説明

燃料棒検査方法および燃料棒検査装置

【課題】中性子線を使わずに原子炉用燃料棒中ペレットのウラン濃縮度を、能率良く、高精度に非破壊検査する。
【解決手段】燃料棒検査方法は、搬送部15によって燃料棒1をその軸線L方向に移動させながら、燃料棒1内の複数のペレットの各々の位置を、燃料棒1の移動位置を検出する燃料棒位置センサ20と各ペレットの境界を検出する渦電流センサ部(非破壊センサ)14とによって認識した後に、この認識した位置にもとづいて燃料棒1をその軸線方向に間欠的に移動させ、γ線センサ部(γ線計測器)12のγ線感知部(γ線測定部)の位置で停止されたペレットのγ線計測を行って、該ペレットのウラン濃縮度を求める検査を繰り返して行う構成とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉用燃料棒内のペレットのウラン濃縮度を非破壊検査により検査する燃料棒検査方法および燃料棒検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の燃料棒検査方法および燃料棒検査装置においては、Gd(酸化ガドリニウム)無しペレットの原子炉用燃料棒(以下、「燃料棒」と称す)は、燃料棒を軸方向に連続して送り、中性子照射を受けて発生する遅発γ線を測定することにより検査されている(アクティブγスキャナ)。また、Gd入りペレットの燃料棒は、燃料棒を軸方向に低速で連続して送り、ウラン235の自然崩壊中性子を測定することにより検査されている(パッシブγスキャナ)。
前記アクティブγスキャナの一例に、原子炉用燃料棒をGd入りペレットの燃料棒とGd無しペレットの燃料棒とを選別し、Gd入りペレットの燃料棒は磁力計を定速で通してGd濃度のデータを採取した後に、Gd無しペレットの燃料棒は前記磁力計をバイパスした後に、γ線源と中性子線源を有する装置において、各燃料棒を、それらの軸方向に連続定速度で送りながら、順次、バックグラウンド検出器で自然放射から生じるγ線の放射データを採取し、デンシトメータでγ線を透過してペレット密度データを採取し、照射器キャスクで中性子源側を定速で通してγ線強度データ(ウラン濃縮度)を採取すると共に、これらの採取データをコンピュータに送ると、該コンピュータが燃料棒の軸方向に沿う多数のデータ点毎のウラン濃縮度、Gd濃度、ペレット密度と重量等を設計仕様と対照して分析し、燃料棒の合否を判定するようにしたものも知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、γ線検出部、γ線スペクトル検出部、遅発γ線バックグラウンド検出部と、中性子照射部と、遅発γ線検出部とを順に直列に配置して、原子炉用燃料棒を軸方向に連続定速度で移動させながら、外部γ線源により原子炉用燃料棒にγ線を照射して燃料ペレットのスタック長、ペレット間ギャップを求めると共に、γ線エネルギースペクトル分析による核種の量を求めた後に、前記遅発γ線バックグラウンド検出部によって中性子照射前のγ線強度の燃料棒軸方向の分布を測定した後に、中性子照射部で原子炉用燃料棒に中性子を照射し、中性子照射後の遅発γ線強度の燃料棒軸方向分布を測定すると共に、中性子照射前γ線軸方向分布データを、中性子照射後γ線軸方向分布データから減算して、正味の遅発γ線軸方向分布データを求め、このデータにもとづいて原子炉用燃料棒の軸方向における実効核物質量の分布変化を検出し、燃料棒に誤って混入された異常ペレットを検出するようにしたものも知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平2−83497号公報
【特許文献2】特開平4−269697号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の燃料棒検査方法および燃料棒検査装置のアクティブγスキャナにおいては、中性子を放射する放射線源が必要であるが、それら線源の定期的補充や保管、管理および線源の入手が、近年のリスク管理強化に伴い年々難しくなってきている。また、燃料棒のウランが中性子との反応を起こして遅発γ線が出て、燃料棒の線量が高くなっているので、これらがクールダウンする時間とエリアが必要となる。また、このエリア付近での被爆量の増加の危険性がある。したがって、中性子や透過用γ線等の高放射線源を使わないで検査できれば、これら種々のリスクがなくなり、願ってもない検査ラインになる。
また、パッシブγスキャナにおいては、検査の再現性を確保するために必要な放射線計測カウントを稼ぐ必要がある(これは、検査単位(ペレット1個)のウラン235が自然崩壊して放射するγ線のゆらぐ数を積算して測定する放射線測定の特異性による)。燃料棒の連続定速送りによる放射線計測カウントは、隣のペレットの影響を受けない範囲での送り速度と遮蔽窓幅により決まる積算時間と遮蔽窓からのγ線入射率に比例し、定速送りによる放射線計測カウントは限界点がある。逆に、求められる再現性あるいはバラツキを確保すると連続定速送りの速度には限界がでる。商用原子炉用燃料棒での検査では、このパッシブγスキャナはアクティブγスキャナの数桁遅い速度になっている。原子炉用燃料棒の一部にしか使われないGd入りペレットの燃料棒は、本数が少ないためにこの連続送りのパッシブγスキャナで検査ができる。
このように少ない燃料棒の場合には、このパッシブγスキャナの検査方式で前記アクティブγスキャナでの検査に代えることはできるが、連続送り速度が遅いため、数十台の検査ラインを作らなければ、アクティブγスキャナでの検査速度を満たすことができないものとなってしまい、燃料棒の量産工場における検査ラインとして現実的でないという問題がある。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、中性子線源等の放射線源を使わずに原子炉用燃料棒内のペレットのウラン濃縮度を、能率良く、高精度に非破壊検査することができる燃料棒検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る燃料棒検査方法は、燃料棒をその軸線方向に移動させながら、前記燃料棒内の複数のペレットの各々の位置を各ペレットの境界を検出する非破壊センサによって認識した後に、この認識した位置にもとづいて前記燃料棒をその軸線方向に間欠的に移動させ、γ線計測器によりそのγ線測定部の位置に停止されたペレットのγ線計測を行って、該ペレットのウラン濃縮度を求める検査を繰り返して行うことを特徴としている。
