説明

燃料濾過器

本願で開示するのは、潤滑添加剤をディーゼル燃料に添加する装置および方法である。1つの例示的実施形態では、ディーゼル燃料濾過器が設けられ、このディーゼル燃料濾過器は、入口開口部および出口開口部を通過する流路を画定するように構成された少なくとも1つの入口開口部および少なくとも1つの出口開口部を有する筺体と、流路に配設された濾過媒体と、濾過器を通過するディーゼル燃料へ潤滑添加剤を分散させるように構成された添加剤カートリッジとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2006年9月29日に出願された米国仮特許出願第60/827,569号の利益を主張し、その内容を参照により本明細書に組み込む。
本発明の実施形態は、契約番号第DE−FC26−02NT41219号の政府支援で実施された。したがって、米国政府が本発明の部分または実施形態に対して払い込み済みの特許使用権を有し、契約番号第DE−FC26−02NT41219号の契約条件によって規定されるように合理的な条件で他者に使用を許可することを特許権者に要求することができる限定的状況の権利を有する。
【0002】
本発明の例示的実施形態は、精製後の燃料流から硫黄含有化合物を除去する燃料濾過器および方法に関する。より詳細には、例示的実施形態は、硫黄含有化合物を除去する燃料濾過器および方法であって、この濾過器が添加剤を燃料に供給する燃料濾過器および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
内燃機関、特に自動車、トラック、ボートなどの輸送利用で使用される内燃機関、およびディーゼル発電機などの固定動力源の使用から生じる大気汚染に関する環境上の懸念が引き続き存在する。硫黄酸化物の形をした直接の汚染源であることに加えて、硫黄はまた処理装置後の排気装置の触媒表面を汚染する。燃料内、したがって排気装置の硫黄を減少させることで、処理装置後の排気装置の有用寿命が延長される。さらに、多くの内燃機関が排気ガス再循環装置を使用するので、排気ガスから硫黄を除去する要望もある。
【0004】
燃料電池などの新しい動力源もまた、燃料流が同様またはより低い硫黄水準を有することを必要とする。燃料電池は、ガソリンなどの様々な炭化水素燃料から改質された水素を燃焼する。硫黄は、燃料電池の活性表面を汚染し、したがって、その寿命を短くする。
【0005】
その結果、様々な政府および取締機関は、内燃機関で使用される燃料中に存在する硫黄および硫黄含有化合物の許容水準を実質的に下げることを意図した立法を引き続き制定する。
【0006】
たとえば、米国環境保護庁は、2006年に始まり2010年に終了する、低硫黄ディーゼル燃料(15ppm以下の硫黄)の生産を段階的に導入することをディーゼル燃料生産者に要求する条令を制定した。同様に、2004年から2006年まで、ガソリンの硫黄水準は50ppmから30ppmに減少された。絶えずさらに低水準の硫黄含有化合物を有する市販燃料の必要性が、このような燃料の製造者、すなわち精製業に、新しい問題を引き起こす。
【0007】
低硫黄のディーゼル燃料の導入はまた、燃料噴射装置に関する問題を引き起こした。なぜなら、燃料の潤滑特性が、硫黄含量を低下させるために必要とされる水素処理プロセスによって低下したからである。乗用車と軽トラック用の大多数の燃料潤滑分配型噴射ポンプは、低硫黄のディーゼル燃料が潤滑添加剤で処理されていない場合は、摩耗の増加を示した。摩耗の増加は、噴射ポンプの耐用年数を縮め、エンジン出力の損失、より高い排気量と燃料消費、劣った操作性、発進時の困難さを引き起こした。
【0008】
ディーゼル燃料に潤滑添加剤を添加することは、前述の問題を克服するための唯一の実行可能な解決策であるように見える。
さらに、ジェット燃料も同じ輸送管で輸送される場合、添加剤を添加されたディーゼル燃料との輸送管内での非互換性に関する問題がある。結果的に、添加剤の添加は、燃料が分配された後、かつ精製の後に、行われなければならない。
【0009】
さらに、精製されたディーゼル燃料は、まだ多少の硫黄を含有しているので、内燃機関または他の装置の系統に燃料濾過器を備える要望がある。内燃機関または他の装置では、さらに燃料濾過器が燃料の硫黄分を削減するように構成される。たとえば、燃料から硫黄を除去する1つの手法は、燃料流を濾過するように配置された濾過器に吸着剤を配置することである。しかし、これらの吸着剤はまた、所望の特性または燃料の添加剤、すなわち低硫黄ディーゼル燃料に関連した前述の問題に対処するために燃料に添加された潤滑添加剤も濾過することがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、燃料に潤滑添加剤を供給する燃料濾過器を提供することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
開示するのは、精製後燃料流から硫黄含有化合物を除去するための燃料濾過器および方法である。
一例示的実施形態では、燃料濾過器が提供され、この燃料濾過器は濾過されている燃料へ潤滑添加剤を供給する。
【0012】
別の例示的実施形態では、燃料濾過器が提供され、この燃料濾過器は燃料から硫黄含有化合物を除去し、燃料が濾過された後で燃料へ潤滑添加剤を供給する。
一例示的実施形態によると、ディーゼル燃料に潤滑添加剤を添加する方法が開示され、この方法は、ディーゼル燃料から硫黄を除去するように構成された吸着剤を含む燃料濾過器にディーゼル燃料を通過させるステップと、ディーゼル燃料が吸着剤を通過した後に、ディーゼル燃料へ潤滑剤すなわち潤滑性添加剤を放出するステップとを含む。
【0013】
別の例示的実施形態によると、ディーゼル燃料濾過器が開示され、このディーゼル燃料濾過器は、入口開口部および出口開口部を通る流路を画定するように構成された少なくとも1つの入口開口部および少なくとも1つの出口開口部を有する筺体と、流路内に配設された濾材と、濾過器を通過するディーゼル燃料へ潤滑添加剤を分散させるように構成された添加剤カートリッジとを備える。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の例示的実施形態による燃料濾過器の概略図である。
