説明

燃料残量計測装置

【課題】 Gセンサを用いない構成にして安価なシステムにすることができ、さらに車両の加減速や傾斜に対して安定した燃料残量の表示を実現できる燃料残量計測装置を提供すること。
【解決手段】 車速情報を入力する車速センサ3と、燃料タンク内の液位を検出する液位センサ4と、車速の変化から車両の加減速状態を判断し、液位の変化から車両の傾斜状態を判断し、車両の加減速や傾斜による燃料残量の実計測値の変動を、燃料残量の計測値として出力する値に反映させないように抑制するマイコン1の演算処理部11の燃料残量計処理部111を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に車両の燃料タンクの燃料の残量を計測する燃料残量計測装置の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
燃料残量を計測する制御において、Gセンサを使用し加減速状態、傾斜状態を判定し指針を制御している(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2004−317254号公報(第2−9頁、全図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の燃料残量計測装置にあっては、エアバッグで使用しているGセンサは高Gセンサとなり、加減速を判定する低Gセンサとはレンジが違うので燃料残量計測装置には使用できないものであった。この低Gセンサは加減速判定用に搭載しないと実現できず、システムとして高価となってしまうものであった。
しかしながら、システムには、車両の加減速や傾斜に対して安定した燃料残量の表示が求められていた。
【0004】
本発明は、上記問題点に着目してなされたもので、その目的とするところは、Gセンサを用いない構成にして安価なシステムにすることができ、さらに車両の加減速や傾斜に対して安定した燃料残量の表示を実現できる燃料残量計測装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明では、車両の燃料タンクの燃料の残存量を計測して表示のための出力を行う燃料残量計測装置において、車速情報を入力する車速情報入力手段と、燃料タンク内の液位を検出する燃料液位検出手段と、車速の変化から車両の加減速状態を判断する加減速判断手段と、前記液位の変化から車両の傾斜状態を判断する傾斜判断手段と、車両の加減速や傾斜による燃料残量の実計測値の変動を、燃料残量の計測値として出力する値に反映させないように抑制する燃料残量制御手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
よって、本発明にあっては、Gセンサを用いない構成にして安価なシステムにすることができ、さらに車両の加減速や傾斜に対して安定した燃料残量の表示を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の燃料残量計測装置を実現する実施の形態を、請求項1,2に係る発明に対応する実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0008】
まず、構成を説明する。
図1は実施例1の燃料残量計測装置のブロック図である。
実施例1の燃料残量計測装置は、マイコン1、表示器2、車速センサ3、液位センサ4を主要な構成としている。
マイコン1は、演算処理部11を内蔵し、演算処理部11は燃料残量計処理部111を内蔵している。
マイコン1は、車速センサ3、液位センサ4の検出結果を入力して、表示器2への表示内容を決定して、表示器2へ出力を行う。
【0009】
表示器2は、指針駆動部21を備え、指針により燃料残量の表示を行う。
指針駆動部21は、マイコン1からの表示指令の内容に応じて、表示のために指針を駆動する。
車速センサ3は、車両の走行速度を検出する。
液位センサ4は、車両の燃料タンクTに設けられ、燃料タンクT内の燃料の液位を検出する。
【0010】
次に作用を説明する。
[燃料残量計測処理]
図2〜図4は、実施例1の燃料残量計測装置のマイコンの演算処理部で実行される燃料残量計処理の流れを示すフローチャートで、以下各ステップについて説明する。
【0011】
ステップS1では、変数Aを最新燃料値として設定する。
【0012】
ステップS2では、変数Bを最新車速値として設定する。
【0013】
ステップS3では、Ap=abs(A−p)の式の演算を行い、液面変動を算出する。なお、absは絶対値を求める演算命令である。Apは液面変動であり、pは後のステップで設定される以前の演算時の計測値である。
【0014】
ステップS4では、Bq=abs(B−q)の式の演算を行い、車速変動を算出する。なお、absは絶対値を求める演算命令である。Bqは車速変動であり、qは後のステップで設定される以前の演算時の計測値である。
【0015】
ステップS5では、車速変動Bqと予め設定したしきい値βを比較し、Bq>βが成立するならばステップS6へ進み、不成立ならばステップS7へ進む。
【0016】
ステップS6では、加減速フラグをONにし、ステップS10へ進む。(なお、図2、図3の丸記号3により、この流れを図示している)
【0017】
ステップS7では、加減速フラグをOFFにする。
