説明

燃料フィルタ装置

【課題】ハウジングに装着された配管部材が大きな衝撃力を受けた場合であっても内部の燃料通路を正常な状態で維持することが可能な燃料フィルタ装置を提供すること。
【解決手段】ハウジングのキャップ12の装着孔133に装着された配管部材である導出パイプ40には凸部45が形成され、キャップ12の円筒部132には凸部45が嵌まり込む凹部135が形成されて、ハウジングに対する導出パイプ40の装着孔軸線周りの回動が規制されている。円筒部132に係着した係着体50は、円環板部51で導出パイプ40の装着孔軸線方向への移動を規制し、導出パイプ40に衝撃が加わり凸部45が犠牲的に破損した際の導出パイプ40の装着孔軸線周りの回動は規制しないようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両の内燃機関に供給される燃料を濾過する燃料フィルタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ハウジング内に燃料を濾過する濾材を収容し、ハウジングに装着された配管部材の内部の燃料通路を介して燃料を導出入する燃料フィルタ装置がある。このような燃料フィルタ装置に、ハウジングを保持する支持ブラケットを設け、車両衝突時にエンジンと干渉して変形し易いダッシュパネルロアとエンジンの干渉を受け難いエアボックスとにまたがって支持ブラケットを取り付けることで、車両衝突時に、配管部材が装着された頭部の位置を大きく変化させずに下方部を後方へ変位させて、燃料フィルタ装置の濾材を収容するハウジングを保護しようとするものが知られている(例えば、下記特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−132362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術の燃料フィルタ装置では、車両衝突時等に、濾材を収容するハウジングは保護し易いものの、ハウジング内に燃料を流通するためにハウジングに装着された配管部材は後方に変位しないため、配管部材が大きな衝撃力を受けた場合には燃料通路が変形等を発生し正常な状態を維持できないという問題がある。
【0005】
本発明は、上記点に鑑みてなされたものであり、ハウジングに装着された配管部材が大きな衝撃力を受けた場合であっても内部の燃料通路を正常な状態で維持することが可能な燃料フィルタ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、
内部に濾材を収容するハウジングと、
ハウジングに設けられた装着孔に装着され、ハウジングの内部と連通する燃料通路が内部に形成された配管部材と、を備える燃料フィルタ装置であって、
配管部材は、ハウジングの装着孔に装着される装着円筒部を含み装着孔の軸線方向に延設された第1筒状部と、第1筒状部と交差する方向に延設された第2筒状部とを有し、
ハウジングおよび配管部材の一方に凸部が形成され、他方に凸部が嵌る凹部が形成されて、ハウジングに対する第1筒状部の装着孔軸線周りの回動を規制するとともに、第1筒状部に所定以上の回転モーメントが加わった場合には凸部が犠牲的に破損して第1筒状部の装着孔軸線周りの回動の規制を解除するようになっており、
ハウジングの装着孔に装着された第1筒状部の装着孔軸線方向への移動を規制するとともに、凸部が破損した際の第1筒状部の装着孔軸線周りの回動を可能とするように設けられた規制部材を備えることを特徴としている。
【0007】
これによると、配管部材の第2筒状部に大きな衝撃力が加わり、第2筒状部と交差する方向に延びている第1筒状部に所定以上の回転モーメントが加わった場合には、ハウジングおよび配管部材の一方に形成された凸部が犠牲的に破損して、第1筒状部の装着孔軸線周りの回動の規制が解除される。これに加えて、規制部材は、ハウジングの装着孔に装着された第1筒状部の装着孔軸線方向への移動を規制するものの、凸部が破損した際の第1筒状部の装着孔軸線周りの回動を可能とするように設けられている。したがって、配管部材の第2筒状部に大きな衝撃力が加わった場合には、凸部が犠牲的に破損して、第1筒状部が装着孔軸線周りに回動可能となり、規制部材もこの回動は規制しない。このようにして、ハウジングに装着された配管部材が大きな衝撃力を受けた場合であっても内部の燃料通路を正常な状態で維持することができる。
