説明

燃料組成物

好ましくはフィッシャートロプシュ誘導燃料を含む軽油燃料組成物における、該燃料組成物のセタン価を低下させるための、式(I)による化合物の使用


(式中:RからRは、各々独立に、水素またはC1−10アルキル基であり、該アルキル基は互いに同じであっても異なっていてもよく;Xは窒素または酸素含有基である。);このような燃料組成物の調製;および燃料消費システムの稼動。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は軽油燃料および軽油燃料組成物並びにこれらの調製および使用、特には、このような燃料組成物における特定のタイプの燃料添加物および成分の使用、より詳細には、ディーゼル燃料および燃料組成物のセタン価の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料または燃料組成物のセタン価はこの点火および燃焼の容易さの尺度である。低セタン価燃料では、圧縮点火(ディーゼル)エンジンは始動がより困難である傾向にあり、寒冷時にはより騒々しく稼動することがある;反対に、セタン価がより高い燃料は、より安易な常温始動をもたらし、始動後の不完全燃焼によって生じる白煙(「冷煙」)を軽減し、およびエンジン稼動中のNOxおよび粒状物質のような排出物に対する肯定的な影響を有する傾向にある。
【0003】
従って、高セタン価を有するディーゼル燃料または燃料組成物に対する一般的な優先傾向が存在し、この優先傾向は排出物法案が次第に厳しくなるに従い、およびこのような自動車ディーゼル仕様が最小セタン価を一般に要求するに従い、より強くなっている。
【0004】
しかしながら、高セタン価は幾つかのディーゼルエンジンからの微粒子および黒煙の放出の増加と関連付けられている。
【0005】
さらに、「Effects of Cetane Number and Distillation Characteristics of Paraffinic Diesel Fuels on PM Emission from a DI Diesel Engine」,Nishiumi et al.,SAE 2004−01−2960においては、より短い点火遅れにつながる高セタン価が燃焼チャンバ内での注入された燃料および空気の混合不足を生じ得ることが記述される。これはより劣る燃焼並びに全炭化水素および一酸化炭素放出の増加につながり得る。
【0006】
さらに、「Potenziale Synthetischer Kraftstoffe im CCS Brennverfahren」(Steiger et al.,25th Vienna Engine symposiumで提出された論文)においては、CCS(複合燃焼システム(Combined Combustion System)、別名HCCI)のような直接注入システムが、注入の後ではあるが燃焼の開始前に最も完全な均質化をもたらす燃料、例えば、低沸点による迅速で完全な蒸発、イオウおよび芳香族化合物が存在しないこと、低セタン価および長い点火遅れを含む有益な特性を示す合成燃料の恩恵を受けることが述べられている。
【0007】
従って、燃料または燃料組成物のセタン価を低下させることが望ましいものであり得る状況が存在する。
【0008】
フィッシャートロプシュ誘導燃料が従来の石油誘導ベース燃料のものよりも高いセタン価を示すことは周知である。従って、フィッシャートロプシュ誘導燃料中に配合することによってこのような無機ベース燃料を増加できることも周知である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】「Effects of Cetane Number and Distillation Characteristics of Paraffinic Diesel Fuels on PM Emission from a DI Diesel Engine」,Nishiumi et al.,SAE 2004−01−2960
【非特許文献2】「Potenziale Synthetischer Kraftstoffe im CCS Brennverfahren」,Steiger et al.,25th Vienna Engine symposiumで提出された論文
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、例えば、フィッシャートロプシュ誘導燃料を含む燃料または燃料配合物が望ましいものよりも高いセタン価を示す状況が生じ得る。もちろん、これは、例えば、配合物中のフィッシャートロプシュ誘導燃料の割合が低下するように石油誘導ベース燃料中に配合することによって修正することができる。しかしながら、このような作用過程は、次に、燃料または燃料配合物の他の特性、例えば、イオウ含有量、芳香族化合物含有量または密度に悪影響を及ぼす効果を有し得る。
【課題を解決するための手段】
【0011】
例えばフィッシャートロプシュ誘導燃料を含む、軽油組成物のセタン価を、この燃料組成物中に特定のタイプの化合物を含めることによって低下させ得ることが見出されている。このような化合物は式(I)によるものである:
【0012】
【化1】

(式中:
からRは、各々独立に、水素またはC1−10アルキル基であり、該アルキル基は互いに同じであっても異なっていてもよく;および
Xは窒素または酸素含有基である。)
【0013】
本発明によると、式(I):
【0014】
【化2】

