燃料プレートアセンブリおよび脱酸素装置
【課題】 航空機燃料システムにおける燃料の脱酸素化を向上させる効果的かつ経済的な、複雑でない燃料プレートおよびシーリングガスケット構造を提供する。
【解決手段】 燃料脱酸素装置の燃料流路アセンブリ34内の燃料流路38を通流する燃料が酸素透過膜36と接触する。減圧により燃料流路38と酸素透過膜36との間に酸素分圧の圧力勾配が作り出され、これによりコーキングの原因となる燃料内の溶存酸素が除去される。第1の流路板52および第2の流路板54が流路インピンジメント要素55を備え、燃料の乱流をつくりだすことにより燃料流と酸素透過膜36との接触を高めて溶存酸素の質量輸送を増加させる。また本発明により脱酸素化を向上させるアセンブリの製造を容易にする燃料プレートおよびシーリングガスケットが提供される。
【解決手段】 燃料脱酸素装置の燃料流路アセンブリ34内の燃料流路38を通流する燃料が酸素透過膜36と接触する。減圧により燃料流路38と酸素透過膜36との間に酸素分圧の圧力勾配が作り出され、これによりコーキングの原因となる燃料内の溶存酸素が除去される。第1の流路板52および第2の流路板54が流路インピンジメント要素55を備え、燃料の乱流をつくりだすことにより燃料流と酸素透過膜36との接触を高めて溶存酸素の質量輸送を増加させる。また本発明により脱酸素化を向上させるアセンブリの製造を容易にする燃料プレートおよびシーリングガスケットが提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は脱酸素化による燃料の安定化、特に燃料安定化装置の燃料プレートアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
航空機において燃料は多くの場合、様々な航空システムの冷媒として利用される。炭化水素ジェット燃料中の溶存酸素の存在は、酸素が望ましくない副生成物を生み出す酸化反応を持続させるため好ましくない。ジェット燃料中の空気の溶解は、酸素濃度が約70ppmに達する。燃料が300〜850°Fに加熱されると、酸素は、一般的に「コークス」もしくは「コーキング」と呼ばれる堆積物を生じさせる燃料の遊離基反応を開始させる。コークスは燃料ラインに悪影響を及ぼし、燃料供給を妨げるおそれがある。こうした堆積物の形成は、所期の熱交換機能もしくは燃料の効果的な注入のいずれかに関する、燃料装置の一般的な機能に障害を生じさせるおそれがある。
【0003】
現在、従来型のさまざまな燃料脱酸素化技術が、燃料から酸素を除去するために利用されている。一般的に、コーキングの問題を克服するためには酸素濃度を6ppm以下に低下させれば十分である。
【0004】
航空機燃料システムに利用されている従来型の燃料安定化装置(FSU)の一つは、酸素透過性の膜を横切る酸素分圧の圧力勾配を作り出すことによりジェット燃料から酸素を除去する。燃料安定化装置は外側ハウジング内で透過膜および多孔性基板にサンドイッチ状にはさまれた複数の燃料プレートを含む。各々の燃料プレートは燃料流路の一部を画定し、多孔板を背面にもつ透過膜が燃料流路の残りの部分を画定する。透過膜は、燃料流路内の燃料と接触して、大量の液体燃料が透過膜および多孔板を通して移動するのを防ぐテフロン AF(登録商標)もしくは他種の非晶質ガラス状ポリマコーティングを含む。
【0005】
同様の形状の複数の平板を用いることにより生産効率が向上し、全体費用が軽減される。さらに、燃料から溶存酸素を除去する能力が向上するとともに燃料安定化装置の大きさや重量は実質的に縮小される。さらに、平面状の設計は、従来の管状の設計に比べて楽に拡大縮小できる。
【特許文献1】米国特許第6,315,815号明細書
【特許文献2】米国特許第6,709,492号明細書
【特許文献3】米国特許第6,939,392号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
不都合なことに、酸素透過膜は、一般的に機械的整合性に欠けるおそれがある比較的精密な薄い(約2〜5ミクロン)の膜であると同時に、燃料プレートは、相対的に機械加工するのが難しく、機械加工に時間のかかる高価なステンレススチール製である。金属燃料プレートと酸素透過膜とが接触することにより、透過膜に破損を招くおそれがあり、従って、複数のプレート間の漏出を防ぐように慎重な製造および組立てを必要とする。
【0007】
プレート間の欠陥のあるシーリング、すなわち破損した透過膜は、燃料安定化装置性能を劇的に低下させる流路間の漏れを生じさせるおそれがある。周囲への潜在的な漏出を防ぐ減圧流路のシーリングのみならず燃料プレート間の接触面のシーリング、燃料プレートと酸素透過膜との間の燃料流路のシーリングは、燃料安定化装置の効果的な運転のために重要である。さらに、酸素の拡散率を増加させ燃料脱酸素装置の性能を向上させるために、燃料プレートはさらにシーリングや製造を複雑化させる相対的に複雑な3次元燃料流路構造を含む。
【0008】
相対的に複雑な3次元燃料流路構造や高精度の燃料安定化装置のシーリングガスケットを製造する有効な製造技術があるにもかかわらず、これらの従来技術は大幅に時間を費やすとともに経費がかかる。
【0009】
したがって、燃料の脱酸素化を向上させるように、複雑な3次元燃料流路構造の製造を容易にする脱酸素装置の有効な比較的安価かつさほど複雑でない燃料プレートやシーリングガスケット機構を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のエネルギー変換装置用の燃料装置は、複数の非金属燃料プレートと、ガスケットと、酸素透過膜と、多孔性基板と、エポキシフィルム接着剤と、液状エポキシ材料と、減圧フレームプレートと、を備えてなる脱酸素装置を含む。脱酸素装置は航空機熱管理用途で使用される燃料を脱酸素化するオンライン燃料安定化装置(FSU)である。燃料安定化装置における重要な構成要素は燃料プレートである。燃料流路内の層流インピンジメント要素のような入り組んだ3次元燃料流路構造は、燃料安定化装置内の酸素拡散率を劇的に高める。燃料プレートは、様々なプラスチック、もしくはKAPTON(登録商標)のような比較的軟質な非金属材料から製造される。非金属材料にレーザカッティングを利用することにより、従来は金属製燃料プレートでは利用できなかった入り組んだ3次元燃料流路構造をもつ、相対的に面積の大きい燃料プレートの、費用効果の高い製造を可能にする。
【0011】
