説明

燃料容器

【課題】フィルム材を製袋してなるパウチにスパウトを取り付けて、これをケース内に収納してカートリッジ式とされた燃料電池用の燃料容器とするにあたり、収容された燃料が気化してパウチを膨張させたとしても、容器内の気密性が損なわれてしまうのを有効に回避することができる燃料容器を提供する。
【解決手段】可撓性材料を製袋してなるとともに、内容物を取り出すためのスパウト3が、その基部31を挟み込みつつ、当該可撓性材料の端縁を重ね合わせてヒートシールすることによって取り付けられたパウチ2を備え、押圧部材4により、スパウト3の基部31と可撓性材料とのシール部21a、及び可撓性材料どうしのシール部を狭持した状態で、パウチ2を外装ケース7に収納する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ダイレクトメタノール型燃料電池などの燃料電池に好適に利用することができる燃料容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水素(プロトン)を取り出すための改質器を用いることなく、燃料であるメタノールを直接アノード極(燃料極)に供給して、電気化学反応を生じさせることができるダイレクトメタノール型燃料電池(DMFC)が注目されている。特に、このDMFCは、機器の小型化に適していることから、ノートパソコン(Laptop Computer)に代表されるような携帯機器用の燃料電池としての利用が期待されている。
【0003】
そして、このようなDMFCにおける燃料の供給手段も種々提案されており、例えば、特許文献1は、少なくとも一部が柔軟性を有する部材から構成された燃料容器を備え、ポンプにより燃料が供給される携帯機器用燃料電池を提案する。
また、本出願人も、特許文献2において、燃料電池用の燃料容器としても利用可能な容器として、フィルム材をガセット型のパウチに製袋した可撓性のパウチ本体に、流動性内容物の注口部となるスパウトを取り付けた容器を提案した。さらに、本出願人は、特許文献3において、フィルム材を製袋してなるパウチを、剛性材料からなるケース内に収納したカートリッジ式の燃料容器も提案している。
【0004】
【特許文献1】特開2004−319388号公報
【特許文献2】特開2008−56326号公報
【特許文献3】WO2006/54489号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この種の燃料容器にあっては、引火の危険の高いメタノールを燃料として収容するに際し、メタノールの外部への漏洩を防止する必要があることに加え、燃料の供給が安定して行われるようにするためにも、容器内の気密性が十分に確保されていなければならない。
【0006】
しかしながら、メタノールは揮発性が高く、沸点も比較的低いため、一般に想定される機器の使用環境下の温度で容易に気化してしまう。このため、フィルム材を製袋したパウチにスパウトを取り付けた容器では、メタノールの気化に伴ってパウチが膨張してしまうことを考慮しなければならない。
そして、本発明者らが検討したところ、パウチが膨張すると、スパウトとのシール部に応力が集中してパウチを形成するフィルム材が破断してしまったり、スパウトとフィルム材とのシール部や、フィルム材どうしのシール部に剥離(シール後退)が生じてしまったりすることが危惧され、容器内の気密性が損なわれてしまうおそれがあるという知見を得るに至った。
【0007】
本発明は、上記のような知見に基づいてなされたものであり、フィルム材の如き可撓性材料を製袋してなる容器本体としてのパウチにスパウトを取り付けて、これをケース内に収納してカートリッジ式とされた燃料電池用の燃料容器とするにあたり、収容された燃料が気化してパウチを膨張させたとしても、容器内の気密性が損なわれてしまうのを有効に回避することができる燃料容器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る燃料容器は、可撓性材料を製袋してなる容器本体であって、内容物を取り出すためのスパウトが、前記スパウトの基部を前記可撓性材料で挟み込みつつ、前記可撓性材料の端縁を重ね合わせてヒートシールすることによって取り付けられている容器本体を備え、押圧部材により、前記可撓性材料の端縁を重ね合わせてヒートシールされた前記スパウトの基部と前記可撓性材料とのシール部、及び前記可撓性材料どうしのシール部を狭持した状態で、前記容器本体を外装ケースに収納した構成としてある。