【0008】
また、請求項2に記載の発明では、配管部材に凸部が形成され、ハウジングに凸部が嵌る凹部が形成されていることを特徴としている。これによると、凸部は配管部材側に形成するので、凸部の形成が比較的容易である。
【0009】
また、請求項3に記載の発明では、装着孔の軸線方向は上下方向であって、配管部材の装着円筒部は上方からハウジングの装着孔に装着されており、配管部材の第1筒状部には、装着円筒部よりも上方にフランジ部が形成されており、凸部は、フランジ部よりも下方側に形成されていることを特徴としている。これによると、配管部材の凸部および凸部が嵌るハウジングの凹部は、配管部材の第1筒状部に形成されたフランジ部の下方に位置することになる。したがって、凸部と凹部との間に、上方から水や異物等が侵入することを防止し易い。
【0010】
また、請求項4に記載の発明では、フランジ部は、第2筒状部よりも下方側に第2筒状部に対して離れて設けられており、規制部材は、フランジ部の上面に係止して第1筒状部の装着孔軸線方向への移動を規制していることを特徴としている。これによると、規制部材が、ハウジングの装着孔に装着された第1筒状部の装着孔軸線方向への移動を規制するとともに、凸部が破損した際の第1筒状部の装着孔軸線周りの回動を可能とする構成を容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明を適用した一実施形態における燃料フィルタ装置1の概略構成を示す上面図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】キャップ12への導出パイプ40の装着部を示す要部上面図である。
【図4】図3のIV−IV線断面図である。
【図5】図4のV−V線断面図である。
【図6】(a)は、係着体50の上面図であり、(b)は、(a)のVIb−VIb線断面図であり、(c)は、(a)のVIc−VIc線断面図である。
【図7】導出パイプ40の下流側円筒部43に大きな衝撃力が加わった場合の状態を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を適用した実施の形態を図に基づいて説明する。
【0013】
図1は、本発明を適用した燃料フィルタ装置1の概略構成を示す上面図であり、図2は、図1のII−II線断面図である。ただし、図2では、構成を解り易くするために、導出パイプ40のみII−II断面ではなく導出パイプ40延設方向断面を図示している。
【0014】
図1に示す燃料フィルタ装置1は、例えば、内燃機関であるディーゼルエンジンに燃料を供給するコモンレールシステムに用いられ、車両のエンジンルーム内等に搭載されて、燃料タンク内の燃料を高圧ポンプに供給する燃料供給経路に介装され、燃料中から水分や異物等を除去するものである。
【0015】
図1に示すように、燃料フィルタ装置1は、内部に濾材等を収容するハウジング10、ハウジング10の上面に設けられてハウジング10内に燃料を導入するための導入パイプ30、および、ハウジング10内から燃料を導出するための導出パイプ40等を備えている。
【0016】
図2に示すように、燃料フィルタ装置1のハウジング10は、外殻を構成するカップ状(有底筒状)のケース11と、ケース11の上方開口端に着脱可能に取り付けられるケース11よりも浅いカップ状のキャップ12とにより構成されている。ケース11およびキャップ12は、いずれも例えばポリアミド樹脂からなり、ケース11の上端部内周側に形成されたねじ部とキャップ12の下端部外周側に形成されたねじ部とが相互に螺合して、ケース11にキャップ12が取り付けられるようになっている。
【0017】
キャップ12には、前述したねじ部よりも上方にシール部材であるゴム製のOリング19が装着されており、ケース11にキャップ12が取り付けられた際には、ケース11とキャップ12との間をシールするようになっている。
【0018】
