説明

燃料容器及び固形燃料

【課題】固形燃料の燃焼末期における温度上昇を抑え、固形成分に含まれる石鹸成分の燃焼を抑制することができる燃料容器を提供する。
【解決手段】固形燃料20を燃焼させる際に用いられる燃料容器10において、固形燃料20の燃焼末期に発生する熱を吸収する吸熱体12を備え、固形燃料20が収容される容器本体11の内側底面部に吸熱体12を設ける。このような構成とすることで、固形燃料20の燃焼末期に発生した熱を吸熱体12で吸収し、燃焼末期における固形燃料自体及び固形燃料近傍の急激な温度上昇を抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形燃料の燃焼に際して用いられる燃料容器、及び固形燃料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯用あるいは食卓用の簡易燃料として、ステアリン酸等の脂肪酸のアルカリ金属塩(以下、石鹸成分という)からなる基材に、メタノール等の燃料を含有させた固形燃料が使用されている。
【0003】
このような固形燃料は、近年、これまで主に使用されてきた一人用鍋以外に、多人数用の大型鍋の温めに用いられることが多くなってきており、このことに伴って、固形燃料には比較的強い火力と長い燃焼時間が要求されるようになってきている。
【0004】
しかし、比較的大きな固形燃料を使用したり、複数個の固形燃料を1度に使用したりして火力を強くすると、固形燃料中の石鹸成分が燃えて煙やススが発生し、鍋が汚れたり、周囲に異臭が発散されたりすることがある。
【0005】
固形燃料に含有されているメタノール等の燃料が燃焼する燃料初期から中期においては、メタノール等の燃料の蒸発熱による吸熱により、固形燃料自体及び固形燃料近傍の温度上昇が抑えられるため、石鹸成分が燃えることは稀であるが、メタノール等の燃料が燃え尽きる燃焼末期においては、メタノール等の燃料の蒸発熱による吸熱の効果が小さくなり、固形燃料近傍の温度が上昇するため、上記したように、石鹸成分が燃えて煙やススが発生し、鍋が汚れたり、周囲に異臭が発散されたりすることがある。さらには、固形燃料を収容している燃料容器に焼け焦げた石鹸成分が密着し、剥がれなくなってしまうことがある。
【0006】
そこで、燃料容器への焼け焦げた石鹸成分の密着防止として、固形燃料の下側に、アルミニウム箔等が付けられたり、異臭発生防止として、固形燃料に、香料剤が含有されたりする(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−330773号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、大きな固形燃料の下側にアルミニウム箔等を付けることは、固形燃料の原材料費や製造費の増加を招くため、好ましくない場合がある。また、固形燃料に香料剤を含有させた場合であっても、燃焼末期の温度上昇が極めて高いと、石鹸成分が完全に焼け焦げてしまうため、香料剤による異臭発生防止効果を十分に得ることができない。
【0008】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであって、固形燃料の燃焼末期における温度上昇を抑え、固形燃料に含まれる石鹸成分の燃焼を抑制することが可能な燃料容器及び固形燃料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る燃料容器は、固形燃料を燃焼させる際に用いられる燃料容器であって、前記固形燃料が載置されるように形成され、前記固形燃料の燃焼末期に発生する熱を吸収する吸熱体を備え、前記固形燃料が収容される容器本体の内側底面部に前記吸熱体が設けられていることを特徴とする。なお、本明細書中において、燃焼末期とは、固形燃料中に含まれる石鹸成分以外の成分、具体的には、メタノール等の燃料が約90%燃えた後、自然消火するまでの期間をいう。また、容器本体の内側底面部とは、具体的には、容器本体において、固形燃料が載置されうる部分をいう。
