説明

燃料及びエンジンオイル組成物並びにその使用

多量の基油、及び、アルキル基が8〜22個の範囲の炭素原子を有し、エチレンオキシドとブチレンオキシドが3:1〜2:1の範囲の比である、少量の少なくとも1種類のブチレンオキシド変性アルキルビスエトキシ化モノアミンを含む組成物が提供される。この組成物は、燃料及び潤滑油において向上した摩擦調整を与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料及びエンジンオイル組成物、並びに、特に内燃エンジンにおけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
先進国におけるエンジンの製造者は、市場における乗物の燃費を向上させることに継続的に挑戦している。乗物に関する正規の装置製造者は、環境保護庁の企業平均燃料節約(CAFE)の要求を満足し且つそれを超え、並びに乗物の燃料消費を減少させて、それによって輸入石油に対する依存性を減少させるように圧力を受けている。燃費は、環境保護庁(EPA)によって示される試験及び評価プロトコルにしたがって測定される、消費されるガソリン1ガロン(又は同等量の他の燃料)あたりに自動車によって進む平均マイル数として定義される。
【0003】
乗物の燃費の向上は多くの方法で達成することができる。しかしながら、1つの主要な領域は摩擦であると考えられる。エンジンの摩擦は6つの領域に分けることができ、それぞれの領域は特定量の摩擦特性に寄与する。エンジンの摩擦に寄与するおおよその領域は、6.0%がバルブトレイン、25%がピストン、19%がリング、10%がコンロッドベアリング、12.5%が主ベアリング、27.5%がポンプ損失である。
【0004】
米国特許7,435,272に報告されているイソヘキシルオキシプロピルアミンイソステアレート又はアルコキシ化アミン又はエーテルアミンの環式飽和カルボン酸塩のような摩擦調整剤が、燃料中の摩擦調整剤として現在用いられている。しかしながら、常に要求の厳しい低燃費乗物の要求を満足するためには、より効率的な摩擦調整を有する燃料及びモーターオイルを提供することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許7,435,272
【発明の概要】
【0006】
その幾つかの形態によれば、一態様においては、本発明は、(a)多量の基油、及び(b)アルキル基が16〜18個の範囲の炭素原子を有し、エチレンオキシドとブチレンオキシドが3:1〜2:1の範囲の比である、少量の少なくとも1種類のブチレンオキシド変性アルキルビスエトキシ化モノアミンを含む組成物を提供する。
【0007】
他の態様においては、本発明は、(a)多量のガソリン沸点範囲の複数の炭化水素の混合物、及び(b)アルキル基が16〜18個の範囲の炭素原子を有し、エチレンオキシドとブチレンオキシドが3:1〜2:1の範囲の比である、少量の少なくとも1種類のブチレンオキシド変性アルキルビスエトキシ化モノアミンを含む燃料組成物を提供する。
【0008】
他の態様においては、本発明は、(a)多量の無機及び/又は合成基油、及び(b)アルキル基が16〜18個の範囲の炭素原子を有し、エチレンオキシドとブチレンオキシドが3:1〜2:1の範囲の比である、少量の少なくとも1種類のブチレンオキシド変性アルキルビスエトキシ化モノアミンを含む潤滑油組成物を提供する。
【0009】
更に他の態様においては、本発明は、エンジン内で上記に記載の燃料組成物を燃焼させることを含む、内燃エンジンにおける摩擦係数を減少させる方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、実施例からの本発明及び市販の摩擦調整剤を含む燃料の高周波往復リグ(HFRR)が生成する摩耗値を示す。
【図2】図2は、新品の5W30 GF4モーターオイル、並びに実施例からの本発明及び市販の摩擦調整剤で処理した新品の5W30 GF4モーターオイルのCameron-Plint(CP)によって生成された摩擦係数値を示す。