ハウジング10内には、フィルタ部材20が収容されている。フィルタ部材20は、不織布等からなる濾材24と、濾材24の外周を取り囲む外筒21と、濾材24の上方側の全域に配設される上部端板22と、上部端板22の中央開口から上方に延びる中心円筒23とから構成されている。外筒21、上部端板22および中心円筒23は、例えば樹脂材により一体成形されており、外筒21の下端部には径外方向に向かって突出するフランジ部21aが形成されている。
【0019】
ケース11の内面には、周方向における複数箇所(図2では1箇所のみ図示)にリブ11aが形成されている。このケース11のリブ11aの上端面とキャップ12の下端面とに外筒21のフランジ部21aが挟持されて、フィルタ部材20は、ハウジング10内の所定位置に収容されている。
【0020】
図2に示すように、フィルタ部材20がハウジング10内の所定位置に収容され、ハウジング10内の濾材24の上下に、上部空間10aおよび下部空間10bが形成されている。フィルタ部材20の外筒21の外径は、キャップ12の内径よりも若干小さくなっているとともに、外筒21のフランジ部21aは周方向において一部が欠損されており、上部空間10aと下部空間10bとは外筒21とキャップ12との間に形成された通路を介して連通している。
【0021】
キャップ12には、その上面部に、内部に燃料導出通路を形成する導出通路部131が設けられている。導出通路部131は、キャップ12の中心部から径外方向に延びており、その下流端近傍では、上方に延びる円筒部132となっている。そして、この円筒部132の内部を装着孔133として、前述の導出パイプ40がキャップ12に装着されている。
【0022】
例えばポリアミド樹脂からなる導出パイプ40は、略L字状をなしており、装着孔133の軸線方向(上下方向)に延びる上流側円筒部42と、上流側円筒部42の下流側に接続し装着孔133の軸線に直交する方向に延びる下流側円筒部43とからなっている。上流側円筒部42の上流側部(下方部)は、キャップ12の装着孔133に装着される装着円筒部41である。また、下流側円筒部43の下流側部(図示左方部)は、図示を省略する燃料ホースの装着部となっている。
【0023】
フィルタ部材20がハウジング10内の所定位置に収容されたときには、図2に示すように、フィルタ部材20の中心円筒23の内部は、導出通路部131内の燃料導出通路と連通し、更には導出パイプ40内と連通している。
【0024】
図2では図示していないが、図1に示すように、キャップ12の上面部には、内部に燃料導入通路を形成する導入通路部121も設けられており、導入通路部121の上流端には導入パイプ30が装着されている。導入パイプ30と導出パイプ40とはほぼ同一構造であり、キャップ12への導入パイプ30の装着構造は、キャップ12への導出パイプ40の装着構造とほぼ同等であるので、以下、導出パイプ40装着部を用いて要部構成を説明する。
【0025】
図3は、キャップ12への導出パイプ40の装着部を示す要部上面図であり、図4は、図3のIV−IV線断面図である。また、図5は、図4のV−V線断面図である。ただし、図5では、後述する係着体50の図示を省略している。
【0026】
図4に示すように、導出パイプ40は、装着孔133の軸線方向に延びる上流側円筒部42と、上流側円筒部42と直交する方向に延びる下流側円筒部43とを有している。上流側円筒部42の下方側部位は、キャップ12の円筒部132内(すなわち装着孔133)に挿設される装着円筒部41となっている。装着円筒部41の外周面には溝部が形成されて、この溝部内にシール部材であるゴム製のOリング49が配設されており、円筒部132の内周面と装着円筒部41の外周面との間をシールしている。
【0027】
装着円筒部41の上方となる上流側円筒部42の軸線方向における中間部位には、全周に亘って径外方向に突出したフランジ部44が形成されている。フランジ部44の外径は円筒部132の外径とほぼ同等となっている。したがって、フランジ部44は、円筒部132の装着開口端面134(円筒部132の図示上方側の面)を全域に亘って覆っている。
【0028】
円筒部132の装着開口端面134には、円筒部132の軸線方向に凹んだ凹部135が形成されている。一方、導出パイプ40の上流側円筒部42には、装着円筒部41から径外方向に突出するとともに、フランジ部44から下方に突出する凸部45が形成され、この凸部45は円筒部132の凹部135に嵌り込んでいる。図5に示すように、円筒部132には複数の(本例では3つの)凹部135が周方向に均等に形成されており、それぞれの凹部135に対応するように、上流側円筒部42には複数の(本例では3つの)凸部45が形成されている。