比較的デリケートな酸素透過膜に損傷を与えることなく燃料プレートが加圧されうるため、非金属燃料プレートはこの燃料プレートと酸素透過膜との間に有効なシーリング接触面を効果的に提供する。非金属燃料プレートが、燃料流路内のシーリングを可能にするのみならず、複雑な3次元の燃料流路構造とこれに対応して複雑なシーリングガスケットとを製造する技術を可能にするとともに、このシーリングガスケットが燃料プレート、酸素透過膜、および非金属の燃料プレートの間の接触面を密閉、軟化させる。
【0012】
したがって、本発明は、燃料乱流および脱酸素化を向上させるための複雑な3次元の燃料流路構造の製造を容易にする、脱酸素装置における効果的な、相対的に安価かつ複雑でない燃料プレートおよびシーリングガスケット機構を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1はエネルギー変換装置(ECD)12用の燃料装置10の一般的な概略図を示す。脱酸素装置14は、燃料タンクなどの貯槽器16から液体燃料Fを受ける。燃料Fは通常、ジェット燃料などの液体炭化水素である。エネルギー変換装置12はあらゆる形態として存在しうるが、最終的に使用される前のある時点では潤滑油として使用される、もしくは所定の処理用、あるいは燃焼用の、もしくはある種のエネルギーを放出するための液体炭化水素が、著しく溶存酸素を含む場合、自動酸化反応やコーキングを持続させるのに十分な熱を、このエネルギー変換装置内で得る。
【0014】
エネルギー変換装置12の一形態はガスタービンエンジンであり、特に航空機のエンジンである。一般的に燃料はまた、航空機における一つもしくは複数のサブシステムの冷媒としての役割を果たし、燃焼直前に燃料噴射器へと送られるに従い加熱される。
【0015】
熱交換セクション18は熱交換関係で燃料が通過する装置を表す。熱交換セクション18はエネルギー変換装置12と直接関連しており、より大きいシステム10のどこにでも配置されることを理解されたい。熱交換装置18は、これに代えてもしくはこれに加えてシステム全体にわたって配置された複数の熱交換を含みうる。
【0016】
概ね理解されるように、貯槽器16に貯蔵された燃料Fは通常溶存酸素を含み、概ね70ppmの飽和度である。燃料ポンプ20は貯槽器16から燃料Fを汲み出す。貯槽器16は、燃料ポンプ20、弁24および燃料貯槽器通路22を介して脱酸素装置14の燃料インレット26と連通している。燃料ポンプ20により印加される圧力が、脱酸素装置14および燃焼装置10のその他の部分を通して燃料Fが循環するのを補助する。燃料Fが脱酸素装置14を通過するに従い、酸素は減圧装置28へと選択的に除去される。
【0017】
脱酸素化燃料Fdは脱酸素装置14の燃料アウトレット30から脱酸素化燃料通路32を経て熱交換装置18へ、そしてガスタービンエンジンの燃料噴射器などのエネルギー変換装置12へと流れる。脱酸素化された燃料の一部は、再循環通路33によって示されるように脱酸素装置14もしくは貯槽器16のいずれかへと再循環される。特定のコンポーネント配置を図示の実施例に示しているが、その他の配置も本発明により利益を得られる ことを理解されたい。
【0018】
図2Aを参照すると、脱酸素装置14が望ましくは多数の減圧/燃料流路アセンブリ34を含む(図2B)。アセンブリ34は、燃料流路38と、支持メッシュによって形成されることが可能な酸素受入減圧流路40との間に、酸素透過膜36を含む(図3)。酸素分圧の圧力勾配を提供するように流路が様々な形状や配置をとりうることを理解すべきであり、この圧力勾配が燃料を脱酸素化するように膜を横切る酸素濃度差を維持する。
【0019】
酸素透過膜36は溶存酸素(およびその他の気体)をオングストローム(Å)サイズの孔隙を通して拡散させるが、より大きい燃料分子は遮断する。あるいは、もしくは孔隙とともに、透過膜36が燃料を遮断しながらこの膜を通して酸素(およびその他の気体)を溶解、拡散させる溶液拡散メカニズムを利用する。米国デラウェア州ウィルミントンのE.I.デュ・ポン・ド・ヌムール社により登録された「Teflon AF」の商標で多くの場合認識されているペルフルオロ‐2,2‐ジメチル‐1,3‐ジオキソール(PDD)の非晶質共重合体であるTeflon AFの一群、およびイタリアミラノのソルベー・ソレクシス社により登録された2,2,4‐トリフルオロ‐5‐トリフルオロメトキシ‐1,3‐ジオキソール(TDD)の共重合体であるHyflon ADの一群が、燃料脱酸素化に効果的な成果をもたらすことが実証されている。
【0020】
燃料流路38を通流する燃料は酸素透過膜36と接触する。減圧によって燃料流路38の内壁と酸素透過膜36との間に酸素分圧の圧力勾配がつくり出され、これにより燃料内に溶存する酸素を拡散させて膜36を支持する多孔質支持板42を通して酸素を移動させ、そして燃料流路38から間隔を介した酸素受入流路40を通して脱酸素装置14の外へと移動させる。一つの膜をベースとする燃料脱酸素装置のその他の様態およびこれに関連するコンポーネントについてのさらに詳しい理解については、本出願人に譲渡され、全体として本願の参照となる特許文献1および特許文献2の平面薄膜脱酸素装置を参照されたい。
【0021】
図2Bを参照すると、脱酸素装置14における一つの流路アセンブリ34を形成する一組のプレートが、例えば不織布のポリエステルなどの多孔質支持板42によって支持された酸素透過膜36に隣り合うようにサンドイッチ状に挟まれた流路板アセンブリ44を含む(図3にも示す)。多孔質基板を図に概略的に示したが、さまざまな形状を取りうることを理解されたい。一つもしくは複数のアセンブリ34に隣接するのが分離板48である。分離板48は、燃料が流路板アセンブリ34によって画定された既定の燃料経路を横切って漏出するのを防止する。流路アセンブリ34の数に関係なく、脱酸素装置14は境界板46および外側ハウジングプレート50a,50bによって密閉され、ハウジングプレート50a,50bは各々、燃料インレット26、減圧ポート29、および燃料アウトレット30を含む(図2Aおよび図2Eに示す)。
【0022】
外側ハウジングプレート50a,50bは、流路アセンブリ34がこれらの間にサンドイッチ状に挟まれるように、望ましくはボルトなどの複数の留め具を通して互いに固定される。外側ハウジングプレート50a,50bは、望ましくはこれらのプレートの間のシーリングを保つように流路アセンブリ34を与圧する相対的に硬質なコンポーネントである。図示の実施例には直線状のものとして示しているが、他の形状、寸法、もしくは軟質なハウジングを含む構成が適当かつ本発明に含まれることは当業者にとって理解されるであろう。
【0023】
