説明

燃料供給システムおよび燃料供給方法

【課題】ACアダプタを使用できず、かつ二次電池への充電が行われていないような状況において、外部電池の電池電力などの別の電力がない場合にも、燃料電池を起動させる。
【解決手段】本発明の燃料システムは、燃料電池10、二次電池11、燃料カートリッジ12、第1電動ポンプ13、第2電動ポンプ14、サブタンク15、残量センサ16、手動ポンプ17、ポンプ動作機構18、および制御部19から構成されている。二次電池11に電力が充電されていれば、制御部19が二次電池11の充電電力により第1電動ポンプ13を動作させて、燃料カートリッジ12に貯留された燃料を第1電動ポンプ13により燃料電池10内のMEA101に供給する。一方、二次電池11に電力が充電されていなければ、ユーザがポンプ動作機構18を介して手動ポンプ17を手動で動作させて、サブタンク15に貯留された燃料を手動ポンプ17によりMEA101に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池に対して燃料を供給する燃料供給システムおよび燃料供給方法に関し、特に、電子機器へ電力を供給する燃料電池に対して燃料を供給する燃料供給システムおよび燃料供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ノート型のパーソナルコンピュータ、PDA(Personal Digital Assistant)、携帯電話機などの携帯型の電子機器の電源として、高出力で携帯性に優れた小型の燃料電池が新たな電源として期待されている。燃料電池の代表的なものとしては、水素を燃料とする燃料電池(PEFC:Poly-mar Electrolyte Fuel Cell)や、メタノール溶液を燃料とする燃料電池(DMFC:Direct Methanol Fuel Cell)などが挙げられる。
【0003】
燃料電池が設けられているシステムにおいては、燃料電池へ燃料を供給する電動ポンプなどが装備されており、その電源として主に二次電池が設けられる場合が多い。なお、二次電池は、燃料電池による電子機器への電力供給だけでは不足が生じるときに電力供給をアシストすることも行っている。また、二次電池は、燃料電池による電子機器への電力供給に余剰があるときに、その余剰電力により充電が行われる。
【0004】
そのため、電子機器に対し電源コンセントからACアダプタを介した電力供給ができない状況において、二次電池への充電も行われていない場合は、電動ポンプにより燃料を供給することができないことから燃料電池を起動させることができず、その結果として電子機器を起動させることができない。
【0005】
そこで、最近は、ACアダプタを使用できず、かつ二次電池への充電が行われていないような状況でも、燃料電池を起動させることができる様々な技術が提案されている。例えば、特許文献1には、上記のよう状況において、電子機器に外部電池を接続し、外部電池の電池電力を用いて燃料電池を起動させる電子機器が開示されている。
【特許文献1】特開2004−95189号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1に開示された電子機器においては、ACアダプタを使用できず、かつ二次電池への充電が行われていないような状況になったときでも、外部電池の電池電力という別の電力を用いることで燃料電池を起動させることが可能となる。
【0007】
しかしながら、上記のような状況になったときに、外部電池を持ち合わせていない場合など、別の電力が全くない場合もあり、そのような場合には燃料電池を起動させることができない。
【0008】
そこで、本発明の目的は、ACアダプタを使用できず、かつ二次電池への充電が行われていないような状況において、外部電池の電池電力などの別の電力がない場合にも、燃料電池を起動させることができる燃料供給システム、燃料電池への燃料供給方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明は、
燃料電池に対して燃料を供給する燃料供給システムにおいて、
前記燃料電池に燃料を供給するためのポンプと、
前記ポンプを手動で動作させるためのポンプ動作機構とを有することを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、ACアダプタを使用できず、かつ補助電源への充電が行われていない場合には、ユーザは、ポンプ動作機構を介してポンプを手動で動作させれば、このポンプにより燃料電池に燃料を供給し、燃料電池を起動させることができる。
