説明

燃料電池のセパレータおよび燃料電池

【課題】 セパレータの屈曲に起因する短絡の発生を抑制するための技術を提供する。
【解決手段】 燃料電池は、複数の単セルと、複数の単セルのうちの隣り合う2つの単セルの間に配置されるセパレータと、を備える。各単セルは、電極層と、電極層とセパレータとの間に形成される空間の気密性を確保するためのシール部材と、を含む。セパレータは、金属材料を用いて形成された第1のセパレータ要素と、金属材料を用いて形成された第2のセパレータ要素と、第1のセパレータ要素と第2のセパレータ要素との間に配置された第3のセパレータ要素と、を備える。第3のセパレータ要素は、セパレータがシール部材と接触する部位の付近に設けられ、セラミック材料を用いて形成された第1の部材を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、燃料電池に関し、特に、セパレータの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、積層された複数の単セルを含んでおり、隣り合う2つの単セルの間には、セパレータが配置されている。各単セルは、セパレータに接触するシール部材を含んでおり、単セルに含まれる電極層とセパレータとの間には、反応ガスが流通するガス通路(空間)が形成される。燃料電池は積層方向に押圧され、シール部材によって空間の気密性が確保される。
【0003】
【特許文献1】特開2003−68319号公報
【特許文献2】特開2004−6104号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、金属製のセパレータが利用される場合には、燃料電池に与えられる押圧力に起因して、セパレータが屈曲し得る。このため、単セルの両側に配置された2つのセパレータが接触し、2つのセパレータが導通してしまう虞がある。すなわち、従来では、金属製のセパレータの屈曲に起因して、短絡が発生してしまう虞があった。
【0005】
この発明は、従来技術における上述の課題を解決するためになされたものであり、セパレータの屈曲に起因する短絡の発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題の少なくとも一部を解決するため、本発明の装置は、燃料電池であって、複数の単セルと、前記複数の単セルのうちの隣り合う2つの単セルの間に配置されるセパレータと、を備え、前記各単セルは、電極層と、前記電極層と前記セパレータとの間に形成される空間の気密性を確保するためのシール部材と、を含む、前記燃料電池に使用される前記セパレータであって、
金属材料を用いて形成された第1のセパレータ要素と、
金属材料を用いて形成された第2のセパレータ要素と、
前記第1のセパレータ要素と前記第2のセパレータ要素との間に配置された第3のセパレータ要素と、
を備え、
前記第3のセパレータ要素は、
前記セパレータが前記シール部材と接触する部位の付近に設けられ、セラミック材料を用いて形成された第1の部材を含むことを特徴とする。
【0007】
この装置では、第3のセパレータ要素は、セパレータがシール部材と接触する部位の付近において、セラミック材料を用いて形成された第1の部材を含んでいるため、セパレータの屈曲を低減することができ、この結果、短絡の発生を抑制することができる。
【0008】
上記の装置において、
前記第3のセパレータ要素の端部には、前記第1の部材が存在し、
前記第3のセパレータ要素の端部は、前記第1のセパレータ要素の端部および前記第2のセパレータ要素の端部よりも、外側に突出していることが好ましい。
【0009】
こうすれば、仮に、セパレータが屈曲して他のセパレータと接触する場合にも、短絡の発生を抑制することができる。
【0010】
上記の装置において、
前記第3のセパレータ要素は、さらに、
金属材料を用いて形成され、前記第1のセパレータ要素と前記第2のセパレータ要素とを導通させるための第2の部材を含むことが好ましい。
【0011】
この発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、セパレータおよびその製造方法、該セパレータを含む燃料電池、該燃料電池を含む燃料電池システム、該燃料電池システムを搭載する車両等の移動体等の形態で実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づいて以下の順序で説明する。
A.比較例:
A−1.燃料電池スタックの構成:
A−2.比較例における問題点:
B.第1実施例:
C.第2実施例:
【0013】
A.比較例:
A−1.燃料電池スタックの構成:
