説明

燃料電池システムおよび燃料電池に対するカソードガスの供給量を制御する方法、燃料電池に供給されるカソードガスの供給量を測定する方法

【課題】燃料電池に対する反応ガスの供給量を適切に制御できる技術を提供する。
【解決手段】燃料電池システム100は、カソードガスの供給量を計測するエアフロメータ33と、カソード排ガスに含まれる水分の一部をトラップし、そのトラップした水分量を計測する捕水量計測部42とを備える。制御部20は、外部負荷200の要求に応じて燃料電池10に対するカソードガスの目標供給量を設定し、目標供給量のカソードガスが燃料電池に供給されるように、エアフロメータ33の計測値に基づいて、エアコンプレッサ32が送り出すカソードガスの量を制御する。この制御処理において、制御部20は、捕水量計測部42がカソード排ガスからトラップした水分量から得られるカソードガスの供給量に対するエアフロメータ33の計測誤差が補償されるように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムは、燃料電池に反応ガスを供給して発電させ、外部負荷の要求に応じた電力を出力する(下記特許文献1など)。一般に、燃料電池システムでは、反応ガスのうちのカソードガスについては、エアフロメータなどの流量計によって、その流量を計測し、その計測値に基づいて燃料電池に対する供給量を制御する。しかし、流量計は、経年劣化などによって、その計測精度が低下し、計測誤差を生じる場合があり、カソードガスの供給量が適切に制御されない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−252552号公報
【特許文献2】特開2008−125214号公報
【特許文献3】特開2004−288491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、燃料電池に対する反応ガスの供給量を適切に制御できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]
外部負荷の要求に応じて発電電力を出力する燃料電池システムであって、燃料電池と、前記燃料電池に対してカソードガスを供給するカソードガス供給源と、前記カソードガス供給源が送り出すカソードガスの量を計測するガス送出量計測部と、気液分離構造によってカソード排ガスから分離した水分をトラップし、トラップした水分量を計測する捕水量計測部と、前記外部負荷の要求に応じて前記燃料電池に対するカソードガスの目標供給量を設定し、前記目標供給量のカソードガスが前記燃料電池に供給されるように、前記ガス送出量計測部の計測値に基づいて、前記カソードガス供給源が送り出すカソードガスの量を制御するカソードガス量制御処理を実行する制御部と、を備え、前記制御部は、前記燃料電池を予め設定された条件で運転する基準運転を実行したときのカソードガスの供給量と前記捕水量計測部の計測値との間の対応関係を、予め記憶しており、前記制御部は、前記燃料電池に前記基準運転を実行させて、前記ガス送出量計測部の計測値と前記捕水量計測部の計測値とを取得するとともに、前記対応関係を用いて、前記捕水量計測部の計測値に対するカソードガスの供給量である供給量基準値を取得することにより、前記供給量基準値と前記ガス送出量計測部の計測値との差を前記ガス送出量計測部の計測値の誤差として求め、前記カソードガス量制御処理において、前記誤差が補償されるように、前記カソードガス供給源が送り出すカソードガスの量を調整する、燃料電池システム。
この燃料電池システムによれば、基準運転において取得される送出量計測部の計測値と捕水量計測部の計測値に基づくカソードガスの量との差から、ガス送出量計測部の計測誤差が求められる。そして、外部負荷の要求に応じた通常の運転において、その計測誤差が補償されるように、カソードガスの供給量の制御が実行される。従って、燃料電池に対する反応ガスの供給量が適切に制御される。
【0007】
[適用例2]
適用例1記載の燃料電池システムであって、前記基準運転は、前記燃料電池に予め設定された量のカソードガスを供給し、予め設定された発電量を出力させる運転を含む、燃料電池システム。
この燃料電池システムによれば、基準運転実行時におけるカソードガスの供給量と捕水量計測部の計測値との間の対応関係を容易に取得することができる。従って、捕水量計測部の計測値に基づき、より正確なカソードガスの供給量を取得することが可能となる。
【0008】
[適用例3]
カソードガス供給源から燃料電池に供給されるカソードガスの供給量を制御する方法であって、
(a)前記燃料電池を予め設定された条件で運転する基準運転を実行し、前記カソードガス供給源が送り出すカソードガスの量を計測するとともに、前記燃料電池から排出されたカソード排ガスから、気液分離構造によって分離した水分をトラップし、トラップされた水分量を計測する工程と、
(b)予め準備された、前記基準運転の実行時におけるカソードガスの供給量と前記トラップされた水分量との間の対応関係を用いて、前記トラップされた水分量に対するカソードガスの供給量である供給量基準値を取得する工程と、
(c)前記燃料電池に対するカソードガスの目標供給量を設定し、前記工程(a)において計測したカソードガスの量と、前記工程(b)において取得した供給量基準値との差として求められる計測誤差を補償しつつ、前記目標供給量のカソードガスが供給されるように、前記カソードガス供給源が送り出すカソードガスの量の計測値に基づいて、前記カソードガス供給源を制御する工程と、