【0011】
また、燃料を所定量貯留するサブタンクをさらに有し、
前記ポンプは、前記サブタンクに貯留された燃料を前記燃料電池に供給することとしても良い。
【0012】
この構成によれば、ポンプにより手動で燃料電池に電力を供給する場合、専用のサブタンクから燃料を供給することができる。
【0013】
また、補助電源と、
燃料を貯留する燃料タンクと、
前記燃料タンクに貯留された燃料を前記燃料電池に供給するための第1電動ポンプと、
前記補助電源に電力が充電されている場合、前記補助電源の充電電力により前記第1電動ポンプを動作させて、該第1電動ポンプにより前記燃料電池に燃料を供給させる制御を行う制御部とをさらに有することとしても良い。
【0014】
この構成によれば、補助電源に電力が充電されている場合には、補助電源の充電電力を用いて第1電動ポンプにより燃料電池に燃料を供給する通常動作を行うことができる。
【0015】
また、前記サブタンクに貯留された燃料の残量を検知する残量センサをさらに有し、
前記制御部は、前記サブタンクに所定量の燃料が貯留されていないと前記残量センサにて検知された場合、前記サブタンクに燃料を供給させる制御を行うこととしても良い。
【0016】
また、前記燃料タンクに貯留された燃料を前記サブタンクに供給するための第2電動ポンプをさらに有し、
前記制御部は、前記補助電源に電力が充電されているときに前記サブタンクに所定量の燃料が貯留されていないと前記残量センサにて検知された場合、前記補助電源の充電電力により前記第2電動ポンプを動作させて、該第2電動ポンプにより前記サブタンクに燃料を供給させる制御を行うこととしても良い。
【0017】
この構成によれば、サブタンクの燃料の貯留量を、常時、所定量にすることができる。
【0018】
また、前記サブタンクと前記燃料電池との間の燃料の供給路に設けられ、前記サブタンクへの燃料の逆流を防止する逆流防止弁をさらに有することとしても良い。
【0019】
この構成によれば、ポンプにより手動で燃料電池へ供給された燃料がサブタンクへ逆流することを防止することができる。
【0020】
また、前記ポンプは電動でも動作可能であり、
前記燃料供給システムは、
補助電源と、
前記補助電源に電力が充電されている場合、前記補助電源の充電電力により前記ポンプを電動で動作させて、該ポンプにより前記燃料タンクに貯留された燃料を前記燃料電池に供給させる制御を行う制御部とをさらに有することとしても良い。
【0021】
この構成によれば、補助電源に電力が充電されている場合には、補助電源の充電電力を用いてポンプにより電動で燃料電池に燃料を供給する通常動作を行うことができ、また、電動ポンプを別に設ける必要もない。
【0022】
また、前記燃料電池により電子機器へ電力を供給することとしても良い。この場合、電子機器の形態に応じてポンプ動作機構を次のような構成としても良い。
【0023】
すなわち、前記電子機器は、2つの筐体がヒンジ部を介して結合された構成であり、
前記ポンプ動作機構は、
前記ヒンジ部と同じ回転軸を具備し、該ヒンジ部と一体に回転する第1ギアと、
前記第1ギアの回転に応じて回転する第2ギアと、
前記ポンプと当接し、該ポンプを動作させるために設けられたシリンダと、
前記シリンダと連結ピンの挿抜により連結可能に構成され、前記第2ギアの回転方向に応じて前記手動ポンプの動作方向に往復運動を行うアームとを有することとしても良い。
【0024】
この構成によれば、ACアダプタを使用できず、かつ補助電源への充電が行われていない場合には、ユーザは、2つの筐体を開閉させてポンプを手動で動作させれば、ポンプにより燃料電池に燃料を供給し、燃料電池を起動させることができる。
【0025】
また、連結ピンを挿入してシリンダとアームとを連結させない限りポンプは動作しないため、通常時に、ポンプを誤って動作させることもない。
【0026】
また、前記電子機器は、電源ボタンを有する構成であり、
前記ポンプ動作機構は、
前記電源ボタンにより押下可能に構成され、該電源ボタンにより押下されると前記電子機器の電源をオンオフする電源スイッチが実装された第1基板と、
前記第1基板を前記電源ボタンの押下方向と垂直な方向にスライドさせるスライドスイッチと、
前記第1基板をスライドさせた状態で前記電源ボタンにより押下可能に構成され、該電源ボタンにより押下されると押下された方向に移動可能な第2基板と、