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、収容された燃料が気化して容器本体を膨張させたとしても、容器本体を形成する可撓性材料の破断や、剥離を防止して、容器内の気密性が損なわれてしまうのを有効に回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。
ここで、図1は、本実施形態に係る燃料容器の概略を示す斜視図であり、図2は、図1のA−A断面の概略を示す縦断面図である。
【0011】
本実施形態において、燃料容器1は、ダイレクトメタノール型燃料電池などの燃料電池を備える機器に対して、着脱自在に装填できるようにしたカートリッジ式の燃料容器としてあり、容器内に充填された燃料Mが空になると、燃料容器1ごと換装できるようになっている。
【0012】
また、本実施形態において、燃料容器1は、燃料電池本体が備える吸引ポンプにより、容器内に充填された燃料Mが吸い出されて、発電部への燃料Mの供給がなされる、いわゆるアクティブ型の燃料電池に供されることから、容積効率が高く、かつ、燃料Mの吸い出し性が良好であることが望まれる。
このため、燃料容器1は、可撓性材料を製袋してなる容器本体としてのパウチ2を備え、このパウチ2に燃料Mが充填されるようにしてある。そして、このようなパウチ2には、充填された燃料Mを取り出すためのスパウト3が取り付けられており、本実施形態で容器本体とされるパウチ2は、スパウト付きパウチとして構成されている。
【0013】
スパウト3は、中空の筒状部材とされ、図示する例では、一方の端部側の基部31と、他方の端部側の吸い出し口32との境に、長手方向に対してほぼ垂直に張り出すフランジ部30が形成されている。このような形態とされたスパウト3は、パウチ2を形成する可撓性材料に基部31を挟み込みつつ、当該可撓性材料の端縁をフランジ部30に当接させて位置決めしながら、当該可撓性材料の端縁を重ね合わせた状態でヒートシールすることによって、パウチ2に取り付けられている。
【0014】
ここで、スパウト3の具体的な形態は、図示するものに限られない。この種のスパウト付きパウチに利用可能な、種々の形態とすることができる。例えば、パウチ2を形成する可撓性材料に挟み込まれてヒートシールされる基部31と、パウチ2に取り付けられた状態で外部に開口する吸い出し口32とを有していれば、フランジ部30は必要に応じて省略してもよい。また、基部31の形状も、中空円筒状とするほか、パウチ2を形成する可撓性材料とのヒートシールが良好になされるようにするために、例えば、中空円筒状とされた部位の周囲に、長手方向に対してほぼ垂直に張り出すひし形状の複数のシール片を、長手方向に沿って列設するなどしてもよい。
【0015】
また、スパウト3の吸い出し口32には、図示するように、バルブ機構を有するカップラ5が装着されるようになっている。そして、燃料容器1を機器に装填したときに、このカップラ5の先端開口部側が、燃料電池本体に設けられた燃料吸引口に接続され、これとともに、バルブ機構が開放されて、パウチ2に充填された燃料Mの吸い出しが可能となるようになっている。
【0016】
カップラ5が有するバルブ機構としては、例えば、図示するように、バネ52に付勢された弁体51が、カップラ5の開口端の内面側に形成された弁座53に密着することで、パウチ2内を密封する構成とすることができる。そして、燃料容器1が機器に装填されると、燃料電池本体の燃料吸引口側に設けられた、図示しないピン状の部材が、カップラ5の先端開口部に挿通されるようにする。
このようにすると、上記ピン状の部材が、弁座53との密着が解除されるように弁体51をバネ52に抗して押し下げることでバルブ機構が開放され、弁体51と弁座53との間に燃料Mの流通経路が形成されるようにすることができる。
【0017】