燃料電池システムは、通常、燃料電池スタック(以下、単に「スタック」とも呼ぶ)と、燃料ガス供給部と、酸化ガス供給部と、冷却液循環部と、各部を制御するコントローラと、を備えている。燃料ガス供給部は、燃料ガス(水素ガス)をスタックに供給する機能を有しており、例えば、水素タンクと減圧弁とを含んでいる。酸化ガス供給部は、酸化ガス(空気)をスタックに供給する機能を有しており、例えば、ブロワを含んでいる。冷却液循環部は、スタック内部で冷却液を循環させる機能を有しており、例えば、循環ポンプと熱交換機とを含んでいる。
【0014】
図1は、比較例における燃料電池スタック100の部分断面図である。図示するように、スタック100は、複数の単セル(単電池)20が積層された構造を有しており、隣り合う2つの単セル20間には、セパレータ50が設けられている。
【0015】
単セル20は、膜−電極−ガス拡散層アセンブリ(以下、「MEGA」(Membrane Electrode Gas diffusion layer Assembly)と呼ぶ)22と、MEGA22の両側に設けられた多孔質体24a,24cと、MEGA22の周囲に設けられたガスケット26と、を含んでいる。
【0016】
MEGA22は、電解質膜30を含んでおり、電解質膜30の一方の面には、触媒電極層(アノード)31aとガス拡散層32aとがこの順に形成されており、電解質膜30の他方の面には、触媒電極層(カソード)31cとガス拡散層32cとがこの順に形成されている。なお、触媒電極層とガス拡散層とは、電極層として機能する。
【0017】
なお、電解質膜30としては、フッ素系樹脂などの固体高分子材料で形成された膜を用いることができる。また、触媒電極層31a,31cとしては、カーボン粒子に白金などの触媒を担持させた触媒層を用いることができる。ガス拡散層32a,32cは、カーボンペーパなどのガス透過性および導電性を有する材料で形成されている。
【0018】
多孔質体24a,24cは、MEGA22とセパレータ50との間に形成される空間に配置されている。具体的には、アノード側の多孔質体24aは、ガス拡散層32aと、ガス拡散層32aに対向するセパレータ50との間に形成される空間に配置されている。カソード側の多孔質体24cは、カソード側のガス拡散層32cと、ガス拡散層32cに対向するセパレータ50との間に形成される空間に配置されている。アノード側のガス拡散層32aと多孔質体24aとは、触媒電極層(アノード)31aに供給される燃料ガスが通るセル内燃料ガス通路に設けられている。また、カソード側のガス拡散層32cと多孔質体24cとは、触媒電極層(カソード)31cに供給される酸化ガスが通るセル内酸化ガス通路に設けられている。なお、セル内通路は、図1に示すように、各単セル20内部において、電解質膜30と平行に設けられた通路である。
【0019】
なお、多孔質体24a,24cは、ガス透過性および導電性を有する板状部材であり、例えば、チタン等の金属や、カーボンなどを用いて形成される。金属多孔質体としては、例えば、発泡金属焼結体や、球状あるいは繊維状の微小な金属片を焼結させた焼結体を用いることができる。
【0020】
ガスケット26は、MEGA22と一体的に形成されている。なお、MEGA22とガスケット26とを含む構造体を以下では「セルアセンブリ」と呼ぶ。
【0021】
図2は、MEGA22とガスケット26とを含むセルアセンブリを示す平面図である。図示するように、セルアセンブリは、略矩形の外形形状を有しており、枠状のガスケット26の内側に、矩形のMEGA22が設けられている。図中、MEGA22は、ハッチを付して示されている。なお、図2のセルアセンブリのA−A断面が図1に示されている。
【0022】
ガスケット26には、セル間酸化ガス通路を構成する第1および第2の長孔61g,62gと、セル間燃料ガス通路を構成する第3および第4の長孔63g,64gと、セル間冷却液通路を構成する第5および第6の長孔65g,66gと、が形成されている。なお、セル間通路は、図1に示すように、スタック100内部を貫通し、複数の単セル20の積層方向に沿った通路である。
【0023】
ガスケット26は、図1に示すように、セパレータ50と接触する凸部26pを有している。凸部26pは、図1,図2に示す一点鎖線SLに沿って設けられている。具体的には、凸部26pは、6つの長孔61g〜66gの周囲に設けられている。また、凸部26pは、MEGA22の周囲に設けられている。スタック100は、通常、積層方向に押圧されるため、ガスケット26の凸部26pによって、各セル間通路のシール性(気密性)が確保されると共に、各セル内通路のシール性が確保される。
【0024】
なお、セルアセンブリは、例えば、射出成形処理によって形成可能である。具体的には、周囲に空間が設けられた金型内にMEGA22を配置し、該金型内の空間に樹脂材料を射出することによって形成される。樹脂材料としては、例えば、シリコンゴム、ブチルゴム、フッ素ゴムなどの絶縁性を有する樹脂材料が用いられる。