(式中:
からRは、各々独立に、水素またはC1−10アルキル基であり、該アルキル基は互いに同じであっても異なっていてもよく;および
Xは窒素または酸素含有基である。)
による化合物を含む軽油燃料組成物が提供される。
【0015】
本発明のこの態様および他の態様において、好ましくは、該アルキル基の各々はC1−8、より好ましくは、C1−5、さらにより好ましくは、C1−3アルキル基である。
【0016】
本発明のこの態様および他の態様において、好ましくは、該窒素含有基はアミン官能基から選択される。より好ましくは、該窒素含有基は置換または非置換アミノ基、さらにより好ましくは、アミノアルキル基、最も好ましくは、アミノメチル基である。
【0017】
本発明のこの態様および他の態様において、好ましくは、該酸素含有基はヒドロキシル官能基から選択される。
【0018】
本発明の様々な態様において、好ましくは、燃料組成物は少なくとも1種類のベース燃料を含む。より好ましくは、該少なくとも1種類のベース燃料はディーゼルベース燃料を含む。
【0019】
本発明の様々な態様において、好ましくは、燃料組成物は少なくとも1種類のフィッシャートロプシュ誘導燃料を含む。
【0020】
本発明の様々な態様において、好ましくは、該式(I)による化合物はN−メチルアニリン(NMA)(例えば、Sigma−Aldrichから入手可能)である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
「ベース燃料」は1以上の公開されたベース燃料規格仕様に従う物質であるものと定義される。
【0022】
好ましくは、該1以上の公開されたベース燃料規格仕様は、EN 590、(EC1のスウェーデン規格によって定義される)スウェーデンクラス1、ASTM D975および防衛規格(Defence Standard)91−91(Def Stan 91−91)仕様から選択される。EN 590:2004がディーゼル燃料の現行欧州規格である。SS 155435:2006がEC1の現行スウェーデン規格である。ASTM D975−07aがディーゼル燃料油の現行合衆国規格仕様である。Def Stan 91−91第5版第2改正がタービン燃料、航空機用ケロシン型(Aviation Kerosine Type)、ジェットA−1の現行UK規格である。
【0023】
本発明によると、軽油燃料組成物における式(I)による化合物の使用であって:
【0024】
【化3】