【0010】
また、前記吸熱体は、鉄、鋳鉄、ステンレス、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金から選ばれた金属製の1種または複数種からなるものであってよい。また、陶器、磁器、窒化アルミニウム、炭化ケイ素等のセラミックから選ばれた1種または複数種からなるものであってもよい。
【0011】
この構成によれば、固形燃料の燃焼末期に発生した熱が吸熱体に吸収される、具体的には、固形燃料の燃焼末期に発生した熱が固形燃料からの熱伝導によって吸熱体に奪われるので、燃焼末期における固形燃料自体及び固形燃料近傍の急激な温度上昇を抑えることができる。すなわち、固形燃料中の石鹸成分の燃焼を抑えることができるので、煙やススの発生による鍋の汚れや周囲への異臭発散を防止することができる。
【0012】
また、本発明に係る燃料容器において、前記吸熱体は、板状に形成されていてもよい。或いは、本発明に係る燃料容器において、前記吸熱体は、前記固形燃料が収容される上部が開口された容器状に形成されていてもよい。
【0013】
また、本発明に係る燃料容器では、前記容器本体内に貯留された液体に浸された前記吸熱体に、前記固形燃料が載置されてもよい。
【0014】
この構成によれば、固形燃料の燃焼末期に発生し、熱伝導により吸熱体に伝わった熱を、さらに、容器本体に貯留された液体の液温上昇及び蒸発熱により奪うことができるので、燃焼末期における固形燃料自体及び固形燃料近傍の急激な温度上昇を確実に抑えることができる。
【0015】
また、本発明に係る固形燃料は、底面部に、前記固形燃料の燃焼末期に発生する熱を吸収する吸熱体が設けられていることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、固形燃料の燃焼末期に発生した熱が固形燃料の底面部に設けられた吸熱体に吸収される、具体的には、固形燃料の燃焼末期に発生した熱が熱伝導によって底面部の吸熱体に奪われるので、燃焼末期における固形燃料自体及び固形燃料近傍の急激な温度上昇を抑えることができる。すなわち、固形燃料中の石鹸成分の燃焼を抑えることができるので、煙やススの発生による鍋の汚れや周囲への異臭発散を防止することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る燃料容器又は固形燃料によれば、固形燃料の燃焼末期に発生した熱が吸熱体に吸収されるので、燃焼末期における固形燃料自体及び固形燃料近傍の急激な温度上昇を抑えることができる。すなわち、固形燃料中の石鹸成分の燃焼を抑えることができるので、煙やススの発生による鍋の汚れや周囲への異臭発散を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して実施の形態を説明する。
【0019】
<実施の形態1>
図1は、本発明の実施の形態1に係る燃料容器の概略構成を示す透視側面図である。 また、図2は、図1で示した燃料容器の容器本体の(a)底面図及び(b)側面図であり、図3は、図1で示した燃料容器の吸熱体の(a)底面図及び(b)側面図である。さらに、図4は、図1で示した燃料容器の使用例を示す透視側面図である。
【0020】
本発明の実施の形態1に係る燃料容器10は、固形燃料20が収容される容器本体11と、固形燃料20の燃焼末期に発生する熱を吸収する吸熱体12とを備える。
【0021】
容器本体11は、固形燃料20を収容することが可能な上部が開口された容器状、具体的には、有底の円筒状に形成されている。
【0022】
吸熱体12は、固形燃料20を載置することが可能な円板状に形成されており、容器本体11の内側底面部に載置される構成とされている。
【0023】
すなわち、本実施の形態に係る燃料容器10は、容器本体11の内側底面部に載置された円板状の吸熱体12の上に、固形燃料20が載置される構成とされている。
【0024】