【図3】図3は、使用後(5000マイル)の5W30 GF4モーターオイル、並びに実施例からの本発明及び市販の摩擦調整剤を有する使用後(5000マイル)の5W30 GF4モーターオイルのCameron-Plint(CP)によって生成された摩擦係数値を示す。
【図4】図4は、ベース燃料、並びに実施例からの5つの本発明の摩擦調整剤及び1つの商業的に入手できる摩擦調整剤に関するガソリン中の高周波往復リグ(HFRR)摩耗痕を示す。
【図5】図5は、新品の5W30 GF4モーターオイル、並びに実施例からの本発明の摩擦調整剤及び1つの市販の摩擦調整剤で処理した新品の5W30 GF4モーターオイルの小型牽引機(MTM)の摩擦係数値を示す。
【図6】図6は、使用後(5000マイル)の5W30 GF4モーターオイル、並びに実施例からの本発明の摩擦調整剤及び1つの商業的に入手できる摩擦調整剤で処理した使用後(5000マイル)の5W30 GF4モーターオイルの小型牽引機(MTM)摩擦係数値を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明者らは、(a)多量の基油、及び(b)アルキル基が16〜18個の範囲の炭素原子を有し、エチレンオキシドとブチレンオキシドとが3:1〜2:1の範囲の比である、少量の少なくとも1種類のブチレンオキシド変性アルキルビスエトキシ化モノアミンを含む組成物が、過度に乳化性になることなく優れた境界摩擦値を与えることを見出した。
【0012】
摩擦調整剤は、その極性末端を金属表面に吸収させて、2つの移動する金属表面を互いの上で容易に滑動させることを可能にすることによって作用する。したがって、摩擦調整剤が燃料と接触する可能性がある水によって乳化することができる場合には、摩擦調整剤は金属表面に結合するようになり、乳化剤は結合することができない。更に、摩擦調整剤が水によって乳化することができ、燃料添加剤パッケージ中に配合される場合には、燃料中に分散される可能性がある水によって、ストール、ヘジテーション、又は完全なエンストのようなエンジンの問題が引き起こされる可能性があるので、摩擦調整剤の更なる乳化性を補償するために、燃料添加剤パッケージの一部である乳化剤を増加させる必要がある可能性がある。したがって、摩擦を減少させることができ、同時に水によって乳化し得ず、実際に燃料から水を分離することができる摩擦調整剤を開発することが有利であろう。本発明者らは、特定のブチレンオキシド変性アルキルビスエトキシ化モノアミンによって、同時に良好な曇り除去特性を与えながら、使用後のモーターオイルについても優れた摩擦調整を与えることができることを見出した。
【0013】
ブチレンオキシド変性アルキルビスエトキシ化モノアミンは、当業者に公知の種々の方法によって製造することができる。1つの方法においては、摩擦調整剤は、1モルのアルキルアミンを2〜3モルの間のエチレンオキシドと、80℃〜200℃の範囲の温度で反応させることによって製造することができる。次に、アルキルアミンと反応したエチレンオキシドに1モルのブチレンオキシドを反応させる。
【0014】
摩擦調整剤としては、好ましくは、一般式:
【0015】
【化1】

(式中、Rは8〜22個の炭素原子、好ましくは12〜18個の炭素原子を有するアルキル基であり、Aは1〜5の整数であり、Bは1〜5の整数であり、Xは0〜5の整数であり、Yは0〜5の整数である)
を有する化合物が挙げられる。これらのブチレンオキシド変性アルキルビスエトキシ化モノアミンは、Huntsman Corporation及びAkzo Nobelから入手できる。当該技術において公知の他の合成経路を、本発明において有用なブチレンオキシド変性アルキルビスエトキシ化モノアミンの製造において用いることができる。一態様においては、ブチレンオキシド変性アルキルビスエトキシ化モノアミンは、末端のエチレンオキシド基及びブチレンオキシド基の両方を含む。
【0016】