(式中:
からRは、各々独立に、水素またはC1−10アルキル基であり、該アルキル基は互いに同じであっても異なっていてもよく;および
Xは窒素または酸素含有基である。)
該燃料組成物のセタン価を低下させるための使用も提供される。
【0025】
好ましくは、本発明による燃料組成物中の式(1)による化合物の(活性物質)濃度は50000mg/kgまで、より好ましくは30000mg/kgまで、さらにより好ましくは25000mg/kgまで、さらにより好ましくは20000mg/kgまで、さらにより好ましくは10000mg/kgまで、最も好ましくは3000mg/kgまでである。この(活性物質)濃度は、好ましくは、少なくとも10mg/kg、より好ましくは少なくとも100mg/kg、最も好ましくは少なくとも1000mg/kgである。
【0026】
好ましくは、本発明による燃料組成物中のフィッシャートロプシュ誘導燃料の濃度は100%volまで、より好ましくは25%volまで、最も好ましくは20%volまでである。この濃度は、好ましくは、少なくとも1%vol、より好ましくは少なくとも5%vol、最も好ましくは少なくとも10%volである。
【0027】
本発明が用いられる中間留分燃料組成物には、例えば、産業用軽油、自動車ディーゼル燃料、留出船舶燃料または灯油燃料、例えば、航空燃料または灯油(heating kerosene)が含まれ得る。典型的には、組成物は自動車ディーゼル燃料である。好ましくは、本発明が適用される燃料組成物は内燃エンジンにおいて用いるためのものである;より好ましくは、これは自動車燃料組成物であり、さらにより好ましくは、自動車ディーゼル(圧縮点火)エンジンにおいて用いるのに適するディーゼル燃料組成物である。
【0028】
本発明の脈絡において、中間留分ベース燃料は、典型的には、大部分の中間留分炭化水素ベース燃料を含み、または基本的に、もしくは全体的に、中間留分炭化水素ベース燃料からなる。「大部分」とは、典型的には80%vol以上、より適切には90または95%vol以上、最も好ましくは98または99または99.5%vol以上を意味する。
【0029】
本発明が関連する燃料組成物には自動車圧縮点火エンジンにおいて用いるためのディーゼル燃料が含まれる。
【0030】
ベース燃料はこれ自体が2種類以上の異なるディーゼル燃料成分の混合物を含むことができ、および/または以下に記述されるように添加物が添加されていてもよい。
【0031】
このようなディーゼルベース燃料は1種類以上のベース燃料を含み、このベース燃料は、典型的には、液体炭化水素中間留分軽油(1種類以上)、例えば、石油誘導軽油を含み得る。このような燃料は、典型的には、等級および用途に依存して、150から400℃の通常のディーゼル範囲内の沸点を有する。これらは、典型的には、15℃で(例えば、ASTM D4502またはIP 365)750から1000kg/m、好ましくは、780から860kg/mの密度および35から120、より好ましくは、40から85のセタン価(ASTM D613)を有する。これらは、典型的には、150から230℃の範囲の初期沸点および290から400℃の範囲の最終沸点を有する。これらの400℃での動粘性率(ASTM D445)は、適切には、1.2から4.5mm/sであり得る。
【0032】
石油誘導軽油の一例はスウェーデンクラス1ベース燃料であり、これは、スウェーデン国内仕様EC1によって定義されるように、15℃で800から820kg/mの密度(SS−EN ISO 3675、SS−EN ISO 12185)、320℃以下のT95(SS−EN ISO 3405)および1.4から4.0mm/sの40℃での動粘性率(SS−EN ISO 3104)を有する。
【0033】
このような産業用軽油は、粗製石油原料を有用な製品に向上させる灯油のような燃料留分または伝統的な精製法で得られる軽油留分を含み得る、ベース燃料を含む。好ましくは、このような留分は5から40、より好ましくは5から31、さらにより好ましくは6から25、最も好ましくは9から25の範囲の炭素数を有する成分を含み、このような留分は15℃で650から1000kg/mの密度、20℃で1から80mm/sの動粘性率および150から400℃の沸点を有する。
【0034】
灯油燃料は、等級および用途に依存して、典型的には、130から300℃という通常の灯油範囲内の沸点を有する。これらは、典型的には、15℃で775から840kg/m、好ましくは、780から830kg/mの密度(例えば、ASTM D4502またはIP 365)を有する。これらは、典型的には、130から160℃の範囲の初期沸点および220から300℃の範囲の最終沸点を有する。−20℃でのこれらの動粘性率(ASTM D445)は、適切には、1.2から8.0であり得る。
【0035】
フィッシャートロプシュ誘導燃料は、例えば、天然ガス、天然ガス液体、石油もしくはシェール油、石油もしくはシェール油処理残滓、石炭またはバイオマスから誘導することができる。
【0036】
このようなフィッシャートロプシュ誘導燃料は中間留分燃料範囲のあらゆる留分であり、これは(必要に応じて水素化分解された)フィッシャートロプシュ合成生成物から単離することができる。典型的な留分はナフサ、灯油または軽油範囲内で沸騰する。好ましくは、灯油または軽油範囲内で沸騰するフィッシャートロプシュ生成物を用いるが、これはこれらの生成物の、例えば屋内環境における扱いが容易であるためである。このような生成物は、160から400℃、好ましくは、約370℃で沸騰する、90wt%を上回る留分を適切に含む。フィッシャートロプシュ誘導灯油および軽油の例は、EP−A−0583836、WO−A−97/14768、WO−A−97/14769、WO−A−00/11116、WO−A−00/11117、WO−A−01/83406、WO−A−01/83648、WO−A−01/83647、WO−A−01/83641、WO−A−00/20535、WO−A−00/20534、EP−A−1101813、US−A−5766274、US−A−5378348、US−A−5888376およびUS−A−6204426に記述される。
【0037】
フィッシャートロプシュ生成物は、適切には80%wtを上回り、より適切には95%wtを上回るイソおよびノーマルパラフィン並びに1wt%未満の芳香族化合物を含み、残部はナフテン化合物である。イオウおよび窒素の含有量は非常に少なく、通常、このような化合物の検出限界を下回る。このため、フィッシャートロプシュ生成物を含む燃焼組成物のイオウ含有量は非常に少ないものであり得る。
【0038】
燃料組成物は、好ましくは、5000ppmw以下のイオウ、より好ましくは、500ppmw以下、または350ppmw以下、または150ppmw以下、または100ppmw以下、または70ppmw以下、または50ppmw以下、または30ppmw以下、または20ppmw以下、または、最も好ましくは、15ppmw以下のイオウを含む。
【0039】
石油誘導軽油は、原油源の精製および、必要に応じて(水素化)処理から得ることができる。これはこのような精製プロセスから得られる単一の軽油流またはこの精製プロセスにおいて異なる処理経路で得られる幾つかの軽油留分の配合物であり得る。このような軽油留分の例は、直留軽油、真空軽油、熱分解プロセスにおいて得られる軽油、流動接触分解ユニットにおいて得られる軽および重循環油並びに水素添加分解ユニットから得られる軽油である。必要に応じて石油誘導軽油は幾つかの石油誘導灯油留分を含むことができる。