【0006】
また、本発明に係る燃料棒検査装置は、燃料棒を軸線方向へ案内移動させる駆動手段および前記燃料棒の軸線方向への移動位置を検出する燃料棒位置センサを設けた搬送部と、該搬送部によって移動される燃料棒内の複数のペレットの境界を検出する非破壊センサと、前記搬送部によって間欠的に移動されて停止された燃料棒内の各ペレットのγ線計測を行うγ線計測器と、前記燃料棒位置センサと前記非破壊センサとによって認識された各ペレットの位置にもとづいて、前記駆動手段を前記燃料棒内の各ペレットが前記γ線計測器のγ線測定部の位置に移動、停止するように制御し、停止中に前記γ線計測器によりγ線計測を行い、そのγ線計測結果にもとづいて各ペレットのウラン濃縮度を求める解析制御装置とを備えていることを特徴としている。
【0007】
本発明に係る燃料棒検査装置においては、搬送部の駆動手段によって燃料棒がその軸線方向に案内、移動されながら、前記燃料棒内の複数のペレットの各々の位置が、前記燃料棒位置センサによる燃料棒の移動位置の検出と非破壊センサによる各ペレットの境界の検出とによって認識された後に、この認識された位置にもとづいて前記燃料棒がその軸線方向に間欠的に移動され、γ線計測器のγ線測定部の位置で停止されたペレットのγ線計測が行われる。このペレットのγ線計測結果にもとづいて解析制御装置がペレットのウラン濃縮度を求め、この解析制御装置によりウラン濃縮度を求める検査が燃料棒内の全ペレットに対して繰り返して行われる。
この燃料棒検査装置によれば、燃料棒内の各ペレットが、燃料棒位置センサと非破壊センサとにより認識された位置にもとづいて、γ線計測器のγ線測定部の位置に正確に停止された状態において、隣接のペレットのγ線の影響を受けることなく、前記γ線計測器によって正確にγ線計測されるので、燃料棒内の全てのペレットのウラン濃縮度の検査が高精度に行われる。
また、γ線を積算してカウントしている計測時はペレットが静止状態にあるので、隣のペレットの影響を受けないようにするγ線計測窓幅が連続走査測定方式のものに比べて大きく取れ、放射γ線を積算する時間がこの停止時間の全てを使え、時間当たりの計測カウントが大きく取れる。また、この燃料棒の間欠移動時間を短くすることで、計測(カウント積算)時間が相対的に増す。
【0008】
前記燃料棒検査装置において、前記γ線計測器が前記燃料棒の軸線方向に沿って複数配置され、これらのうちの1つのγ線計測器はγ線測定部の位置が燃料棒の軸線方向に固定され、他のγ線計測器はγ線測定部の位置が燃料棒の軸線方向に移動調節可能とされており、前記位置を固定されたγ線測定部に燃料棒内の1つのペレットが停止されたときに、前記位置を移動調節可能とされたγ線測定部が、位置調整手段によって他のペレットの位置に合うように移動調節されて停止され、前記複数のγ線計測器により同時に燃料棒内の複数の異なるペレットのγ線計測が行われて、それらのウラン濃縮度が求められる構成とすることができる。
このようにすると、複数のγ線計測器によって、前記燃料棒の軸線方向に配列されている長さにばらつきがある複数のペレットを、同時にかつ同一のペレットに対する測定が重複することなく、γ線計測することができるので、燃料棒内のペレットのウラン濃縮度を能率良く検査することができる。
【0009】
また、前記燃料棒検査装置において、前記非破壊センサが渦電流コイルを有する渦電流センサであると、1つの渦電流センサによって燃料棒内の各ペレットの位置を認識するためのセンサと、燃料棒内の各ペレットのGd濃度を計測するセンサとを兼ねることができるので、非破壊センサの個数を減らすことができると共に、透過用放射線源を設けてその放射線を計測することが必要な計測センサを使用しなくて済む。
【0010】
また、前記燃料棒検査装置において、前記解析制御装置を、前記渦電流センサから得られた渦電流データにもとづいてペレット中のGd濃度を求め、該Gd濃度によって前記γ線計測器によるγ線計測結果を補正して、各ペレットのウラン濃縮度を求める構成とすることができる。
このようにすると、Gd入り燃料棒であっても、渦電流センサによる渦電流データから容易にGd濃度を検出することができ、このGd濃度にもとづく補正によって、各ペレットのウラン濃縮度を正確に検査することができる。また、検査ラインをGd入り燃料棒用とGd無し燃料棒用とに分ける必要がないので、装置の構成が簡単となり、その設置空間を可及的に小さくすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る燃料棒検査方法および燃料棒検査装置によれば、燃料棒内の各ペレットが、非破壊センサにより認識された位置にもとづいて、γ線計測器のγ線測定部の位置に正確に停止された状態において、隣接のペレットのγ線の影響を受けることなく、前記γ線計測器によって正確に効率よくγ線計測されるので、燃料棒中の全てのペレットのウラン濃縮度の検査を高精度に高速で行うことができる。
また、燃料棒を中性子線等の放射線源に通してγ線計測を行う必要がないので、従来のように、放射線源の定期的な補充や保管、管理を行う必要が無く、装置の取扱や保守を容易、安全に行うことができ、被爆の危険の少ないコンパクトな自動検査ラインを確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態に係る燃料棒検査装置について、添付図面を参照して説明する。
先ず、本発明の実施の形態に係る燃料棒検査装置において、検査の対象となる原子炉用燃料棒(燃料棒)1は、軽水炉用の燃料棒であって、図1に示すように、ジルカロイ合金製の被覆管2の内部に円柱状の燃料ペレット(ペレット)3が、その軸方向を管軸方向(燃料棒1の軸線L方向)に向けて数百個整列して装填され、図示しないスプリングで抑えられ、図示しない端栓で密封して形成されている。前記ペレット3は、通常、濃縮度2〜6%のウランを二酸化ウラン粉末に転換し、押し固めて焼結した焼結体であって、例えば、長さが1cm強、円柱体端部に面取り部4が設けられ、軸方向の両端面にデッシュ5が形成されている。このペレット3は焼結体であるため、長さの許容公差は比較的大きく、一例ではばらつきが1割弱見込まれている。また、前記ペレット3としては、前記濃縮ウランを二酸化ウランに転換したものに酸化ガドリニウムを混ぜて焼結してなり、中性子可燃性毒物(燃性中性子吸収材)であるGd(ガドリニウム)を数%添加されたペレット(「Gd入りペレット」と称する)も使われる。