各々の流路板アセンブリ44はインレット26とアウトレット30との間に燃料流路38の一部を画定する。減圧ポート29(図2A)は、流路板52,54内の減圧ポート29を通して境界板46および多孔質支持板42と連通している。減圧により各々の多孔質支持板42内部に分圧圧力勾配がつくり出され、燃料流路38から酸素透過膜36を通して溶存酸素が抽出される。その後酸素が減圧ポート29を通して排出される。
【0024】
流路アセンブリ34の特定の数量は、燃料の種類、燃料温度、およびエンジンからの要求質量流量といった、用途に固有の要求事項により決定される。さらに、異なる量の溶存酸素を含有する異なる燃料は、所望の量の溶存酸素を除去するために異なる量の脱酸素化を必要とする場合がある。
【0025】
各々の流路板アセンブリ44は、インレット26とアウトレット30との間(図2A)に一つの燃料流路38(図3)を画定する。望ましくはインレット26とアウトレット30との間に複数の平行な流路38が脱酸素装置14内の複数の流路アセンブリ34によって画定される。燃料から除去される溶存酸素量を最大限にするため、各々の燃料流路38の形態は、望ましくは燃料の酸素透過膜36に対する露出を最大化するように画定される。燃料流路38は、望ましくは燃料が酸素透過膜36と接触するように十分小さく、かつ燃料流を制限しないように十分に大きい。
【0026】
各々の流路板アセンブリ44は、第1の流路板52と、第2の流路板54と、これらの間の流路板ガスケット56(図2Dに単独で示す)と、を含んでなる。明確に示すために図示の実施例に示した流路板アセンブリ44には2つの流路板と一つのガスケットのみを示しており、任意の複数のプレートアセンブリが外側ハウジングプレート50a,50bの間に配置されうることを理解されたい。
【0027】
第1の流路板52および第2の流路板54は、望ましくは例えばポリフェニレンスルフィド(PPS)、さらに望ましくは炭素繊維が20%(重量%)まで充填されたPPSのような熱可塑性樹脂といった非金属材料で製造される。第1の流路板52および第2の流路板54は、望ましくは米国デラウェア州のE.I.デュ・ポン・ド・ヌムール社で製造されたKAPTON(登録商標)フィルムなどの非金属材料で製造される。型成形でなく機械加工された材料はもとより、燃料と適合する(反応性がない)導電性のある(静電荷の蓄積を防ぐ)その他のプラスチックが代わりに用いられうることを理解されたい。
【0028】
第1の流路板52および第2の流路板54は酸素輸送を向上させる流路インピンジメント要素55(図2C、図3)を含む。流路板52、54が組み合わせられると、流路板52,54によって画定された流路38に入り組んだ2次元の流動特性を与えるように流路インピンジメント要素55が交互に介在する(図4)。すなわち、各々の流路板52,54上の流路インピンジメント要素55が、それぞれ流路板52,54の平面より上に延びている。流路板52,54がガスケット56とともに組み合わされて流路板アセンブリ44をなすと、流路インピンジメント要素55が隣り合う流路板52,54から延びて完全な流路38を形成する(図3)。
【0029】
流路インピンジメント要素55は大量の燃料流から膜表面への酸素輸送を向上させるとともに、非金属材料であるため重量と酸素透過膜36を傷つけるおそれのある鋭い角とが最小限に抑えられる。脱酸素装置14の流路インピンジメント要素55は燃料流と複合酸素透過膜36との接触を高め、溶存酸素の質量輸送を増加させる。
【0030】
燃料流路38を通流する燃料は酸素透過膜36と接触する。減圧により燃料流路38の内壁と複合酸素透過膜36との間に酸素分圧の圧力勾配がつくり出され、これにより燃料内に溶存する酸素を拡散させて膜36を支持する多孔質支持板42を通して酸素を移動させ、そして燃料流路38から間隔を介した酸素受入流路40を通して脱酸素装置14の外へと移動させる。一つの膜をベースとする燃料脱酸素装置のその他の様態およびこれに関連するコンポーネントについてのさらに詳しい理解については、本出願人に譲渡され、全体として本願の参照となる特許文献1の膜ベースの燃料脱酸素装置、特許文献3の熱管理装置およびその方法、および特許文献2の平面薄膜脱酸素装置を参照されたい。
【0031】
第1の流路板52および第2の流路板54は、燃料の擾乱を通じて酸素の拡散率を増大させるうねを形成させる流路インピンジメント要素55(図2)を含む。
【0032】
図4Aおよび図4Bを参照すると、各々の流路板52,54は、これらの片側52a,54aに燃料流をシールする溝58と、反対側52b,54bに直立隆起部60と、を含む。溝58は燃料プレートアセンブリ44を密閉するように燃料プレートガスケット56を受ける(図4C)。ガスケット56(図2D)のほかに、接着フィルムやエポキシ液体などのその他のシーリング材料が、これに代えてもしくはこれに加えて、利用されうることを理解されたい。溝58および直立隆起部60は、望ましくは燃料プレート52,54の周りの燃料漏れ経路となりうる場所に画定される(図4D)。溝58および直立隆起部60は、望ましくは燃料プレート52,54の材料厚さが全体にわたって均等になるように正反対の位置となる。つまり、溝58は、燃料プレート52,54の平面52a,54a内において、燃料プレート52,54の平面52b,54bから直立隆起部60が延びる高さと概ね等しい深さで延びる。
【0033】
さらに各々の燃料プレート52,54は、片側52a,54aに減圧流路を密閉する溝62(図4E)と、反対側52b,54bに燃料プレート減圧ガスケット66(図4C)を受ける直立隆起部64と、を含み、溝58と直立隆起部60とによる燃料プレートアセンブリ44と同じように燃料プレートアセンブリ44を密閉する。溝62および直立隆起部64は、望ましくは燃料プレート52,54の周りの燃料漏れ経路となりうる場所に画定される(図4E)。実施例では燃料プレート52,54のみを示したが、望ましくは各々のプレートが、シーリングを保証し、隣接するプレートの組立て時にアラインメントや係合を提供する溝‐ガスケット‐直立隆起部材接触面を含むことを理解されたい。複数の燃料プレートアセンブリ44(図3)間に連絡を行う減圧ポート29と、燃料インレット26および燃料アウトレット30とが、各々、脱酸素装置14の短い側面(図4G)と、長い側面(図4H)と、に配置される。
【0034】
