説明

燃料性状検出装置

【課題】 燃料の脈動等によって生じる異音の発生及び電極の位置変化を抑制可能な燃料性状検出装置を提供する。
【解決手段】 燃料ハウジング21を、燃料室23内の燃料圧力によって弾性変形可能な薄板状の金属部材で形成する。これにより、燃料室23内の燃料圧力が上昇すると、燃料ハウジング21の膨張によって燃料室23の圧力が下がる。また、燃料室23内の燃料圧力が下降すると、燃料ハウジング21の収縮によって燃料室23の圧力が上がる。つまり、燃料ハウジング21自体を一種のダンパとして機能させる。また、燃料室23部分の流路面積を、上流側配管11及び下流側配管12のいずれの配管の流路面積よりも大きくなるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車等の燃料の性状を検出する燃料性状検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の燃料として、低公害なアルコール混合ガソリンが注目されている。このような混合ガソリンは、ガソリンのみの燃料とは、最適な空燃比が異なっている。そのため、混合ガソリンが最適な空燃比となるように制御するため、混合ガソリン中のアルコールの含有量、すなわちアルコール濃度を測定することが重要となってくる。
【0003】
アルコール濃度を精度よく測定するためには、変化比率の比較的高い物理定数を用いることが望ましい。そのため、従来、比誘電率の変化を検出する方法が開示されている。例えば、比誘電率は静電容量の変化から求められるため、一対の電極を対向配置して静電容量を測定する燃料センサが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平1−163862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術では、対向配置される一対の電極が片持ち構造となっているため、燃料の脈動等によって異音が生じる虞がある。このような異音の発生は、運転者に違和感を抱かせることになりかねない。
また、燃料の脈動によって両方の電極の相対的な位置関係に変化が生じると、静電容量の検出精度が低下してしまうことが懸念される。
【0006】
なお、ここではアルコール混合ガソリンの静電容量の検出を例に挙げて説明したが、これに限られず、一対の電極を用いて燃料の性状を検出する場合には同様に生じ得る問題である。
【0007】
本発明は、上述した問題を解決するためになされたものであり、その目的は、燃料の脈動等によって生じる異音の発生及び電極の位置変化を抑制可能な燃料性状検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するためになされた請求項1に記載の燃料性状検出装置は、燃料配管の途中に設けられ、燃料の性状を検出する。
具体的には、燃料ハウジングによって形成される燃料室を、燃料が通過する。燃料室への燃料供給は、燃料ハウジングの上流側開口に接続される上流側配管を経由してなされる。また、燃料室からの燃料送出は、燃料ハウジングの下流側開口に接続される下流側配管を経由してなされる。このとき、燃料室に配置される少なくとも一対の電極によって、燃料の性状が検出される。したがって、燃料の「性状」には少なくとも、一対の電極によって検出可能な静電容量やインピーダンスが含まれる。
【0009】
ここで特に本発明では、燃料ハウジングが、燃料室内の燃料圧力によって弾性変形する。したがって、燃料室内の燃料圧力が上昇すると、燃料ハウジングの膨張によって燃料室の圧力が下がる。また、燃料室内の燃料圧力が下降すると、燃料ハウジングの収縮によって燃料室の圧力が上がる。つまり、燃料ハウジング自体が一種のダンパとして機能するのである。これにより、燃料の脈動等によって生じる異音の発生を抑制することができる。また、燃料の脈動等によって生じる電極の位置変化を抑制することができる。
【0010】
例えば請求項2に示すように、燃料ハウジングを、燃料室内の燃料圧力によって弾性変形可能な薄板状部材で構成することが例示される。ハウジング全体が薄板状部材で構成されて弾性変形する構成では、燃料の脈動等によって生じる異音の発生をハウジング全体で抑制することができる。また、燃料の脈動等によって生じる電極の位置変化を抑制することができる。
【0011】
また、請求項3に示すように、燃料室部分の流路面積が上流側配管及び下流側配管のいずれの配管の流路面積よりも大きくなるよう燃料ハウジングを構成することとしてもよい。このようにすれば、燃料室内における燃料の圧力損失を抑えることができる。
【0012】
ところで、上述した一対の電極は、請求項4に示すように、第1電極、及び、第1電極の周囲に配置され第1電極と対向する第2電極が、硝子封止されてなることとしてもよい。この場合、例えば第1電極及び第2電極を一体のユニットとして組み付けるようにすれば、組み付けが容易になるという点で有利である。
【0013】