【0013】
次に、本発明の第1の実施の形態に係る燃料棒検査装置10について、図2〜図6を参照して説明する。
前記燃料棒検査装置10は、中空のγ線センサ11を設けたγ線センサ部(γ線計測器)12と、中空の渦電流センサ13を有し、前記γ線センサ部12の図2で右側(他側)に隣接して配置された渦電流センサ部(非破壊センサ)14と、前記γ線センサ部12と渦電流センサ部14の両側に隣接して配置され、前記燃料棒1を前記γ線センサ11の中空部11aと前記渦電流センサ13の中空部13aを通して前記軸線Lの方向に往復移動させる搬送部15とを備えている。前記γ線センサ部12と渦電流センサ部14と搬送部15は、1つの共通の架台16上に固定設置されている。
【0014】
前記搬送部15は、前記γ線センサ部12の一側(図2で左側)と前記渦電流センサ部14の他側(図2で右側)にあって互いに図2で左右対称に配置された一対(第1、第2)の搬送機構17A,17Bと、前記γ線センサ部12と前記渦電流センサ部14との間に配置されたガイド機構17Cとを備えている。
前記第1、第2の搬送機構17A,17Bは前記架台6上に立設された基台17aを備え、該基台17aの上部には、前記γ線センサ部12と前記渦電流センサ部14に近い側に配置されて前記燃料棒1を強制求芯させながらその軸線L方向に駆動する駆動ローラ部18と、前記γ線センサ部12、前記渦電流センサ部14から遠い側に配置されて前記燃料棒1を下側から支える支持ローラ部19と、該支持ローラ部19と前記駆動ローラ部18との間に位置して基台17aに固定され、前記燃料棒1の軸線L方向への移動位置を検出する燃料棒位置センサ20と、前記基台17aの外端側の位置に取り付けられ、前記燃料棒1の軸線L方向の端部位置を検出する棒センサ21とがそれぞれ設けられている。
【0015】
前記駆動ローラ部18は、V字状溝を有する一対の駆動ローラ(図2では1つのみ図示)18aが燃料棒1を強制求芯させながら搬送させるように水平面内で回転自在に基台17aに支持され、駆動ローラ18aが前記基台17aに固定された駆動モータ22によって、歯車等の伝動機構22aを介して回転されることにより、前記燃料棒1を水平面内で両側(図2の紙面に垂直な方向における手前側と向かい側)からアクチュエータ22cにより強制求芯させるように挟みながら移動させる構成とされている。前記駆動ローラ18a、駆動モータ22、伝動機構22a等により、前記燃料棒1を軸線L方向へ強制求芯させながら案内移動させ、燃料棒1をγ線センサ11の中空部11aと前記渦電流センサ13の中空部13aの中心を安定して通過および停止維持させる駆動手段が構成されている。
【0016】
前記支持ローラ部19は、一対(図2では1つのみ図示)の支持ローラ19aを前記基台17aに傾斜して固定された支軸に回転自在に支持され、V字状に交差したローラ外周面が前記燃料棒1の外周下面に接触して該燃料棒1を支持するように構成されている。
前記燃料棒位置センサ20は、燃料棒1の表面にレーザを当てそのスペクトル変動で燃料棒1の移動を検出して位置を非接触で測定する非接触式センサや、燃料棒1に接触するローラの回転量をエンコーダで検出する接触型センサ等を使用することができる。そして、前記燃料棒位置センサ20は、燃料棒1の測定位置の不感帯がでないように、前記のようにγ線センサ部12と渦電流センサ部14を挟んで複数位置に設けるのが好ましい。
なお、前記駆動ローラ部18による燃料棒1の搬送が十分に安定し、スリップもなく計測に必要なだけの信頼性が駆動ローラ部18によるドライブ指示量で確保できれば、燃料棒位置センサ20からのデータを駆動ローラ部18によるドライブ指示量(あるいは駆動系のエンコーダ)のモニタで代替することもできる。
【0017】
前記ガイド機構17Cは、前記駆動ローラ18aと同形状のV字状溝を有する一対(図2では1つのみ図示)のガイドローラ18bが、前記架台16に立設された基台17bに水平面内で回転自在に支持され、前記燃料棒1を水平面内で両側から燃料棒1が求芯されるように挟みながら、燃料棒1を軸線L方向へ強制求芯案内移動させるように構成されている。
前記一対の駆動ローラ18a、一対のガイドローラ18bおよび一対の支持ローラ19aによって前記燃料棒1を支持する支持中心は、前記γ線センサ11の中空部11aの中心と前記渦電流センサ13の中空部13aの中心と共に1つの共通軸線X上に整列されている。
【0018】
前記γ線センサ部12は、図3、図4に示すように、上部に収納凹所23aを有すると共に、該収納凹所23aに連通して前記共通軸線X方向に向けられた貫通穴23b,23bを有して前記架台6に立設された基台23と、該基台23の前記収納凹所23aに、前記燃料棒1より僅かに大きい直径の中空部11aの中心を前記貫通穴23bに一致させて収納された環状の前記γ線センサ11と、該γ線センサ11に接触させて前記基台23に設けられた電気信号変換器24とを備えている。
前記γ線センサ11は、環状に形成され前記燃料棒1からのγ線を受けて発光するシンチレータ等のγ線感知部(γ線測定部)25と、該γ線感知部25の両端面に被覆された鉛等で作られた所定厚さの遮蔽材26とで構成されている。
前記電気信号変換器24は、フォトマルチプライア、単数、複数の光電子増倍管や半導体素子等からなり、前記基台23の上部の開口部23cに螺着されて前記凹所23a内に挿入され、受光部を前記γ線センサ11におけるγ線感知部25の外周部の所定箇所(図3、図4で上部の一箇所)に接触され、γ線感知部25が発光した光を電気信号に変換してケーブル24aから出力するように構成されている。
【0019】
前記γ線感知部25は、前記中空部11aと同径とされた中空部25aの両側に外広がりとなるテーパ25b,25bが設けられており、中空部25aの共通軸線X方向における長さが、前記燃料棒1のペレット3の長さより僅かに短く設定されており、前記中空部25aの全周にわたる環状領域が、前記燃料棒1からのγ線の入射窓として開口されるほかは、前記遮蔽材26によって燃料棒1の外周面に露出しないようになっている。遮蔽材26の内穴は前記燃料棒1の通過に支障を来さないように前記中空部11aと同径とされている。