【0025】
セパレータ50(図1)は、カソード側の多孔質体24cに接するカソード側プレート52と、アノード側の多孔質体24aに接するアノード側プレート56と、2つのプレート52,56に挟まれた中間プレート54と、を備えている。
【0026】
図3は、比較例のセパレータ50を構成する各プレート52,54,56の平面図である。図3(A)〜(C)は、それぞれ、カソード側プレート52と、中間プレート54と、アノード側プレート56と、を示している。なお、図3(A)〜(C)の各プレート52,54,56のA−A断面が、図1に示されている。また、図3(B)には、中間プレート54のB−B断面が示されている。
【0027】
カソード側プレート52(図3(A))には、セル間酸化ガス通路を構成する第1および第2の長孔61c,62cと、セル間燃料ガス通路を構成する第3および第4の長孔63c,64cと、セル間冷却液通路を構成する第5および第6の長孔65c,66cと、が形成されている。また、カソード側プレート52には、第1の長孔61c付近に、セル内酸化ガス通路の入口を構成する複数の小孔71cが形成されていると共に、第2の長孔62c付近に、セル内酸化ガス通路の出口を構成する複数の小孔72cが形成されている(図1参照)。
【0028】
アノード側プレート56(図3(C))には、カソード側プレート52と同様に、第1ないし第6の長孔61a〜66aが形成されている。ただし、アノード側プレート56には、第3の長孔63a付近に、セル内燃料ガス通路の入口を構成する複数の小孔73aが形成されていると共に、第4の長孔64a付近に、セル内燃料ガス通路の出口を構成する複数の小孔74aが形成されている。
【0029】
中間プレート54((図3(B))には、セル間酸化ガス通路を構成する第1の長孔61mと、酸化ガスをセル内酸化ガス通路に導く複数の連通孔71mと、が接続された櫛状の第1の孔が形成されている。同様に、中間プレート54には、第2の長孔62mと複数の連通孔72mとが接続された櫛状の第2の孔が形成されている。また、中間プレート54には、セル間燃料ガス通路を構成する第3の長孔63mと、燃料ガスをセル内燃料ガス通路に導く複数の連通孔73mと、が接続された櫛状の第3の孔が形成されている。同様に、中間プレート54には、第4の長孔64mと複数の連通孔74mとが接続された櫛状の第4の孔が形成されている。さらに、中間プレート54には、セル間冷却液通路を構成する第5および第6の長孔65m,66mが形成されている。そして、中間プレート54の中央部分には、第5および第6の長孔65m,66mと接続され、隣り合う2つの単セル20間のセル用冷却液通路を構成する凹部78m(図1参照)が形成されている。なお、凹部78mの内側には、複数の凸部が存在している。
【0030】
なお、カソード側プレートおよびアノード側プレート52,56は、例えば、ステンレス鋼や、チタン、チタン合金などの導電性を有する金属製の板材に対して、打ち抜きプレス処理を施すことによって形成される。また、中間プレート54は、例えば、上記のような金属製の板材に対して、エッチング処理を施すことによって形成される。そして、3つのプレート52,54,56は、例えば拡散接合により接合され、この結果、セパレータ50が得られる。
【0031】
図1に示すように、スタック100に供給された酸化ガスは、中間プレート54の長孔61mおよび連通孔71mと、カソード側プレート52の小孔71cと、を通って、多孔質体24cに流入する。なお、酸化ガスは、ガス拡散層32cを介して触媒電極(カソード)31cに到達し、電気化学反応に利用される。多孔質体24cを通過した使用済みの酸化ガスは、カソード側プレート52の小孔72cと、中間プレート54の連通孔72mおよび長孔62mを通って、スタック100から排出される。
【0032】
同様に、スタック100に供給された燃料ガスは、中間プレート54の長孔63mおよび連通孔73mと、アノード側プレート56の小孔73aと、を通って、多孔質体24aに流入する。なお、燃料ガスは、ガス拡散層32aを介して触媒電極(アノード)31aに到達し、電気化学反応に利用される。多孔質体24aを通過した使用済みの燃料ガスは、アノード側プレート56の小孔74aと、中間プレート54の連通孔74mおよび長孔64mを通って、スタック100から排出される。
【0033】
また、スタック100に供給された冷却液は、中間プレート54の第5の長孔65mと凹部78mと第6の長孔66mとを通って、スタック100から排出される。
【0034】
A−2.比較例における問題点:
図4は、比較例の燃料電池スタック100の端部付近を示す説明図である。なお、図4には、図2,図3のC−C断面が示されている。図4では、3つの単セル20と、4つのセパレータ50と、が示されてる。ただし、図4では、3つの単セル20を区別するために、符号「20」に添え字「1〜3」が付されており、4つのセパレータ50を区別するために、符号「50」に添え字「1〜4」が付されている。
【0035】
前述したように、スタック100は、単セル20を積層することによって形成されている。しかしながら、複数の単セル20を、積層方向から見て、同じ位置に配置することは困難である。図4では、4つのセパレータ501〜504は、積層方向から見て同じ位置に配置されているが、3つの単セル201〜203は、積層方向から見て同じ位置に配置されていない。具体的には、第1および第3の単セル201,203は、積層方向から見て同じ位置に配置されているが、第2の単セル202は、図中右方にずれている。このとき、積層方向から見て、第1および第3の単セル201,203に含まれるガスケット26の凸部26pの位置と、第2の単セル202に含まれるガスケット26の凸部26pの位置とは、ずれている。
【0036】
前述したように、スタック100は積層方向に押圧される。このため、積層方向から見たときに、複数の単セル20(より具体的には、ガスケット26の凸部)が同じ位置に配置されていない場合には、セパレータ50は屈曲し得る。図4では、第2の単セル202の上側に配置された第2のセパレータ502の端部が下方に曲がると共に、第2の単セル202の下側に配置された第3のセパレータ503の端部が上方に曲がる。より具体的には、第2の単セル202に含まれるガスケット26の凸部26pが支点となり、第2のセパレータ502は下方に曲がる。同様に、第2の単セル202に含まれるガスケット26の凸部26pが支点となり、第3のセパレータ503は上方に曲がる。
【0037】
このため、比較例では、第2のセパレータ502(より具体的にはカソード側プレート52)の先端部分と、第3のセパレータ503(より具体的にはアノード側プレート56)の先端部分と、が接触してしまい、この結果、第2のセパレータ502と第3のセパレータ503とが導通して短絡が発生してしまう虞がある。そこで、実施例では、隣り合う2つのセパレータ50が導通しないようにセパレータの構造を工夫している。
【0038】
B.第1実施例:
図5は、第1実施例のセパレータ50Bを構成する各プレート52,54B,56の平面図であり、図3に対応する。図5(A),(C)は、図3(A),(C)と同じであり、図5(B)が、図3(B)と異なっている。図5(B)には、中間プレート54BのB−B断面が示されている。
【0039】
比較例では、中間プレート54(図3(B))は1つの部材で構成されているが、本実施例では、中間プレート54B(図5(B))は、中央に配置された内側部材Miと、内側部材Miを囲むように配置された外側部材Moと、で構成されている。内側部材Miの厚みは、外側部材Moの厚みとほぼ等しい。外側部材Moには、比較例の中間プレート54と同様に、4つの櫛状の孔が設けられている。内側部材Miには、比較例の中間プレート54と同様に、凹部78m(図1参照)が形成されている。そして、外側部材Moと内側部材Miとの間には、第5および第6の長孔65m,66mが形成されている。
【0040】
内側部材Miは、他のプレート52,56と同様に、金属材料を用いて形成されており、導電性を有している。内側部材Miは、ステンレス鋼や、チタン、チタン合金などの導電性を有する金属製の板材に対して、エッチング処理を施すことによって形成される。
【0041】
外側部材Moは、セラミック材料を用いて形成されており、絶縁性を有している。また、外部部材Moは、緻密質であり、ガスおよび冷却液を透過させない。外側部材Moは、例えば、セラミック材料(粉末)をバインダと混練し、圧縮して焼結することによって作製される。セラミック材料としては、例えば、アルミナ(Al23)や炭化珪素(SiC)が利用される。これらのセラミック材料のヤング率は、他のプレート52,56を形成する金属材料のヤング率よりも高い。
【0042】
内側部材Miと外側部材Moとは、ロウ材や接着剤を用いて接合される。そして、3つのプレート52,54B,56は、ロウ材を用いて接合され、この結果、セパレータ50Bが得られる。金属製の内側部材Miは、カソード側プレート52およびアノード側プレート56と接触しているため、比較例と同様に、カソード側プレート52とアノード側プレート56とは導通している。
【0043】
なお、本実施例では、内側部材Miは、外側部材Moに接合されている。しかしながら、内側部材Miは、外側部材Moに囲まれると共に、カソード側プレート52とアノード側プレート56とに挟まれる。このため、内側部材Miは、外側部材Moに接合されていなくてもよい。
【0044】