本実施形態において、このようなカップラ5が装着されるスパウト3は、図2に示すように、基部31の開口部の口径の方が、吸い出し口32の開口部の口径よりも小さくなっている。通常、この種のスパウト3にあっては、基部31から吸い出し口32に至るまで、ほぼ同一の口径とされた流路が形成されて、その排出性が維持されるようにしているところ、本実施形態では、吸い出し口32にはカップラ5が装着される。したがって、カップラ5内のバルブ機構において、流路が最も狭くなることになる。そのため、基部31の開口部の口径(流路)を狭くしても、カップラ5内の流路よりも十分に広くなっていれば、燃料Mの排出性に影響がない。基部31の開口部の口径を狭くし、これによって基部31を小さくすることができると、パウチ2から燃料Mが吸い出されて平坦に折り畳まれていく際に、より確実に残液を少なくすることができるため好ましい。
さらに、基部31の断面形状をパウチ2の幅方向に長い扁平形状(例えば、楕円状又はひし形状)にすることで、パウチ2が折り畳まれる方向に沿った基部31の厚みをさらに薄くすることができる。
【0018】
以上のような構成とされたパウチ2は、図示するように、比較的剛性の高い材料からなる外装ケース7に収納される。そして、スパウト3の吸い出し口32へのカップラ5の装着は、通常、外装ケース7に収納されたパウチ2に、スパウト3の吸い出し口32から燃料Mを充填した後になされる。また、スパウト3の吸い出し口32に装着されたカップラ5は、例えば、トップベース8を打栓嵌合などすることによって固定することができる。さらに、図示する例では、燃料容器1を保管などする際に、カップラ5のバルブ機構の誤動作を防止して、燃料Mが漏れ出してしまわないように、カップラ5の先端開口部側に、保護部材としての蓋体6が取り付けられている。
【0019】
パウチ2を外装ケース7に収納するにあたり、本実施形態では、スパウト3の基部31と可撓性材料とのシール部21a、及び可撓性材料どうしのシール部21bが、押圧部材4によって狭持された状態となるようにして、押圧部材4とともにパウチ2を外装ケース7に収納する。
【0020】
押圧部材4は、例えば、図3に示すように、シール部21a,21bを狭持する一対の分割部材4a,4bからなるものとすることができる。そして、各分割部材4a,4bの押圧面40には、スパウト3の基部31の外形形状に応じて形成された凹部41を形成しておく。
このような押圧部材4は、各分割部材4a,4bを組み合わせて、それぞれの押圧面40で押圧しながらシール部21a,21bを狭持した状態で、外装ケース7の開口部に、例えば、打栓嵌合によって取り付けられるようにすることができる。これにより、外装ケース7内でのパウチ2の位置決め、固定がなされるようにすることも可能となる。
【0021】
ここで、図3は、押圧部材4の一例を説明する要部分解斜視図であり、図3中、シール部21a,21bを交差する斜線で示している。また、特に図示しないが、押圧部材4を構成する分割部材4a,4bには、互いに係合する爪を設けておくようにしてもよい。
【0022】
このようにすることで、充填された燃料Mが気化するに伴ってパウチ2が膨張しても、シール部21a,21bが押圧部材4によって押圧された状態が維持される。これによって、パウチ2を形成する可撓性材料が応力集中により破断してしまったり、シール部21a,21bが剥離(シール後退)してしまったりするのを防止して、容器内の気密性が損なわれてしまうのを有効に回避することができる。
【0023】
また、押圧部材4によってシール部21a,21bを押圧するにあたり、押圧部材4の押圧面40の幅Wは、図示するように、シール部21a,21bのシール幅Wより長く、かつ、スパウト3の基部31の先端側を越える長さとするのが好ましい。これによって、シール部21a,21bの剥離をより確実に防止することができる。
さらに、押圧部材4の押圧面40は、図示するように、スパウト3の基部31の先端側において、パウチ2から離れていく方向に湾曲する湾曲面40aに連続するのが好ましい。これによって、パウチ2が膨張する際に、パウチ2を形成する可撓性材料が湾曲面40aに沿って外方に膨らむようになり、張力を適度に緩和して、可撓性材料に応力が集中してしまうのを避けることができる。
【0024】
本実施形態において容器本体とされるパウチ2は、その容積効率を高める上で、側面にまちが形成されたガセット型のパウチとするのが好ましく、例えば、図4に示すような態様のものとすることができる。