なお、前記基台23には、内外周に外端側が径大となるテーパを設けたリング部27aを有する環状のカバー27が、該リング部27aを前記貫通穴23b,23bに挿入され、フランジ部27bを介してボルト等により固定されている。そして、前記リング部27aの内穴は、前記燃料棒1の外径より僅かに大きくされ、燃料棒1がγ線センサ11内にその軸方向の両側から共通軸線Xに沿って支障無く挿入し得るようになっている。
【0020】
また、前記渦流センサ部14は、前記燃料棒1の外径より僅かに大きい内径の軸穴28aを有する中空型ボビン28にコイル29を巻いて形成された中空の渦電流コイルからなる前記渦電流センサ13が、前記架台16に立設された基台30の上部に設けられ前記共通軸線Xに沿う装着穴30a内の軸方向中央部に挿入され、その両端部を、前記装着穴30aの両端部側に嵌合された一対の押さえリング31,31によって支持されて基台30に設けられている。前記押さえリング31は、前記装着穴30aに嵌合する円筒部31aの端部にフランジ31bを設けてなり、外端側に外広がりのテーパ穴を有し、前記中空型ボビン28の軸穴28aと同径の軸穴31cが設けられており、前記燃料棒1が渦電流センサ13内にその軸方向の両側から共通軸線Xに沿って支障無く挿入し得るようになっている。
【0021】
なお、図3、図4に示すγ線センサ部12においては、前記γ線センサ部12は、前記γ線感知部25の外周に1つだけ電気信号変換器24が設けられているが、これに限らず、図5、図6に示すように、前記γ線感知部25の周囲に周方向に間隔(例えば等間隔)をあけて複数個(図示の例では3個)の電気信号変換器24を設けたγ線センサ部12Aとすることもできる。このとき、前記γ線感知部25は、γ線によりγ線感知部25が発光した光が複数の電気信号変換器24で検知されて重複してカウントされないように、隣接するリング状のγ線感知部25の間に感知部仕切板25cを入れる。
このように、前記電気信号変換器24を複数個配置してそれらによるγ線の計測値を合計すると、前記γ線感知部25の検知信号の電気信号変換器24への入射効率が上がり、1つの電気信号変換器24の場合に比べて燃料棒1からのγ線の検出効率を、電気信号変換器24の設置個数倍近くに向上させることができる。
【0022】
また、前記基台23を、γ線センサ11を装着した可動台部23dと、前記架台16に固定された案内台部23eとに分割し、案内台部23eの上面に設けたガイド部23fに沿って可動台部23dの下面に設けたスライド部23gが支持、案内され、駆動モータMによって適宜伝動機構Dを介して送りネジ機構等Tが作動されて、前記可動台部23dが案内台部23eに対して前記共通軸線Xに沿った方向に移動調節される構成とすることができる。前記可動台部23d、案内台部23e、駆動モータM、伝動機構D、送りネジ機構等Tにより、γ線センサ11のγ線感知部25を燃料棒1の軸線L方向に移動調節する位置調節手段が構成されている。
【0023】
次に、前記燃料棒検査装置1の各部を動作させる解析制御装置35について図7を参照して説明する。この解析制御装置35は、γ線データ採取部36と、渦電流データ採取解析部37と、燃料棒位置データ採取部38と、データ通信部39と、装置制御部40と、前記各部36,37,38,39,40に接続された総括部41と、該総括部41に接続された記憶部42および出力部43とを備えている。
前記γ線データ採取部36は、前記γ線センサ部12の電気信号変換器24に接続された放射線計測部44に接続されており、γ線センサ部12におけるγ線センサ11のγ線感知部25の遮蔽材26のない部分を通して検出された前記燃料棒1からのγ線が、前記電気信号変換器24によって電気信号に変換され、この各電気信号を前記放射線計測部44がエネルギー波高分析した結果にもとづいて前記γ線データ採取部36がウラン235等の特性γ線等の計測データを採取するようになっている。また、図9〜図11に示す後述の装置においては前記放射線計測部44が複数になり、計測データが並列に前記γ線データ採取部36で採取される。
【0024】
前記渦電流データ採取部37は、前記渦電流センサ部14における渦電流センサ13の渦電流コイル29に接続された渦電流検査器45に接続されており、渦電流コイル29内を燃料棒1が通過することによって得られた渦電流信号が前記渦電流検査器45により検出され、この検出信号を前記渦電流データ採取部37が入力して燃料棒1中のペレット3の列の特性信号を採取するようになっている。
前記前記燃料棒位置データ採取部38は、前記燃料棒位置センサ20に接続されており、燃料棒位置センサ20が出力する位置データを、前記γ線データ採取部36と前記渦電流データ採取部37とでそれぞれ得られる計測データと特性信号とを時間的に対応させて採取するようになっている。
【0025】
前記データ通信部39は、前記燃料棒検査装置10に対する燃料棒1の出し入れを行うハンドリング装置や仕分け装置等(いずれも図示せず)や、前記解析制御装置35を本装置外の装置との通信を行うネットワーク46に接続され、燃料棒検査装置10が組み込まれている工程を制御するシステムに連絡されており、燃料棒1の識別や検査データ管理が有機的に組み合わせられて行われるようになっている。また、燃料棒検査装置10において必要な校正、機器の確認、機能試験や自動検査が前記データ通信部39を介して行えるようになっている。
前記装置制御部40は、前記搬送部15における搬送機構17A,17Bの棒センサ21や前記ハンドリング装置や仕分け装置等に設けられている各種センサからのセンサ信号を受けて前記総括部41に出力し、該総括部41がセンサ信号にもとづいて判断して出力する指令に従って、駆動ドライバ47を介して前記搬送機構17A,17Bの駆動モータ22や前記γ線センサ部12Aの各駆動モータM等を作動させるようになっている。
【0026】
また、前記総括部41は、予め前記記憶部42に記憶されているプログラムを実行して、記憶部42に予め記憶されているデータを読み出すと共に、前記γ線データ採取部36、渦電流データ採取部37、燃料棒位置データ採取部38、データ通信部39からのデータや前記装置制御部40からの信号を入力し、それらのデータや信号を解釈、判断して得られた結果を前記記憶部42に記憶させると共に、前記出力部43を介してモニタ48に表示させるようになっている。なお、前記記憶部42に記憶されたプログラムやデータは、必要に応じて、前記ネットワーク46を通じてデータ通信部39と総括部41を介して書き換えられるようになっている。
【0027】