吸熱体12の材質は、固形燃料20から吸熱体12への熱伝導性が良く、熱に強い(熱による変形や変質がない)ものであれば、いずれの材質であってもよく、例えば、鉄、鋳鉄、ステンレス、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金から選ばれた金属製の1種または複数種からなるものを好適に使用することができる。また、陶器、磁器、窒化アルミニウム、炭化ケイ素等のセラミックから選ばれた1種また複数種からなるものについても好適に使用することができる。
【0025】
吸熱体12の底面積の大きさは、燃焼末期における石鹸成分(固形燃料20)が溶融することによって吸熱体12の上に拡がった石鹸成分が吸熱体12からこぼれ落ちない十分な大きさとされている。具体的には、吸熱体12の大きさは、容器本体11の底面積の25%以上の底面積を有する、直径に換算すると、容器本体11の直径d1の50%以上の直径d2を有する大きさとされている。なお、吸熱体12の底面積の大きさは、上記したように、容器本体11の内側底面部に吸熱体12を載置することができるよう、容器本体11の底面積の100%以下とされている。
【0026】
吸熱体12の厚みtは、固形燃料20の燃焼末期に発せられる熱を十分に吸収することができる熱容量が吸熱体12に備わるように、適宜調整される。例えば、固形燃料20の総重量が100gである場合には、13J/K以上の熱容量が吸熱体12に備わるように、吸熱体12の厚みが調整される。
【0027】
固形燃料20としては、一般に用いられる石鹸成分を基材とする固形燃料20をいずれも使用することができる。また、吸熱体12に一度に載置されて容器本体11に収容される固形燃料20の数は、特に限定されるものではなく、複数個の固形燃料20を吸熱体12に載置して、それらの固形燃料20を同時に燃焼させてもよい。
【0028】
また、使用される固形燃料20の総重量(複数個の固形燃料20を同時に使用する場合は、それら固形燃料20の合計)は、容器本体11に収容することが可能であれば、特に制限はなく、用途に合わせて適宜の重量に調整されてよいが、本実施の形態に係る燃料容器10の石鹸成分燃焼抑制効果は、固形燃料20の総重量が50g以上の場合において、特に有効である。これは、固形燃料20の総重量が50g未満である場合は、火力が弱く、燃焼末期に発生する熱も少ないため、本実施の形態に係る燃料容器10によらなくても、石鹸成分が燃焼するほどに、固形燃料自体及び固形燃料近傍の温度が上昇することがないからである。また、例えば、食卓用として、料理の調理や保温に使用される場合、固形燃料20の総重量は、1000g以下であることが望ましい。固形燃料20の総重量が1000gを超えると、食卓用としては強すぎる火力となってしまう。
【0029】
上記したようにして構成される本実施の形態に係る燃料容器10は、図4に示すように、例えば、開口上部に鍋50が掛けられたコンロ40の中央底部に載置されて使用される。そして、吸熱体12の上に載置した固形燃料20を燃焼させることで、その炎により、鍋50の中の料理を加熱したり、保温したりすることができる。この際、固形燃料20の燃焼末期に発せられる熱は、熱伝導により固形燃料20から吸熱体12に移動する。言い換えれば、固形燃料20の燃焼末期に発せられる熱は吸熱体12に吸収される。
【0030】
したがって、本実施の形態に係る燃料容器10によれば、固形燃料20の燃焼末期に生じる固形燃料自体及び固形燃料近傍の温度上昇を抑え、固形燃料20に含まれる石鹸成分の燃焼を防止することができる。
【0031】
[実施例1〜6、比較例1]
本実施の形態に係る燃料容器10を、コンロ40の中央底部に置き、さらに、コンロ40の開口上部に1000gの水を入れた鍋50を掛けて、固形燃料20の燃焼試験を実施した。なお、燃焼試験は、固形燃料20と吸熱体12との間に熱電対を付け、この部分における最大到達温度、すなわち、固形燃料20に火がついてから自然消火するまでの間の最大到達温度を測定することにより実施した。加えて、燃焼中及び消火後の煙の発生状況、及び消火後の石鹸成分(固形燃料20)の状態を評価した。