好適なガソリン沸点範囲の液体炭化水素燃料は、25℃〜232℃の沸点範囲を有する複数の炭化水素の混合物であり、飽和炭化水素、オレフィン系炭化水素、及び芳香族炭化水素の混合物を含む。40体積%〜80体積%の範囲の飽和炭化水素含量、0体積%〜30体積%のオレフィン系炭化水素含量、及び10体積%〜60体積%の芳香族炭化水素含量を有するガソリン混合物が好ましい。ベース燃料は、直留ガソリン、ポリマーガソリン、天然ガソリン、二量体及び三量体オレフィン、合成芳香族炭化水素混合物から、或いは接触分解又は熱分解石油原料、及びこれらの混合物から誘導される。ベース燃料の炭化水素組成及びオクタンレベルは重要ではない。オクタンレベル:(R+M)/2は、一般に85より大きい。任意の通常の自動車燃料基剤を本発明の実施において用いることができる。例えば、ガソリン中の炭化水素を、燃料中で用いることが従来公知の相当量以下の通常のアルコール又はエーテルによって置換することができる。水は円滑な燃焼を妨げる可能性があるので、ベース燃料は望ましくは水を実質的に含まない。
【0017】
通常は、本発明を適用する炭化水素燃料混合物は、鉛を実質的に含まないが、ベース燃料の0.1体積%〜15体積%のメタノール、エタノール、エチル−tert−ブチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、tert−アミルメチルエーテルなどのような少量の混合薬剤を含んでいてもよいが、より多量を用いることができる。また、燃料に、フェノール類、例えば2,6−ジ−tert−ブチルフェノール又はフェニレンジアミン類、例えばN,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミンのような酸化防止剤、染料、金属失活剤、ポリエステルタイプのエトキシ化アルキルフェノール−ホルムアルデヒド樹脂のような曇り除去剤などの通常の添加剤を含ませることもできる。また、1重量ppm(100万部の1部)〜1000重量ppmの量の、そのα−炭素原子の少なくとも1つの上に20〜50個の炭素原子を有する非置換又は置換脂肪族炭化水素基を有するコハク酸誘導体の多価アルコールエステル、例えばポリイソブチレン置換コハク酸のペンタエリトリトールジエステル(ポリイソブチレン基は950の平均分子量を有する)のような腐食抑制剤を存在させることもできる。
【0018】
有効量の式Iの1種類以上の化合物を、種々の方法でエンジンの燃焼区域中に導入して、ピストンリングとシリンダー壁との間の摩擦を減少させる。上述したように、好ましい方法は、少量の式Iの1種類以上の化合物を燃料に加えることである。例えば、式Iの1種類以上の化合物は、燃料に直接加えることができ、又は1種類以上のキャリア及び/又は1種類以上の更なる洗浄剤とブレンドして添加剤濃縮液を形成した後、これを後日に燃料に加えることができる。
【0019】
一般に、式Iのそれぞれの化合物は、燃料組成物の全重量を基準として10重量%以下、特に0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上、更により好ましくは2重量%以上で、好ましくは8重量%まで、より好ましくは6重量%まで、更により好ましくは4重量%までの量で加える。
【0020】
本発明の燃料組成物にはまた、1種類以上の更なる洗浄剤を含ませることもできる。更なる洗浄剤を用いる場合には、燃料組成物は、多量の上記に記載したガソリン沸点範囲の炭化水素、少量の上記に記載した式Iの1種類以上の化合物、及び少量の1種類以上の更なる洗浄剤の混合物を含む。上述したように、上記で記載したキャリアも含ませることができる。ここで用いる「少量」という用語は、全燃料組成物の10重量%未満、好ましくは全燃料組成物の1重量%未満、より好ましくは全燃料組成物の0.1重量%未満を意味する。しかしながら、「少量」という用語は、少なくとも若干量、好ましくは全燃料組成物の少なくとも0.001重量%、より好ましくは少なくとも0.01重量%を含む。「多量」という用語は50重量%以上を意味する。
【0021】
1種類以上の更なる洗浄剤は、炭化水素に直接加えるか、炭化水素に加える前に、1種類以上のキャリアとブレンドするか、式Iの1種類以上の化合物とブレンドするか、或いは式Iの1種類以上の化合物及び1種類以上のキャリアとブレンドする。式Iの化合物は、精油所、ターミナル、小売店においてか、又は消費者によって加えることができる。
【0022】