レーザカットは、高精度シーリングガスケットや燃料プレート52,54を製造する一つの望ましい技術である。KAPTON(登録商標)もしくはその他の同様の非金属材料が、望ましくはCO2レーザなどのコンピュータ制御の高精度レーザおよび所望のシーリングガスケットや燃料プレート構成のCAD設計ファイルによりカットされる。レーザは、シーリングガスケットや燃料プレート燃料流路の形状にカットするために要求されるパターンに従うようにプログラムされている。レーザカッティングは、段階的に、つまり後に組み合わせられる材料の層ごとに行われ、あるいは、完全な燃料プレートを提供するように一回の作業で行われ、例えば燃料プレート52,54が単一のプレートとして形成される。レーザカッティングは高精度シーリングガスケットや燃料プレートの大量生産において費用効果の高い製造技術を提供する。特にゴムタイプのシーリング材料で作られたレーザカット高精度シーリングガスケットは、漏出しないアセンブリを提供する。高精度シーリングガスケットや隣接する燃料プレートを製造するためにレーザカット技術を利用する利点は、特に積層燃料安定化装置アセンブリに関連性がある。
【0035】
一般的に理解されているようにウォータジェットカッティングは本発明の高精度燃料安定化装置のシーリングや燃料プレートを製造するのに効果的なもう一つの技術である。ウォータジェットカッティングは絶対的な繰り返し精度をもち、材料特性もしくは温度に影響を及ぼさない。
【0036】
一般的に理解されているように放電加工(EDM)は本発明の高精度燃料安定化装置のシーリングや燃料プレートを製造するのに効果的なさらに別の技術である。放電加工製造は、製造数が少ないもしくは高い精度が要求される場合にかなり経済的で非常に好ましい製造工程である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の燃料脱酸素装置を使用するエネルギー変換装置(ECD)およびこれに関連する燃料装置の一般的な概略図。
【図2A】本発明の燃料脱酸素装置の斜視図。
【図2B】本発明の燃料脱酸素装置の分解組立図。
【図2C】脱酸素装置の拡大部分概略図。
【図2D】燃料脱酸素装置のガスケットの平面図。
【図2E】燃料脱酸素装置の拡大断面図。
【図3】流路の拡大概略断面図。
【図4A】燃料脱酸素装置の燃料プレートの拡大上面図。
【図4B】図4Aの燃料プレートの拡大下面図。
【図4C】第1の燃料プレートと第2の燃料プレートとの間にガスケットを有する溝と直立部との接触部分の拡大斜視図。
【図4D】燃料ガスケットの位置を示す燃料プレートの拡大平面図。
【図4E】減圧ガスケットの位置を示す燃料プレートの拡大平面図。
【図4F】燃料ポートおよび減圧ポートの位置を示した複数の燃料プレートの拡大斜視図。
【図4G】プレート内減圧ポートを示した燃料脱酸素装置の短軸に沿った拡大断面図。
【図4H】プレート内燃料連絡を示した燃料脱酸素装置の長軸に沿った拡大断面図。
【符号の説明】
【0038】
34…燃料流路アセンブリ
36…酸素透過膜
38…燃料流路
40…酸素受入流路
42…多孔質支持板
44…流路板アセンブリ
52…第1の流路板(燃料プレート)
54…第2の流路板(燃料プレート)
55…流路インピンジメント要素
56…ガスケット
【技術分野】
【0001】
本発明は脱酸素化による燃料の安定化、特に燃料安定化装置の燃料プレートアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
航空機において燃料は多くの場合、様々な航空システムの冷媒として利用される。炭化水素ジェット燃料中の溶存酸素の存在は、酸素が望ましくない副生成物を生み出す酸化反応を持続させるため好ましくない。ジェット燃料中の空気の溶解は、酸素濃度が約70ppmに達する。燃料が300〜850°Fに加熱されると、酸素は、一般的に「コークス」もしくは「コーキング」と呼ばれる堆積物を生じさせる燃料の遊離基反応を開始させる。コークスは燃料ラインに悪影響を及ぼし、燃料供給を妨げるおそれがある。こうした堆積物の形成は、所期の熱交換機能もしくは燃料の効果的な注入のいずれかに関する、燃料装置の一般的な機能に障害を生じさせるおそれがある。
【0003】
現在、従来型のさまざまな燃料脱酸素化技術が、燃料から酸素を除去するために利用されている。一般的に、コーキングの問題を克服するためには酸素濃度を6ppm以下に低下させれば十分である。
【0004】
航空機燃料システムに利用されている従来型の燃料安定化装置(FSU)の一つは、酸素透過性の膜を横切る酸素分圧の圧力勾配を作り出すことによりジェット燃料から酸素を除去する。燃料安定化装置は外側ハウジング内で透過膜および多孔性基板にサンドイッチ状にはさまれた複数の燃料プレートを含む。各々の燃料プレートは燃料流路の一部を画定し、多孔板を背面にもつ透過膜が燃料流路の残りの部分を画定する。透過膜は、燃料流路内の燃料と接触して、大量の液体燃料が透過膜および多孔板を通して移動するのを防ぐテフロン AF(登録商標)もしくは他種の非晶質ガラス状ポリマコーティングを含む。
【0005】
同様の形状の複数の平板を用いることにより生産効率が向上し、全体費用が軽減される。さらに、燃料から溶存酸素を除去する能力が向上するとともに燃料安定化装置の大きさや重量は実質的に縮小される。さらに、平面状の設計は、従来の管状の設計に比べて楽に拡大縮小できる。
【特許文献1】米国特許第6,315,815号明細書
【特許文献2】米国特許第6,709,492号明細書
【特許文献3】米国特許第6,939,392号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
不都合なことに、酸素透過膜は、一般的に機械的整合性に欠けるおそれがある比較的精密な薄い(約2〜5ミクロン)の膜であると同時に、燃料プレートは、相対的に機械加工するのが難しく、機械加工に時間のかかる高価なステンレススチール製である。金属燃料プレートと酸素透過膜とが接触することにより、透過膜に破損を招くおそれがあり、従って、複数のプレート間の漏出を防ぐように慎重な製造および組立てを必要とする。
【0007】
プレート間の欠陥のあるシーリング、すなわち破損した透過膜は、燃料安定化装置性能を劇的に低下させる流路間の漏れを生じさせるおそれがある。周囲への潜在的な漏出を防ぐ減圧流路のシーリングのみならず燃料プレート間の接触面のシーリング、燃料プレートと酸素透過膜との間の燃料流路のシーリングは、燃料安定化装置の効果的な運転のために重要である。さらに、酸素の拡散率を増加させ燃料脱酸素装置の性能を向上させるために、燃料プレートはさらにシーリングや製造を複雑化させる相対的に複雑な3次元燃料流路構造を含む。
【0008】
相対的に複雑な3次元燃料流路構造や高精度の燃料安定化装置のシーリングガスケットを製造する有効な製造技術があるにもかかわらず、これらの従来技術は大幅に時間を費やすとともに経費がかかる。
【0009】