図6は、第1実施例の燃料電池スタック100Bの端部付近を示す説明図であり、図4に対応する。図6は、図4とほぼ同じであるが、4つのセパレータ50B1〜50B4が変更されている。
【0045】
図示するように、各セパレータ50Bは、前述の中間プレート54Bを備えている。そして、中間プレート54Bに含まれるセラミック製の外側部材Moは、セパレータ50Bがガスケット26の凸部26pと接触する部位の付近にも存在している。このため、本実施例のセパレータ50Bは、比較例のセパレータ50と比較して、高い曲げ剛性を発揮することができる。具体的には、本実施例では、第2の単セル202の上側に配置された第2のセパレータ50B2の端部が下方に曲がるのが抑制されると共に、第2の単セル202の下側に配置された第3のセパレータ50B3の端部が上方に曲がるのが抑制される。換言すれば、本実施例では、第2および第3のセパレータ50B2,50B3の変形量(屈曲量)は、比較例における第2および第3のセパレータ502,503の変形量よりもかなり小さくなる。これにより、本実施例では、第2のセパレータ50B2(より具体的にはカソード側プレート52)の先端部分と、第3のセパレータ50B3(より具体的にはアノード側プレート56)の先端部分と、が接触するのを抑制することができ、この結果、第2のセパレータ50B2と第3のセパレータ50B3とが導通して短絡が発生するのを抑制することができる。
【0046】
なお、以上の説明から分かるように、本実施例における中間プレート54Bが、本発明における第3のセパレータ要素に相当し、カソード側プレート52およびアノード側プレート56が、本発明における第1および第2のセパレータ要素に相当する。そして、本実施例における外側部材Moが本発明における第1の部材に相当し、内側部材Miが本発明における第2の部材に相当する。また、本実施例におけるガスケット26の凸部26pが本発明におけるシール部材に相当する。
【0047】
C.第2実施例:
第1実施例では、セパレータ50Bは、セラミック製の外側部材Moを含む中間プレート54Bを備えているため、比較例と比べて、セパレータ50Bの変形量は低減される。しかしながら、セパレータ50Bの変形量をゼロにすることは困難である。このため、セパレータ50Bの先端部分とガスケット26の凸部26pとの間の距離が比較的大きい場合や、単セル20の厚みが比較的小さい場合には、隣り合う2つのセパレータ50Bが接触して導通する虞がある。そこで、本実施例では、隣り合う2つのセパレータが接触する場合にも、該2つのセパレータが導通しないように工夫している。
【0048】
図7は、第2実施例のセパレータ50Cを構成する各プレート52C,54B,56Cの平面図であり、図5に対応する。図7(B)は、図5(B)と同じであり、図7(A),(C)が、図5(A),(C)と異なっている。
【0049】
第1実施例(図5)では、3つのプレート52,54B,56のサイズ(より具体的には周囲の長さ)は、ほぼ等しく設定されているが、本実施例では、カソード側プレート52Cおよびアノード側プレート56Cのサイズは、中間プレート54Bのサイズよりも小さく設定されている。なお、カソード側プレート52Cのサイズとアノード側プレート56Cのサイズとは、ほぼ等しく設定されている。
【0050】
図8は、第2実施例の燃料電池スタック100Cの端部付近を示す説明図であり、図6に対応する。図8は、図6とほぼ同じであるが、4つのセパレータ50C1〜50C4が変更されている。
【0051】
本実施例のセパレータ50Cは、第1実施例と同様に、セラミック製の外側部材Moを含む中間プレート54Bを備えている。このため、本実施例では、第1実施例と同様に、第2および第3のセパレータ50C2,50C3の変形量を小さくすることができる。
【0052】
しかしながら、前述したように、セパレータ50C2,50C3の変形量をゼロにすることは困難である。本実施例では、図8に示すように、中間プレート54Bの先端部分は、カソード側プレート52Cおよびアノード側プレート56Cの先端部分よりも外側に突出している。このため、第2および第3のセパレータ50C2,50C3が屈曲すると、第2のセパレータ50C2の中間プレート54Bの先端部分と、第3のセパレータ50C3の中間プレート54Bの先端部分とが、接触し得る。そして、2つのセパレータ50C2,50C3の中間プレート54Bの先端部分には、絶縁性を有するセラミック製の外側部材Moが存在している。このため、2つのセパレータ50C2,50C3が接触しても、該2つのセパレータは導通せず、短絡の発生が抑制される。
【0053】
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0054】
(1)上記実施例では、中間プレート54Bは、金属製の内側部材Miとセラミック製の外側部材Moとを含んでいるが、金属製の内側部材Miに代えて、セラミック製の外側部材の一部に局所的に設けられた柱状の金属製の部材が利用されてもよい。