を備える、方法。
【0009】
[適用例4]
カソードガス供給源から燃料電池に供給されるカソードガスの供給量を測定する方法であって、
(a)前記燃料電池を予め設定された条件で運転し、前記燃料電池から排出されたカソード排ガスから、気液分離構造によって分離した水分をトラップし、トラップされた水分量を計測する工程と、
(b)予め準備された、カソードガスの供給量と前記トラップされた水分量との間の対応関係を用いて、前記トラップされた水分量に対するカソードガスの供給量を取得する工程と、
を備える、方法。
この方法によれば、カソード排ガスからトラップした水分量に基づいて、カソードガス供給源が送り出したカソードガスの量を計測することができる。この計測値を用いれば、カソードガスの供給量の制御をより、容易かつ適切に実行することができる。
【0010】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、燃料電池システム、その燃料電池システムにおいて実行される制御方法、それらのシステムまたは方法を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体、その燃料電池システムを搭載する車両等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】燃料電池システムの構成を示す概略図。
【図2】燃料電池システムの電気的構成を示す概略図。
【図3】燃料電池システムにおける燃料電池に対するカソードガスの供給量の制御処理を説明するための説明図。
【図4】エアフロメータの計測誤差を補償するための計測誤差補償処理の処理手順を示す説明図。
【図5】捕水量計測部の構成を示す模式図。
【図6】エア供給量基準値の取得処理を説明するための説明図と、回転数決定マップの補正処理を説明するための説明図。
【図7】第2実施例としての燃料電池システムの構成を示す概略図。
【図8】第2実施例におけるカソードガスの供給量の制御処理を説明するための説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
A.第1実施例:
図1は本発明の一実施例としての燃料電池システムの構成を示す概略図である。この燃料電池システム100は、燃料電池10と、制御部20と、カソードガス供給部30と、カソードガス排出部40と、アノードガス供給部50と、アノードガス循環排出部60と、冷媒供給部70とを備える。
【0013】
燃料電池10は、反応ガスとして水素(アノードガス)と空気(カソードガス)の供給を受けて発電する固体高分子型燃料電池である。燃料電池10は、単セルとも呼ばれる複数の発電体が積層されたスタック構造を有する。各単セルは、湿潤状態で良好なプロトン伝導性を示す電解質膜の両側に電極が配置された膜電極接合体を有する。なお、燃料電池10としては、固体高分子型燃料電池に限らず、種々のタイプの燃料電池を採用することが可能である。
【0014】
制御部20は、中央処理装置と主記憶装置とを備えるマイクロコンピュータによって構成されている。制御部20は、外部負荷200からの出力電力の要求を受け付け、その要求に応じて、以下に説明する燃料電池システム100の各構成部を制御し、燃料電池10に発電させる。
【0015】
カソードガス供給部30は、カソードガス配管31と、エアコンプレッサ32と、エアフロメータ33と、開閉弁34とを備える。カソードガス配管31は、燃料電池10のカソード側に接続された配管である。エアコンプレッサ32は、カソードガス配管31を介して燃料電池10と接続されている。エアコンプレッサ32は、制御部20からの指令により、外気を取り込んで圧縮した空気を、カソードガスとして燃料電池10に供給する。
【0016】
エアフロメータ33は、エアコンプレッサ32の上流側において、エアコンプレッサ32が取り込む外気の量を計測し、制御部20に送信する。このエアフロメータ33の計測値は、エアコンプレッサ32が送り出すカソードガスの量を表している。制御部20は、この計測値に基づいて、燃料電池10に対するカソードガスの供給量を制御するが、その詳細については後述する。
【0017】
開閉弁34は、エアコンプレッサ32と燃料電池10との間に設けられており、カソードガス配管31におけるカソードガスの流れに応じて開閉する。具体的には、開閉弁34は、通常、閉じた状態であり、エアコンプレッサ32から所定の圧力を有する空気がカソードガス配管31に供給されたときに開く。
【0018】
カソードガス排出部40は、カソード排ガス配管41と、捕水量計測部42と、調圧弁43と、圧力計測部44とを備える。カソード排ガス配管41は、燃料電池10のカソード側に接続された配管であり、カソード排ガスを燃料電池システム100の外部へと排出する。
【0019】
捕水量計測部42は、カソード排ガス配管41に設けられており、カソード排ガス中に含まれる水分の一部をトラップし、トラップされた水分の量を制御部20に送信する。制御部20は、この捕水量計測部42から受信した計測値を用いて、エアフロメータ33の計測誤差を検出する。この計測誤差を検出するための処理の具体的な内容については、後述する。なお、捕水量計測部42は、トラップした水分を排出するための排水配管424と、排水配管424からの排水を制御するための排水弁425とを有している。その他の捕水量計測部42の具体的な構成については後述する。