【0032】
鍋50は、口径が175mm、高さが85mmのステンレス製の鍋を使用した。また、固形燃料20は、直径がΦ64mm、高さが41mm、重さが100gの円柱状の固形燃料20を使用した。
【0033】
容器本体11としては、直径d1がΦ90mm、高さhが50mm、厚みが0.4mmの有底の円筒状に形成された鉄製のものを用意した。
【0034】
吸熱体12としては、直径d2がΦ70mmの円板状に形成され、厚みtが1.5mm、5.0mm、9.0mmに設定されたアルミニウム製(実施例1〜3)の吸熱体12と、厚みtが1.0mm、5.0mm、9.0mmに設定された鉄製(実施例4〜6)の吸熱体12をそれぞれ用意した。
【0035】
また、比較対象として、吸熱体12を使用せずに容器本体11に直に固形燃料20を載置した場合(比較例1)の燃焼試験を実施した。なお、比較例1では、吸熱体12を使用しないため、固形燃料20と容器本体11との間に熱電対を付け、この部分の最大到達温度を測定した。この結果を表1に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
表1中の評価事項に関する評価基準は、次のとおりである。
【0038】
1.煙等の発生状況
固形燃料20の燃焼中の煙の発生状況を官能にて観察し、下記の通り評価した。
◎:ほとんど煙が発生しない
○:僅かに煙が発生するが、異臭はない
△:煙が発生し、僅かに異臭がする
×:黒煙が発生し、極めて強い異臭がする
【0039】
2.消火後の石鹸成分の状態
消火後の石鹸成分(固形成分)の状態を目視観察し、下記の通り評価した。
◎:焦げはほとんど見られなかった。
○:表面に僅かに焦げが見られた。
△:表面に多量の焦げが見られた。
×:完全に燃焼し、炭化した。
【0040】
表1の結果から、吸熱体12を備える本実施の形態に係る実施例1〜6の最大到達温度は、吸熱体12を備えない比較例1よりも小さいことが分かる。
【0041】
また、実施例1〜6では、異臭が発生せず、消火後の石鹸成分(固形燃料20)も表面に僅かに焦げが見られる程度であることから、石鹸成分(固形燃料20)が完全に燃焼してしまう比較例1と比べて、石鹸成分はほとんど燃焼していないことが分かる。
【0042】
また、実施例1〜6の比較より、直径d2の大きさが同じ同一の材質内では吸熱体12の厚みが厚いほど最大到達温度が低くなる、すなわち、吸熱体12の熱容量が大きいほど最大到達温度が低くなる傾向にあることが分かった。このことは、最大到達温度を抑えて石鹸成分の燃焼を防ぐためには、燃焼末期に急激に温度が上昇する固形燃料20から熱を奪うことができ、且つ吸熱体12自体の温度が急激に上昇しないだけの熱容量が吸熱体12に必要であることを示している。具体的には、100gの固形燃料20を使用する場合には、13J/K以上、より好ましくは、46J/K以上の熱容量が吸熱体12に必要であることを示している。
【0043】
なお、使用される固形燃料20の重量が大きくなるほど燃焼により発生する熱量は大きくなるため、使用される固形燃料20の重量が大きくなるほど吸熱体12に必要となる熱容量は大きくなると予想される。よって、吸熱体12には、使用される固形燃料1g当たり、0.13J/K以上、より好ましくは、0.46J/K以上の熱容量が必要となると考えられる。
【0044】
また、実施例1〜6による燃焼試験では、メタノール等の燃料が燃え尽き、石鹸成分の燃焼が開始しうる燃焼末期において、固形燃料20の石鹸成分の溶融現象が見られた。すなわち、石鹸成分の溶融化により固形燃料(石鹸成分)20と吸熱体12との接触面積が拡大した。一般に、固形燃料20と吸熱体12との接触面積が小さいほど、固形燃料20から吸熱体12への熱伝導性は減少すると考えられるが、前述したように、石鹸成分の燃焼温度に到達する前に、石鹸成分(固形燃料20)の溶融化が開始して、吸熱体12の上に石鹸成分(固形燃料20)が拡がるため、本実施の形態に係る燃料容器10によれば、使用される固形燃料20の径(吸熱体12と接触する部分の面積)の大きさにほとんど関係なく、石鹸燃焼抑制効果を得ることができる。