【0040】
このような軽油は、これらのイオウ含有量をディーゼル燃料組成物中に含めるのに適するレベルまで低下させるため、水素化脱塩(HDS)ユニットにおいて処理することができる。
【0041】
本発明において、ベース燃料はいわゆる「バイオディーゼル」燃料組成物、例えば、植物油または植物油誘導体(例えば、脂肪酸エスエル、特には、脂肪酸メチルエステル)または他の含酸素体、例えば、酸、ケトンもしくはエステルであってもよく、またはこれらを含んでいてもよい。このような成分は必ずしも生体由来である必要はない。これは硬化植物油から誘導される燃料を含むこともできる。
【0042】
フィッシャートロプシュ誘導燃料は公知であり、ディーゼル燃料組成物中に用いられている。これらは、例えば、マレーシア国Bintuluにおいて稼動するシェル中間留分合成(Shell Middle Distillate Synthesis)(ガス−ツーリキッド)プロセスから得られる、商業的に用いられる軽油のように、フィッシャートロプシュ縮合反応の合成生成物であり、またはこの反応から調製される。
【0043】
「フィッシャートロプシュ誘導」が意味するところは、燃料がフィッシャートロプシュ縮合プロセスの合成生成物であるか、またはこれから誘導されることである。フィッシャートロプシュ誘導燃料はGTL(ガス−ツーリキッド(Gas−to−Liquid))燃料と呼ぶこともできる。
【0044】
フィッシャートロプシュ反応は、適切な触媒の存在下、典型的には、高温(例えば、125から300℃、好ましくは、175から250℃)および/または高圧(例えば、5から100bar、好ましくは、12から50bar)で、一酸化炭素および水素をより長い鎖、通常、パラフィン性炭化水素に変換する:
n(CO+2H)=(−CH−)+nHO+熱。所望であれば、2:1以外の水素:一酸化炭素比を用いることができる。
【0045】
一酸化炭素および水素は、有機または無機、天然または合成源から誘導することができ、典型的には、天然ガスまたは有機的に誘導されたメタンのいずれかから誘導することができる。このようなプロセスを用いて液体燃料成分に変換されるガスには、一般には、天然ガス(メタン)、LPG(例えば、プロパンまたはブタン)、「濃縮物」、例えば、エタン、合成ガス(CO/水素)並びに石炭、バイオマスおよび他の炭化水素から誘導される気体状生成物が含まれ得る。
【0046】
軽油、ナフサおよび灯油生成物はフィッシャートロプシュ反応から直接得ることができ、または、例えば、フィッシャートロプシュ合成生成物の分別によって、もしくは水素化フィッシャートロプシュ合成生成物から、間接的に得ることができる。水素化処理は、沸騰範囲を調節する水素化分解(例えば、GB−B−2077289およびEP−A−0147873を参照)および/または分岐鎖パラフィンの割合を高めることによって低温流動特性を改善することができる水素化異性化を含み得る。EP−A−0583836は、まずフィッシャートロプシュ合成生物に、これが異性化または水素化分解(これはオレフィン性および酸素含有成分を水素化する。)を実質的に受けることがない条件下で水素化変換を施した後、生じる生成物の少なくとも一部に、水素化分解および異性化が生じるような条件下で水素化変換を施して実質的にパラフィン性の炭化水素燃料を得る、2工程水素化処理プロセスを記述する。続いて、例えば蒸留により、望ましい軽油留分(1以上)を単離することができる。
【0047】
例えば、US−A−4125566およびUS−A−4478955に記述されるように、フィッシャートロプシュ縮合生成物の特性を修正するのに、他の合成後処理、例えば、重合、アルキル化、蒸留、分解−脱カルボキシル化、異性化および水素化改質(hydroreforming)を用いることができる。
【0048】
パラフィン性炭化水素のフィッシャートロプシュ合成の典型的な触媒は、触媒的に活性の成分として、周期律表のVIII族の金属、特に、ルテニウム、鉄、コバルトまたはニッケルを含む。適切なこのような触媒は、例えば、EP−A−0583836(3および4頁)に記述される。
【0049】
上に示されるように、フィッシャートロプシュに基づくプロセスの一例は、van der Burgtらによって「The Shell Middle Distillate Synthesis Process」、5th Synfuels Worldwide Symposium、Washington DC、November 1985で発表された論文(Shell International Petroleum Company Ltd、ロンドン、UKからの同じ標題の1989年11月刊行物も参照のこと)に記述されるSMDS(シェル中間留分合成(Shell Middle Distillate Synthesis))である。このプロセス(シェル「ガス−ツーリキッド」または「GTL」技術とも呼ばれることもある。)は、天然ガス(主として、メタン)誘導合成ガスを重長鎖炭化水素(パラフィン)ワックスに変換することによって中間留分範囲生成物を生成し、このワックスは次に水素化変換および分別して液体輸送用燃料、例えば、ディーゼル燃料組成物中で使用可能な軽油を生成することができる。触媒変換工程に固定床反応器を用いるSMDS法のバージョンがマレーシア国Bintuluにおいて現在使用中のものであり、この軽油生成物は商業的に入手可能な自動車用燃料において石油誘導軽油と配合されている。
【0050】
SMDS法によって調製される軽油、ナフサおよび灯油は、例えばShell社から商業的に入手可能である。
【0051】
フィッシャートロプシュ法のおかげで、フィッシャートロプシュ誘導燃料は本質的にイオウおよび窒素がなく、または検出不能なレベルのイオウおよび窒素を有する。これらのヘテロ原子を含む化合物はフィッシャートロプシュ触媒に対して毒として作用し、従って、合成ガス供給から除去される。
【0052】
一般的に言えば、フィッシャートロプシュ誘導燃料は、例えば石油誘導燃料と比較して、比較的低レベルの極性成分、特に極性表面活性剤を有する。このような極性成分には、例えば、含酸素化合物並びにイオウおよび窒素含有化合物が含まれ得る。フィッシャートロプシュ誘導燃料中の低レベルのイオウは、一般には、含酸素化合物および窒素含有化合物の両者の低いレベルを示すものであり、これはすべてが同じ処理法によって除去されるためである。
【0053】
フィッシャートロプシュ誘導燃料成分がナフサ燃料である場合、これは典型的には220℃まで、好ましくは180℃以下の最終沸点を有する液体炭化水素留分燃料である。この初期沸点は、好ましくは25℃を上回り、より好ましくは35℃を上回る。この成分(またはこれらの大部分、例えば、95%w/w以上)は、典型的には、5個以上の炭素原子を有する炭化水素であり、これらは通常はパラフィン性である。
【0054】
本発明の脈絡において、フィッシャートロプシュ誘導ナフサ燃料は、好ましくは、15℃で0.67から0.73g/cmの密度および/または5mg/kg以下、好ましくは、2mg/kg以下のイオウ含有量を有する。これは、好ましくは、95%w/w以上のイソおよびノーマルパラフィン、好ましくは、20から98%w/w以上のノーマルパラフィンを含む。これは、好ましくは、SMDS法の生成物であり、この好ましい特徴はフィッシャートロプシュ誘導軽油に関連して以下に記述される通りであり得る。