【0020】
調圧弁43は、カソード排ガス配管41において、捕水量計測部42の下流側に設けられており、制御部20が、その開度を制御する。圧力計測部44は、カソード排ガス配管41において、燃料電池10と捕水量計測部42との間に設けられており、燃料電池10の出口側の圧力(背圧)を計測し、その計測値を制御部20に送信する。制御部20は、圧力計測部44の計測値に基づいて調圧弁43の開度を調整することにより、燃料電池10のカソードにおける圧力を制御する。
【0021】
アノードガス供給部50は、アノードガス配管51と、水素タンク52と、開閉弁53と、レギュレータ54と、インジェクタ55とを備える。水素タンク52は、アノードガス配管51を介して燃料電池10のアノードと接続されており、タンク内に充填された水素を燃料電池10に供給する。なお、燃料電池システム100は、水素タンク52に換えて、炭化水素系の燃料を改質して水素を生成する改質部を、水素の供給源として備えているものとしても良い。
【0022】
アノードガス配管51には、開閉弁53、レギュレータ54、インジェクタ55が、この順序で、上流側(水素タンク52側)から設けられている。開閉弁53は、制御部20からの指令により開閉し、水素タンク52からインジェクタ55の上流側への水素の流入を制御する。レギュレータ54は、インジェクタ55の上流側における水素の圧力を調整するための減圧弁であり、その開度が制御部20によって制御されている。インジェクタ55は、制御部20によって設定された駆動周期や開弁時間に応じて、弁体が電磁的に駆動する電磁駆動式の開閉弁である。制御部20は、インジェクタ55の駆動周期や開弁時間を制御することによって、燃料電池10に供給される水素量を制御する。
【0023】
アノードガス循環排出部60は、アノード排ガス配管61と、気液分離部62と、アノードガス循環配管63と、水素循環用ポンプ64と、アノード排水配管65と、排水弁66とを備える。アノード排ガス配管61は、燃料電池10のアノードの出口と気液分離部62とを接続する配管であり、発電反応に用いられることのなかった未反応ガス(水素や窒素など)を含むアノード排ガスを気液分離部62へと誘導する。
【0024】
気液分離部62は、アノードガス循環配管63と、アノード排水配管65とに接続されている。気液分離部62は、アノード排ガスに含まれる気体成分と水分とを分離し、気体成分については、アノードガス循環配管63へと誘導し、水分についてはアノード排水配管65へと誘導する。アノードガス循環配管63は、アノードガス配管51のインジェクタ55より下流に接続されている。アノードガス循環配管63には、水素循環用ポンプ64が設けられており、気液分離部62において分離された気体成分に含まれる水素を、アノードガス配管51へと循環させる。
【0025】
アノード排水配管65は、気液分離部62において分離された水分を燃料電池システム100の外部へと排出するための配管である。排水弁66は、アノード排水配管65に設けられており、制御部20からの指令に応じて開閉する。制御部20は、燃料電池システム100の運転中は、通常、排水弁66を閉じておき、予め設定された所定の排水タイミングや、アノード排ガス中の不活性ガスの排出タイミングで、排水弁66を開く。
【0026】
冷媒供給部70は、冷媒用配管71と、ラジエータ72と、冷媒循環用ポンプ73と、2つの冷媒温度計測部74,75とを備える。冷媒用配管71は、燃料電池10に設けられた冷媒用の入口マニホールドと出口マニホールドとを連結する配管であり、燃料電池10を冷却するための冷媒を循環させる。ラジエータ72は、冷媒用配管71に設けられており、冷媒用配管71を流れる冷媒と外気との間で熱交換させることにより、冷媒を冷却する。
【0027】
冷媒循環用ポンプ73は、冷媒用配管71において、ラジエータ72より下流側(燃料電池10の冷媒入口側)に設けられており、ラジエータ72において冷却された冷媒を燃料電池10に送り出す。2つの冷媒温度計測部74,75はそれぞれ、冷媒用配管71において、燃料電池10の冷媒出口の近傍と、冷媒入口の近傍とに設けられており、計測値を制御部20へと送信する。制御部20は、2つの冷媒温度計測部74,75のそれぞれの計測値の差から燃料電池10の運転温度を検出し、その検出結果に基づき、冷媒循環用ポンプ73が送り出す冷媒量を制御することにより、燃料電池10の運転温度を調整する。
【0028】
図2は、燃料電池システム100の電気的構成を示す概略図である。燃料電池システム100は、さらに、二次電池81と、DC/DCコンバータ82と、DC/ACインバータ83とを備える。燃料電池10は、直流電源ラインDCLを介してDC/ACインバータ83に接続されている。二次電池81は、DC/DCコンバータ82を介して直流電源ラインDCLに接続されている。DC/ACインバータ83は、外部負荷200に接続されている。なお、燃料電池システム100では、燃料電池10と二次電池81とが出力する電力の一部を、燃料電池システム100を構成する各補機類を駆動するために用いるが、そのための配線の図示および説明は省略する。
【0029】
