説明

燃料ポンプ

【課題】 プランジャの往復動が摩擦なく円滑に行うことができ、焼き付きなどを生じさ
せない。
【解決手段】プランジャ4が、基端面に開口する有頂の円筒状穴51を有するプランジャ本体5と、基端面61をカム1に正接させてプランジャ本体5の円筒状穴51に遊嵌挿入されたロッド6とからなり、カム1により往復動するロッド6の先端を円筒状穴51の頂面52に当接させてプランジャ本体5をシリンダ3に沿って往復摺動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエンジンの燃料供給システムに配置される燃料ポンプに関し、殊に、比較的粘度の低い燃料を加圧して燃料噴射弁に送りエンジンに供給する燃料ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
ガソリンなどの液体燃料を燃料ポンプで加圧して燃料噴射弁から噴射する燃料供給システムは特開平5−231179号公報に提示されているように周知であり、例えば特開2003−120443号公報に記載されているように、LPGやDMEなどの液化ガス燃料を高圧燃料ポンプで加圧して液体のまま燃料噴射弁からエンジンの吸気管路に噴射する燃料供給システムも広く実施されている。
【0003】
このような燃料供給装置に用いる加圧性能に優れた燃料ポンプは、一般に図3に示すような機構を採用している。即ち、エンジンのクランクシャフト等に設けたカム1の回転により、加圧部である燃料室2のシリンダ3に挿入されたプランジャ4が直線往復動作を行うプランジャ方式であり、プランジャ4の往復動によりチェック弁5a,5bの間に形成された燃料室2の容積を拡大することで燃料タンク側から燃料を導入し、縮小することで高圧化された燃料がチェック弁5bを通ってエンジン側に送出されるようになっている。
【0004】
ところが、斯かるプランジャ方式の燃料ポンプにより燃料をエンジンに供給する場合、エンジン駆動用の燃料は一般に作動油などに比べて粘度が低い流体であることから油膜が形成されにくくプランジャ4とシリンダ3との摺動部で潤滑性を発揮しにくく、特に、プランジャ4の基端面には正接するカム1の回転力が作用することから図4(a)に示すように、プランジャ4の往復動方向の力Fに対してプランジャ4の軸線とカム1の正接面とのずれによりプランジャ4とシリンダ3との間に横方向の力F2が作用することになり、前記力F2によりプランジャ4とシリンダ3との間に摩擦力が生じると図4(b)に示すように更に横方向の力F3が発生するようになる。
【0005】
そのため、作動効率が低下するとともに焼き付きや摩耗により装置の動作寿命を短縮してしまう、という問題があり、特に、粘度の低いLPGやDMEなどの低粘度の燃料では重要な問題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−231179号公報
【特許文献2】特開2003−120443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような問題を解決しようとするものであり、燃料通路の吸込側および吐出側にそれぞれ設けたチェック弁間に燃料を導入する燃料室を形成するとともに前記燃料室に連通して配置されるシリンダにプランジャを嵌挿し、前記プランジャの基端面に当接させたカムの駆動により前記プランジャを往復摺動させて前記燃料室の燃料に圧力変動を加えることにより前記燃料室の燃料を加圧しエンジンに送出する燃料ポンプにおいて、プランジャの往復動が摩擦なく円滑で焼き付きなどを生じない燃料ポンプを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明は、燃料通路の吸込側および吐出側にそれぞれ設けたチェック弁間に燃料を導入する燃料室を形成するとともに前記燃料室に連通して配置されるシリンダにプランジャを嵌挿し、前記プランジャの基端面に当接させたカムの駆動により前記プランジャを往復摺動させて前記燃料室の燃料に圧力変動を加えることにより前記燃料室の燃料を加圧しエンジンに送出する燃料ポンプにおいて、前記プランジャが基端面に開口する有頂の円筒状穴を有するプランジャ本体と、基端面を前記カムに正接させて前記プランジャ本体の円筒状穴に遊嵌挿入されたロッドとからなり、前記カムにより往復動するロッドの先端を前記円筒状穴の頂部に当接させて前記プランジャ本体を前記シリンダに沿って往復摺動させることを特徴とする。