【0018】
ステップS8では、傾斜カウンタ=0かどうかを判断し、0ならばステップS9へ進み、0でないならば、ステップS10へ進む。なお、図2、図3の丸記号3により、この流れを図示している)
【0019】
ステップS9では、p=A、つまり、この演算時点での最新燃料値Aをpとする処理を行う。
【0020】
以下の処理は、図3に記載している。
【0021】
ステップS10では、q=B、つまり、この演算時点での最新車速値をqとする処理を行う。
【0022】
ステップS11では、加減速フラグがOFFかどうかを判断し、OFFならばステップS12へ進み、ONならばステップS28へ進む。(なお、図3、図4の丸記号2により、この流れを図示している)
【0023】
ステップS12では、傾斜フラグがOFFかどうかを判断し、OFFならばステップS13へ進み、ONならばステップS20へ進む。
【0024】
ステップS13では、Ap>αの比較演算を行い、条件成立ならばステップS14へ進む。条件不成立ならばステップS19へ進む。なお、αは予め設定したしきい値である。
【0025】
ステップS14では、傾斜カウンタのカウンタをカウントアップする。
【0026】
ステップS15では、傾斜カウンタがnより大きいかどうかを判断し、大きいならばステップS16に進み、n以下ならばステップS24へ進む。(なお、図3、図4の丸記号1により、この流れを図示している)なお、nは傾斜判断を行うためのカウントのしきい値である。
【0027】
ステップS16では、傾斜フラグをONにする。
【0028】
ステップS17では、A´=Aと設定する。
【0029】
ステップS18では、傾斜カウンタを0にし、ステップS24に進む。(なお、図3、図4の丸記号1により、この流れを図示している)
【0030】
ステップS19では、傾斜カウンタを0にする。
【0031】
ステップS20では、Ap≦αが成立するかどうかを判断し、成立するならばステップS21へ進み、不成立ならばステップS22へ進む。
【0032】
ステップS21では、傾斜カウンタをカウントダウンする。
【0033】
ステップS22では、傾斜カウンタが0以下かどうかを判断し、0以下ならばステップS23へ進み、0を超えるならばステップS24へ進む。(なお、図3、図4の丸記号1により、この流れを図示している)
【0034】
ステップS23では、傾斜フラグをOFFにし、ステップS24へ進む。(なお、図3、図4の丸記号1により、この流れを図示している)
【0035】
以下の処理は、図4に記載している。
【0036】
ステップS24では、傾斜フラグがONかどうかを判断し、ONならばステップS25へ進み、OFFならばステップS26へ進む。
【0037】
ステップS25では、指針角度=指針角度−(A´−A)の式により指針角度を求める。
【0038】
ステップS26では、傾斜カウンタが0かどうかを判断し、0ならばステップS27へ進み、0でないならばステップS28へ進む。
【0039】
ステップS27では、指針角度=Aとする処理を行う。
【0040】
ステップS28では、指針角度=指針角度−燃料消費量とする処理を行う。
【0041】
[加減速や傾斜に対して燃料残量の表示を変動させない作用]
(a)加減速時
実施例1の燃料残量計測装置では、Gセンサを用いることなく、車両の加減速する場合を、車速が変化することにより検知する。
加減速時には、ステップS2で設定する最新車速値と、ステップS10で設定する1演算前の車速値qとの、差の絶対値が予め定めた値βを超えることで(ステップS4,S5)、加減速時と判断する。
【0042】
加減速時と判断すると、ステップS11からステップS28へ進み、加減速フラグON時の指針角度からその後の燃料消費量分を引いた値を指針表示するように出力を行う。
そのため、加減速フラグのON時には、実際の液位の検出値ではなく、演算値が用いられるため、車両の加減速で、燃料残量の表示が不安定になることが防止される。
【0043】
(b)傾斜時
実施例1の燃料残量計測装置では、ステップS3により、液位センサ4の値の変動を検出し、その変動が予め設定した閾値αを超えることにより(ステップS13)、傾斜カウンタをカウントアップ、またはカウントダウンし、この傾斜カウンタが所定値nを超える(ステップS16)と、傾斜フラグをONにする(ステップS16)。傾斜フラグがONになると、指針角度は、指針角度−(A´−A)となり、傾斜フラグがON時の指針角度からその後の燃料消費分(A´−A)を引いた値を指針表示するように出力を行う。
そのため、傾斜フラグのON時には、実際の液位の検出値ではなく、演算値が用いられるため、車両の傾斜で、燃料残量の表示が不安定になることが防止される。
【0044】
図5は実施例1の燃料残量計測装置の傾斜時の表示を示す説明図である。図6は従来の燃料残量計測装置の傾斜時の表示を示す説明図である。
従来では、図6に示すように車両が登坂、降坂時に傾斜すると、それに伴い、燃料タンクTも傾斜するが、燃料は液体であるので、液位センサ4では、その変動を検出してしまい、その変動が表示されていた。
しかしながら、実施例1の燃料残量計測装置では、上記説明のように、傾斜フラグONで、指針角度を指針角度−(A´−A)にすることで、傾斜時の値から消費分を演算で引いた値が表示されるようになるため、図5に示すように、車両の傾斜時に値が変動しないようにできる。