一端が前記第2基板と結合された第1アームと、
前記第1アームの他端と結合され、前記第2基板の移動に応じて回転するギアと、
前記第2基板と前記ギアとの間に配置されたバネと、
前記ポンプと当接し、該ポンプを動作させるために設けられたシリンダと、
前記シリンダと連結ピンの挿抜により連結可能に構成され、前記ギアの回転方向に応じて前記ポンプの動作方向に往復運動を行う第2アームとを有することとしても良い。
【0027】
この構成によれば、ACアダプタを使用できず、かつ補助電源への充電が行われていない場合には、ユーザは、電源ボタンを押下してポンプを手動で動作させれば、ポンプにより燃料電池に燃料を供給し、燃料電池を起動させることができる。
【0028】
また、連結ピンを挿入してシリンダと第2アームとを連結させ、かつスライドスイッチにより第1基板をスライドさせない限りポンプは動作しないため、通常時に、ポンプを誤って動作させることもない。
【発明の効果】
【0029】
以上説明したように本発明によれば、燃料電池に燃料を供給するためのポンプと、ポンプを手動で動作させるためのポンプ動作機構とを設けた構成としたため、ACアダプタを使用できず、かつ補助電源への充電が行われていないような状況で、別の電力がない場合にも、ユーザは、ポンプ動作機構を介してポンプを手動で動作させれば、ポンプにより燃料電池に燃料を供給し、燃料電池を起動させることができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態の燃料供給システムの構成を示すブロック図である。
【0031】
図1を参照すると、本実施形態の燃料供給システムは、燃料電池10、二次電池11、燃料カートリッジ12、第1電動ポンプ13、第2電動ポンプ14、サブタンク15、残量センサ16、手動ポンプ17、ポンプ動作機構18、および制御部19から構成されている。この燃料供給システムは、燃料電池10により電力供給を受ける、携帯可能なノート型のパーソナルコンピュータ、PDA、携帯電話機などの電子機器に内蔵されるかまたは外付けされる。
【0032】
燃料電池10は、燃料が供給されると、供給された燃料を用いて電力を発生するMEA(Membrane Electrode Assembly)101を備え、MEA101で発生した電力を電子機器に供給するものであり、水素を燃料とする燃料電池(PEFC)や、メタノール溶液を燃料とする燃料電池(DMFC)などである。また、燃料電池10は、電子機器への電力供給に余剰があるときは、その余剰電力を二次電池11に供給する。
【0033】
MEA101は、電解質膜の両側をアノード(燃料極)とカソード(空気極)とで挟んだ構成となっており、アノード側から燃料が供給され、カソード側から空気(酸素)が供給される。例えば、燃料電池10がDMFCであれば、アノード側では、メタノールと水分子とが反応してCO2とH+が生成され、カソード側では、アノードから移動してきたH+と酸素とが反応して水が生成される。このとき、アノード側からカソード側に電流が流れることで電気エネルギー(電力)が発生する。
【0034】
二次電池11は、第1電動ポンプ13、第2電動ポンプ14、残量センサ16、および制御部19の電源となるもので、リチウムイオン二次電池(LIB)などである。ただし、二次電池11は、燃料電池10による電子機器への電力供給だけでは不足が生じるときに電力供給をアシストする補助電源となる。また、二次電池11は、燃料電池10による電子機器への電力供給に余剰があるときに、その余剰電力により充電される。
【0035】
燃料カートリッジ12は、燃料を貯留する燃料タンクである。
【0036】
第1電動ポンプ13は、二次電池11の充電電力により電動で動作する電動ポンプであり、制御部19による制御の元で、燃料カートリッジ12に貯留された燃料を燃料電池10内のMEA101に供給する。
【0037】
第2電動ポンプ14は、二次電池11の充電電力により電動で動作する電動ポンプであり、制御部19による制御の元で、燃料カートリッジ12に貯留された燃料をサブタンク15に供給する。
【0038】
サブタンク15は、第2電動ポンプ14により供給された燃料を貯留するタンクである。
【0039】
残量センサ16は、サブタンク15に貯留された燃料の残量を検知するセンサである。
【0040】
手動ポンプ17は、ポンプ動作機構18を介して手動で動作する手動ポンプであり、サブタンク15に貯留された燃料を燃料電池10内のMEA101に供給する。