次に、前記構成の燃料棒検査装置10の作用と共に、本発明に係る燃料棒検査方法について図8を参照しながら説明する。
先ず、検査する燃料棒1と同仕様の標準棒等で燃料棒検査装置1の機器を校正し、燃料棒1の検査条件や校正データ等を前記解析制御装置35の記憶部42に記憶させ、検査の準備をする。そして、検査する燃料棒1をハンドリング装置(図示せず)によって前記搬送部15における一端側(図2で左側)の搬送機構17Aの駆動ローラ部18まで送り、検査開始のセッティングを行う(ステップS1)。
【0028】
前記搬送機構17Aの前記棒センサ21が燃料棒1を検知して前記解析制御装置35の装置制御部40を動作させるので、アクチュエータ22cで前記燃料棒1を前記駆動ローラ18a,18aで挟んで強制求芯しながら前記装置制御部40が駆動ドライバ47を介して駆動モータ22を回転させる。これにより、駆動モータ22に伝動機構22aを介して連結されている駆動ローラ部18の駆動ローラ18a,18aが強制求芯回転して、前記燃料棒1が軸線L方向(前記共通軸線X方向)に沿って他側(図2で右側)へ送られる。前記燃料棒1は、前記駆動ローラ18aと前記ガイド機構17Cのガイドローラ18bに案内され、前記γ線センサ部12のγ線感知部25の中空部25aと渦電流センサ部14における渦電流コイル29の中空部(渦電流センサ13の中空部13a)の中心を通り、さらに、他端側(図2で右端側)の搬送機構17Bの駆動ローラ部18と支持ローラ部19に案内されて共通軸線Xに沿って終端が搬送機構17Bの駆動ローラ18aの位置に達するまで高速で一定速度を保って移動される。
そして、渦電流センサ部14の渦電流コイル29の中空部を燃料棒1が通過するときに渦電流検査器45から出力される渦電流信号が、前記渦電流データ採取部37を介して前記総括部41に渦電流データとして取り込まれ、同時に前記燃料棒1の移動位置が、燃料棒位置センサ22で検知されて前記燃料棒位置データ採取部38を介して前記総括部41に、前記渦電流データと対応されて燃料棒位置データとして取り込まれる(ステップS2)。
【0029】
次に、前記総括部41は、前記燃料棒位置データと渦電流データとの対のデータにもとづいて、燃料棒1のペレット3の境界を割り出して各ペレット3の位置を認識し、燃料棒1の一端側から他端側に至る各ペレット3の位置を確定して、その位置データを前記記憶部42に記憶させる。さらに、総括部41は、前記燃料棒1のペレット3の位置データから、燃料棒1のγ線センサ部12で測定する各ペレット3の軸方向中心が、γ線感知部25の軸方向中心(遮蔽材26で覆われていない部分の中心)となり、隣接のペレット3からのγ線を取り込まず、当該ペレット3だけが測定される位置で燃料棒3が停止されるように、装置制御部40が駆動ドライバ47を介して前記駆動モータ22を回転させるための各ペレット対応の駆動量データを計算して記憶部42に記憶させる(ステップS3)。
【0030】
次に、装置制御部40によって駆動ドライバ47を介して各搬送機構17A,17Bの駆動モータ22が前記と反対に回転されて、前記駆動ローラ部18の駆動ローラ18a,18aが逆回転することによって、前記燃料棒1がその一端側(左端側)を先行させて前記共通軸線X方向に沿って他端側(図2で右端側)から一端側へ、前記支持ローラ部19、一対のガイドローラ18bに案内されながら送られる。
その場合、前記記憶部42に記憶された前記駆動量データに従って前記装置制御部40が動作して、前記駆動ドライバ47を介して前記駆動モータ22を制御し、燃料棒1内のペレット3の位置が、γ線センサ部12におけるγ線感知部25による測定位置に到達する毎に燃料棒1を一旦所定時間だけ停止させる。この燃料棒1の停止位置は、燃料棒位置センサ20によって検出されて、正常な位置であるか否かが確認される(ステップS4)。
【0031】
前記燃料棒1が前記γ線感知部25による測定位置に停止している時の、γ線感知部25が捕らえた前記燃料棒1の当該ペレット3からのγ線が電気信号変換器24で電気信号に変換されて放射線計測部44に入力され、該放射線計測部44によってエネルギー波高分析積算でウラン235等のγ線のカウントが行われるので、この波高分析積算のγ線計測データを前記γ線データ採取部36が採取し、この計測データを前記記憶部42に記憶させる(ステップS5)。
前記総括部41は、ウランの濃縮度が既知の標準体で試験して得た検量線データ等を予め記憶部42に記憶させておいた濃縮度計算関数と条件パラメータにもとづいて、前記で得られた各ペレット3毎の計測データから、各ペレット3のウラン濃縮度を計算して求める。そして、このペレット3の濃縮度データから、燃料棒1内に入っているべき製品仕様内のペレット3の濃縮度であるか否か、また、他の仕様のペレット3が混入したものでないことを確認する(ステップS6)。
【0032】
前記燃料棒1を間欠的に一端側へ移動させながら各ペレット3のγ線感知部25によるγ線の測定を行い、各測定毎に該測定が完了したか否かが総括部41で判断され(ステップ7)、測定が未完の場合、燃料棒1が更に次のペレット3がγ線感知部25の位置に送られて測定が繰り返され(ステップS8)、燃料棒1内の全てのペレット3のγ線の測定が完了して、それらのウラン濃縮度が確認されたときは、一本の燃料棒1に関するγ線の測定作業が終了し、測定が終了した燃料棒1は搬送部15の搬送機構17Aから送り出される。
そして、測定が終了した燃料棒1については、前記総括部41が、前記記憶部42に記憶されたペレット毎のウランの濃縮度データから、燃料棒1に入っている全てのペレット3の濃縮度が製品仕様内であるか否か、また、他の仕様のペレット3が混入している痕跡が無いか否かを確認して、燃料棒1の合否を判定し、この合否判定結果と、各ペレット3毎の検査内容の記録を、燃料棒1の固有番号と共に前記記憶部42に記憶させる。
また、各燃料棒1に固有の検査データをデータ通信部39からネットワーク46に送信して利用する。さらに、前記ネットワーク46からの通信により、前記燃料棒1の合否判定結果が前記ハンドリング装置(図示せず)の制御器に送られ、該ハンドリング装置によって検査結果が合格と判断された燃料棒1と不合格と判断された燃料棒1とが仕分けられて適宜保管庫に保管される(ステップS9)。
【0033】