【0055】
フィッシャートロプシュ誘導灯油燃料は、適切には140から260℃、好ましくは145から255℃、より好ましくは150から250℃または150から210℃の蒸留範囲を有する液体炭化水素中間留分燃料である。これは、典型的には、190から260℃、例えば、典型的な「ナローカット」灯油留分については190から210℃、典型的な「フルカット」留分については240から260℃の最終沸点を有する。この初期沸点は、好ましくは140から160℃、より好ましくは145から160℃である。
【0056】
フィッシャートロプシュ誘導灯油燃料は、好ましくは、15℃で0.730から0.760g/cm、例えば、ナローカット留分については0.730から0.745g/cm、フルカット留分については0.735から0.760g/cmの密度を有する。これは、好ましくは、5mg/kg以下のイオウ含有量を有する。これは、63から75、例えば、ナローカット留分については65から69、フルカット留分については68から73のセタン価を有する。これは、好ましくは、SMDS法の生成物であり、この好ましい特徴はフィッシャートロプシュ誘導軽油に関連して以下に記述される通りであり得る。
【0057】
フィッシャートロプシュ誘導軽油はディーゼル燃料、理想的には、自動車用ディーゼル燃料としての使用に適していなければならず、従って、この成分(またはこれらの大部分、例えば、95%v/v以上)は典型的なディーゼル燃料(「軽油」)範囲内、即ち、150から400℃または170から370℃の沸点を有していなければならない。これは、適切には、300から370℃の90%v/v蒸留温度を有する。
【0058】
フィッシャートロプシュ誘導軽油は、典型的には、15℃で0.76から0.79g/cmの密度;70を上回り、適切には、74から85のセタン価(ASTM D613);40℃で2から4.5、好ましくは、2.5から4.0、より好ましくは、2.9から3.7mm/sの動粘性率(ASTM D445);および5mg/kg以下、好ましくは、2mg/kg以下のイオウ含有量(ASTM D2622)を有する。
【0059】
好ましくは、本発明において用いられるフィッシャートロプシュ誘導燃料成分は、2.5未満、好ましくは1.75未満、より好ましくは0.4から1.5の水素/一酸化炭素比を用い、および、理想的には、コバルト含有触媒を用いる、フィッシャートロプシュ・メタン縮合反応によって調製される生成物である。適切には、これは、(例えば、GB−B−2077289および/またはEP−A−0147873に記述される)水素化分解フィッシャートロプシュ合成生成物、より好ましくは、EP−A−0583836(上を参照)に記述されるもののような2段階水素化変換プロセスからの生成物から得られている。後者の場合、水素化変換プロセスの好ましい特徴は、EP−A−0583836の第4から第6頁および実施例に開示される通りであり得る。
【0060】
適切には、本発明において用いられるフィッシャートロプシュ誘導燃料成分は低温フィッシャートロプシュ法によって調製される成分であるが、これが意味するところは、300から350℃の温度で典型的に操作され得る高温フィッシャートロプシュ法とは反対に、250℃以下、例えば、125から250℃または175から250℃の温度で操作されるプロセスである。
【0061】
適切には、本発明に従い、フィッシャートロプシュ誘導燃料は少なくとも70%wt、好ましくは少なくとも80%wt、より好ましくは少なくとも90または95または98%wt、最も好ましくは少なくとも99または99.5または、さらに99.8%wtの、パラフィン成分、好ましくは、イソおよびノーマルパラフィンからなる。イソパラフィンのノーマルパラフィンに対する重量比は、適切には0.3を上回り、40までであり得る;適切には、これは2から40である。この比の実際の値は、部分的には、フィッシャートロプシュ合成生成物から軽油を調製するのに用いられる水素化変換法によって決定される。
【0062】
本発明において用いられるフィッシャートロプシュ誘導軽油成分は、好ましくは少なくとも75%wt、より好ましくは少なくとも80%wt、最も好ましくは少なくとも85%wtのイソパラフィンを含む。
【0063】
フィッシャートロプシュ誘導燃料成分のオレフィン含有率は、適切には、0.5%wt以下である。この芳香族化合物含有率は、適切には、0.5%wt以下である。
【0064】
該フィッシャートロプシュ誘導軽油成分は上述の通りであってもよい。触媒的に脱蝋された軽油または軽油配合成分が生じるように処理されているフィッシャートロプシュ生成物も該フィッシャートロプシュ誘導軽油成分として適切である。この目的に適するプロセスは、(a)フィッシャートロプシュ生成物を水素化分解/水素化異性化する工程;(b)工程(a)の生成物を少なくとも1種類以上の燃料留分および軽油前駆体留分に分離する工程;(c)工程(b)において得られる軽油前駆体留分を触媒的に脱蝋する工程、および(d)触媒的に脱蝋した軽油または軽油配合成分を蒸留によって工程(c)の生成物から単離する工程を含む。
【0065】
本発明による燃料組成物は、好ましくは少なくとも1種類のフィッシャートロプシュ誘導燃料を含む、2種類以上の燃料成分の混合物を含むことができる。
【0066】
一般には、ガス−ツーリキッド法の他の生成物が本発明によって調製される燃料組成物に含めるのに適切であり得る。このようなプロセスを用いて液体燃料成分に変換される気体には、天然ガス(メタン)、LPG(例えば、プロパンまたはブタン)、エタンのような「濃縮物」、合成ガス(CO/水素)並びに石炭、バイオマスおよび他の炭化水素から誘導される気体状生成物が含まれ得る。
【0067】
ベース燃料はこれ自体添加物処理されていても(添加物含有)、添加物処理されていなくても(添加物非含有)よい。例えば精製段階で、添加処理されている場合、少量の、例えば、帯電防止剤、パイプラインドラッグリデューサー(pipeline drag reducers)、流動性改質剤(例えば、エチレン/酢酸ビニルコポリマーまたはアクリレート/無水マレイン酸コポリマー)、潤滑添加剤、酸化防止剤およびワックス沈降防止剤から選択される1種類以上の添加物を含む。
【0068】
洗浄剤含有ディーゼル燃料添加物は公知であり、商業的に入手可能である。このような添加物はエンジン堆積物の構築を減少させ、除去し、または徐速することを目的とするレベルでディーゼル燃料に添加することができる。
【0069】
この目的のために燃料添加物において用いるのに適する洗浄剤の例には、ポリアミンのポリオレフィン置換スクシンイミドまたはスクシンアミド、例えば、ポリイソブチレンスクシンイミドまたはポリイソブチレンアミンスクシンアミド、脂肪族アミン、マンニッヒ塩基またはアミンおよびポリオレフィン(例えば、ポリイソブチレン)無水マレイン酸が含まれる。スクシンイミド分散剤添加物は、例えば、GB−A−960493、EP−A−0147240、EP−A−0482253、EP−A−0613938、EP−A−0557516およびWO−A−98/42808に記述される。特に好ましいものは、ポリオレフィン置換スクシンイミド、例えば、ポリイソブチレンスクシンイミドである。