【0029】
複数の凸部45は、上流側円筒部42に所定以上の回転モーメントが加わった場合に破損するように設定されている。この回転モーメントの所定値は、導出パイプ40の下流端部に燃料ホースを着脱する通常のメンテナンス等の際に発生する回転モーメントよりも大きく、車両が衝突する等して下流側円筒部43に比較的大きな衝撃力が加わることで発生する回転モーメントよりも小さく設定されている。
【0030】
すなわち、通常使用時に下流側円筒部43に付勢される応力によって上流側円筒部42に発生する回転モーメントでは凸部45は破損せず、車両衝突等の異常時に下流側円筒部43に付勢される応力によって上流側円筒部42に発生する回転モーメントでは凸部45は破損するようになっている。
【0031】
図4に示すように、キャップ12の円筒部132内に装着円筒部41が挿設された導出パイプ40は、係着体50によりキャップ12の円筒部132に対して抜け止め固定されている。
【0032】
図6(a)は、係着体50の上面図であり、図6(b)は、図6(a)のVIb−VIb線断面図であり、図6(c)は、図6(a)のVIc−VIc線断面図である。
【0033】
図6(a)に示すように、係着体50は、円環状の円環板部51を有しており、図6(b)に示すように、円環板部51の外周の複数箇所(本例では対向する2箇所)からそれぞれ下方に延びる腕部52(本例では一対の腕部52)を備えている。
【0034】
腕部52は、キャップ12の円筒部132の外周面に沿うように横断面は円弧状をなしており、腕部52のそれぞれには、図6(c)に示すように、矩形状の係止孔53が形成されている。この係止孔53は、図4に示す円筒部132の外周面に突設された縦断面が台形状の係止爪132aに係止するための孔である。図6(b)に示すように、腕部52の係止孔53よりも下方には、係止爪132aを係止孔53内にスムースに導くための傾斜面54が形成されている。
【0035】
図4に示すように、導出パイプ40の下流側円筒部43とフランジ部44とは離間しており、その間隔よりも係着体50の円環板部51は薄くなっている。したがって、係着体50の円環板部51は、フランジ部44の上面と全周に亘って接することが可能となっている。
【0036】
導出パイプ40をキャップ12の装着孔133に装着するときには、まず、係着体50の円環板部51の内側に、腕部52が突出した側から導出パイプ40の下流側円筒部43を下流端部から挿入し、円環板部51の下面がフランジ部44の上面と全周に亘って接するように導出パイプ40と係着体50とを組み合わせる。
【0037】
次に、導出パイプ40と係着体50との組み合わせ状態をほぼ維持したまま、導出パイプ40の凸部45が円筒部132の凹部135に嵌まり込むように、導出パイプ40の装着円筒部41をキャップ12の円筒部132内に挿入していく。これに伴い、導出パイプ40とともに係着体50も図4図示下方に移動し、係止爪132aが傾斜面54を内側から押圧する。これによって、係着体50の腕部52は外側に撓み、傾斜面54が係止爪132aを乗り越えると腕部52の撓みが復元して、係止爪132aが腕部52の係止孔53の下端面に係止する。
【0038】
係着体50の係止孔53と円筒部132の係止爪132aとの係止が完了すると、係着体50の円環板部51は、導出パイプ40のフランジ部44の上面に接し、導出パイプ40の装着円筒部41が円筒部132内から外方に抜けることを防止する。換言すれば、係着体50の円環板部51は、導出パイプ40の装着円筒部41が装着孔133の軸線方向における上方に移動することのみを規制する。
【0039】
上述の構成の燃料フィルタ装置1では、導入パイプ30を介して導入された燃料は、導入通路部121内の燃料通路を流れて上部空間10aに流入し、さらに上部空間10aに連通する下部空間10bに流入する。下部空間10bでは流入した燃料中から凝集した水分等が沈降、貯留される。下部空間10bに流入した燃料は、フィルタ部材20の濾材24中を通過し、その際に微細な水滴の凝集や異物の除去が行われる。濾材24中を通過して水分や異物が除去された燃料は、中心円筒23内から導出通路部131内の燃料通路を流れて導出パイプ40を介して導出される。