以上説明したように、本発明の一実施の形態に係る燃料棒検査方法は、搬送部15の駆動ローラ部18により燃料棒1をその軸線L方向(共通軸線X方向)に移動させながら、前記燃料棒1内の複数のペレット3の各々の位置を、前記燃料棒1の移動位置を検出する燃料棒位置センサ20と各ペレット3の境界を検出する渦電流センサ部14とによって認識した後に、この認識した位置にもとづいて前記燃料棒1をその軸線L方向に間欠的に移動させ、γ線センサ部12によりそのγ線感知部25の位置で停止されたペレット3のγ線計測を行って、解析制御装置35の制御動作で該ペレット3のウラン濃縮度を求める検査を繰り返して行う構成とされている。
【0034】
また、本発明の第1の実施の形態に係る燃料棒検査装置10は、駆動モータ22により伝動機構22aを介して駆動され、燃料棒を軸線L方向へ案内移動させる駆動ローラ部18および前記燃料棒1の軸線L方向への移動位置を検出する燃料棒位置センサ20を設けた搬送部15と、該搬送部15の駆動ローラ部18によって移動される燃料棒1内の複数のペレット3の境界を渦電流センサ13で検出する渦流センサ部14と、前記駆動ローラ部18によって間欠的に移動されて停止された燃料棒1内の各ペレット3のγ線計測をγ線感知部25で行うγ線センサ部12と、前記燃料棒位置センサ20と前記渦電流センサ部14とよって認識された各ペレット3の位置にもとづいて、前記駆動ローラ部18を前記燃料棒1内の各ペレット3が前記γ線センサ部12のγ線感知部25の位置に移動、停止するように制御する共に、停止中に前記γ線センサ部12のγ線感知部25によりγ線計測を行い、そのγ線計測結果にもとづいて各ペレット3のウラン濃縮度を求める解析制御装置35とを備えた構成とされている。
【0035】
したがって、本発明の一実施の形態に係る燃料棒検査方法および第1の実施の形態に係る燃料棒検査装置10によれば、燃料棒1内の各ペレット3が、燃料棒位置センサ20と渦電流センサ部14とにより認識された位置にもとづいて、前記γ線センサ部12のγ線感知部25の位置に正確に停止された状態において、隣接のペレット3のγ線の影響を受けることなく、前記γ線センサ部12のγ線感知部25によって正確に効率よくγ線計測されるので、燃料棒3内の全てのペレット3のウラン濃縮度の検査を高精度に高速で行うことができる。
また、燃料棒1を中性子線等の放射線源に通してγ線計測を行う必要がないので、中性子線源を使ってGd入り燃料棒1の検査を行うときに中性子がGdに吸収されてウラン濃縮度の測定精度が悪化するといった問題が生じることもない。また、燃料棒1の中性子照射による遅発γ線などの放射線増加は生じなく、中性子線等の放射線源を使わないので、放射線源の定期的な補充や保管、管理を行う必要が無く、大きな遮蔽も必要なく、装置の取扱や保守が容易、安全に行うことができ、被爆の危険の少ないコンパクトで経済的な自動検査ラインを確保できる。
【0036】
また、前記1つの渦電流センサ部14によって前記燃料棒1内の各ペレット3の位置を認識するための非破壊センサと、燃料棒1内の各ペレット3のGd濃度を検査する非破壊センサとを兼ねることができるので、非破壊センサの個数を減らすことができると共に、放射線源を設けて、その透過放射線を計測することが必要な計測センサを使用しなくて済む。
また、前記解析制御装置35が、前記渦電流センサ部14の渦電流センサ13から得られた渦電流データにもとづいてペレット3内のGd濃度を求め、該Gd濃度によって前記γ線センサ部12によるγ線計測結果を補正して、各ペレット3のウラン濃縮度を求める構成としたので、Gd入りの燃料棒1であっても、渦電流センサ部14による渦電流データから容易にGd濃度を検出することができ、このGd濃度にもとづく補正によって、各Gd入りペレット3のウラン濃縮度をも正確に検査することができる。また、検査ラインをGd入り燃料棒用とGd無し燃料棒用とに分ける必要がないので、1台の装置で検査でき、装置の構成が簡単となり、その設置空間を可及的に小さくすることができる。
【0037】
次に、図9は本発明の第2の実施の形態に係る燃料棒検査装置10Aを示す。
この燃料棒検査装置10Aは、前記γ線センサ部12A(図5、図6参照)において、前記案内台部23eに対して可動台部23dを動かないように固定して使用する第1のγ線センサ部12A1と、前記案内台部23eに対して可動台部23dを移動調節可能として使用する第2のγ線センサ部12A2とを前記共通軸線X方向(図9で左右)に隣接して配置すると共に、第2のγ線センサ部12A2から共通軸線X方向の他方(図9で右側)へ離間して、図2、図4に示した前記渦電流センサ部14を配置し、さらに、前記第1のγ線センサ部12A1の一方(図9で左方)に隣接する位置と、前記渦電流センサ部14の他方に隣接する位置と、前記第2のγ線センサ部12A2と渦電流センサ部14の間とに、それぞれ搬送部15としての搬送機構17Dを配置して構成されている。
【0038】
前記搬送機構17Dは、前記第1の搬送機構17A(図2参照)における基台17aの上部に、一端側(図2で左端側)の支持ローラ19と棒センサ21に対向させて、それらと同一のものをもう1組設けて構成されている。
その他の構成は前記燃料棒検査装置10と同様であるので、同一の構成部分には同一の符号を付してそれらについての説明は省略する。
前記燃料棒検査装置10Aにおいては、前記燃料棒検査装置10と同様に搬送部15における各搬送機構17Dの駆動モータ22により、駆動ローラ部18が駆動されることによって、燃料棒1が共通軸線X方向の他方へ移動されて燃料棒1内のペレット3の位置が計測された後、前記燃料棒1が共通軸線Xの一方へ間欠的に移動されながら、第1のγ線センサ部12A1と第2のγ線センサ部12A2とによるγ線計測が同時に、かつ同一のペレット3に対する測定が重複して行われることなく進行され、各ペレット3のウラン濃縮度が検査される。
【0039】
その場合、前記第1のγ線センサ部12A1と第2のγ線センサ部12A2との共通軸線X方向における設置位置の相互間距離は、前記燃料棒1のペレット3の設計ノミナル充填ピッチ(軸方向の長さ)の整数倍に設定されており、第1のγ線センサ部12A1のγ線感知部25が1つのペレット3をその軸方向の中央位置(隣のペレット3のγ線が入らないところ)で測定しているときに、第2のγ線センサ部12A2のγ線感知部25も他のペレット3をその中央位置で測定を行えるようにされている。しかし、実際には、前記燃料棒1のペレット3の長さはばらつきがあり、第2のγ線センサ部12A2による測定が他のペレット3の中央位置において行えるとは限らない。