【0041】
ポンプ動作機構18は、手動ポンプ17を手動で動作させるための機構である。
【0042】
本実施形態では、二次電池11に電力が充電されていれば、二次電池11の充電電力により第1電動ポンプ13および制御部19が起動され、制御部19が第1電動ポンプ13を動作させて、燃料カートリッジ12に貯留された燃料を第1電動ポンプ13により燃料電池10内のMEA101に供給する。
【0043】
一方、二次電池11に電力が充電されていなければ、第1電動ポンプ13および制御部19が起動せず、第1電動ポンプ13によりMEA101に燃料を供給することはできない。そのため、ユーザがポンプ動作機構18を介して手動ポンプ17を手動で動作させて、サブタンク15に貯留された燃料を手動ポンプ17によりMEA101に供給する。
【0044】
よって、ユーザは、ACアダプタを使用できない状況において、二次電池11に電力が充電されていない場合であっても、ポンプ動作機構18を介して手動ポンプ17を手動で動作させれば、手動ポンプ17によりMEA101に燃料を供給し、燃料電池10を起動させることができる。
【0045】
なお、手動ポンプ17からの燃料により燃料電池10が起動されると、MEA101にて発生した電力の余剰分が二次電池11に供給され、以降は、二次電池11の充電電力により起動された第1電動ポンプ13によりMEA101に燃料が供給される。従って、サブタンク15には、MEA101にて二次電池11へ供給できる電力を発生させる程度の所定量の燃料が貯留されていれば良く、そのために、制御部19は、所定のタイミングで図2に示すような制御を行う。
【0046】
図2を参照すると、制御部19は、サブタンク15に所定量の燃料が貯留されていないと残量センサ16にて検知されると(ステップ201のNo)、第2電動ポンプ14を動作させ(ステップ202)、所定量の燃料が貯留されたと検知された時点で(ステップ203のYes)、第2電動ポンプ14を停止させる(ステップ204)。
【0047】
制御部19が上記制御を行うタイミングは、例えば、二次電池11により起動されたタイミング、起動後の一定期間ごとのタイミングなどである。なお、二次電池11により起動されたタイミングで上記制御を行う場合、ステップ204で第2電動ポンプ14を停止させた後に第1電動ポンプ13を動作させるのが好ましい。また、起動後の一定期間ごとのタイミングで上記制御を行う場合、第2電動ポンプ14の動作中は、第1電動ポンプ13の動作を継続させても良いし、停止させても良い。
【0048】
以下、ポンプ動作機構18の具体例について説明する。
(ポンプ動作機構18の具体例1)
図3は、ポンプ動作機構18の具体例1を側面から見た図であり、図4は、ポンプ動作機構18の具体例1を上面から見た図である。
【0049】
なお、図3および図4は、本具体例のポンプ動作機構18を、LCDパネル20Aとコンピュータ本体部20Bとがヒンジ部(不図示)を介して結合されたノート型のパーソナルコンピュータに適用した場合の例を示している。この例では、燃料供給システムは、コンピュータ本体部20Bの側面に外付けされるか、またはコンピュータ本体部20Bの側面部分に内蔵されることになる。ただし、本具体例のポンプ動作機構18は、2つの筐体がヒンジ部を介して結合されていればノート型のパーソナルコンピュータ以外の電子機器にも適用可能であり、例えば、表示部が配置された筐体と操作部が配置された筐体とがヒンジ部を介して結合された折り畳み型の携帯電話機などにも適用することができる。
【0050】
図3および図4を参照すると、本具体例のポンプ動作機構18は、上述のヒンジ部と同じ回転軸を具備し、ヒンジ部と一体に回転する第1ギア21と、第1ギア21の回転に応じて回転する第2ギア22および第3ギア23と、手動ポンプ17と当接し、手動ポンプ17を動作させるために設けられたシリンダ24と、連結ピンであるエマージェンシーピン26の挿抜によりシリンダ24と連結可能に構成され、第2ギア22の回転方向に応じて手動ポンプ17の動作方向に往復運動を行うアーム25とを有している。
【0051】
なお、シリンダ24により手動ポンプ17を押したときに、燃料がサブタンク15へ逆流しないようにするため、サブタンク15とMEA101との間の燃料の供給路には、逆流防止弁27が設けられている。
【0052】
以下、本具体例のポンプ動作機構18を介して手動ポンプ17を動作させる場合の手順について説明する。
