説明

燃料分離器の異常判定装置

【課題】この発明は、燃料分離器の異常判定装置に関し、原料燃料を高オクタン価燃料と低オクタン価燃料とに分離する燃料分離器の異常を、早期にかつ精度良く判定することを目的とする。
【解決手段】供給された原料燃料を、高RON燃料と低RON燃料とに分離するアロマ分離膜301を備えた燃料分離器30の異常判定装置であって、燃料ポンプ48による高RON燃料の吐出圧を取得し(ステップ100)、次いで、燃料分離器30の区画303内の負圧(アロマ分離膜301の吸引負圧)を取得する(ステップ102)。上記吐出圧が所定の上限値Pmaxよりも高く、かつ、上記負圧が所定の下限値Pminよりも低い場合に、燃料分離器30に破損による異常が生じたと判定する(ステップ108)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、燃料分離器の異常判定装置に係り、特に、原料燃料を高オクタン価燃料と低オクタン価燃料とに分離する燃料分離器の異常判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1には、車載用燃料分離装置の異常を判定する装置が開示されている。この従来の燃料分離装置では、より具体的には、原料燃料タンク内のガソリンが、分離膜モジュールによって、原料燃料よりオクタン価(RON)の高い高オクタン価燃料と原料燃料よりオクタン価の低い低オクタン価燃料とに分離される。
【0003】
そして、上記従来の燃料分離装置では、高オクタン価燃料の生成量が所定の上限値よりも大きい場合に分離膜の破損による異常と判断し、当該生成量が所定の下限値より小さい場合には、分離膜の機能低下による異常と判断することとしている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−140047号公報
【特許文献2】特開2004−232624号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の燃料分離装置では、高オクタン価燃料の生成量を、高オクタン価燃料を貯留している燃料タンクの液面変化と当該燃料タンクから内燃機関に供給される燃料量とに基づいて算出することとしている。このため、高オクタン価燃料がこの燃料タンクにある程度貯留されるまでは、燃料分離装置の異常判定を行うことができなくなる。このため、上記従来の燃料分離装置では、燃料分離装置の異常を早期に発見することができないおそれがあった。
【0006】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、原料燃料を高オクタン価燃料と低オクタン価燃料とに分離する燃料分離器の異常を、早期にかつ精度良く判定することのできる燃料分離器の異常判定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、燃料分離器の異常判定装置であって、
芳香族成分を選択的に通過させる燃料分離膜を有し、供給された原料燃料を、前記燃料分離膜を通過した高オクタン価燃料と前記燃料分離膜を通過していない低オクタン価燃料とに分離する燃料分離器と、
前記燃料分離膜を通過した前記高オクタン価燃料を貯留するための燃料タンクと、
前記燃料分離器における前記高オクタン価燃料側の区画と前記燃料タンクとを連通する貯留側燃料通路と、
前記燃料通路の途中に配置され、前記燃料分離器の前記区画内に負圧を生成する負圧生成手段と、
前記燃料タンクに貯留されている前記高オクタン価燃料を燃料供給対象へ供給する際に用いられる供給側燃料通路と、
前記供給側燃料通路の途中に配置され、前記高オクタン価燃料を前記燃料供給対象へ供給する燃料供給手段と、
前記負圧生成手段により生成される前記負圧を取得する負圧取得手段と、
前記燃料供給手段による前記高オクタン価燃料の吐出圧を取得する吐出圧取得手段と、
