説明

燃料電池に用いる密封材料

【課題】燃料電池に用いる密封材料を提供する。
【解決手段】ガラス材料60〜80wt%、アルコール類20〜30wt%、
粘着剤として、エチルセルロイド0.5〜3wt%、可塑剤として、ポリエチレングリコール0.01〜0.1wt%により構成し、
該ガラス材料は、二酸化シリコン20〜40wt%、
酸化ボロンと5〜15wt%、酸化バリウム20〜40wt%、
酸化アルミニウム1〜7wt%、酸化カルシウム3〜20wt%、
酸化ランタン1〜10wt%、酸化ジルコニウム0.1〜2wt%、
であって、該アルコール類は、ポリオールであり、該アルコール類は、エタノールである燃料電池に用いる密封材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池に用いる密封材料に関する。特に、常温下で迅速に硬化し、加熱乾燥動作を減少させることができる燃料電池に用いる密封材料燃料電池に用いる密封材料にはる。
【背景技術】
【0002】
固体酸化物燃料電池(SOFC)は、今世紀最も有望なグリーンエネルギーと見られており、効率が高く、環境に優しく、静かで、信頼性が高い等の特長がある。中でも管式及びコルゲート式等の他構造に比較して、平板式固体酸化物燃料電池の構造は電流の流路が短く、均一で、電池出力密度が高い等の長所があるため、平板式固体酸化物燃料電池は固体酸化物燃料電池研究開発の主な対象であった。
平板式固体酸化物燃料電池は、作動時に電解質の両側に同時に燃料気体 (水素ガス(H2)、陽極)と酸化気体 (酸素(O2)、陰極)を備えるため、材料を密封し、陰、陽極作動気室を区画し、気密性を保持する必要がある。密封過程では、密封材料は双極板及び電解質を充分に浸潤、密着させ、気密性を達成しなければならない。同時に、密封の長期的な有効性を確保するため、該酸化及び還元気体中においてそれと接触する材料は耐熱性、化学安定、サイズ安定、絶縁性を保持する必要がある。このように性能に対する要求が極めて高いため、密封材料は平板式固体酸化物燃料電池発展の技術的難点の一つとなっている。
中温化(600 - 850℃)は平板式固体酸化物燃料電池の発展の趨勢である。これまでにシタールによる高温固体酸化物燃料電池(作動温度1000℃)への密封に関する報告が多数なされているが、中温固体酸化物燃料電池密封についての報告は非常に少ない。
金属双極板を採用する平板型固体酸化物燃料電池は通常は低融点のガラスを密封材料として選択する。ガラスにはケイ素以外に、大量のアルカリ金属とアルカリ土類金属酸化物を含む。これらの成分は電池構造内において拡散し、他の電池構成部品と反応を発生し易い。平板型固体酸化物燃料電池に対しては、他の電池構成部品と相対応する密封材料の開発の面において研究開発人員は大量の労力を注ぎ込んでおり、研究作業は主にPyrexガラス、リン酸アルミニウム等のアルカリ金属ケイ酸塩、アルカリ土金属ケイ酸塩、アルカリ金属ボロンケイ酸塩基ガラス或いはガラスセラミックに集中している。しかし、各種材料には熱膨脹係数が対応しない、長期間の作動における安定性が劣る等の欠点が存在する。
【特許文献1】特開2006−185775号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記欠点を解決するため、本発明の発明者は燃料電池に用いる密封材料を開発した。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため、本発明は下記の燃料電池に用いる密封材料を提供する。
それは常温下で迅速に硬化するため高温の加熱乾燥動作を不要とし、こうして強度、サイズ、化学安定性維持の目的を達成し、
本発明が提供する燃料電池に用いる密封材料は、
ガラス材料60〜80wt%、
アルコール類20〜30wt%、
粘着剤として、エチルセルロイド0.5〜3wt%、
可塑剤として、ポリエチレングリコール0.01〜0.1wt%
により構成し、
該ガラス材料は、
二酸化シリコン20〜40wt%、
酸化ボロンと5〜15wt%、
酸化バリウム20〜40wt%、
酸化アルミニウム1〜7wt%、
酸化カルシウム3〜20wt%、
酸化ランタン1〜10wt%、
酸化ジルコニウム0.1〜2wt%、
により構成することが望ましく、
該アルコール類は、ポリオールであることが望ましく、
該アルコール類は、エタノールであることが望ましいことを特徴とする燃料電池に用いる密封材料である。
【発明の効果】
【0005】
上記のように、本発明が提供する密封材料は高温加熱乾燥が不要で、また非常に高い信頼性を備え、燃料電池の領域において全く新しい創造性の高い技術である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の構造目的と効果を明確にするため、図示により以下に詳細に巻明する。
ステップ一:ガラスセラミック封鎖材料の調製
先ず、セラミックガラス粉末の材料を製造する。国際的に通用するセラミックガラス粉末の配合を参照し、本発明が構成するセラミックガラス粉末の構成は20 - 40%の二酸化シリコン、5% - 15%の酸化ボロン、20% - 40%の酸化バリウム、1% - 7%の酸化アルミニウム、3% - 20%の酸化カルシウム、1% - 10%の酸化ランタン、0.1% - 2%の酸化ジルコニウムである。