【0053】
ACアダプタを使用できない状況において、二次電池11の充電電力がないために、第1電動ポンプ13により燃料電池10内のMEA101に燃料を供給できず、燃料電池10によってもパーソナルコンピュータを起動させることができない場合を考える。この場合、ユーザは、手動ポンプ17によりMEA101に燃料を供給するため、まず、燃料供給システムの外部(側面)からエマージェンシーピン26を挿入する。すると、シリンダ24とアーム25とがエマージェンシーピン26により連結される。
【0054】
次に、ユーザは、LCDパネル20Aを開いた状態から閉じる。すると、LCDパネル20Aとコンピュータ本体部20Bとを結合するヒンジ部の回転により第1ギア21が回転し、それにより第3ギア23を介して第2ギア22も回転する。すると、第2ギア22の回転に伴いアーム25およびこれに連結しているシリンダ24が移動して手動ポンプ17を押す。ユーザがLCDパネル20Aを開くと、シリンダ24が元の位置に戻る。以降、ユーザは、LCDパネル20Aの開閉を連続して行って、手動ポンプ17を押す動作を繰り返す。
【0055】
手動ポンプ17を押す動作を繰り返すことで、サブタンク15の燃料がMEA101に供給されると、その燃料を用いてMEA101にて発生した電力の余剰分が二次電池11に供給される。そうすると、以降は、二次電池11の充電電力により起動された第1電動ポンプ13によりMEA101に燃料が供給されるため、通常の燃料電池10によるパーソナルコンピュータの駆動が可能となる。
【0056】
上述したように本具体例においては、ACアダプタを使用できない状況において、二次電池11の充電電力がない場合であっても、LCDパネル20Aを開閉させることにより手動ポンプ17を動作させ、手動ポンプ17によりサブタンク15の燃料をMEA101に供給することができ、よって燃料電池10の発電を可能にすることができる。
【0057】
また、エマージェンシーピン26を挿入して、シリンダ24とアーム25とを連結させない限り手動ポンプ17は動作しないため、通常時に、手動ポンプ17を誤って動作させることもない。
【0058】
なお、本具体例においては、第1ギア21と第2ギア22の間に第3ギア23を設けた構成としたが、本発明はこれに限定されず、第1ギア21と第2ギア22を直接噛み合わせる構成としても良い。
(ポンプ動作機構18の具体例2)
図5は、ポンプ動作機構18の具体例2を側面から見た図であり、図6は、ポンプ動作機構18の具体例2を上面から見た図である。
【0059】
なお、図5および図6は、本具体例のポンプ動作機構18を、LCDパネル30Aとコンピュータ本体部30Bとからなり、コンピュータ本体部30Bに電源ボタン31が配置されたノート型のパーソナルコンピュータに適用した場合の例を示している。この例では、燃料供給システムは、コンピュータ本体部30Bの下方に外付けされるか、またはコンピュータ本体部30Bの下部に内蔵されることになる。ただし、本具体例のポンプ動作機構18は、電源ボタンが配置されていればノート型のパーソナルコンピュータ以外の電子機器、例えば、PDA、携帯電話機などにも適用することができる。
【0060】
図5および図6を参照すると、本具体例のポンプ動作機構18は、電源ボタン31により押下可能に構成され、電源ボタン31により押下されるとパーソナルコンピュータの電源をオンオフする電源スイッチ32が実装された第1基板33と、第1基板33を電源ボタン31の押下方向とは垂直な方向にスライドさせるエマージェンシースライドスイッチ34と、第1基板33をスライドさせた状態で電源ボタン31により押下可能に構成され、電源ボタン31により押下されると、押下された方向に移動可能な第2基板35と、一端が第2基板35と結合された第1アーム36と、第1アーム36の他端と結合され、第2基板35の移動に応じて回転するギア37と、第2基板35とギア37との間に配置されたバネ38と、手動ポンプ17に当接し、手動ポンプ17を動作させるために設けられたシリンダ39と、連結ピンであるエマージェンシーピン41の挿抜によりシリンダ39と連結可能に構成され、ギア37の回転方向に応じて手動ポンプ17の動作方向に往復運動を行う第2アーム40とを有している。
【0061】
なお、シリンダ39により手動ポンプ17を押したときに、燃料がサブタンク15へ逆流しないようにするため、サブタンク15とMEA101との間の燃料の流路には、逆流防止弁42が設けられている。