【0045】
(c)傾斜がなくなる時点
傾斜フラグがONになった後に、車両の傾斜がなくなって行く場合には、ステップS3で演算される液面の変動値が、小さくなって行き、ステップS20で比較されるしきい値αより変動値Apが小さくなり、傾斜カウンタがカウントダウンして行くことになる。そして、0より小さくなると、傾斜フラグがOFFになる(ステップS21,S22,S23)。
この場合には、傾斜フラグOFF、傾斜カウンタ0となるため、ステップS27の処理で、指針角度がA、つまり、最新の燃料値になる。
【0046】
次に、効果を説明する。
実施例1の燃料残量計測装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
(1)車両の燃料タンクTの燃料の残存量を計測して表示のための出力を行う燃料残量計測装置において、車速情報を入力する車速センサ3と、燃料タンク内の液位を検出する液位センサ4と、車速の変化から車両の加減速状態を判断し、液位の変化から車両の傾斜状態を判断し、車両の加減速や傾斜による燃料残量の実計測値の変動を、燃料残量の計測値として出力する値に反映させないように抑制するマイコン1の演算処理部11の燃料残量計処理部111を設けたため、Gセンサを用いない構成にして安価なシステムにすることができ、さらに車両の加減速や傾斜に対して安定した燃料残量の表示を実現できる。
また、安定した指針表示は、視認性を向上させる効果があり、運転者に違和感を与える事を防止できる。
【0047】
(2)マイコン1の演算処理部11の燃料残量計処理部111は、車両が加減速状態または車両が傾斜状態にあると判断する場合には、加減速状態確定時または傾斜状態確定時の燃料の液位を基準値として、基準値から確定時後の燃料消費量を減算して、燃料残量を演算で求めるようにしたため、加減速状態確定時または傾斜状態確定時後は、液位の変動に左右されずに残量計に表示する値を求めることができ、車両の加減速や傾斜に対して安定した燃料残量の表示を実現できる。
【0048】
以上、本発明の燃料残量計測装置を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
車速情報入力手段は、実施例1では、車速センサ3を設けるようにしたが、燃料残量計測装置のために特別に設けなくも、既存の車速センサから情報を得るようにすればよい。また、車速センサが既存でない場合には、他のコントローラで演算される例えば擬似車体速度などを用いるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】実施例1の燃料残量計測装置のブロック図である。
【図2】実施例1の燃料残量計測装置のマイコンの演算処理部で実行される燃料残量計処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】実施例1の燃料残量計測装置のマイコンの演算処理部で実行される燃料残量計処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】実施例1の燃料残量計測装置のマイコンの演算処理部で実行される燃料残量計処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】実施例1の燃料残量計測装置の傾斜時の表示を示す説明図である。
【図6】従来の燃料残量計測装置の傾斜時の表示を示す説明図である。
【符号の説明】
【0050】
1 マイコン
11 演算処理部
111 燃料残量計処理部
2 表示器
21 指針駆動部
3 車速センサ
4 液位センサ
T 燃料タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の燃料タンクの燃料の残存量を計測して表示のための出力を行う燃料残量計測装置において、
車速情報を入力する車速情報入力手段と、
燃料タンク内の液位を検出する燃料液位検出手段と、
車速の変化から車両の加減速状態を判断する加減速判断手段と、
前記液位の変化から車両の傾斜状態を判断する傾斜判断手段と、
車両の加減速や傾斜による燃料残量の実計測値の変動を、燃料残量の計測値として出力する値に反映させないように抑制する燃料残量制御手段と、
を備えることを特徴とする燃料残量計測装置。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料残量計測装置において、
前記燃料残量制御手段は、
車両が加減速状態または車両が傾斜状態にあると判断する場合には、加減速状態確定時または傾斜状態確定時の燃料の液位を基準値として、前記基準値から確定時後の燃料消費量を減算して、燃料残量を演算で求めるようにした、
ことを特徴とする燃料残量計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−327900(P2007−327900A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−160675(P2006−160675)
【出願日】平成18年6月9日(2006.6.9)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】