【0055】
一般には、第3のセパレータ要素は、金属材料を用いて形成され、第1のセパレータ要素と第2のセパレータ要素とを導通させるための第2の部材を含んでいればよい。
【0056】
(2)上記実施例では、中間プレート54Bは、金属製の内側部材Miとセラミック製の外側部材Moとを含んでいるが、金属製の内側部材Miは省略可能である。この場合には、セパレータの外部において、カソード側プレートとアノード側プレートとがワイヤ等によって電気的に接続されればよい。
【0057】
一般には、第3のセパレータ要素は、少なくともセパレータがシール部材と接触する部位の付近に設けられ、セラミック材料を用いて形成された第1の部材を含んでいればよい。
【0058】
(3)上記実施例では、積層された複数のセパレータのそれぞれに本発明が適用されているが、これに代えて、隣り合う2つのセパレータの一方のみに本発明が適用されてもよい。この場合にも、第1実施例および第2実施例と同様に、短絡の発生を抑制することができる。
【0059】
一般には、隣り合う2つの単セルの間に配置されるセパレータに本発明が適用されればよい。
【0060】
(4)上記実施例では、固体高分子型の燃料電池スタックが利用されているが、他のタイプの燃料電池スタックが利用されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】比較例における燃料電池スタック100の部分断面図である。
【図2】MEGA22とガスケット26とを含むセルアセンブリを示す平面図である。
【図3】比較例のセパレータ50を構成する各プレート52,54,56の平面図である。
【図4】比較例の燃料電池スタック100の端部付近を示す説明図である。
【図5】第1実施例のセパレータ50Bを構成する各プレート52,54B,56の平面図である。
【図6】第1実施例の燃料電池スタック100Bの端部付近を示す説明図である。
【図7】第2実施例のセパレータ50Cを構成する各プレート52C,54B,56Cの平面図である。
【図8】第2実施例の燃料電池スタック100Cの端部付近を示す説明図である。
【符号の説明】
【0062】
20…単セル
22…MEGA
24a,24c…多孔質体
26…ガスケット
26p…凸部
30…電解質膜
31a,31c…触媒電極層
32a,32c…ガス拡散層
50,50B,50C…セパレータ
52,52C…カソード側プレート
54,54B…中間プレート
56,56C…アノード側プレート
61a〜66a…長孔
61c〜66c…長孔
61g〜66g…長孔
61m〜64m…長孔
71c,72c…小孔
71m,72m…連通孔
73a,74a…小孔
73m,74m…連通孔
78m…凹部
100,100B,100C…燃料電池スタック
Mi…内側部材
Mo…外側部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池であって、複数の単セルと、前記複数の単セルのうちの隣り合う2つの単セルの間に配置されるセパレータと、を備え、前記各単セルは、電極層と、前記電極層と前記セパレータとの間に形成される空間の気密性を確保するためのシール部材と、を含む、前記燃料電池に使用される前記セパレータであって、
金属材料を用いて形成された第1のセパレータ要素と、
金属材料を用いて形成された第2のセパレータ要素と、
前記第1のセパレータ要素と前記第2のセパレータ要素との間に配置された第3のセパレータ要素と、
を備え、
前記第3のセパレータ要素は、
前記セパレータが前記シール部材と接触する部位の付近に設けられ、セラミック材料を用いて形成された第1の部材を含むことを特徴とするセパレータ。
【請求項2】
請求項1記載のセパレータであって、
前記第3のセパレータ要素の端部には、前記第1の部材が存在し、
前記第3のセパレータ要素の端部は、前記第1のセパレータ要素の端部および前記第2のセパレータ要素の端部よりも、外側に突出している、セパレータ。
【請求項3】
請求項1または2記載のセパレータであって、
前記第3のセパレータ要素は、さらに、
金属材料を用いて形成され、前記第1のセパレータ要素と前記第2のセパレータ要素とを導通させるための第2の部材を含む、セパレータ。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の燃料電池であって、
前記複数の単セルと、
前記セパレータと、
を備えることを特徴とする燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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