第1電極が有底円筒状となっていることを前提に、請求項5に示すように、第1電極の内部に、当該第1電極を介して燃料の温度を検出する温度検出手段を備える構成としてもよい。このようにすれば、比較的簡単な構成で、燃料性状の一つとして、燃料の温度を検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態の燃料性状センサの全体構成を示す概略断面図である。
【図2】実施形態の燃料性状センサの特徴部分を拡大した概略断面図である。
【図3】実施形態の燃料性状センサの分解斜視図である。
【図4】実施形態の燃料性状センサの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
本形態の燃料性状センサは、車両の燃料タンクとインジェクタとを接続する燃料配管の途中に設けられ、燃料中のエタノール濃度を測定するためのものである。
【0016】
図1に示すように、燃料性状センサ1は、左右に延びる上流側配管11及び下流側配管12と、両配管11、12の間に配置される配管構成部20と、配管構成部20の上方に配置される回路構成部30と、配管構成部20の内部に配置される電極構成部40とを備えている。
【0017】
上流側配管11は、燃料タンク側の配管に接続される。一方、下流側配管12は、インジェクタ側の配管と接続される。
【0018】
図2に示すように、配管構成部20は、燃料ハウジング21を中心に構成されている。燃料ハウジング21は、金属製の容器部材であり(図3参照)、上部が開口している。この上部開口に蓋部22が取り付けられ、蓋部22の中央部の開口に、電極構成部40が上方から係止されている。これにより、燃料ハウジング21の内部に、燃料室23が形成される。
【0019】
また、燃料ハウジング21は、図2に示すように、下部をブラケット24で覆われており、その側壁に、円形状の開口部211、212を有している。一方の開口部211は、上流側配管11に合わせて設けられている。これにより、上流側配管11から燃料室23に燃料が供給される。また、他方の開口部212は、下流側配管12に合わせて設けられている。これにより、燃料室23から下流側配管12へ燃料が送出される。
【0020】
そして特に本形態では、燃料室23部分の流路面積が、上流側配管11及び下流側配管12のいずれの配管の流路面積よりも大きくなっている。また特に本形態では、燃料ハウジング21が、燃料室23内の燃料圧力によって弾性変形可能な薄板状の金属部材で形成されている。
【0021】
回路構成部30は、主として、収容ハウジング31、及び、カバー32からなる。
収容ハウジング31及びカバー32は、樹脂材料で形成されている。収容ハウジング31は、凹部311を有している。この凹部311の開口を覆うように、カバー32が取り付けられる。これにより、収容室33が形成されている。この収容室33には、電気回路のプリントされた基板34が収容される。基板34は、ネジ35により収容ハウジング31に対し螺着されている。
【0022】
電極構成部40は、有底円筒状の第1電極41と、円筒状の第2電極42とを有している。これら第1電極41及び第2電極42は、第2電極42の径内側に第1電極41が配置されるように、硝子部43によってハーメチック固定(硝子封止)されている。これにより、第1電極41と第2電極42とは一つのユニットとして構成され、両電極41、42が対向するように配置される。
【0023】
第1電極41は、その側部に、端子411を有している。この端子411は、基板34に半田付けされている。また、第2電極42は、上面に(図3参照)、端子421を有している。端子421も、端子411と同様、基板34に半田付けされている。これにより、両電極41、42間の電圧値が検出可能となっている。また、第2電極42の側壁には、U字状の切り欠き422が設けられている。これにより、燃料室を流れる燃料が両電極41、42間を満たすことになる。
【0024】
また、第1電極41は、その内部に、サーミスタ44を有している。サーミスタ44は、第1電極41に対し固定される樹脂製の支持部45に支持されている。また、サーミスタ44の2つの端子46、47は、支持部45の内部を通り、基板34に半田付けされている。これにより、第1電極41を介して燃料の温度が検出可能となっている。
【0025】
配管構成部20と回路構成部30とは、図4に示すように、弾性部材51を介在させて組み付けられる。弾性部材51は、エラストマ材料で形成されており、中央部に円形穴が設けられている。これにより、弾性部材51は、組み付け時において、第2電極42の周縁部と、収容ハウジング31の底部とで挟み込まれる。具体的には、図4に示すように、電極構成部40が蓋部22に係止された状態で、ネジ61によりブラケット24が収容ハウジング31に対し螺着されることにより、燃料ハウジング21が収容ハウジング31に組み付けられる。なお、図4では、基板34等の構成は省略した。
【0026】
かかる構成により、本形態の燃料性状センサ1では、燃料室23を通過する燃料の比誘電率に対応する静電容量を検出し、サーミスタ44にて検出される燃料の温度で補正して、燃料中のエタノール濃度を測定する。
【0027】