前記吐出圧と前記負圧とに基づいて、前記燃料分離器の異常の有無を判定する異常判定手段と、
を備えることを特徴とする。
【0008】
また、第2の発明は、第1の発明において、
前記負圧生成手段は、前記燃料供給手段から前記高オクタン価燃料の供給を受けて生じた吸引作用によって前記区画内の燃料を前記燃料タンクに移送するジェットポンプであることを特徴とする。
【0009】
また、第3の発明は、第1または第2の発明において、
前記異常判定手段は、前記吐出圧が所定の上限値よりも高く、かつ、前記負圧が所定の下限値よりも低い場合に、前記燃料分離器に破損による異常が生じたと判定することを特徴とする。
【0010】
また、第4の発明は、燃料分離器の異常判定装置であって、
芳香族成分を選択的に通過させる燃料分離膜を有し、供給された原料燃料を、前記燃料分離膜を通過した高オクタン価燃料と前記燃料分離膜を通過していない低オクタン価燃料とに分離する燃料分離器と、
前記高オクタン価燃料を貯留するための燃料タンクと、
前記燃料分離器における前記高オクタン価燃料側の区画と前記燃料タンクとを連通する貯留側燃料通路と、
前記燃料通路の途中に配置され、前記燃料分離器の前記区画内に負圧を生成する負圧生成手段と、
前記負圧生成手段により生成される前記負圧を取得する負圧取得手段と、
前記負圧に基づいて、前記燃料分離器の異常の有無を判定する異常判定手段と、
を備えることを特徴とする。
【0011】
また、第5の発明は、第4の発明において、
前記異常判定手段は、前記負圧が所定の上限値よりも高い場合に、前記燃料分離膜に詰まりによる異常が生じたと判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明によれば、燃料供給手段による高オクタン価燃料の吐出圧と、燃料分離器における高オクタン価燃料側の区画内の負圧とに基づいて、燃料分離器の異常の有無が判定される。燃料分離器に異常が発生すると、上記吐出圧および上記負圧に正常時とは異なる傾向が見られるようになる。このため、本発明によれば、上記吐出圧と上記負圧とに基づいて、燃料分離器の異常を精度良く判定することができる。
【0013】
第2の発明によれば、負圧生成手段としてジェットポンプを用いられている場合において、燃料供給手段による高オクタン価燃料の吐出圧の変化に伴うジェットポンプの負圧生成能力の変化の状況を考慮して、燃料分離器の異常をより精度良く判定することが可能となる。
【0014】
第3の発明によれば、上記吐出圧が所定の上限値よりも高く、かつ、上記負圧が所定の下限値よりも低い場合に、燃料分離器に破損による異常が生じたと判定される。燃料分離器の燃料分離膜やその基材が破損すると、上記区画側への燃料透過量が過大となるため、上記吐出圧が過大となるとともに上記負圧が過小となる。このため、本発明によれば、簡易な構成で、燃料分離器に破損による異常が発生したか否かを精度よく判定することができる。
【0015】
第4の発明によれば、燃料分離器における高オクタン価燃料側の区画内の負圧に基づいて、燃料分離器の異常の有無が判定される。燃料分離器に異常が発生すると、負圧に正常時とは異なる傾向が見られるようになる。このため、本発明によれば、上記負圧に基づいて、燃料分離器の異常を精度良く判定することができる。
【0016】
第5の発明によれば、上記負圧が所定の上限値よりも高い場合に、燃料分離器に詰まりによる異常が生じたと判定される。燃料分離器の燃料分離膜やその基材に詰まりが生ずると、上記区画側への燃料透過量が過小となるため、上記負圧が過大となる。このため、本発明によれば、簡易な構成で、燃料分離器に詰まりによる異常が発生したか否かを精度よく判定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
実施の形態1.