最終燃料組成物中における1種類以上の更なる洗浄剤を含む燃料添加剤洗浄剤パッケージの添加率は、一般に、最終燃料組成物に基づいて0.007重量%〜0.76重量%の範囲である。燃料添加剤洗浄剤パッケージには、1種類以上の洗浄剤、曇り除去剤、腐食抑制剤、及び溶媒を含ませることができる。更に、時には低温における吸気弁の焼き付きの防止を助けるためにキャリア流動化剤を加えることができる。
【0023】
本発明における潤滑油組成物において用いる基油には、任意の鉱油、任意の合成油、又はこれらの混合物を含ませることができる。
無機起源の基油としては、溶剤精製又は水素化処理によって製造されるものを挙げることができる。
【0024】
好都合に用いることができる鉱油としては、パラフィン系オイル又はナフテン系オイル又は直鎖パラフィン、例えば、原油の常圧蒸留によって得た常圧残油の低圧蒸留によって得られる潤滑油留分を精製することによって製造されるものが挙げられる。
【0025】
好都合に用いることができる鉱油の例としては、Royal Dutch/Shell Groupの会員企業によって"HVI"、"MVIN"、又は"HMVIP"の名称で販売されているものが挙げられる。
好都合に用いることができる合成油の具体例としては、ポリ−α−オレフィン、エチレンとα−オレフィンのコオリゴマー、及びポリブテンのようなポリオレフィン、ポリ(エチレングリコール)及びポリ(プロピレングリコール)のようなポリ(アルキレングリコール)、ジ−2−エチルヘキシルセバケート及びジ−2−エチルヘキシルアジペートのようなジエステル、トリメチロールプロパンエステル及びペンタエリトリトールエステルのようなポリオールエステル、ペルフルオロアリールエーテル、シリコーンオイル、及びポリフェニルエーテルが挙げられる。かかる合成油は単一のオイル又は混合オイルとして好都合に用いることができる。
【0026】
また、Royal Dutch/Shell Groupの会員企業によって"XHVI"(商標)の名称で販売されているもののような、ワックスの水素化異性化によって製造されるタイプの基油を用いることもできる。
【0027】
また、潤滑油に、種々の機能を与えるのに必要な量の複数の通常の添加剤を含ませることもできる。これらの添加剤としては、無灰分散剤、金属又は過塩基化金属洗浄添加剤、耐摩耗添加剤、粘度指数調整剤、酸化防止剤、防錆剤、流動点降下剤、摩擦減少添加剤などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
好適な無灰分散剤としては、アルケニル基がC〜Cオレフィンから誘導されるポリアルケニル又はホウ素化ポリアルケニルスクシンイミド、特に5,000〜7,090の数平均分子量を有するポリイソブテニルを挙げることができるが、これらに限定されない。他の周知の分散剤としては、炭化水素置換無水コハク酸、例えばポリイソブテニル無水コハク酸の油溶性ポリオールエステル、並びに炭化水素置換無水コハク酸及び二置換アミノアルコールから誘導される油溶性オキサゾリン及びラクトンオキサゾリン分散剤が挙げられる。潤滑油は、通常は0.5〜5重量%の無灰分散剤を含む。
【0029】
好適な金属洗浄添加剤は、当該技術において公知であり、過塩基化油溶性カルシウム、マグネシウム、及びバリウムフェネート、硫化フェネート、及びスルホネート(特に、80〜300の全塩基数を有するC16〜C50アルキル置換ベンゼン又はトルエンスルホン酸)の1以上を挙げることができる。これらの過塩基化材料は、唯一の金属洗浄添加剤としてか、或いは中性形態の幾つかの添加剤と組み合わせて用いることができるが、金属洗浄添加剤全体は上記の全塩基数によって示される塩基度を有していなければならない。好ましくは、これらは、過塩基化マグネシウム硫化フェネート及び中性カルシウム硫化フェネート(C又はC12アルキルフェノールから得られる)の混合物で3〜6重量%の量で存在させる。
【0030】
好適な耐摩耗添加剤としては、合計で少なくとも5個の炭素原子を有する油溶性亜鉛ジヒドロカルビルジチオホスフェートを挙げることができるが、これらに限定されず、通常は1〜6重量%の量で用いる。
【0031】