以上詳述した本形態では、燃料ハウジング21が、燃料室23内の燃料圧力によって弾性変形可能な薄板状の金属部材で形成されている。したがって、燃料室23内の燃料圧力が上昇すると、燃料ハウジング21の膨張によって燃料室23の圧力が下がる。また、燃料室23内の燃料圧力が下降すると、燃料ハウジング21の収縮によって燃料室23の圧力が上がる。つまり、燃料ハウジング21自体が一種のダンパとして機能するのである。これにより、燃料の脈動等によって生じる異音の発生を抑制することができる。また、燃料の脈動等によって生じる電極41、42の相対的な位置変化を抑制することができる。
【0028】
また、本形態では、燃料室23部分の流路面積が、上流側配管11及び下流側配管12のいずれの配管の流路面積よりも大きくなっている。これにより、燃料室23内における燃料の圧力損失を抑えることができる。
【0029】
さらにまた、本形態では、第2電極42の径内側に第1電極41が配置されるように、第1電極41及び第2電極42が、硝子部43によってハーメチック固定(硝子封止)されている。これにより、第1電極41と第2電極42とは一つのユニットとして構成され、その結果、組み付けが容易になるという点で有利である。
【0030】
また、本形態では、第1電極41が、その内部に、サーミスタ44を有している。これにより、燃料の温度を検出することが可能となっており、エタノール濃度の測定精度の向上に寄与する。
【0031】
なお、本形態における燃料性状センサ1が「燃料性状検出装置」を構成し、燃料室23が「燃料室」を構成し、燃料ハウジング21が「燃料ハウジング」を構成し、上流側配管11が「上流側配管」を構成し、下流側配管12が「下流側配管」を構成し、第1電極41及び第2電極42が「一対の電極」を構成し、第1電極41が「第1電極」を構成し、第2電極42が「第2電極」を構成し、サーミスタ44が「温度検出手段」を構成する。
【0032】
以上、本発明は、上記実施形態に何等限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において、種々なる形態で実施可能である。
例えば、上記形態では燃料ハウジング21を金属材料で構成していたが、ダンパ機能を燃料中で果たすことが可能であれば、特に材料は限定されない。
【符号の説明】
【0033】
1:燃料性状センサ(燃料性状検出装置)、11:上流側配管(上流側配管)、12:下流側配管(下流側配管)、20:配管構成部、21:燃料ハウジング(燃料ハウジング)、22:蓋部、23:燃料室(燃料室)、24:ブラケット、30:回路構成部、31:収容ハウジング、32:カバー、33:収容室、34:基板、35:ネジ、40:電極構成部、41:第1電極(第1電極)、42:第2電極(第2電極)、43:硝子部、44:サーミスタ(温度検出手段)、45:支持部、46、47:端子、51:弾性部材、61:ネジ、211:開口部、212:開口部、311:凹部、411、421:端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料配管の途中に設けられ、燃料の性状を検出する燃料性状検出装置であって、
燃料が通過する燃料室を形成する燃料ハウジングと、
前記燃料ハウジングの上流側開口に接続され、前記燃料室へ燃料を供給する上流側配管と、
前記燃料ハウジングの下流側開口に接続され、前記燃料室から燃料を送出する下流側配管と、
前記燃料室に配置される少なくとも一対の電極と、
を備え、
前記燃料ハウジングは、前記燃料室内の燃料圧力によって弾性変形可能であることを特徴とする燃料性状検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料性状検出装置において、
前記燃料ハウジングは、薄板状部材で構成されていることを特徴とする燃料性状検出装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の燃料性状検出装置において、
前記燃料ハウジングは、前記燃料室部分の流路面積が前記上流側配管及び前記下流側配管のいずれの配管の流路面積よりも大きくなるよう構成されていることを特徴とする燃料性状検出装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の燃料性状検出装置において、
前記一対の電極は、第1電極、及び、前記第1電極の周囲に配置され当該第1電極と対向する第2電極が、硝子封止されてなることを特徴とする燃料性状検出装置。
【請求項5】
請求項4に記載の燃料性状検出装置において、
前記第1電極は、有底円筒状に形成されており、その内部に、当該第1電極を介して燃料の温度を検出する温度検出手段を備えていることを特徴とする燃料性状検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−210563(P2010−210563A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−59385(P2009−59385)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】