また、ガセット型のパウチとすると、燃料Mが吸い出される際に、その吸い出された量に応じて徐々に平坦に折り畳まれていくようになるので、吸い出し性を良くして、残液を少なくする上でも好ましい。
【0025】
ここで、図4(a)は、パウチ2の一例の展開図を示す。この例におけるパウチ2は、図4(a)中破線で示す谷折り線VLと、図4(a)中二点鎖線で示す山折り線MLとで、図4(b)に示すように折り返して、スパウト3をスパウト側端縁2aに挟み込みつつ、スパウト側端縁2a、ボトム側端縁2b、背貼り側端縁2cのそれぞれを重ね合わせてヒートシールしたものに相当する。
【0026】
パウチ2を、このようなガセット型のパウチとするにあたり、燃料Mの気化によるパウチ2の膨張を抑制する観点から、まちとなる側面の幅aは、これと対面する外装ケース7の側面の内幅a(図2参照)とほぼ等しくなるようにするのが好ましい。
【0027】
また、図4に示す例では、スパウト3との干渉を避けて、背貼り側端縁2cを一方の側面側に位置させているが、このようにすると、図4(c)に示すように、当該側面側のまちが開いたときに、背貼り側端縁2cのシール部26が外装ケース7の内面に押し付けられるようになる。これにより、充填された燃料Mが気化してパウチ2が膨張した際に、当該シール部26に剥離が生じ難くなる。
なお、図4(c)は、上記パウチ2を適用した燃料容器1の断面の概略を示す横断面図であり、図1のB−B断面に相当する。
【0028】
また、図4に示す例において、ボトム側端縁2bをヒートシールしたボトムシール25については、図5(a)に示すように、ボトムシール25の非シール部との境界からパウチ2内方に離れた部位を折り曲げてパウチ2を外装ケース7に収納したときに、その折り曲げた部位が外装ケース7の内底面71に当接するように、これらの寸法を設定するのが好ましい。
【0029】
このようにすることで、燃料Mを充填したときに、図5(b)に示すようにパウチ2が広がるようになる。そして、充填された燃料Mが気化してパウチ2が膨張すると、ボトムシール25に対しては、図5(b)中矢印方向に付勢する力が働くようになる。これによって、ボトムシール25がパウチ外方に向かって押さえつけられて、ボトムシール25に剥離が生じ難くなる。
【0030】
なお、参考までに、ボトムシール25の非シール部との境界が、外装ケース7の内底面71から離れた状態でパウチ2が外装ケース7に収納された例を図6(a)に示す。この場合、燃料Mが気化してパウチ2が膨張すると、図6(a)中矢印で示すようにボトムシール25を引き剥がそうとする力が働き、図6(b)に示すようにボトムシール25の剥離が容易に生じてしまう。
【0031】
ボトムシール25の剥離を防止するには、図7に示すように、ボトムシール25を第二の押圧部材45で狭持した状態で、パウチ2を外装ケース7に収容するようにしてもよい。このとき、第二の押圧部材45としては、前述したような押圧部材4と同様に、ボトムシール25を狭持する一対の分割部材45a,45bからなるものとすることができる。そして、各分割部材45a,45bを組み合わせて、それぞれの押圧面で押圧しながらボトムシール25を狭持した状態で、外装ケース7内に取り付けられるようにすればよい。
【0032】
この場合、押圧部材4について説明したのと同様に、ボトムシール25の剥離をより確実に防止するためには、第二の押圧部材45の押圧面の幅を、ボトムシール25のシール幅より長く、かつ、ボトムシール25の非シール部との境界を越える長さとするのが好ましい。さらに、張力を適度に緩和して、可撓性材料に応力が集中してしまうのを避けるために、ボトムシール25の非シール部との境界を越えた部位において、第二の押圧部材45の押圧面をパウチ2から離れていく方向に湾曲する湾曲面に連続させるのが好ましいのも同様である。
【0033】
また、パウチ2としては、図8に示すように、外装ケース7に収納した際に、外装ケース7の内底面71側に、シール部が存在しない形態のものとすることもできる。
この場合のパウチ2の一例の展開図を図9(a)に示す。この例におけるパウチ2は、図9(a)中破線で示す谷折り線VLと、図9(a)中二点鎖線で示す山折り線MLとで、図9(b)に示すように折り返して、スパウト3をスパウト側端縁2aに挟み込みつつ、スパウト側端縁2a、側面側端縁2dのそれぞれを重ね合わせてヒートシールしたものに相当する。