【0040】
そこで、前記燃料棒1を搬送部15の駆動ローラ部18によって共通軸線X方向の他方へ連続定速で移動させた際に得られた前記燃料棒位置センサ20による燃料棒位置データと、前記渦電流センサ部14からの信号を解析制御装置35の渦電流データ採取部37で処理して得られた渦電流データとから、前記解析制御装置35が燃料棒1の各ペレット位置を割り出し、この割り出した各ペレット位置にもとづいて、前記第1のγ線センサ部12A1と第2のγ線センサ部12A2とによるγ線測定の分担スケジュール(燃料棒1の軸線L方向の位置における第1のγ線センサ部12A1と第2のγ線センサ部12A2に対する測定領域の割り付け)と燃料棒移動量およびγ線センサ部14の可動台部23dの移動調節量(第1のγ線センサ部12A1による各ペレット3のγ線計測時に、第2のγ線センサ部12A2により測定されるペレット3のγ線感知部25からの相対位置ずれ)を割り出す。
【0041】
そして、前記解析制御装置35の装置制御部40によって搬送部15の駆動モータ22が作動されて、前記燃料棒1が共通軸線X方向の一方へ戻されるときに、前記γ線センサ部12A1におけるγ線感知部25の軸方向の中央に、測定対象のペレット3の軸方向の中央が一致して該測定対象のペレット3のγ線のみがγ線感知部25に入射される位置で、一旦、停止して保持され、同時に、前記第2のγ線センサ部12A2の前記可動台部23dが、前記解析制御装置35が割り出した前記移動調節量にもとづいて前記装置制御部40によって駆動ドライバ47を介して前記駆動モータMが作動されることにより、共通軸X方向に微動され、第2のγ線センサ部12A2におけるγ線感知部25の軸方向の中央に、該γ線感知部25の測定対象のペレット3の軸方向の中央が一致されて、該測定対象のペレット3のγ線のみが第2のγ線センサ部12A2のγ線感知部25に入射される位置で停止される(図8のステップS4参照)。その停止中に、各測定対象のペレット3,3から放射されるγ線がそれぞれ積算されて計測されて解析制御装置35に送られて、ペレットの濃縮度が計算されて求められる。
【0042】
このように、前記第2の実施の形態に係る燃料棒検査装置10Aによれば、第1の実施の形態に係る燃料棒検査装置10によると同様な作用効果が奏されると共に、第1のγ線センサ部12A1と第2のγ線センサ部12A2の2台のγ線センサ部によるγ線計測結果にもとづいて、前記燃料棒1のペレット3のウラン濃縮度を求めることができるので、燃料棒1の検査速度の高速化を図ることができる。しかも、第2のγ線センサ部12A2は、その可動台部23dが固定台部23eに対して共通軸線X方向に移動調節可能に支持されているので、燃料棒1内のペレット3の長さにばらつきがあっても、第1のγ線センサ部12A1によるγ線計測時に、第のγ線センサ部12A2のγ線感知部25に対する測定対象のペレット3の位置ずれを自動的に修正することができる。したがって、常に、前記燃料棒1の軸線L方向に配列されている複数のペレット3を、同時にかつ同一のペレットに対する測定が重複することなく、γ線計測することができるので、前記燃料棒1内のペレット3のウラン濃縮度をより早く正確に求める(検査する)ことができる。
【0043】
また、図10は本発明の第3の実施の形態に係る燃料棒検査装置10Bを示す。
この燃料棒検査装置10Bは、図10(a)に示すように、前記γ線センサ部12A(図5、図6)の3台以上の複数台を、それらのγ線センサ11の中空部11aの中心(前記γ線感知部25の中空部25aの中心)が前記共通軸線X上に一致するようにして、該共通軸線X方向に広く間隔をあけて配置すると共に、各γ線センサ部12Aの一側に前記駆動ローラ部18(図2参照)を、他側に前記搬送機構17B(図2参照)を配置してなる搬送部15を設けてγ線検査ラインG1とし、一方、図10(b)に示すように、前記γ線検査ラインG1の前工程に、前記渦流センサ部14(図2参照)の両側に、前記検査ラインG1の搬送部15から独立させた搬送部15Aとして前記搬送機構17D(図9参照)を設けてなる渦電流検査ラインG2を配置して構成されている。
【0044】
前記渦電流検査ラインG2における渦電流センサ部14の渦電流センサ13の中空部13aの中心と前記γ線検査ラインG1のγ線センサ部12のγ線センサ11の中空部11aの中心は、前記共通軸線X上に位置されていても、独立でもよい。なお、前記γ線検査ラインG1のγ線センサ部12の1つは、可動台部23dが案内台部23eに対して移動しないように固定したγ線センサ部12A1(図9参照)とすることができる。
その他の構成は、前記実施の形態に係る燃料棒検査装置10,10Aと同様であるので、同様な構成部分には同一の符号を付してそれらの構成についての説明は省略する。
前記第3の実施の形態に係る燃料棒検査装置10Bによれば、第2の実施の形態に係る燃料棒検査装置10Aによると同様な作用効果が奏されると共に、第1のγ線センサ部12A1と第2のγ線センサ部12A2の3台以上の複数のγ線センサ部12Aにより、前記燃料棒1の軸線L方向におけるペレット3のγ線測定領域を重複することなく分担してγ線計測を行って、各ペレット3のウラン濃縮度を求めることができるので、前記γ線検査ラインG1の長さが長くなるが、前記燃料棒1の検査速度を一層高速化することができる。
【0045】
さらに、図11は本発明の第4の実施の形態に係る燃料棒検査装置10Cを示す。
この燃料棒検査装置10Cは、燃料棒求芯型リング部27aのある前記γ線センサ部12A(12A2)を、複数台、それらのγ線センサ11の中空部11aが前記共通軸線X上に整列するように近接させて架台16に立設させると共に、それらのγ線センサ部12Aの集合群の両端側に搬送部15としての前記搬送機構17D,17Dを配置してγ線検査ラインG1が構成されたものである。前記γ線センサ部12Aの1つは、可動台部23dが案内台部23eに対して移動しないようにしたγ線センサ部12A1(図9参照)とすることができる。
その他の構成は、前記実施の形態に係る燃料棒検査装置10Bと同様であるので、同様な構成部分には同一の符号を付してそれらの構成についての説明は省略する。
前記第4の実施の形態に係る燃料棒検査装置10Cによれば、第3の実施の形態に係る燃料棒検査装置10Bによると同様な作用効果が奏されると共に、γ線検査ラインG1の複数台のγ線センサ部12Aと搬送機構17Dが近接して配置されているので、装置の設置空間を可及的に小さくすることができる。