【図2】本発明の例示的実施形態による燃料濾過器の概略図である。
【図3】本発明の例示的実施形態による燃料濾過器の概略図である。
【図4】本発明の代替の例示的実施形態の概略図である。
【図5】本発明の代替の例示的実施形態によって構築された燃料濾過器の図である。
【図6】本発明の代替の例示的実施形態によって構築された燃料濾過器の図である。
【図7】図7Aは本発明の代替の例示的実施形態によって構築された潤滑性添加剤カートリッジの図である。図7Bは本発明の代替の例示的実施形態によって構築された潤滑性添加剤カートリッジの図である。図7Cは本発明の代替の例示的実施形態によって構築された潤滑性添加剤カートリッジの図である。
【図8】図8Aは本発明の代替の例示的実施形態によって構築された潤滑性添加剤カートリッジの図である。図8Bは本発明の代替の例示的実施形態によって構築された潤滑性添加剤カートリッジの図である。図8Cは本発明の代替の例示的実施形態によって構築された潤滑性添加剤カートリッジの図である。
【図9】本発明の別の代替の例示的実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本出願は次の米国特許出願、2005年3月15日に出願の第11/081,796号および2007年2月14日出願の第11/674,913号に関連し、それぞれの内容はここに参照することにより本明細書に組み込む。
【0016】
本明細書で開示するのは、濾過器によって濾過されている燃料へ潤滑添加剤を供給することができる燃料濾過器である。別の例示的実施形態では、燃料濾過器がまた、精製後燃料流から硫黄含有化合物を除去するように構成される。
【0017】
本明細書で使用される用語「精製後燃料流」または「精製後燃料」は、石油精製装置によって製造される燃料または燃料流を指す(本明細書では互換性を伴って使用される)。一例示的実施形態では、精製後燃料は、少なくとも1つの硫黄を除去する技術を用いる石油精製装置によって製造された燃料を指す。一実施形態では、精製後燃料流は2000ppm以下の濃度の硫黄含有化合物を含む。別の実施形態では、精製後燃料流は100ppm以下の濃度の硫黄含有化合物を含む。1つの例示的実施形態では、精製後燃料流は15ppm以下の濃度の硫黄含有化合物を含む。一実施形態では、精製後燃料流は、様々な置換アルキル、ベンゾおよびジベンゾチオフェン類として存在する硫黄種の母集団を含む。
【0018】
本明細書で使用されるように、「燃料濾過器」は、一実施形態で、燃料中に見られる硫黄含有化合物を除去することを目指した燃料濾過器について記述することを意図する。例示的実施形態によれば、別体の燃料濾過器が、燃料から汚染物質を除去するために設けられ得ることは理解されよう(たとえば、非硫黄除去の燃料濾過器が代表的)。あるいは、硫黄含有化合物の除去および他の汚染物質の濾過の両方のために構成された単一の燃料濾過器が、開示する燃料濾過器および開示する濾過器を使用する方法の代替実施形態の範囲内にあることを意図する。前述の装置のうちのいずれでも、本発明の例示的実施形態は燃料濾過器を対象とし、燃料濾過器はまた、燃料へ潤滑添加剤を供給するように構成される。本明細書で使用されるように、「潤滑添加剤」は、脱硫工程の有毒な影響を克服するために、精製された燃料に添加された添加剤を意味し、「潤滑添加剤」の非限定的な例には、アミド類、エステル類および酸類が含まれるが、これだけに限定されない。内燃機関のために燃料潤滑添加剤として使用するのに適した潤滑剤が、アミド類、エステル類、酸類、または先のものの2つ以上を含む組合せを含む潤滑剤であることは理解されよう。潤滑剤が内燃機関内で使用するのに適した粘性または発火点を有することは、有利である。
【0019】
ディーゼル燃料用の潤滑添加剤の非限定的な例は、以下の米国特許、第6,562,086号、第6,361,573号、第6,187,939号、第6,080,212号、第5,997,593号、および第5,853,436号で見られるが、それぞれの内容はここに参照することにより本明細書に組み込む。
【0020】
開示する燃料濾過器および方法は、固定装置と自動車両の両方で使用される内燃機関および燃料電池のような動力源と共に用いることができる。内燃機関の例証的な例には、ガソリンで動くエンジンおよびディーゼルエンジンが含まれる。
【0021】
開示する燃料濾過器および方法は、アノード、カソードおよび電解質が両極の間にある燃料電池と共に使用するのに一般的に適しており、典型的には、酸化反応(たとえば、H→2H+2e)がアノードで起こり、還元反応(たとえば、0+2HO+4e→4OH)がカソードで起こる。
【0022】
燃料電池の例証的な例には、プロトン交換膜すなわち高分子電解質膜(PEM)型燃料電池、リン酸(PA)型燃料電池、溶融炭酸塩(MC)型燃料電池、固体酸化物(SO)型燃料電池およびアルカリ型燃料電池が含まれる。
【0023】
固定装置の例証的な例には発電器と発電所が含まれる。
自動車両の例証的な例には、自動車、トラック、ボート、水上バイク、トレーラートラック、ブルドーザーとクレーンのような建設機器、芝刈り機とトラクターのような小型エンジン機器などが含まれる。
【0024】
一実施形態では、車両へ導入されるすべての燃料は内燃機関に入る前に燃料濾過器を通過しなければならないように、硫黄含有化合物を除去または濃度を低下させるための燃料濾過器が、このような自動車両に搭載される。このような利用では、硫黄含有化合物を除去するための燃料濾過器、すなわち、硫黄を削減または除去する燃料濾過器は、車両搭載硫黄研磨または脱硫コンポーネントまたはプロセスとして呼称されてもよい。
【0025】
一例示的実施形態では、硫黄除去濾過器が、排出ガス規制装置の一部であってもよい車両搭載脱硫装置として使用され、この濾過器は、窒素酸化物吸着剤の再生処理の間に、捕獲した硫黄含有化合物を燃料流へ放出し、窒素酸化物吸着剤の再生は当業者には既知の技術によって処理される。
【0026】
さらに、開示する燃料濾過器および方法は、精製後燃料流を分配する従来の燃料分配装置で使用することができる。
