断面図である。図3において、燃料タンクの開閉装置10は、燃料タンク(図示省略)に接続される燃料通路11Pを有するタンク開口形成部材11と、フラップバルブ機構20と、フラップバルブ機構20を開閉するための開閉起動機構40とを備えている。
【0019】
(2)−1 タンク開口形成部材11
図4はタンク開口形成部材11を一部破断しかつ分解した斜視図である。図3および図4において、タンク開口形成部材11は、燃料通路11Pを構成する管体であり、燃料タンクに接続された金属製の接続管12と、接続管12の上部に固定された開口形成部材13と、開口形成部材13の内側から下方に向けて配置された補強材16と、接続管12の内側に装着されたノズルガイド部材17と、ノズルガイド部材17の上方に配置された注入口形成部材18と、フラップバルブ機構20を支持するための弁支持部19とを備えている。
【0020】
図3に示すように、接続管12は、燃料タンク側を徐々に縮径した縮径部12aと、縮径部12aに接続された直管部12bとを備え、これらを一体に形成している。図4において、開口形成部材13は、接続管12の上部に装着された円筒状の側壁部13aと、上壁13bとを備え、カップ状に形成されており、給油ノズルFZを挿入するための挿入通路13Pを形成している。上壁13bは、導入口13Paを形成している。補強材16は、開口形成部材13の内側からノズルガイド部材17の外側へ配置されており、フィルタなどを収納するための収納部16aを備えている。ノズルガイド部材17は、給油ノズルを燃料通路11Pの奥まで導く部材であり、円筒壁17aと、円筒壁17aの下部から拡径された拡径壁17bと、拡径壁17bの内側に配置されたノズルガイド17cとを備えている。ノズルガイド17cの中央部には、挿入開口17dが形成されている。また、円筒壁17aには、フラップバルブ機構20の底部を挿入してフラップバルブ機構20の開度を大きくする逃がし穴17eが形成されている。
【0021】
フラップバルブ機構20(図3)は、注入口形成部材18および弁支持部19を介して接続管12(図3)に固定されている。注入口形成部材18は、接続管12の上部に固定され、フラップバルブ機構20の一部を支持するための部材であり、燃料通路11Pの一部を形成する注入口18Paを有する円板部18aを備え、注入口18Paの開口周縁部の下部をシール部18bとしている。注入口形成部材18の外周部は、ガスケットGS1を介して接続管12の内壁とシールされている。弁支持部19は、注入口形成部材18内に保持されており、半円筒壁19aと、半円筒壁19aの上部からフラップバルブ機構20を軸支するための軸支孔19bが形成されている。
【0022】
(2)−2 フラップバルブ機構20
図5は図3の燃料タンクの開閉装置10の上部を示す断面図、図6は図5の6−6線に沿った断面図、図7は燃料タンクの開閉装置10の要部を分解した断面図である。図7において、フラップバルブ機構20は、開閉部材21と、スプリング33と、ガスケットGS2とを備えている。開閉部材21は、弁支持部19に軸支され、注入口18Paを開閉する部材である。スプリング33は、弦巻スプリングであり、そのコイル状の一端部が注入口形成部材18に支持され、他端部が開閉部材21に支持されて開閉部材21を閉じる方向に付勢している。開閉部材21は、押圧部材22と、弁室形成部材26と、軸体28と、調圧弁30とを備えている。軸体28は、弁室形成部材26の端部に形成された軸受26cおよび弁支持部19に設けられた軸支孔19bに挿入されることで回転可能に支持されている。
【0023】
図8はフラップバルブ機構20および開閉起動機構40を一部破断して分解した斜視図である。押圧部材22は、導電性樹脂から形成されており、給油ノズルFZの押圧力を直接受けるほぼ皿状の部材である上面部23と、上面部23の外周上部の両側から上方へ突設された立壁24とにより形成されている。上面部23には、給油ノズルとの当たりをスムーズにするためのガイド面23aが形成されている。立壁24には、後述するノズル検知機構50を装着するためのセンサ挿入孔24aが2箇所形成されている。上面部23の外周部には、フランジ23bが形成されており、注入口形成部材18の開口側ストッパ18cに当たることで、開閉部材21の閉じ状態にて、注入口18Paとの間隙をなくし、内部への雨水などの浸入を防止している。
【0024】