【0070】
燃料添加物混合物は洗浄剤に加えて他の成分を含むことができる。例は潤滑増強剤(lubricity enhancers);曇り除去剤(dehazers)、例えば、アルコキシル化フェノールホルムアルデヒドポリマー;消泡剤(例えば、ポリエーテル修飾ポリシロキサン);点火改良剤(ignition improvers)(セタン改良剤)(例えば、硝酸2−エチルヘキシル(EHN)、硝酸シクロヘキシル、ジ−tert−ブチルペルオキシドおよびUS−A−4208190中、第2欄、第27行から第3欄、第21行に開示されるもの);防錆剤(例えば、プロパン−1,2−ジオール、テトラプロペニルコハク酸の半エステルまたはコハク酸誘導体の多価アルコールエステル、このアルファ−炭素原子の少なくとも1つに20から500個の炭素原子を含む非置換または置換脂肪族炭化水素基を有するコハク酸誘導体、例えば、ポリイソブチレン置換コハク酸のペンタエリスリトールジエステル);腐食防止剤;付香剤;耐摩耗添加物;酸化防止剤(例えば、フェノール類、例えば、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、またはフェニレンジアミン、例えば、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン);金属不活性化剤;助燃剤;静電消散添加物(static dissipator additives);低温流動改質剤(cold flow improvers);およびワックス沈降防止剤である。
【0071】
燃料添加物混合物は、特に燃料組成物が低(例えば、500ppmw以下)イオウ含有率を有するとき、潤滑増強剤を含むことができる。添加物処理燃料組成物において、潤滑増強剤は1000ppmw未満、好ましくは50から1000ppmw、より好ましくは70から1000ppmwの濃度で都合よく存在する。適切な商業的に入手可能な潤滑増強剤にはエステルおよび酸系添加物が含まれる。他の潤滑増強剤は特許文献、特には、低イオウ含有率ディーゼル燃料中でのこれらの使用に関連して、例えば、以下に記述される化合物:
− Danping WeiおよびH.A.Spikesによる論文、「The Lubricity of Diesel Fuels」,Wear,III(1986)217−235;
− WO−A−95/33805 − 低イオウ燃料の潤滑性を強化する低温流動改質剤;
− WO−A−94/17160 − ディーゼルエンジン注入システムにおける摩耗減少のための燃料添加物としての、酸が2から50個の炭素原子を有し、アルコールが1個以上の炭素原子を有するカルボン酸およびアルコールの特定のエステル、特には、グリセロールモノオレエートおよびジ−イソデシルアジペート;
− US−A−5490864 − 低イオウディーゼル燃料のための耐摩耗潤滑添加物としての、特定のジチオリン酸ジエステル−ジアルコール;並びに
− WO−A−98/01516 − 特には低イオウディーゼル燃料において、耐摩耗潤滑効果を付与する、これらの芳香族核に結合する少なくとも1つのカルボキシル基を有する特定のアルキル芳香族化合物。
【0072】
消泡剤を、より好ましくは、防錆剤および/または腐食防止剤および/または潤滑増強添加物との組み合わせで含むことも燃料組成物にとって好ましいものであり得る。
【0073】
他に述べられない限り、添加物処理燃料組成物中のこのような添加物成分の各々の(活性物質)濃度は、好ましくは10000ppmwまで、より好ましくは0.1から1000ppmwの範囲、有利には0.1から300ppmw、例えば、0.1から150ppmwである。
【0074】
燃料組成物中のあらゆる曇り除去剤の(活性物質)濃度は、好ましくは0.1から20ppmw、より好ましくは1から15ppmw、さらにより好ましくは1から10ppmw、有利には1から5ppmwの範囲である。存在するあらゆる点火改良剤の(活性物質)濃度は、好ましくは2600ppmw以下、より好ましくは2000ppmw以下、好都合には300から1500ppmwである。燃料組成物中のあらゆる洗浄剤の(活性物質)濃度は、好ましくは5から1500ppmw、より好ましくは10から750ppmw、最も好ましくは20から500ppmwの範囲である。
【0075】
例えば、ディーゼル燃料組成物の場合、燃料添加物混合物は、必要に応じて上述の他の成分および、鉱油であり得るディーゼル燃料適合希釈剤、溶媒、例えば、Shell社によって「SHELLSOL」の商標で販売されるもの、極性溶媒、例えば、エステル並びに、特には、アルコール、例えば、ヘキサノール、2−エチルヘキサノール、デカノール、イソトリデカノールおよびアルコール混合液、例えば、Shell社によって「LINEVOL」の商標で販売されるもの、特には、C7−9一級アルコールの混合液である「LINEVOL 79」アルコールまたは商業的に入手可能であるC12−14アルコール混合液と共に、洗浄剤を典型的に含む。
【0076】
燃料組成物中の添加物の総含有率は、適切には0から10000ppmw、好ましくは5000ppmw未満であり得る。
【0077】
本明細書において、成分の量(濃度、%vol、ppmw、%wt)は活性物質のものであり、即ち、揮発性溶媒/希釈剤材料は除く。
【0078】
本発明は、燃料組成物を、例えば、ロータリーポンプ、インラインポンプ、ユニットポンプ、電子ユニットインジェクタもしくは通常のレール型の直接注入ディーゼルエンジンにおいて、または間接注入ディーゼルエンジンにおいて用いるか、または用いようとする場合に特に適用可能である。燃料組成物は大型車両用および/または軽量車両用ディーゼルエンジンにおける使用に適するものであり得る。
【0079】
ディーゼルベース燃料は自動車用軽油(AGO)であり得る。本発明において用いられるディーゼルベース燃料は、好ましくは、多くとも2000ppmw(重量百万分率)のイオウ含有率を有する。より好ましくは、これは低イオウ含有率または超低イオウ含有率、例えば、多くとも500ppmw、好ましくは350ppmw以下、最も好ましくは100または50または10ppmw以下のイオウを有する。
【0080】
本発明の脈絡において、燃料組成物における添加物の「使用」は、典型的には1種類以上の他の燃料成分との配合物(即ち、物理的混合物)として、添加物を組成物に組み込むことを意味する。添加物は、組成物を内部燃焼エンジンまたはこの組成物で稼動させようとする他のシステムに導入する前に、都合よく組み込まれる。その代わりに、またはこれに加えて、添加物の使用は、典型的には組成物をエンジンの燃焼室に導入することにより、この添加物を含む燃料組成物で燃料消費システム、典型的には、ディーゼルエンジンを稼動させることを含み得る。
【0081】
添加物は燃料組成物の製造中の様々な段階で添加することができる;例えば、精製段階で添加されるものは帯電防止剤、パイプラインドラッグリデューサー、流動改質剤、潤滑増強剤、酸化防止剤およびワックス沈降防止剤から選択することができる。本発明を実施するとき、ベース燃料が既にこのような精製時添加物を含んでいてもよい。他の添加物は精製装置の下流で添加することができる。
【0082】
本発明によると、軽油燃料組成物のセタン価を低下させる方法がされに提供され、該方法は式(I)による化合物:
【0083】
【化4】