【0009】
このようにプランジャーに直接、回転カムの駆動力を付与することなく、プランジャ本体の円筒状穴に嵌挿されたロッドにより回転カムの駆動力を往復動として付与することから、プランジャ本体がシリンダに対する摩擦力が働くことなく円滑な往復摺動が可能となる。
【0010】
また、本発明において、前記カムを収容したカム室と前記ロッドを嵌挿した前記プランジャ本体の円筒状穴とが連通密閉されて内部に潤滑油が充填されている場合には、ロッドとプランジャ本体との摩擦の軽減が図れ、シール部材が前記シリンダの基端位置に具えられている場合、前記シリンダとプランジャ本体との間に漏洩する燃料室からの燃料の流出を防止することができる。
【0011】
さらに、前記プランジャ本体に形成されている前記円筒状穴の頂面が山形であるとロッドの先端が前記頂面の中心に位置させて摩擦の軽減を図ることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、燃料通路の吸込側および吐出側にそれぞれ設けたチェック弁間に燃料を導入する燃料室を形成するとともに前記燃料室に連通して配置されるシリンダにプランジャを嵌挿し、前記プランジャの基端面に当接させたカムの駆動により前記プランジャを往復摺動させて前記燃料室の燃料に圧力変動を加えることにより前記燃料室の燃料を加圧しエンジンに送出する燃料ポンプにおいて、プランジャの往復動が摩擦なく円滑に行うことができ、焼き付きなどを生じない燃料ポンプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明における実施の形態の燃料ポンプの要部を示す部分縦断面図である。
【図2】図1に示した実施の形態の作用・効果を示す概略説明図である。
【図3】従来例における燃料ポンプの要部を示す部分縦断面図である。
【図4】図3に示した従来例における作用・効果を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を説明する。
【0015】
図1は本発明の燃料ポンプの部分縦断面図であり、全体の構成は前記図3に示した従来例と同様に、エンジンのクランクシャフト11等に設けたカム1の回転により、加圧部である燃料室2のシリンダ3に挿入されたプランジャ4が直線往復動作を行うプランジャ方式であり、プランジャ4の往復動によりチェック弁5a,5bの間に形成された燃料室2の容積を拡大することで燃料タンク側から燃料を導入し、縮小することで高圧化された燃料がチェック弁5bを通ってエンジン側に送出されるようになっている。
【0016】
そして、前記プランジャ4が基端面に開口した有頂の円筒状穴51を有するプランジャ本体5と、基端面61をカム1に正接させてプランジャ本体5の円筒状穴51に遊嵌挿入
されたロッド6とから構成される。
【0017】
プランジャ本体5は前記燃料室2に連通して配置されるシリンダ3に軸線方向往復動可能に配置され、先端において燃焼室2内に配置された弾発コイルばね8により基端側に押圧されており、円筒状穴51に挿入したロッド6の基端面61をカム1に正接させるとともにその先端62をプランジャ本体5における円筒状穴51の頂面52に当接させてプランジャ4が形成されている。
【0018】
また、本実施の形態では、プランジャ本体5に形成されている円筒状穴51の頂面52が山形であるとともに前記ロッド6の先端が半球状に形成されている。
【0019】
さらに、カム1を収容したカム室12とロッド6を嵌挿したプランジャ本体5の円筒状穴51とが連通密閉されて内部に潤滑油が充填されており、シリンダ3とプランジャ本体5との間に漏洩する燃料室2からの燃料の流出を防止するためのシール部材7がシリンダ3の基端位置に具えられている。
【0020】