【0034】
このような例にあっては、両方の側面側にシール部27が形成されるが、図9(c)に示すように、側面側のまちが開いたときに、当該シール部27が外装ケース7の内面に押し付けられるようになる。このため、充填された燃料Mが気化してパウチ2が膨張した際に、当該シール部27には剥離が生じ難くい。
なお、図9(c)は、上記パウチ2を適用した燃料容器1の断面の概略を示す横断面図であり、図1のB−B断面に相当する。
【0035】
本実施形態において、パウチ2を形成する可撓性材料としては、一般に、燃料電池用の燃料として用いられるメタノールなどのアルコール類に対して耐性を有し、かつ、ヒートシール可能な樹脂をヒートシール層とし、これに、バリア材層などを積層したフィルム材が好適に使用される。
【0036】
ヒートシール層には、例えば、低溶出性、耐熱性、低剛性の低密度ポリエチレン,線状低密度ポリエチレン,中密度ポリエチレン,高密度ポリエチレン,結晶性ポリプロピレン,結晶性プロピレン−エチレン共重合体,エチレン−酢酸ビニル共重合体,結晶性ポリブテン−1,結晶性ポリ4−メチルペンテン−1,ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、EVAケン化物、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)などのポリオレフィン類等が好適に使用できる。これらのなかでも、特に、燃料への溶出が少ない無添加の線状低密度ポリエチレンが好ましい。また、ヒートシール層の厚みは5〜200μmとするのが好ましく、パウチ2の排液性を考慮すると、20〜70μが特に好適である。
【0037】
バリア材層には、環状オレフィン系樹脂フィルム,ポリエステル系樹脂フィルム,ポリアミド系樹脂フィルム,アルミ箔,シリカ蒸着ポリエステルフィルム,アルミナ蒸着ポリエステルフィルムなどが好適に使用できる。厚みの薄い積層フィルム材で長期間の保存性を確保するためには、アルミ箔を用いるのが最も好ましい。また、バリア材層の厚さは1〜50μmとするのが好ましく、より好ましくは3〜9μmである。
【0038】
ヒートシール層にバリア材層を積層するにあたっては、必要に応じて、両者の間に、ポリウレタン系接着剤、酢酸ビニル系接着剤、酸変性オレフィン樹脂、無水マレイン酸変性オレフィン樹脂などの接着剤層を介在させるようにすることもできる。燃料に用いられるメタノールなどのアルコール類は材料中への浸透力が高く、低分子量成分の溶出や層間剥離を引き起こしやすい。このため、上記したもののなかでも、ヒートシール層との相性が良好な酸変性オレフィン樹脂や無水マレイン酸変性オレフィン樹脂を用いるのが最も好ましい。接着剤層の厚みは0.1〜30μmとするのが好ましく、より好ましくは1〜15μmである。
【0039】
上記した各層は、それぞれ単独、又は複数の材料の組み合わせ、あるいは複数の層の組み合わせで構成することができる。また、上記した各層以外にも、さらに他の層を適宜積層することができる。
例えば、耐ピンホール性や、強度を向上させることを目的として、耐衝撃層を設けることができる。耐衝撃層としては、ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリエステル,ナイロン(ポリアミド)などの樹脂フィルム、ナイロンとエチレン−ビニルアルコール共重合体の共押出フィルム、及びこれらの2軸延伸フィルムなどが好適に使用できる。
なお、これらの付加的な層はバリア材層よりも外側に積層するのが好ましい。
【0040】
また、押圧部材4、カップラ5、外装ケース7、トップベース8などの他の部材は、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS),ポリスチレン(PS),アクリロニトリル−スチレン樹脂(AS),ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリブチレンテレフタレート(PBT),ポリエチレンナフタレート(PEN),ポリカーボネート(PC),ポリプロピレン(PP),ポリエチレン(PE),ポリアセタール(POM),ポリメチルメタクリレート(PMMA),変性ポリフェニレンエーテル(PPE)などの合成樹脂材料を単独で、又は二種以上ブレンドして用いて、さらには、これらのものに必要に応じてガラス繊維や、タルクなどの充填材を配合した複合材料として用いて、射出成形などにより所定形状に成形することができる。また、必要に応じて、アルミ、鉄、ステンレスなどの金属材料を用いることもできる。