【0045】
<実施の形態2>
図5は、本発明の実施の形態2に係る燃料容器の概略構成を示す透視側面図である。
【0046】
本発明の実施の形態2に係る燃料容器10は、実施の形態1に係る燃料容器10とほぼ同様の構成とされており、固形燃料20が収容される容器本体11と、固形燃料20の燃焼末期に発生する熱を吸収する吸熱体12とを備える。以下、主に実施の形態1と異なる点について説明する。
【0047】
容器本体10は、実施の形態1と同様に、上部が開口された容器状、具体的には、有底の円筒状に形成されている。また、容器本体10の大きさは、以下に示す容器状に形成された吸熱体12の底面部を収容することが可能な大きさとされている。
【0048】
吸熱体12は、固形燃料20を収容することが可能な上部が開口された容器状、具体的には、有底の円筒状に形成されており、容器本体11の内側底面部に載置される構成とされている。なお、吸熱体12の材質としては、実施の形態1と同様のものを使用することができる。
【0049】
すなわち、本実施の形態に係る燃料容器10は、容器本体11の内側底面部に載置された容器状の吸熱体12の内側底面部に、固形燃料20が載置される構成とされており、これにより、実施の形態1と同様に、固形燃料20の燃焼末期に発生した熱は、吸熱体12に吸収される、具体的には、熱伝導により固形燃料20から吸熱体12へ奪われる。
【0050】
このような構成の本実施の形態では、吸熱体12が容器状に形成されているため、燃焼末期における石鹸成分(固形燃料20)の溶融化によって吸熱体12の上に拡がった石鹸成分が吸熱体12からこぼれ落ちるおそれがない。よって、吸熱体12の大きさは、固形燃料20を収容することができ、且つ容器本体11の内側底面部に載置することが可能な大きさであれば、いずれの大きさであってよい。
【0051】
また、本実施の形態に係る燃料容器10は、容器本体11に貯留された液体60に、容器状の吸熱体12の底面部が浸される構成とされており、熱伝導により吸熱体12へと移動した熱を、容器本体11に貯留された液体60の液温上昇及び蒸発熱により奪うことができる構成とされている。
【0052】
このような本実施の形態では、熱伝導により吸熱体12に奪われた熱が、さらに、容器本体11に貯留された液体60に奪われるため、吸熱体12のみで熱を吸収する実施の形態1と比べ、吸熱体12に備えられる熱容量は小さくてよい。すなわち、吸熱体12の厚みは、実施の形態1に係る燃料容器10と比べて、薄くされていてよい。
【0053】
固形燃料20としては、実施の形態1で示した固形燃料20と同様の固形燃料20を使用することができる。
【0054】
また、容器本体11に貯留される液体60は、その液温上昇及び蒸発熱により固形燃料20の燃焼末期に発生する熱を奪うことができるものであれば、特に限定されず、例えば、水、水を溶媒としたもの(食塩水、洗剤、芳香剤)、着火点の低い油(マシン油、スピンドル油)、ゲル状のもの(寒天)等を使用することができる。
【0055】
上記したようにして構成される燃料容器10は、実施の形態1(図4参照)と同様に、例えば、開口上部に鍋が掛けられたコンロの中央底部に載置されて使用される。そして、容器状の吸熱体12に収容されている固形燃料20を燃焼させることで、その炎により、鍋の中の料理を加熱したり、保温したりすることができる。この際、燃焼末期に固形燃料20から発せられる熱は、まず、熱伝導により吸熱体12に奪われ、さらに、容器本体11に貯留された液体60の液温上昇及び蒸発熱によって奪われる。すなわち、燃焼末期に固形燃料20から発せられる熱は、吸熱体12を介して、容器本体11に貯留された液体60に吸収される。
【0056】
したがって、固形燃料20の燃焼末期に生じる固形燃料自体及び固形燃料近傍の温度上昇を抑え、固形燃料20に含まれる石鹸成分の燃焼を防止することができる。