[実施の形態1の構成]
図1は、本発明の実施の形態1における燃料供給装置の構成を説明するための図である。本実施形態の燃料供給装置は、車両に搭載された内燃機関10に燃料を供給するための車載用燃料供給装置として適用されている。図1に示すように、内燃機関10は、燃料タンク12を備えている。
【0018】
燃料タンク12には、通常のガソリン(例えば、90RON)が給油されて貯留されている。以下、燃料タンク12に貯留されているガソリン燃料は、後述する分離燃料と区別するために「原料燃料」と称する。
【0019】
燃料タンク12には、原料燃料配管14の一端が接続されている。燃料タンク12内の原料燃料は、当該原料燃料配管14の途中に設けられた燃料ポンプ16によって、当該原料燃料配管14に供給されるようになっている。
【0020】
原料燃料配管14における燃料ポンプ16の下流には、レギュレータ18が配置されている。レギュレータ18は、原料燃料配管14を流れる原料燃料の圧力を調整するためのものである。
【0021】
原料燃料配管14におけるレギュレータ18の下流には、燃料加熱器20が配置されている。燃料加熱器20は、原料燃料を加熱するための装置であり、例えば、ヒートパイプが使用される。ヒートパイプは、内燃機関10の排気通路に介在するように構成されており、排気通路を流れる排気ガスの熱を受けて、原料燃料を加熱することができるものである。
【0022】
燃料加熱器20よりも下流側の原料燃料配管14には、燃料分離器30が接続されている。燃料分離器30は、供給された原料燃料を高オクタン価成分の含有率が原料燃料より多い高RON燃料(例えば、103RON)と高オクタン価成分の含有率が原料燃料より少ない低RON燃料(例えば、88RON)とに分離するための装置である。
【0023】
燃料分離器30は、耐圧容器からなるハウジング内を、アロマ分離膜301で2つの区画302と303とに区分した構成を有している。アロマ分離膜301は、原料燃料中の芳香族成分を選択的に透過させる性質を有している。芳香族成分量が増大すると、オクタン価(RON)が高くなる。このため、区画303側に透過した燃料は、芳香族成分の含有量が多い高RON燃料となり、区画302側に残った燃料は、芳香族成分の含有量が少ない低RON燃料となる。
【0024】
燃料分離器30における区画302側には、低RON燃料配管32の一端が接続されている。また、低RON燃料配管32の途中には、低RON燃料を減圧して液化するためのレギュレータ34が配置されている。液化された低RON燃料は、インジェクタ36を用いて、内燃機関10の筒内に噴射されるようになっている。
【0025】
一方、燃料分離器30における区画303側には、高RON燃料配管38の一端が接続されている。高RON燃料配管38の他端には、区画303内に負圧を発生させるための負圧生成手段として、ジェットポンプ40が設けられている。より具体的には、高RON燃料配管38の当該他端は、ジェットポンプ40内のベンチュリー部(図示省略)と連通するように設けられている。
【0026】
また、ジェットポンプ40には、高RON燃料配管42の一端が接続されている。高RON燃料配管42の他端は、高RON燃料を貯留するための高RON燃料タンク44に接続されている。高RON燃料タンク44には、更に、高RON燃料配管42とは別の高RON燃料配管46の一端が接続されている。
【0027】
高RON燃料タンク44内の高RON燃料は、当該高RON燃料配管46の途中に設けられた燃料ポンプ48によって、当該高RON燃料配管46に供給されるようになっている。
【0028】
また、高RON燃料配管46は、燃料ポンプ48の吐出側の部位において二股状に分岐している。ここでは、説明の便宜上、図1に示すように、高RON燃料配管46において、インジェクタ50に向かう方の分岐通路を「第1分岐通路46a」と称し、もう一方のジェットポンプ40に向かう方の分岐通路を「第2分岐通路46b」と称することとする。
【0029】
上記の構成によれば、燃料ポンプ48によって圧送された高RON燃料は、高RON燃料配管46の第1分岐通路46aを通ってインジェクタ50に供給されるとともに、高RON燃料配管46の第2分岐通路46bを通ってジェットポンプ40にも供給される。