弁室形成部材26は、カップ形状であり、調圧弁30を収納する弁室26Sを形成している。弁室形成部材26の外周部には、フランジ26aが形成されている。ガスケットGS2は、ゴム材料から形成され、C字形のシール本体GS2aと、シール本体GS2aの内周部の支持部GS2bとを備え、支持部GS2bがフランジ26aの内周側の上面と押圧部材22のフランジ23bとの間で挟持されることで保持され、その外周側の上面がシール部18bとの間でガスケットGS2を圧縮することで注入口18Paをシールしている。弁室形成部材26は、下部の係合凹所26bを押圧部材22の係合突部23cに係合することにより、押圧部材22に組み付けられている。
【0025】
図7に示す調圧弁30は、押圧部材22と弁室形成部材26とで囲まれた弁室26S内に収納されており、スプリング31aにより付勢された正圧弁体31bを有する正圧弁31と、スプリング32aにより付勢された負圧弁体32bを有する負圧弁32とを備え、燃料タンクの圧力を両弁体の開閉により燃料タンクのタンク内圧を所定範囲内に調整する。
【0026】
(2)−3 開閉起動機構40
図6において、開閉起動機構40は、注入口形成部材18およびフラップバルブ機構20の開閉部材21に装着および連携するように配置され、給油ノズルFZの先端で押されることにより開閉部材21の開き動作を許容する機構であり、その主要な構成として、ノズル検知機構50と、ロック機構60とを備えている。
【0027】
図9は開閉起動機構40の部分を破断して示す斜視図、図10は開閉起動機構40を一部破断しかつ分解して示す斜視図である。図9および図10において、ノズル検知機構50は、所定の外径の給油ノズルの先端で押されることにより、ロック機構60を介してフラップバルブ機構20の開閉部材21のロック位置を解除する機構であり、押圧部材22に装着されたノズル検知部材51と、ピン55とを備えている。図10に示すように、ノズル検知部材51は、並設された導入押圧部53と、導入押圧部53を連結する連結部54とを備え、これらが樹脂により一体に形成されている。各々の導入押圧部53は、押圧支持体53aと、押圧支持体53aの外面であって挿入通路13P側に向けかつ下方に向かうにしたがって傾斜した押圧斜面53bと、軸支部53cとを備えている。押圧斜面53bは、給油ノズルの先端の外径が所定径以上の場合に給油ノズルの先端で押されるように配置されている。導入押圧部53は、押圧部材22のセンサ挿入孔24aに収納されるとともに、軸支部53cで立壁24の穴に軸支されたピン55により揺動可能に支持されており、押圧斜面53bが給油ノズルFZで押されたときに、ピン55を中心に径方向の外方へ回動する。
【0028】
ロック機構60は、ロック部材61と、開閉部材21の押圧部材22に形成された被ロック部70(図9)とを備えている。図10において、ロック部材61は、リターンスプリングとして作用する連結アーム62と、連結アーム62の両側に形成されたロック支持部63と、連結アーム62の中央部に形成されたロック支持部64と、ロック支持部63に一体に形成されたロック係合部65とを備えている。両側のロック支持部63は、長穴63aを形成した円弧部63bと、円弧部63bの両側に形成された支持板63cとを備えている。長穴63aには、注入口形成部材18上に突設された支持突部18eが径方向にスライド可能にそれぞれ挿入されている。また、ロック支持部64は、長穴64aを有する円弧部64bを備えている。長穴64aには、円板部18a上の支持突部18fが径方向にスライド可能に挿入されている。図9に示すように、ロック係合部65は、ノズル検知部材51の導入押圧部53により径方向の外方へ押されたときに、連結アーム62を弾性変形しつつロック支持部63と一体に拡径する。このとき、ロック支持部64も、径方向の内方へ移動することで、ロック係合部65の径方向への移動を容易にしている。
【0029】
被ロック部70は、開閉部材21の押圧部材22の立壁24の外壁の上部に外方に向けて突設されており、ロック係合部65に係合および非係合する部位である。すなわち、導入押圧部53がロック部材61を押していない状態にて、ロック係合部65が被ロック部70に係合して開閉部材21の開き動作を規制するロック位置になり、一方、導入押圧部53がピン55を中心に回動することにより、押圧端53dがロック係合部65の押圧部65aを押すことにより、ロック係合部65が被ロック部70から外れて、非ロック位置になり、開閉部材21の開き動作を許容する。
【0030】
図11および図12はノズル検知機構50を説明する説明図であり、図11は給油ノズルを挿入する前の状態を示し、図12は給油ノズルを挿入した状態を示す。すなわち、導入押圧部53に対向する内端で形成される挿入通路13Pの内径をD0、軽油用の給油ノズルFZ(a)の先端の外径をDa、ガソリン用の給油ノズルFZ(b)をDbとすると、Db<D0<Daに設定されている。例えば、外径Dbは20mm、内径D0は22mm、外径Daは25mmに設定されている。
【0031】
図11の閉じ状態にて、挿入通路13Pに給油ノズルFZaを挿入して、ノズル検知部材51の導入押圧部53の押圧斜面53bを押圧すると、ノズル検知部材51がピン55を中心に径方向の外方へ回動する。これにより、ノズル検知部材51の押圧端53dがロック部材61のロック係合部65の押圧部65aの上方へ押す。そして、図12に示すように、ロック係合部65が径方向の外方へ移動し、被ロック部70から外れることでロック位置から非ロック位置へ切り換えられ、つまり、フラップバルブ機構20の開閉部材21のロックが解除され、開閉部材21の開き動作が可能になる。一方、導入押圧部53の回動する力が解除されると、連結アーム62(図10)のスプリング力により、ロック係合部65が径方向の内方へ戻され、被ロック部70に係合することにより、開閉部材21がロックされ、開閉部材21の開き動作が不可能になる。
なお、挿入通路13Pの内径D0は、ガソリン用の給油ノズルFZ(b)の外径Dbより小さい径とした場合であっても、給油ノズルFZ(b)の先端外周部が押圧斜面53bを押圧したときにロックが解除されず、給油可能にならない径であれば、多少の寸法範囲は許容される。
【0032】
(3) 燃料タンクの開閉装置の開閉動作
(3)−1 開き動作
図1に示すように、給油蓋FLを開けると、給油室FR内に配置された燃料タンクの開閉装置10が表れる。図13に示すように給油ノズルFZを開口形成部材13の導入口13Paから挿入して、給油ノズルFZの先端がノズル検知機構50の導入押圧部53に達して、導入押圧部53を押し、押圧斜面53bが給油ノズルFZから径方向の力を受けると、ノズル検知機構50のノズル検知部材51がピン55を中心に回動し、ノズル検知部材51がロック部材61のロック係合部65を押して外径方向へ移動させる。これにより、ロック係合部65が被ロック部70から抜けて、非ロック位置に切り換えられる。これにより、開閉部材21は、開き動作が可能になる。
【0033】
さらに、図14に示すように、給油ノズルFZを押し入れると、フラップバルブ機構20の開閉部材21がスプリング33の付勢力に抗して押され、開閉部材21が軸体28を中心に回動し、注入口18Paが開かれる。このとき、開閉部材21は、その開度が大きくなるにつれて、給油ノズルFZの先端が押圧部材22のガイド面23aに倣いつつ開閉部材21が開く。そして、弁室形成部材26の底部が逃がし穴17eに挿入され、接続管12の内壁に当たって開閉部材21の開き動作が完了する。この状態にて、給油ノズルFZから燃料通路11Pへ給油する。
【0034】
(3)−2 閉じ動作
給油を終えて、給油ノズルFZを注入口18Paから抜くと、フラップバルブ機構20の開閉部材21がスプリング33の復元力により注入口18Paを閉じ、さらに給油ノズルFZが抜かれると、ノズル検知部材51およびロック部材61は、初期位置に戻り、つまり、ロック機構60の連結アーム62の弾性力でロック係合部65が縮径するとともに導入押圧部53が元の位置に戻る。このようにロック係合部65が開閉部材21の中心方向へ移動すると、被ロック部70に係合する。これにより、開閉部材21がロック部材61のロック位置で閉じられる初期状態に戻り、さらに給油蓋FL(図1)を閉じる。
【0035】
(4) 燃料タンクの開閉装置の作用・効果
上記実施例にかかる燃料タンクの開閉装置10により、以下の作用効果を奏する。
【0036】
(4)−1 図6に示すように、開閉起動機構40は、ノズル検知機構50を構成するノズル検知部材51だけが開閉部材21に装着され、ロック機構60を構成するロック部材61が、タンク開口形成部材11に装着されており、つまり、開閉部材21に、ロック部材61を配置しなくてもよいから、開閉部材21に複雑な移動機構を設ける必要がなく、その構成を簡単にできる。
【0037】
(4)−2 ノズル検知部材51は、開閉部材21に装着されているので、タンク開口形成部材11の挿入通路13Pに面した箇所に複数の部材を配設する必要がなく、構成を簡単にできる。
【0038】
(4)−3 図14に示すように、給油ノズルを燃料通路11Pに挿入したときに、その位置決め部FZpがタンク開口形成部材11の注入口18Paの開口周縁部に係止されることにより給油される。このとき、導入押圧部53は、開閉部材21に連動して燃料通路11Pの奥側へ移動し、導入口13Paから注入口18Paに至る挿入通路13Pから待避する。よって、給油ノズルFZは、導入押圧部53に干渉することなく、注入口18Paより燃料タンク側へ挿入できるから、満タン検知孔FZsに、燃料通路11Pを上昇する燃料が早い段階にて接触し、オートストップを作動させることができる。よって、タンク開口形成部材11の導入口13Paから燃料が溢れ難い。
【0039】
(4)−4 図11および図12に示すように、給油ノズルFZの挿入時に、ノズル検知部材51の導入押圧部53の移動方向とロック部材61の移動方向とが径方向の外方で同一であるので、作動方向を変換するカムなどの機構が不要であり、構成が簡単である。
【0040】
(4)−5 図6および図10に示すように、ロック機構60のロック部材61は、ロック支持部63,64の長穴63a,64aに注入口形成部材18の支持突部18e,18fがそれぞれ挿入されるとともに、開口形成部材13の上壁13bで抑えられ、注入口形成部材18に保持されているので、ロック部材61を抜止めするための別の機構が不要であり、構成を簡単にできる。
【0041】
(4)−6 図11および図12に示すように、フラップバルブ機構20の開閉部材21を開き動作させるには、給油蓋FL(図1)を開けた状態にて、給油ノズルFZで導入押圧部53を径方向の外方へ移動させなければならないから、高圧洗車や誤った給油ノズルを挿入しても、導入押圧部53が移動することがなく、開閉部材21が不用意に開き動作をすることがない。
【0042】
(4)−7 図11および図12に示すようにノズル検知機構50は、給油ノズルFZの先端の外径が所定径以上の場合に押圧されるように配置されている導入押圧部53を備えているので、軽油用の給油ノズルFZ(a)の場合には、フラップバルブ機構20の開閉部材21が開き動作を行うが、ガソリン用の給油ノズルFZ(b)の場合には、開閉部材21が開き動作を行わない。したがって、給油ノズルFZの外径によって燃料の種類が異なる場合に、給油ノズルFZを誤って挿入しても、注入口18Paが開かないから、間違った種類の燃料を供給することもない。
【0043】
B.第2実施例
図15および図16は本発明の第2実施例にかかる燃料タンクの開閉装置を示す断面図、図17はノズル検知部材51Bおよび押圧部材22Bの一部を破断しかつ分解して示す斜視図である。第2実施例は、開閉起動機構40Bのノズル検知機構50Bの構成に特徴を有する。図17において、ノズル検知機構50Bは、押圧部材22Bに装着されたノズル検知部材51Bを備えている。ノズル検知部材51Bは、アーム52Bと、アーム52Bの両端部に形成され挿入通路13Pに臨んで配置された導入押圧部53Bとを備え、これらが樹脂により一体に形成されている。各々の導入押圧部53Bは、断面台形であり、押圧支持体53Baと、押圧支持体53Baから挿入通路13P側に向けかつ下方に向かうにしたがって傾斜した押圧斜面53Bbとを備えている。押圧斜面53Bbは、給油ノズルFZの先端が所定径以上の場合に給油ノズルの先端で押されるように配置されている。アーム52Bは、押圧斜面53Bbが給油ノズルFZで押されたときに、外径方向へ弾性変形して、リターンスプリングとして作用する。ノズル検知部材51Bを押圧部材22に装着するための構成として、押圧部材22Bの立壁24Bに装着溝24Baが形成されている。また、装着溝24Baの外周部に、環状の保持凹所24Bbが形成されており、ノズル検知部材51のアーム52Bが保持されることにより、ノズル検知部材51Bが開閉部材21Bに装着されている。
【0044】
開閉起動機構40Bの構成により、図15に示すように、給油ノズルFZを挿入通路13Pに挿入して、給油ノズルFZの先端がノズル検知機構50Bの導入押圧部53Bに達し、導入押圧部53Bを押すと、図16に示すようにノズル検知機構50Bのノズル検知部材51Bのアーム52B(図17)がスプリング力を蓄積するように撓みつつ、ノズル検知部材51Bが拡径する。これにより、導入押圧部53Bの外周部がロック機構60Bのロック係合部65Bを押して外径方向へ移動させ、ロック部材61Bが被ロック部70Bから抜けて、非ロック位置に切り換えられる。これにより、開閉部材21Bは、開き動作が可能になる。
【0045】
また、図18に示すように、開閉部材21Bの押圧部材22Bのガイド面23Baは、縮径した凹所になっており、凹所の側面が規制壁23Bbになっている。図15に示すように軽油用の給油ノズルFZaが挿入通路13Pに挿入されたときには、ガイド面23Baに当たる前に、ノズル検知部材51Bの導入押圧部53Bに当たって、ロックを解除する。しかし、図18に示すように、小径のガソリン用の給油ノズルFZ(b)が挿入されたときに、一方だけの導入押圧部53Bに当たっても、ロックが解除されず、しかも、規制壁23Bbにより規制されるから、給油ノズルFZ(b)が左右に振れたりしても、不用意にロックが解除されることがない。
【0046】
なお、この発明は上記実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能である。
【符号の説明】
【0047】
10…燃料タンクの開閉装置
11…タンク開口形成部材
11P…燃料通路
12…接続管
12a…縮径部
12b…直管部
13…開口形成部材
13P…挿入通路
13a…側壁部
13b…上壁
13Pa…導入口
16…補強材
16a…収納部
17…ノズルガイド部材
17a…円筒壁
17b…拡径壁
17c…ノズルガイド
17d…挿入開口
17e…逃がし穴
18e,18f…支持突部
18…注入口形成部材
18a…円板部
18b…シール部
18c…開口側ストッパ
18d…支持突部
18Pa…注入口
19…弁支持部
19a…半円筒壁
19b…軸支孔
20…フラップバルブ機構
21…開閉部材
21B…開閉部材
22…押圧部材
22B…押圧部材
23…上面部
23a…ガイド面
23b…フランジ
23c…係合突部
23Ba…ガイド面
23Bb…規制壁
24…立壁
24B…立壁
24a…センサ挿入孔
24Ba…装着溝
24Bb…保持凹所
26…弁室形成部材
26S…弁室
26a…フランジ
26b…係合凹所
26c…軸受
28…軸体
30…調圧弁
31…正圧弁
31a…スプリング
31b…正圧弁体
32…負圧弁
32a…スプリング
32b…負圧弁体
33…スプリング
40…開閉起動機構
40B…開閉起動機構
50…ノズル検知機構
50B…ノズル検知機構
51…ノズル検知部材
51B…ノズル検知部材
52…アーム
52B…アーム
53…導入押圧部
53B…導入押圧部
53a…押圧支持体
53b…押圧斜面
53c…軸支部
53d…押圧端
53Ba…押圧支持体
53Bb…押圧斜面
54…連結部
55…ピン
60…ロック機構
61…ロック部材
61B…ロック部材
62…連結アーム
63,64…ロック支持部
63a,64a…長穴
63b…円弧部
63c…支持板
64b…円弧部
65…ロック係合部
65B…ロック係合部
65a…押圧部
70…被ロック部
70B…被ロック部
BP…基板
FL…給油蓋
FLa…蓋本体
FLb…ヒンジ
FR…給油室
FZ…給油ノズル
FZa…給油ノズル
FZb…給油ノズル
GS1…ガスケット
GS2…ガスケット
GS2a…シール本体
GS2b…支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンクへ燃料を供給する通路を開閉する燃料タンクの開閉装置において、
給油ノズル(FZ)を挿入するための挿入通路(13P)、注入口(18Pa)を経て上記燃料タンクに接続される燃料通路(11P)を形成するタンク開口形成部材(11)と、
上記タンク開口形成部材(11)内に配置され、上記給油ノズル(FZ)の先端で押されることで上記注入口(18Pa)を開閉する開閉部材(21)と、を有するフラップバルブ機構(20)と、
を備え、
上記開閉部材(21)の開き動作をロックするロック位置と、上記給油ノズルにより押圧されたときに上記開閉部材(21)の開き動作を許容する非ロック位置とを切り換える開閉起動機構(40)と、
を備え、
上記開閉起動機構(40)は、
上記開閉部材(21)に装着されるとともに上記挿入通路(13P)に配置され、上記給油ノズル(FZ)による挿入方向への移動力を受ける導入押圧部(53)を有するノズル検知機構(50)と、
上記注入口(18Pa)の周辺のタンク開口形成部材(11)に装着され、上記開閉部材(21)に係合・係脱することで上記ロック位置または上記非ロック位置を選択的にとるロック部材(61)を有し、上記導入押圧部(53)に押されることで上記該ロック部材(61)を上記ロック位置から上記非ロック位置へ移動させるロック機構(60)と、
を備えていることを特徴とする燃料タンクの開閉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−81922(P2012−81922A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−231557(P2010−231557)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】