【0040】
ここで、導入パイプ30および導出パイプ40が、いずれも、ハウジング10の内部と連通する燃料通路が内部に形成された配管部材に相当する。導出パイプ40の上流側円筒部42が第1筒状部に相当し、下流側円筒部43が第1筒状部と直交する方向に延設された第2筒状部に相当する。
【0041】
また、係着体50が、ハウジング10の装着孔133に装着された第1筒状部である上流側円筒部42の装着孔軸線方向への移動を規制するとともに、凸部45が破損した際の上流側円筒部42の装着孔軸線周りの回動を可能とするように設けられた規制部材に相当する。
【0042】
なお、詳細な説明は省略しているが、導入パイプ30も第1筒状部に相当する下流側円筒部33と第2筒状部に相当する上流側円筒部32とを備えている。導入パイプ30の抜け止め固定をする係着体50も、ハウジング10の装着孔に装着された導入パイプ30の下流側円筒部33の装着孔軸線方向への移動を規制するとともに、凸部が破損した際の下流側円筒部33の装着孔軸線周りの回動を可能とするように設けられた規制部材に相当する。係着体50は、導入パイプ30および導出パイプ40の装着孔軸線方向の移動を禁止する軸線方向移動禁止手段であるとも言える。
【0043】
上述の構成の燃料フィルタ装置1によれば、導出パイプ40は、ハウジング10のキャップ12の装着孔133に装着される装着円筒部41を含み装着孔133の軸線方向に延設された上流側円筒部42と、上流側円筒部42と直交する方向に延設された下流側円筒部43とからなり、導出パイプ40の上流側円筒部42に凸部45が形成され、キャップ12の円筒部132に凸部45が嵌まり込む凹部135が形成されている。この凸部45と凹部135との組み合わせにより、ハウジング10に対する導出パイプ40の上流側円筒部42の装着孔133軸線周りの回動が規制されている。
【0044】
そして、車両衝突時等に導出パイプ40の下流側円筒部43に大きな衝撃力が加わり、下流側円筒部43と直交する方向に延びている上流側円筒部42に所定以上の回転モーメントが加わった場合には、導出パイプ40に形成された凸部45が犠牲的に破損して、上流側円筒部42の装着孔133軸線周りの回動の規制を解除するようになっている。
【0045】
これに加えて、係着体50は、キャップ12の装着孔133に装着された上流側円筒部42の装着孔133軸線方向への移動を規制するものの、凸部45が破損した際の上流側円筒部42の装着孔133軸線周りの回動は規制しないようになっている。
【0046】
すなわち、導出パイプ40の下流側円筒部43に大きな衝撃力が加わった場合には、図7に例示するように、凸部45が犠牲的に破損して凹部135内に残置され、凸部45以外の上流側円筒部42が装着孔133軸線周りに回動し、係着体50はこの回動を規制しない。したがって、ハウジング10に装着された導出パイプ40が大きな衝撃力を受けた場合であっても、凸部45が犠牲的に破損し、上流側円筒部42の通路形成部分は破損し難く、内部の燃料通路を正常な状態で維持することができる。
【0047】
また、導出パイプ40に上流側円筒部42から径外方向に突出する凸部45を設け、キャップ12の円筒部132に装着開口端面134から軸線方向に凹んだ凹部135を設けているので、凸部45および凹部135の形成を比較的容易に行うことができる。さらに、導出パイプ40が大きな衝撃力を受けて凸部45が破損した場合に、燃料フィルタ装置1を復元する必要があるときには、導出パイプ40を交換すればよいので、復元が比較的容易である。
【0048】
また、燃料フィルタ装置1は、図2に示す姿勢で車両に搭載されるものであり、導出パイプ40の上流側円筒部42には装着円筒部41より上方に、円筒部132の装着開口端面134の全域を覆うフランジ部44が形成され、フランジ部44より下方に凸部45が形成されている。したがって、凸部45および凹部135はフランジ部44の下方に位置することになり、上方から落下してくる水や異物等が凸部45と凹部135との嵌合部位に侵入し難い。
【0049】