【0030】
当該ジェットポンプ40は、一種のエジェクターとして機能し、第2分岐通路46bから高RON燃料が当該ジェットポンプ40内の上記ベンチュリー部を通過する際に生じる負圧によって、燃料分離器30の区画303内の燃料を高RON燃料タンク44側に吸引するものである。つまり、ジェットポンプ40は、燃料ポンプ48から高RON燃料の供給を受けて生じた吸引作用によって区画303内の燃料を高RON燃料タンク44に移送するものである。
【0031】
更に、高RON燃料配管42の途中には、高RON燃料配管42を流れる高RON燃料の圧力、言い換えれば、燃料ポンプ48の吐出圧を調整するためのレギュレータ52が配置されている。
【0032】
また、図1に示すシステムは、ECU(Electronic Control Unit)60を備えている。ECU60の入力には、内燃機関10の運転状態を検出するための各種センサ(図示せず)に加え、燃料分離器30からジェットポンプ40に向かう通路(高RON燃料配管38)内の燃料の圧力(負圧)を検出するための圧力センサ62、および、燃料ポンプ48の吐出圧を検出するための圧力センサ64がそれぞれ接続されている。また、ECU60の出力には、上述した燃料ポンプ16、48、レギュレータ18、34、52、インジェクタ36、50などの各種アクチュエータが接続されている。
【0033】
[燃料分離動作について]
次に、燃料分離器30における燃料分離動作について説明する。燃料分離器30では、原料燃料から高RON燃料と低RON燃料が生成される。より具体的には、燃料タンク12に貯留されている原料燃料は、燃料ポンプ16およびレギュレータ18により所定の圧力まで昇圧された後、燃料加熱器20を通過する間に所定の温度まで加熱される。
【0034】
高温高圧となった原料燃料は、燃料分離器30の区画302側へ送られる。アロマ分離膜301を挟んだ区画303側は、ジェットポンプ40の作用により低い圧力に制御されている。ハウジング内における区画302側を高圧に保ち、区画303側を区画302側よりも低圧(好ましくは負圧)に保つと、原料燃料中の芳香族成分が、該アロマ分離膜301を区画302側から区画303側へ透過する。
【0035】
このため、区画302側の原料燃料中の芳香族成分がアロマ分離膜301を透過して区画303側へ浸出する。これにより、原料燃料(例えば、RON90)が高RON燃料(例えば、RON103)と低RON燃料(例えば、RON88)とに分離される。内燃機関10においては、ノッキングを発生せずに安定したトルクを発生できるように、運転条件に応じた最適なオクタン価が設定されている。ECU60は、要求オクタン価の大小に応じて、各燃料のインジェクタ36、50をそれぞれ駆動するようにしている。
【0036】
[実施の形態1の特徴部分]
燃料分離器30におけるアロマ分離膜301やその基材に破損が生じた場合、原料燃料が当該破損部から区画303側へ流出してしまう。このため、高RON燃料のオクタン価が、想定していたオクタン価よりも低くなってしまうおそれがある。このような場合においては、設定された噴射量で燃料を噴射しているにも関わらず、要求オクタン価を実現することができないので、知らぬ間に燃焼状態が悪化しているおそれがある。
【0037】
また、燃料分離器30におけるアロマ分離膜301やその基材に詰まりが生じた場合、高RON燃料の生成量が低下してしまう。このような場合においては、ノッキングの抑制のために点火時期を遅角せざるを得ず、燃費の悪化を招いてしまう。このように、燃料分離器30に異常が発生すると、燃焼状態の悪化や燃費の悪化を招くため、これらの異常を早期にかつ精度良く検出することが好ましい。
【0038】
そこで、本実施の形態1では、燃料ポンプ48による高RON燃料の吐出圧と、燃料分離器30の高RON燃料側の区画303内の負圧とに基づいて、燃料分離器30の異常判定を行うようにした。
【0039】
既述したように、燃料分離器30に導入された原料燃料は、アロマ分離膜301を通過した高RON燃料とアロマ分離膜301を通過していない低RON燃料とに分離される。この際、区画302側から区画303側への燃料透過量が多量になるほど、高RON燃料配管38や高RON燃料タンク44への燃料供給量が増えていくので、基本的に、燃料ポンプ48による高RON燃料の吐出圧が高くなるとともに、区画303内の負圧は低くなる。