このような燃料分配装置は、(i)精製後燃料流を製造する精製装置と、(ii)1つまたは複数の一時保管装置と、(iii)燃料補給を必要とする動力源を有する1つまたは複数の燃料消費物または車両を特徴とすることができる。一時保管装置の例証的な例には、地下および地上の貯溜タンク、タンクローリ、燃料排出または分配装置、および接続配管などが含まれる。燃料を消費する動力源を有する燃料消費物または車両は、自動車両および固定装置について先に説明したものを含む。
【0027】
例証的な精製後燃料流は、ガソリン、灯油、暖房用石油、ジェット燃料、分解ガソリンまたはディーゼル燃料を含む。一例示的実施形態では、燃料はディーゼル燃料である。
用語「ガソリン」は、沸点が約38℃(約100°F)から約204℃(約400°F)までの範囲内である炭化水素の混合物、またはそれらの任意の成分を表す。好適なガソリンの例には、ナフサ、直留ナフサ、コークスナフサ、触媒ガソリン、ナフサ、アルキレート、イソメレート、改質油などのような精製装置内の炭化水素流、およびそれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0028】
用語「分解ガソリン」は、沸点が約38℃(約100°F)から約204℃(約400°F)までの範囲内である炭化水素の混合物、またはこれらの任意の成分を表し、これらはより大きな炭化水素分子をより小さな分子に分解する熱処理または触媒処理のいずれかからできた製品である。好適な熱処理の例には、コーキング、熱分解、ビスブレーキングなどと、それらの化合物とが含まれるが、これらに限定されない。好適な接触分解処理の例には、流動式接触分解、重質油分解などと、それらの組合せとが含まれるが、これらに限定されない。したがって、好適な分解ガソリンの例には、コークスガソリン、熱分解ガソリン、流動式接触分解ガソリン、重質油分解ガソリンなどと、それらの組合せとが含まれるが、これらに限定されない。
【0029】
用語「ディーゼル燃料」は、沸点が約149℃(約300°F)から約399℃(約750°F)までの範囲内である炭化水素の混合物、またはそれらの任意の成分を表す。好適なディーゼル燃料の例には、ライトサイクルオイル、灯油、ジェット燃料、直留ディーゼル、水素化処理ディーゼルなどと、これらの組合せとが含まれるが、これらに限定されない。
【0030】
開示する燃料濾過器によって除去された硫黄含有化合物は、一般に内燃機関で使用することを意図した燃料中で通常見られる任意の硫黄含有化合物であり得る。開示する燃料濾過器は、燃料流からこのような化合物の1つまたは複数を除去することができる。
【0031】
用語「硫黄」または「硫黄含有化合物」は、分解ガソリンまたはディーゼル燃料などの炭化水素含有流体中に通常存在する硫黄元素または硫黄合成物などの任意の形の硫黄を表す。開示する方法の間に存在し得る硫黄の例には、硫化水素、硫化カルボニル(COS)、二硫化炭素(CS)、メルカプタン類(RSH),有機硫化物(R−−S−−R)、有機ジスルフィド類(R−−S−−S−−R),チオフェン、置換チオフェン類、有機三硫化物、有機四硫化物、ベンゾチオフェン、アルキルチオフェン類、アルキル化ベンゾチオフェン類、ジベンゾチオフェン類、アルキル化ジベンゾチオフェン類など、およびこれらの組合せと、本発明の方法で使用されることを意図した種類のディーゼル燃料中に通常存在する高分子量の硫黄とが含まれるが、これらに限定されない。各Rは、アルキル、もしくはシクロアルキル、または1炭素原子から10炭素原子までを含むアリール基であり得る。
【0032】
一例示的実施形態では、開示する濾過器または方法によって除去される硫黄含有化合物は、硫黄含有芳香族化合物である。一実施形態では、開示する燃料濾過器によって除去される硫黄含有化合物は、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、およびそれらの誘導体を含む。
【0033】
一実施形態では、開示する燃料濾過器および方法は、従来の燃料分配装置の一時保管装置と共に使用するのに好適である。このような方法および燃料濾過器が、このような一時保管装置内の多数の位置で用いるこができることは理解されよう。たとえば、燃料脱硫濾過器が、利用箇所または一時保管装置の入口もしくは出口で、分配装置に組み込まれることが可能である。別の実施形態では、燃料脱硫濾過器が、1箇所または複数箇所の中央分配箇所で組み込まれることが可能である。
【0034】
開示する燃料濾過器はまた、車両の燃料取り入れ開口部を通って車両の運転者によって自動車両に直接注入された市販の精製後燃料と共に使用するのにも好適である。一例示的実施形態では、精製後燃料は純粋である。すなわち、精製後燃料は、元の生産精製所によって用いたものを除いて、開示する燃料濾過器を通過する前に任意の前処理のステップが行われない。このような燃料は純粋な精製後燃料と呼ぶことができる。
【0035】
開示する燃料濾過器および方法を通過する燃料または燃料流は、「無公害燃料」あるいは「磨き上げた燃料」と呼ぶことができる。
一実施形態中で、濾過されていない、あるいは「汚染された」精製後燃料流は、約6ppmから500ppmまでの硫黄濃度を含むことがある。別の実施形態では、開示する濾過器および方法は、約15ppm以下の硫黄濃度を有する精製後燃料流と共に使用してもよい。一例示的実施形態では、開示する濾過器および方法は、約9ppm以下の硫黄濃度を有する精製後燃料と共に使用してもよい。一実施形態では、開示する濾過器および方法は、約6ppmから約15ppmまでの硫黄濃度を有する精製燃料流と共に使用してもよい。
【0036】
一実施形態では、開示する方法は、濾過された、すなわち硫黄濃度を低下させた、特に3ppm以下の硫黄濃度の、無公害燃料流を生じる。
本発明の例示的実施形態によると、開示する燃料濾過器は、少なくとも−3の酸解離定数を特徴とする表面酸性度を有する無機酸化物を含む吸着剤を含んでもよい。一実施形態では、開示する燃料濾過器は、少なくとも−3の酸解離定数を特徴とする表面酸性度を有する無機酸化物から本質的に成る吸着剤を含む。
【0037】