【0046】
なお、前記各実施の形態に係る燃料棒検査装置10,10A,10B,10Cにおいては、前記搬送部15において燃料棒1をセンサ軸芯に強制求芯し、軸線L方向に案内、移動させる駆動手段として、燃料棒1の外周部を駆動ローラ18aで強制求芯させるように挟み付け、駆動モータ22によって伝動機構22aを介して回転させることにより、燃料棒1を軸線L方向に推進させる構成としたが、前記駆動手段の具体的な構成は、上記に限らず、種々の構造のものを採用することができ、要するに、前記燃料棒1を軸線L方向(共通軸線Xの方向)に、前記γ線センサ11の中空部11aおよび前記渦電流センサ13の中空部13aの中心に正確に沿って維持しながら、一定速度および高速間欠で円滑に移動させるものであれば、如何なるものであってもよい。
【0047】
また、前記各実施の形態に係る燃料棒検査装置10,10A,10B,10Cにおいては、燃料棒内の各ペレットの位置の認識とGd濃度の計測を行うために、1つの渦電流センサ部14を非破壊センサとして兼用したが、これに限らず、個別に使用したり、他の非破壊センサを使用してもよい。
また、前記各実施の形態に係る燃料棒検査装置10,10A,10B,10Cは、ペレット1がウランだけでなく、MOX燃料などのウラン以外のプルトニウムやトリウムなどの自然崩壊して定量的に特有のガンマ線を放出するものの単体および混合物のものでも検査できる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】原子炉用燃料棒を一部断面で示した正面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る燃料棒検査装置を示す正面図である。
【図3】図2のイ−イ矢視図である。
【図4】図3のロ−ロ断面図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る燃料棒検査装置におけるγ線センサ部の他の例を示す側面図である。
【図6】図5のハ−ハ断面図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係る燃料棒検査装置の制御装置を示すブロック図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係る燃料棒検査装置の作用を説明するフロー図である。
【図9】本発明第2の実施の形態に係る燃料棒検査装置を示す正面図である。
【図10】本発明の第3の実施の形態に係る燃料棒検査装置を示す正面図である。
【図11】本発明の第4の実施の形態に係る燃料棒検査装置を示す正面図である。
【符号の説明】
【0049】
1 原子炉用燃料棒(燃料棒)
3 ペレット
10,10A,10B,10C,10D 燃料棒検査装置
11 γ線センサ
12,12A,12A1,12A2 γ線センサ部(γ線計測器)
13 渦電流センサ
14 渦電流センサ部(非破壊センサ)
15 搬送部
17a、23,30 基台
17A,17B,17C,17D,17E 搬送機構
18 駆動プーリ部
18a 駆動プーリ
18b ガイドプーリ
19 支持ローラ部
20 燃料棒位置センサ
21 棒センサ
22,M 駆動モータ
23d 可動台部
23e 案内台部
G1 γ線検査ライン
G2 渦電流検査ライン
L 燃料棒の軸線
S 共通軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料棒をその軸線方向に移動させながら、前記燃料棒内の複数のペレットの各々の位置を各ペレットの境界を検出する非破壊センサによって認識した後に、この認識した位置にもとづいて前記燃料棒をその軸線方向に間欠的に移動させ、γ線計測器によりそのγ線測定部の位置で停止されたペレットのγ線計測を行って、該ペレットのウラン濃縮度を求める検査を繰り返して行うことを特徴とする燃料棒検査方法。
【請求項2】
燃料棒を軸線方向へ案内移動させる駆動手段および前記燃料棒の軸線方向への移動位置を検出する燃料棒位置センサを設けた搬送部と、該搬送部によって移動される燃料棒内の複数のペレットの境界を検出する非破壊センサと、前記搬送部によって間欠的に移動されて停止された燃料棒内の各ペレットのγ線計測を行うγ線計測器と、前記燃料棒位置センサと前記非破壊センサとによって認識された各ペレットの位置にもとづいて、前記駆動手段を前記燃料棒内の各ペレットが前記γ線計測器のγ線測定部の位置に移動、停止するように制御し、停止中に前記γ線計測器によりγ線計測を行い、そのγ線計測結果にもとづいて各ペレットのウラン濃縮度を求める解析制御装置とを備えていることを特徴とする燃料棒検査装置。
【請求項3】
前記γ線計測器が前記燃料棒の軸線方向に沿って複数配置され、これらのうちの1つのγ線計測器はγ線測定部の位置が燃料棒の軸線方向に固定され、他のγ線計測器はγ線測定部の位置が燃料棒の軸線方向に移動調節可能とされており、前記位置を固定されたγ線測定部に燃料棒内の1つのペレットが停止されたときに、前記位置を移動調節可能とされたγ線測定部が、位置調整手段によって他のペレットの位置に合うように移動調節されて停止され、前記複数のγ線計測器により同時に燃料棒内の複数の異なるペレットのγ線計測が行われて、それらのウラン濃縮度が求められることを特徴とする請求項2に記載の燃料棒検査装置。
【請求項4】
前記非破壊センサは渦電流コイルを有する渦電流センサであることを特徴とする請求項2または3に記載の燃料棒検査装置。
【請求項5】
前記解析制御装置は、前記渦電流センサから得られた渦電流データにもとづいてペレット内のGd濃度を求め、該Gd濃度によって前記γ線計測器によるγ線計測結果を補正して、各ペレットのウラン濃縮度を求めることを特徴とする請求項4に記載の燃料棒検査装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2008−26071(P2008−26071A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−197101(P2006−197101)
【出願日】平成18年7月19日(2006.7.19)
【出願人】(000176796)三菱原子燃料株式会社 (11)
【Fターム(参考)】