したがって、燃料の脱酸素化を向上させるように、複雑な3次元燃料流路構造の製造を容易にする脱酸素装置の有効な比較的安価かつさほど複雑でない燃料プレートやシーリングガスケット機構を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のエネルギー変換装置用の燃料装置は、複数の非金属燃料プレートと、ガスケットと、酸素透過膜と、多孔性基板と、エポキシフィルム接着剤と、液状エポキシ材料と、減圧フレームプレートと、を備えてなる脱酸素装置を含む。脱酸素装置は航空機熱管理用途で使用される燃料を脱酸素化するオンライン燃料安定化装置(FSU)である。燃料安定化装置における重要な構成要素は燃料プレートである。燃料流路内の層流インピンジメント要素のような入り組んだ3次元燃料流路構造は、燃料安定化装置内の酸素拡散率を劇的に高める。燃料プレートは、様々なプラスチック、もしくはKAPTON(登録商標)のような比較的軟質な非金属材料から製造される。非金属材料にレーザカッティングを利用することにより、従来は金属製燃料プレートでは利用できなかった入り組んだ3次元燃料流路構造をもつ、相対的に面積の大きい燃料プレートの、費用効果の高い製造を可能にする。
【0011】
比較的デリケートな酸素透過膜に損傷を与えることなく燃料プレートが加圧されうるため、非金属燃料プレートはこの燃料プレートと酸素透過膜との間に有効なシーリング接触面を効果的に提供する。非金属燃料プレートが、燃料流路内のシーリングを可能にするのみならず、複雑な3次元の燃料流路構造とこれに対応して複雑なシーリングガスケットとを製造する技術を可能にするとともに、このシーリングガスケットが燃料プレート、酸素透過膜、および非金属の燃料プレートの間の接触面を密閉、軟化させる。
【0012】
したがって、本発明は、燃料乱流および脱酸素化を向上させるための複雑な3次元の燃料流路構造の製造を容易にする、脱酸素装置における効果的な、相対的に安価かつ複雑でない燃料プレートおよびシーリングガスケット機構を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1はエネルギー変換装置(ECD)12用の燃料装置10の一般的な概略図を示す。脱酸素装置14は、燃料タンクなどの貯槽器16から液体燃料Fを受ける。燃料Fは通常、ジェット燃料などの液体炭化水素である。エネルギー変換装置12はあらゆる形態として存在しうるが、最終的に使用される前のある時点では潤滑油として使用される、もしくは所定の処理用、あるいは燃焼用の、もしくはある種のエネルギーを放出するための液体炭化水素が、著しく溶存酸素を含む場合、自動酸化反応やコーキングを持続させるのに十分な熱を、このエネルギー変換装置内で得る。
【0014】
エネルギー変換装置12の一形態はガスタービンエンジンであり、特に航空機のエンジンである。一般的に燃料はまた、航空機における一つもしくは複数のサブシステムの冷媒としての役割を果たし、燃焼直前に燃料噴射器へと送られるに従い加熱される。
【0015】
熱交換セクション18は熱交換関係で燃料が通過する装置を表す。熱交換セクション18はエネルギー変換装置12と直接関連しており、より大きいシステム10のどこにでも配置されることを理解されたい。熱交換装置18は、これに代えてもしくはこれに加えてシステム全体にわたって配置された複数の熱交換を含みうる。
【0016】
概ね理解されるように、貯槽器16に貯蔵された燃料Fは通常溶存酸素を含み、概ね70ppmの飽和度である。燃料ポンプ20は貯槽器16から燃料Fを汲み出す。貯槽器16は、燃料ポンプ20、弁24および燃料貯槽器通路22を介して脱酸素装置14の燃料インレット26と連通している。燃料ポンプ20により印加される圧力が、脱酸素装置14および燃焼装置10のその他の部分を通して燃料Fが循環するのを補助する。燃料Fが脱酸素装置14を通過するに従い、酸素は減圧装置28へと選択的に除去される。
【0017】
脱酸素化燃料Fdは脱酸素装置14の燃料アウトレット30から脱酸素化燃料通路32を経て熱交換装置18へ、そしてガスタービンエンジンの燃料噴射器などのエネルギー変換装置12へと流れる。脱酸素化された燃料の一部は、再循環通路33によって示されるように脱酸素装置14もしくは貯槽器16のいずれかへと再循環される。特定のコンポーネント配置を図示の実施例に示しているが、その他の配置も本発明により利益を得られる ことを理解されたい。
【0018】
図2Aを参照すると、脱酸素装置14が望ましくは多数の減圧/燃料流路アセンブリ34を含む(図2B)。アセンブリ34は、燃料流路38と、支持メッシュによって形成されることが可能な酸素受入減圧流路40との間に、酸素透過膜36を含む(図3)。酸素分圧の圧力勾配を提供するように流路が様々な形状や配置をとりうることを理解すべきであり、この圧力勾配が燃料を脱酸素化するように膜を横切る酸素濃度差を維持する。
【0019】
酸素透過膜36は溶存酸素(およびその他の気体)をオングストローム(Å)サイズの孔隙を通して拡散させるが、より大きい燃料分子は遮断する。あるいは、もしくは孔隙とともに、透過膜36が燃料を遮断しながらこの膜を通して酸素(およびその他の気体)を溶解、拡散させる溶液拡散メカニズムを利用する。米国デラウェア州ウィルミントンのE.I.デュ・ポン・ド・ヌムール社により登録された「Teflon AF」の商標で多くの場合認識されているペルフルオロ‐2,2‐ジメチル‐1,3‐ジオキソール(PDD)の非晶質共重合体であるTeflon AFの一群、およびイタリアミラノのソルベー・ソレクシス社により登録された2,2,4‐トリフルオロ‐5‐トリフルオロメトキシ‐1,3‐ジオキソール(TDD)の共重合体であるHyflon ADの一群が、燃料脱酸素化に効果的な成果をもたらすことが実証されている。
【0020】
燃料流路38を通流する燃料は酸素透過膜36と接触する。減圧によって燃料流路38の内壁と酸素透過膜36との間に酸素分圧の圧力勾配がつくり出され、これにより燃料内に溶存する酸素を拡散させて膜36を支持する多孔質支持板42を通して酸素を移動させ、そして燃料流路38から間隔を介した酸素受入流路40を通して脱酸素装置14の外へと移動させる。一つの膜をベースとする燃料脱酸素装置のその他の様態およびこれに関連するコンポーネントについてのさらに詳しい理解については、本出願人に譲渡され、全体として本願の参照となる特許文献1および特許文献2の平面薄膜脱酸素装置を参照されたい。
【0021】