二次電池81は、燃料電池10の補助電源として機能し、例えば充・放電可能なリチウムイオン電池で構成することができる。DC/DCコンバータ82は、二次電池81の充・放電を制御する充放電制御部としての機能を有しており、制御部20からの指令に応じて直流電源ラインDCLの電圧レベルを可変に調整する。制御部20は、燃料電池10の出力が外部負荷200からの出力要求に対して不足するような場合には、DC/DCコンバータ82に二次電池81の放電を指令し、その不足分を補償させる。
【0030】
DC/ACインバータ83は、燃料電池10と二次電池81とから得られた直流電力を交流電力へと変換し、外部負荷200に供給する。なお、外部負荷200において回生電力が発生する場合には、その回生電力は、DC/ACインバータ83によって直流電力に変換され、DC/DCコンバータ82を介して二次電池81に充電されるものとしても良い。
【0031】
図3(A),(B)は、燃料電池システム100における燃料電池10に対するカソードガスの供給量の制御処理を説明するための説明図である。燃料電池システム100では、制御部20は、予め記憶部に格納されている2つのマップ21,22を用いて、エアコンプレッサ32の回転数を制御することにより、燃料電池10へのカソードガスの供給量(以下、「エア供給量」とも呼ぶ)を制御する。
【0032】
図3(A)には、燃料電池10に供給するエア供給量(目標エア供給量)を決定するためのエア供給量決定マップ21の一例が、縦軸を燃料電池10の出力電力とし、横軸をエア供給量とするグラフによって表されている。エア供給量決定マップ21では、燃料電池10の出力電力が増大するほど、エア供給量が線形的に増大する関係が設定されている。制御部20は、外部負荷200が要求する出力電力に基づいて、燃料電池10に出力させる目標出力電力WFCを設定する。そして、エア供給量決定マップ21を用いて、目標出力電力WFCに対する目標エア供給量QATを取得する(グラフ中に破線矢印で図示)。
【0033】
図3(B)には、エアコンプレッサ32の回転数を決定するための回転数決定マップ22の一例が、縦軸をエアコンプレッサ32の回転数とし、横軸をエア供給量とするグラフによって表されている。なお、図3(A),(B)では、各グラフの互いの横軸が対応するように図示されている。この回転数決定マップ22には、エア供給量の増加に応じて、エアコンプレッサ32の回転数が線形的に増大する関係が設定されている。
【0034】
制御部20は、目標エア供給量QATに、フィードバック補正値ΔQFを加算した補正後目標エア供給量CQATを取得する。フィードバック補正値ΔQFは、エアフロメータ33の計測結果に基づいて、エア供給量をフィードバック制御するためのエア供給量の補正値である。制御部20は、フィードバック補正値ΔQFを、目標エア供給量QATと、エアフロメータ33の計測値QAMとの差をとることにより求める。
【0035】
制御部20は、回転数決定マップ22を用いて、補正後目標エア供給量CQATに対するエアコンプレッサの回転数RAC(以後、「指令回転数RAC」と呼ぶ)を取得する。そして、この指令回転数RACでエアコンプレッサ32を駆動させ、燃料電池10にカソードガスを供給する。なお、図3(B)では、フィードバック補正値ΔQが負の値である場合が例示されている。
【0036】
ここで、エアフロメータ33は、エアフロメータ33の初期不良や経年劣化などによって計測誤差を生じる可能性がある。本実施例の燃料電池システム100では、前記したとおり、エアフロメータ33の計測値に基づくフィードバック制御を実行しているため、エアフロメータ33の計測誤差が、エア供給量の制御に反映されてしまう。
【0037】
具体的には、エアフロメータ33にプラス側の計測誤差が生じている場合には、エア供給量が目標値より低く制御されるため、燃料電池10において、目標とする出力が得られない可能性がある。また、このようにエア供給量が低く制御されてると、燃料電池10からの排水が十分になされず、燃料電池10の発電性能の低下が促進される可能性がある。
【0038】
一方、エアフロメータ33にマイナス側の計測誤差が生じている場合には、エア供給量が目標値より高く制御される。このように、燃料電池10に対して目標値以上のエア供給量が供給される場合には、燃料電池10からの排水量が増大して電解質膜が乾燥し、燃料電池10の出力が低下してしまう可能性がある。
【0039】
そこで、本実施例の燃料電池システム100では、捕水量計測部42の計測値を用いてエアフロメータ33の計測誤差を検出し、その計測誤差が補償されるように、回転数決定マップ22が補正されている。なお、その補正処理については後述する。
【0040】
このように、本実施例の燃料電池システム100では、外部負荷200からの要求に応じて設定される目標エア供給量QATを、エアフロメータ33の計測値に基づいて補正する。また、エアフロメータ33の計測誤差が補償されるように回転数決定マップ22を補正する。従って、より適切なカソードガスの供給量制御が可能である。
【0041】
図4は、エアフロメータ33の計測誤差を補償するための計測誤差補償処理の処理手順を示すフローチャートである。この計測誤差補償処理は、燃料電池システム100の運転終了時に、定期的に制御部20が実行する。即ち、エアフロメータ33の計測誤差は、燃料電池システム100を再起動した際の運転において補償される。
【0042】