また、導出パイプ40の下流側円筒部43とフランジ部44とは離間しており、その間隔よりも係着体50の円環板部51は薄くなっている。したがって、係着体50の円環板部51は、フランジ部44の上面と全周に亘って接することができる。これにより、係着体50が、キャップ12の装着孔133に装着された上流側円筒部42の装着孔軸線方向への移動を規制するとともに、凸部45が破損した際の上流側円筒部42の装着孔軸線周りの回動を可能とする構成を容易に形成することができる。
【0050】
また、導出パイプ40に凸部45を設け、キャップ12の円筒部132に凹部135を設けるだけで、導出パイプ40内の燃料通路を正常な状態で維持することができる。したがって、燃料通路保護のために燃料フィルタ装置1が大型化することを抑止することができる。
【0051】
上述した導出パイプ40およびハウジング10への導出パイプ装着部における効果は、同様の構成を採用した導入パイプ30およびハウジング10への導入パイプ装着部においても同様に得ることができる。
【0052】
このように、燃料フィルタ装置1のハウジング10に装着された導入パイプ30内および導出パイプ40内の燃料通路の耐衝撃性を向上できるので、導入パイプ30および導出パイプ40を含む燃料フィルタ装置1を衝撃から保護するプロテクタ等を廃止することが可能であり、軽量化が可能であるとともに車両搭載スペースを抑制することができる。
【0053】
これに加えて、燃料フィルタ装置1への衝撃回避を目的とした複雑な構造の車両取付ブラケット等を用いる必要がなく、簡単な構造の取付ブラケットを採用したとしても、導入パイプ30内および導出パイプ40内の燃料通路の耐衝撃性を確保することが可能である。これらにより、燃料フィルタ装置1の車両への搭載性の自由度を大きく向上することができる。
【0054】
(他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
【0055】
上記実施形態では、ハウジング10への導入パイプ30の装着部位と導出パイプ40の装着部位とに本発明を適用した構成を設けていたが、いずれか一方のみに本発明を適用した構成を設けるものであってもかまわない。
【0056】
また、上記実施形態では、配管部材である導出パイプ40は、上流側円筒部42と下流側円筒部43とが直交していたが、相互に交差するように接続していればよい。すなわち、一直線状の配管部材でなければ本発明を適用することが可能である。これは、導入パイプ30についても同様である。なお、以下に説明する実施形態においても導出パイプ40ばかりでなく、導入パイプ30についても実施可能である。
【0057】
上記実施形態では、導出パイプ40側に凸部45を設け、ハウジング10側に凹部135を設けていたが、これに限定されるものではなく、逆であってもかまわない。また、凸部と凹部とを嵌合させる複数箇所の一部と残部とで、導出パイプ40側に設定する凸部および凹部を異なるものとしてもかまわない。
【0058】
上記実施形態では、導入パイプ30および導出パイプ40をキャップ12の上面側に設けていたが、導入パイプ30および導出パイプ40のいずれか一方もしくは両方をキャップ12の側面側に設けるものであってもかまわない。
【0059】
また、上記実施形態では、円環板部51と一対の腕部52とからなる係着体50を規制部材としていたが、規制部材は、ハウジング10の装着孔133に装着された導出パイプ40の上流側円筒部42の装着孔軸線方向への移動を規制するとともに、凸部45が破損した際の上流側円筒部42の装着孔軸線周りの回動を可能とするものであればこれに限定するものではない。規制部材はハウジング10に係着するものに限らず、例えば、ハウジング10と一体であってもかまわない。キャップ12の上面に突設され、導出パイプ40のフランジ部44の上面を押さえ込むように係止するものであってもかまわない。
【0060】
また、上記実施形態では、キャップ12の円筒部132内の装着孔133に導出パイプ40の装着円筒部41が装着されるものであったが、装着円筒部は、少なくとも装着孔の外方の端部に装着するものであればよく、例えば、装着孔の外方端部(装着開口端面)を含む円筒部の外周に装着円筒部が装着するものであってもかまわない。
【0061】