(式中:
からRは、各々独立に、水素またはC1−10アルキル基であり、該アルキル基は互いに同じであっても異なっていてもよく;および
Xは窒素または酸素含有基である。)
を該燃料組成物に添加することを含む。
【0084】
本発明によると、軽油燃料組成物の調製プロセスがさらに提供され、該プロセスは式(I)による化合物:
【0085】
【化5】

(式中:
からRは、各々独立に、水素またはC1−10アルキル基であり、該アルキル基は互いに同じであっても異なっていてもよく;および
Xは窒素または酸素含有基である。)
および少なくとも1種類の燃料成分を配合することを含み、該式(1)による化合物は、好ましくは、該燃料組成物のセタン価を低下させるために含められる。
【0086】
本発明によると、燃料消費システムを稼動させる方法がさらに提供され、該方法は、軽油燃料組成物のセタン価を、式(I)による化合物:
【0087】
【化6】

(式中:
からRは、各々独立に、水素またはC1−10アルキル基であり、該アルキル基は互いに同じであっても異なっていてもよく;および
Xは窒素または酸素含有基である。)
を該燃料組成物に添加することによって低下させた後、システムに該燃料組成物を導入することを含む。
【0088】
システムは、特には、内部燃焼エンジンおよび/または内部燃焼エンジンによって駆動する乗物であり得、その場合、この方法は関連燃料または燃料組成物をエンジンの燃焼室に導入することを含む。エンジンは、好ましくは、圧縮点火(ディーゼル)エンジンである。このようなディーゼルエンジンは上述のタイプのものであり得る。
【0089】
ここで、以下の実施例を参照することによって本発明をさらに説明するが、実施例においては、他に指示されない限り、部およびパーセンテージは体積基準であり、温度は摂氏度でのものである。
【0090】
実施例
【実施例1】
【0091】
異なる濃度の活性N−メチルアニリン(NMA)を含むフィッシャートロプシュ誘導軽油Aの配合物を調製し、発火性試験機(Ignition Quality Tester)(IQT)を用いて分析して、試験法ASTM D6890/08(一定体積チャンバー内で燃焼させることによってディーゼル燃料油の点火遅れおよび誘導セタン価(DCN)を決定するための標準試験法)による誘導セタン価(Derived Cetane Number)(DCN)を決定した。IQT分析は一定体積チャンバー内で燃焼させることによる燃料の点火遅れ(ID)(燃料注入の開始と燃焼の開始とのミリ秒での期間)の測定および以下の式のうちの1つによるIDのDCNへの変換を含む:
DCN=4.460+186.6/ID
(3.3から6.4msの範囲のあるID値の有効性)
DCN=83.99(ID−1.512)(−0.658)+3.547
(3.3から6.4msの範囲外にあるID値の有効性)
DCNの表現から、より短い点火遅れ時間がより高いDCN値を暗示し、逆もまた同様であることが明らかである。
【0092】
フィッシャートロプシュ誘導軽油Aの特性は表1に示される通りであった:
【0093】
【表1】