このように構成される本実施の形態は、エンジンのクランクシャフト11に設けたカム1の回転により、プランジャ4を直線往復動させてシリンダ3および燃料室2により形成される加圧部の容積を増減させ高圧化された燃料をチェック弁5bを通してエンジン側に送出するものであるが、本実施の形態では前記図3および図4に示したようにプランジャ4を直接カム1により往復動させるものでなく、図2に示すように、プランジャ本体5に形成されている円筒状穴51に遊嵌挿入されたロッド6を介してプランジャ本体5を往復動させるものである。
【0021】
従って、カム1により加えられる回転方向の力が図3および図4に示す従来の例のようにプランジャ4の基端面に直接加えられることなく、図2に示すようにプランジャ本体5に遊嵌挿入されたロッド6に加えられてプランジャ本体5に形成されている円筒状穴51との間に形成される隙間により吸収される。
【0022】
そのため、プランジャ本体5にはシリンダ3方向の摩擦力が生じることなく直線往復動方向の力だけが作用して円滑な往復摺動が可能となる。
【0023】
特に、本実施の形態では、プランジャ本体5に形成されている円筒状穴51の頂面52が山形であるとともに前記ロッド6の先端が半球状に形成されているのでロッド6の先端がプランジャ本体5における円筒状穴51の頂面52の中心に向けて配置されているのでカム1からの直線往復動方向の力Fが有効にプランジャ本体5に伝達することが可能であり、プランジャ本体5に横方向、即ち、シリンダ3方向の力が作用することを確実に防止することができる。
【0024】
さらに、本実施の形態では、シリンダ3とプランジャ4との間に漏洩する燃料室2からの燃料の流出を防止するためのシール部材7がシリンダ3の基端位置に具えられていることから、カム1を収容したカム室11とロッド6を嵌挿したプランジャ本体5の円筒状穴51とが連通密閉されて内部に潤滑油を充填することによりロッド6とプランジャ本体5との摩擦の軽減が図れ、シリンダ3とプランジャ本体5との間に漏洩する燃料室2からの燃料の流出を防止することができる。
【0025】
尚、本実施の形態は、プランジャ4により直接燃料室2の容積を変化させる形式の燃料ポンプについて示したが、例えばダイヤフラムを用いた形式のものなど他の形式のプランジャを用いた燃料ポンプに適用できるものである。
【符号の説明】
【0026】
1 カム、2 燃焼室、3 シリンダ、4 プランジャ、5 プランジャ本体、6 ロ
ッド、7 シール部材、51 円筒状穴、52 頂面、61 基端面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料通路の吸込側および吐出側にそれぞれ設けたチェック弁間に燃料を導入する燃料室を形成するとともに前記燃料室に連通して配置されるシリンダにプランジャを嵌挿し、前記プランジャの基端面に当接させたカムの駆動により前記プランジャを往復摺動させて前記燃料室の燃料に圧力変動を加えることにより前記燃料室の燃料を加圧しエンジンに送出する燃料ポンプにおいて、前記プランジャが、基端面に開口する有頂の円筒状穴を有するプランジャ本体と、基端面を前記カムに正接させて前記プランジャ本体の円筒状穴に遊嵌挿入されたロッドとからなり、前記カムにより往復動するロッドの先端を前記円筒状穴の頂部に当接させて前記プランジャ本体を前記シリンダに沿って往復摺動させることを特徴とする燃料ポンプ。
【請求項2】
前記カムを収容したカム室と前記ロッドを嵌挿した前記プランジャ本体の円筒状穴とが連通密閉されて内部に潤滑油が充填されていることを特徴とする請求項1記載の燃料ポンプ。
【請求項3】
前記シリンダとプランジャ本体との間に漏洩する燃料室からの燃料の流出を防止するためのシール部材が前記シリンダの基端位置に具えられている請求項1または2記載の燃料ポンプ。
【請求項4】
前記プランジャ本体に形成されている前記円筒状穴の頂面が山形であることを特徴とする請求項1,2または3記載の燃料ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−241616(P2012−241616A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112397(P2011−112397)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(000153122)株式会社ニッキ (296)
【Fターム(参考)】