また、上記実施形態では、導出パイプ40の上流側円筒部42に凸部45が形成され、装着孔133を形成するキャップ12の円筒部132に凹部135が形成されていたが、凸部および凹部の形成部位は、導出パイプ40のハウジング10への装着部位に限定されず、他の部位に形成するものであってもよい。例えば、凸部を導出パイプ40の下流側円筒部43に形成してもかまわない。
【0062】
また、上記実施形態では、導出パイプ40は、上流側円筒部42と下流側円筒部43とで構成されていたが、装着円筒部41以外の部分は、筒状であれば円筒状に限定されるものではない。
【0063】
また、上記実施形態では、ハウジング10は、ケース11とキャップ12とを組み合わせて構成していたが、これに限定されるものではなく、例えば、3部材以上を組み合わせてハウジングを構成してもかまわない。
【0064】
また、上記実施形態では、燃料フィルタ装置1は、ディーゼルエンジンに燃料を供給するコモンレールシステムに用いられるものであったが、これに限定されるものではない。例えば、分配型ポンプを用いたディーゼルエンジンへの燃料供給系に採用するものであってもよいし、ガソリンエンジンへの燃料供給系に採用するものであってもかまわない。
【符号の説明】
【0065】
1 燃料フィルタ装置
10 ハウジング
11 ケース(ハウジングの一部)
12 キャップ(ハウジングの一部)
20 フィルタ部材
24 濾材
30 導入パイプ(配管部材)
32 上流側円筒部(第2筒状部)
33 下流側円筒部(第1筒状部)
40 導出パイプ(配管部材)
41 装着円筒部
42 上流側円筒部(第1筒状部)
43 下流側円筒部(第2筒状部)
44 フランジ部
45 凸部
50 係着体(規制部材)
132 円筒部
133 装着孔
134 装着開口端面
135 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に濾材を収容するハウジングと、
前記ハウジングに設けられた装着孔に装着され、前記ハウジングの内部と連通する燃料通路が内部に形成された配管部材と、を備える燃料フィルタ装置であって、
前記配管部材は、前記装着孔に装着される装着円筒部を含み前記装着孔の軸線方向に延設された第1筒状部と、前記第1筒状部と交差する方向に延設された第2筒状部とを有し、
前記ハウジングおよび前記配管部材の一方に凸部が形成され、他方に前記凸部が嵌る凹部が形成されて、前記ハウジングに対する前記第1筒状部の前記装着孔軸線周りの回動を規制するとともに、前記第1筒状部に所定以上の回転モーメントが加わった場合には前記凸部が犠牲的に破損して前記回動の規制を解除するようになっており、
前記装着孔に装着された前記第1筒状部の前記装着孔軸線方向への移動を規制するとともに、前記凸部が破損した際の前記第1筒状部の前記装着孔軸線周りの回動を可能とするように設けられた規制部材を備えることを特徴とする燃料フィルタ装置。
【請求項2】
前記配管部材に前記凸部が形成され、前記ハウジングに前記凹部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の燃料フィルタ装置。
【請求項3】
前記装着孔の軸線方向は上下方向であって、前記装着円筒部は上方から前記装着孔に装着されており、
前記第1筒状部には、前記装着円筒部よりも上方にフランジ部が形成されており、
前記凸部は、前記フランジ部よりも下方側に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の燃料フィルタ装置。
【請求項4】
前記フランジ部は、前記第2筒状部よりも下方側に前記第2筒状部に対して離れて設けられており、
前記規制部材は、前記フランジ部の上面に係止して前記第1筒状部の前記装着孔軸線方向への移動を規制していることを特徴とする請求項3に記載の燃料フィルタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−99425(P2011−99425A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−256348(P2009−256348)
【出願日】平成21年11月9日(2009.11.9)
【出願人】(000161840)京三電機株式会社 (99)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】