【0062】
以下、本具体例のポンプ動作機構18を介して手動ポンプ17を動作させる場合の手順について説明する。
【0063】
ACアダプタを使用できない状況において、二次電池11の充電電力がないために、第1電動ポンプ13により燃料電池10内のMEA101に燃料を供給できず、燃料電池10によってもパーソナルコンピュータを起動させることができない場合を考える。この場合、ユーザは、手動ポンプ17によりMEA101に燃料を供給するため、まず、燃料供給システムの外部(側面)からエマージェンシーピン41を挿入する。すると、シリンダ39と第2アーム40とがエマージェンシーピン41により連結される。さらに、ユーザは、エマージェンシースライドスイッチ34により第1基板33をスライドさせる。すると、電源ボタン31により第2基板35を押下することが可能となる。
【0064】
次に、ユーザは、電源ボタン31を押し込む。このとき、ユーザは、電源をオンオフする時よりも押し込む量を大きくする。すると、電源ボタン31の押下により第2基板35が押下方向に移動し、それによりギア37も回転する。すると、ギア37の回転に伴い第2アーム40およびこれに連結しているシリンダ39が移動して手動ポンプ17を押す。ユーザが電源ボタン31を離すと、バネ38の弾性力により電源ボタン31の位置が元の位置に戻り、これに伴いシリンダ39も元の位置に戻る。以降、ユーザは、電源ボタン31を連続して押下して、手動ポンプ17を押す動作を繰り返す。
【0065】
手動ポンプ17を押す動作を繰り返すことで、サブタンク15の燃料がMEA101に供給されると、その燃料を用いてMEA101にて発生した電力の余剰分が二次電池11に供給される。そうすると、以降は、二次電池11の充電電力により起動された第1電動ポンプ13によりMEA101に燃料が供給されるため、通常の燃料電池10によるパーソナルコンピュータの駆動が可能となる。
【0066】
上述したように本具体例においては、ACアダプタを使用できない状況において、二次電池11の充電電力がない場合であっても、電源ボタン31を押下することにより手動ポンプ17を動作させ、手動ポンプ17によりサブタンク15の燃料をMEA101に供給することができ、よって燃料電池10の発電を可能にすることができる。
【0067】
また、エマージェンシーピン41を挿入してシリンダ39と第2アーム40とを連結させ、かつエマージェンシースライドスイッチ34により第1基板33をスライドさせない限り手動ポンプ17は動作しないため、通常時に、手動ポンプ17を誤って動作させることもない。
(第2の実施形態)
図7は、本発明の第2の実施形態の燃料供給システムの構成を示すブロック図である。
【0068】
図7を参照すると、本実施形態の燃料供給システムは、図1に示した第1の実施形態と比較して、第1電動ポンプ13および手動ポンプ17の代わりに、手動でも電動でも動作可能なポンプ71を設けた点が異なる。なお、ポンプ71は、第1電動ポンプ13および手動ポンプ17の動作を兼用する。これに伴い、第2電動ポンプ14、サブタンク15および残量センサ16は削除されている。
【0069】
本実施形態においては、二次電池11に電力が充電されている場合は、制御部19がポンプ71を電動で動作させて、燃料カートリッジ12に貯留された燃料を燃料電池10内のMEA101に供給する。一方、二次電池11に電力が充電されていない場合は、ユーザがポンプ動作機構18を介してポンプ71を手動で動作させて、燃料カートリッジ12に貯留された燃料をMEA101に供給する。
(第3の実施形態)
図8は、本発明の第3の実施形態の燃料供給システムの構成を示すブロック図である。
【0070】
図8を参照すると、本実施形態の燃料供給システムは、図1に示した第1の実施形態と比較して、第2電動ポンプ14を削除した点と、手動で動作するかまたは制御部19の制御の元で二次電池11の充電電力により電動で動作する切換弁81,82を追加した点とが異なる。なお、第1電動ポンプ13は、第2電動ポンプ14の動作を兼用する。
【0071】