好適な粘度指数調整剤又は粘度調整剤としては、ポリブテンのようなオレフィンポリマー、スチレンとイソプレン及び/又はブタジエンの水素化ポリマー及びコポリマー及びターポリマー、アルキルアクリレート又はアルキルメタクリレートのポリマー、アルキルメタクリレートとN−ビニルピロリドン又はジメチルアミノアルキルメタクリレートとのコポリマー、更にアルコール又はアルキレンポリアミンと反応させることができるエチレン及びプロピレンと無水マレイン酸のような活性モノマーの後グラフトポリマー、アルコール及びアミンと後反応させたスチレン−無水マレイン酸ポリマーなどが挙げることが、これらに限定されない。これらは、必要に応じて公知の配合技術にしたがって最終オイルにおいて所望の粘度範囲を与えるように用いる。
【0032】
好適な酸化抑制剤の例としては、2,6−ジ−tert−ブチルパラクレゾールのようなヒンダードフェノール、アミン硫化フェノール、及びアルキルフェノチアゾンが挙げられるが、これらに限定されない。通常は、潤滑油には、その有効性によって0.01〜3重量%の酸化抑制剤を含ませることができる。向上した耐酸化性及び臭気制御のためには、上記記載の配合物中に5重量%以下の酸化防止剤を含ませなければならないことが観察された。このようなものの1つの好適な例であるブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)又はジ−t−ブチル−p−クレゾールは、Rhein Chemie及びPMX Specialtiesなどの多くの供給者によって販売されている。他の好適な例は、Ciba Geigy CorpからのIrganox L-64である。
【0033】
防錆剤は0.1〜1重量%のような非常に少ない割合で用いることができ、好適な防錆剤は、無水ドデセニルコハク酸のようなC〜C30脂肪族コハク酸又は無水物によって例示される。消泡剤としては、通常は、0.01〜1重量%の量で存在するポリシロキサンシリコーンポリマーが挙げられるが、これに限定されない。
【0034】
流動点降下剤は、一般に、殆どの潤滑粘度の鉱油ベースの原料に関して0.01〜10.0重量%、より通常的には0.1〜1重量%の量で用いる。潤滑油組成物において通常的に用いられる流動点降下剤の実例としては、n−アルキルメタクリレート及びn−アルキルアクリレートのポリマー及びコポリマー、ジ−n−アルキルフマレート及び酢酸ビニルのコポリマー、α−オレフィンコポリマー、アルキル化ナフタレン、α−オレフィンとスチレン及び/又はアルキルスチレンのコポリマー又はターポリマー、スチレンジアルキルマレイン酸コポリマーなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
米国特許6,245,719において議論されているように、自動車、航空機、及び産業用途において用いる潤滑剤の酸化安定性及び有用性を向上させる種々の添加剤を用いることができる。これらの添加剤としては、固体不純物を凝集させるカルシウムフェネート、マグネシウムスルホネート、及びアルケニルスクシンイミド、無灰分散剤、金属洗浄剤などの組合せ、イオウ含有フェノール誘導体などの酸化抑制剤、酸化抑制剤など、又はこれらの混合物が挙げられる。
【0036】
本発明は種々の修正及び別の形態をとることができるが、その具体的な態様を例示の目的でここに詳細に記載して示す。それに対する詳細な記載は本発明を開示されている特定の形態に限定することを意図するものではなく、それどころか、本発明は、特許請求の範囲によって規定される本発明の精神及び範囲内の全ての修正、均等物、及び代替物をカバーする。以下の代表的な態様によって本発明を示す。これは例示のみのためであり、いかなるようにも特許請求された発明を限定するものと解釈すべきではない。
【0037】
試験方法:
HFRR条件:
流体体積:15mL±0.2mL;
流体温度:25℃±1℃;
浴表面積:6.0cm±1cm
ストローク長:1.0mm±0.02mm;
周波数:50Hz±1;
加えた負荷:200g±1g;
試験時間:75分間±0.1分間;
試験片:鋼材AISI E-52100;
ボール直径:6mm;
表面仕上げ(ボール):<0.05μmRa;
硬度(ボール):58〜66Rockwell;
表面仕上げ:<0.02μmRa;
硬度(プレート):190〜210Hv30。