ステップS10では、制御部20は、燃料電池10を予め設定された条件で運転する基準運転を開始する。具体的には、制御部20は、燃料電池10に予め設定された量の反応ガスが供給されるように、反応ガスの供給制御を開始する。即ち、カソードガスの供給制御については、予め設定された目標エア供給量を送り出すようにエアコンプレッサ32を駆動し、調圧弁43を所定の開度で開く。一方、アノードガスの供給制御については、インジェクタ55を予め設定された駆動周期で駆動し、水素循環用ポンプ64を一定の回転数で駆動させる。
【0043】
また、制御部20は、燃料電池10に一定の電力を出力させるためのDC/DCコンバータ82の制御を開始する。なお、この基準運転における燃料電池10の出力電力は、二次電池81に蓄えられるものとしても良い。さらに、制御部20は、燃料電池10の運転状態を安定化させるために、冷媒供給部70の冷媒循環用ポンプ73の回転数を制御することにより、燃料電池10が予め設定された一定の運転温度に維持する。
【0044】
このように、制御部20は、カソード排ガスに含まれる水分量が一定となるように、基準運転を実行する。制御部20は、基準運転を燃料電池10に実行させた状態で、捕水量計測部42による計測処理を開始する(ステップS20)。
【0045】
図5(A)は、捕水量計測部42の構成を示す模式図である。図5(A)には、カソード排ガスの流れを示す矢印と、重力方向を示す矢印Gとが図示されている。捕水量計測部42は、気液分離用配管421と、貯水部422と、水位計測部423と、排水配管424と、排水弁425とを備える。
【0046】
気液分離用配管421は、カソード排ガスが通過するように、カソード排ガス配管41の途中に挿入された配管であり、カソード排ガスに対して気液分離を実行するための気液分離構造が設けられている。具体的には、気液分離用配管421には、気液分離構造として、渦流発生部4211と、熱交換フィン4212とが設けられている。
【0047】
渦流発生部4211は、配管内壁面において螺旋状に延びるように形成された切り溝であり、カソード排ガスによる竜巻状の渦流を発生させる。熱交換フィン4212は、渦流発生部4211が設けられた部位の配管外壁面に設けられており、カソード排ガスの温度を低下させて、カソード排ガス中の水分の液化を促進する。
【0048】
ここで、気液分離用配管421の気液分離構造の下流側には、貯水部422が、重力方向下側に突出するように形成された貯水用の空間として形成されている。気液分離用配管421に流入したカソード排ガスは、渦流発生部4211によって、竜巻状に回転しつつ下流側のカソード排ガス配管41へ流れる。熱交換フィン4212によって液化が促進されたカソード排ガス中の水分は、竜巻状の渦流の遠心力と重力とによって、貯水部422に誘導される。これによって、貯水部422には、気液分離構造によって分離された水分が貯水される。
【0049】
水位計測部423は、貯水部422に貯められた水分の水位を計測する。具体的には、水位計測部423は、貯水部422内に配置されたフロート4231と、フロート4231が先端に取り付けられたフロート保持軸4232とを有している。フロート保持軸4232は、水に浮くフロート4231が貯水部422の水位に応じて高さ方向に変位可能なように、支点4232fを中心に回動する。なお、図5(A)には、水位の上昇により、フロート保持軸4232が角度θだけ回動変位した様子が模式的に図示されている。
【0050】
水位計測部423は、フロート保持軸4232に設けられた角度センサ(図示せず)によって、フロート保持軸4232の回動変位量(回動角度)を検出し、その検出値に基づいて、貯水部422における水位を計測する。捕水量計測部42は、水位計測部423の計測値に基づいて、貯水部422にトラップされた水分量を取得し、制御部20に送信する。
【0051】
図5(B)は、貯水部422からの排水を説明するための模式図である。図5(B)は、排水弁425が開かれている点と、カソード排ガスの流れを示す矢印の図示が省略されている点と、フロート4231およびフロート保持軸4232の変位を示す図示が省略されている点以外は、ほぼ図5(A)と同じである。
【0052】
排水配管424は、貯水部422の底部に接続されている。排水弁425は、重力方向上側から排水配管424の入口を閉塞可能なように、排水配管424の入口端部を弁座として配置された弁体VBを有している。即ち、排水弁425は、弁体VBが、図示せざる駆動機構によって、上下方向に変位することにより開閉する。排水弁425の開閉は、制御部20によって制御されている。なお、排水弁425は、通常、開いた状態であり、捕水量計測部42による計測が開始されるときに閉じられる。
【0053】
ステップS20(図4)では、捕水量計測部42は、排水弁425を閉じてから一定時間経過した後に、貯水部422にトラップされている水分量(捕水量)を計測し、その計測値を制御部20に送信する。ステップS30では、制御部20は、この捕水量の計測値と制御部20が予め記憶しているマップとを用いてエア供給量を取得する。ここで、本明細書では、便宜上、エアフロメータ33によって計測されるエア供給量を「エア供給量実測値」と呼び、ステップS30において、捕水量の計測値に基づいて取得されるエア供給量を「エア供給量基準値」と呼ぶ。
【0054】