本実施形態においては、二次電池11に電力が充電されている場合に、燃料カートリッジ12に貯留された燃料を燃料電池10内のMEA101に供給する時は、切換弁81,82により燃料の供給路をMEA101側に切り換えた上で、制御部19が第1電動ポンプ13を動作させる。また、燃料をサブタンク15に供給する時は、切換弁81により燃料の供給路をサブタンク15側に切り換えた上で、制御部19が第1電動ポンプ13を動作させる。一方、二次電池11に電力が充電されていない場合は、切換弁82をサブタンク15からMEA101に燃料が供給できるように切り換え、ユーザがポンプ動作機構18を介して手動ポンプ17を動作させて、サブタンク15に貯留された燃料をMEA101に供給する。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の第1の実施形態の燃料供給システムの構成を示すブロック図である。
【図2】サブタンクの貯留量を所定量とする処理を説明するフローチャートである。
【図3】ポンプ動作機構の具体例1を側面から見た図である。
【図4】ポンプ動作機構の具体例1を上面から見た図である。
【図5】ポンプ動作機構の具体例2を側面から見た図である。
【図6】ポンプ動作機構の具体例2を上面から見た図である。
【図7】本発明の第2の実施形態の燃料供給システムの構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の第3の実施形態の燃料供給システムの構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0073】
10 燃料電池
11 二次電池
12 燃料カートリッジ
13 第1電動ポンプ
14 第2電動ポンプ
15 サブタンク
16 残量センサ
17 手動ポンプ
18 ポンプ動作機構
19 制御部
21 第1ギア
22 第2ギア
23 第3ギア
24 シリンダ
25 アーム
26 エマージェンシーピン
27 逆流防止弁
31 電源ボタン
32 電源スイッチ
33 第1基板
34 エマージェンシースライドスイッチ
35 第2基板
36 第1アーム
37 ギア
38 バネ
39 シリンダ
40 第2アーム
41 エマージェンシーピン
42 逆流防止弁
71 ポンプ
81,82 切換弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池に対して燃料を供給する燃料供給システムにおいて、
前記燃料電池に燃料を供給するためのポンプと、
前記ポンプを手動で動作させるためのポンプ動作機構とを有することを特徴とする燃料供給システム。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料供給システムにおいて、
燃料を所定量貯留するサブタンクをさらに有し、
前記ポンプは、前記サブタンクに貯留された燃料を前記燃料電池に供給することを特徴とする燃料供給システム。
【請求項3】
請求項2に記載の燃料供給システムにおいて、
補助電源と、
燃料を貯留する燃料タンクと、
前記燃料タンクに貯留された燃料を前記燃料電池に供給するための第1電動ポンプと、
前記補助電源に電力が充電されている場合、前記補助電源の充電電力により前記第1電動ポンプを動作させて、該第1電動ポンプにより前記燃料電池に燃料を供給させる制御を行う制御部とをさらに有することを特徴とする燃料供給システム。
【請求項4】
請求項3に記載の燃料供給システムにおいて、
前記サブタンクに貯留された燃料の残量を検知する残量センサをさらに有し、
前記制御部は、前記サブタンクに所定量の燃料が貯留されていないと前記残量センサにて検知された場合、前記サブタンクに燃料を供給させる制御を行うことを特徴とする燃料供給システム。
【請求項5】
請求項4に記載の燃料供給システムにおいて、
前記燃料タンクに貯留された燃料を前記サブタンクに供給するための第2電動ポンプをさらに有し、
前記制御部は、前記補助電源に電力が充電されているときに前記サブタンクに所定量の燃料が貯留されていないと前記残量センサにて検知された場合、前記補助電源の充電電力により前記第2電動ポンプを動作させて、該第2電動ポンプにより前記サブタンクに燃料を供給させる制御を行うことを特徴とする燃料供給システム。
【請求項6】
請求項2から5のいずれか1項に記載の燃料供給システムにおいて、
前記サブタンクと前記燃料電池との間の燃料の供給路に設けられ、前記サブタンクへの燃料の逆流を防止する逆流防止弁をさらに有することを特徴とする燃料供給システム。
【請求項7】
請求項1に記載の燃料供給システムにおいて、
前記ポンプは電動でも動作可能であり、
前記燃料供給システムは、
補助電源と、