本明細書で使用される用語「無機酸化物」は、硫黄含有芳香族化合物を吸着するのに十分大きな気孔を有する多孔性物質を指す。
一実施形態では、無機酸化物は、少なくとも50m/gの表面積を特徴とすることができる一方、別の実施形態では、無機酸化物は、約150m/gから約500m/gまでの表面積を特徴とすることができる。
【0038】
一実施形態では、好適な無機酸化物は、50オングストロームを越える気孔を持つ。
好適な無機酸化物の例示的な例には、アルミナ、カオリナイト(ナトリウム、アンモニウムまたは水素型のいずれか)、モンモリロナイト(ナトリウム、アンモニウム、または水素型のいずれか)、シリカマグネシア、アルミナボリア、活性アルミナ、ゼオライト類、アルミノケイ酸塩類、シリカゲル類、粘土、活性粘土、シリカゲル、二酸化ケイ素、メソポーラスシリカ多孔性物質(FSM)、シリカアルミナ化合物、シリカ、アルミナリン酸塩化合物、超酸、超硫酸、チタニア、硫酸化ジルコニア、二酸化チタン、ハフニウム酸化物、およびこれらの混合物などが含まれる。一例示的実施形態では、好適な無機酸化物は、アルミナ、ゼオライト、シリカアルミナ化合物、シリカ、アルミナリン酸塩化合物類、超酸類、シリカゲル類、チタン酸塩類、ジルコニア、二酸化チタン、ハフニウム酸化物、およびこれらの混合物の少なくとも1つである。
【0039】
1つの特に例示的な実施形態では、無機酸化物はアルミナである。ここで使用される用語「アルミナ」はAlを指す。
アルミナの多くの種類および位相は開示する燃料濾過器および方法で使用するのにふさわしいが、一実施形態では、無機酸化物は、ガンマアルミナ、イータアルミナ、およびこれらの混合物の少なくとも1つである。
【0040】
しかし、前述にかかわらず、少なくとも−3の酸解離定数を特徴とする表面酸性度を有する無機酸化物だけが、開示する燃料濾過器および方法で使用するのにふさわしい。
本明細書で使用する用語「表面酸性度」は、ジシンナマルアセトンなどの酸塩基指示薬を介する可視変色によって測定可能である酸性度を有する表面を指すことは理解されよう。
【0041】
一実施形態では、開示する燃料濾過器は、最小−3の酸解離定数を特徴とする表面酸性度を有する無機酸化物を含むか、それから本質的に成る、またはそれのみから成る吸着剤を備える。一実施形態では、開示する燃料濾過器は、最小−6の酸解離定数を特徴とする表面酸性度を有する無機酸化物を含むか、それから本質的に成る、またはそれのみから成る吸着剤を備える。一実施形態では、開示する燃料濾過器は、最小−8の酸解離定数を特徴とする表面酸性度を有する無機酸化物を含むか、それから本質的に成る、またはそれのみから成る吸着剤を備える。別の実施形態では、開示する燃料濾過器は、約−3から約−8までの酸解離定数を特徴とする表面酸性度を有する無機酸化物を含むか、それから本質的に成る、またはそれのみから成る吸着剤を備える。吸着剤の機能は、燃料流からの硫黄含有化合物の吸着および除去であることが認識されよう。
【0042】
好適な無機酸化物は、別の好適な無機酸化物を焼成することで得ることができる。一実施形態で、他の点では好適な無機酸化物であり、必要とされる表面酸性度を欠くが、それ以外は上記通りの無機酸化物である。一例示的実施形態では、好適な無機酸化物は、必要とされる表面酸性度を欠くが、他の点では上記の通りであり、市販で入手可能である無機酸化物を焼成することで得られる。
【0043】
一実施形態では、好適な無機酸化物は、市販で入手可能であり、他の点では好適な無機酸化物を、少なくとも550℃の温度まで熱することにより得られる。別の実施形態では、好適な無機酸化物は、他の点では好適であり、市販で入手可能な無機酸化物を、300℃から500℃までの温度まで熱することにより得られる。一例示的実施形態では、好適な無機酸化物は、他の点では好適であり、市販で入手可能な無機酸化物を、窒素の流れの下で400℃から450℃までの温度まで熱することにより得られる。調製後に、吸着剤は使用するまで乾燥した窒素の下で保管することができる。
【0044】
開示する吸着剤が、一実施形態において、第VIIIa族金属、第IVa族、第IVb族などの、金属および金属酸化物を含むことができることは理解されよう。
しかし、一実施形態では、開示する吸着剤は、無機酸化物に関連して、上に述べたもの以外の任意の金属または金属酸化物で任意に処理されなくてもよい。すなわち、一実施形態では、開示する吸着剤は、少なくとも−3の酸解離定数を特徴とする表面酸性度を有する無機酸化物から本質的に成る。別の例示的実施形態では、開示する吸着剤は、少なくとも−3の酸解離定数を特徴とする表面酸性度を有し、脱硫触媒すなわち吸着剤として従来使用されてきた金属および金属酸化物が実質的に含まれない無機酸化物から本質的に成る。別の例示的実施形態では、開示する吸着剤は、少なくとも−3の酸解離定数を特徴とする表面酸性度を有し、第VIIIa族金属、第IVa族、第IVb族などの、金属および金属酸化物を実質的に含まない無機酸化物から本質的に成る。
【0045】
ここで図1および図2を参照すると、例示的実施形態によって構築された燃料濾過器10の非限定例が示されている。例示的実施形態によると、燃料濾過器はディーゼル燃料濾過器である。ここで、燃料濾過器10は、入口開口部および出口開口部を通過する流路18を画定するために少なくとも1つの入口開口部14および少なくとも1つの出口開口部16を有するように構成された筺体12を備える。
【0046】
一例示的実施形態(図1)によると、燃料濾過器は、燃料を濾過するように構成された濾材20を含む。本発明の例示的実施形態によると、濾材は、濾過器を通過する流体から硫黄を除去するように構成された吸着剤を含む。
【0047】
濾過器10はまた、添加剤カートリッジ22を含み、その添加剤カートリッジは、燃料中へ分散される潤滑添加剤、すなわち潤滑性添加剤24を含む。したがって、カートリッジ22は、燃料へ潤滑性物質を添加し戻す手段を提供する。
【0048】
濾材20に加えて、代替の例示的実施形態(図2)では、吸着剤26は、また燃料を濾過するために、すなわち燃料から硫黄を除去するために流路18内に配置される。吸着剤26の非限定の例は、2007年2月14日出願の米国特許出願第11/674,913号で見られ、その内容はここに参照することにより本明細書に組み込む。