【0057】
[実施例7]
本実施の形態に係る燃料容器10を、実施例1〜6と同様に(図4参照)、コンロの中央底部に置き、さらに、コンロの開口上部に1000gの水を入れた鍋を掛けて、固形燃料20の燃焼試験を実施した。なお、燃焼試験は、固形燃料20と吸熱体12との間に熱電対を付け、この部分の最大到達温度、具体的には、固形燃料20に火がついてから自然消火するまでの間の最大到達温度を測定することにより実施した。加えて、実施例1〜6と同様に、燃焼中及び消火後の煙の発生状況、及び消火後の石鹸成分(固形燃料20)の状態を評価した。
【0058】
鍋及び固形燃料20は、実施例1〜6で使用したものと同様のものを使用した。
【0059】
容器本体11としては、直径がΦ100mm、高さが25mm、厚みが0.2mmの有底の円筒状に形成された鉄製のものを用意した。また、容器本体11には25gの水60を貯留させ、この水60に吸熱体12の底面部を浸した。
【0060】
吸熱体12としては、直径がΦ90mm、高さが50mm、厚みが0.4mmの有底の円筒状に形成された鉄製のものを用意した。
【0061】
吸熱体12を使用しない上記した比較例1との比較結果を表2に示す。なお、表2中の評価事項に関する評価基準は、実施例1〜6でした評価基準と同じである。
【0062】
【表2】

【0063】
表2の結果から、本実施の形態に係る実施例7の最大到達温度は、吸熱体12を備えない比較例1と比べて極めて小さいことが分かる。また、実施例7では、煙が発生せず、消火後の固形燃料20にも焦げはほとんど見られないことから、固形燃料20に含まれる石鹸成分はほとんど燃焼しなかったことが分かる。
【0064】
<実施の形態3>
図6は、本発明の実施の形態3に係る燃料容器の概略構成を示す透視側面図である。
【0065】
本発明の実施の形態3に係る燃料容器10は、実施の形態1及び2に係る燃料容器10とほぼ同様の構成とされており、固形燃料20が収容される容器本体11と、固形燃料20の燃焼末期に発生する熱を吸収する吸熱体12とを備える。以下、主に実施の形態1及び2と異なる点について説明する。
【0066】
容器本体10は、実施の形態1と同様に、上部が開口された容器状、具体的には、有底の円筒状に形成されている。
【0067】
吸熱体12は、実施の形態1と同様に、固形燃料20を載置することが可能な円板状に形成されており、容器本体11の内側底面部に載置される構成とされている。なお、吸熱体12の材質としては、実施の形態1及び2と同様のものを使用することができる。
【0068】
すなわち、本実施の形態に係る燃料容器10は、容器本体11の内側底面部に載置された円板状の吸熱体12の上に、固形燃料20が載置される構成とされており、これにより、実施の形態1及び2と同様に、固形燃料20の燃焼末期に発生した熱は、吸熱体12に吸収される、具体的には、熱伝導により固形燃料20から吸熱体12へ奪われる。
【0069】
また、本実施の形態に係る燃料容器10は、容器本体11に貯留された液体60に、円板状の吸熱体12の一部が浸される構成とされており、実施の形態2と同様に、熱伝導により吸熱体12へと移動した熱を、容器本体11に貯留された液体の液温上昇及び蒸発熱により奪うことができる構成とされている。なお、容器本体11に貯留される液体60には、実施の形態2と同様のものを使用することができる。
【0070】
このような構成の本実施の形態では、容器本体11に液体60が貯留される構成とされているため、燃焼末期における石鹸成分(固形燃料20)の溶融化によって吸熱体12の上に拡がった石鹸成分が円板状の吸熱体12からこぼれ落ちたとしても、石鹸成分は容器本体11に貯留された液体の中に落ちるので、容器本体11の内側底面を汚すことはない。
【0071】
したがって、本実施の形態において、吸熱体12の底面積の大きさは、固形燃料20の底面中央部Pを支持することができる大きさであれば、いずれの大きさであってもよく、容器本体11の底面積の25%よりも少ない面積であってもよい。