図2Bを参照すると、脱酸素装置14における一つの流路アセンブリ34を形成する一組のプレートが、例えば不織布のポリエステルなどの多孔質支持板42によって支持された酸素透過膜36に隣り合うようにサンドイッチ状に挟まれた流路板アセンブリ44を含む(図3にも示す)。多孔質基板を図に概略的に示したが、さまざまな形状を取りうることを理解されたい。一つもしくは複数のアセンブリ34に隣接するのが分離板48である。分離板48は、燃料が流路板アセンブリ34によって画定された既定の燃料経路を横切って漏出するのを防止する。流路アセンブリ34の数に関係なく、脱酸素装置14は境界板46および外側ハウジングプレート50a,50bによって密閉され、ハウジングプレート50a,50bは各々、燃料インレット26、減圧ポート29、および燃料アウトレット30を含む(図2Aおよび図2Eに示す)。
【0022】
外側ハウジングプレート50a,50bは、流路アセンブリ34がこれらの間にサンドイッチ状に挟まれるように、望ましくはボルトなどの複数の留め具を通して互いに固定される。外側ハウジングプレート50a,50bは、望ましくはこれらのプレートの間のシーリングを保つように流路アセンブリ34を与圧する相対的に硬質なコンポーネントである。図示の実施例には直線状のものとして示しているが、他の形状、寸法、もしくは軟質なハウジングを含む構成が適当かつ本発明に含まれることは当業者にとって理解されるであろう。
【0023】
各々の流路板アセンブリ44はインレット26とアウトレット30との間に燃料流路38の一部を画定する。減圧ポート29(図2A)は、流路板52,54内の減圧ポート29を通して境界板46および多孔質支持板42と連通している。減圧により各々の多孔質支持板42内部に分圧圧力勾配がつくり出され、燃料流路38から酸素透過膜36を通して溶存酸素が抽出される。その後酸素が減圧ポート29を通して排出される。
【0024】
流路アセンブリ34の特定の数量は、燃料の種類、燃料温度、およびエンジンからの要求質量流量といった、用途に固有の要求事項により決定される。さらに、異なる量の溶存酸素を含有する異なる燃料は、所望の量の溶存酸素を除去するために異なる量の脱酸素化を必要とする場合がある。
【0025】
各々の流路板アセンブリ44は、インレット26とアウトレット30との間(図2A)に一つの燃料流路38(図3)を画定する。望ましくはインレット26とアウトレット30との間に複数の平行な流路38が脱酸素装置14内の複数の流路アセンブリ34によって画定される。燃料から除去される溶存酸素量を最大限にするため、各々の燃料流路38の形態は、望ましくは燃料の酸素透過膜36に対する露出を最大化するように画定される。燃料流路38は、望ましくは燃料が酸素透過膜36と接触するように十分小さく、かつ燃料流を制限しないように十分に大きい。
【0026】
各々の流路板アセンブリ44は、第1の流路板52と、第2の流路板54と、これらの間の流路板ガスケット56(図2Dに単独で示す)と、を含んでなる。明確に示すために図示の実施例に示した流路板アセンブリ44には2つの流路板と一つのガスケットのみを示しており、任意の複数のプレートアセンブリが外側ハウジングプレート50a,50bの間に配置されうることを理解されたい。
【0027】
第1の流路板52および第2の流路板54は、望ましくは例えばポリフェニレンスルフィド(PPS)、さらに望ましくは炭素繊維が20%(重量%)まで充填されたPPSのような熱可塑性樹脂といった非金属材料で製造される。第1の流路板52および第2の流路板54は、望ましくは米国デラウェア州のE.I.デュ・ポン・ド・ヌムール社で製造されたKAPTON(登録商標)フィルムなどの非金属材料で製造される。型成形でなく機械加工された材料はもとより、燃料と適合する(反応性がない)導電性のある(静電荷の蓄積を防ぐ)その他のプラスチックが代わりに用いられうることを理解されたい。
【0028】
第1の流路板52および第2の流路板54は酸素輸送を向上させる流路インピンジメント要素55(図2C、図3)を含む。流路板52、54が組み合わせられると、流路板52,54によって画定された流路38に入り組んだ2次元の流動特性を与えるように流路インピンジメント要素55が交互に介在する(図4)。すなわち、各々の流路板52,54上の流路インピンジメント要素55が、それぞれ流路板52,54の平面より上に延びている。流路板52,54がガスケット56とともに組み合わされて流路板アセンブリ44をなすと、流路インピンジメント要素55が隣り合う流路板52,54から延びて完全な流路38を形成する(図3)。
【0029】
流路インピンジメント要素55は大量の燃料流から膜表面への酸素輸送を向上させるとともに、非金属材料であるため重量と酸素透過膜36を傷つけるおそれのある鋭い角とが最小限に抑えられる。脱酸素装置14の流路インピンジメント要素55は燃料流と複合酸素透過膜36との接触を高め、溶存酸素の質量輸送を増加させる。
【0030】
燃料流路38を通流する燃料は酸素透過膜36と接触する。減圧により燃料流路38の内壁と複合酸素透過膜36との間に酸素分圧の圧力勾配がつくり出され、これにより燃料内に溶存する酸素を拡散させて膜36を支持する多孔質支持板42を通して酸素を移動させ、そして燃料流路38から間隔を介した酸素受入流路40を通して脱酸素装置14の外へと移動させる。一つの膜をベースとする燃料脱酸素装置のその他の様態およびこれに関連するコンポーネントについてのさらに詳しい理解については、本出願人に譲渡され、全体として本願の参照となる特許文献1の膜ベースの燃料脱酸素装置、特許文献3の熱管理装置およびその方法、および特許文献2の平面薄膜脱酸素装置を参照されたい。
【0031】
第1の流路板52および第2の流路板54は、燃料の擾乱を通じて酸素の拡散率を増大させるうねを形成させる流路インピンジメント要素55(図2)を含む。
【0032】
図4Aおよび図4Bを参照すると、各々の流路板52,54は、これらの片側52a,54aに燃料流をシールする溝58と、反対側52b,54bに直立隆起部60と、を含む。溝58は燃料プレートアセンブリ44を密閉するように燃料プレートガスケット56を受ける(図4C)。ガスケット56(図2D)のほかに、接着フィルムやエポキシ液体などのその他のシーリング材料が、これに代えてもしくはこれに加えて、利用されうることを理解されたい。溝58および直立隆起部60は、望ましくは燃料プレート52,54の周りの燃料漏れ経路となりうる場所に画定される(図4D)。溝58および直立隆起部60は、望ましくは燃料プレート52,54の材料厚さが全体にわたって均等になるように正反対の位置となる。つまり、溝58は、燃料プレート52,54の平面52a,54a内において、燃料プレート52,54の平面52b,54bから直立隆起部60が延びる高さと概ね等しい深さで延びる。