【0040】
このため、本実施形態では、より具体的には、燃料ポンプ48による高RON燃料の吐出圧が規定値以上で、かつ、区画303内の負圧が規定範囲に満たない場合に、区画302側から区画303側への燃料通過量が過大であると判断するようにした。そして、この場合には、燃料分離器30に破損(具体的には、アロマ分離膜301或いはその基材の破損)による異常が発生したと判断するようにした。
【0041】
次に、図2を参照して、本実施の形態1において実行される処理の具体的内容について説明する。図2は、ECU60が、燃料分離器30の異常を診断するために実行するルーチンのフローチャートである。
【0042】
図2に示すルーチンでは、先ず、燃料ポンプ48による高RON燃料の吐出圧が取得される(ステップ100)。ここでは、具体的には、圧力センサ64の検出信号に基づいて取得される。
【0043】
次に、燃料分離器30の区画303内の負圧(アロマ分離膜301の吸引負圧)が取得される(ステップ102)。ここでは、具体的には、圧力センサ62の検出信号に基づいて取得される。
【0044】
次に、上記吐出圧が所定の上限値Pmaxよりも高く、かつ、上記負圧が所定の下限値Pminよりも低いか否かが判別される(ステップ104)。これらのPmax、Pminは、燃料分離器30による燃料分離動作が正常である場合において想定しうる最大の吐出圧、最小の負圧として、予め実験等により設定された値が使用される。
【0045】
その結果、上記ステップ104の判定が不成立である場合には、高RON燃料の吐出圧が規定値以上にはなっておらず、かつ、アロマ分離膜301の吸引負圧が規定範囲内にあると判断することができる。このため、この場合には、次のステップに移行し、燃料分離器30の正常が判定される(ステップ106)。
【0046】
一方、上記ステップ104の判定が成立する場合には、燃料ポンプ48の吐出圧が高いことで、ジェットポンプ40のベンチュリー部を通過する高RON燃料の量が多く、これにより、ジェットポンプ40の負圧生成能力が高くなる状況下であるにも関わらず、十分な負圧が生成されていない状況にあるといえる。
【0047】
このため、この場合には、区画302側から区画303側への燃料通過量が過大となる状況にあると良好に判断することができる。このため、この場合には、次のステップに移行し、燃料分離器30の異常が判定される(ステップ108)。具体的には、本ステップ108では、アロマ分離膜301或いはその基材の破損による異常が生じたと判定される。
【0048】
以上説明した図2に示すルーチンによれば、燃料ポンプ48による高RON燃料の吐出圧と、燃料分離器30の高RON燃料側の区画303内の負圧とに基づいて、燃料分離器30に異常が発生しているか否かを精度良く判定することができる。これにより、燃料分離器30の異常を早期に発見することができるので、内燃機関10の燃焼状態の悪化や燃費の悪化等を効果的に回避することができる。
【0049】
尚、上述した実施の形態1においては、アロマ分離膜301が前記第1の発明における「燃料分離膜」に、高RON燃料が前記第1の発明における「高オクタン価燃料」に、低RON燃料が前記第1の発明における「低オクタン価燃料」に、高RON燃料タンク44が前記第1の発明における「燃料タンク」に、区画303が前記第1の発明における「区画」に、高RON燃料配管38および高RON燃料配管42が前記第1の発明における「貯留側燃料通路」に、ジェットポンプ40が前記第1の発明における「負圧生成手段」に、内燃機関10が前記第1の発明における「燃料供給対象」に、燃料ポンプ48が前記第1の発明における「燃料供給手段」に、それぞれ相当している。
また、ECU60が、上記ステップ102の処理を実行することにより前記第1の発明における「負圧取得手段」が、上記ステップ100の処理を実行することにより前記第1の発明における「吐出圧取得手段」が、上記ステップ104〜108の処理を実行することにより前記第1の発明における「異常判定手段」が、それぞれ実現されている。
【0050】
実施の形態2.