【0038】
Cameron-Plint:
Plint TE/77高周波摩擦機を用いて境界摩擦係数の測定値を得た。ピンオンプレートの試験形状を用いた。試験プレートは焼鈍研磨ゲージ冷間加工工具鋼プレート(AISI-01;Rockwell Cスケール上で20の最大硬度)及びピン(16×6mm、高炭素鋼)であり、これを固定プレートに対する移動アーム上の適所に保持した。ベアリングの配列を通して往復ヘッドの頂部に負荷をかけた。プレート試験片を0.35〜0.45μmのRa粗度に表面研磨した(プレートは移動方向に表面研磨した)。試験片の調製においては、切削液は用いなかった。
【0039】
試験方法においては、新しい試験プレートをCameron Plint摩擦機上の試験片ホルダー内に配置し、可動アーム内にドエルピンを配置した。20mLの試験オイルを試料ボート内に配置した。次に、アームをプレート上に配置し、負荷ヨークを可動アーム上の適当な位置に配置し、コンピューターテストシーケンスを開始した。鋼製のピンを、15Hzの周波数で、鋼製プレート上において15mmの行程にわたって振動運動で動かした。(a)100℃、負荷50N、及び15Hzにおける慣らし運転を15分間行い;(b)100N及び15Hzにおける等温運転を15分間行い;(c)150℃に温度を上昇させ;そして(d)150℃における等温運転(負荷100N、15Hz)を15分間行う;ことから構成される慣らし運転手順を行った。摩擦係数値は、それぞれの温度に関して15分間の等温運転にわたって平均化した。
【0040】
【表1】

ASTM−D1094:
ASTM−D1094試験法は、航空機用ガソリン及びタービン燃料における水混和性成分の存在、並びに体積変化及び燃料−水界面に対するこれらの成分の効果を求めることをカバーする。
【0041】
燃料の試料を、標準的な技術を用い、室温において、慎重に清浄化したガラス容器内でホスフェート緩衝剤溶液と共に振盪する。ガラスシリンダーの清浄度を試験する。水性層の体積変化及び界面の出現は、燃料の水反応として捉える。
【0042】
小型牽引機(MTM):
小型牽引機(MTM)は、ボールオンディスク潤滑剤ベンチ試験であり、境界条件、遷移(混合)条件、及び弾性流体力学的条件下で摩擦を減少させる摩擦調整剤の能力を測定する。MTMは、コンピューター制御の精密牽引測定システムである。このユニットは、ボール及びディスクを独立して駆動する2つの直流モーターを用いる。異なる用途に関して広範囲のプロファイル(試験法)を調整することができる。摩擦調整剤に関して用いる条件によって、20Nの負荷、140℃の温度下での3000〜20mm/秒の20の連続ストライベック曲線を作成する。
【0043】
5W30 GF4モーターオイル:
以下の潤滑剤基準を満足する5W30 GF4モーターオイルを用いた。
これらの値は下記において見ることができる
−30℃冷クランキング値:最大で6600cP;
−35℃低温ポンピング:最大で60,000cP。
【0044】
30の値は、潤滑剤の100℃低剪断及び150℃高剪断を示す。これらの値は下記において見ることができる。
100℃低剪断:9.3〜12.5cST;
150℃高剪断:2.9cP・分。
【0045】
GF-4はAPIからのエネルギー節約等級である。API GF-4の等級は、American Petroleum Instituteから得ることができる。
ベース燃料:
試験において用いたベース燃料は、87 R+M/2レギュラーベース燃料であった。ベース燃料の物理特性は表IIにおいて見ることができる。
【0046】
【表2】

【実施例】
【0047】
実験用摩擦調整剤(それぞれ、実験FM1、実験FM2、実験FM3、実験FM4、実験FM5)を用いて実施例の試料を調製した。比較例3の試料は、商業的に入手できる摩擦調整剤(それぞれ、市販FM1、市販FM2、市販FM3)を用いて調製した。
【0048】
【表3】

上記の摩擦調整剤(実験FM1〜FM5)は、Huntsman Chemical Corporationから得た。市販摩擦調整剤は商業的供給源から購入した。
【0049】