図6(A)は、ステップS30におけるエア供給量基準値の取得処理を説明するための説明図である。図6(A)には、エア供給量基準値を取得するために用いられる基準値取得用マップ23の一例が、縦軸を捕水量の計測値とし、横軸をエア供給量とするグラフとして図示されている。基準値取得用マップ23には、予め実験等によって得られた捕水量とエア供給量との間の対応関係が設定されている。
【0055】
ここで、前記したとおり、基準運転では、カソード排ガスに含まれる水分量(燃料電池10から排出される水分量)が一定となるように、燃料電池10の運転制御がなされる。カソード排ガス中の水分量が一定の時には、捕水量計測部42における水分のトラップ効率は、カソード排ガスの流速が速いほど、ほぼ線形的に低くなる。そのため、本実施例の基準値取得用マップ23では、捕水量とエア供給量との間の対応関係として、捕水量が多いほどエア供給量が少なくなる比例関係が設定されている。制御部20は、この基準値取得用マップ23を用いて、捕水量計測部42の計測値WTに対するエア供給量基準値QAEを取得する(グラフ中に破線矢印で図示)。
【0056】
なお、この捕水量計測部42の気液分離構造において、気液分離効率が外気温の影響によって変動する可能性がある場合には、予め、外気温ごとに基準値取得用マップ23を準備しておくものとしても良い。制御部20は、外気温を計測し、その計測値に対応する基準値取得用マップ23を参照して、捕水量計測部42の計測値WTに対するエア供給量基準値QAEを取得するものとしても良い。
【0057】
図6(B)は、ステップS40における回転数決定マップ22の補正処理を説明するための説明図である。図6(B)には、回転数決定マップ22を表すグラフが、図3(B)と同様に図示されており、補正前のグラフが実線で図示され、補正後のグラフが破線で図示されている。ステップS40では、ステップS30で取得したエア供給量基準値QAEに対するエア供給量実測値QAMの比を、回転数決定用マップ22を補正するための補正値kとして取得する(k=QAM/QAE)。
【0058】
そして、制御部20は、この補正値kに応じて、回転数決定マップ22に設定された関係を補正する。具体的には、回転数決定マップ22に設定された関係を表す式がy=ax+b(a,bは実数)であるとしたときに、比例定数aに補正値kを乗算する。これによって、回転数決定マップ22を表すグラフの勾配が、補正値kに応じて変更される。即ち、エアフロメータ33の計測誤差がプラス側の時には、回転数決定マップ22を表すグラフの勾配がより急峻となるように補正される。一方、エアフロメータ33の計測誤差がマイナス側の時には、回転数決定マップ22を表すグラフの勾配が、より緩やかとなるように補正される。
【0059】
ステップS50では、制御部20は、捕水量計測部の排水弁425を開き、貯水部422からの排水を実行する(図5(B))。計測誤差補償処理の完了時に貯水部422の水分を排出しておくことにより、氷点下などの低温環境下などに燃料電池システム100を再起動する場合であっても、残留する水分の凍結による不具合の発生が抑制される。
【0060】
即ち、本実施例の燃料電池システム100では、予め設定された量のカソードガスを供給したときに、予め設定された水分量がカソード排ガスに含まれるような条件(燃料電池10内部の水分量が予め設定された量となる条件)で燃料電池10を運転する。そして、捕水量計測部42における気液分離効率がカソード排ガスの流量に応じて変動することを利用して、予め準備されたエア供給量と上記条件下の運転時における捕水量計測部42による捕水量との対応関係に基づいて、エア供給量を計測する。さらに、この捕水量計測部42による捕水量に基づき計測されたエア供給量と、エアフロメータ33の計測値との差を、エアフロメータ33の計測誤差として、その計測誤差が補償されるように、回転数決定マップ22を補正している。
【0061】
このように、本実施例の燃料電池システム100によれば、エアフロメータ33の計測値がフィードバックされるカソードガスの供給量制御において、捕水量計測部42の計測値に基づく補正値により、エアフロメータ33の計測誤差が補償される。従って、より適切なカソードガスの供給制御が可能となる。
【0062】
B.第2実施例:
図7は本発明の第2実施例としての燃料電池システム100Aの構成を示す概略図である。図7はエアフロメータ33が省略されている点以外は、図1とほぼ同じである。なお、燃料電池システム100Aの電気的構成は、第1実施例で説明した構成(図2)とほぼ同じである。
【0063】
この燃料電池システム100Aでは、外部負荷200の要求に応じた電力を出力するための通常の運転において、第1実施例で説明した基準運転と同様な条件下で燃料電池10に発電させる。即ち、制御部20は、燃料電池10に、一定の出力での発電を継続させる。なお、外部負荷200の要求に対して不足する電力については、二次電池81からの出力によって補償する。
【0064】
図8(A),(B)は、燃料電池システム100Aにおけるカソードガスの供給量の制御処理を説明するための説明図である。図8(A)は、制御部20が、捕水量に基づいてエア供給量の実測値を取得するために用いるエア供給量計測用マップ24を表すグラフである。エア供給量計測用マップ24は、第1実施例で説明したエア供給量基準値取得用マップ23(図6)と同様なマップである。
【0065】