次に、図3および図4を参照して、本発明の実施の形態2について説明する。
本実施形態のシステムは、図3に示すハードウェア構成を用いて、ECU60に後述する図4に示すルーチンを実行させることにより実現することができるものである。
【0051】
[実施の形態2の構成]
図3は、本発明の実施の形態2における燃料供給装置の構成を説明するための図である。尚、図3において、上記図1に示す構成要素と同一の要素については、同一の符号を付してその説明を省略または簡略する。
本実施形態のシステムは、高RON燃料配管46の第1分岐通路46aに圧力センサ64が備えられていない点を除き、上述した実施の形態1におけるシステムと同様に構成されている。
【0052】
[実施の形態2の特徴部分]
本実施形態では、上述した実施の形態1とは異なり、燃料分離器30の高RON燃料側の区画303内の負圧のみに基づいて、燃料分離器30の異常判定を行うようにしている。より具体的には、上記区画303内の負圧が規定範囲を超えたものとなっている場合に、区画302側から区画303側への燃料通過量が過少であると判断し、アロマ分離膜301やその基材に詰まりによる異常が発生したと判断するようにしている。
【0053】
次に、図4を参照して、本実施の形態2において実行される処理の具体的内容について説明する。図4は、ECU60が、燃料分離器30の異常を診断するために実行するルーチンのフローチャートである。
【0054】
図4に示すルーチンでは、先ず、上記ステップ102と同様の手法で、燃料分離器30の区画303内の負圧(アロマ分離膜301の吸引負圧)が取得される(ステップ200)。
【0055】
次に、上記負圧が所定の上限値Pmax’よりも高いか否かが判別される(ステップ202)。このPmax’は、燃料分離器30による燃料分離動作が正常である場合において想定しうる最大の負圧として、予め実験等により設定された値が使用される。
【0056】
その結果、上記ステップ202の判定が不成立である場合には、アロマ分離膜301の吸引負圧が規定範囲内にあると判断することができる。このため、この場合には、次のステップに移行し、燃料分離器30の正常が判定される(ステップ204)。
【0057】
一方、上記ステップ202の判定が成立する場合には、区画302側から区画303側への燃料通過量が過少となる状況にあると判断することができる。このため、この場合には、次のステップに移行し、燃料分離器30の異常が判定される(ステップ206)。具体的には、本ステップ206では、アロマ分離膜301或いはその基材に詰まりによる異常が生じたと判定される。
【0058】
以上説明した図4に示すルーチンによれば、燃料分離器30の高RON燃料側の区画303内の負圧に基づいて、燃料分離器30に異常が発生しているか否かを精度良く判定することができる。これにより、燃料分離器30の異常を早期に発見することができるので、内燃機関10の燃焼状態の悪化や燃費の悪化等を効果的に回避することができる。
【0059】
尚、上述した実施の形態2においては、アロマ分離膜301が前記第4の発明における「燃料分離膜」に、高RON燃料が前記第4の発明における「高オクタン価燃料」に、低RON燃料が前記第4の発明における「低オクタン価燃料」に、高RON燃料タンク44が前記第4の発明における「燃料タンク」に、区画303が前記第4の発明における「区画」に、高RON燃料配管38および高RON燃料配管42が前記第4の発明における「貯留側燃料通路」に、ジェットポンプ40が前記第4の発明における「負圧生成手段」に、それぞれ相当している。
また、ECU60が、上記ステップ200の処理を実行することにより前記第4の発明における「負圧取得手段」が、上記ステップ202〜206の処理を実行することにより前記第4の発明における「異常判定手段」が、それぞれ実現されている。
【0060】
ところで、上述した実施の形態1および2においては、燃料分離器30の区画303内に負圧を生成させる負圧生成手段として、ジェットポンプ40を備えるようにしている。特に実施の形態1において、上記図2に示すルーチンの判定手法によれば、当該負圧生成手段がジェットポンプ40である場合に、上記吐出圧と上記負圧とに基づいて、特に良好な異常判定を行うことができる。しかしながら、本発明の負圧生成手段は、必ずしもジェットポンプでなくてもよく、他の機械式真空ポンプなどを必要に応じて用いるようにしてもよい。