【0033】
さらに各々の燃料プレート52,54は、片側52a,54aに減圧流路を密閉する溝62(図4E)と、反対側52b,54bに燃料プレート減圧ガスケット66(図4C)を受ける直立隆起部64と、を含み、溝58と直立隆起部60とによる燃料プレートアセンブリ44と同じように燃料プレートアセンブリ44を密閉する。溝62および直立隆起部64は、望ましくは燃料プレート52,54の周りの燃料漏れ経路となりうる場所に画定される(図4E)。実施例では燃料プレート52,54のみを示したが、望ましくは各々のプレートが、シーリングを保証し、隣接するプレートの組立て時にアラインメントや係合を提供する溝‐ガスケット‐直立隆起部材接触面を含むことを理解されたい。複数の燃料プレートアセンブリ44(図3)間に連絡を行う減圧ポート29と、燃料インレット26および燃料アウトレット30とが、各々、脱酸素装置14の短い側面(図4G)と、長い側面(図4H)と、に配置される。
【0034】
レーザカットは、高精度シーリングガスケットや燃料プレート52,54を製造する一つの望ましい技術である。KAPTON(登録商標)もしくはその他の同様の非金属材料が、望ましくはCO2レーザなどのコンピュータ制御の高精度レーザおよび所望のシーリングガスケットや燃料プレート構成のCAD設計ファイルによりカットされる。レーザは、シーリングガスケットや燃料プレート燃料流路の形状にカットするために要求されるパターンに従うようにプログラムされている。レーザカッティングは、段階的に、つまり後に組み合わせられる材料の層ごとに行われ、あるいは、完全な燃料プレートを提供するように一回の作業で行われ、例えば燃料プレート52,54が単一のプレートとして形成される。レーザカッティングは高精度シーリングガスケットや燃料プレートの大量生産において費用効果の高い製造技術を提供する。特にゴムタイプのシーリング材料で作られたレーザカット高精度シーリングガスケットは、漏出しないアセンブリを提供する。高精度シーリングガスケットや隣接する燃料プレートを製造するためにレーザカット技術を利用する利点は、特に積層燃料安定化装置アセンブリに関連性がある。
【0035】
一般的に理解されているようにウォータジェットカッティングは本発明の高精度燃料安定化装置のシーリングや燃料プレートを製造するのに効果的なもう一つの技術である。ウォータジェットカッティングは絶対的な繰り返し精度をもち、材料特性もしくは温度に影響を及ぼさない。
【0036】
一般的に理解されているように放電加工(EDM)は本発明の高精度燃料安定化装置のシーリングや燃料プレートを製造するのに効果的なさらに別の技術である。放電加工製造は、製造数が少ないもしくは高い精度が要求される場合にかなり経済的で非常に好ましい製造工程である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の燃料脱酸素装置を使用するエネルギー変換装置(ECD)およびこれに関連する燃料装置の一般的な概略図。
【図2A】本発明の燃料脱酸素装置の斜視図。
【図2B】本発明の燃料脱酸素装置の分解組立図。
【図2C】脱酸素装置の拡大部分概略図。
【図2D】燃料脱酸素装置のガスケットの平面図。
【図2E】燃料脱酸素装置の拡大断面図。
【図3】流路の拡大概略断面図。
【図4A】燃料脱酸素装置の燃料プレートの拡大上面図。
【図4B】図4Aの燃料プレートの拡大下面図。
【図4C】第1の燃料プレートと第2の燃料プレートとの間にガスケットを有する溝と直立部との接触部分の拡大斜視図。
【図4D】燃料ガスケットの位置を示す燃料プレートの拡大平面図。
【図4E】減圧ガスケットの位置を示す燃料プレートの拡大平面図。
【図4F】燃料ポートおよび減圧ポートの位置を示した複数の燃料プレートの拡大斜視図。
【図4G】プレート内減圧ポートを示した燃料脱酸素装置の短軸に沿った拡大断面図。
【図4H】プレート内燃料連絡を示した燃料脱酸素装置の長軸に沿った拡大断面図。
【符号の説明】
【0038】
34…燃料流路アセンブリ
36…酸素透過膜
38…燃料流路
40…酸素受入流路
42…多孔質支持板
44…流路板アセンブリ
52…第1の流路板(燃料プレート)
54…第2の流路板(燃料プレート)
55…流路インピンジメント要素
56…ガスケット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料流路の第1の部分を画定する第1の非金属燃料プレートと、
前記燃料流路の第2の部分を画定する第2の非金属燃料プレートと、
前記第1の非金属燃料プレートと前記第2の非金属燃料プレートとの間に取付けられたガスケットと、
を備えてなる脱酸素装置の燃料プレートアセンブリ。
【請求項2】
前記第1の非金属燃料プレートが、前記燃料流路の前記第1の部分内に少なくとも部分的に形成された複数の層流インピンジメント要素を画定することを特徴とする請求項1に記載の燃料プレートアセンブリ。
【請求項3】
前記複数の層流インピンジメント要素が、前記第1の非金属燃料プレートによって画定される表面よりも少なくとも部分的に上に延びることを特徴とする請求項2に記載の燃料プレートアセンブリ。
【請求項4】
前記第2の非金属燃料プレートが第2の複数の層流インピンジメント要素を画定するとともに、この第2の複数の層流インピンジメント要素が、前記燃料流路の前記第1の部分内の前記複数の層流インピンジメント要素に介在する前記第2の複数の層流インピンジメント要素中に少なくとも部分的に形成されることを特徴とする請求項2に記載の燃料プレートアセンブリ。
【請求項5】
前記第1の非金属燃料プレートおよび前記第2の非金属燃料プレートが、KAPTON(登録商標)で製造されることを特徴とする請求項1に記載の燃料プレートアセンブリ。
【請求項6】
前記第1の非金属燃料プレートと前記第2の非金属燃料プレートとが同じ形状のものであることを特徴とする請求項1に記載の燃料プレートアセンブリ。
【請求項7】
前記第1の非金属燃料プレートおよび前記第2の非金属燃料プレートが、片面に溝をもつとともに反対側の面に直立隆起部をもつことを特徴とする請求項1に記載の燃料プレートアセンブリ。
【請求項8】
前記第1の非金属燃料プレートが、前記ガスケットを受ける溝を含むとともに、前記第2の非金属燃料プレートが、前記溝と嵌合して前記ガスケットと接触する直立隆起部を含むことを特徴とする請求項1に記載の燃料プレートアセンブリ。
【請求項9】
燃料流路の第1の部分内に形成された第1の複数の層流インピンジメント要素と、溝と、を画定する第1の非金属燃料プレートと、