【0049】
図2に示した実施形態では、潤滑剤すなわち潤滑性添加剤が燃料から除去されないように、燃料が吸着剤26によって濾過された後、燃料へ潤滑性添加剤を分散させるために、添加剤カートリッジ22が流路内に配置される。本発明の例示的実施形態によると、添加剤カートリッジの位置にかかわらず(たとえば、吸着剤の前または後にある)、添加剤カートリッジは、2007年2月13日に出願された次の米国仮特許出願第60/889,728号、および2007年4月9日に出願された第60/910,772号に示されたものと同じ構成であり得る。それぞれの内容はここに参照することにより本明細書に組み込む。添加剤カートリッジの別の非制限の構成が、2007年8月28日に出願された米国特許出願第11/846,265号に示されている。その内容もここに参照することにより本明細書に組み込む。
【0050】
一例示的実施形態で、添加剤カートリッジが燃料濾過器内に配置され、あるいは、添加剤カートリッジは、燃料回路(たとえば、それぞれが燃料流と流体連通している、別の燃料濾過器および別の添加剤カートリッジを備える装置)の流体流路と流体連通し、潤滑性添加剤は燃料流へゆっくり制御供給される、または、信号が燃料内の潤滑添加剤の水準を検出するように構成された検出器から受け取られるときに、潤滑添加剤が燃料流へある値で注入されるすなわち放出される。別の非限定の濾過器の構成が、図3に示されている。
【0051】
例示的実施形態によると、添加剤カートリッジ22は、任意の形(たとえば、液体、ゲル、固体、小球など)の添加剤を分散させるために複数の開口部を備えることができる。あるいは、図4を参照すると、添加剤カートリッジ22はまた、添加剤を測定するための定量ポンプおよび/または可動バルブ30を備えることもできる。この実施形態では、燃料濾過器は燃料中の潤滑添加剤の含有量を測定する、複数の検出器または単一の検出器50を有する装置40の構成要素となることができる。したがって、所定の水準が検知された場合、ポンプまたはバルブが、添加剤を分散させるために作動する/開く。所定の水準は、検出する燃料の状態に対応し、潤滑添加剤は所望の水準以下とする。
【0052】
あるいは、図4に破線で示すように、添加剤カートリッジは、装置を介して流体流と流体連通している別の構成要素とすることもでき、潤滑添加剤は、燃料へゆっくり放出される、または燃料に注入される、または、可動バルブが、燃料へ添加剤を放出するために開かれる。この実施形態では、添加剤カートリッジは、添加剤カートリッジ内の添加剤の補給を可能にするために、燃料回路から別々に除去可能である。
【0053】
一例示的実施形態では、添加剤カートリッジは燃料濾過器内に配置され、添加剤カートリッジは燃料濾過器とともに取り外し、かつ取り替えられる。以上説明したように、燃料濾過器はさらに、濾過器を通過する燃料へ添加剤を放出する制御装置からの命令または信号を受領するポンプまたは可動バルブを備えることができる。さらに別の代替実施形態では、添加剤カートリッジが燃料濾過器内に配置され、添加剤カートリッジは添加剤を燃料へゆっくり制御供給するように構成される。この実施形態では、添加剤カートリッジは濾材の吸着剤から上流または下流に配置されてもよい。
【0054】
1つの例示的実施形態では、潤滑添加剤の放出を監視および制御するための装置、方法または手段が、複数の検出器から信号を受け取り、かつ燃料流へ添加剤を放出するために燃料濾過器へ信号を提供するように構成されるプログラマブル論理を含むマイクロプロセッサすなわち制御装置70へそれぞれが信号を供給する複数の検出器50を備える搭載型制御装置であり、添加剤は硫黄除去濾過器によって濾過されずに燃料流へ受け入れることができる。
【0055】
コンピュータプログラムに応じて動作する制御装置が上記の処理を実行してもよいことは理解されている。したがって規定された機能および所望の処理ならびに計算を実施するために、制御装置は、これらに限定されないが、処理装置、コンピュータ、メモリ、記憶装置、レジスタ、時間測定、割り込み、通信インターフェース、および入力/出力信号インターフェース、ならびに上記のものの少なくとも1つを含む組合せを含むことができる。
【0056】
上記のように、本発明の例示的実施形態を実行するためのアルゴリズムは、それらの処理の実施のためにコンピュータが実行する処理および装置の形で具体化することができる。アルゴリズムは、フロッピーディスク、CD−ROM、ハードドライブまたは他のコンピュータ可読の記憶媒体のような有形の媒体で具体化された指示を含むコンピュータ・プログラム・コードの形で具体化することもでき、そのコンピュータ・プログラム・コードがコンピュータおよび/または制御装置へロードされ、コンピュータおよび/または制御装置によって実行される場合、コンピュータは本発明を実施するための装置になる。既存の装置は指令コードの種々相を実行するために更新することができる再プログラム可能な記憶装置(たとえばフラッシュメモリ)を有しているので、アルゴリズムはまた、コンピュータ・プログラム・コードがコンピュータへロードされ、コンピュータによって実行されるとき、たとえば、そのコンピュータ・プログラム・コードが記憶媒体に記憶されるか、コンピュータへロードされ、および/またはコンピュータによって実行されるか、あるいはたとえば電気配線またはケーブルによって、光ファイバーを介して、または電磁放射によってなど何らかの伝送媒体によって伝送されるかといった、コンピュータ・プログラム・コードの形で具体化することができる。汎用のマイクロプロセッサ上で実行されるとき、コンピュータ・プログラム・コード・セグメントは、特定の論理回路を生成するためのマイクロプロセッサを構成する。
【0057】
たとえば、これらの指示は、コンピュータまたは制御装置のRAM内に存在してもよい。あるいは、その指示は、コンピュータディスケットのようなコンピュータ読取り可能媒体を備えたデータ記憶装置上に含まれていてもよい。または、その指示は、磁気テープ、従来のハードディスクドライブ、電子的読み出し専用メモリ、光記憶装置、または他の好適なデータ記憶装置上に記憶されてもよい。本発明の実例となる実施形態では、コンピュータが実行可能な指示は、蓄積されたC++の互換性をもつコードの系列であることもできる。