実験用及び市販の摩擦調整剤を、表IIIにしたがって0.15重量%で100mLの87オクタン価のベース燃料に加えた。個々の試料をHFRR摩耗痕試験にかけた。図1のグラフIは、HFRR摩耗痕結果の詳細を示す。
【0050】
【表4】

図1(0.15重量%摩擦調整剤87オクタン価ベース燃料HFRR摩耗痕結果)は、ベース燃料に関するHFRR摩耗痕の減少における実験用及び市販の摩擦調整剤の応答の詳細を示す。図1のデータから、ベース燃料摩耗痕の減少に対する構造応答を引き出すことができる。ブチレンオキシド又はエチレンオキシドのいずれかのより高い含量は、ベース燃料の摩耗痕の減少において小さい影響を有する傾向がある。しかしながら、実験5(ここではブチレンオキシドが1部であり、エチレンオキシドが2部である)のようにブチレンオキシド及びエチレンオキシドを減少させた場合には、摩耗痕の最大の減少が観察され、これは2つの市販の摩擦調整剤のいずれかから得られる減少と同等である。
【0051】
実施例1〜4及び比較例1〜12:
表IVに示す全ての摩擦調整剤を、新品及び使用後(5000マイル)の100gの5W30 GF4モーターオイルに1重量%の濃度で加えた。個々の添加剤を、130℃及び100Nの負荷におけるCameron-Plint試験にかけた。図2(新品の5W30 GF4潤滑剤中の1重量%摩擦調整剤に関するCameron-Plintデータ)及び図3(使用後(5000マイル)の5W30 GF4潤滑剤中の1重量%摩擦調整剤に関するCameron-Plintデータ)のグラフは、実施例からの境界係数値の詳細を示す。
【0052】
【表5】

図2及び3は、新品及び使用後の潤滑剤の両方における種々の摩擦調整剤(実験用及び市販)の応答を明確に示す。図2においては、3つ(2つの実験用及び1つの市販)の摩擦調整剤のみが、5W30 GF4モーターオイルの潤滑能力に95%統計的に同等であった。しかしながら、5つ(3つの実験用及び2つの市販)の摩擦調整剤は、全ての場合において新品の潤滑剤について摩擦係数を95%よりも大きく増加させた。
【0053】
しかしながら、同じ実験用の摩擦調整剤及び市販の摩擦調整剤を使用後(5,000マイル)の5W30 GF4潤滑剤に加えると、異なる応答が認められた。殆どの摩擦調整剤(実験用及び市販)は、全てが同じ程度ではないが、使用後の潤滑剤の摩擦係数を減少させた。最も低いEO及びBOの量を有する実験用の摩擦調整剤:実験4及び5は、他の実験用の摩擦調整剤及び市販の摩擦調整剤と比べて使用後の潤滑剤の摩擦係数を最も大きく減少させた。
【0054】
表Vに示す全ての摩擦調整剤を、1重量%の濃度で新品及び使用後(5000マイル)の100gの5W30 GF4モーターオイルに加えた。140℃及び20Nの負荷における小型牽引機(MTM)試験を用いて、個々の添加剤を評価した。図4、5、及び6におけるグラフは、新品及び使用後(5000マイル)の両方の5W30 GF4潤滑剤における実験用及び市販の摩擦調整剤のMTM試験からの境界、混合、及び水力学的摩擦領域の詳細を示す。
【0055】
【表6】

図4〜6(新品及び使用後(5000マイル)の5W30 GF4中の摩擦調整剤に関するMTM境界領域摩擦係数(図4);新品及び使用後(5000マイル)の5W30 GF4潤滑剤中の摩擦調整剤に関するMTM混合領域摩擦係数(図5);新品及び使用後(5000マイル)の5W30 GF4潤滑剤中の摩擦調整剤に関するMTM弾性流体力学的領域摩擦係数(図6))は、摩擦調整剤が潤滑剤の境界、混合、及び弾性流体力学的摩擦係数値に影響を与えることができるが、殆どの摩擦の減少は境界及び混合領域において起こり、弾性流体力学的領域においては小さい減少しか起こらないことを明確に示す。より重要なことには、実験FM4及び5は上記の3つの領域に明らかに最も大きく影響を与える2つであり、実際に、全てのFMは新品の潤滑剤において働くと思われるが、市販FM1は新品の潤滑剤において最も良好に働くと思われる。
【0056】