制御部20は、予め設定されたタイミングで、捕水量計測部42の排水弁425を閉じ、捕水量計測部42による計測処理を実行する。そして、エア供給量計測用マップ24を用いて、その計測処理によって得られた捕水量の計測値WTに対するエア供給量をエア供給量の実測値QAMとして取得する。制御部20は、このエア供給量の実測値QAMに基づいて、エアコンプレッサ32の回転数を補正することにより、エア供給量についてのフィードバック制御を実行する。
【0066】
図8(B)には、制御部20がエアコンプレッサ32の回転数の補正値を取得するために用いる回転数補正値取得用マップ25の一例が、縦軸を補正値とし、横軸をエア供給量とするグラフによって表されている。なお、図8(B)のグラフは、図8(A)のグラフと横軸が互いに対応するように図示されている。
【0067】
この回転数補正値取得用マップ25は、予め実験等によって得られた補正値とエア供給量の実測値との間の対応関係に基づいて設定されている。第2実施例では、回転数補正値取得用マップ25には、エア供給量が大きいほどエアコンプレッサ32の回転数の補正値が線形的に小さくなる比例関係が設定されている。ここで、燃料電池システム100では、燃料電池10に一定の電力を出力させるためのエア供給量の初期設定値QASが設定される。回転数補正値取得用マップ25では、この初期設定値QASより、エア供給量の実測値が大きい場合には、マイナス側の補正値が得られ、エア供給量の実測値が小さい場合には、プラス側の補正値が得られる。
【0068】
制御部20は、回転数補正値取得用マップ25を用いて、エア供給量の実測値QAMに対するエアコンプレッサ32の回転数の補正値ΔRを取得する。制御部20は、補正値ΔRに基づいて、エアコンプレッサ32の回転数を調整する。このように、第2実施例の燃料電池システム100Aでは、捕水量計測部42の計測値と、エア供給量計測用マップ24とを用いて、エア供給量を計測することにより、エア供給量のフィードバック制御を実行している。即ち、エアフロメータ33を省略した場合であっても、捕水量計測部42の計測値に基づき、適切にカソードガスの供給量を制御することができる。
【0069】
C.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0070】
C1.変形例1:
上記実施例では、カソードガス供給部30には、カソードガスを加湿するための加湿部が設けられていなかった。しかし、燃料電池10の運転中における電解質膜の湿潤状態を良好に維持するために、カソードガス供給部30,30Aには、カソードガスを加湿するための加湿部が設けられるものとしても良い。なお、第1実施例で説明したように、捕水量計測部42の計測値によって、エアフロメータ33の計測誤差を補償する場合には、加湿部が設けられると、その加湿部において、エアフロメータ33の計測誤差が小さくなる(丸められる)可能性がある。即ち、第1実施例で説明した制御処理は、カソードガス供給部30に加湿部が設けられていない燃料電池システム100に、より適している。
【0071】
C2.変形例2:
上記実施例では、制御部20は予め記憶しておいた対応関係としてのマップ21〜25を用いて、カソードガスの供給量の制御に用いるためのパラメータを取得していた。しかし、制御部20には、マップ21〜25に換えて、マップ21〜24に設定されているのと同様な対応関係を表す演算式や関数などが予め記憶されているものとしても良い。
【0072】
C3.変形例3:
上記第1実施例では、計測誤差補償処理を、燃料電池システム100の運転終了時に実行していた。しかし、計測誤差補償処理は、他のタイミングで実行されるものとしても良い。例えば、ユーザからの指令に基づくタイミングで実行されるものとしても良いし、システム起動時に実行されるものとしても良い。なお、計測誤差補償処理を燃料電池システム100の運転終了時に実行する方が、燃料電池10の温度などの状態が比較的安定している可能性が高いため、より好ましい。
【0073】
C4.変形例4:
上記第1実施例では、計測誤差補償処理における燃料電池10の基準運転として、反応ガスの供給量や、燃料電池10の出力、燃料電池10の温度を一定とする運転制御を実行していた。しかし、燃料電池10の基準運転としては、予め設定された他の条件による運転であっても良い。例えば、反応ガスの供給量は、予め設定されたとおりに、時間変化するものとしても良い。なお、この場合には、その基準運転の条件に応じて、基準値取得用マップが準備されることが望ましい。
【0074】
C5.変形例5:
上記第2実施例では、制御部20は、捕水量に基づいて取得されたエア供給量の計測値に基づいて、エアコンプレッサ32の回転数の補正値を取得していた。しかし、制御部20は、捕水量に基づいて取得されたエア供給量の計測値に基づいて、目標エア供給量に対するエアコンプレッサ32の回転数を決定するためのマップを補正するものとしても良い。
【0075】
C6.変形例6:
上記第2実施例では、制御部20は、燃料電池10に一定の電力を出力させていた。しかし、制御部20は、予め設定された多段階の出力レベルごとの電力を燃料電池10に出力させるものとしても良い。この場合には、出力レベルごとにエア供給量計測用マップ24が準備されていることが望ましい。
【0076】
C7.変形例7:
上記実施例では、捕水量計測部42は、気液分離構造として、渦流発生部4211と、熱交換フィン4212とを有していた。しかし、捕水量計測部42の気液分離構造としては、他の構造が設けられているものとしても良い。例えば、気液分離用配管421の内壁面に、水分の凝縮を促進するための構造が設けられているものとしても良い。
【符号の説明】
【0077】
10…燃料電池
21…エア供給量決定マップ
22…回転数決定マップ
23…基準値取得用マップ
24…エア供給量計測用マップ
25…回転数補正値取得用マップ
30,30A…カソードガス供給部
31…カソードガス配管
32…エアコンプレッサ
33…エアフロメータ
34…開閉弁
40…カソードガス排出部
41…カソード排ガス配管
42…捕水量計測部
421…気液分離用配管
4211…渦流発生部
4212…熱交換フィン
422…貯水部
423…水位計測部
4231…フロート
4232…フロート保持軸
4232f…支点
424…排水配管
425…排水弁
43…調圧弁
44…圧力計測部
50…アノードガス供給部
51…アノードガス配管
52…水素タンク
53…開閉弁
54…レギュレータ
55…インジェクタ
60…アノードガス循環排出部
61…アノード排ガス配管
62…気液分離部
63…アノードガス循環配管
64…水素循環用ポンプ
65…アノード排水配管
66…排水弁
70…冷媒供給部
71…冷媒用配管
72…ラジエータ
73…冷媒循環用ポンプ
74,75…冷媒温度計測部
81…二次電池
82…DC/DCコンバータ
83…DC/ACインバータ
100,100A…燃料電池システム
200…外部負荷
DCL…直流電源ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部負荷の要求に応じて発電電力を出力する燃料電池システムであって、
燃料電池と、
前記燃料電池に対してカソードガスを供給するカソードガス供給源と、
前記カソードガス供給源が送り出すカソードガスの量を計測するガス送出量計測部と、
気液分離構造によってカソード排ガスから分離した水分をトラップし、トラップした水分量を計測する捕水量計測部と、
前記外部負荷の要求に応じて前記燃料電池に対するカソードガスの目標供給量を設定し、前記目標供給量のカソードガスが前記燃料電池に供給されるように、前記ガス送出量計測部の計測値に基づいて、前記カソードガス供給源が送り出すカソードガスの量を制御するカソードガス量制御処理を実行する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記燃料電池を予め設定された条件で運転する基準運転を実行したときのカソードガスの供給量と前記捕水量計測部の計測値との間の対応関係を、予め記憶しており、
前記制御部は、
前記燃料電池に前記基準運転を実行させて、前記ガス送出量計測部の計測値と前記捕水量計測部の計測値とを取得するとともに、前記対応関係を用いて、前記捕水量計測部の計測値に対するカソードガスの供給量である供給量基準値を取得することにより、前記供給量基準値と前記ガス送出量計測部の計測値との差を前記ガス送出量計測部の計測値の誤差として求め、
前記カソードガス量制御処理において、前記誤差が補償されるように、前記カソードガス供給源が送り出すカソードガスの量を調整する、燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1記載の燃料電池システムであって、
前記基準運転は、前記燃料電池に予め設定された量のカソードガスを供給し、予め設定された発電量を出力させる運転を含む、燃料電池システム。
【請求項3】
カソードガス供給源から燃料電池に供給されるカソードガスの供給量を制御する方法であって、
(a)前記燃料電池を予め設定された条件で運転する基準運転を実行し、前記カソードガス供給源が送り出すカソードガスの量を計測するとともに、前記燃料電池から排出されたカソード排ガスから、気液分離構造によって分離した水分をトラップし、トラップされた水分量を計測する工程と、
(b)予め準備された、前記基準運転の実行時におけるカソードガスの供給量と前記トラップされた水分量との間の対応関係を用いて、前記トラップされた水分量に対するカソードガスの供給量である供給量基準値を取得する工程と、
(c)前記燃料電池に対するカソードガスの目標供給量を設定し、前記工程(a)において計測したカソードガスの量と、前記工程(b)において取得した供給量基準値との差として求められる計測誤差を補償しつつ、前記目標供給量のカソードガスが供給されるように、前記カソードガス供給源が送り出すカソードガスの量の計測値に基づいて、前記カソードガス供給源を制御する工程と、
を備える、方法。
【請求項4】
カソードガス供給源から燃料電池に供給されるカソードガスの供給量を測定する方法であって、
(a)前記燃料電池を予め設定された条件で運転し、前記燃料電池から排出されたカソード排ガスから、気液分離構造によって分離した水分をトラップし、トラップされた水分量を計測する工程と、
(b)予め準備された、カソードガスの供給量と前記トラップされた水分量との間の対応関係を用いて、前記トラップされた水分量に対するカソードガスの供給量を取得する工程と、
を備える、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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