【0058】
例示的実施形態では、制御装置は、燃料濾過器中の潤滑添加剤が燃料流へ放出されることになっているかどうか判定する複数の検出器からの信号を評価するための論理を含む。
1つの非限定の実施形態では、硫黄の放出を制御するための手段は、潤滑添加剤の所定の水準を識別する回路と検出器を含む。
【0059】
図5から図8までを参照すると、本発明の非限定の例示的実施形態による燃料濾過器10を示す。燃料濾過器は、一般的に内部に中空室を画定する中空円筒状筺体12を含み、濾材20がその室に配設され、添加剤カートリッジすなわち分散装置22も筺体室の内部で保持される。
【0060】
一実施形態では、筺体はまた、容器すなわち筺体に密封に付けられた底板80を含む。小孔のある中心筒は、任意で、支持的に濾材20を強化するために濾過器筺体内に設けられてもよい。
【0061】
筺体の底板は、入口経路14を備える複数の入口孔を含み、底板はまた、出口経路16を画定する中央出口孔を含む。1つの非限定の実施形態では、出口孔内に複数の雌ねじが形成され、外側にねじを切った中空の円筒形接続金具(不図示)に濾過器を回転可能に取り付けることができる。必要であれば、環状の外部密閉または填環82は、底板の底面に形成された溝にはめ込まれ、濾過器の基部から外部への漏出を阻止する。
【0062】
さらに、一実施形態では、填環86が、添加剤カートリッジすなわちバスケット24と濾材20との間に配設される。
非限定の一例示的実施形態では、添加剤カートリッジは、第1の室90および第2の室92を有する筺体部88を含む。第1の室90は、一対の隔壁94および96によって第2の室92から隔てられる。一実施形態では、液体の添加剤は室90および92に配設される。定量開口部98は、濾過器を使用中に第1の室90の添加剤が定量開口部を通過できるように設けられる。例示的実施形態によると、定量開口部は添加剤を制御供給するように構成される。したがって、添加剤は濾過器の耐用年数にわたってゆっくり制御供給される。さらに、単一の開口部が設けられてもよく、または、複数の開口部が室90への流体連通のために設けられてもよい。
【0063】
同様に、定量開口部100が、濾過器の使用中に第2の室92の添加剤が定量開口部を通過できるようにするために設けられる。例示的実施形態によると、定量開口部が添加剤を制御供給するように構成される。したがって、添加剤は濾過器の耐用年数にわたってゆっくり制御供給される。さらに、単一の開口部が設置されてもよく、または、複数の開口部が室92への流体連通のために設けられてもよい。
【0064】
一例示的実施形態によると、室90は1つの潤滑性添加剤を含み、室92は別の潤滑性添加剤または別の燃料添加剤を含み、それぞれは互いに異なっている。
もちろん、他の構成は本発明の例示的実施形態によって熟考される。たとえば、筺体が複数の室および複数の測定孔を有するように構成されることができる。あるいは、筺体が単一の室、および単一の測定孔または複数の測定孔を有するように構成されることもでき、したがって、単一の添加剤が添加剤カートリッジすなわち分散装置の単一の室から供給される。
【0065】
本発明の例示的実施形態によると、単一の添加剤または複数の添加剤は、液体、ゲル、小球、それらの組合せ、またはそれらの等価物のうちのいずれか1つである。一例示的実施形態では、定量開口部が燃料可溶性材料で密閉され、燃料可溶性材料が燃料濾過器の使用中に定量開口部から外れるようになる。さらに、開口部の密閉は、組み立ておよびカートリッジの充填中に添加剤がカートリッジ内に配置されることを可能にする。
【0066】
図7Aから図7Cまでで示されるように、第2の室92は第1の室90より大きく、したがって、必要であれば、構造リブ102が第2の室に配置される。あるいは、第2の室92は構造リブ102なしで構築される。したがって、第1の室とは対照的に、大量の添加剤が第2の室には配置されることができる。構造リブは斜めになっているので、室からの添加剤の流体流の邪魔をしない。言いかえれば、1点での構造リブは、定量開口部に隣接している筺体の底面(たとえば、反対側キャップ112)で終端する。さらに、用途の必要性に応じて、単一または複数の室の寸法は、添加剤の要求量が変わるにつれて変わる。
【0067】
さらに、筺体は、濾材の底板の出口開口部および中央開口部との係合のために筺体のいずれかの側に首部を有する。これは、配置の容易さ、ならびに分散筺体を通る流体移送のために流体の密閉を設けることを可能にする。
【0068】
本発明の例示的実施形態によると、筺体は、筺体から離れて垂れ下がる首部分122を有し、筺体が底板80の出口開口部に流体的に密閉されるとき、添加剤カートリッジの上部上、単一または複数の定量開口部を含むカートリッジの側壁に沿って、濾材を経由して、および最終的に濾過器の出口開口部から外へ流体が流れさせるように、隙間が添加剤カートリッジの表面と底板の入口開口部との間で維持される。一実施形態では、出口経路120は添加剤カートリッジ内に配置され、濾過器の出口路と流体連通にある。したがって、流体が流れるにつれ、定量開口部または分散装置内に保管される開口部添加剤は、添加剤カートリッジすなわち分散装置を通過して流れる流体または燃料に放出される。
【0069】
添加剤カートリッジおよび濾過媒体の外周が濾過器の筺体の内法寸法より若干小さいことは明白であり、入口開口部へ流入する流体は添加剤カートリッジの上部と底板との間の隙間を通過し、次に添加剤カートリッジの筺体の外周と、濾過媒体の外周と、濾過器の筺体の内法寸法によって規定される隙間つまり流路に流入し、次に流体は濾過媒体に流入し、濾過器の筺体の開口部と、当てはまる場合には、濾過媒体および添加剤カートリッジとにより画定される出口路経由で濾過器筺体から戻る。非限定の一例示的実施形態では、濾材の外周および添加剤カートリッジの筺体は、実質的に同じであり、したがって、濾材および分散装置すなわち添加剤カートリッジの挿入を容易にしている。さらに、添加剤カートリッジに適合するように濾過器筺体をサイズ変更する要求はない。たとえば、添加剤カートリッジのない既存の濾過器筺体の設計は、添加剤カートリッジの高さに適合するために濾材の長さを単に縮小することにより使用されてもよい。