最後に、摩擦調整剤は、水が存在する可能性がある場合にはガソリンと水との間で多少の乳化を引き起こす傾向を有する。したがって、摩擦を減少させ、同時に水をはじく摩擦調整剤を開発することは有利であろう。下表Vは、5つの実験用の摩擦調整剤及び1つの市販の摩擦調整剤について行ったASTM−D1094撥水試験からの結果を示す。最初の混合の後に、ガソリン/水試料を、5分、1時間の時点で観察し、次に24時間の時点で再び振盪して再評価した。ガソリン層/水層/及びガソリン/水層の層間に関して試料の等級付けを行った。この評価のために用いた等級は、下記及びASTM−D1094手順において見ることができる。
【0057】
【表7】

表Vから、全ての実験用の摩擦調整剤は、試験した3つの領域全てにおいて市販のFM1添加剤よりも撥水が優れていることが明らかである。
【0058】
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)多量の基油、及び(b)アルキル基が8〜22個の範囲の炭素原子を有し、エチレンオキシドとブチレンオキシドが3:1〜2:1の範囲の比である、少量の少なくとも1種類のブチレンオキシド変性アルキルビスエトキシ化モノアミンを含む組成物。
【請求項2】
ブチレンオキシド変性アルキルビスエトキシ化モノアミンが末端のエチレンオキシド基及びブチレンオキシド基の両方を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
アルキル基が12〜18個の範囲の炭素原子を有する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
基油がガソリン沸点範囲の複数の炭化水素の混合物である、請求項1に記載の燃料組成物。
【請求項5】
ブチレンオキシド変性アルキルビスエトキシ化モノアミンが末端のエチレンオキシド基及びブチレンオキシド基の両方を含む、請求項4に記載の燃料組成物。
【請求項6】
アルキル基が12〜18個の範囲の炭素原子を有する、請求項4又は5に記載の燃料組成物。
【請求項7】
ブチレンオキシド変性アルキルビスエトキシ化モノアミンが次式I:
【化1】

(式中、Rは8〜22個の炭素原子を有するアルキル基であり、Aは1〜5の整数であり、Bは1〜5の整数であり、Xは1〜5の整数であり、Yは0〜5の整数である)
を有する、請求項4に記載の燃料組成物。
【請求項8】
Rが16〜18個の炭素原子を有するアルキル基である、請求項7に記載の燃料組成物。
【請求項9】
エンジン内で請求項4〜8のいずれかに記載の燃料組成物を燃焼させることを含む、内燃エンジンにおける摩擦係数を減少させる方法。
【請求項10】
基油が無機及び/又は合成基油である、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項11】
ブチレンオキシド変性アルキルビスエトキシ化モノアミンが次式I:
【化2】

(式中、Rは8〜22個の炭素原子を有するアルキル基であり、Aは1〜5の整数であり、Bは1〜5の整数であり、Xは1〜5の整数であり、Yは0〜5の整数である)
を有する、請求項10に記載の潤滑油組成物。
【請求項12】
Rが12〜18個の炭素原子を有するアルキル基である、請求項11に記載の潤滑油組成物。
【請求項13】
ブチレンオキシド変性アルキルビスエトキシ化モノアミンが末端のエチレンオキシド基及びブチレンオキシド基の両方を含む、請求項10〜12のいずれかに記載の潤滑油組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−502491(P2013−502491A)
【公表日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−525626(P2012−525626)
【出願日】平成22年8月16日(2010.8.16)
【国際出願番号】PCT/US2010/045610
【国際公開番号】WO2011/022327
【国際公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(390023685)シエル・インターナシヨネイル・リサーチ・マーチヤツピイ・ベー・ウイ (411)
【氏名又は名称原語表記】SHELL INTERNATIONALE RESEARCH MAATSCHAPPIJ BESLOTEN VENNOOTSHAP
【Fターム(参考)】