NMAを用いる分析の結果を表2に示す:
【0094】
【表2】

表2から、式(I)による化合物、即ち、NMAを添加することによってフィッシャートロプシュ誘導軽油の点火遅れを制御し、即ち、増加させ、従って、誘導セタン価を低下させることが可能であることがわかる。
【0095】
実施例1は自動車用軽油燃料に用いられる「正常」セタン価の外にあるDCN値を調べるものである。下記実施例2は、鉱物ディーゼル燃料組成物において用いられるときの、該NMAの上述と同じ効果を示す。
【実施例2】
【0096】
実施例1におけるものに類似する分析を行い、ここでは、異なる濃度の活性NMAを含む鉱物ディーゼル燃料Bの配合物を調製した。
【0097】
ディーゼル燃料Bの特性は表3に示される通りであった:
【0098】
【表3】

NMAを用いる分析の結果を表4に示す:
【0099】
【表4】

表4から、式(I)による化合物、即ち、NMAを添加することによって鉱物ディーゼル燃料の点火遅れを制御し、即ち、増加させ、従って、誘導セタン価を低下させることが可能であることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

(式中:
からRは、各々独立に、水素またはC1−10アルキル基であり、該アルキル基は互いに同じであっても異なっていてもよく;および
Xは窒素または酸素含有基である。)
による化合物を含む軽油燃料組成物。
【請求項2】
式(I):
【化2】

(式中:
からRは、各々独立に、水素またはC1−10アルキル基であり、該アルキル基は互いに同じであっても異なっていてもよく;および
Xは窒素または酸素含有基である。)
による化合物の軽油燃料組成物における使用であって、前記燃料組成物のセタン価を低下させるための、使用。
【請求項3】
軽油燃料組成物のセタン価を低下させる方法であって、式(I):
【化3】

(式中:
からRは、各々独立に、水素またはC1−10アルキル基であり、該アルキル基は互いに同じであっても異なっていてもよく;および
Xは窒素または酸素含有基である。)
による化合物を前記燃料組成物に添加することを含む方法。
【請求項4】
軽油燃料組成物の調製プロセスであって、式(I):
【化4】

(式中:
からRは、各々独立に、水素またはC1−10アルキル基であり、該アルキル基は互いに同じであっても異なっていてもよく;および
Xは窒素または酸素含有基である。)
による化合物を少なくとも1種類の燃料成分と配合することを含み、前記式(I)による化合物は、好ましくは、前記燃料組成物のセタン価を低下させるために含められる方法。
【請求項5】
燃料消費システムを稼動させる方法であって、軽油燃料組成物のセタン価を、式(I):
【化5】

(式中:
からRは、各々独立に、水素またはC1−10アルキル基であり、該アルキル基は互いに同じであっても異なっていてもよく;および
Xは窒素または酸素含有基である。)
による化合物を前記燃料組成物に添加することによって低下させた後、システムに前記燃料組成物を導入することを含む方法。
【請求項6】
前記燃料組成物が少なくとも1種類のベース燃料を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物、使用、方法またはプロセス。
【請求項7】
前記少なくとも1種類のベース燃料がディーゼルベース燃料を含む、請求項6に記載の組成物、使用、方法またはプロセス。
【請求項8】
燃料組成物が少なくとも1種類のフィッシャートロプシュ誘導燃料を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物、使用、方法またはプロセス。
【請求項9】
フィッシャートロプシュ誘導燃料が軽油、灯油またはナフサである、請求項8に記載の組成物、使用、方法またはプロセス。
【請求項10】
前記式(I)による化合物がN−メチルアニリンである、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物、使用、方法またはプロセス。

【公表番号】特表2012−514058(P2012−514058A)
【公表日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542841(P2011−542841)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【国際出願番号】PCT/EP2009/067950
【国際公開番号】WO2010/076303
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(590002105)シエル・インターナシヨナル・リサーチ・マートスハツペイ・ベー・ヴエー (301)