前記燃料流路の第2の部分内に形成されるとともに前記第1の複数の層流インピンジメント要素の間に介在する第2の複数の層流インピンジメント要素と、直立突起部と、を画定する第2の非金属燃料プレートと、
前記溝内部に取付けられたガスケットであって、前記溝と嵌合可能な前記直立隆起部と接触して前記燃料流路の前記第1の部分と前記燃料流路の前記第2の部分とを密閉するガスケットと、
酸素受入流路と、
前記燃料流路および前記酸素受入流路と連通する酸素透過膜と、
を備えてなる脱酸素装置。
【請求項10】
前記第1の非金属燃料プレートおよび前記第2の非金属燃料プレートが、KAPTON(登録商標)で製造されることを特徴とする請求項9に記載の脱酸素装置。
【請求項11】
前記第1の複数の層流インピンジメント要素および前記第2の複数の層流インピンジメント要素がレーザカットされることを特徴とする請求項9に記載の脱酸素装置。
【請求項12】
前記第1の複数の層流インピンジメント要素および前記第2の複数の層流インピンジメント要素がウォータジェットで切断されることを特徴とする請求項9に記載の脱酸素装置。
【請求項13】
前記第1の複数の層流インピンジメント要素および前記第2の複数の層流インピンジメント要素が放電加工により形成されることを特徴とする請求項9に記載の脱酸素装置。
【請求項14】
前記第1の非金属燃料プレートと、前記第2の非金属燃料プレートと、前記ガスケットと、前記酸素透過膜と、を与圧する第1の外側ハウジングプレートおよび第2の外側ハウジングプレートをさらに備えることを特徴とする請求項9に記載の脱酸素装置。
【請求項1】
燃料流路の第1の部分を画定する第1の非金属燃料プレートと、
前記燃料流路の第2の部分を画定する第2の非金属燃料プレートと、
前記第1の非金属燃料プレートと前記第2の非金属燃料プレートとの間に取付けられたガスケットと、
を備えてなる脱酸素装置の燃料プレートアセンブリ。
【請求項2】
前記第1の非金属燃料プレートが、前記燃料流路の前記第1の部分内に少なくとも部分的に形成された複数の層流インピンジメント要素を画定することを特徴とする請求項1に記載の燃料プレートアセンブリ。
【請求項3】
前記複数の層流インピンジメント要素が、前記第1の非金属燃料プレートによって画定される表面よりも少なくとも部分的に上に延びることを特徴とする請求項2に記載の燃料プレートアセンブリ。
【請求項4】
前記第2の非金属燃料プレートが第2の複数の層流インピンジメント要素を画定するとともに、この第2の複数の層流インピンジメント要素が、前記燃料流路の前記第1の部分内の前記複数の層流インピンジメント要素に介在する前記第2の複数の層流インピンジメント要素中に少なくとも部分的に形成されることを特徴とする請求項2に記載の燃料プレートアセンブリ。
【請求項5】
前記第1の非金属燃料プレートおよび前記第2の非金属燃料プレートが、KAPTON(登録商標)で製造されることを特徴とする請求項1に記載の燃料プレートアセンブリ。
【請求項6】
前記第1の非金属燃料プレートと前記第2の非金属燃料プレートとが同じ形状のものであることを特徴とする請求項1に記載の燃料プレートアセンブリ。
【請求項7】
前記第1の非金属燃料プレートおよび前記第2の非金属燃料プレートが、片面に溝をもつとともに反対側の面に直立隆起部をもつことを特徴とする請求項1に記載の燃料プレートアセンブリ。
【請求項8】
前記第1の非金属燃料プレートが、前記ガスケットを受ける溝を含むとともに、前記第2の非金属燃料プレートが、前記溝と嵌合して前記ガスケットと接触する直立隆起部を含むことを特徴とする請求項1に記載の燃料プレートアセンブリ。
【請求項9】
燃料流路の第1の部分内に形成された第1の複数の層流インピンジメント要素と、溝と、を画定する第1の非金属燃料プレートと、
前記燃料流路の第2の部分内に形成されるとともに前記第1の複数の層流インピンジメント要素の間に介在する第2の複数の層流インピンジメント要素と、直立突起部と、を画定する第2の非金属燃料プレートと、
前記溝内部に取付けられたガスケットであって、前記溝と嵌合可能な前記直立隆起部と接触して前記燃料流路の前記第1の部分と前記燃料流路の前記第2の部分とを密閉するガスケットと、
酸素受入流路と、
前記燃料流路および前記酸素受入流路と連通する酸素透過膜と、
を備えてなる脱酸素装置。
【請求項10】
前記第1の非金属燃料プレートおよび前記第2の非金属燃料プレートが、KAPTON(登録商標)で製造されることを特徴とする請求項9に記載の脱酸素装置。
【請求項11】
前記第1の複数の層流インピンジメント要素および前記第2の複数の層流インピンジメント要素がレーザカットされることを特徴とする請求項9に記載の脱酸素装置。
【請求項12】
前記第1の複数の層流インピンジメント要素および前記第2の複数の層流インピンジメント要素がウォータジェットで切断されることを特徴とする請求項9に記載の脱酸素装置。
【請求項13】
前記第1の複数の層流インピンジメント要素および前記第2の複数の層流インピンジメント要素が放電加工により形成されることを特徴とする請求項9に記載の脱酸素装置。
【請求項14】
前記第1の非金属燃料プレートと、前記第2の非金属燃料プレートと、前記ガスケットと、前記酸素透過膜と、を与圧する第1の外側ハウジングプレートおよび第2の外側ハウジングプレートをさらに備えることを特徴とする請求項9に記載の脱酸素装置。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図4F】
【図4G】
【図4H】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図4F】
【図4G】
【図4H】
【公開番号】特開2007−192533(P2007−192533A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−3151(P2007−3151)
【出願日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(590005449)ユナイテッド テクノロジーズ コーポレイション (581)
【氏名又は名称原語表記】UNITED TECHNOLOGIES CORPORATION
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(590005449)ユナイテッド テクノロジーズ コーポレイション (581)
【氏名又は名称原語表記】UNITED TECHNOLOGIES CORPORATION
【Fターム(参考)】
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