上記配合の原料を比率に基づき混合後、メノウ球磨砕ポットに入れて200分間磨砕し、原料を細粉として充分に混合する。混合後は得られた粉末を白金坩堝中に入れ、室温から開始して、各5℃/分間で1500 - 1600℃まで温度を上げ、4時間維持する。こうして十分に溶融混合して、必要なセラミックガラスを調製する。冷却後は、ガラスセラミックを容器中から取り出して圧搾し、球磨機により粒度が数ミクロンの粉末に磨砕し、スクリーニング機で粒度が規格に適合するガラスセラミック粉未を選別する。
【0007】
ステップ二:ガラス密封シール材料の製作
20 - 30%のアルコール類(エタノール等)、0.5 - 3%の粘着剤(エチルセルロイド等)、0.01% - 0.1%の可塑剤(ポリエチレングリコール,PEG)を混合し、磁石加熱撹拌機に入れる。撹拌温度75℃で、溶液が完全に澄むまで撹拌する。次に、ステップ一で得られたセラミックガラス粉末60 - 80%を上記澄清液中に入れ、撹拌脱泡機内に置き、回転数を1600回転/分間に設定して2分間撹拌する。さらに1800転/分間で脱泡を2分間行い、均一のガラス密封シールを得る。このガラス密封シールの最大の長所は常温下で迅速に硬化するため、加熱乾燥動作を省くことができる点である。上記ステップ一とステップ二の完全なプロセスを図1に示す。
【0008】
ガラス密封シール材料の熱膨脹性能テスト
実験中では、厚さが約16ミリのガラス密封シール、接続(連接)板及びセラミック基板サンプルを使用する。熱膨脹分析はSETARAM DHT 2405により熱膨脹測定を行う。テスト結果は図2に、ガラス密封シール、接続板及びセラミック基板の熱膨脹係数を示す。図に示すように、本発明中のガラス密封シール材料の熱膨脹係数は約9.48 x 10-6 /℃で、650℃以下で十分に密着し約10 x 10-6m/m/℃前後である。650℃付近では、金属接続板は顕著な変化が生じ、しかも熱膨脹係数が上昇する現象が見られる。750℃時にはその熱膨脹係数は約12.6 x 10-6m/ m/℃で、セラミック基板の熱膨脹係数は10.2 x 10-6 m / m/℃である。このような高温状況下において、金属材料とセラミック材料の一致性は達成されにくいため、高温環境下では粘着性を備えるガラス密封シールによりその差異を補填する必要が生じる。
【0009】
密封境界面の微細構造及び形態
次に電子顕微鏡を用いサンプルの微細形態を観察し、電解質(YSZ)と密封材料の結合状況を確認した。観察により、密封材料層の厚みは均一で、材料と電解質の接続は非常に緊密で、しかも密封材料は極めて緻密で孔がないことが分かった。
【0010】
ガラスシールの漏洩率測定
さらにガラスシールの漏洩率を測定する。6 x 6cmのcrofer22基板上に6mm/秒速度で正方形に密封ガラスシールを塗布し、サンプル上に重さ2.53kgの鉄塊を載せた。850℃の高温で封鎖し、2枚のサンプルの間に0.5ミリのセラミックシートを入れ、ガラスシール全体が平らになることを回避し、これを13.7kPa(2.0パウンド/平方インチ(psi))の圧力で測定を行った。
その結果、常温下で2.0パウンド/平方インチ(psi)のヘリウムガスを注入しても、その圧力値は維持される(図3参照)ことが分かった。同様に、13.7kPa(2.0パウンド/平方インチ(psi))のヘリウムガスを注入し、800℃で長時間のテストを行っても、測定された漏洩率は1〜3x10-3 毎分標準ml/cm(sccm/cm)を維持した(図4参照)。
上記のように、本発明が調製する密封材料は温加熱乾燥が不要で、また非常に高い信頼性を備え、燃料電池の領域において全く新しい創造性の高い技術である。
上記は本発明の実施例に過ぎず、本発明の実施例を限定するものではない。本発明特許請求の範囲に基づく設計変更、改変などはすべて、本発明の保護範囲に含まれるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明燃料電池に用いる密封材料の製造プロセス図である。
【図2】本発明燃料電池に用いる密封材料の熱膨脹テスト図である。
【図3】本発明燃料電池に用いる密封材料の漏洩率テスト図である。
【図4】本発明燃料電池に用いる密封材料の別種の漏洩率テスト図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス材料60〜80wt%、
アルコール類20〜30wt%、
粘着剤として、エチルセルロイド0.5〜3wt%、
可塑剤として、ポリエチレングリコール0.01〜0.1wt%
により構成することを特徴とする燃料電池に用いる密封材料。
【請求項2】
前記ガラス材料は、
二酸化シリコン20〜40wt%、
酸化ボロンと5〜15wt%、
酸化バリウム20〜40wt%、
酸化アルミニウム1〜7wt%、
酸化カルシウム3〜20wt%、
酸化ランタン1〜10wt%、
酸化ジルコニウム0.1〜2wt%、
により構成することを特徴とする請求項1記載の燃料電池に用いる密封材料。
【請求項3】
前記アルコール類は、ポリオールであることを特徴とする請求項1記載の燃料電池に用いる密封材料。
【請求項4】
前記アルコール類は、エタノールであることを特徴とする請求項1記載の燃料電池に用いる密封材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−62504(P2009−62504A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−246338(P2007−246338)
【出願日】平成19年9月24日(2007.9.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PYREX
【出願人】(599171866)行政院原子能委員會核能研究所 (37)
【Fターム(参考)】