【0072】
また、容器本体11に貯留される液体の液面Lは、固形燃料20が濡れないように、吸熱体12の上に載置されている固形燃料20の底面B2よりも下方に位置することが好ましい。よって、円板状の吸熱体12の厚さは、容器本体11に貯留される液体60の貯留量に応じて、容器本体11の底面B1よりも高い位置に固形燃料20の底面B2が位置するように、適宜調整される。
【0073】
また、固形燃料20としては、実施の形態1及び2で示した固形燃料20と同様の固形燃料20を使用することができる。
【0074】
上記したようにして構成される燃料容器10は、実施の形態1及び2と同様に(図1参照)、例えば、開口上部に鍋が掛けられたコンロの中央底部に載置されて使用される。そして、吸熱体12の上に載置された固形燃料20を燃焼させることで、その炎により、鍋の中の料理を加熱したり、保温したりすることができる。この際、燃焼末期に固形燃料20から発せられる熱は、まず、熱伝導により吸熱体12に奪われ、さらに、容器本体11に貯留された液体60の液温上昇及び蒸発熱によって奪われる。すなわち、燃焼末期に固形燃料20から発せられる熱は、吸熱体12を介して、容器本体11に貯留された液体60に吸収される。
【0075】
したがって、固形燃料20の燃焼末期に生じる固形燃料自体及び固形燃料近傍の温度上昇を抑え、固形燃料20に含まれる石鹸成分の燃焼を防止することができる。
【0076】
[実施例8]
本実施の形態に係る燃料容器10を、実施例1〜6と同様に(図4参照)、コンロの中央底部に置き、さらに、コンロの開口上部に1000gの水を入れた鍋を掛けて、固形燃料20の燃焼試験を実施した。なお、燃焼試験は、固形燃料20と吸熱体12との間に熱電対を付け、この部分の最大到達温度、具体的には、固形燃料20に火がついてから自然消火するまでの間の最大到達温度を測定することにより実施した。加えて、上記した実施例1〜7と同様に、燃焼中及び消火後の煙の発生状況、及び消火後の石鹸成分(固形燃料20)の状態を評価した。
【0077】
鍋及び固形燃料20は、実施例1〜7で使用したものと同様のものを使用した。
【0078】
容器本体11としては、直径がΦ90mm、高さが50mm、厚みが0.4mmの有底の円筒状に形成された鉄製のものを用意した。また、容器本体11には25gの水を貯留させた。
【0079】
吸熱体12としては、直径がΦ24mm、厚みが4mmの円板状に形成されたアルミニウム製のものを使用した。
【0080】
吸熱体12を備えていない上記した比較例1との比較結果を表3に示す。なお、表3中の評価事項に関する評価基準は、実施例1〜6でした評価基準と同じである。
【0081】
【表3】

【0082】
表3の結果から、本実施の形態に係る実施例8の最大到達温度は、吸熱体12を備えていない比較例1と比べて極めて小さいことが分かる。また、実施例8では、煙が発生せず、消火後の固形燃料20にも焦げはほとんど見られなことから、固形燃料20に含まれる石鹸成分はほとんど燃焼しなかったことが分かる。
【0083】
また、表2及び3で示される結果を比較したところ、固形燃料20と水60との間が吸熱体12により完全に区切られておらず、液体60の蒸発熱による吸熱効果を直接受けることができる実施例8(図6参照)の方が、固形燃料20と水60との間が容器状の吸熱体12により区切られた実施例7(図5参照)よりも、最大到達温度が低いことが分かった。
【0084】
なお、実施の形態1乃至3において、容器本体11の形状は、有底の円筒状とされているが、固形燃料20を収容することが可能な形状であれば、特にその形状は限定されず、例えば、有底の三角筒状であっても、有底の四角筒状であっても、それ以外の有底の筒状であってもよい。
【0085】