【0070】
図8Aから図8Cまでは、単一または複数の添加剤が筺体88内に配設された後、筺体88に固定されるように構成されるキャップ110を示す。本発明の例示的実施形態によると、キャップは、キャップの筺体の首部分114を受け止めるように構成された開口部112を備えた円形または円盤形である。もちろん、他の構成は本発明の例示的実施形態の範囲内にあうように熟考される。示されるように、首部分114はキャップ110を越えて延長し、濾材の端末キャップの開口部または端部に受取の機能をもたらす。一例示的実施形態中のキャップ110は、筺体の環状溝188で受け止めるための環状機構116を有する。一実施形態では、機構116は、振動溶接方法、超音波溶接方法またはスピン溶接によって、筺体へのキャップの固定用の熱かしめ部材を設ける。あるいは、前述の溶接技術に加えて、接着剤が溝へ機構を固定するために使用される。同様の機構および方法が、筺体の外側の壁へのキャップの外周端部を固定するために使用されてもよい。あるいは、キャップは、機構116がカートリッジ筺体の外側に配設されるように配置されることができ、その機構は濾過器筺体の端末キャップまたは出口開口部で添加剤カートリッジと一直線になり密閉するために使用される。
【0071】
例示的実施形態によると、燃料濾過器中の添加剤を供給する方法が提供され、この方法は、少なくとも1つの室を備えた分散装置筺体を形成し、燃料可溶材料で少なくとも1つの定量開口部を密閉するステップであって、燃料可溶材料が定量開口部から外れる場合に、定量開口部が少なくとも1つの室と流体連通する、ステップと、分散装置筺体内の少なくとも1つの室を密閉するように構成されたキャップで分散装置筺体を密閉するステップと、濾過器内に分散装置筺体を設置するステップとを含み、その濾過器が流路を有し、その結果、濾過器に流入し、かつそれから流出する流体が添加剤室の定量開口部から分散される添加剤と必ず流体連通するようになる。
【0072】
したがって、筺体はまず添加剤で満たされ、次に、筺体はキャップで密閉される。一実施形態中のカートリッジが濾材と底板との間に、または濾材と出口開口部の後に配設されるので、筺体は、キャップが濾材の端部または端末キャップと添加剤カートリッジの筺体との間に配設されるように、逆さにすることができる。あるいは、濾過器の構成によっては、カートリッジは、その据え付けの間に逆さにする必要はない。
【0073】
ここで図9を参照すると、燃料濾過器の他の構成が示されている。ここでは、流体は一方で濾過器に流入し、濾過器の他方で流出し、吸着剤すなわち濾材20が濾過器を通過する流路に配設される。一実施形態では、添加剤カートリッジは入口開口部と濾材との間(たとえば濾材から上流)に配設され、あるいは、添加剤カートリッジは出口開口部と濾材との間(たとえば濾材から下流)に配設される。さらに別の代替実施形態では、一対の添加剤カートリッジが、一方は入口開口部と濾材との間に、他方は出口開口部と濾材との間に使用される。
【0074】
単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明確に異なる内容を示していない限りは、複数の指示対象物を含むことは、この説明の全体にわたって理解されよう。同様に、一貫して「任意の」あるいは「任意に」は、その結果として記述された出来事または状況が生じることも、生じないこともあり、その記述が、出来事が生じる場合と、生じない場合とを含むことを意味する。同様に、量に関して使用される修飾語「約」は、記載した値を包括し、文脈によって意味を決定する(たとえば、特定の量の測定に関連したある程度の誤差を含む)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディーゼル燃料に潤滑添加剤を添加する方法であって、
前記ディーゼル燃料から硫黄含有化合物を除去する吸着剤を備える燃料濾過器を通して前記ディーゼル燃料を通過させるステップと、
前記ディーゼル燃料が前記吸着剤を通過した後、潤滑添加剤を前記ディーゼル燃料へ放出するステップとを含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記吸着剤が少なくとも−3の酸解離定数を特徴とする表面酸性度を有する無機酸化物を含む、方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法において、前記燃料濾過器が少なくとも1つの入口開口部および少なくとも1つの出口開口部を有し、前記少なくとも1つの入口開口部、前記燃料濾過器、および前記少なくとも1つの出口開口部が、前記燃料濾過器を通過する流路を画定し、前記吸着剤が前記流路内に配設され、前記潤滑添加剤が前記濾過器内に配置された添加剤カートリッジ内に保管され、前記添加剤カートリッジが前記濾過器を通過するディーゼル燃料に前記潤滑添加剤を分散するように構成される、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、前記燃料濾過器が少なくとも1つの入口開口部、および少なくとも1つの出口開口部を有し、前記少なくとも1つの入口開口部、前記燃料濾過器、および前記少なくとも1つの出口開口部が、前記燃料濾過器を通過する流路を画定し、前記吸着剤が前記流路内に配設され、前記潤滑添加剤が前記濾過器内に配置された添加剤カートリッジ内に保管され、前記添加剤カートリッジが前記濾過器を通過するディーゼル燃料に前記潤滑添加剤を分散するように構成される、方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法において、前記添加剤カートリッジが前記濾過器の入口開口部と前記吸着剤との間に配設される、方法。
【請求項6】