【0041】
以上、本発明について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、前述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
【0042】
例えば、前述した実施形態において、外装ケース7は、底部が一体に形成されたものを示したが、必要に応じて、底部を別体としてもよい。
また、押圧部材4は、図示する例に限らず、軽量化や使用樹脂量の削減を図るために、必要に応じて、押圧面40を残して他の不要部位を切り抜くなどして、肉抜きを施すこともできる。
【0043】
また、カップラ5のバルブ機構をなす弁体51と弁座53との間や、カップラ5とスパウト3との間など、シール性を要する箇所には適宜、弾性材料からなるO−リングなどのようなシール部材を介在させることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上説明したように、本発明は、例えば、ダイレクトメタノール型燃料電池などの燃料電池に用いる燃料容器として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係る燃料容器の実施形態の概略を示す斜視図である。
【図2】図1のA−A断面の概略を示す縦断面図である。
【図3】押圧部材の例を説明する要部分解斜視図である。
【図4】容器本体としてのパウチの一例を示す説明図である。
【図5】ボトムシールの剥離を防止する例を示す説明図である。
【図6】ボトムシールの剥離を防止する例に対する参考図である。
【図7】本発明に係る燃料容器の他の実施形態の概略を示す縦断面図である。
【図8】本発明に係る燃料容器の他の実施形態の概略を示す縦断面図である。
【図9】容器本体としてのパウチの他の例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0046】
1 燃料容器
2 パウチ(容器本体)
21a シール部
21b シール部
3 スパウト
31 基部
4 押圧部材
40 押圧面
40a 湾曲面
7 外装ケース
M 燃料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性材料を製袋してなる容器本体であって、内容物を取り出すためのスパウトが、前記スパウトの基部を前記可撓性材料で挟み込みつつ、前記可撓性材料の端縁を重ね合わせてヒートシールすることによって取り付けられている容器本体を備え、
押圧部材により、前記可撓性材料の端縁を重ね合わせてヒートシールされた前記スパウトの基部と前記可撓性材料とのシール部、及び前記可撓性材料どうしのシール部を狭持した状態で、前記容器本体を外装ケースに収納したことを特徴とする燃料容器。
【請求項2】
前記押圧部材の押圧面の幅が、前記スパウトの基部と前記可撓性材料とのシール部、及び前記可撓性材料どうしのシール部のシール幅より長く、かつ、前記スパウトの基部の先端側を越える長さである請求項1に記載の燃料容器。
【請求項3】
前記スパウトの基部の先端側において、前記押圧部材の押圧面が、前記容器本体から離れていく方向に湾曲する湾曲面に連続する請求項1又は2のいずれか1項に記載の燃料容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−100329(P2010−100329A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−275174(P2008−275174)
【出願日】平成20年10月27日(2008.10.27)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】