【0061】
また、上述した実施の形態1および2においては、燃料分離器30により分離された高RON燃料を燃料ポンプ48によって内燃機関10に供給するようにしているが、本発明における高オクタン価燃料の燃料供給対象は、内燃機関10に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施の形態1における燃料供給装置の構成を説明するための図である。
【図2】本発明の実施の形態1において実行されるルーチンのフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態2における燃料供給装置の構成を説明するための図である。
【図4】本発明の実施の形態2において実行されるルーチンのフローチャートである。
【符号の説明】
【0063】
10 内燃機関
12 燃料タンク
14 原料燃料配管
16 燃料ポンプ
18 レギュレータ
20 燃料加熱器
30 燃料分離器
301 アロマ分離膜
302 区画
303 区画
32 低RON燃料配管
34 レギュレータ
36 インジェクタ
38 高RON燃料配管
40 ジェットポンプ
42 高RON燃料配管
44 高RON燃料タンク
46 高RON燃料配管
46a 第1分岐通路
46b 第2分岐通路
48 燃料ポンプ
50 インジェクタ
52 レギュレータ
60 ECU(Electronic Control Unit)
62 圧力センサ
64 圧力センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族成分を選択的に通過させる燃料分離膜を有し、供給された原料燃料を、前記燃料分離膜を通過した高オクタン価燃料と前記燃料分離膜を通過していない低オクタン価燃料とに分離する燃料分離器と、
前記燃料分離膜を通過した前記高オクタン価燃料を貯留するための燃料タンクと、
前記燃料分離器における前記高オクタン価燃料側の区画と前記燃料タンクとを連通する貯留側燃料通路と、
前記燃料通路の途中に配置され、前記燃料分離器の前記区画内に負圧を生成する負圧生成手段と、
前記燃料タンクに貯留されている前記高オクタン価燃料を燃料供給対象へ供給する際に用いられる供給側燃料通路と、
前記供給側燃料通路の途中に配置され、前記高オクタン価燃料を前記燃料供給対象へ供給する燃料供給手段と、
前記負圧生成手段により生成される前記負圧を取得する負圧取得手段と、
前記燃料供給手段による前記高オクタン価燃料の吐出圧を取得する吐出圧取得手段と、
前記吐出圧と前記負圧とに基づいて、前記燃料分離器の異常の有無を判定する異常判定手段と、
を備えることを特徴とする燃料分離器の異常判定装置。
【請求項2】
前記負圧生成手段は、前記燃料供給手段から前記高オクタン価燃料の供給を受けて生じた吸引作用によって前記区画内の燃料を前記燃料タンクに移送するジェットポンプであることを特徴とする請求項1記載の燃料分離器の異常判定装置。
【請求項3】
前記異常判定手段は、前記吐出圧が所定の上限値よりも高く、かつ、前記負圧が所定の下限値よりも低い場合に、前記燃料分離器に破損による異常が生じたと判定することを特徴とする請求項1または2記載の燃料分離器の異常判定装置。
【請求項4】
芳香族成分を選択的に通過させる燃料分離膜を有し、供給された原料燃料を、前記燃料分離膜を通過した高オクタン価燃料と前記燃料分離膜を通過していない低オクタン価燃料とに分離する燃料分離器と、
前記高オクタン価燃料を貯留するための燃料タンクと、
前記燃料分離器における前記高オクタン価燃料側の区画と前記燃料タンクとを連通する貯留側燃料通路と、
前記燃料通路の途中に配置され、前記燃料分離器の前記区画内に負圧を生成する負圧生成手段と、
前記負圧生成手段により生成される前記負圧を取得する負圧取得手段と、
前記負圧に基づいて、前記燃料分離器の異常の有無を判定する異常判定手段と、
を備えることを特徴とする燃料分離器の異常判定装置。
【請求項5】
前記異常判定手段は、前記負圧が所定の上限値よりも高い場合に、前記燃料分離膜に詰まりによる異常が生じたと判定することを特徴とする請求項4記載の燃料分離器の異常判定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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