請求項4に記載の方法において、前記添加剤カートリッジが前記濾過器の出口開口部と前記吸着剤との間に配設される、方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法において、前記吸着剤が少なくとも−3の酸解離定数を特徴とする表面酸性度を有する無機酸化物を含む、方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法において、前記吸着剤が少なくとも−3の酸解離定数を特徴とする表面酸性度を有する無機酸化物を含み、前記燃料濾過器が少なくとも1つの入口開口部および少なくとも1つの出口開口部を有し、前記少なくとも1つの入口開口部、前記燃料濾過器、および前記少なくとも1つの出口開口部が、前記燃料濾過器を通過する流路を画定し、前記吸着剤が前記流路内に配設され、前記潤滑添加剤が前記濾過器内に配置された一対の添加剤カートリッジ内に保管され、前記一対の添加剤カートリッジが前記濾過器を通過するディーゼル燃料に前記潤滑添加剤を分散するように構成され、前記一対の添加剤カートリッジのうちの1つが前記濾過器の入口開口部と前記吸着剤との間に配設され、前記添加剤カートリッジのうちの別の1つが前記濾過器の出口開口部と前記吸着剤との間に配設される、方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法において、潤滑添加剤が、前記ディーゼル燃料の潤滑剤の含有量が所定の水準以下であることを検出器が検知した後、前記燃料に放出される、方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、前記吸着剤が、少なくとも−3の酸解離定数を特徴とする表面酸性度を有する無機酸化物を含み、前記燃料濾過器が少なくとも1つの入口開口部および少なくとも1つの出口開口部を有し、前記少なくとも1つの入口開口部、前記燃料濾過器、および前記少なくとも1つの出口開口部が、前記燃料濾過器を通過する流路を画定し、前記吸着剤が前記流路内に配設され、前記潤滑添加剤が前記濾過器内に配置された添加剤カートリッジ内に保管され、前記添加剤カートリッジが前記濾過器を通過するディーゼル燃料に前記潤滑添加剤を分散するように構成される、方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法において、前記燃料濾過器が少なくとも1つの入口開口部および少なくとも1つの出口開口部を有し、前記少なくとも1つの入口開口部、前記燃料濾過器、および前記少なくとも1つの出口開口部が、前記燃料濾過器を通過する流路を画定し、前記吸着剤が前記流路内に配設され、前記潤滑添加剤が前記濾過器内に配置された添加剤カートリッジ内に保管され、前記添加剤カートリッジが前記濾過器を通過するディーゼル燃料に前記潤滑添加剤を分散するように構成され、前記吸着剤が少なくとも−3の酸解離定数を特徴とする表面酸性度を有する無機酸化物を含み、前記無機酸化物の前記表面酸化度がルイス酸に起因する、方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法において、前記無機酸化物が、第VIIIa族金属、第4族金属、アルカリ金属、アルカリ土類金属、およびこれらの混合物を含む応用化合物を実質的に含まない表面を特徴とする、方法。
【請求項13】
請求項11に記載の方法において、前記無機酸化物が、第VIIIa族金属、アルカリ金属、アルカリ土類金属、およびこれらの混合物を含む化合物を実質的に含まない、方法。
【請求項14】
請求項6に記載の方法において、前記無機酸化物が、アルミナ、カオリナイト(ナトリウム、アンモニウム、または水素型のいずれか)、モンモリロナイト(ナトリウム、アンモニウム、または水素型のいずれか)、シリカマグネシア、アルミナボリア、活性アルミナ、ゼオライト類、アルミノケイ酸塩類、シリカゲル類、粘土、活性粘土、二酸化ケイ素、メソポーラスシリカ多孔性物質(FSM)、シリカアルミナ化合物、シリカ、アルミナリン酸塩化合物、超酸、超硫酸、チタニア、硫酸化ジルコニア、二酸化チタン、ハフニウム酸化物、およびこれらの混合物のうちの少なくとも1つである、方法。
【請求項15】
請求項1に記載の方法において、前記無機酸化物が最小−6の酸解離定数を特徴とする表面酸性度を有する、方法。
【請求項16】
請求項1に記載の方法において、前記無機酸化物が最小−8の酸解離定数を特徴とする表面酸性度を有する、方法。
【請求項17】
ディーゼル燃料濾過器であって、
入口開口部および出口開口部を通過する流路を画定するように構成された少なくとも1つの入口開口部および少なくとも1つの出口開口部を有する筺体と、
前記流路に配設された濾材であって、前記ディーゼル燃料から硫黄含有化合物を除去する吸着剤を含む濾材と、
濾過器を通過するディーゼル燃料へ潤滑添加剤を分散させるように構成された添加剤カートリッジとを備えるディーゼル燃料濾過器。
【請求項18】
請求項17に記載のディーゼル燃料濾過器において、前記吸着剤が、少なくとも−3の酸解離定数を特徴とする表面酸性度を有する無機酸化物を含むディーゼル燃料濾過器。
【請求項19】
請求項18に記載のディーゼル燃料濾過器であって、前記吸着剤が前記少なくとも1つの入口開口部と前記添加剤カートリッジとの間の前記流路内に配置され、前記燃料が前記添加剤カートリッジと接触する前に前記吸着剤を通過しなければならないディーゼル燃料濾過器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate

【図7C】
image rotate

【図8A】
image rotate

【図8B】
image rotate

【図8C】
image rotate

【図9】
image rotate


【公表番号】特表2010−505973(P2010−505973A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−530668(P2009−530668)
【出願日】平成19年9月29日(2007.9.29)
【国際出願番号】PCT/US2007/080024
【国際公開番号】WO2008/042825
【国際公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】