前記補助電源に電力が充電されている場合、前記補助電源の充電電力により前記ポンプを電動で動作させて、該ポンプにより前記燃料タンクに貯留された燃料を前記燃料電池に供給させる制御を行う制御部とをさらに有することを特徴とする燃料供給システム。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の燃料供給システムにおいて、
前記燃料電池は、電子機器へ電力を供給する燃料電池であることを特徴とする燃料供給システム。
【請求項9】
請求項8に記載の燃料供給システムにおいて、
前記電子機器は、2つの筐体がヒンジ部を介して結合された構成であり、
前記ポンプ動作機構は、
前記ヒンジ部と同じ回転軸を具備し、該ヒンジ部と一体に回転する第1ギアと、
前記第1ギアの回転に応じて回転する第2ギアと、
前記ポンプと当接し、該ポンプを動作させるために設けられたシリンダと、
前記シリンダと連結ピンの挿抜により連結可能に構成され、前記第2ギアの回転方向に応じて前記ポンプの動作方向に往復運動を行うアームとを有することを特徴とする燃料供給システム。
【請求項10】
請求項8に記載の燃料供給システムにおいて、
前記電子機器は、電源ボタンを有する構成であり、
前記ポンプ動作機構は、
前記電源ボタンにより押下可能に構成され、該電源ボタンにより押下されると前記電子機器の電源をオンオフする電源スイッチが実装された第1基板と、
前記第1基板を前記電源ボタンの押下方向と垂直な方向にスライドさせるスライドスイッチと、
前記第1基板をスライドさせた状態で前記電源ボタンにより押下可能に構成され、該電源ボタンにより押下されると押下された方向に移動可能な第2基板と、
一端が前記第2基板と結合された第1アームと、
前記第1アームの他端と結合され、前記第2基板の移動に応じて回転するギアと、
前記第2基板と前記ギアとの間に配置されたバネと、
前記ポンプと当接し、該ポンプを動作させるために設けられたシリンダと、
前記シリンダと連結ピンの挿抜により連結可能に構成され、前記ギアの回転方向に応じて前記ポンプの動作方向に往復運動を行う第2アームとを有することを特徴とする燃料供給システム。
【請求項11】
燃料電池に対して燃料を供給する燃料供給方法であって、
前記燃料電池に燃料を供給するためのポンプと、前記ポンプを手動で動作させるためのポンプ動作機構とを設け、
前記ポンプ動作機構が動作された場合に、前記ポンプ動作機構を介して前記ポンプを動作させ、前記ポンプにより前記燃料電池に燃料を供給することを特徴とする燃料供給方法。
【請求項12】
請求項11に記載の燃料供給方法において、
燃料を所定量貯留するサブタンクを設け、
前記ポンプにより前記サブタンクに貯留された燃料を前記燃料電池に供給することを特徴とする燃料供給方法。
【請求項13】
請求項12に記載の燃料供給方法において、
補助電源と、燃料を貯留する燃料タンクと、前記燃料タンクに貯留された燃料を燃料電池に供給するための第1電動ポンプとを設け、
前記補助電源に電力が充電されている場合に、前記補助電源の充電電力により前記第1電動ポンプを動作させ、前記第1電動ポンプにより前記燃料タンクに貯留された燃料を前記燃料電池に供給することを特徴とする燃料供給方法。
【請求項14】
請求項13に記載の燃料供給方法において、
前記サブタンクに貯留された燃料の残量を検知する残量センサを設け、
前記サブタンクに貯留された燃料の残量を前記残量センサにより検知し、前記サブタンクに所定量の燃料が貯留されていない場合に、前記サブタンクに燃料を供給することを特徴とする燃料供給方法。
【請求項15】
請求項14に記載の燃料供給方法において、
前記燃料タンクに貯留された燃料を前記サブタンクに供給するための第2電動ポンプを設け、
前記補助電源に電力が充電されているときに前記サブタンクに所定量の燃料が貯留されていないと前記残量センサにて検知された場合に、前記補助電源の充電電力により前記第2電動ポンプを動作させ、該第2電動ポンプにより前記サブタンクに燃料を供給することを特徴とする燃料供給方法。
【請求項16】
請求項11に記載の燃料供給方法において、
補助電源と、燃料を貯留する燃料タンクとを設け、
前記補助電源に電力が充電されている場合に、前記補助電源の充電電力により前記ポンプを電動で動作させ、前記ポンプにより燃料タンクに貯留された燃料を前記燃料電池に供給することを特徴とする燃料供給方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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