また、実施の形態1乃至3において、吸熱体12の形状は、円板状或いは有底の円筒状とされているが、固形燃料20を載置することが可能な形状であれば、特にその形状は限定されず、円板状、三角板状、四角板状、それ以外の多角板状等の板状であっても、皿状であっても、有底の筒状といった上部が開口された容器状であってもよい。ただし、吸熱体12の底面の形状は、容器本体11の底面の形状に合わせた形状とされることが好ましい。また、板状とされる場合、その板厚は、0.5mm以上20mm以下であることが好ましい。20mmを超える場合には、重くなり取り扱い(持ち運び等)が不便であるのに加え、熱が吸熱体に取られすぎるため、好ましくない。
【0086】
また、容器本体11から吸熱体12を取り出して、吸熱体12に付着した固形燃料20の石鹸成分を洗浄することができるように、実施の形態1乃至3において、吸熱体12は容器本体11の内側底面部に着脱自在に載置される構成とされているが、容器本体11の内側底面部に吸熱体12が設けられる構成であれば、特にその構成は限定されず、例えば、容器本体11の内側底面部と一体に吸熱体12が形成されていてもよい。
【0087】
<実施の形態4>
本発明の実施の形態4に係る固形燃料(不図示)は、固形燃料の底面部に燃焼末期に発生する熱を吸収する吸熱体が設けられている。このような底面部に吸熱体が設けられた固形燃料によれば、実施の形態1〜3で示したような吸熱体を備えた燃料容器を用意しなくても、固形燃料の底面部に設けられた吸熱体で、燃焼末期に発生した熱を吸収し、燃焼末期における固形燃料自体及び固形燃料近傍の急激な温度上昇を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の実施の形態1に係る燃料容器の概略構成を示す透視側面図である。
【図2】図1で示した燃料容器の容器本体の(a)底面図及び(b)側面図である。
【図3】図1で示した燃料容器の吸熱体の(a)底面図及び(b)側面図である。
【図4】図1で示した燃料容器の使用例を示す透視側面図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係る燃料容器の概略構成を示す透視側面図である。
【図6】本発明の実施の形態3に係る燃料容器の概略構成を示す透視側面図である。
【符号の説明】
【0089】
10 燃料容器
11 容器本体
12 吸熱体
20 固形燃料
30 水
40 コンロ
50 鍋
60 液体(水)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形燃料を燃焼させる際に用いられる燃料容器であって、
前記固形燃料が載置されるように形成され、前記固形燃料の燃焼末期に発生する熱を吸収する吸熱体を備え、
前記固形燃料が収容される容器本体の内側底面部に前記吸熱体が設けられていることを特徴とする燃料容器。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料容器であって、
前記吸熱体が、鉄、鋳鉄、ステンレス、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、セラミックから選ばれた1種または複数種からなることを特徴とする燃料容器。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の燃料容器であって、
前記吸熱体が、板状に形成されていることを特徴とする燃料容器。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の燃料容器であって、
前記吸熱体が、前記固形燃料が収容される上部が開口された容器状に形成されていることを特徴とする燃料容器。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の燃料容器であって、
前記容器本体内に貯留された液体に浸された前記吸熱体に、前記固形燃料が載置されることを特徴とする燃料容器。
【請求項6】
底面部に、前記固形燃料の燃焼末期に発生する熱を吸収する吸熱体が設けられていることを特徴とする固形燃料。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate