説明

燃料タンク

【課題】剛性が高く且つ燃料の透過を抑制できると共に、軽量化を図りつつ金型に対する設備投資を低減することが可能な燃料タンクを提供する。
【解決手段】車両等の機器や装置に搭載される燃料タンク1は、燃料を収容するためのタンク本体2を備えている。タンク本体2は、閉断面を有するアルミニウム押出形材から形成され、両端に開口部31を備えた中空状の成形体3と、成形体3の両端に接合され、開口部31を閉じる一対の蓋体4,4と、を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両等の機器や装置に搭載される燃料タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両に使用される燃料タンクとして、樹脂をブロー成形することにより本体が形成された樹脂製の燃料タンクが知られている。
【0003】
しかしながら、樹脂製の燃料タンクは、タンク内圧の変動に対するタンク自体の剛性が低い。このため、一般には鋼製のタンクバンドを用い、燃料タンクを車体とタンクバンドとの間に挟み込んで固定し、タンク内圧の変動に対する剛性を確保している。したがって、燃料タンク自体に加えて、タンクバンドという別部材が必要となってしまう。また、燃料の透過防止のために、燃料タンク本体の壁部はEVOH等をラミネートした多層構造にする必要がある。
【0004】
これに対し、鋼板(SP材)やアルミニウム板をプレス成形してなる半割れの箱状の上部材と下部材とを、開口部周縁近傍同士で溶接することにより本体が形成された金属製プレス成形品の燃料タンクが知られている(例えば、特許文献1参照)。かかる金属製プレス成形品の燃料タンクは、剛性が高く、さらに燃料の透過を抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−323487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術においては、鋼製プレス成形品の場合、重量の大幅な増加は避けられないという問題がある。また、アルミニウム製プレス成形品の場合であっても、プレス金型は高価であり、金型に対する設備投資が嵩み、製造コストが高くなるという問題がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、剛性が高く且つ燃料の透過を抑制できると共に、軽量化を図りつつ金型に対する設備投資を低減することが可能な燃料タンクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、閉断面を有するアルミニウム押出形材から形成され、両端に開口部を備えた中空状の成形体と、前記成形体の両端に接合され、前記開口部を閉じる一対の蓋体と、を有することを特徴とする燃料タンクである。
【0009】
この発明によれば、アルミニウム押出形材から形成された成形体を有しているため、剛性が高く且つ燃料の透過を抑制することができる。また、成形体はアルミニウム製なので、鋼製と比較して軽量化を図ることができる。さらに、成形体は押出成形品なので、プレス成形品と比較して金型に対する設備投資を低減することが可能となる。
すなわち、この発明によれば、剛性が高く且つ燃料の透過を抑制できると共に、軽量化を図りつつ金型に対する設備投資を低減することが可能となるという優れた作用効果を奏する。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の燃料タンクにおいて、前記成形体の側面を形成する壁部に当該壁部から外方に突出するフランジ部が設けられ、当該フランジ部には、前記燃料タンクの搭載対象に取り付けるための取付け部が設けられているものである。
この発明によれば、請求項1に記載の発明の作用効果に加えて、燃料タンクを搭載対象に固定するためのタンクバンド等の別部材を必要とすることなく、容易且つ安価に、燃料タンクを搭載対象に直接固定することができる、という作用効果を奏する。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の燃料タンクにおいて、前記成形体には、当該成形体の押出し方向に延在するリブが形成されているものである。
この発明によれば、請求項1又は2に記載の発明の作用効果に加えて、容易に且つ必要に応じて任意に燃料タンクの剛性をアップさせることができる、という作用効果を奏する。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の燃料タンクにおいて、前記蓋体は、一方に開口した有底箱状を呈するものである。
この発明によれば、請求項3に記載の発明の作用効果に加えて、蓋体の内面とリブの端部との間に形成される隙間が、リブによって区画された成形体内の各部を相互に連通させ、これにより、燃料タンク内に収容される燃料は、当該燃料タンク内で自在に移動することができ、一部に偏ることはない、という作用効果を奏する。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の燃料タンクにおいて、車体の前後方向に延在する左右一対のフレームに、前記成形体の押出し方向に離隔して設けられた左右両側の取付け部がそれぞれ固定されているものである。
この発明によれば、請求項1〜4のいずれか1項に記載の発明の作用効果に加えて、燃料タンクを構造材として利用することができ、車体の補強部材としての機能を発揮することができる、という作用効果を奏する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の燃料タンクによれば、剛性が高く且つ燃料の透過を抑制できると共に、軽量化を図りつつ金型に対する設備投資を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る燃料タンクの概略構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示す燃料タンクの分解斜視図である。
【図3】図1のIII−III線に沿う断面図である。
【図4】燃料タンクを車体に取り付ける方法を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る燃料タンクの概略構成を示す斜視図である。図2は、図1に示す燃料タンクの分解斜視図である。図3は、図1のIII−III線に沿う断面図である。なお、図1〜図3における各要素は、発明の理解を容易にするために、適宜拡大、縮小又は簡略化されて描かれている(図4においても同様)。
【0017】
本実施形態では、自動車等の車両に搭載されるポンプ内蔵タイプの燃料タンクについて説明する。
【0018】
図1に示すように、燃料タンク1は、燃料を収容するためのタンク本体2を備えている。タンク本体2には、図示を省略するが、外部からタンク本体2内へ燃料を供給するための給油バルブが取り付けられている。
【0019】
図2に示すように、タンク本体2は、両端に開口部31を備えた中空状の成形体3と、成形体3の両端に接合され、開口部31を閉じる一対の蓋体4,4とを有している。
【0020】
成形体3は、閉断面を有するアルミニウム押出形材から形成されている。すなわち、成形体3は、所定の閉断面形状を軸方向に延伸した中空形状に形成されており、底壁32と、底壁32の両側端から底壁32に垂直な方向に立設される縦壁33,33と、縦壁33,33の上端を繋ぎ底壁32に対向して設けられる上壁34とを備える。
【0021】
成形体3の側面を形成する壁部には、当該壁部から外方に突出するフランジ部35が設けられている。本実施形態では、成形体3の上壁(壁部)34が、当該上壁34を含む平面内で、蓋体4の側面よりも外方に延出しており、これによってフランジ部35が形成されている。
【0022】
但し、燃料タンク1の搭載対象である車両の車体に応じて、フランジ部35は、成形体3の上壁34以外の壁部が延出するように設けられてもよく、あるいは、成形体3の壁部の端縁以外の位置において壁部から外方に突出するように設けられてもよい。
【0023】
本実施形態では、フランジ部35は、押出成形によって成形体3と一体成形される。但し、フランジ部35は、別個に製造されたブラケット等の板部材を溶接等の固着方法により成形体3に固着することによって設けられてもよい。
【0024】
フランジ部35には、燃料タンク1を車体に取り付けるための孔部36(取付け部)が設けられている。孔部36は、燃料タンク1の固定用のボルト7(図4参照)のねじ軸が挿通される大きさの直径を有している。フランジ部35が設けられる上壁34は、燃料タンク1の固定に関係する部材の剛性を高める観点から、底壁32や縦壁33,33よりも厚さ寸法を大きく設定することが望ましい。
【0025】
このような孔部36を有するフランジ部35を成形体3に設けたことにより、燃料タンク1を車体に固定するためのタンクバンド等の別部材を必要とすることなく、容易且つ安価に、燃料タンク1を車体6(図4参照)に直接固定することができる。但し、孔部36を有するフランジ部35を省略して、タンクバンドで燃料タンク1を車体6に固定する方法を採用することも可能である。
【0026】
また、成形体3には、当該成形体3の成形時の押出し方向に延在するリブ37が形成されている。ここでは、リブ37は、2つの縦壁33,33の中間にこれらと平行に形成されている。但し、リブ37は、成形体3の成形時の押出し方向に延在するものであれば、設置される位置及び個数は任意である。
【0027】
このような成形体3の構成によれば、容易に且つ必要に応じて任意に燃料タンク1の剛性をアップさせることができる。例えば、エンジンとモータとを組み合わせて走行するハイブリッド車両等に燃料ベーパ発生の抑制手法として密閉タンクが採用されているが、この密閉タンクを非常に軽量な構造で製造することが可能となる。但し、必要な剛性が確保されるのであれば、リブ37は省略可能である。
【0028】
図3に示すように、タンク本体2の成形体3には、タンク本体2内に収容される燃料を汲み上げるためのポンプモジュール5を燃料タンク1内に挿入するための開口部38が開設されている。なお、図3において、ポンプモジュール5及びリブ37は、断面で示されておらず側面から見た図で示されている。
【0029】
ここでは、ポンプモジュール5とリブ37との設置位置が一部で重なっているため、成形体3の上壁34及びリブ37の長手方向(押出方向)の中央付近を削ることによって、開口部38が形成されている。但し、ポンプモジュール5及びリブ37の少なくとも一方を縦壁33に垂直な方向に移動させて、両者の干渉を回避してもよい。例えば、縦壁33と平行な一対のリブを設け、ポンプモジュール5を一対のリブの間に配置してもよい。このようにすれば、リブ37を削らなくてもよくなるため、剛性の低下を防止できる。あるいは、ポンプモジュール5のタンク本体2内に挿入される部分を二股にするなどして、リブと干渉しないようにしてもよい。
【0030】
ポンプモジュール5は、燃料ポンプ(図示せず)をチャンバ51内に備える。また、ポンプモジュール5は、連結部材52を介してチャンバ51を支持する蓋部材53を備える。タンク本体2の開口部38は、チャンバ51をタンク本体2内に配置した状態で、蓋部材53によって塞がれる。なお、チャンバ51は、タンク本体2内の燃料をチャンバ51内に導入するための導入口(図示せず)を備えている。そして、ポンプモジュール5は、燃料ポンプを駆動することにより、チャンバ51内の燃料を吸い込み、吸い込んだ燃料を供給管54を介してエンジン(図示せず)に供給する。
【0031】
蓋体4は、一方に開口した矩形の有底箱状を呈している(図2参照)。すなわち、蓋体4は、矩形の板状部41と、板状部41の周縁から板状部41に垂直な方向に立設される壁部42とを備えている。
【0032】
一対の蓋体4の開口周端部が成形体3の長手方向両側の開口周端部にそれぞれ液密に固着されることにより、成形体3の開口部31が外部に対して閉塞されている。蓋体4の成形体3への固着は、ここでは溶接により行われる。但し、ガスケット等のシール部材を介装したねじ締結等の液密を確保できる他の方法により固着が行われてもよい。
【0033】
蓋体4が一方に開口した有底箱状を呈しているため、蓋体4(板状部41及び壁部42)の内面とリブ37の長手方向端部との間には、所定の隙間Cが形成されている(図3参照)。この隙間Cは、リブ37によって区画された成形体3内の各部を相互に連通させる機能を果たす。これにより、タンク本体2内に収容される燃料は、当該タンク本体2内で自在に移動することができ、一部に偏ることはない。しかも、リブ37が、タンク本体2内での燃料の大きな動きを規制している。
【0034】
隙間Cは、必ずしもリブ37の両端部に形成される必要はなく、リブ37の一方の端部に形成されていてもよい。つまり、一対の蓋体4のうちの一方が平坦な板体で形成されてもよい。蓋体4を平坦な板体で形成すれば、製造が容易でコストも低減できる。さらに、隙間Cは、成形体3の押出成形後にリブ37の端部が機械加工により削られることによっても形成され得る。この場合、一対の蓋体4の双方が平坦な板体で形成され得る。
【0035】
タンク本体2(成形体3及び蓋体4)の材質は、アルミニウム合金を含むアルミニウム材料であり、例えばJISに規定される5000系、6000系、あるいは7000系のアルミニウム合金が好ましい。タンク本体2は、無塗装でも耐久性や耐候性に優れているが、塗装、陽極酸化処理、メッキ処理、化成皮膜処理等の公知のアルミニウム材料に対する表面処理が全部又は一部に適用されてもよい。但し、蓋体4の材質は、必ずしもアルミニウム材料に限られるものではなく、他の金属材料や樹脂から形成されることも可能である。
【0036】
次に、図2及び図3を参照して、燃料タンク1の製造方法について説明する。
まず、成形体3に用いられる閉断面を有するアルミニウム押出形材を用意する。アルミニウム押出形材は、加熱されたアルミニウム材料を、所定の形状のダイス(金型)を通して押し出すことにより形状が成形されたものである。
【0037】
続いて、用意されたアルミニウム押出形材を、押出方向(長手方向)の長さが予め決められた所定の長さになるように切断する。これにより、両端に開口部31を備えた中空状の成形体3が製造される。また、押出成形後の成形体3に切削加工を施すことにより、孔部36及び開口部38が開設される。
【0038】
蓋体4は、アルミニウム材料の板を切削加工することによって製造される。但し、蓋体4は、簡単な小さい形状であるため、プレスや鋳造等の他の方法によって製造されてもよい。そして、一対の蓋体4が、成形体3の両端に、それぞれ溶接により接合されて固着される。これにより、タンク本体2が製造される。
【0039】
なお、ポンプモジュール5の製造方法については、一般的な製造方法で対応できるため説明を省略する。
【0040】
続いて、ポンプモジュール5が、タンク本体2に形成された開口部38を通して、燃料ポンプを内蔵するチャンバ51を先頭にしてタンク本体2の内部に挿入され、開口部38が蓋部材53によって塞がれる。これにより、燃料タンク1が完成される。
【0041】
次に、図4を参照して、燃料タンク1を車体6に取り付ける方法について説明する。
まず、燃料タンク1を、車体6の前後方向に延在する左右一対のフレーム61,61の下方に位置させる。
【0042】
フレーム61の底壁62には、燃料タンク1の固定用のボルト7のねじ軸が挿通される貫通孔(図示せず)が開設されており、この貫通孔と同軸となるように底壁62上にナット63が例えば溶接により固着されている。
【0043】
そして、燃料タンク1の各孔部36の位置がフレーム61上の各ナット63の位置にそれぞれ合致するように、燃料タンク1の上壁34をフレーム61の下面に当接させる。続いて、下方からボルト7のねじ軸を、燃料タンク1の孔部36及びフレーム61の貫通孔を経て、ナット63にねじ込む。
【0044】
こうして、燃料タンク1は、搭載対象である車両の車体6に、タンクバンド等の別部材を必要とすることなく、直接固定される。なお、図4において燃料タンク1は車体6に4箇所でねじ締結されて固定されているが、固定箇所の数は適宜設定され得る。
【0045】
ここで、本実施形態の燃料タンク1は、外形が概ね直方体を呈しているため、車体6への搭載の自由度が高い。しかも、燃料タンク1は剛性が高く、構造材として利用することができ、車体6の補強部材としての機能を発揮することができる。
【0046】
このように本実施形態の燃料タンク1によれば、アルミニウム押出形材から形成された成形体3を有しているため、剛性が高く且つ燃料の透過を抑制することができる。また、成形体3はアルミニウム製なので、鋼製と比較して軽量化を図ることができる。さらに、成形体3は押出成形品なので、プレス成形品と比較して金型に対する設備投資を低減することが可能となる。
【0047】
すなわち、本実施形態の燃料タンク1によれば、剛性が高く且つ燃料の透過を抑制できると共に、軽量化を図りつつ金型に対する設備投資を低減することが可能となるという優れた作用効果を奏する。
【0048】
以上、本発明について、実施形態に基づいて説明したが、本発明は、上記実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、実施形態に記載した構成を適宜組み合わせ乃至選択することを含め、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【0049】
例えば、上述した実施形態では、本発明を自動車等の車両に搭載される燃料タンクに適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、船舶等の他の機器や装置に搭載される燃料タンクにも適用可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 燃料タンク
2 タンク本体
3 成形体
31 開口部
34 上壁(壁部)
35 フランジ部
36 孔部(取付け部)
37 リブ
4 蓋体
6 車体
61 フレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉断面を有するアルミニウム押出形材から形成され、両端に開口部を備えた中空状の成形体と、
前記成形体の両端に接合され、前記開口部を閉じる一対の蓋体と、
を有することを特徴とする燃料タンク。
【請求項2】
前記成形体の側面を形成する壁部に当該壁部から外方に突出するフランジ部が設けられ、当該フランジ部には、前記燃料タンクの搭載対象に取り付けるための取付け部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の燃料タンク。
【請求項3】
前記成形体には、当該成形体の押出し方向に延在するリブが形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料タンク。
【請求項4】
前記蓋体は、一方に開口した有底箱状を呈することを特徴とする請求項3に記載の燃料タンク。
【請求項5】
車体の前後方向に延在する左右一対のフレームに、前記成形体の押出し方向に離隔して設けられた左右両側の取付け部がそれぞれ固定されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の燃料タンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−61985(P2012−61985A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208688(P2010−208688)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】